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第8回 ─ 曽我部バンドALデビュー記念! 『キラキラ!』とロックンロール特集

連載
曽 我 部 恵 一、 POP職 人 へ の 道
公開
2008/04/17   13:00
更新
2008/06/26   15:17
テキスト
文/bounce.com編集部

ご存知〈キング・オブ・メロウロック〉こと曽我部恵一のマンスリー連載! ご自身のお店〈City Country City〉でも素敵な〈手描きPOP〉を作っている曽我部氏が、タワーレコードのPOPを担当。独自のテーマでCD/DVD/書籍をチョイスし、その作品のPOP作りに挑みます。完成したPOPとセレクション・アイテムは、タワーレコード新宿店の〈曽我部コーナー〉にて展開……というWEB&店舗の連動企画! さて今月は、曽我部恵一BANDのアルバム『キラキラ!』発売記念のロックンロール特集です。

  結成以来、全国各地でアグレッシヴなライヴを重ねてきた曽我部恵一BANDが、満を持してのデビュー・アルバム『キラキラ!』をリリース! ロックの初期衝動が詰まりまくった本作の発売を記念して、今月のお題は〈ロックンロール〉。曽我部氏ならではのロック観を伝える6枚をレコメンドしていただきました。

RAMONES『Rocket To Russia』

曽我部「パンクって、最初はやっぱりピストルズとかクラッシュから入るけど、その後でラモーンズを聴くと、ちょっと拍子抜けするわけですよ。攻撃性が低くて。でも、そこがいいんすよね。バカみたいで、ロックンロール。イギリスの怒れる若者とは違う、もっと本格的なモラトリアムの表明だよね。彼らはファースト・アルバムの時点でもう完成しきってるわけで、あとは崩れの歴史でしょう(笑)。それもいいと思う。打算的じゃないことをここまでやった人ってあんまりいないんじゃないかなあ。音楽的な発展は考えずに、とにかくやり続けること、ステージに立ち続けることが大事っていう。ジョニー・ラモーンが大リーグのマニアってことも関係しているかもしれないですね。野球も〈300勝だ!〉とか、そういうの大切じゃん(笑)。ある試合ですごいことをやるよりも、やり続けて記録を打ち立てるってことが大事なわけで」。

RCサクセション『シングルマン』

曽我部「これは、今回の『キラキラ!』を作る時に、結構影響を受けたんです。フォークなんだけど、ものすっごい濃いんですよね。でも、何が濃いのかっていうと、よくわかんない。大名曲が入ってるわけでもないし。音楽って、誰かに聴いて喜んでもらいたいっていうのが多少なりともあるじゃないですか。これにはそれがない。キヨシローの人間的ないびつさとか、純朴さだけが伝わってくる。自分ってものを歌っただけの、すごいピュアなアルバム。で、アルバムっていうのはこういうものなんだと思う。アルバムを聴くことは、その人の思想を共有するとかじゃなくって、その人と向き合う行為なんだなと。これを聴くと、当時のキヨシローが部屋に来ちゃう感覚がある。で、音楽ってそこまで行かなきゃいけないんだなって思うし、俺のレコードを聴くときは、俺が部屋に押しかけてくるくらいの印象を与える、濃いものを作らなきゃいけないんだなと思う。このアルバムは、はっぴいえんどの『風街ろまん』とかの比じゃないすごさを持ってますよ。日本の音楽では一番好きかもしれない」。

BLACK FLAG『Damaged』

曽我部「これは影響を受けてるロック・バンドってことで。彼らは、いなたいハードコアという風に見られてると思うし、ヘンリー・ロリンズがいるから、ちょっと筋肉系のバンドみたいな印象もあるけど、俺はストーンズとかブラック・サバスみたいに捉えている。ポップで速くて破壊力抜群、みたいな。グレッグ・ギンっていうギタリストがいるんだけど、そいつがいいんだよね。見た目が全然パンクスじゃないんだよ。服装はナードだし、おっさんだし、顔もいい(笑)。ルックスとか年齢とか、そういうことは関係なく攻め込んでる。あと、この人たちはアメリカ全土をひたすらツアーで回ったんですよ。そういうDIYなスタンスで、金もかけずにやってたところがかっこいいなと思う。彼らが尊敬しているのはグレイトフル・デッドなんだよね。で、ぼくらにしても、デッドに近いようなものをやりたい。それはファンとのコミュニケーションの仕方にしても、バンドの運営の仕方にしてもそうだし。あとはとにかく、好きなことをやるためにやってるんだっていう姿勢ね」。

中川イサト『お茶の時間』

曽我部「これはちょっと毛色が違うんだけど、青春の音楽なんだよね。夏というか、青く抜けた空を感じさせてくれるアルバム。小学校の夏休みのプールの帰りみたいな、寂しさと満たされた感じが両方ある、変な一人感というか。ああいう瞬間を音でやったもののなかで、自分にとっての最高峰がこれ。細野(晴臣)さんとか、いわゆるニューミュージックのひとたちがいっぱい参加してるんだけど、いなたくて、素朴で、メロウでキラキラしてて、いいよ~。これは名盤。なんでこのアルバムがあまり語られないのかなって思う。あまりにも見過ごされてるよね。アコースティックでゆったりしてるし……ジャック・ジョンソン日本版ですよ(笑)。今回の『キラキラ!』のジャケットの青空と通じるところがあるアルバムです」。

曽我部恵一『STRAWBERRY』

曽我部「ソロ活動をしていく中で〈自分は何をやりたいんだろう〉って思ったことがあって。そのとき、学校帰りにスタジオに入って、パンクのコピーとかやってたことが楽しくて音楽を始めたわけだし……っていうところに立ち返ったんです。それで、シンプルでストレートなものをもう1回やってみようと思って作ったのが『STRAWBERRY』。で、『キラキラ!』は、言わば『STRAWBERRY』のリメイクなんですよ。演奏の技術とか、歌がどのくらいの瞬発力で伝わっていくかとか、『STRAWBERRY』で達成できなかった色んなことをやりたいっていうのがあったから、曽我部恵一BANDを組んで、じっくり活動して来た。で、やっと『キラキラ!』にたどり着いたんだよね」。

曽我部恵一BAND『キラキラ!』

曽我部「だから『キラキラ!』は、やっとできたなあって感じですね。結局のところ、ロックをやるためにはロックな生き方をしなきゃいけない。かっこいい音楽をやりたいだけなんだけど、かっこいい音楽は、かっこいい生き方をしているやつしかできないっていうのが結論なんですよ。で、〈じゃあロックな生き方ってなんだろう?〉ってことなんですね、日々。例えばライヴにしても、ローディーがいて、全部お膳立てしてくれた上でやることはかっこ悪いんじゃないかって考えたり。そういう、ひとつひとつを常に問い直しながらやっていきたい。もちろん『キラキラ!』はそういう問いかけがすべて解決したっていうことではなくて、現状はこういうことですって感じ。だから本当に、いまのぼくたちの、あるがままの音楽ですよ。ここまでたどり着くのに3年かかった。それは3年間作り続けたってことではなくて、3年間の考え方とか生活とかの蓄積だよね。だからこれは、〈次はロックンロールにしよう〉とか、そういうものとは一番遠い。あとはこれ持ってツアーに行こうって感じかな。アルバムは色んな活動のなかの一部くらいに、いまは思ってるから」。

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