あくびは気持ちいいですね。でもなぜか、人前でははばかられることになっています。だけど体の素直な欲求なのだから、きっと深い意味があるに違いない。そう思って話を聞いてみると思いも寄らなかったあくびの起源が浮上してきました。それは何? かなり意外な展開です。
あくびも不思議な現象だ。深い呼吸と、口を思いっきり開ける動作、腕や脚を伸ばす動作などが連動して起きる。それらがあたかも自動的に、降って湧いたように生じる。
これらの動作は意識的にもできるけれど、そうやって動きをマネしても、本物のあくびのあの心地よい感じは出てこない。
あくびってそもそも何なのだろう。あくびの生理に詳しい脳生理学者、東邦大学名誉教授の有田秀穂さんにたずねてみた。
「あくびの機能は、いまだに謎が多いのですよ」
あくびをすると覚醒の脳波が出る
人間以外の動物たちもあくびをする。ペットを飼っている人なら、犬や猫、インコ、カメなどがあくびする姿をよく目にしていると思う。それだけ広い範囲の生き物があくびをするということは、あくびの起源もかなり古いのだろうか。
「その通り。あくびの中枢は、脳の視床下部の中にある室傍核という場所です。ここは脳の中でも原始的、つまり進化の過程で古い時代から残っている場所なので、かなり遠い祖先にあたる生き物もあくびをしていたと考えられます」
室傍核が発するあくび指令シグナルは、脳のいろいろな部位に届く。多数の部位を同時に働かせることで、「あくび」という複合的な動作が成立する。なかなか複雑なのだ。
このときに脳波を測定すると、β波に代表される覚醒時の脳波が観察される。
「あくびが体に与える作用として確実にわかっているのは、この覚醒作用です」
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