MAINICHI AUCTION SALE 778 Part1 ASIAN ANTIQUES MAIN SALE

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19 APRIL 2024 ASIAN ANTIQUES MAIN SALE 古美術メインセール 778 第1部

第1部

2024年 4月19日(金)

12:00

Lots 1-194

ご参加の前にP.6「カタログの読み方」を必ずご確認ください。

¥ 200,000~300,000

¥ 200,000~300,000

¥ 200,000~300,000

1 絵唐津柳草花文四方筒茶碗 H10.6×W9.4×9.3cm 箱付 2 絵唐津四方茶碗 H8.4×W11.4×11.6cm 箱付 3 絵唐津茶碗 H9.2×W11.2×11.5cm 箱付
1 2 3 8 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

4

絵唐津葦乗羅漢文筒向付 H10.1×W7.3cm 箱付

参考文献:「野趣の美 古唐津の流れ-桃山から江戸-」(読売新聞西部本社刊 1993年)       No.72に同手作品掲載

¥ 800,000~1,300,000

桃山時代所産の筒向である。灰色のざんぐりとした釉が薄掛され、総体に貫入があらわれて いる。胴の三方に鉄砂で文様が描かれており、主文の葦乗羅漢は葦葉に乗り揚子江を渡った とされる達磨大師の伝説から着想を得た図案で、絵唐津の器上に見られるものとして希少で ある。畳付は露胎しており、土は煉瓦色に赤みを帯びている。

別角度

9 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

5

¥ 1,500,000~2,500,000

絵唐津秋草文向付(5点) H5.7~6.2×W16cm 箱付
10 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

6 唐津水指 H14.1×W17.8cm 箱付

¥ 150,000~250,000

7 斑唐津徳利 H10×W6.3cm 箱付

¥ 100,000~150,000

8 朝鮮唐津耳付花入 H24.5×W12.4cm 箱付

¥ 400,000~600,000

6 7 8 11 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

9

絵唐津草文向付 H5.2×W15.9×15.9cm 箱付

¥ 200,000~300,000

10

唐津平茶碗 H4.4×W16.3cm 箱付(書付有)

¥ 100,000~150,000

11

絵唐津草文向付 H6×W16.1×16cm 箱付

¥ 150,000~250,000

9 10 11 12 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

12 絵唐津沓茶碗

¥

13 絵唐津沓茶碗

¥

H8.7×W16.9×13.1cm 箱付
300,000~500,000
H8×W16.3×14.5cm 箱付
300,000~500,000
13
12 12(別角度)
13 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
13(別角度)

14

絵唐津沓茶碗 H8×W16.7×12.9cm 箱付

¥ 200,000~300,000

15

唐津茶碗 H7×W10.8cm 箱付

¥ 500,000~800,000

14 15 14 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

唐津皮鯨茶碗 H7×W13.4×11.8cm 箱付

¥ 400,000~600,000

17 瀬戸唐津茶碗 H7.3×W14.3cm 碌々斎箱

¥ 300,000~500,000

16
17 15 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
16

¥ 500,000~800,000

19 天目茶碗・唐物天目䑓  [2点セット]

天目茶碗/ H6.8×W13.4cm  紀州家傳来之内 小堀宗明箱  唐物天目䑓/ H6.5×W15.6cm  圓能斎箱

¥ 800,000~1,300,000

19 18 16 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

20

奥高麗茶垸 銘 伊勢のあかつき H8.6×W14cm 小堀宗友箱

¥ 2,000,000~3,000,000

高麗茶碗の優品で、遠州流七世・小堀宗友により奥高麗 茶碗と極められている。

見込の深い碗形で、広く張った腰から丸みを帯びて立ち 上がり、口縁でわずか外反している。印象的な強く括れ た高台は露胎し、内に縮緬があらわれている。たっぷり と掛けられたたまご色の釉薬はところどころ玉垂れとな り、総体の貫入と調和して景色をなしている。胎土は赤 みを帯び、釉裏からほんのりと発色して「伊勢のあかつ き」の器銘が首肯される作行である。

17 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

21

雲鶴筒茶碗 H9.5×W10cm

箱付 箱蓋表の字は小堀権十郎 岐阜織甚伝来  文献:座右宝刊行会編 「世界陶磁全集 第7巻 茶器篇」(河出書房刊 1955年) No.47下に掲載 同文献付 ¥ 5,000,000~8,000,000

18 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
見込

南鐐紋唐草彫風爐 他[8点セット] 南鐐紋唐草彫風爐(H23.5×W34.3cm)を含む、南鐐紋摘肩衝釜、南鐐紋唐草彫瓢形水指、南鐐紋唐草彫建水、 南鐐紋唐草彫杓立、南鐐紋唐草彫蓋置、南鐐紋唐草彫瓢頭火箸、南鐐紋唐草彫鐶の計8点セット  各皆具ノ内 総重量約12191g 各淡々斎箱

¥ 1,500,000~2,000,000

22
20 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

唐銅雷紋帯欄干風爐・松の図肩衝釜 [2点セット] 唐銅雷紋帯欄干風爐/H15.3×W22.5cm  松の図肩衝釜/H14.5×W15.3cm  箱付 各長野烈極札

¥ 800,000~1,300,000

風炉はしっとりとした潤みのある唐銅の肌に獅子噛の鐶付が付き、前面に扇面形の火口、背 面に松川菱形の風口を設ける。また肩と胴にそれぞれ巡らされた雷文繋ぎが全体を引き締め、 清玄な印象を与える。一方で釜は口造りを輪口とし、肩に蕨の鐶付を付ける。胴の前後に浜 松文が鋳出され、その景色は滑らかな釜肌と相俟って瀟洒な空気を醸し出している。

共に釜師である長野烈の極札が付随し、極めでは風炉を慶長年代後期の博多芦屋、釜を江戸 前期の伊勢芦屋のものとしている。

23
21 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

24

交趾鴨香合 H4.7×W6×4.5cm

箱付 箱蓋表の字は一燈(箱蓋裏に古筆了信極札)  文献:加藤義一郎編     「形物香合圖鑑 第一輯」

(京都美術青年会刊 1941年)     P.35に掲載 同文献付

¥ 500,000~700,000

25 薩摩茶入 銘 春雪 H8×W6.4cm  箱付(箱蓋表の字は小堀政尹) 小堀宗慶外箱  仕覆3点、挽家付

¥ 500,000~800,000

26 瀬戸茶入 銘 茶臼屋 H12.2×W6.1cm  箱付 小堀宗慶外箱(銘 橋杭) 仕覆3点付

「浅田家蔵品展観入札」(東京美術倶楽部 1934年) 目録No.106に掲載 同目録付

¥ 800,000~1,200,000

24 25 26 22 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

27

備前緋襷茶入 銘 あかつら H10×W7.9cm 底部に掻き銘「吉」  箱付 箱蓋表の字は金森宗和(古筆了延極札) 仕覆2点、替蓋付

「播州某氏所蔵品入札」(大阪美術倶楽部 1917年) 目録No.71に掲載

「當市上野旭松庵所蔵品入札」(京都美術倶楽部 1925年) 目録No.129に掲載 同目録付

「當地田中禾水氏所蔵品入札」(大阪美術倶楽部 1934年) 目録No.106に掲載 同目録付

¥ 1,400,000~1,800,000

28 出雲焼瓢箪茶入 H7.6×W6.3cm  箱付 仕覆2点付

「某家所蔵品入札及売立」(京都美術倶楽部 1939年) 目録No.81に掲載 同目録付

¥ 1,400,000~1,800,000

23 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

29

美濃伊賀耳付水指 H21.2×W20.8cm 箱付 塗替蓋付

¥ 300,000~500,000 30 美濃伊賀耳付水指 H20.8×W23.4cm 箱付  文献:松浦潤著     「日本のやきもの鑑賞と鑑定 第3巻    瀬戸・美濃・京焼・楽」    (双葉社刊 1999年)     No.2-73に掲載

¥ 600,000~900,000 盤状の口に横向きに撓ませた幅広の耳をつけ、 胴部では横方向の線が様々な変化を見せる。口 と胴を四方から押さえ、とりわけ強い歪みを胴 の前後につけている。明るい褐色の肌に白い化 粧土、縦に数条淡く垂れる釉薬が縦に施された 太い箆目と響きあい、土の鉄分らしき黒褐色の 斑点が大小入り乱れ、景色をなす。斜めに耳を つける盤口の僅かに傾ぐ姿に、肌に広がる多彩 な変化が実によく調和して、この水指を格調高 いものとしている。17世紀、伊賀焼の風合い を備えた美濃の水指中の秀作。

24 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

31

藁灰釉鉄釉掛分瓶 H12.6×W8.2cm 箱付  文献:François Villemin著 「The Golden Age of KARATSU STONEWARE」(Schiffer Publishing刊 2013年) P.162に掲載  展覧会歴:「土の美 古唐津-肥前陶器のすべて-」(佐賀県立九州陶磁文化館 2008年) 図録No.89に掲載       「古唐津 古武雄 桃山・江戸の華やぎ」(九州国立博物館 2014年) 図録No.27に掲載 ¥ 2,500,000~3,500,000

32

32 信楽蹲 H12.4×W11.5cm 箱付 ¥ 700,000~1,200,000

32(別角度)

33 備前花生 H24.8×W14.3cm 箱付

¥ 700,000~1,000,000

34 瀬戸灰釉瓶子 H26.2×W17cm 箱付  文献:赤塚幹也著 「陶器全集19 古瀬戸」(平凡社刊 1966年)     No.12に掲載 同文献付 ¥ 400,000~600,000

26 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

35

須恵器薬壷 H24.5×W33.7cm 箱付

文献:川島南智子著 「古器に生ける 古美術柳-日々の花-」(マリア書房刊 2012年) P.101に掲載 同文献付

¥ 600,000~900,000

口縁部はわずかに外反して短く立ち上が り、肩は横に強く張り出している。胴はか すかに丸みを帯びて底部に向かい、高台は 裾の開いた形状をなす。この形を薬壷とい うが、正倉院に同手のものが伝わっており、 その壷には芒消・戎塩・冶葛といった薬物 が納められていたことに因む。

土は肌理が細かく、形は端正にして造りは 薄い。総じて灰黒色に焼き締まり、灰が 肩に降りかかり、一部熔けて鶯色を呈し ながら雫のように留まっている。引き締 まった形に表れた静かな変化が美しい。 8世紀頃の作。

36

珠洲叩文壷 H34.2×W31cm 箱付

¥ 500,000~800,000

平安時代末から室町時代後期にかけて、現 在の珠洲市を中心とした奥能登で生産され た珠洲焼。須恵器の系譜に連なり、釉薬を かけずに還元焔によって焼成するため、肌 は基本的に青灰から灰黒となる。

本作は胴に叩き締めを行うことで器形はわ ずかに多面体をなしており、くっきりとし た条線状の叩文と相俟って、その表面に独 特のやわらかな陰影が生じている。この陰 りは灰黒色の肌に一層の魅力を与えてい る。13~14世紀と見られる作。

27 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

37

丹波大壷

H49.6×W34.8cm 肩に窯印 箱付

文献:中西薫編著 「丹波の名陶」(求龍堂刊 2009年)     No.74に掲載 同文献付

展覧会歴:「THE TAMBA(秋)-秋麗に古丹波を愛でる-」(兵庫陶芸美術館 2015年)       図録No.115に掲載 同図録付

¥ 1,300,000~1,800,000

明るい褐色の肌に鮮緑色の自然釉が流れかかり、その先端には釉だまりが生じている。 その下に肩から胴にかけて長く伸びた猫掻きが浮かび上がり、細かく降りかかった灰 が変化を与えている。この明るく変化に富む肌合いが、底部が大きくやわらかな曲線 を描くなで肩の器形とよく調和している。口頸の立ち上がりは長く、玉縁の口造りは 太く力強い。

猫掻きとは、文字通り猫が爪で掻いたように器面に縦に残された櫛の痕を指し、丹波 の見どころの一つとなっている。巻上造りの継ぎ目や凹凸を押さえつけるのに櫛歯状 の箆を用いて器面を調整したものが始まりと考えられるが、仕上げの一手法であると 共に装飾をも兼ねるようになった。室町時代の中期以降に見られるようになる。この 猫掻きの発生と連なる形で肩に小さな窯印を入れるようになった。これを手印といい、 本作では「×」が施されている。これは大窯での焼成と関連しており、高火度焼成に より明るい色調が生まれることになる。

高さが50cmほどあり大きく堂々としている。16世紀の優品である。

28 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

志野鉄絵草花文四方平鉢 H5.5×W26.4×23.8cm 箱付

¥ 2,000,000~3,000,000

38
30 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

39 尾形 乾山 銹絵絵替長方皿(5点1組) W23.5×9.8(各)cm 箱付  参考文献: 「平成十三年秋季特別展 秋麗の茶会」 (高津古文化会館刊 2001年)  No.38に同手作品掲載 同文献付

¥ 1,500,000~2,500,000

31 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

40 古伊万里色絵洋犬置物 H39×W16×22cm  箱付

¥ 500,000~800,000

32 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

41

古伊万里色絵唐獅子置物(一対) 左/H25.7×W17.6×21.5cm  右/H25.2×W17.8×22.3cm  各箱付

¥ 900,000~1,400,000

33 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

古伊万里金襴手壽字文鉢

H6.3×W21.9cm 高台内に描き銘「福」 箱付  参考文献:林屋晴三編 「普及版 日本の陶磁8 古伊万里」(中央公論社刊 1989年) No.149に同手作品掲載 ¥ 1,000,000~1,500,000

端正な「壽」字を見込中央に大きく据えて、周辺に8つの半円弧をとり、朱と瑠璃と金彩で二 種の地文を入れる。内側面には瑠璃金彩の四方襷文の中に白地と赤地の宝珠形の窓を交互に設 けて宝尽文を配している。外側面には緑彩で囲まれた赤い丸文を四方に据えて、赤を主として 緑を差した花唐草文を廻らせて、金彩で縁取った瑠璃の葉を散らす。高台脇に小さな赤地文、 中心には染付で角福銘、外側に二重圏線を施す。腰で一度段をつけて強く反りながら口まで上 昇する器形は絶妙な均衡を見せており、内側部に描かれた文様はこの曲面とうまく調和して、 総体に洗練の語がよく似合う。

金襴手とは、磁器の肌に色絵と金銀彩で吉祥文を施した独特の華やかさを備える作品のことで、 中国に端を発するが、日本では元禄年間(1688~1704年)に制作が始まり、やがてそこに 日本独自の創意が加えられるようになった。

入念に計算された構成と匂い立つほどの極彩色の織り成す元禄期の美意識を表した作品である。

34 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

裏面 側部

42

43

古伊万里染錦透彫花文鶏蓋沈香壷 H30.2×W16.7cm 箱付

¥ 500,000~800,000

面取のなされた胴に、菱垣に牡丹や菊の絵と菱垣に擬えた透かしを交互に配して、上 にとまる鶏は、夜明けに鳴いて天下に暁を知らせる金鶏であろうか、胸に金と赤の丸 文を賦し、羽は赤緑紫黒金で彩られている。沈香壷とは、香を入れておき来客時に蓋 を開けて香りを漂わせるもので、本作には透かしがあり、そのままで用をなす。

