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ヒヤシンスを増やしたい! 最適な時期と方法、注意点を知っておきましょう

ヒヤシンスを増やしたい! 最適な時期と方法、注意点を知っておきましょう

美しく、ゴージャスなヒヤシンスで花壇をいっぱいにしたいと思いませんか。花姿も香りも華やかで、見る人を楽しませてくれるヒヤシンス。まるで小さなラッパのような花がユニークです。ヒヤシンスは、チューリップやスイセンと同じ、ポピュラーな球根植物。春を迎えると、さまざまな場所で目にするのはもちろん、小学校の授業の一環で水栽培されることも多いようです。一定の時間と手間がかかるものの、ヒヤシンスは増やすことができます。NHK『趣味の園芸』などの講師としても活躍する、園芸研究家の矢澤秀成さんにお聞きしました。

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ヒヤシンスを育てる前に知っておきたいこと

ヒヤシンスは、秋〜冬の間に植えつけると、次の春の初め頃には花を咲かせます。球根の内部に花芽をもっており、球根の力のみで花を咲かせられるため、水栽培にも適しています。もちろん、鉢植えや地植えにして育てることもできます。

ヒヤシンスの基本データ
学名:Hyacinthus orientalis
科名:ユリ科
属名:ヒヤシンス属
原産地:ギリシャ、シリア、小アジア
和名:風信子(フウシンシ)、飛信子(ヒヤシンス)
英名: Hyacinth
開花期:3〜4月
花色:赤、ピンク、黄、オレンジ、白、青、紫
発芽適温:5~20℃
生育適温:5~20℃
切り花の出回り時期:12~3月
花もち:7日前後

ヒヤシンスは、前述したように、水栽培もできる育てやすい植物です。耐寒性が強いため、全国で栽培できます。ヒヤシンスを球根から育てるときは、10月中旬~11月下旬頃が植えつけの適期です。芽出し球根のポット苗も出回るので、苗から育てることもできます。

植物を増やすには、いくつかの方法があります

植物を育てる楽しみのひとつに、大切に育てた株をどんどん増やすことがあります。ヒヤシンスの増やし方を説明する前に、植物はどのようにして増やすことができるのか、まずはその方法について知っておきましょう。

一般的な植物の増やし方には大きく分けて、種による「種子繁殖」と、胚や種子を経由せずに、根、茎、葉などの栄養器官から繁殖する「栄養繁殖」があります。耳にする機会が多い、挿し木や接ぎ木などは「栄養繁殖」です。そのほかにもいろいろな方法があるので、簡単に説明していきましょう。

挿し木
成長期の植物の茎や葉などの部分を切り取って、用土や水に挿して発根させ、新たな株を作る方法。

取り木
枝や茎など親となる植物の一部に傷をつけて、そこから発根させたあとに切り離して、新たな株を得る方法。挿し木での繁殖が難しい場合でも、この方法で増やすことができます。観葉植物や樹木などで多く用いられます。

接ぎ木
植物には、2本の枝が強く交差して接していると、くっついて1本になるという性質があります。この性質を利用して、品種が同じか近縁の枝をつないで増やす方法です。主に果樹や果菜類に用いられます。

株分け
その名のとおり、親となる植物の株を根とともに分けて、複数の株を得ること。冬になっても根は枯れず、毎年花を咲かせる植物(宿根草)に向いている増やし方です。株が育ちすぎて大きくなったものや、老化してしまった植物を若返らせる効果があります。

分球
スイセンやチューリップなどの球根植物に用いられる方法です。文字どおり“球”根を“分”けること。球根類は成長すると、親球から小さな子球(しきゅう)ができます。その子球を切り離して、数を増やしていきます。子球が増えすぎると、親球が痩せたり、花が咲きにくくなったりするので、何年かにいちど、この作業が必要になる植物もあります。

チューリップやスイセンなどは、自然に子球ができるため、手で親球と子球を切り分けることができます。しかし、中には、ほとんど自然分球しないタイプの植物もあります。その場合、ナイフなどで切り分ける「切断分球」や球根の底部をえぐり取る「スクーピング」、切れ込みを入れる「ノッチング」を行なって子球を発生させます。

このほかに、ムカゴや木子(きご)から増える植物もあります。また、家庭の園芸で行なうことはまずありませんが、「組織培養」という手法で人為的に増やす方法があります。

ヒヤシンスを増やす、最適な方法と時期

ヒヤシンスを増やす場合は、前述の方法のうち「分球」の方法を使います。

分球の適期

ヒヤシンスは、花が終わってから葉が黄色く変色して枯れるまでの間に、地中にある球根を肥大させます。つまり、葉が黄色くなってきた頃が、掘り上げのタイミングです。ヒヤシンスの花が咲き終わるのはだいたい4月頃。掘り上げは、5月以降に行うことになります。梅雨に入る前の、6月上旬頃までを目安に掘り上げるようにしましょう。

ヒヤシンスは、ほとんど自然分球しないため、ナイフなどを使って切断分球する必要があります。

知りたい! ヒヤシンスの増やし方「分球」

準備するもの

・土入れ、またはスコップ
・球根を乾燥保存するためのネット
・園芸用の清潔なナイフ

分球の手順

ヒヤシンスの球根を分球させる場合は、以下の手順で行いましょう。

①ヒヤシンスの葉が黄色く枯れてきたのを確認したら、地中から球根を掘り上げます。
②掘り上げた球根は、ネットなどに入れておよそ1か月間、日陰に吊るして乾燥させます。
③球根の底部をえぐり取る「スクーピング」、切れ込みを入れる「ノッチング」などを行います。または、球根の底に浅い切れ込みを入れる程度でも構いません。
④球根を逆さにしてネットに入れ、乾燥させます。
⑤秋を迎える頃には、子球ができてきます。
⑥子球を親球からはずします。
⑦ヒヤシンスの植えつけの適期は、10月中旬~11月下旬。分球させた子球を植えつけます。

コツと注意点

前述したとおり、ヒヤシンスはほとんど自然分球しないため、ナイフでスクーピングやノッチングを施す必要があります。しかし、これらの作業は初心者にはやや難易度が高いため、球根の底に浅い切れ込みを入れる程度にとどめることをおすすめします。秋にできる子球の数は少なくなりますが、失敗なく、ほぼ確実に分球させることができます。

もうひとつ、使用するナイフが清潔であることも大切です。ナイフで底部をえぐりとったり、切れ込みを入れたりする際、切り口から雑菌が入り込み、球根を弱らせてしまう場合があります。使用する前にきれいに洗うのはもちろん、火であぶったり、殺菌消毒したりするといいでしょう。

また、球根を掘り上げた際、根や茎がついているのを見つけても、すぐには取らないこと。根や茎は、よく乾燥させたあとに取り除くようにしましょう。

Credit

記事協力

監修/矢澤秀成
園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。

構成と文・アマナ/ネイチャー&サイエンス

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