フランキー堺
フランキー堺

■誠実な正義漢か狡猾な野心家か

 81年には橋田壽賀子原作の「おんな太閤記」が放送される。家康を演じたのはフランキー堺だ。伊東さんは言う。

「フランキーさんは91年の『太平記』で演じた長崎円喜のイメージも強烈ですが、ここでは“いい人”としか言えない家康を演じた。40代で豊臣家から家康に嫁ぐことになった朝日姫にも優しく接し、秀吉の正妻である北政所にも同情的でした。北政所の要望に沿って戦乱のない世を築いていくという、新たな家康像が誕生しました」

 83年、ついに家康が主人公の作品が誕生する。滝田栄主演の「徳川家康」だ。時代劇や歴史物の映画やドラマに造詣が深いコラムニストのペリー荻野さんはこう語る。

「年を重ねるごとに徐々に自分のやるべきことを見つけていき、ここで乱世を終わらせるんだという決断力、誠実さと正義感を持って生き抜いた。姿勢よく声量もある滝田さん演じる家康像は、自分は前線に立たず信長・秀吉の成果を奪うそれまでのイメージと違い、真剣に悩み、行動していた。背負うということの大変さに気づかされました」

 87年の「独眼竜政宗」では、津川雅彦さんが家康を演じた。前出の伊東さんがこう語る。

「まさに昭和の家康の集大成ともいえる役作りでした。渡辺謙さんの政宗と勝新太郎さんの秀吉に対し、一歩引きながらも野心を持つ、それでいて情けも併せ持つという人物像でした。このあたりから家康像に変化がみられ、野心家というダークサイドの部分が入ってきた気がします」

 ペリーさんも、津川家康が印象的だったと語る。

「85年の朝ドラ『澪つくし』でも津川さんの魅力を引き出したジェームス三木さん脚本でしたから、おもしろいったらない!腹の底は見せないけれど、たとえば爪を噛むような小さなしぐさひとつとっても、オーバーアクションに見せずにとことんやる。私たちはそれを見てゲラゲラ笑う。そのあたりの“津川エンタメ”はさすがでした」

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