フランス啓蒙期の思想家、ジャン=ジャック・ルソーが1755年に発表した著作。日本だと江戸時代に当たります。彼は平等主義思想を持ち、本作と「社会契約論」で、その後のフランス革命に大きな影響を与えました。

 この本はタイトル通り、人間の不平等について考察しています。不平等には「自然的、身体的不平等」と「社会的、政治的不平等」の2種類があるとし、前者は背の高さや頭の良さなど先天的なもの、後者は財力や権力など、社会において発生している不平等のことを指しています。この論文ではどうして社会的不平等が発生してしまったのかに問題の焦点を当てています。

 簡単に流れを説明すると、人は初め「自分が生存している」という感情から始まり、自分の子孫を残すためという自己保存の意識が中心でした。そして狩りや耕作など生活の知恵を獲得していく中で、他者との比較意識が芽生えてくるようになります。やがて土地などの私有財産を多く持つ者が力のある者とされ、支配と隷属といった強者と弱者の区別がはっきりとしてきます。強者は自分たちの力を、弱者は自分たちの窮乏を主張するように。ルソーはこれを無秩序な状態ととらえ、無秩序を生じさせないため、強者は自分たちの都合のいいよう、弱者を自らの保護者とする「法律」というルールを思いついたと主張します。こうすることで強者と弱者の格差を固定化し、不平等が起こったというわけです。

 彼の名言で「人間は自由なものとして生まれた。しかしいたるところで鉄鎖につながれている」という言葉があります。鉄鎖は法律を意味し、法律は秩序を守る反面、自由を拘束していると指摘しています。現代にも当てはまることがあるのではないでしょうか。

 自由とは何か、彼の思想を現代の生活に落とし込んで考えてみると、また新たな発見があるのかもしれません。(鞘)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA