2015.02.04
福島第一原発事故 東日本壊滅の危機に最も近づいた「2号機爆発」の危機 第2回
ドキュメント 福島第一原発事故 東電技術者たちが語った「恐怖の瞬間」
サプレッションチェンバー(圧力抑制室)沸騰水型炉(BWR)だけにある装置 で、常時約3000立方cm2(福島第一原発2~5号機の場合)の冷却水を保有しており、万一、圧力容器内の冷却水が何らかの事故で減少し、蒸気圧が高く なった場合、この蒸気をベント管等により圧力抑制室に導いて冷却し、圧力容器内の圧力を低下させる設備。また、非常用炉心冷却系(ECCS)の水源として も使用するCG:NHKスペシャル『メルトダウンⅢ原子炉〝冷却〟の死角』
実は、2号機は12日午前2時55分にRCICが作動していることが確認できた際、運転員が、水源をサプレッションチェンバーに切り替えていた。本来の水源である冷却水タンクの水が残り少なかったためだった。それから実に2日半にわたってRCICが作動し続けたことで、原子炉からもたらされる水蒸気によって、サプレッションチェンバーが異常な高温高圧状態になっていたのだ。このうえに、SR弁から一気に水蒸気がサプレッションチェンバーに流れ込むと、その温度と圧力をさらに上昇させ、破損する恐れさえあった。
吉田は、本店とのテレビ会議の中で、まずは格納容器から気体を外部に放出するベントを行って、サプレッションチェンバーの圧力を下げてから、原子炉を減圧して注水する方向で協議していた。
沸騰する2号機のサプレッションチェンバー2号機のサプレッションチェンバー (圧力抑制室)には3000トンの冷却水がたまっている。RCIC冷却水の水源として流用したため、2日半にわたる原子炉の冷却作業の結果、サプレッショ ンチェンバーは通常の運転ではありえない高温高圧の状態にあった。この状態でSR弁を開放すると、圧力容器から高温高圧の水蒸気がさらに流れ込み、サプ レッションチェンバーを破壊する恐れがあった。同時に、消防車による注水を行うためには、SR弁を開放して原子炉の圧力を開放する必要があった。吉田所長 以下、東京電力の技術者たちは難しい判断を迫られることになったCG:NHKスペシャル『メルトダウンⅢ原子炉〝冷却〟の死角』
技術班の机では、〝安全屋〟と呼ばれる解析担当者たちが、吉田の指示を受けて、2号機の原子炉水位の予測やサプレッションチェンバーの温度や圧力の予測をパソコンを駆使して懸命に試算していた。
午後4時をまわったころだった。テレビ会議で本店と議論をしていた吉田の携帯電話が鳴った。ちょうど同じころテレビ会議では、本店の高橋明男フェロー(58歳)が吉田に呼びかけた。
「吉田所長。ごめんなさい。聞こえますか。吉田所長」
呼ばれた吉田は、誰かと電話で会話を続けていた。
福島第一原発の担当者が「吉田さん今電話に出ています」と伝えた。
高橋がややうんざりといった様子で発言する。