江戸時代に輸出された古伊万里は西欧の王侯貴族に大いにもて囃された。華やかで卓 抜な意匠の本作もまた室内で目を楽しませたことであろう。

¥ 200,000~300,000

¥ 500,000~800,000

44 初期伊万里染付亀甲菊花文皿 H3.6×W19.5cm 箱付 45 初期伊万里染付吹墨兎文皿 H3.8×W20.1cm 箱付
45 35 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
43 44

¥ 300,000~500,000

46

古伊万里染付地図皿 H7.3×W48.6cm  高台内に描き銘「本朝天保年製」 ¥ 500,000~800,000

天保年間から幕末明治に至る江戸 時代末期の40年間は染付の大皿 が活況を呈し、千変万化の意匠に 溢れていた。この時期の染付大皿 の中で地図皿は現在最も人気の高 いものだが、これは当時も同様で あり、意匠の異なるものがいくつ も作られている。これら地図皿に は行基図という地図に基づいて、 日本を中心として周辺に異国が描 かれるという共通点があり、この 背景には日本沿海に外国船が来航 するようになった社会状況がある とみられている。

外側面には波を六方に描き、高台 中央には「本朝天保年製」の銘を 記す。地図をよく見ると隠岐の先 に「竹シマ」とある。竹島の記載 がある地図皿は珍しい。天保年間 (1831~1845年)の作。

47 藍柿右衛門鮎文皿 W21.5cm 高台内に描き銘 箱付
47
46
36 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
46(裏面)

藍鍋島秋草菊文七寸皿 H6×W20.4cm 箱付

参考文献:「鍋島展 我が国唯一の官窯鍋島-その出現から終焉まで」      (伊万里市教育委員会刊 1996年) No.51に同手作品掲載

¥ 800,000~1,300,000

薄い濃みによる土坡からのびてゆく野菊と薄がかすかに揺れている。繊細でやわらかな筆致は 楚々とした野菊と寂寥感漂う薄を描き、巧みに取られた余白と相俟って、器全体で日本人の秋 に対する複雑な心性を表している。鍋島といえば華やかな色鍋島が注目されがちであり、色鍋 島の秋草の遺例もあるが、この意匠は鍋島の高い技術により藍一色の濃淡でものされてこそ真 価を発揮する。18世紀初頭、一抹の侘しさを抒情性豊かに描き出した佳品。繭山龍泉堂旧蔵。

48
37 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

色鍋島水葵文七寸皿 H5.2×W20.2cm 箱付

参考文献:「色鍋島展」(朝日新聞社刊 1997年) No.65に同手作品掲載

¥ 4,000,000~6,000,000

画面中ほどを横切るように色とりどりの水草を重ねて配し、上下に大きく余白を取っている。染付で描かれた 水草は中心を避けて左右に塊を一つずつ設け、その周りに水葵であろうか、葉が重なり合いながら絡みつき、 白く小さな花がその間に顔を覗かせている。それらを赤に黄に色を転じる小さな浮草が取り囲み、隙間を填め るかのように描かれる。

染付の青と色絵の赤と黄がなす横方向の塊に対して、緑彩の葉は斜めに交わり、画面右上の緑葉の先、器の縁 沿いにまた浮草の赤と黄が表れている。意匠は明らかに異なるが、左から右上へと大きくうねる波に水しぶき が打ちあがっているかのような動きのある構成をとっている。

群生する水草は染付で濃淡をつけて表しており、水葵は葉の重なる部分で色調を変える。露骨な補色を避けて 水葵の葉と浮草の赤の間には必ず黄を挟む。また水葵の葉の間に赤で縁取られた白い花を咲かせることで、密 生する水草の風通しをよくしている。そして上下に大きく取られた余白が全体に軽やかな印象を与えている。

同構図で部分的に賦彩の異なる作例があるが、水葵の葉は全て同じ調子の緑彩であり、花は黄色、浮草は全て 赤に統一されている。そちらでは、本作のように左から右上に視線が軽やかに移ろうような動きに乏しく、意 匠の重なる部分では立体感に欠けて平面的な表現となっている。

本作は一見したところ派手な印象は受けず、またいかにも日本的な抒情性に訴えかける図柄でもない。だが、 緻密に計算された部分と感性に従って構図を作り上げた部分が高い次元で統合されており、意匠構成の巧みさ ともたらす効果においては鍋島作品中類をみない。

元禄期、鍋島の先進性の伺える七寸皿である。

49
別角度 38 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

50

柿右衛門色絵梅文八角鉢 H11.5×W25.7cm 箱付

来歴:Christie's London、1994年11月15日 同カタログ付  参考文献:「柿右衛門と鍋島」(出光美術館刊 2008年) No.67に同手作品掲載

¥ 2,000,000~3,000,000

劫を経た梅の大木が左右に向かいその幹をねじらせながら先へ先へ と伸びてゆく。幹から枝に分かれるところで色は青から緑へと転じ、 その先で梅花がこぼれんばかりに咲き誇る。紅白の梅はここでは赤 と黄で表されている。左に伸ばした枝にはふっくらとした鳥が羽を 休め、更に左の先へ向けて何か呼びかけている。梅の先には竹が見 え、稈はしなりやはり左右に伸びてゆく。中空には悠然と一羽の鳥 が羽を広げており、枝の鳥に応えるためか、風に乗って右に向かう。

内側に目を転ずれば、見込には折枝の牡丹がそっと置かれており、 周囲の鍔状に伸びた平坦部には鋸歯文を連続して配し、口縁は口銹 としている。

器膚は皓然と白く艶やかにして器体は端然と八稜をなして面をと り、器という支持体が図に緊張感をもたらしている。側面では柿右 衛門の図柄らしく大きく取られた余白が、器体の純白なるがゆえに 意匠を引き立てており、見込は更に余白を大きく取るが、図が緩ま ないのはやはり器体のなせる業である。

柿右衛門様式の鉢で本作は最大級のものであり、これが吟味された 乳白手で端麗な形姿をとっている。直に目にすればその偉容に思わ ず息を呑む。江戸前期の優品。出光美術館に同手の作を収める。

40
別角度 見込 41 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

柿右衛門染錦松竹梅鳳凰文八角小鉢(5点) H7.1×W12.9~13.4cm 箱付

¥ 400,000~600,000

52

柿右衛門色絵松竹梅唐草鳳凰文八角面取鉢 H10×W18.4cm 箱付

¥ 500,000~800,000

51
52
51 42 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
52(見込)

53

古九谷色絵鳥文隅切四方皿 W19.8×19.8cm 高台内に描き銘 箱付

¥ 700,000~1,000,000

54

古九谷色絵牡丹文皿 H3.3×W19.5cm 箱付

¥ 300,000~500,000

55

古九谷色絵染付鳥文鉢 H4.5×W20.5cm 箱付

¥ 500,000~800,000

53 54 55 43 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

56

古九谷青手抜絵草鳥文皿 W14.2cm 高台内に描き銘 箱付 ¥ 300,000~500,000

57 青九谷瓜文台鉢 H5.7×W21.5cm 高台内に描き銘「福」 箱付

¥ 500,000~800,000

56 57(裏面)
57 44 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
57(側部)

古九谷青手芭蕉文大皿 H7.5×W33.9cm 箱付

¥ 1,500,000~2,500,000

古九谷青手とは、濃厚な緑と鮮明な黄の2色を基調として全体を色 で包み込むもので、色を表現の主体とする手法である。現代の目で 見たときに意匠の取り合わせや意匠そのものの意図がはっきりとわ からないものも多くあるが、それが却って斬新で新奇であり、色彩 が実によく映える。そうした青手の性質は大皿で遺憾なく発揮され ており、数百年前も今も観る者を惹きつけてやまない。

本作は、地を黄彩の重ね菊小紋で埋め尽くし、中央には緑彩で芭蕉 の葉を3枚置いて、画面中ほどから下部にかけて横方向に流れ込む

文様を茶色で塗り籠めている。用いているのは紫釉であるが、それ が茶色に発色している。黄色で埋め尽くされた器を月に見立ててい るとすれば、横方向に流れる文様は叢雲であろうか、源氏雲を簡略 化したような意匠である。

意匠は必ずしも明瞭ではないが、それぞれの文様で分けられた濃彩 は艶やかで実に青手らしく、えも言われぬ魅力を放っている。江戸 前期の作。

58
45 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

59

古九谷色絵草花文壷 H25.5×W18.6cm 箱付  文献:西田宏子著 「陶磁大系 22 九谷」(平凡社刊 1978年) No.87に掲載

¥ 2,500,000~3,500,000

首と脚に圏線を廻らせて、肩には宝尽し文、その宝物から伸びてきたかのような紐が弧を描いて裾に見えている。 胴には三方割が施され、地文に赤絵で七宝文と四方襷文を入れる。窓には桔梗と鶏頭であろう、花卉文を描く。鶏 頭は対称的に向きを変え、桔梗は他の二面よりも長く表されている。後ろに見える萱も含めていずれも細く長い。 黄・緑・紫と、色が多用されてはいるが、そよ風に揺れるような繊細さが、広めにとられた白い余白の中にあって はかなげな印象をもたらしている。窓の外は幾何学文が複雑な構成で埋め尽くされているが、そこに華やかな印象 はない。窓絵を取り囲むこの文様が九谷独特の沈み込むような赤で描かれることにより、漂う秋の情感をより一層 深めている。

器形は細長手の太鼓胴ともいうべき、卵形の上下に口部と底を付けたような独特の姿をした壷である。古九谷の壷 に見られる形ではあるが、大鉢や大皿が主体の古九谷にあって大きさのある瓶や壷の遺例はそう多くはない。江戸 前期の優品である。

別角度 46 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
47

60

薩摩金襴手美人行楽文茶碗

H7.8×W13cm 高台内に描き銘「阪錦山堂」 箱付

¥ 2,000,000~3,000,000

素地は白陶で、卵色がかり、総体に細かい貫入が走る。 ふっくらとした美碗で、縁沿いに七宝つなぎ文様を巡ら し、対となる腰部は如意頭状の連続文様を並べ、内を亀 甲と格子の繋文様で描きつめている。胴には桜の樹下に 集まる人々の様子が描かれており、筆致は極めて精巧で、 芸境の高さが伺える。

殊に見込の文様表現は白眉で、中央に据えた二重花弁の 菊花文から痩肥交じり十二筋の花帯が渦状に展開する様 は、さながら錦の織物で着飾ったように艶やかである。 口端にひかれた金泥の筋は碗に頂く円窓とも見え、見込 の花渦を一層際立たせている。

高台には雷文が巡り、畳付は露胎。高台内側は施釉され、 中央に金彩で「阪錦山堂」の四字款が記されている。

見込
49 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
底部

駒田 柳之

本名 駒田勇。1934年東京生。柳之の祖父・春之/ 柳斉、伯父・陽香、父・柳水といずれも象牙置物の 彫刻家として著名な駒田家に生まれ育ち、15歳で 父に弟子入りする。主に女性風俗物を学び、12年 間の修業の後に独立。当初は置物彫刻を主としたが、 独立の2年後に砂本象牙店のすすめにより根付の研 究および制作をはじめ、以降根付制作を専門とする ようになる。1981年にロサンゼルスにて第1回の個 展、92年に第2回の個展が開かれた。

1970年代初頭に齋藤美洲、桜井英之、立原寛玉ら と共に、当時古根付に比べて軽視されていた現代根 付の地位向上に取り組む現代根付運動を起こす。

1977年には現在の国際根付彫刻会の前身となる団 体を立ち上げ、1994年より10年間、会長を務めた。

同団体は従来の徒弟制度を極力排し、技術情報を オープンにするなど根付制作の裾野を広げている。

柳之自身も長年にわたり作家同士の情報交換を促 し、根付展開催や国内外の講演、実演などを通じて 現代根付の普及と促進、後進の育成に尽力している。

作品は女性像を得意とするが、男性や子ども、動物 も扱う。美人を彫らせれば柳之の右に出る者無しと 言われるほど、美しく生き生きとした女性像を生み 出している。

LOT61は大きく背を反らせた女性がキセルを手に そっと笑みを浮かべている。女性の立姿を根付にま とめることは至難の業と言われているが、柳之は丸 い根付の形状から、思い切りよく反り身にした意匠 を開発し、本作にもそれを適用している。ぐっと背 を反らせてやわらかに首を曲げたその姿勢と、着物 の波濤に千鳥の文様とが相俟って、たおやかな中に 凛としたものを感じさせるその一方で、微笑む顔は どこか愁いを帯びている。

LOT62は座した男女の根付で、扇子を手に色男が 首を傾けて囁くように語りかけており、女性は髪に 手を遣り恥じらいがちに微かにうつむいている。い

ずれも纏う装束に量感を持たせつつ、男性には立烏 帽子や狩衣の肩の辺りなどに直線を交えて、女性は 後ろに広がる十二単に至るまで全てが曲線に包まれ ており、典雅な中に凛々しさを備えた男性と優美で 楚々とした佇まいの女性を見事に表している。

柳之によれば、自身が女性の美しさを感じるのは僅 かながらにでも傾いているときだという。今回出品 された二作は姿勢としては対照的ながら、傾けた姿 勢に連動する形で二作とも総体として複雑な内面を 描き出している。現代根付の第一人者の技術とセン スが遺憾なく発揮された優品である。

61 駒田 柳之 十三夜

象牙に彩色  H12.2×W4.8×3.5cm  底部に刻銘「柳之」 共箱

¥ 300,000~500,000

62 駒田 柳之 語らい(根付 2点1組)

象牙に彩色  左/H4.6×W4.2×3.1cm  右/H3.5×W5.2×3.9cm  各底部に刻銘「柳之」 共箱

¥ 300,000~500,000

50

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61 61(別角度) 62

63

濤川 惣助

七宝桜に鴛鴦図花瓶(一対)

H33.1×W22.4(各)cm 各底部に在銘「魁」 各ケース付

¥ 10,000,000~15,000,000

弘化4(1847)年、下総国鶴巻村蛇園の農家に生まれた濤川惣助は、第一回内国勧業博覧会で目にした七宝焼製品に心を奪われ当時の 商いをやめて工芸家に転身。以降、第三回内国博で名誉賞、1889年のパリ万博では名誉大賞を受賞するなど国内外で声価を高め、同 時期に活躍した京都の並河靖之と共に「二人のナミカワ」として並び称された。

殊に最終焼成前に植線を取り除く無線七宝の技法を考案・追及したことで知られており、本作でも桜の花弁、鴛鴦の羽毛に包まれた胴 部の表現に同技法が用いられている。隣接した釉薬同士が混ざり合うことで生まれる淡く柔らかな色彩は無線七宝特有の興趣である。

日本画を思わせる詩情豊かな文様表現は、惣助の至った芸境の高さをよく示している。 銘

52 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

64

並河 靖之 七宝花蝶文蓋付小壷 H10.8×W5.5cm

高台内に刻銘「京都並河」  ケース付

¥ 4,000,000~6,000,000

並河靖之は川越藩高岡九郎右衛門の三男として京都に生まれ、のち青蓮院宮近侍をつ とめる並河家の養子となる。明治の初め頃より七宝制作に携わり、明治29年、帝室 技芸員に選出された。

本作は肩の豊かに張った瓶形で、小蓋を備えている。胴を八つに割って縦窓を設け、 それぞれ黒と緑の釉で交互に充たし、丸と花蝶唐草の文様を散らしている。各文様は 窓の境界を越えて配されており、意匠性が高い。精緻で優れた作行を示す佳品である。 銘 54

