中国とインドの今後は?(写真=picture alliance/アフロ)
中国とインドの今後は?(写真=picture alliance/アフロ)

英国の経済ジャーナリスト、ヘイミシュ・マクレイ氏は、経済の将来を大胆に予測する著書などで知られる。本稿では近著の内容も踏まえ、先進国の高齢化や地球温暖化といった多くの課題を抱える世界経済の未来について2回にわたり考察する。前編では、今後の経済発展を促すカギとなる5大要素のうち、3つ目までについて議論する。

(翻訳・構成=菊池友美)

※本稿は、慶応義塾大学SFCにおいて筆者がゲスト講義で発表した内容などを基に、再構成・再編集したものです。

 本日は、私の近著『2050年の世界 見えない未来の考え方』(日本経済新聞出版)で展開したデータや分析に基づいてお話します。私たちが未来に向けて進んでいく旅路についてのお話です。私たちは常に未来に向かって進んでおり、歩みを止めることはできません。今日は私のことを、未知の世界に向かう人々を率いるツアーガイドだと思って下さい。

産業革命以前の経済大国は印中だった

 過去2000年の経済の歴史をひもとくと、実は今から200年以上前の世界最大の経済国・地域は、欧州でも米国でもなく、インドと中国でした。産業革命がこの構造を変えたのです。そして現代では、新興国と先進国の不均衡がやや緩やかになったものの、米国は過去25年間、先進諸国の中で常に優位な立場を維持してきました。

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 西暦0年の世界経済を見てみると、経済規模が最も大きいのはインド、次いで中国になっており、この2カ国で世界経済の半分以上を占めています。欧州は(11%と)とても小さい割合です。1820年時点でも、中国とインドはまだ世界経済の半分近くを占めています。

 しかし第2次世界大戦を経た1950年には、中国が占める割合は5%、インドは4%にまで落ち込み、米国とカナダ、オーストラリアを含むグラフの赤い部分がはるかに大きな割合を占めています。そして2050年の予測では、中国は米国をわずかに上回る経済規模に戻り、インドも大幅に成長しています。世界に占める両国の経済規模は、200年前と同じポジションに復活するという予測です。

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 200年前にこのような構造変化が起きた背景には、先進国における国民1人当たり国内総生産(GDP)の急成長があります。中国とインドの国民1人当たりのGDPは、ここ50~60年で急成長するまではほぼ横ばいでした。その間に英国や米国は一気に裕福になったのです。日本も同じように、1870年以降に一気に経済成長を遂げました。

明暗が分かれたBRICS

 その後に訪れたのが、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国)革命です。米ゴールドマン・サックスが約20年前に掲げた新興4カ国の成長に伴う経済モデルは、新興諸国が自らを見る目線も変え、20カ国・地域(G20)に対抗するBRICSサミットや新開発銀行などが生まれるきっかけになりました。

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