櫻井翔×荒川静香さん 日テレ北京五輪キャスター単独インタビュー「子供たちが新しいスポーツを始めるきっかけに」

スポーツ報知
日本テレビ北京五輪メインキャスターを務める荒川静香さん

 4日に開幕する北京五輪で、日本テレビのメインキャスターを務める2006年トリノ五輪フィギュアスケート女子金メダリストの荒川静香さん(40)と、スペシャルキャスターの嵐の櫻井翔(40)がスポーツ報知の単独インタビューに応じ、五輪への熱い思いを語った。2人は10年バンクーバー五輪から冬季4大会連続のタッグ。伝え手として、リアルタイムの興奮を届ける。(取材・構成=高木 恵、小林 玲花)

 櫻井は08年夏季北京大会から8大会連続、荒川さんは10年バンクーバー大会から冬季4大会連続で日テレの五輪キャスターを務める。

 櫻井(以下、櫻)「五輪の持つ大きな渦のようなエネルギーを取材をしていて感じます。選手にとってはもっとそういう大会なんだろうなと。平昌でスピードスケートを目の前で見て思ったんです。『人の脚を使ってあそこまでスピードが出るのか』って。興奮しました。以前、荒川さんがおっしゃっていてそうだなと思ったんですけど、非日常のスポーツが多いのが冬季大会ですよね」

 荒川(以下、荒)「これだけの競技が集まるイベントは五輪ならでは。まさに祭典。選手の頃は、いつもと違う環境に、いかにいつもの自分を落とし込めるかという難しさと面白さがありました。同じ人が出ていても同じカラーがないというのも五輪の面白さですよね。4年分の積み重ねがありますから」

 知識、経験、選手とのつながり。回を重ねるにつれて、報道に携わる者としての引き出しも増えた。

 櫻「冬の最初はバンクーバーだったんですけど、初めてのことで僕も浮足立っていて、今思えば半分も伝えられていなかったんじゃないかなっていう後悔の方が大きいです。回を重ねるごとに、お会いする回数が増えていく選手もいますし。高梨沙羅選手とか、羽生結弦選手、宇野昌磨選手…。信頼関係ができていくということは、人と人だから当然ありますよね」

 荒「フィギュアスケート以外の競技、選手と出会うことによって、アスリートのことを学ぶ機会が増えました。どのように伝えるべきなのか、お茶の間目線で伝えるポイントもありつつ、アスリートとして伝えるポイントもありつつ。知ったかぶらないということはすごく気をつけています。想像でしゃべりすぎてはいけない」 

 東京五輪で日本は金27、銀14、銅17の史上最多58個のメダルを獲得し、北京にバトンをつないだ。

 櫻「夏の大会から半年もたたずに行われる、近年では珍しい大会だと思うんですよね。スノーボードの平野歩夢選手は東京大会はスケートボードで出場し、わずか半年で似て全く非なる競技に戻ってきた。すごいなと」

 荒「夏はきょうだいでのメダルが多かったので、冬もスピードスケートの高木選手ら姉妹に注目しています。妹の美帆さんは個人種目では初の金メダルにかける思いが強いのでは。1500メートルが楽しみです。フィギュアスケート男子は誰がメダルをどのように取るのか。開始早々盛り上がる一つのポイントだと思います」

 フィギュアスケート男子は羽生結弦が94年ぶりの3連覇に挑む。

 荒「羽生選手は北京挑戦を明言したのが昨年末の全日本選手権。2大会連続で金メダルを取るということは彼の競技人生のプランにあったようなんです。でも北京は考えていなかったと。自分の中でプランしていなかったものを、どう開拓するのかというところが楽しみでもあります。羽生選手は五輪の戦い方を知っている選手。3回目にして3連覇がかかる。彼以外の選手には想像も及ばない境地で戦うことになります」

 平昌五輪銀メダルの宇野昌磨、昨季世界選手権銀メダルの鍵山優真と、全員が表彰台を狙える最強布陣がそろった。

 荒「宇野選手も今、非常に上り調子。年下の鍵山選手の押し上げに、かなり刺激されたと常日頃言っています。後輩に『五輪はどう戦うべきなのか』というのを見せたいのではないでしょうか。そういった先輩たちが間近にいる鍵山選手は心強いと思います。背中を追ってきた世代ですから。それぞれ特徴は違うのですが、3選手に言えることは質の高い技を持っていること」

 新種目のスキージャンプ混合団体ノーマルヒルは高梨沙羅、小林陵侑の男女両エースが初代金メダルをかけて飛ぶ。

 櫻「高梨選手はずっと取材させていただいているんです。最近もお話を伺ったんですけど『4年でどう変えたの?』って聞いたら『全く今までのジャンプを1回ゼロに戻して構築し直した』と。その高梨選手がどういうジャンプをするのか、遠い親戚のような気持ちで見届けたいです(笑い)」

 4年に1度の舞台に全力を投じるアスリートの思い、人生をかけた闘いを伝える側として、心がけていることがある。

 櫻「競技経験者じゃないので、背伸びしないというか。想像で話すことはしないことですかね。僕は選手と視聴者の間に立っているだけなので、基本ファクトベース。勝手に自己解釈した代弁はしないようにしています」

 荒「私はこういうときにこう感じるけど、他の選手は違うかもしれない。知ろうとする目線で接することです。フィギュアスケートでいうと、若い選手はシーズンの始まりから全力マックスで来るけど、ベテランは照準をもっと後ろに合わせている。そこをすくって伝えるようにしています。同じ試合でも目的が違います。勝てていないから不調と伝えられて、すごくつらい思いをした経験が私自身あったので」

 櫻「なるほど。選手それぞれ違いますもんね」

 東京から北京へ―。今回はどんなドラマが生まれるのだろうか。冬季4大会連続タッグの2人も臨戦態勢だ。

 櫻「時差のない東京大会でスポーツの魅力を多くの人が知ったと思います。同じアジア圏での開催なので、あのリアルタイムの興奮を今回も味わうことができます。競技の魅力を一人でも多くの人たちが知って、子供たちが新しいスポーツを始めるきっかけになればいいなと。勝ち負けはつくのですが、魅力の部分を生々しく伝えることができたら」

 荒「コロナ禍で世界的に難しい状況で行われる五輪になります。その中で前を向き、自分のできることに力を注ぐことの素晴らしさを伝えるのもアスリートの力。世の中の人が共感できる部分を見つけて力にできるように、お伝えしていきたいです」

 ◆櫻井 翔(さくらい・しょう)1982年1月25日、東京都生まれ。40歳。95年10月にジャニーズ事務所入所。99年に嵐としてシングル「A・RA・SHI」でデビュー。2006年から日テレ系「news zero」月曜キャスター。同局系選挙特番ほか、五輪中継キャスターは北京で夏冬8大会連続。19年ラグビーW杯では同局系中継でスペシャルサポーターを務めた。

 ◆荒川 静香(あらかわ・しずか)1981年12月29日、東京都生まれ。40歳。プロフィギュアスケーター、日本スケート連盟副会長。幼少時代は仙台で育ち、5歳からスケートを始める。小3で3回転ジャンプを跳ぶ。東北高1年の時に98年長野五輪出場。早大教育学部卒業後、プリンスホテルに所属。2004年世界選手権を制し、06年トリノ五輪でアジア選手初の金メダルを獲得した。

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