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65

並河 靖之 七宝龍鳳凰花蝶文蓋付香炉 H11.5×W11×10.2cm  高台内に刻銘「京都並河」  ケース付

¥ 4,000,000~6,000,000

蓋付の扁壷形で、胴の四方に窓を設けている。各窓には飛龍・鳳凰・花蝶の 文様が精緻な有線七宝で描かれており、背景を茶と象牙色の釉薬で塗り埋め ている。窓枠の外を多彩な花唐草文様で装飾する意匠は靖之の作例に散見さ れるもので、過飾に流れず効果的に案配され、上品である。

高台内に「京都並河」の四字款を刻した小板が付されている。 銘

55 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

66

並河 靖之 七宝花鳥文梅瓶 H17.3×W8.7cm  底部に刻銘「京都並河」

¥ 700,000~1,000,000

67 高村 光雲 木彫レリーフ 鳩 1925(大正14)年 24.1×21.1(額窓)cm  右下に刻銘「七十四翁 高邨光雲」  共箱 高村達識シール 額付*

¥ 1,000,000~1,500,000

67
66
56 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
66(銘)

68

平田 宗幸 菊花模様花盛

H26×W41.6cm 総重量約3086g  底部に刻印「宗幸(花押)」「純銀」  共箱 木製台座付

¥ 600,000~900,000

平田 宗幸 1851-1920

明治大正期に活躍した鍛金家。帝室技芸員。代々鍛金を 生業とする家に生まれる。明治以降の時代の変化のなか で宗幸は従来の技術に改良を加え、置物・額などの制作 などを通じて鍛金を金属工芸の一分野にまで高めた。代 表作に東京藝術大学が所蔵する「茄子形水滴」がある。 現存作品は数が少ないといわれる。

69

純銀菊久邇宮菊花形盛器 H13.9×W23.5cm 総重量約1058g  底部に刻印「宮本謹製」「純銀」 宮本商行箱 木製台座付

¥ 250,000~350,000

68(部分拡大) 68(部分拡大) 68(銘)
69 57 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
68

70 木内 半古

正倉院御物模造木畫紫檀瑇瑁小架 H45.5×W37×13.3cm 稲生真履箱

参考文献:正倉院事務所編 「正倉院宝物 南倉」(朝日新聞社刊 1961年)       No.88、89に同型作品掲載       奈良国立博物館編 「第七十五回正倉院展目録」(仏教美術協会刊 2023年)       No.33に同型作品掲載

¥ 7,000,000~10,000,000

長六角形の基台の上に鳥居形の柱を立てた小架。柱は紫檀製で、 断面は四弁花形とする。前後に取り付けた鉤形突起はいずれも 象牙製で、半球形の柱座は表面に連弁の文様を陰刻している。

基台の天板上面は内区に紫檀の板を貼り、外区に金箔を押した

上に玳瑁を貼り重ね、木画の界線で画している。側面にも木画 の装飾が施されており、十の区画に分けた内側を青と赤で染め 付けた象牙板で飾り、唐草形の透かし彫りの脚は象牙製。

正倉院宝物の極めて精巧な模造品で、明治時代の作。 本歌は南倉「紫檀小架」で、木画・牙彫の装飾表現において特 に秀逸なものとして知られる。古器保存と技術継承を目的とし

た正倉院宝物の模造は明治25年に正倉院御物整理掛が設立さ れて以降本格化し、材料・構造・技法に至るまで限りなく本歌 に近いものを求めて制作が行われている。当代一流の職人たち の手により再現された宝物の数々は、模造の域を超えた出藍の 美術作品として高く評価されている。

なお、「紫檀小架」模造の同手に明治時代の木工芸家・木内半 古が手掛けた東京国立博物館蔵の遺例があり、本品はその試作 と推測される。箱蓋には正倉院御物整理掛掛員・稲生真履の墨 書がなされており、半古・真履の両名が製作に関わったものと 考えられている。

59 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

72

芝山象嵌七宝花鳥文透香炉 H18.1×W14.6×9.9cm  側部に刻銘 底部に刻銘「政明」 箱付

¥ 400,000~600,000

71

芝山象嵌花鳥蝶文六角面取花瓶(一対) H15.7×W8(各)cm 箱付 ¥ 400,000~600,000

71
60 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
72

芝山象嵌蒔絵花鳥蝶文飾棚 H216×W145×48cm

¥ 8,000,000~13,000,000

73
61 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

芝山象嵌閻魔王図屏風 H172.3×W79.5cm×2曲

展覧会歴:「特別展 日本の象牙美術-明治の象牙彫刻を中心に-」(渋谷区立松濤美術館 1996年) 図録P.138に掲載 ¥ 2,000,000~3,000,000

74
63 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
75 蒔絵諫鼓に鶏置物 H30.7×W19×13.5cm  箱付
別角度 64 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
¥ 1,000,000~1,500,000

¥ 2,000,000~3,000,000

76 初音蒔絵小箪笥 H24.5×W28.9×17.9cm  箱付
内部 65 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

77

古満 寛哉

八ツ橋蒔絵弁当箱

H22×W23.3×12.7cm 側部に描き銘「寛哉」 箱付

¥ 600,000~900,000

78

蒔絵菊籬文手箱 H16.2×W21×24.9cm 箱付

¥ 800,000~1,300,000

78(内部) 77(箱・収納時)
78 66 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
77(銘)

79

六角 紫水 末金鏤蓬莱之図硯筥 1936(昭和11)年 H4.8×W20.1×26.2cm 蓋裏に刻銘「紫水(花押)」 共箱 硯、水滴付

¥ 700,000~1,000,000

80

光琳蒔絵騎馬人物文硯箱 H4.7×W21.9×24.4cm 内底部に描き銘「法橋光琳造」 箱付 平舘嘉邦外箱 硯、水滴付

¥ 800,000~1,300,000

79(内部) 79(銘) 80(内部) 80(銘)
80 67 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
79

81

火なわ式銃砲 無銘 五連式 全長/32cm 銃身長/19.5cm 口径/1.0cm  無銘 銃砲刀剣類登録証 箱付

¥ 2,000,000~3,000,000

別角度
69 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
別角度

短刀 銘 □(家)正(村を家に変鏨)附)蒔絵籠目地風神雷神文鞘合口短刀拵 刀身/刃長25.9cm 反り0.2cm 元幅2.4cm  銘「□正」

日本美術刀剣保存協会特別保存刀剣鑑定書(平成26年)  銃砲刀剣類登録証 白鞘入 田野辺探山先生御鞘書  拵/全長約40.2cm 小柄欠  蒔絵箱付

¥ 7,000,000~10,000,000

村正は室町時代後期の伊勢国を代表する刀工で、同国桑名の地に在住した。現存する上限の年紀は文亀元年であり、以降も 同名の継承が見られるが、通説では文亀を初代、天文を二代、天正を三代としており、中でも二代とされているものが最も 技倆が優れ、作刀も多く存在し、且つ茎の銘字も流暢で巧みである。

この短刀は、銘振りや茎仕立てから二代と鑑せられるもので、村正の代名詞とも言える皆焼状の作風を示す。元来「村正」 とあった二字銘の「村」を「家」に改鏨したものである。徳川家康藩政期において、徳川家との悪因縁から『いかにしてこ の作の当家に障る事かな、この後は差料の中に村正の作あらば皆取り捨てよ』との厳命が発せられた。村正帯刀禁止令下に 於いて銘を改竄し受け継がれたものであり、現代に伝わる妖刀村正の伝を物語る好資料である。同工の典型的な作域の中で も、特に希少な皆焼の作域は巧みであり、覇気に富んだ優品である。

形状 平造、三ツ棟、身幅広く、寸伸びて、先反りつき、ふくら枯れごころとなる。

鍛  板目詰み、地沸付き、地景入り、淡く白け映り立つ。

刃文 直ぐに焼き出し、その上は小のたれに小互の目乱れ、角張る刃、矢筈風の刃、尖ごころまじり、    上半は特に焼き棟に近いほど高く複雑に乱れ、飛焼を交え皆焼状となり、

表裏の刃揃いごころ、焼きの頭を貫いて幾重にも砂流し入り、足入り、小沸付く。

帽子 乱れこみ、小丸に先掃掛けて、返り深く焼き下げ棟焼きとなる。

茎  生ぶ、先細って刃上がり栗尻、鑢目極浅い勝手下がり、目釘孔三、    指表目釘孔を挟んで棟寄りに太鏨大振りの二字銘があり「村」の字を「家」に改鏨。

拵  檜垣金張塗風神雷神図蒔絵柄巻合口造拵、風神雷神図金無垢目貫

82
70 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

脇差 銘 兼元(孫六)附)変塗腰千段刻蒔絵牡丹文鞘合口脇差拵 刀身/刃長30.9cm 反り0.4cm 元幅2.8cm  銘「兼元」

日本美術刀剣保存協会特別保存刀剣鑑定書(平成25年) 銃砲刀剣類登録証 白鞘入  拵/全長約45.8cm 縁に在銘「明光(花押)」 小柄に在銘「幹支間英昌(花押)」 小刀穂に在銘「尚定」

¥ 3,800,000~4,500,000

83
72 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

刀 銘 則□(房)(片山一文字)

刀身/刃長65.2cm 反り1.0cm 元幅2.7cm 先幅1.6cm  銘「則□」

日本美術刀剣保存協会特別保存刀剣鑑定書(平成30年)  銃砲刀剣類登録証 白鞘入

¥ 4,000,000~8,000,000

84

重要刀剣 太刀 銘 助吉(造) 刀身/刃長66.8cm 反り1.5cm 元幅2.6cm 先幅1.7cm  銘「助吉」

日本美術刀剣保存協会第42回重要刀剣指定書(平成8年)  銃砲刀剣類登録証 白鞘入

¥ 8,000,000~13,000,000

85
74 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

86

重要刀剣 刀 銘 丹波守吉道 刀身/刃長74.0cm 反り1.5cm 元幅3.3cm 先幅2.3cm  銘「丹波守吉道」

日本美術刀剣保存協会第22回重要刀剣指定書(昭和49年)  銃砲刀剣類登録証 白鞘入 佐藤寒山先生御鞘書

展覧会歴: 「2023年度現代刀職展-今に伝わるいにしえの技」 (刀剣博物館 2023年)  図録P.37に掲載 同図録付

¥ 5,000,000~8,000,000

76 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

87 重要刀装 金梨子地九曜紋散鞘糸巻太刀拵 全長約102.1cm

総金具:桐紋散図、赤銅魚子地、高彫、金色絵、金小縁 柄:山葵地金欗包、金茶糸諸撮巻  目貫:桐紋三双図、赤銅地、容彫、金色絵 鐔:刳込葵木瓜形、赤銅魚子地、桶底金色絵耳  大切羽二枚:桐紋散図、赤銅魚子地、高彫、十字襷鋤下彫、四方猪目透、金色絵、金小縁 小切羽:金無垢地四枚、赤銅地二枚  鞘:金梨子地九曜紋散銀平文 鯉口:蔦図、角製、金沃懸地、金蒔絵 渡巻は柄巻に仕立同様 太鼓革・帯執:燻韋 佩緒:亀甲打  日本美術刀剣保存協会第60回重要刀装指定書(平成26年)

¥ 3,500,000~4,500,000

78
79 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

88

蒔絵花散文太刀掛 H62.7×W19.7×34.3cm  側部に描き銘「不老洞柳哉作」 箱付 ¥ 300,000~500,000

80 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

後藤家十六代揃小柄(16点1組) L9.6(各)cm

二代後藤宗乗「重要刀装具 三疋獅子図小柄 銘 紋宗乗 光寿(花押)(室町時代中期)」

(日本美術刀剣保存協会第67回重要刀装具指定書(令和3年))を含む、 後藤家十六代の小柄計16点セット  二代以外は各日本美術刀剣保存協会特別保存刀装具鑑定書  初代~六代に折紙付 蒔絵箱付

¥ 20,000,000~30,000,000

後藤家は装剣金工の宗家で、室町八代将軍足利 義政に仕えた祐乗を祖とし、南北朝期から江戸 期に至るまでの長大な歴史の中で数多の名工を 輩出した金工一派である。

各代とも時の将軍家の御用をつとめていたこと から、後藤家の刀装金具は「家彫り」として、 庶民の需要に応じた「町彫り」とは区別して尊 称された。祐乗が美濃国の出身であることから 作行には美濃彫の影響が強くみられ、即ち鳳龍 や草花といった伝統意匠の他、各時代を通じ美 濃路の風物を主題として日本画的情緒豊かに表 現することを旨としている。

本作は初代祐乗から十六代光晃まで5世紀に渡 る後藤宗家当主の小柄を一所に集めたもので、 流水扇散の文様が施された金蒔絵の重箱におさ められている。このように後藤家代々の金具を 揃えて仕立てるのは江戸後期の流行で、今に伝 わる類例として佐野美術館や前田育徳会の収蔵 品が知られている。

多種多様な技法意匠であらわされた十六本の揃 小柄は、格式と伝統を重んじる「家彫り」の作 行に相応しい風格を備える点で共通している。 悠久の歴史を俯瞰できる、貴重な逸品である。

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初代 蟷螂図小柄 無銘(祐乗)(附)光寿折紙

二代 重要刀装具 三疋獅子図小柄 銘 紋宗乗 光寿(花押)(室町時代中期)(附)宝永元年代金参枚光寿折紙

三代 二疋牛図小柄 棟銘 紋乗真作 廉乗(花押)(附)光孝折紙

四代 神農図小柄 銘 紋光乗 光寿(花押)(附)光寿折紙

五代 柿本人麻呂図小柄 無銘(徳乗)(附)光孝折紙

六代 五疋唐犬図小柄 銘 作栄乗 光侶(花押)(附)鋥乗折紙

七代 笹鯉図小柄 銘 後藤顕乗(花押)

八代 布袋図小柄

銘 紋即乗 光侶(花押)
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九代 釣狐図小柄 銘 程乗(花押)

十代 流水二疋犀図小柄 銘 後藤光侶(花押)

十一代 雷雲鍾馗研剣図小柄 銘 後藤光寿(花押)

十二代 流水舞鶴図小柄 銘 寿乗作 光孝(花押)

十三代 波龍図小柄 銘 後藤光孝(花押)

十五代 牛図小柄 銘 後藤光美(花押)

十四代 御弊猿図小柄 銘 桂乗作 光美(花押)
83 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
十六代 流水秋草図小柄 銘 後藤光晃(花押)

角九曜透渦巻散図鐔 金象嵌銘 楽寿 8.4×7.7cm

十字木瓜形、鉄地、陰透、象嵌、角耳小肉  日本美術刀剣保存協会特別保存刀装具鑑定書(令和3年) 箱付

文献:佐藤寒山、本間薫山、加島進編 「肥後金工大鑑」(日本美術刀剣保存協会刊 1964年) No.338に掲載     小窪健一、笹野大行、益本千一郎、柴田光男著 「透し鐔」(光芸出版刊 1968年) P.116に掲載     「刀剣美術 第495号 4月号」(日本美術刀剣保存協会刊 1998年) P.36に掲載

¥ 2,000,000~3,000,000

一般に肥後金工と呼称されているものは、細川家の城下町である九州肥後国熊本及びその支藩である八代を中心として寛永時代以来展開さ れた鐔工・金工群を指す。利休高弟七哲の一人に列せられる風雅人でもあった藩主・細川忠興指導のもと、肥後の刀装金具は同時代におい て傑出した芸術性を獲得し、日本の金工史における肥後金工の存在はきわめて重要な地歩を占めるものとなっている。

