鶴田浩二 手打ちの酒
鶴さんには『あゝ同期の桜』で、初めて私の作品に出てもらいました。それ以前にも撮影所ですれ違っていたのですが、当時は二枚目芝居の多い、“美空ひばりの相手役”という印象で、正直、関心はありませんでした。『あゝ同期の桜』は多くが特攻で命を落とすことになる海軍第14期飛行予備学生の物語ですが、その演出で揉めたことを覚えています。鶴さんは実際に14期の予備学生だったこともあり、特攻を“御国のために散る”華々しいものだと捉えていた。一方で、私の父は補充兵として中国に連れていかれて虚しく死んだ犠牲者で、どうしてもその思想を肯定できなかった。その後に撮った『日本暗殺秘録』でも演出を巡って諍いがあり、鶴さんとは決裂してしまいました。8年近く、会っても互いに口もきかなかった。
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