以下が全文です。
◆『肖像画の碑文』
懐かしき、故郷を貫く鮎の川。
黄金郷を目指す者よ、これを下りて鍵を探せ。
川を下れば、やがて里あり。
その里にて二人が口にし岸を探れ。
そこに黄金郷への鍵が眠る。
鍵を手にせし者は、以下に従いて黄金郷へ旅立つべし。
第一の晩に、鍵の選びし六人を生贄に捧げよ。
第二の晩に、残されし者は寄り添う二人を引き裂け。
第三の晩に、残されし者は誉れ高き我が名を讃えよ。
第四の晩に、頭を抉りて殺せ。
第五の晩に、胸を抉りて殺せ。
第六の晩に、腹を抉りて殺せ。
第七の晩に、膝を抉りて殺せ。
第八の晩に、足を抉りて殺せ。
第九の晩に、魔女は蘇り、誰も生き残れはしない。
第十の晩に、旅は終わり、黄金の郷に至るだろう。
魔女は賢者を讃え、四つの宝を授けるだろう。
一つは、黄金郷の全ての黄金。
一つは、全ての死者の魂を蘇らせ。
一つは、失った愛すらも蘇らせる。
一つは、魔女を永遠に眠りにつかせよう。
安らかに眠れ、我が最愛の魔女ベアトリーチェ。
◆
余談ですが、この碑文の詳細についても解説致します。
この碑文は、惨劇の2年前に魔女ベアトリーチェの肖像画と同時期に掲示されました。
これは右代宮家の老当主、右代宮金蔵の指示によるものです。
親族の間では、この碑文が示すものは「黄金10tの隠し場所」ではないかと推測されていました。
関東大震災で壊滅した右代宮本家を立て直した分家筋の金蔵。
彼が融資を受ける際に、「マルソーの会長」に黄金の山を見せた、とする伝説があります。
なんでも、「魔女との契約により譲り受けた黄金」らしいのです。
戦人らは“魔女”を“景気の良いパトロン”と読み替えていましたが、
ともかく若き日の金蔵の経済活動の元手として、半ば信じられていました。
EP3(エヴァ・ベアトリーチェが肖像画になっている話)では、
実際に碑文を解いた絵羽が“黄金郷”にてインゴットの山を目撃しています。
金蔵の意思としては、誰かにこの碑文を解かせたかったのでしょう。
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しかし、このある意味儀式じみた隠し黄金継承のための碑文は、
実際に「魔女ベアトリーチェ復活の儀式」に使われてしまいます。
俗にいう“見立て殺人”に利用されてしまったのです。
一番最初に発覚する惨劇で発見される遺体は6人。
第一の晩の“生贄”の数と一致します。
このように、事件は碑文に沿って進行する場合がほとんどです。
「人間の犯人」が存在するなら、見立て殺人にも何らかの意味があるかもしれませんね。