初期の主たる流派に林・平田・西垣・志水の四家があり、次いで林家の技法を相伝した神吉家が著名だが、そのうち巧者として殊に名高い のが神吉家三代・楽寿である。その卓越した技術については明治期に書かれた「肥後金工録」中に詳しく、「此の作、地鉄極めて精美にし て毎作形より象嵌法、及び透かし、鑢、鑚、槌等一つとして精妙ならざるなく、誠に最上の作たり。其の父祖は勿論、肥後古今作中林又七 を除く外、皆三舎を避くべし。」と最上級の賛辞をもって肥後金工の大家・林又七と並び称されている。

本作の、角丸十字木瓜の四方を八つ透かした意匠は「角九曜」と呼ばれ、林又七が考案したものとされている。

鉄地鉄色が良く、腐らし手の蝦蟇肌風にして力強い。

透かしの八つ孔は即興的で磊落。

印象的な金象嵌の渦文は大小に抑揚があり、案配も巧みでよく効いている。

楽寿作の証左として中心櫃孔の棟方に三、刃方に二つの打ち込み鏨が見られ、「楽寿」の金象嵌二字銘が楷書で整然と添えられている。 幕末第一等の名工による肥後鐔の優品である。

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桐樹透鐔 無銘(重光)

8×7.6cm 変り形、鉄地、地透毛彫、丸耳  日本美術刀剣保存協会特別保存刀装具鑑定書(令和5年) 箱付

文献:佐藤寒山、本間薫山、加島進編     「肥後金工大鑑」

(日本美術刀剣保存協会刊 1964年)     No.110に掲載

展覧会歴:「第三回熊本の美術 肥後の金工」      (熊本県立美術館 1978年)       図録No.47に掲載

¥ 800,000~1,300,000

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花唐草文図鐔 無銘(甚五)

7.4×7cm 竪丸形、鉄槌目地、鋤出彫、小透、象嵌、土手耳  日本美術刀剣保存協会特別保存刀装具鑑定書(令和5年) 箱付

¥ 500,000~800,000

志水家は肥後金工四主家の一つ。細川三斎に従い 八代に移住し、抱え工として装剣金具を作成した。

作風は野趣に富み、四家中でも突出した個性を備 えている。本作は志水甚五の典型的な作行を示し ており、低い土手耳、鎚目が残る鉄地鐔で、茎孔 の下部に実用本位の腕貫孔が穿たれている。

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水月透鐔 無銘(柳生)

6.9×6.8cm 丸形、鉄地、肉彫、地透、角耳  日本美術刀剣保存協会特別保存刀装具鑑定書(平成30年) 箱付

¥ 600,000~900,000

尾張剣術指南役・柳生連也厳包の創意により作ら れた鐔を柳生鐔と通称する。意匠は剣術の極意を 擬したものとされ、古来武門に好まれた。本作は 水面にうつる月影をあらわした「水月図」の意匠 で、柳生鐔の典型である。透かしの彫りは即興的 で強く、柳生の名に相応しい古格を備えている。

85 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

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扇子雁金透鐔 無銘(勘四郎) 8×7.4cm 障泥形、鉄地、地透、毛彫、丸耳  日本美術刀剣保存協会保存刀装具鑑定書(平成30年) 伊藤満箱

文献:伊藤満著

「西垣-肥後の金工西垣勘四郎とその作品」(伊藤満刊 2005年)     No.27に掲載 同文献付

¥ 500,000~800,000

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投桐透鐔 銘 神吉(深信)

8.1×7.8cm 菊花形、鉄磨地、地透、毛彫、丸耳  日本美術刀剣保存協会特別保存刀装具鑑定書(平成24年) 鈴木恵山箱

¥ 900,000~1,200,000

肥後金工四主家のうち西垣家は八代続き、明治まで細工師として活躍 した。遺例は鉄鐔が多く、透鐔を得意とし、殊に扇透は古来勘四郎の 掟物の一つとして知られている。本作は初代の作として極められてお り、七つの扇と、雁が三羽、即興的に透かし彫られている。鉄には潤 いがあり、耳に鉄骨が浮かび、勘四郎鐔の特徴をよく示している。伊 藤満著「西垣」の所載品で、著者の箱書が添えられている。

四主家のうち林家の技術を相伝し、江戸後期の肥後金工を主導したの が神吉家である。本作は神吉の二字銘が切られており、二代深信の作 として極められている。古来肥後金工に伝わる「投桐」の意匠で、殊 に端正な作行である。鉄味も良く、同作中でも優れた遺例である。

86 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

96 玉岡 俊之 唐草象嵌左右波透大小鐔 大/8.2×7.8cm 小/7.5×7.1cm 各在銘「俊行/平成廿五年」 あわせ箱

展覧会歴:「平成25年新作名刀展 現代の刀工と刀職」(刀剣博物館他巡回 2013年)       図録彫金の部No.2に掲載

¥ 600,000~900,000

97 泉 公士郎 伝宮本武蔵一羽雁目貫

W3.2(各)cm 共箱 自作証明書

¥ 100,000~200,000

晩年、細川忠興の子・忠利に仕えた宮本武蔵には刀装金具の作がある。 素人の余技ながら技術を超えた別趣の品格を備え、総じて力感のある意 匠が武蔵に擬している。

LOT97、98の二作は現代金工家・泉公士郎氏の手による写し金具。

本歌は武蔵の高弟寺尾信行が譲り受けたとされる一羽雁目貫で、デフォ

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泉 公士郎 伝宮本武蔵玉杓子目貫

W3.9(各)cm 共箱 自作証明書

¥ 100,000~200,000

ルメされた飛雁は愛らしくも背と頸の曲線に緊張感があり、強く、代え がたい魅力がある。

お玉杓子目貫は伝来の知られない物ながら武芸者らしい気宇の堂々とし た意匠で、雁・お玉杓子にかたつむり目貫を加えた三品は武蔵三作と称 され、武蔵の作中でも殊に声価が高い。いずれも本歌の古格を損なわな い、見事な作行を示している。

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宮本 武蔵 山水図

紙に墨、彩色 印有 軸装  114.2×53(紙)cm 全体/202×69.5cm  雨森菊太郎箱 雨森白水旧蔵

文献:「國華 第百十七号」(國華社刊 1899年)に掲載     「熊本の美術Ⅱ-武蔵とその周辺-」    (熊本県立美術館刊 1977年)     No.30に掲載 同文献付

¥ 5,000,000~8,000,000 桃山期の画壇には、武門出身の絵師が少なくない。 長谷川等伯、海北友松、狩野山楽、雲谷等顔といっ た名前がそれにあたり、いずれの作風も傑出した個 性をもって知られている。宮本武蔵が生きた時代は、 これらの絵師たちの活躍期にほぼ連なる。彼らと異 なり武蔵の絵はあくまで余技に描いたものである が、武士という基盤をもつものの筆として、勇壮と も評すべき独特の趣を備えていることに共通した印 象がある。

武蔵の画事は晩年、肥後藩主・細川忠利に伺候して からと考えられており、現存する遺例はいずれも減 筆体の水墨画で、すなわち細線による輪郭や微細な 描写はほとんど見られない。本作の山水画も筆致は 闊達で、にじみやかすれといった墨の効果を活かし て描かれており、作行はあくまで力強い。

自著「五輪書」のなかで「一通百通」として諸芸兵 法に通じると示すとおり、その作画に武芸者の気骨 が反映されているとみられる点で、武蔵の画風は鶏 群一鶴の品位を獲得している。

印章は「宮本」「武蔵」、二つの朱印。

「國華 第百十七号」掲載作品。箱蓋墨書の「蝶夢 散史」は明治大正期の政治家・雨森菊太郞の別号で、 本作が祖父にあたる日本画家・雨森白水の遺愛品で あることを示している。

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88 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

武田氏朱印状・武田信玄安堵状(各巻物) [2点セット] 武田氏朱印状/紙に墨 印有 33.7×48(紙)cm 全体:40.6×86.5cm  武田信玄安堵状/紙に墨 落款有 30.9×44(紙)cm 全体:37.7×82.5cm  2点とも箱付

¥ 4,000,000~6,000,000

武田信玄(1521~73)は戦国時代を代表する武将の一人。 甲斐を本拠とし、信濃・上野・駿河にも版図を広げた。戦上手 で知られる一方で内政の手腕も優れており、家法の制定をはじ め分国統治に力を注ぎ、また水害対策かつ新田開発となる信玄 堤を築くなど、その功績は枚挙に暇がない。晩年になり、信玄 は、南、そして西に向けての軍を起こして三方ヶ原で徳川勢を 粉砕するものの、病のため信州の伊那駒場で没した。

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90 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
武田氏朱印状

本状は「杉山高次郎氏所蔵文書」という名で、『大日本史料 第 十編之四』元亀元(1570)年の項に「武田信玄、駿河(中 略)国高根社ニ同社領ヲ(中略)安堵セシム」とある本文を証 する史料として載せられている。本状が出された永禄13(= 元亀元(1570))年は、信玄は駿河侵攻(1568~1571)の 最中であり、略したそばから駿河国内の高根神社への所領安堵 を行い、従前通りの祭祀と武運長久の祈祷を行うことを命じて いる。神仏への信仰の篤いことで知られる信玄だが、それを示

すもので、また他の文書と比較すれば信玄の侵攻の経路などが 知られる重要な文書である。2月9日付の書状には朱印が捺さ れており、図柄が龍のため龍朱印状とも呼ばれる。4月12日付 には花押が記されている。

本状には東京帝国大学から本状所有者の杉山高次郎宛てに出さ れた書類が付属しており、併せて『大日本史料』に用いられる 経緯を記した新聞記事も残されている。

武田信玄安堵状

91 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

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伊達 政宗 青山図書助成重宛書状 1607(慶長12)年 紙に墨 落款有 軸装  31.7×49.3(紙)cm 全体/121×56.5cm 箱付

文献:「市史せんだい Vol.27」(仙台市博物館刊 2017年)     No.補268に掲載 同文献付 ¥ 300,000~500,000

二代将軍・徳川秀忠の側近の青山成重に宛てた伊達政宗の自筆 書状。本状に見える「羽越前(羽柴越前守)」を称するのは天 正19(1591)年3月~慶長13(1608)年正月。「御普請場よ り唯今帰宅仕り候」とあり、数度行われた江戸城の天下普請で 在府していることが伺えるが、一度目の命は慶長12年閏4月に 下っている。書状の日付から本状は同年と判断できる。政宗壮 年の書。右上から左下に向かう筆の動きが印象深い。

政宗が武将として傑出していたことはよく知られるが、和歌・ 香道・茶道など諸芸にも秀でていた。書においては能書であり、 その個性豊かな筆跡は生存中から賞玩されていたという。

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足利義政肖像 紙本・彩色 軸装  93.2×45(紙)cm 全体/174.8×66.9cm 箱付

¥ 350,000~550,000

102 92 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
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手鑑

39.5×25.3(本)cm  「賢愚経断簡(大聖武)」を含む古筆252点を一冊に仕立てた手鑑 箱付

¥ 1,000,000~1,500,000

手鑑とは古筆の断簡を蒐めて帖にしたもので、もとは古筆鑑定の必需品であったと される。古筆は長く貴族に愛されてきたが、近世に入り武士や町人からも人気を博 し、その鑑賞・保存のために手鑑の制作が流行した。これに伴い手鑑制作上の作法 が整えられた。よく知られる作法の一つが聖武天皇筆とされる「大聖武」で冒頭を 飾ることである。「手鑑や聖武天皇あけの春」との句があるほど手鑑の格を決める もので、大聖武がなければ格が下がるとされた。本帖も大聖武で始まる。

天平の名筆・大聖武は『賢愚経』の断簡で、1行12~13字詰を基本とする。1行 17字詰の一般的な写経からすると字が格別に大きい。形は端正、筆力雄渾の堂々 たる書である。料紙は荼毘紙。その名は褐色の粒子が釈迦の骨粉とされたことによ る。書体と共に大聖武の特徴にして魅力をなしている。

表は大聖武以下様々な形式の古筆切が押されている。対して裏は全て短冊で、形式 が揃っているが故に色とりどりの料紙が実に華やかで麗しい。

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93 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

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藤原 定家 記録切巻物

紙に墨 9.7×194.5(紙)cm 全体/11×226cm 箱付  畠山牛庵極札(箱蓋裏に貼付) 小堀遠州書状(軸装 箱付 古筆極札(箱蓋裏に貼付))

¥ 800,000~1,200,000

この記録切巻物は朝廷儀式の断片的な覚書の断簡とみられるもので、筆者とされる藤原定家(1162~ 1241)は歌道に秀で、実作と理論のいずれにも多大な実績を残した。また当代随一の有職故実家でもあった。

付属する書状は小堀遠州(1579~1647)筆で、本巻物に言及している。遠州は江戸初期の大名。茶道と 作庭に通じ、特に茶道は遠州流茶道の祖として名高い。書は熱烈な定家流信奉者で、それが書きぶりに看て 取れる。本状に「やハらくると有之定家の記録」とある。これは記録切冒頭の「和る」を指すとみられ、続 けて「正筆無紛存候」と極める。また「うたの有之ハちか比者珍敷もの」とあり、歌とは記録切にある「と きしあれは暁かけてうくひすのさゑする梅を人やおるらむ」などを指すのであろう。「ちか比珍敷もの」から、 現在と同様、当時定家筆の歌入古筆切が珍重されていたことが伺える。

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104(小堀遠州書状)

伝藤原俊成筆加賀切 紙に墨 軸装  21.6×13.5(紙)cm 全体/137.5×36.2cm  田山方南箱 古筆了任極札

¥ 400,000~600,000

「加賀切」は平安中期の貴族、藤原元眞の歌集『元眞集』 の断簡。国宝『西本願寺本三十六人集』の1帖も『元眞集』 の写本の一つとして著名。元眞は自らの歌も含めた既存の 歌を用いて新たな歌を詠むことに長けていた。本葉には、 意味に関係なく物の名を歌に詠み込む「物名」の手法によ る3首が記されている。

「加賀切」の名は加賀藩主・前田家の伝来に因み、大 正15(1926)年に冊子を分断して一葉ごとの切とした際 につけられた。筆者は藤原俊成とされる。

総じて丸みを帯びた字形をとる中に、折り返す際の溜めの 強さや「し」「う」「川」など縦長の字が所々入ることでメ リハリが利いている。筆力があり、しなやかで伸びのある 線は軽快な印象を与える。12世紀の筆。

105
94 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

106 伝藤原俊忠筆二条切 紙に墨 軸装  22.1×11.3(紙)cm  全体/133×40cm  箱付 古筆極札

文献:

小松茂美著  「古筆学大成 第二十一巻」 (講談社刊 1992年)  No.192に掲載

¥ 800,000~1,300,000

歌合とは、左右に分かれた歌人の詠歌を一首ずつ組み合わせて、判者が優劣をつける遊戯。 ここに見えるのは大治3(1128)年の住吉社歌合の九番。歌題は蘭。蘭は古くは藤袴を指 すことが多く、王朝和歌では詞書に蘭とあっても歌に藤袴と詠まれるのが一般的である。 本葉は歌合九番の右、伯卿女の歌から判詞まで。左、藤原基俊の歌は直前で切断されてい るが、判詞にて判者が基俊の歌に手を加えた歌が見える。

江戸期より、墨罫を引く歌合巻物の断簡で12世紀の特徴を備えるものは、優美な書風は 柏木切、力強い書風は二条切と大別されて、いずれも名物切として珍重されてきた。伝承 筆者はそれぞれ藤原忠家、俊忠親子。俊忠の子と孫が俊成、定家である。

