織田信長、ラノベヒロインになる…前代未聞のライトノベル「織田信奈の野望」が与えた衝撃

姫川榴弾 プロフィール

信長と秀吉のツンデレ主従関係

――相良良晴は作中でゲーム「織田信長公の野望」で得た知識を元に、信奈をサポートします。他にも歴史ゲームの影響が見られますが、執筆時、意識した創作物はありますか。

子供の頃からKOEI(現:コーエーテクモ)ゲームのファンで、タイトルはわかりやすさ重視で「信長の野望」のパロディをやらせていただいたのですが、内容は「太閤立志伝」のリプレイを小説にしたいという気持ちがありました。

構想時に影響を受けた作品は、宇月原晴明先生の「信長あるいは戴冠せるアンドロギュヌス」(2002)。この小説は、司馬遼太郎先生の「国盗り物語」(1965)や「新史太閤記」(1968)で見られる信長と秀吉のツンデレ主従関係を、「信長は実はアンドロギュヌス(両性具有)だった」という伝奇設定を用いて恋愛に落とし込んでいて、歴史も伝奇も好きだったので当時夢中で読んでいました。

信長を女性に設定すれば、ライトノベルのフォーマットに変換できて自分でもこういうものが書けるんじゃないかと。この本、中二病要素てんこ盛りで面白いので是非読んでみて下さい。

それからヤマグチノボル先生の「ゼロの使い魔」(2004)。高校生・才人が異世界に召喚。ツンデレ女の子・ルイズの使い魔にされて酷使されつつも、ルイズの危機には毅然と立ち向かうという設定を信長・秀吉の関係にダブらせました。ルイズの台詞「犬!」と信長の「サル!」は同じじゃないかと。才人が単身で殿(しんがり)を務める場面なんて金ケ崎の戦いっぽくて。ヤマグチ先生とは知り合いで、このお話を自分もやらせてくださいとお願いしました(笑)。

ゲームでは、三国志の武将を女体化した「恋姫†無双 〜ドキッ 乙女だらけの三国志演義〜」(2007)の影響が大きく、大勢の武将の性別を変えても歴史ものは描けるんだというお手本にさせてもらいました。

 

ただ、構想中に「戦国ランス」(2006)がリリースされた時は、かなり焦りました。運良く信長が男のままだったので、刊行は大幅に遅れましたが、かろうじてボツにせずに書けました。もしあのゲームで信長が女キャラになっていたら、ネタ被りということで(織田信奈の野望は)ボツにしていたと思いますね。それくらい「戦国ランス」は面白過ぎて…。

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