◆戦人の考えていたこと
実は戦人は気付いていました。
「赤字で魔女の犯行を否定出来るなら、魔女なんて存在しないのではないか」と。
そう、魔女自らが魔女の存在を否定する真実を言うのです。
ベアトリーチェにとっては使いたくなかった手でしょう。
ですが、戦人はそのことを“あえて”考えませんでした。
耳を塞ぐと同時に、思考にも蓋をしたのです。
彼がこのことを深く考えるのを止めたのは、
この『ゲーム』が戦人とベアトのフェアな戦いであったからです。
即ち「犯行は人間\魔女の手によるもの」と互いに主張し合うこのゲームにおいて、
「犯人が人間以外の何者でもない」とするこの赤字は、
魔女にとっては、その存在を脅かされるものです。
仮に戦人が耳を塞がずにこの赤字を聞いていれば、
たちまちEP3の事件の真相が明かされ、戦人の勝利となります。
ベアトリーチェは自ら滅んでいたでしょう。
・・・それではこの『ゲーム』はフェアなゲーム足り得ません。
戦人はベアトリーチェに対し、本人でも知らない間に“借り”を作っています。
たとえば、ワルギリアが参謀役として戦人側に付いたこと。
その気になれば、ベアトはワルギリアを退場させることが可能です。
ですがベアトは ワルギリアが敵の応援に入ることを認めました。
消極的に戦人へのサポートを認めていたのです。
ワルギリアの助言がなければ、EP3で戦人は敗北していました。
他にも、戦人は本人が気付かない間に、
ベアトからの御膳立てによって「戦いやすいように」誘導されています。
そこには、ベアトの「戦人と2人でもっと遊びたい」という本心が見え隠れします。
問題の「赤字による魔女否定」などもこれに含まれます。
そう、ベアトは戦人が負けないような振舞いを見せているのです。
ベアトは極力戦人にフェアなように戦いを仕掛けています。
そのベアトから勝利を掠め取って良いのでしょうか?
正々堂々とした戦いを望んだ戦人は、これを良しとしなかったのでした。
もっとも、質問にある様にベアトの赤字の内容を戦人は聞いていません。
「犯人は魔女ベアトリーチェである」とでも赤字で言っていたのかもしれません(苦笑)
こちらの場合だと、戦人はまた“借り”を作っていますね。
◆エヴァ・ベアトリーチェ
消えていません。
EP3の終盤で存在を否定された彼女ですが、
縁寿の居る12年後の世界でもちゃっかり存在し続けています。
12年後の世界においては、
「六軒島での“不幸な事故”の首謀者である」とするマスコミの報道によって、
唯一の生還者である絵羽は“疑惑の女王”と呼ばれ後ろ指を指されていました。
警察は六軒島での“事故”に事件性を見つけられませんでしたが、
「司法すらも買収している」として絵羽犯人説は声高に主張されました。
それらの報道は絵羽の人生や人格を歪め、
「魔女らしい」歪な余生を送る原因となります。
それらを隠れ蓑として、エヴァ・ベアトリーチェは存在し続けたのです。