本葉は俊忠筆との古筆極が添う。右上から左下に押し込むような運筆は筆力があり、また その動きが全体にリズムを生んでいる。

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重要美術品 霊元天皇宸翰一乗院眞敬親王御筆菊圖御賛 絹本に墨、彩色 一乗院眞敬親王の印有 軸装  73.8×36.9(絹本)cm 全体/159.5×54.5cm  箱付 重要美術品認定通知書

文献:「重要美術品等認定物件目録」(思文閣刊 1972年) P.531に文字情報掲載 ¥ 1,500,000~2,000,000

散ことを ならはぬ花 の は 幾世の霜 の いろに

まかは む

霊元天皇(1654~1732)は第112代天皇。 10歳で即位。24年の在位の後、東山天皇に 譲位し、院政を行う。60歳で仏門に入った。

政務にあっては朝儀復古を目指して独自の政 策を展開し、学問を好み、文芸の才に秀でて いた。特に歌道と書道に優れ、詠歌は6000 首を数え、書は独自の書風を立てるほど歴代 屈指の能書で知られる。

真敬法親王(1649~1706)は霊元天皇と 同父母の兄。生後半年で奈良興福寺一条院に 入室、11歳で得度、のちに興福寺と清水寺 の別当を兼ねた。風雅に富み、諸芸に通じて おり、画は狩野当信に学び、遺例も多い。霊 元天皇と親しく文通もしばしば行った。

本作は霊元天皇と真敬法親王による合作。昭 和16(1941)年9月24日付で重要美術品に 認定されている。

96 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

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後醍醐天皇北野神社松梅院宛綸旨 紙に墨 軸装

29.2×41.5(紙)cm 全体/116.7×60.6cm  箱付 弘文荘反町茂雄旧蔵

展覧会歴:「反町弘文荘蒐集古典籍逸品稀書展示即売会」      (日本橋三越本店 1971年)       目録No.147に文字情報掲載

¥ 500,000~800,000

本状は元徳3(1331)年4月16日付で後醍醐天皇の命を受け発せられたとされる綸旨であ る。綸旨とは蔵人が天皇の意向を奉じて作成した文書で、慣例として宿紙を用いる。宿紙 とは反故を原料として漉き返した紙で、この時代の綸旨に用いられた宿紙はこの薄墨色に 染めて荘厳さを出している。内容は長門国員光保并預所職の北野神社への所領安堵。筑波 大学所蔵の「北野神社文書」写本に、本状の写しがあり、これはその原本である。本状は 古典蒐集の第一人者、弘文荘反町茂雄の旧蔵。薄墨の紙と堂々とした筆致が美しく調和し ている。

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陽光太上天皇筆和歌懐紙 懐紙に墨 軸装

34.2×47(紙)cm 全体/121.5×64.4cm  箱付 浅倉茂入景頼、大倉好斎、本居大平極札

¥ 600,000~900,000

陽光太上天皇(1552~1586)は正親町天皇の第一皇子。生まれた時から次代の天皇と して育つ。正親町天皇からの譲位の矢先、天正14(1586)年に急逝する。陽光院と諡され、 自身の第一皇子が後陽成天皇となったため太上天皇の尊号を贈られた。書と和歌に秀で、 侍臣と詠じた「陽光院五十首」が伝えられる。

料紙には金銀彩で松が美しく描かれており、その上に「春日詠遐齢如松和歌」の題で「春 をへて君がよはひも十かへりの花になれ見む庭の松か枝」と墨書されている。料紙、歌意 に相応しい堂々たる筆致である。

98 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

110 小堀 遠州 有馬入湯若水(和歌)

懐紙に墨 落款有 軸装 13×12.1(紙)cm 全体/124×39.6cm  共箱 小堀宗慶外箱(「遠州元蔵帳記載」と有)

展覧会歴:「茶の湯・数奇とふるまい展」(美術館「えき」KYOTO他巡回 1997~1998年)       図録No.61に掲載

¥ 2,000,000~3,000,000 小堀遠州は再々摂津有馬の温泉に赴いており、そのつど歌を詠み、茶杓を削ったりして大い に風流を楽しんでいる。

この幅もその一つで色紙に次の如く記している。

有馬入湯若水 甫

南無薬師瑠璃の壺湯に  たふたふといるより老の  わか水となる

筆蹟も晩年であり、いかにも悠々と有馬で老を癒される遠州公の心境がうかがわれるのであ る。箱書も遠州公の筆となっている。

(展覧会図録より抜粋)

流祖小堀遠州直筆の色紙で、まるみを帯びた定家様の書風をあらわしている。外箱に遠州流 十二世小堀宗慶による箱書がなされ、遠州蔵帳所載の品として極められている。

99 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

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小堀 遠州 鷺吹繪 かさゝきの(和歌) 紙に墨、彩色 軸装  30.7×43.7(紙)cm 全体/102.5×49cm  小堀政尹箱 古筆了意極札

¥ 600,000~900,000

筆は鋭く打ち込まれ、弛むことなく終筆に至る。

払いは先端に向かうほどに切り裂くような勁さ を見せて、骨格は背勢に貫かれて引き締まる。

厳粛にして骨気ある書。この「投機」の二字は 同じような姿をとるが、点画の向き、肥痩など 一つとして同じものはなく、作為は見えない。 二字を貫くのは遒勁の一語においてのみ。墨痕 鮮やかな堂々たる名筆である。

「投機」とは、師弟が互いに自らの「機(=こ ころの働き)」を相手の「機」に「投じる(= 送り込む)」ことでこころが通じ合うことを意 味する禅語。この偈は宋代の名僧で公案禅の大 成者・法演禅師が自らの悟りの境地を表したも のであり、これにより師の守端禅師より印可を 得た。即ちここでの「投機」は大悟の機縁を意 味し、続く偈頌はまさにその境地を表す。表面 上の文意は辿りやすいが、この裏には悟りの深 い境地を含み込んでおり、清巌は筆意でもって それを表している。清巌宗渭(1588~ 1661)は大徳寺170世。千宗旦参禅の師。書 に優れ、茶道に通じた。

本幅は裏千家の老分格で京都の数寄者であった 西村朝陽菴の旧蔵。殊に書画の蔵幅において知 られ、昭和4(1929)年3月22日に行われた朝 陽菴の売立の巻頭を飾ったのが本幅である。

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大徳寺 清巌 宗渭 投機(横物)

紙に墨 落款と印有 軸装  30×101.5(紙)cm 全体/120×110.2cm 箱付 真珠庵、古筆了意極札  「當市西村朝陽庵氏所蔵品目録」(京都美術倶楽部 1929年)No.1に掲載 ¥ 300,000~500,000

100 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

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大徳寺 春浦 宗熙 三行書

紙に墨 落款と印有 軸装  60.7×25(紙)cm 全体/139×42cm  箱付(箱蓋表に小堀政恒貼紙 箱蓋裏に古筆了仲極札)  「西伯堂及當地某家所蔵品入札」(大阪美術倶楽部 1915年) 目録に掲載 同目録付

¥ 1,000,000~1,500,000

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良寛

風月之友(巻物)

紙に墨 26.1×196.2(紙)cm 全体/31.7×313.2cm  原田勘平、森哲四郎箱 権田雷斧書付板付  「良寛遺墨複製頒布趣旨」資料付

文献:「墨美 第141号」(墨美社刊 1964年)に掲載 同文献付

¥ 1,000,000~2,000,000

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良寛(1758/59~1831)は江戸後期の曹洞宗の禅僧で、歌人、 書家として知られる。号は大愚。生涯寺を持たずに托鉢を行い、自 然を愛し、人に法を説くこともなく、多くの階層の人と親しく交わ ったという。歌詩書に優れるがどれも師がおらず、和歌は『万葉集』 を愛して平明ながら格調高く、書は王羲之の法帖、懐素『自叙帖』、 平安時代初期の『秋萩帖』を学び、風韻に富む。

本巻物は良寛筆の長歌を14首載せたものである。良寛の書跡の研 究家として名高い原田勘平によれば、はじめ半紙二つ折りの12枚

を綴った冊子であったのをつなぎ合わせて巻子に仕立て、仏教学者・ 僧侶の権田雷斧により「風月之友」と名付けられたという。書家・ 森田子龍の編集する書道雑誌『墨美』にて昭和39(1964)年に一 冊をかけて特集し、翌年には複製頒布を行った。発起人は原田勘平。 推薦人に当時の畠山記念館館長・酒井千尋、東京国立博物館の書跡 部門の責任者の任にあった堀江知彦など、錚々たる顔ぶれが並ぶ。 書かれた内容からして良寛最晩年の書である。枯淡の境地にあり、 筆路は端然として趣深い。

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良寛

草書屏風(六曲一双)

各紙に墨、落款有 H174.1×W59.3cm×6曲(各) 箱付

¥ 500,000~1,000,000

一般に漢詩を書き付けるにあたり、白文のまま書く場合と、訓読したものを漢文に変えながら書く場合とがある。前者であれば問題は無いが、 後者であれば語順が本来の漢文では起こりえない日本語的漢文となることがある。更にこれに記憶違いや書き間違いも加わることがある。 良寛は自作詩を書き付けた手控えを持っていなかったとも言われる。事実遺墨をみるに、語順が異なっていたり、明らかな書き間違い、別の 詩語との混同も見受けられる。語り継がれている良寛の人間性からすると、以上のことも含めて良寛書の魅力だといえよう。

この六曲一双屏風もまさにそれが生じている。以下に世に通行している文句・語順にしたものを右隻から記す。ほとんどが漢詩であるが、中 に1点万葉仮名により記された長歌を含む。

余家有竹林 冷々数千干 笋迸全遮路 梢高斜払天 経霜陪精神 隔烟転幽間   宜在松柏列 何此桃李姸 竿直節弥高 心虚根愈堅 愛尓貞清質 千秋希莫遷  はちのこを わかわするれとも とるひとはなし とるひとはなし はちのこあはれ  春気稍和調 振錫出東城 青々園中柳 泛々池上萍 鉢香千家飯 心抛萬乗栄 追慕古佛跡 次第食乞行  自来円通寺 幾回経春冬 門前千家邑 更不知一人 衣垢手自洗 食尽出城闉 曽読高僧伝 僧可々清貧  大江茫々春将暮 楊花飄々点衲衣 一声漁歌沓靄裏 無限愁腸為誰移  袖裡毬子直千金 謂言好手無等匹 箇中意旨如相問 一二三四五六七  城中乞食罷 得々携嚢帰 々来知何処 家在白雲陲  対君々不語 々々意極哉 帙散床上書 雨打簾前梅 箱書に所蔵者の先祖が五合庵に良寛を訪ねて、この屏風に貼られてある書を得たとの由緒が記されている。

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紙に墨 落款有 軸装 35.6×37.6(紙)cm 全体/116.9×57.3cm 箱付 田中光顕旧蔵 古筆極札  文献:黒木安雄編 「書苑 第1巻第10号」(法書会刊 1912年)に掲載     春名好重編著 「古筆大辞典」(淡交社刊 1979年) P.373に掲載

¥ 2,500,000~3,500,000 濃く太く筆を下ろし、やがて細く薄くなる自然な流れの運筆が全体を貫いている。しかし、「十」の縦画から「合」 の第一筆にかけてと徐々に細くなる一方で、「合」第一筆の左回転の動きは転切でわずかに右回転となり、終筆 でやや溜めをとる。吊り上げた筆の穂先が紙面を捉えながら第二筆の始めに移り筆が強く押し込まれる。勢いそ のままに強い右回転に転じて徐々に線を太く速度を上げながら、終筆では線の太さは変わらずに運筆をわずかに 左回転に移すなど、所々で緩急と肥痩が混ぜ込まれており、その巧みな運筆は辿るに飽きがこない。字の姿は均 整が取れて、点画は豊満にして穏和。和様の能書である。

本状は平安末から鎌倉初期にかけての歌人・歌学者の顕昭の書状。顕昭の真蹟を判じる基準であり、『古筆大辞典』 に一項目を割いていることに表れているように極めて価値が高い。顕昭は『千載集』以下勅撰集に42首選ばれ ており、また22の歌合に出詠したが、『六百番歌合』では藤原俊成の判定に抗弁して『六百番陳状』を著している。 これらは新古今集時代の文芸批評の頂点とされる。

本状には東京帝国大学の借用書が添う。当時の所蔵者は宮内大臣を務めた田中光顕伯爵(1843~1939)。古典 籍への造詣深く、資料蒐集、関連した随筆も多く遺すが、資料の殆ど全てを寄贈した。本状はその後、歌人・古 筆研究家の大口鯛二(1864~1920)に渡る。大口が顕昭の学識の高さを説くのを聞き、田中が即座に「敷島 の道の学の奥深き古人や君が友なる」と書き付けて、秘蔵の本状を割愛したという逸話が、本状と共に『書苑』 に載せられている。『書苑』は明治44(1911)年の創刊。近代書道の発展を期して、当時の代表的な研究者が 論考を載せ、また一般に見ることのできない希覯のものを紹介した。

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116 顕昭
消息
105

117

曽我 蕭白 関羽図

紙に墨 落款と印有 軸装  128.7×42.2(紙)cm 全体/214.6×59cm 箱付

¥ 1,200,000~1,800,000

曽我蕭白(1730~1781)は、京都の商家に生まれる。本姓は三浦、名は暉雄。 号は蕭白のほか、蛇足軒、鬼神斎など。初め狩野派の高田敬輔に師事したとされ、 室町時代の伝説的な画家・曾我蛇足に私淑してその十世を名乗った。晩年に京都に 定住するまでは伊勢松坂、播磨高砂などに幾度かの長期滞在して制作をしたという。 風狂ぶりを示すような奇行を伝える逸話が多い。

作品は着色のものも知られるが、水墨を主としたとされる。今回出品の2点も同じ く水墨ではあるが、特に衣文の表現が対照的である。LOT117は穂先を駆使して輪 郭を取り、描いた文様に濃淡をつけていくスタイルで、特に髭周辺の表現に集約さ れているかのように細緻な印象を受ける。対してLOT118は筆の全面を同時に使い、 筆を下したそばから衣文が完成していくかのような即興性を覚える。曽我蕭白の高 く幅広い技術の一端が伺える2幅である。

118

曽我 蕭白 寿老鶴亀図

絹本に墨 落款と印有 軸装  104.1×38.8(絹本)cm  全体/190.7×56cm  箱付

¥ 1,000,000~1,500,000

117 118 106 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

120 小林 一茶 一茶画讃

紙に墨 落款有 軸装  101.5×27.5(紙)cm 全体/185.8×33.9cm  河東碧梧桐箱

文献:新井義雄編     「一茶遺墨鑑」(新井大正堂刊 1926年)     No.27に掲載

¥ 700,000~1,000,000

古来「東の松島 西の象潟」と謳われる象潟は、 文化元年の震災により八十八潟九十九島の景勝が 失われたことでも知られている。一茶は文政8年 にこの地を訪れており、本作も同時期の筆と考え られる。忽にして滄海変じる世の無常を、一茶ら しい簡潔な句で詠う佳品である。明治期の俳人・ 河東碧梧桐の箱書がなされている。

119

森 狙仙 秋草猪図 絹本・彩色 落款と印有 軸装  42.2×54.3(絹本)cm 全体/137.4×76.5cm 箱付

¥ 600,000~900,000

思ひきや一夜に 斯くならんとは 象潟の 缼 を つかんで
119 120
鳴千鳥
107 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
石も一茶

