映画「ドライブ・マイ・カー」の霧島れいか、SUPERNOVAゴニルと日韓エンタメ談議

スポーツ報知
日本と韓国のエンタメ文化の違いなどについて語り合った霧島れいかとゴニル

 米アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞した映画「ドライブ・マイ・カー」(濱口竜介監督)で、主人公の妻を好演した女優の霧島れいかと、SUPERNOVAのゴニルの対談がこのほど、都内で実現した。2人は撮影現場での習慣や国民性の違いなど、日韓のエンタメ事情を語り合った。

 ―まず、ゴニルさんに「ドライブ・マイ・カー」の感想と韓国での評判をお聞きしたいと思います。

 ゴニル(以下、ゴ)「韓国人は見る目が厳しいですが、『ドライブ・マイ・カー』のことは、知り合いの映画監督も褒めていました。上映時間が約3時間ですが、長く感じないですよね。飽きさせないで、感情を最後まで持っていく流れが良かったと思います」

 霧島(以下、霧)「物語が深いですよね。でも、誰にでも起こりうること。それが、多くの方に共感してもらえる要因だと思います」

 ゴ「霧島さんの演技では、声が印象的です。映画の雰囲気と霧島さんの声がぴったりでした」

 ―霧島さん、米アカデミー賞の授賞式のことも教えてください。

 霧「とにかく楽しかったですね。豪華で派手で、映画のお祭り。あの雰囲気はなかなか味わえない。子供の頃から見ていたハリウッドスターが間近にいてオーラに圧倒される。夢が広がるし、価値観がガラッと変わる。(夫役の)西島秀俊さんも少年のように楽しそうだった。私が特に思ったのは、もっと若い俳優さん、女優さんに、この経験をしてほしい、ということ」

 ―韓国映画では、「パラサイト 半地下の家族」が一昨年の米アカデミー賞で作品賞を含む4部門を獲得しました。

 ゴ「パク・チャヌク監督やポン・ジュノ監督を筆頭に、韓国では世界に通用する作品を作ろうとしています。K―POPも元々は国内向けのコンテンツでしたけど、日本でも韓流ブームになって、だんだんと世界を意識するようになった。コロナ禍ではネットフリックスなどの動画配信が浸透して『愛の不時着』『イカゲーム』も世界的にヒットしましたね」

 霧「韓流ブームになる前から韓国の作品が好きです。特にイ・チャンドン監督の作品が好きですね。韓国の作品には勢い、エネルギーを感じる」

 ゴ「韓国の映画やドラマは、(準備に)すごく時間をかけます。連続ドラマでもキャスティングされたら、撮影の3か月前くらいから出演者同士で一緒に時間を過ごして飲みに行ったり、趣味や特技について語り合ったりします。昔はケンカする人もいました。リハーサル以外でも交流を持ちます。監督は俳優の人間的な特徴を知った上で演出するので、俳優も役に集中できる」

 霧「日本には、それほど時間をかける習慣がないので、うらやましいです。映画やドラマでは、出演者同士があまりコミュニケーションを取らないまま撮影に入ることも珍しくない。そこに差を感じますね」

 ―「ドライブ・マイ・カー」の濱口監督はどうだったんですか?

 霧「濱口監督は、日本人監督では珍しく、じっくりと時間をかけるタイプです。何度もリハーサルをしました。濱口監督のことは最初から直感的に『この人、すごい人だ』と思ったし、海外映画祭に行ける可能性もあるかな、という予感があった。アメリカのアカデミー賞までは想定外ですけど。私自身はその作品に参加できて本当にラッキーでした」

 ゴ「作品を作る時、韓国は家族のように皆で同じ船に乗る感じ。日本は、それぞれが船に乗って、同じ目的地を目指す感じですね」

 霧「確かにそうですね。それぞれが責任を果たすというのが日本人の良さでもあると思います。あと、韓国の俳優さん、女優さんは、とても訓練されている感じがします」

 ゴ「韓国では俳優は大学の演劇学科に行ってダンス、歌のレッスンを受けるのが一般的です。最近ではもっと若い年代で事務所からスカウトされるケースもあります。でも、お芝居の勉強をした人より、していない人の方がうまい場合もあるので、面白いですよね」

 ―演技のレッスンはどんな内容ですか?

 ゴ「自分が演じる役柄について30分くらい、インタビューを受けます。自分自身ではなく、演じる役柄として趣味や経歴など台本に書かれていないことも答えないといけない。それをやると、役柄と自分が近づいてくる。そして、セリフを自然と言えるようになる」

 霧「瞬発力が身につきそうですね。大事なことだと思います。『ドライブ・マイ・カー』では濱口監督が役柄のバックグラウンドを全部、作ってくれました。私たちはそれを読んで、役について理解した。丁寧なものづくりは、日本も取り入れていくべきですね」

 ゴ「韓国では自国のエンタメがみんなから愛されている感覚もある。日本で『好きな音楽は何ですか?』と聞けば、『アメリカのロック』とか『イギリスのポップス』とか、さまざまですよね。韓国人は必ず『K―POP』と答えます。自分の国の文化が大好きなんです」

 霧「日本は出る杭は打たれるし、国内の文化に厳しい面がありますよね」

 ゴ「韓国人も酷評することはあります。パッションが強い国民性なので。映画を見たら、みんな映画評論家みたいに激しく議論をします。映画を見る文化が身近にあって、ワインやビールを飲みながら見られる映画館も人気があります」

 ―是枝裕和監督の映画「ベイビー・ブローカー」は韓国でも話題になっていますね。

 ゴ「そうですね。ソン・ガンホ先輩がカンヌで最優秀男優賞を受賞したのはビッグニュースになっています。僕も是枝監督や岩井俊二監督、北野武監督、西川美和監督の作品が大好き。まずは韓国で頑張って、チャンスがあれば、日本の作品にも挑戦してみたい」

 霧「私も違う習慣や文化の方々に興味があるので、機会があれば、ぜひ交流してみたい。海外の作品にも出てみたいです」

 ◆霧島れいか(きりしま・れいか)1972年8月5日、新潟県生まれ。49歳。高校卒業後、モデルとして芸能界デビュー。98年から女優としても活動し、映画「運命じゃない人」(2005年)、「ノルウェイの森」(10年)、「しあわせのパン」(12年)、「家族ごっこ」(15年)などに出演。身長163センチ。

 ◆ゴニル(ごにる)1987年11月5日、韓国・ソウル生まれ。34歳。2007年に超新星として韓国でデビュー。09年に日本デビュー。18年にSUPERNOVAに改名。グァンス、ジヒョクと組んだユニット「Funky Galaxy」としても活動。21年「Asia Artist Awards」でフォーカス俳優部門を受賞。身長187センチ。

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