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磁気ディスク②-消費電力の測定

測定したハードディスクの仕様

 今回はハードディスクの消費電力を測定しましたので報告します。下表に測定対象のハードディスクの性能仕様を示します1)。IO-DATA製の型番HDL-LA2.0、記憶容量2TB、寸法は中辺が120mm(75mm以上に該当)の製品です。エネルギー消費に関するスペックは製品の仕様書には記載されておらずメーカーのサイトを綿密に探して見つけた値であり、一般的には非常に探すのが難しいものであることが分かりました。サイトには省エネ法の区分「B」、エネルギー消費効率0.0039(W/GB)が記載されていましたが、省エネ基準を算定するためのディスクの回転数やディスク枚数は記載されておりません。

表-1 消費電力を測定したハードディスクの性能仕様

項 目 内  容
メーカーIO-DATA
型 番HDL-LA2.0
フォームファクター3.5型
インターフェースUSB 3.0/USB 2.0
記憶容量2TB (2,000GB)
ディスク枚数2または3枚(区分「B」より)
ディスク回転数不明
エネルギー法区分区分「B」
エネルギー消費効率0.0039 W/GB
外形寸法39(W)×185(D)×120(H)mm
質  量1.1 kg
出所)IO-DATA公式サイト 
注)購入は2014年、既に生産は終了している様子。

 エネルギー消費効率は以下で算定されます2)。エネルギー消費効率の詳細については本サイトの「磁気ディスクのエネルギー消費効率」にも記載していますので参考にしてください。

 エネルギー消費効率=消費電力(W)/記憶容量(GB)

 ここで消費電力とは、告示では「電源を入力し、ディスクが回転している状態で、直ちにデータの書き込み及び読み取りをすることが可能な状態(レディアイドルモード)を測定」とあります。従って、エネルギー消費効率から逆算したレディアイドル時消費電力は以下の通りです。

 レディアイドル時消費電力=0.0039×2,000=7.8W

 また、告示によると省エネ法の区分「B」の基準エネルギー消費効率は以下の式で算定されます。

 Es=exp(2.98×ln(N)-31.2)
 ここに、N:ディスクの回転数(rpm)

 本製品の回転数は分からないため、ここでは回転数を5,400回転/分または7,200回転/分と仮定します。このとき、基準エネルギー消費効率は以下と算定されます。

 Es=exp(2.98×ln (5,400)-31.2)= exp(2.98×8.594-31.2)=0.00374<0.0039
 Es=exp(2.98×ln (7,200)-31.2)= exp(2.98×8.882-31.2)=0.00881>0.0039

 したがって、本製品の回転数が5,400回転/分の場合は省エネ基準を未達成、7,200回転/分の場合は省エネ基準を満たしているということが分かります。

消費電力の測定結果

 本製品を使って、ラトックシステム(株)のRS-WATTCH1ワットチェッカーを用いて消費電力を測定しました。本製品はテレビの録画用に接続されているため、テレビ(東芝REGZA 32RI)に接続した状態で消費電力を測定しました。下図に測定した結果を示します。

注)IO-DATAのハードディスク( HDL-LA2.0 )をテレビ(東芝REGZA 32RI)に接続してワットチェッカー(RS-WATTCH1)で測定。

 上図から分かるようにテレビの電源を入れる前もわずかな電力(1.5W程度)を消費しています。テレビの電源をONにすると、一瞬15W程度の電力が消費されますが、直ぐに4.6W程度に戻りレディアイドルモードになっています。この状態は常に一定ではなく間欠的に6W近くの電力になっています。その後録画リストから選択して再生を開始すると5.5W程度の電力となってほぼ一定値が続きます。

 再生を終了して再びレディアイドルモードにし、さらに録画を開始すると再生時とほぼ同様の5.3Wの電力が消費されているのが分かります。その後レディアイドルモードに移行しますが、時間がたつと立ち上がりが無くなっているのが分かります(レディではないアイドルモードになっているのでしょうか)。テレビのスイッチをOFFにすると一瞬電力は上がりますがONの時ほどではありません。そしてスイッチOFF後も最初と同様1.5W程度の待機電力が続きます。

 ハードディスクの消費電力は再生、録画時でも5.3~5.5Wと大きな電力ではありませんが、レディアイドル時の電力は再生、録画の消費電力とあまり変わらない電力を消費しているので、テレビをつけている間はハードディスクの電力も消費していると考えて良いでしょう。そしてテレビのスイッチを切っても一定の待機電力は消費していることにも注意が必要です。