121 尾形 乾山 松燕子花図屏風 紙本・彩色 落款と印有 H167×W57.7cm×6曲

文献:「乾山抱一」(高見澤木版社刊 1940年) No.14に掲載     山根有三編 「琳派絵画全集 光琳派 二」(日本経済新聞社刊 1980年) P.234に掲載  展覧会歴:「乾山名品展」(日本橋白木屋 1958年) 図録No.66に掲載       「乾山の絵画」(五島美術館 1982年) 図録No.58に掲載

¥ 7,000,000~12,000,000

108

幹を捩らせながら奥へ奥へと向かう松。左に分かれた枝は対照的にしな る様にすらりと伸びているようでいて、よく見ると螺旋状に捻じれてい る。松の先に見える土坡は、山なりに曲線を描いて左手前にせり出して、 そのまま画面から消えながら、大きくまわり込んで遠く左端に現れる。

土坡に沿い岸一面には燕子花。青に白にと鮮やかに咲く中に、右には葦、 左には沢潟が姿をわずかにのぞかせて視線が誘導される。その先に水面 がゆらぎ、遠くかすみながら画面の奥へととけ込んでゆく。

松の枝と土坡は同じような曲線を描きながら、間に挟まれた一群の燕子

花がわずかに角度を変えて変化を生んでいる。また、松の葉、燕子花は 同じ意匠を重ねつつ、角度を変えたり一部を隠したりと、やはり変化を つけて見せており、凝らした意匠が巧みに配されて観る者を惹きつける。

作者は尾形乾山(1663~1743)。実兄・尾形光琳と共に江戸を代表す る芸術家。乾山は陶芸家として有名であるが、書画にも優れた作品を残 している。現存する絵画作品は六十歳を過ぎての、京都から江戸へ下っ てからのものがほとんどであり、本作も「七十八翁」と落款に記されて いる。

109 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

南蛮更紗各種 [7点セット] W82.5~112×190~245cm 3点に直し

「岡野繁蔵氏蒐集品并某家所蔵書畫道具入札賣立」(東京美術会館 1942年)目録No.53に1点掲載 同目録付 ¥ 2,000,000~3,000,000

更紗とは室町末から江戸を通じて日本にもたらされた外来の染織品のことである。本来は舶来のものだが、その意匠を模倣して 日本で作られたものも更紗という。「異国情緒ある模様の布の総称」とする他ないほど、技法や製作地、模様など、何れも多岐 に亙る。中でも本作のように金の加飾をつけた更紗を金更紗と呼ぶ。金更紗は儀式儀礼における衣装や、扉の幕などの装飾布、 また敷布などに用いられた。

この一群の更紗は一まとまりで伝わったもので、うち1点に「岡野繁蔵所蔵」の札を付す。岡野繁蔵(1894~1975)は実業家、 のち衆議院議員。20世紀初頭にインドネシアのスマトラ島へ渡り、実業家として成功したが、太平洋戦争勃発に伴い帰国、戦後、 衆議院議員となった。昭和17(1942)年に東南アジアに滞在中に自ら蒐集した陶磁器と更紗を中心とした売立を行った。この 一群の更紗のうち1枚はそのときの売立に出されたものである。岡野の蒐集品は珍しい物が多く含まれ、2018年には東京国立博 物館にて岡野旧蔵の染織と陶磁器の展覧会が行われている。

ここに出品された7枚とも儀礼用の衣装、花嫁用の肩掛として使われたもので、19世紀のインドネシア製と見られる。あまり類 例のない文様の更紗も含まれており、興味深い一群である。

122
110
111 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

123

呉須赤絵赤玉麒麟文大皿 H8.6×W38.6cm 箱付

¥ 600,000~800,000

124

呉須赤絵双龍花文大皿 H9.5×W37.7cm 箱付

¥ 400,000~600,000

124 112 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
123

125

¥ 400,000~600,000

¥

呉須赤絵双龍花鳥文大皿 H9.3×W36.5cm 小山冨士夫箱 126 天啓赤絵魚藻文銅鑼鉢 H6.3×W23.4cm 箱付
113 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
300,000~500,000 125 126

127

徳化窯白磁倣青銅器龍文香炉 H8.4×W15.5×11.5cm 箱付(布タトウ) 木製台座付

来歴:Sotheby's Hong Kong、The Edward T. Chow Collection、1981年5月19日 ¥ 500,000~800,000

114 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
図柄拡大 底部

128

火焔紅釉長頸瓶 H39.4×W21.4cm 箱付 木製台座付

¥ 1,500,000~2,500,000

115 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

129

青磁瓜形香炉

H5×W9.7×8cm 箱付 木製蓋付  「井上侯爵家御所蔵品入札」(東京美術倶楽部 1925年)目録No.178に掲載  「中宮家蔵品入札」(金澤美術倶楽部 1930年)目録No.51に掲載

¥ 4,000,000~6,000,000

胴に加えられた5つの筋が6つの稜を生み出して瓜の姿をなしている。膚は滋潤。釉色の淡い緑は瓜形の稜間に沈み込み、深い緑へとゆ るやかに変じている。くるりと曲がった蔓はぷつりと切られ、葉は縮れるように皺を寄せる。光を浴びることで艶と陰翳は弥増しになり、 釉色もゆらいで、複雑な景色を見せている。

本作は瓜を縦半分にして寝かせた意匠の香炉である。大正14年の井上侯爵家の売立と昭和5年の中宮家の売立にて競売にかけられた。井 上侯爵は鹿鳴館外交で知られる政治家の井上馨。骨董蒐集への熱意と優れた鑑識眼から質、量ともに明治期最大の個人コレクションを形 成し、益田鈍翁などと茶の湯を嗜んだ。中宮家は日本三大銘菓の一つ「長生殿」を生んだ加賀藩御用菓子司・森八の当主。元の当主は森 下屋八左衛門を代々名乗る家柄だが、明治44年に経営難から血縁にある中宮茂吉が当主を託された。井上侯爵家の売立で本作を落札し たのは現在の古美術かじ乙。金沢の老舗茶道具商である。売立の情報によれば、箱書小堀権十郎、『松屋会記』の記載、三宅亡羊所持、 前田家伝来、などが知られる。小堀権十郎は小堀遠州の三男。『松屋会記』とは安土桃山から江戸初期にかけて、奈良の豪商・松屋家が 三代に亘り記した現存最古の茶会記。この『松屋会記』寛永9年10月5日の項に三宅亡羊所持として「瓜半分青地香爐ニ、タカヤサンニ テ蓋アリ」とある。「タカヤサン」とは鉄刀木のこと。三宅亡羊は江戸初期の儒者で宗旦四天王ともされる茶人。亡羊、前田家、井上馨、 かじ乙、森八と、名品に相応しい見事な来歴を備える。14~15世紀、中国の産。

別角度 116 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

131

龍泉窯青磁鯉耳花瓶

¥ 800,000~1,300,000

H22.9×W10cm 箱付
118 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

132

染付草花文角瓶(一対) H16.5×W8.6×6(各)cm 箱付

¥ 300,000~500,000

133

古染付青海波梅花散文花瓶 H22.2×W10.8cm 箱付

¥ 500,000~700,000

119 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

134

古染付馬鹿図富士山形鉢 H5.8×W28×24.6cm 箱付

参考文献:後藤茂樹編 「世界陶磁全集 14 明」(小学館刊 1976年)       No.265に同手作品掲載       京都国立博物館編 「特別展覧会 日本人が好んだ中国陶磁」(京都国立博物館刊 1991年)       No.164に同手作品掲載       善田のぶ代著 「古染付と祥瑞 その受容の様相」(淡交社刊 2020年)       No.70に同手作品掲載

¥ 3,000,000~4,000,000

印象的な富士山形の脚付皿。中国明朝天啓頃の景徳鎮民窯所製で、大和文華館蔵の類例が広く知られ ている。和様の美観に寄り添う意匠で、茶方からの注文品と考えられている。

器形を山容に見立てた絵付が面白い。裾野に樹木低山、山間に走鹿と野馬を据え、三つ又にわかれた 山頂付近に雲が棚引き、千鳥が飛遊し、余白に「木石多居 鹿馬多遊」の詩句が添えられている。

型打ち成形で、箆による調整がなされ、底部に半環状の三脚が設けられている。

古染付中、出色の優品である。

120 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

135

祥瑞詩入筒茶碗 H7.6×W9.1cm

高台内に描き銘「五良大悑呉祥瑞造」 箱付  展覧会歴:「茶の湯の名碗七十選」(金沢市立中村記念美術館 1996年) 図録No.7に掲載 ¥ 1,500,000~2,500,000

122 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
別角度 底部

136 加彩婦人俑

H38.9×W13.4×10.5cm  箱付(布タトウ) 木製台座付

¥ 400,000~600,000

髪を高く結い上げた女性の豊かな頬はほんのりと色づいて唇には紅を差し、 差し出した左手の指先には小鳥を乗せている。左足を前にして右足に重心を かけて立ち、右手を胸にやる仕草からは、どこかもの憂げで、小鳥にかすか な戸惑いを覚えつつも、そのさえずりに耳を傾けようとする様子が伝わって くる。髪型、ゆったりとした衣、裾の先に見える靴など、まさに正倉院の鳥 毛立女屏風の唐美人そのものであり、このことから本俑の衣に華やかな彩色 が施されていたことが伺える。

盛唐(712~765年)の頃になると、墓の壁画や副葬品の俑などに表され る女性像は、それまでの細身からふっくらとした豊満なスタイルへと変わる。 盛唐期の女性俑の優品である。

137 加彩武人俑

H62.8×W21×16.5(台座含む)cm  作品は台座に固定されている 箱付 木製台座付

¥ 500,000~800,000

137 123 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
136

138

白玉桃形水滴

¥ 700,000~1,000,000

139

堆朱山水人物文四方盆

¥ 600,000~800,000

H4.4×W9.2×8.5cm 箱付 木製台座付 W21.6×21.4cm 箱付
124 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

140 唐銀器花鳥文盃 H6.2×W7.8cm 箱付

¥ 1,000,000~1,500,000

動画で作品をご覧いただけます。

141 唐銀器雌雄鹿文合子 H1.8×W3.6cm 箱付

¥ 500,000~800,000

LOT140は銀製の高脚杯である。口縁はやや端反りになり、底部は円形 の台を設けて脚と接合している。脚端末広がりに外に広がる。胴には唐 草文と、一対の鴻雁文を配し、余白を魚子で埋めている。脚部には葡萄 唐草文を廻らせる。胴に目を遣れば、唐草は勢いよく捻じれて、その間 の真反対の位置に表わされた鴻雁はそれぞれ羽の模様を違えて首を後ろ に向けるが、その角度は一様ではなく、生き生きとした印象を受ける。

LOT141は化粧道具であろう、銀製の小さな合子である。上面には番と 見られる鹿がゆったりとくつろいでおり、上下に唐草が萌え出ている。

底部には放射線状に宝相華文が表され、全体の文様の隙間は魚子で埋め

尽くされる。上面の鹿の一方には霊芝状の角が生えている。同じような 角を持つ鹿は正倉院の鍍金の銀盤にも見える。

唐代には装身具をはじめ、香炉、馬具、化粧道具など、様々なものに銀 が使われた。殊に酒器、食器には夥しい量の銀を用いており、高貴な人々 のみならず、民間の酒場でも銀器が用いられていたという。銀器は材質 とその上に刻まれた細密華麗な唐草などの異国趣味溢れる文様から、隋 唐という時代を象徴する工芸であったが、三彩や白磁など、同時代の陶 磁器に比べると遺例は圧倒的に少ない。唐代の希少な遺例である。

140 140(図柄) 141
125 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
141(別角度)

唐響銅三足盤

H5.1×W20.3cm 箱付

¥ 1,200,000~1,800,000 盤面の多くが緑青で覆われる中に、わずかに地肌がのぞいている。淡い黄色味を帯びた金属色は鮮やかな緑の中にあって 輝きを増し、この造形が備えている均整の取れた曲線の優美さを引き出している。肌に文様は無い。それゆえにこそシン プルな造形特有の強さが際立ち、無秩序に広がる緑青と相俟って、独特の美的世界を作り上げている。底に三足がつくの は珍しく、均整のとれたこの脚は全体に瀟洒な印象を与えている。

響銅は銅と錫を主成分とする銅合金の一種で、通常の青銅に比べ錫成分がやや多い特徴がある。叩くと音がよく響く性質 からの呼称とされる。

洗練された姿に蒼古たる趣の唐代の佳品である。

142
126 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

143

北魏青銅仏坐像

H13.3×W8.6×8(台座含む)cm  作品は台座に固定されている 木製台座付

¥ 1,000,000~1,500,000

144

統一新羅鍍金仏

H9×W3.9×3.9cm 箱付 木製台座付  文献:市川猿之助著     「猿の眼 僕ノ愛スル器タチ」(淡交社刊 2016年)     P.116~117に掲載 同文献付

¥ 1,000,000~1,500,000 下駄の歯形の台座に、結跏趺坐して禅定印を結ぶ、偏袒右肩の 青銅仏。光背には条線化した火焔文、連弁状の頭光、9体の化仏、 両脇に小さく脇侍を表す。裏面は下方に二仏並坐像、上屋に弥 勒仏らしき単独の坐像、その他多くの小像を配する細かい造り をとる。錆や荒れがあり、総体に侘びた風情を見せるなかで、 卵型で前方に出された顔に浮かぶ微笑みが印象深い。同様式の 像は浜松市美術館蔵のものをはじめいくつか巷間に伝わってい る。北魏の作とみられる。

143 143(裏面) 144 127 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

145 李朝染付梅鴬文壷 H38×W30cm 箱付

¥ 15,000,000~25,000,000

128 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

146

李朝染付花文壷 H23×W23.3cm 箱付

¥ 2,300,000~2,800,000

口が直立し、大きく肩を張り出して、裾で窄まる姿をとる。四方に配された染付の花文は、4弁の花 を咲かせて、左右に枝葉を伸ばしている。花が2輪、上下は短く、左右に長く枝を伸ばし、下方先端 の葉は右側の花の右端で右上から左下に向かうなど、おおまかな文様構成は同じだが、葉の枚数はバ ラバラである。そうした意匠の差異が、こののびのびとおおらかな筆致によく適う。肩の下が褐色に 変じているが、膚そのものは肩に見られるように白くやわらかなものであり、先に述べたおおらかな 調子と相俟って、総体として他にはない独特の風合いを醸し出している。18世紀の作。

130 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

147

李朝染付辰砂梅蘭文瓶 H23.3×W14.8cm 箱付  文献:池谷正夫編     「李朝徒然」    (池正刊 2022年)     No.19に掲載

¥ 1,000,000~1,500,000

梅が左から右へと大きな幹を捩じらせて、伸ばした枝の上でこぼれんばかりに咲 いている。今一方には蘭であろうか、まっすぐと上に伸びて花を開かせている。 大胆な筆致の梅ではあるが、幹は筆を重ねて描かれており、巧みに濃淡を出して いる。一方で蘭は基本的に一筆で描かれており、濃淡は筆の運びに自然と表れて いる。赤い花は、梅においては輪郭を取り、蘭は没骨による。蘭では辰砂のにじ みが花の形をぼかしてみせて、淡描の染付と絶妙に響き合い、実に趣深いものと なっている。対照的に梅の花は輪郭を設けることでくっきりとした印象となり、 幹の力強さとうまく釣り合っている。ここに輪郭の無い蕾がいくつか加えられて よいアクセントとなっている。

