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シビアアクシデント、CUW配管、 TIP管による直接漏えい② 平成27年度第2回 新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会 [東電核災害の検証・新潟県技術委]

新潟県は、「フィルタベント設備を特別に議論していることにより、安全対策や防災対策において想定すべき事故について、フィルタベント設備を使用する事故しか考慮しないとの誤解やフィルタベント設備が機能すれば万全との誤解が生じている。」と表明した。(委員会に提出公開した文書、平成27年8月31日付「フィルタベント設備を使用する事故想定について」)

新潟県が挙げているフィルタベント設備を使用しない事故想定の中には、「◎格納容器バイパスによる直接漏えい」がある。RCIC蒸気配管破断、  S/P配管破断、CUW配管破断、 TIP管破断の4例が例示されている。

地震などで原子炉がスクラム停止する時などに、放射能を原子炉内に封じ込める≒原子炉の格納容器を環境から隔離するため格納容器を貫通する配管等に自動的に閉止する弁を設置してある。格納容器を貫通する貫通部の内側と外側に2重で設置されており、内側を第1隔離弁、外側を第2隔離弁と呼ぶ。内側の第1隔離弁は交流駆動、外側の第2隔離弁は直流駆動にするなど、同じ要因で同時に故障し隔離不能に陥らないよう設計されている。隔離されなければ、出来なければ、格納容器が破損しなくても、放射能を含んだ炉水、水蒸気が格納容器外に直接出ることになる。

隔離弁_pho_03.jpg
MSIV主蒸気隔離弁とRCIC蒸気配管破断

佐藤暁委員は、雑誌「科学」8月号Vol.15No.8の論文で二つの直接漏洩事故を想定している。MSIV主蒸気隔離弁とRCIC蒸気配管破断である。MSIV主蒸気隔離弁は故障して閉止不能になった実例がある。1本の主蒸気管のMSIVが、米国のMcGuire1プラントで発生した弁棒が横荷重で曲がって閉まらない故障が大きな地震で第一と第二のMSIVでおこる事故想定で、経過解析。「大量の放射性物質が、環境に放出されることになります。」
「時間の猶予は、閉止不能の程度にもよりますが、最悪は1時間足らずとなってしまい、放出量にしても、停止直後の原子炉に内蔵されている数十万TBqのCs-137、数千万TBqの放射性ヨウ素のうち、それぞれ数%、数十%のオーダーに達し」「50000TBqのセシウムが放出」つまり東電の想定0.00005TBqの1億倍とした。

格納容器を貫通する貫通部の内側と外側に2重で設置してある隔離弁。格納容器と外側の間でRCIC蒸気配管の破断とSBOが重乗したと事故想定。東電が想定する大LOCAは直径35㎝の管の全破断だが、RCIC蒸気配管配管が15cmと細く、予想破断発生頻度は約3倍高い(NRCの研究レポートNUREG-1829)。SBO全交流電源喪失で交流駆動の第一隔離弁は、閉止不能。「破断口から噴出される蒸気には、水素と放射性物質が含まれるようになり」ますが「どうすることもできません」。

S/P配管破断。S/P:Suppression Pool,サプレッションプールはS/C:Suppression Chamber,サプレッションチェンバ、圧力抑制室、ウェットウェル(W/W:Wet Well)とも呼ばれる。
様々な非常用給水ポンプへの配管や水蒸気が流れ込む配管がある。この配管がRCICの駆動蒸気配管と同様に破断すると、原子炉内の水蒸気や炉水が直接漏洩する。

CUW:Reactor Water Clean-up System、 冷却材浄化システムは、残留熱除去系:RHR及び圧力容器底部から原子炉冷却材の一部を常時連続的に抜き出し、ろ過脱塩装置でろ過脱塩し、浄化された水は給水系を経て圧力容器に戻すか液体廃棄物処理系若しくはサプレッションチェンバに排出する。

CUW東通siryo1-.jpg

TIP配管 原子炉核計装系:reactor neutron monitoring system(原子炉の中性子監視システム): nuclear instrumentation system(核計装)の移動式炉心内計装・トラバース式中性子検出器:Traversing Incore Probing System(TIP)

設備構成を簡単に見ると図の様に炉心から直接に格納容器の外のTIP室まで、隔離弁無しに管が通っている。


Figure 4-7 Potential containment bypass transport pathway through open TIP guide-2.jpg

東電核災害1F1号機では、このルートで放射能、水素ガスの漏洩が起きた可能性が非常に高い。公表されたデータでは1 号機の建屋1 階のTIP 室の線量が異常に高くなっている。過酷事故解析コードHUSAC(Hokkaido University SevereAccident Code) で事故解析すると、1号機の原子炉圧力容器(RPV)からの漏洩は溶融核燃料の熱で熔け口ができた中性子計装管を通じた漏洩、その熔け口の漏洩断面積が増加=漏洩量の増加しながら漏洩が発生したとの事故シナリオがD/Wの圧力実測値などと整合的に成立することが明らかになっている。
参照・・「福島第一原子力発電所 1 号機を中心とした事故の分析と教訓抽出に関する研究」(小林正英 http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/handle/2115/58751

TIP_120705_03-j-04b.jpg

つまり、東電核災害で燃料溶融が起きた3原子炉で1基でおきている。メルトダウンしたら格納容器が健全でも、配管が健全でも、隔離弁が健全でも高い確率で◎TIP管ルートで格納容器はバイパスされ直接漏えいが生ずることを意味する。メルトダウンした炉心を再冠水して溶融の進展を停めても、管の中を放射能入り水蒸気に変わって放射能入り炉水が流れ、格納容器の外のTIP室に出る。TIP室、原子炉建屋からの環境放出を抑える術を考えておかなければ!

原子炉核計装系、移動式炉心内計装は別にまとめる。


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NO NAME

TIP菅に関する解説ありがとうございます。盲点でした。県のまとめの資料にも反映されていますが、事故による放射性物質拡散の経路についてはこれまでの想定を大きく拡充する必要がありますね。
by NO NAME (2015-09-25 20:03) 

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