 各モード時の消費電力量を以下にまとめます。

 待機電力(テレビOFF):1.5W
 レディアイドル時:4.6W
 録画再生時:5.5W(録画リスト閲覧時も同じ)
 テレビ録画時:5.3W
 

 これらの測定値は、前回の報告(「磁気ディスク①-省エネ性能」)でメーカーのカタログから整理した3.5インチ、2TBのハードディスクと比較すると以下の2つの製品の丁度中間に入る消費電力となっていました。
 WD2005FBYZ 2TB、3.5インチ、7,200rpm、動作時8.1W、アイドル時5.9W
 WD20EZRZ  2TB、3.5インチ、5,400rpm、動作時4.1W、アイドル時3.0W

 なお、本製品のスペック上のエネルギー消費効率は0.0039W/GBであり、記憶容量は2,000GBであるため、先に示したようにレディアイドルモードの消費電力は7.8Wと計算されましたが、今回の測定値(4.6W)はスペック値よりもかなり小さな値が得られていることが分かります。告示に書かれたような正確な測定方法ではないためと思われます。

パソコン内のハードディスクの消費電力

 以前の報告でノートパソコンの消費電力を測定しました。ノートパソコンにはハードディスクが内臓されているので、その消費電力はどのくらいなのでしょうか。パソコンのCPUの処理やディスプレイの表示などと比べてどの程度の電力消費割合なのかを調べてみました。

 パソコンに使われるハードディスクには2.5インチと3.5インチがありました。ノートパソコンの内蔵用ハードディスクには2.5インチのものが使われています。2.5インチハードディスクの消費電力をメーカーのカタログから調べた結果が下表です。アイドル時(低電力アイドル時)は0.55~0.85W、動作時(リード/ライト時)は1.5~2.1W、スリープ時は0.25Wと非常に小さい消費電力となっています。

表-2 2.5インチハードディスクの消費電力

項   目WD5000
LPLX
WD10
SPSX
MQ01AB
ACF050
MQ04AB
F100
MQ01AB
D100
MQ04AB
D200
記憶容量(TB)0.510.5112
インターフェースSATASATASATASATASATASATA
ディスクサイズ2.5インチ2.5インチ2.5インチ2.5インチ2.5インチ2.5インチ
回転数(rpm)720072007200540054005400
消費電力
(W)
低電力アイドル時0.850.850.80.60.550.6
リード/ライト時222.11.651.51.65
スリープ時0.250.25
エネ消費効率(W/TB)1.70.851.60.60.550.3
出所)ウエスタン・デジタル社公式サイト、東芝公式サイト
注)WD5000LPLX、WD10SPSXはウエスタン・デジタル社の製品、他は東芝の製品

 これと、前回測定したパソコンの消費電力と比較してみます(パソコンの消費電力については「コンピュータ②-消費電力の測定」を参照ください)。その結果、アイドル時は3.7~5.7%、動作時は7.5~10.5%と非常に低い割合となっています。一方、スリープ時はハードディスクの消費電力が6割以上を占めています。スリープ時はディスプレイもOFFになっておりCPUも使用されていないためハードディスクの消費電力が主となっているためと思われます。

ノートパソコンハードディスク割合(%)
低電力アイドル時(W)150.55-0.853.7-5.7
リード/ライト時’W)201.5-2.17.5-10.5
スリープ時(W)0.40.2562.5

まとめ

 今回はテレビの録画用に使用しているハードディスクの消費電力を測定した結果を報告しました。対象となったハードディスクは2TBで2014年に購入した機器です。レディアイドル時(テレビの電源がONで録画、再生を待っている状態)の消費電力が4.6Wであり、録画、再生時は5.3~5.5W、待機電力は1.5Wと測定されました。ハードディスクは録画も再生もしていなくてもテレビがONの時は一定の電力を消費していることに留意する必要があります。また、テレビOFF時でもハードディスクによって、0.8~2.3Wの待機電力があることが分かりました。

 ハードディスクに関しては、仕様書等から省エネに関する情報を見つけることが非常に難しいということが分かりました。多段階評価などが導入されていないこともあってか、消費電力や基準エネルギー消費効率を算定するためのディスク枚数、ディスク回転数などは分かりませんでした。しかしエネルギー消費効率は記載されていましたのでそれと記憶容量から計算したレディアイドル時の消費電力は、今回測定した値(4.6W)よりはかなり大きな値となっていました。告示に示された測定方法に準拠すると異なる数値になるものと思われます。

 前回測定したパソコンの消費電力における内臓の2.5インチハードディスクの消費電力の占める割合をカタログから調べると、動作時やアイドル時は概ね10%以下ですが、スリープ時は6割以上の割合となっていました。スリープ時はディスプレイがOFF、CPUも使用されていないためハードディスクの消費電力が主となっているためです。

<参考文献>
1)IO-DATA 公式サイト
2)経済産業省の1999年告示195号(廃止・制定)「磁気ディスク装置のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等」、最終改正2021年告示96号