辰砂は揮発しやすく、また色味も安定しないことが多いが、本作は実によく発色 している。画工の計算と感覚と焼成の条件がうまく合致した19世紀の佳品である。 別角度

131 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

¥ 700,000~1,000,000

148
李朝染付仏手柑菊文壷 H19×W22cm 高台内に描き銘「壽」
別角度 132 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

149

李朝染付菊仏手柑文小壷

H8.2×W9.5cm 高台内に描き銘「壽」 箱付

¥ 1,200,000~1,700,000

別角度 133 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

150

李朝白磁祭器 H12.7×W18.8cm 箱付 塗蓋付

¥ 500,000~800,000

150

151

文献:浅川伯教著     「李朝の陶磁」(座右寶刊行會刊 1956年)     No.65に掲載 同文献付  展覧会歴:「浅川伯教資料展」      (山梨県立美術館 1988年)       図録No.8に掲載 同図録付 ¥ 700,000~1,000,000

この形は儒教の祭器で、中国古代の銅器に範 を採る。総体に掛けられた淡青釉に貫入が走 り、景色となる。胴に段を設けた碗形で、縁 に二角を備えている。5支に分かれた短い脚 部は不揃いに配されており、質朴とした興趣 がある。李朝前期、全羅南道光州郡川南面の 所産。

浅川伯教著「李朝の陶磁」の所載品で、舶来 の遺例は希少なものとして記述されている。

134 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

高麗青磁象嵌狂言袴杯 H8.9×W6.5cm 箱付

¥ 450,000~650,000

153 高麗青磁陰刻牡丹文香炉 H10.5×W9.3cm 箱付

文献:梅澤記念館編     「朝鮮の陶器-高麗青磁・三島-」    (梅澤記念館刊 1969年)     No.6に掲載

¥ 1,200,000~1,800,000

その肌は淡緑色を帯びて明るく澄んでおり、刻 線に流れ込む釉は緑を濃くして、うねり大輪の 花を咲かせる牡丹をその胴に浮かび上がらせて いる。釉薬は高台にかけて一様にゆるやかに厚 くなり、肩のあたりの器胎が透けるほどに白み がかった緑から青みを帯びた深い緑へとゆるや かに釉色を深めている。流れるような曲線とな めらかな曲面で構成された器がこの肌を備え て、小品ながらもその佇まいは悠揚にして艶麗。 12世紀の佳品である。

本作は1969年に梅澤記念館の「朝鮮の陶器- 高麗青磁・三島-」展にて公開された。梅澤記 念館は日本医事新報社を創立した梅澤彦太郎に よる設立で、次男・信二と2代に亘り蒐集した 東洋古美術の名品を蔵する。それらは梅澤コレ クションと呼ばれて国内外で評価が高い。

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153

152
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李朝白磁竹文十字透筆筒 H11.7×W9.6cm 箱付

¥ 1,500,000~2,500,000

差し込まれたやわらかな光の中で、内底は仄青い翳りに沈み込み、側部 では艶やかな器膚が弥増しに潤む。胴には十字の透かしを配して細い竹 を組むかのような意匠をとり、わずかに青みがかって白い釉肌は文様の 深浅に伴ってなだらかに階調をなしている。

筆筒は本来筆や色巻紙を立てるために用いられるが、室内装飾品として 発達し、書斎のみならず客間にも飾られた。李朝後期には特に室内装飾 の要素の強いものがつくられている。19世紀、分院里窯の産。選り抜 きの磁胎に艶やかな釉膚が美しい。

136 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

155

李朝白磁草花文透筆筒 H11.3×W11.8cm 箱付

¥ 3,000,000~4,000,000

137 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

156

156

李朝染付梨花文皿 H4.3×W19.9cm 箱付

文献:小俣福一郎編著     「李朝白磁・染付皿」    (小俣福一郎刊 1990年)     No.90に掲載 同文献付

¥ 400,000~600,000 157 李朝染付辰砂太極文鎬水滴 H8.9×W11cm 箱付

¥ 500,000~800,000

円筒形を基本として中ほどでわずかに膨らみ をもたせ、側面には縦に溝を加えて鎬を廻ら せる。段をなして盛り上がる上面には辰砂と 染付で太極文を施している。辰砂は発色が難 しく、本作も赤と緑が入り混じる。これが濃 淡交えた染付と絡み合い、また光を浴びて備 わる側面のやわらかな翳りと相俟って、ひと つに溶け合った美的世界を生んでいる。天地 万物生成の根元を表す太極がこの水滴に図ら ずも表れているといえよう。

側面の鎬は竹を意識したものか、竹は古来四 君子の一つとして文人に愛されてきたが、 17世紀初頭の李朝において竹製水滴の陶磁 製に対する優越が称揚されており、これらを 踏まえたと考えられる。磁製の筆筒にも見ら れる竹文だが、本作は明快に竹の形を取らず、 それゆえの抽象性がこの水滴にはよく適う。

類例の無い19世紀の希少な作。

157 138 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

158

李朝白磁陽刻花文瓶 H24.5×W14.7cm 箱付

¥ 700,000~1,200,000

159

李朝白磁六角面取瓶 H31.3×W19.3cm 箱付

¥ 500,000~800,000

158

159

139 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

160

李朝白磁面取瓶 H27.6×W16.3cm 箱付

¥ 1,000,000~1,500,000

140 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

161 李朝白磁瓶 H31.6×W19cm 箱付

¥ 2,500,000~3,000,000

豊かなふくらみが醸し出す健康的な美に目を見張る作品である。流麗に立ち上がった 頸は僅かに弧を描くように肩へと繋がり、張り出した肩はそこから大きく窄まること なく底部へと降りてゆく。底部にかけて窄まる蕪形の花瓶が多い中で、本作のような 安定して力強い器形は殊に珍しい。蒼旻を思わせる微かに青みを帯びた釉肌の透明感、 肉厚ながらも破綻なく端正な造形、どこを見てとっても言葉を弄することが憚られる ほどの洗練された逸品である。李朝時代後期の所産。

141 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

162 李朝白磁壷 H31.1×W29.8cm  初代黒田陶々菴箱

¥ 3,500,000~5,500,000

つややかでほのかなあたたみを覚える白い膚。薄い滲みが下半部に微かな変化をもたらしている。大きな 曲線を描く胴は中ほどで横に豊かに張り出しており、下部には胴に比して小さめの高台が付き、上部には 低い口が斜めに開く。その姿、その膚は、艶に淡い翳りにと、穏やかに表情を移 ろわせている。そこに在るだけで時の流れをゆるやかにするかのようなもの静か な佇まいの壷である。

胴部に残る継ぎ目の痕は大鉢二つの口縁を合わせて成形するために生じたもの で、左右のバランスが崩れるものが多い中、本作は左右の対称性が極めて高い。 李朝中期の優品。初代黒田陶々菴による箱書が添う。

142 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

¥ 1,000,000~1,500,000

163 李朝鶏龍山鉄絵刷毛目草文俵壷 H19.2×W28.5×14cm
143 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

164

李朝鉄砂龍文壷 H34×W37cm

¥ 500,000~800,000

165

李朝鉄砂面取壷 H27.2×W16cm

展覧会歴:「高麗・李朝五〇〇展」      (日本橋三越本店 1974年)       図録No.65に掲載

¥ 500,000~800,000

144 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

166

李朝鉄砂竹文大壷 H29.4×W35.2cm 箱付  展覧会歴:「朝鮮古陶瓷展観」(村上春釣堂 1934年) 図録に掲載 ¥ 3,500,000~4,500,000

145 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

聖徳太子御伝絵(四幅対) 各紙本・彩色、軸装  133.8×72.3(各紙)cm  全体/194×81.1(各)cm  箱付

¥ 1,000,000~1,500,000

聖徳太子は、6世紀末に推古天皇の摂政となり、日本古代における理想的統一国家の成立に尽くすと共に、 仏教に深く帰依し、仏教興隆において大きな業績を遺した。聖徳太子への信仰は薨去後まもなく生じ、「聖 徳太子絵伝」の原型も奈良時代に成立したとされる。

本作は聖徳太子の生誕から薨去までが4幅に描かれている。多くの太子絵伝同様に、事跡の場面は10世紀 に成立した『聖徳太子伝暦』に拠る。順序だてて辿りづらい太子絵伝も多い中で、本作は欠損もなく、 4幅のいずれも下から上へと話が流れるように描かれていて、絵解きが比較的容易である。江戸時代の作。

167
146 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

日吉山王曼荼羅

絹本・彩色 軸装 90×39.7(絹本)cm 全体/170.1×57.5cm 箱付

¥ 300,000~500,000

平安後期、天台宗の総本山・比叡山延暦寺の鎮守である日吉大社、すなわち山 王社は、天台宗の発展とともに山王七社という体制を整えた。その後、中七社・ 下七社が加わり、山王二十一社と呼ばれるようになる。

そうした中、日本仏教思想に、仏や菩薩が衆生済度のために神という仮の姿を とり現れたとする本地垂迹説が生まれた。この考えに基づいて比叡山の神とし て山王権現が生まれ、これを元に日吉山王曼荼羅が作られた。その図像には、 仏菩薩と神の姿で表されたものの二通りあり、本図は後者である。

画面自体が社殿を表し、上段の間に描かれる山王上七社(右上から、八王子・ 客人、二宮・大宮・聖真子、十禅師・三宮)はいずれも俗形であり、外廊欄干 近くで開口の獅子と閉口の狛犬が向かい合っている。階段では神猿が比較的自 由な動きを見せている。描写は細かく丁寧になされ、制作時期は室町時代後期 と見られる。室町時代の垂迹曼荼羅の貴重な作例。

168
169 阿弥陀三尊来迎図 絹本・彩色 軸装 68.8×32cm(絹本)cm 全体/146×51cm 箱付 ¥ 600,000~800,000
169 168 147 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

170 図像抄 四天王

紙本・彩色 軸装 28.6×81.4(紙)cm 全体/122.7×94.9cm 田山方南箱

¥ 500,000~800,000

右から持国天、増長天、広目天、多聞天と並ぶ部分の断簡である。田山方南の箱書には「図 像抄」「延慶二年印玄書写」とある。図像抄とは尊像や曼荼羅など諸種の図像を種類分け して10巻に編集したもので、「十巻抄」「尊容抄」の名もある。成立は平安後期、著者は 永厳とも恵什とも言われるが、自筆本はなく転写本のみが現存する。奥書に印玄の名のあ るものは円通寺に完本が伝わるが、この奥書も含めた後世の書写がいくつもあるとされる。

図像抄はこれを元に仏画などを制作するため完成された厳格なものではなく、それゆえの 自由で奔放な筆致に魅力がある。この素描的な筆遣いは後に絵巻物や水墨画にも影響を与 えたといわれ、近代に至り日本画・洋画の画家からも関心を集めた。本断簡は14~15世 紀頃のものと見られ、四天王の表情や構えが生き生きとした筆致でしっかりと描き分けら れている。

171 二月堂焼経

紺紙・銀泥 22.5×27.7cm  作品は台紙に貼付されている

¥ 500,000~800,000

紺紙に銀字で書写された華厳経の一部。名は東大寺二月 堂の火災に因む。寛文7(1667)年、お水取りで大炬火 による失火により二月堂が全焼。焼け跡から一部焼損し た紺紙銀字華厳経六十巻が発見された。焼け残ったこと のご利益と共に、紺紙銀字経が焦げたところに美を見出 して珍重された。謹厳雄勁たる書風は写経の盛期・天平 期の写経体の典型で、紺紙銀字経の形式は奈良時代唯一 の遺例。奈良時代の装飾経の代表格である。その稀少性 から1、2行と短く切られるものも多い。

171 148 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

一字宝塔経

紺紙・金泥 軸装  26.3×56.5(紙)cm 全体/112.3×75.7cm  箱付 弘文荘反町茂雄旧蔵

¥ 1,500,000~2,500,000

法華経の写経と宝塔の関りは深い。一字宝塔経とは、「法華文字一一 皆是仏也」という思想を具現化し、六万九千三百八十四字とも言われ る法華経の経文一字一字を一仏とみなして宝塔の中に奉安して書写し たものをいう。法華経は仏が宝塔の中より説かれたものと仏典にあり、 それを踏まえたものと見られる。

本断簡も紺紙に金泥で経文の数だけ蓮台と円相が描かれており、上下 欄外に金泥で描かれた蓮の花弁であろう、仏への供養のために散華が なされている。仏国土の瑠璃地を思わせる紺紙に金色に輝く温雅な書 体の経文をやはり金で荘厳している。弘文荘反町茂雄により平安末期 と極められている。

反町茂雄は古典籍蒐集の第一人者。新潟県長岡市に生まれ、東京帝国 大学を出て神田神保町の古書店・一誠堂書店に住み込みで就職した。

31歳で独立して弘文荘を創立。安い本や平凡な本を扱わず、貴重な本・ 珍しい本を専門に扱う目録販売のみの商いを行った。弘文荘の目録に 載せられた商品の中には「土佐日記」や「明月記」など、後に国宝・ 重要文化財に指定されたものが少なくない。箱蓋表には在野の歴史学 者で書誌学者であった森銑三による書付がある。

172
149 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

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重要美術品 紺紙金字閻羅王五天使者経(神護寺経) 紺紙・金泥 29.2×176(全体)cm 箱付

文献:「重要美術品等認定物件目録」(思文閣刊 1972年)     P.531に文字情報掲載

¥ 5,000,000~8,000,000

軸先 150

紺紙に、銀界線の内に金泥で経文が書写されて、表紙には宝相蓮華 文と金泥による外題、見返しには釈迦説法図が付されている。平安 時代に盛行した形式で、巻首下方に「神護寺」の朱方印が捺されて いる。神護寺に2317巻が伝来し、「神護寺経」と通称されている紺 紙金字一切経のうちの一巻である。

神護寺経には奥書などがないため、書写年代や成立事情の詳細は明 らかではないが、神護寺伝来のうち、経帙に久安5(1149)年の墨 書があるものがあり、本写経成立年代を知る一助となっている。神 護寺経は『神護寺略記』に記載される三本の一切経のうちの一つと 見られており、同文献から、鳥羽院の発願になったものを後白河院 の世になって神護寺に施入されたものとされている。これに従えば、 唐で編纂された経典目録の『貞元釈教録』に基づき、12~13世紀 のうちに5400巻程度が書写されており、およそ半数が流伝してい ることになる。

経巻の表紙は元来経典本文の劣化を防ぐための機能的なものであっ たが、大陸で表紙の外面に金銀の唐草文様、表紙見返しに金銀で経 典の内容を描くものがあり、日本では平安時代に入り少しずつ普及 した。

本巻を見るに、表紙は金銀泥による法相華唐草文で埋め尽くされて、 左上端に金泥で匡郭を作り、その内に「閻羅王五天使者経」と 穏和で整った書風で外題を書いている。外題の筆者は藤原朝隆

(1097~1159)と伝えられている。見返しには金銀泥で、遠山を 描き、画面中央から下には正面向きの釈迦を中心に、左右に四尊の 脇侍が大きく描かれる。釈迦の頭上には天蓋のみが描かれ、またそ れぞれの光背には金泥が刷かれている。

