火の玉（怪火）の類は、確かに存在します。 墓場で見られるものは、土葬した遺体が腐敗し、メタンなどのガスが発生して、それが自然発火したものというのが妥当でしょうね。よく骨中のリンが燃えるもの、という話が聞かれますが、これは間違い。この種のリンは、化学反応で燃えないのが現在では解っているからです。 他に有力な説としてはプラズマがあります。雷雨の時などに現れる球電がその正体の一つとして挙げられており、これがプラズマのかたまりであるとの説が有力です。 おもしろいことに、実際怪火が目撃された時は天候が雷雨だったり、雷雨になりそう（つまり遠方では雷雨になっている）だった事が少なくないのですね。怪火の中でジャンジャン火は雨の振りそうな夜に現れるといいますし、船の帆先に現れるセントエルモの火も雷雨の時に起こる現象です（ただしセントエルモの火は、定説ではコロナ放電であるとされます）。 これは実際に球電現象を撮影した動画です。後方には稲妻が見えます。 http://www.youtube.com/watch?v=6ioN-3UWYrY 他にも沼地などで腐った水草が堆積し、そのガスが発火することもあります（アイルランドではウオーター・シェリーと呼ばれます）。また腐敗ガスでなくとも、小規模な天然ガスの噴出で起こる場合もあります。 蛍などの発光昆虫、流星の誤認、光るコケ類を体に付けた小動物、灯りが空気の屈折や、雲などに反射することで、本来あり得ないはずの場所に光が見え、それを誤認されることもあります。不知火の正体は、この空気の屈折の大規模な物、すなわち蜃気楼であろうというのが有力な説です。 また、夜間人間は遠近感がつかめず、遠くの明かりが近くに見えるので、それを誤認したと思われる場合もあります。 あるいは、単に記憶の誤謬である可能性もあります。怪火を見たという記憶、墓場に行った記憶、その他がごっちゃになっている。これは普通に起きるもので、幼少期の記憶には特に著しい物です。 …しかし、それでもまだ怪火に関しては説明できない部分があります（私が知らないだけかも知れませんが）。 肯定派の心霊研究家、西丸震哉氏が見た木曽御岳の大量の人魂はその良い例です。キャンプ中の夜、まさに無数の人魂が現れたのですが、これはテントの布地やハンゴウといった無生物は通り抜けるのに、氏の身体、すなわち生物は通り抜けられない。今度来た時にはなんとか人魂を捕獲してやろうと氏はその体験談の中に記していますが、残念ながら捕獲成功の報告はまだありません（ただし、氏にはかなりの夢想癖があるという事実は付け加えなければならないでしょう）。 これには後日談があり、おそらくは西丸氏の体験にヒントを得たと思われるのですが、ある観光会社が「木曽御岳人魂見学ツアー」なるものを行ったことがあります。 けれどこの時は人魂は一個も現れず、ツアー客の抗議でその会社は散々な目にあったそうです。