遠景の中心をなすのは霊鷲山である。霊鷲山は、中インド、かつて のマガダ国の首都・王舎城の北東に位置し、釈尊が『法華経』など を説いた山として知られ、今なお仏跡として参拝者が絶えない。名 は山の形が鷲に似ているからとも鷲が多く住むからともされる。見 返絵では本巻のように鷲の頭のような山として描かれることが多 く、これは一目で霊鷲山と分からせるためであろう。

経文は、表紙と同じく深々と藍色に染めた紺紙に銀罫が引かれて、 金泥で書写されている。字形は整斉にして温雅な和様の書である。 見返絵の仏尊の丸みを帯びた像容と併せて、経巻総体として穏やか で雅致に富む平安様ののびやかな印象を受ける。

軸首には金銅製の撥型魚子地四弁花文の金具が装着されており、原 装を留めているとみられる。当時の工芸技術の水準の高さと写経を 華麗に装飾しようとする信仰心の篤さが伺える。

先述の通り、表紙は経巻の保護が目的であり、保管に際して傷みや すいものだが、本巻は本文と併せて極めて状態がよく稀少である。 昭和16(1941)年9月24日付で重要美術品に認定されている。

151 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

春日版妙法蓮華経全八巻揃 各紙に木版、墨  25.5×775~1083cm  箱付 弘文荘反町茂雄旧蔵

¥ 3,000,000~5,000,000

春日版とは、平安時代末から江戸時代にかけて、奈良興福寺にて開版印行された版本の経典類のことをいう。興福寺は法相宗の総本山であるた め、刊行物の中心はその根本教義の唯識に関するものであるが、大般若経、法華経等も印刷された。

書体は豊満にして雄勁。金で引かれた界線が経文を荘厳しており、全巻に施された朱点は経典を訓じるためのものであるが、一種の装飾効果を あげている。版木は木材のために摺写を重ねるほどに摩損する。その度に摸刻改版することとなり、書体が少しづつ変じる。書体や紙など総合 的に勘案して、弘文荘反町茂雄はこの法華経全八巻を鎌倉時代中期以前のものと結論付けている。

反町茂雄が創立した弘文荘は、貴重な本や珍しい本を専門に扱い、目録販売のみの商いを行う古書専門店で、その目録には後に国宝・重要文化 財に指定されたものが散見される。この法華経全八巻の巻末には「月明荘」の印があるが、これは反町が第一級と認めた稀覯本にのみ捺された。

鎌倉中期以前のもので、法華経が全八巻揃っていることは極めて珍しい。紙背や巻首の内題下に書かれた内容から、この法華経は全八巻揃で天 保7(1836)年4月15日に上行寺に施入されたものとみられる。

174
152
153 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

金銅孔雀文磬

W18.9×13.7cm 箱付

¥ 1,500,000~2,500,000

磬は元々古代中国起源の打楽器(礼器)であったのが、仏教儀礼に取り入れられたと考えられている。仏教 の磬は寺院で磬架にかけられて、法要の際に導師がうち鳴らす仏器として奈良時代以来鋳造された。打音が 長く響かないものを良しとしたという。初期の姿は左右非対称の「へ」の字型に作られたが、平安期以降は 本作のように左右対称が通常の形式となった。

本作は銅鋳製鍍金で表裏同文。裾開きの山形は高く、磬の外縁は高く盛り上がり、重厚感がある。中央に比 較的小ぶりの複弁八葉の蓮華の撞座を据え、左右にはわずかに片足を上げた孔雀が向かい合うが、文様に厚 みがあり、緊迫感が生まれている。

この文様の形式は国宝にも見られ、鎌倉時代以降盛行した。本作も鎌倉時代の作である。表裏同文だが状態 に差があり、長く同じ方を向けて掛け、同一方向から打たれていたことが伺える。

175
154 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

漆絵竹文瓶子(一対) H29.9×W21.8(各)cm 箱付

¥ 2,000,000~3,000,000

首から肩へとまろやかな曲面をなして、胴にかけてゆるやかに窄まり、反転して末広がりに裾へと向かう。 総体に塗られた黒漆は艶やかにして深みがあり、その上を朱漆による竹叢が風に吹かれてその稈をしなら せている。朱漆には経年による擦れが見られるが、元が厚くぽってりとしているために薄れ方に段階が生 まれて枯淡の趣を見せている。

古来より瓶子は一対以上で神前に供えられ、神に献酒するための神饌具として用いられてきた。今日では 陶磁器のものが多いが、本来は本作のような木器が中心であったとされる。

漆絵は漆に顔料を混ぜて描く技法で、漆工芸の加飾のなかでは最も原初的な方法であり、日本では縄文時 代から見られる。黒地に朱、または朱地に黒で文様を描く一色描のものと、二色以上の彩漆を用いた多色 描の二種類がある。ここに見られる一色描は鎌倉室町期に盛行した。

本作は室町期から桃山期にかけての作と見られる。一対で伝わるのは珍しく、優美な曲線からなる形姿、 それを彩る時を経た赤と黒の対比が美しい。

176
155 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

177

渥美経筒外容器 H35×W22cm 箱付

¥ 600,000~900,000

平安後期、末法思想に基づいて、弥勒下生に立ち会うため の作善として、仏教の教えが途絶えないように仏典を埋納 して保存することが行われた。この遺跡を経塚という。経 典は経筒に納めて埋納されるが、外容器とはその経筒を保 護するものである。外容器は日用の壷などが転用されたり、 そもそも用意されていないことも多い。本作は経筒に合う よう特別に注文されたもので、ここから発願者の篤い信仰 心が伝わってくる。

素地は灰黒色の緻密な土で成形が丁寧になされている。蓋

には宝珠形の端正な撮みがあり、横方向の成形痕と蓋から 身の底部にまで降りかかった黄白色の灰との織り成す景色 が味わい深い魅力を湛えている。12世紀の作。

178

木彫蓮華座 H37.6×W69.5cm

¥ 500,000~800,000

泥中にありながらも美しい花を咲かせる蓮は、娑婆に生まれ落ちて涅槃に至る仏教の精神と重なり、仏像彫刻の発生期から欠か すことのできない要素の一つであった。特に仏を支える蓮華座は簡素なものから荘重なものまで時代を通して様々な様式が伝わ るが、本作は平安期の作とみられ、その大きさ及び装飾の複雑さは当時坐していた仏の格の高さを窺わせる。

頂上には直径50cmを超える蓮肉を有し、下部には複弁の反花が巡り、それを八角の框座が三重に渡って支えている。また蓮肉 と框座を繋ぐ敷茄子部分にも反花が施され僅かに朱の彩色を残している。本作は元々上部に蓮弁を有していたと思われるが、現 在は失われ蓮肉が剥き出しとなっており、その姿は経年と相俟って枯蓮の如き様相を想起させる。仏が去り、花弁が散ってもな お枯蓮はその聖性を失うことなく、時の重みと厳潔さを対峙する者の内に静かに訴えかけてくる。

156 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

百萬塔陀羅尼 H21.6×W10.5cm 箱付

¥ 1,300,000~1,800,000

179
157 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

180

木彫愛染明王坐像 H85.8×W44.3×37.5cm 厨子付

¥ 3,000,000~5,000,000

158 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

182

木彫阿弥陀如来立像 H68.1×W16.2×17.5(台座含む)cm  箱付 木製台座付

¥ 800,000~1,300,000

160 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

¥

木彫男神坐像 H45.4×W35.6×22.9cm
184
500,000~700,000 183 184 161 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

185 木彫男神坐像 H75×W47.3×26.4cm 箱付

¥ 2,500,000~3,500,000

太く強調された眉、眼は切れ長で眼光鋭く、大振りの鼻は鼻翼を膨らませ、強く結んだ口に長い白髭を 蓄えている。簡素な胴との対比によって顔相はより強調され、像の大きさと相俟って神威を醸す。一木 造りで内刳りがなく、刻すに不向きな節のある部分を用いるが、これは樹木に神が宿るという思想の下、 できる限り原木を活かしたものと見られる。

神像は仏像の影響を受けて8世紀頃には造られ始めたとされる。しかし仏像には依拠する経典や図像が あるが、神像にはない。その自由度の高さにより却って個性的な表現が多く生まれた。神像は基本的に は御神体として安置され、直接的な礼拝対象とならず姿を現さない。見られることが少ないために技法・ 造形による編年の研究は仏像ほどに確立されていないが、本像は13~14世紀頃のものとみてよいだろ う。状態が比較的良好でこれほどの大きさを備えた神像は希少である。

The condition report is available
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162 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。
upon

186

ガンダーラ アトラス像

H67.1×W49.8×23.9(台座含む)cm 箱付 台座付

文献:「APOLLO VOLUME CⅩⅢ No.228」(APOLLO MAGAZINE刊 1981年) P.15に掲載 同文献付

¥ 10,000,000~15,000,000

163 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

右腕は膝に手をついて肩を聳やかし、左手は立てた膝 のすぐ下を鷲掴みにする。肩や腕に力が籠り、連なる ように胸が盛り上がる。わずかに内傾する左膝はその 下で足の指先が地面を捉えており、掴む力を押し返す ように左脹脛が膨らみ始めている。顔に目を遣れば、 窪む眼窩は翳りを宿し、眼は見開き、眉根と額に皺を 寄せて鼻翼を広げている。量感のある髪と髭はうねり ながら後方へと流れている。身体を前傾させ右膝を支 点に臀部を持ち上げて、今まさに立ち上がらんと力を 籠める一瞬が捉えられており、その張り詰めた空気が 見事に表れている。

ギリシャ神話においてアトラスはオリンポスの神々と 争い敗れ、その罰として世界の西の果てで天を支える ことを命じられた。この伝説に因み、古代ギリシャ建 築で建物の支柱に男性像を象ることがあった。これが ガンダーラに伝わり、ストゥーパ(仏塔)などの基壇 に据えて、上部の構造物を支える位置に置かれるよう になる。下部構造物として本像を据えるほどの構造物 となると、その全貌は容易に想像できないが、頭の後 ろに枘があることから実際に何かを支えるために作ら れたことは間違いない。これほどの大きさ、厚みを備 えた像はまず見られない。2~3世紀の優品である。

187

ガンダーラ ブロンズ如来坐像

H23.3×W12.9×7.5cm

木製台座付 オックスフォード古美術TL法鑑定会鑑定書

¥ 5,000,000~8,000,000

二菩薩を従えて、獅子座に結跏趺坐し、右手を与願印にとる仏陀の坐像である。左手は一部欠 損しているが、衣の端を掴んでいる。左腕は衣を巻き付けるように捻じて、指先を曲げて衣の 端をそっと掴む。右手と同様に左も手のひらを見せるようにして、人差し指の方から手首の先 を下ろしてゆく。同様に右手も肘の先をやわらかに曲げながら指先をゆっくりと垂下させてい る。通肩に纏う衣の下にはくびれた腰を覗かせて、坐した姿ながらすらりとした体躯が見てと れる。螺髪で囲まれた頭部は丸く高い肉髻をなして、耳朶は長く伸びている。眼には銀象嵌が 施されて静かな光を湛えており、口は端をそっと持ち上げて微かに笑みを浮かべている。その 仕草、佇まいは優雅にして優美である。

ガンダーラ美術の大半は石彫やストッコ製であるが、ごくわずかにブロンズよるものも造られ ている。ブロンズを用いた造像は3世紀頃に始まり、素材として高価であったことから極めて 高い技術を備えた彫師が手掛けたものと考えられている。

本作はオックスフォード大学により、紀元後4~9世紀のものと証されている。破損、腐食に より失われるものも多い中、本作は光背も含めた全体が遺されており、作行きもよい。7~9 世紀の希少な作である。

166 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

188

クメールブロンズ金剛薩埵菩薩 H23.1×W12.4×6.4cm 箱付 台座付

文献:Emma C. Bunker、Douglas Latchford     「Khmer Bronzes New Interpretations of the Past」    (Art Media Resources刊 2011年)     P.207に掲載 同文献付

¥ 700,000~900,000

詳しいコンディションについてはお問い合わせください。

168
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189

テラコッタ女神像レリーフ 51×50.6cm 作品は板に固定されている ケース付 ¥ 5,000,000~8,000,000

169 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

古代ギリシアで制作されたテラコッタの彫像をタナグラ人形という。大きさは様々で、 小さなものは高さ5cm程度のものからある。モチーフも様々、優美な婦人像がよく知 られるが、神々、騎士、楽人、職人、農夫などもある。副葬や神殿への奉納のために 製作されたといわれるが、室内の置物として愛好されていたものも少なくない。紀元 前5世紀からヘレニスティック期にかけて制作された。タナグラの名は1870年代にギ リシャ中部のタナグラの墓地から多数発見されたことに因むが、制作の中心地はその 東のアッティカ地方とされている。

LOT190は二人の立像。向かって左はステップを踏むかのようで、右手を腰にやり背 筋を反らせた姿は颯爽としている。右は少し後ろから相手の腰に手を回し、寄り添う ように立っている。共にほがらかな笑みを顔に浮かべる。

LOT191は背の高い婦人の単独像。手を中空に差し伸べて、いま一方を下に垂らし、 わずかに顔を俯ける。その仕草には気品が漂い、慎ましくもどこか儚げな印象である。

190

タナグラ テラコッタ二人像 H17.8×W9×7.1cm 箱付

来歴:Sotheby's London、1991年7月8日

¥ 400,000~600,000

191

タナグラ テラコッタ婦人像 H35.8×W11×10.3cm 箱付

来歴:Sotheby's London、1986年12月8-9日

¥ 600,000~900,000

190 191 170 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.

192

青銅ホルスを抱くイシス H22.3×W8.4×12.3(台座含む)cm 箱付 木製台座付

¥ 450,000~650,000

193

ローマングラス双耳壷 H11.6×W11.8×10cm 箱付

¥ 300,000~500,000

171 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
192(別角度)

194

バローチスターン動植物文大壷 H74.8×W58.5cm 台座付 オックスフォード古美術TL法鑑定会鑑定書

¥ 3,000,000~5,000,000

やわらかな赤みを見せる膚の上に規則的に配される黒い動植物文。張りのある曲線を描く器体は土 中にて変質した泥を薄らと纏っている。高さ70cm超、一見して分かる造りの堅牢さ、その偉容に はただただ圧倒される。首と肩に圏線を廻らせて、上部にはイトスギとバナナと見られる樹木文を 配し、下部には右向きで、アイベックスであろう長い角を備えたヤギとその上にとまる鳥を連ねて 描く。いずれもシンプルながら印象深い意匠である。なおアイベックスは現在もパキスタンのバ ローチスターン州ヒンゴール国立公園などで群れが観察される。

BC2600~BC1900年頃に南アジア北西部のインダス川流域平原に都市と文字を持つ文明が栄え た。これが世界四大文明の一つに数えられるインダス文明である。実に高度な文明として知られ、 産業革命以前の文明を構成する要素はほぼインダス文明の時代には成立していたとされる。このイ ンダス文明に先行する形で、インダス平原の西部、バローチスターン高原に社会・文化が生まれた。 この地域はイラン地方とインダス平原の間に位置する東西の交通の要衝であり、世界最古の文明・ メソポタミア文明をはじめとするイラン以西の文化が流入し、独特の文化を作り上げた。

本作はそのバローチスターン地方で作られた大壷である。オックスフォード大学によりBC3100~ BC1300年のものと証されている。口周りにわずかに欠けが見られる程度でほぼ完品として残って いる。種々の展覧会で見られるものでもこのサイズで本作ほど状態の良い物は類例が無い。

172 詳しいコンディションについてはお問い合わせください。 The condition report is available upon request.
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