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UP TO DATE 『スマートフォン、話せる携帯情報端末』
−欧米ではi-Phoneで普及が加速。国内もじわりと浸透の兆しが−

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1996年から2000年にかけてPDA(携帯情報端末)が人気を博しました。しかし、軽量化が進むモバイルノートPCと高機能化が進む携帯電話の間で、いつしか日本国内では見かけることが少なくなりました。しかし、欧米では、携帯電話と融合し、「スマートフォン」の呼び名で普及が進みました。半年で400万台売れたiPhoneなど市場は活気にあふれています。日本国内でも、2008年3月には富士通F1100スマートフォンが発売され、スマートフォンに注目が集まり始めました。

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携帯電話と携帯情報端末が1つに

スマートフォンについて明確な定義はありません。広義には、携帯電話と携帯情報端末の機能を兼ね備えた電子機器と言われ、日本の多機能携帯電話がスマートフォンに分類されることもあります。狭義にスマートフォンとは、携帯電話として音声による通話や携帯電話網によるデータ通信と、携帯情報端末としてPCと連携可能な個人情報管理ソフト(Personal Information Management、略してPIMと呼ぶ)やビジネス文書の閲覧機能(ドキュメントビューワと言う)、USBや無線LAN、Bluetoothなど外部との通信機能を搭載したものを言います。
スマートフォンと携帯電話は狭義にとらえるとずいぶん異なっています。最も大きな違いは、スマートフォンがPCとの連携を前提とするのに対し、携帯電話は単体で利用することを前提とすることです。富士通のスマートフォンF1100と携帯電話をいくつかのポイントで比較してみましょう。

スマートフォンと携帯電話
  F1100スマートフォン 携帯電話
オープン性 標準はインターネット、PCとほぼ同等 携帯電話会社内のネットワーク
PCとの接続 USB、Bluetooth、無線LANを搭載 専用ケーブルでUSB接続
データ PCとの連携が前提
ActiveSync(同期ソフト)標準添付
簡単な操作でPCとデータを同期可能
携帯電話単体での利用が前提
専用ソフトでデータをバックアップ
Webページ Internet Explorer Mobileを搭載
他のブラウザに載せ替え可能
PC用のWebサイトを閲覧
専用のブラウザで携帯電話会社のネットワーク上のWebサイトを閲覧
メールシステム Outlook Mobileを搭載
POP3/SMTP、IMAP4、SMSに対応
iモード、ezwebなど専用メールシステム
Pushメール
アプリケーション 同じOSであれば、メーカーや機種と無関係に互換性あり
ブラウザを始め内蔵ソフトを別のものに載せ換え可能
アプリを追加可能だが、携帯電話会社間の互換性はなし
PIMなど内蔵ソフトの載せ替えは不可

オープン性

F1100はNTTドコモの取扱いでありながらiモードは利用できません。これはF1100のスマートフォンとしての大きな特徴です。スマートフォンでは、ネットワークサービスとはインターネットなのです。
一方、携帯電話のネットワークサービスは、iモード、ezweb、Softbankなど各携帯電話会社のネットワークが標準です。「メールし放題」や「パケット通信し放題」は、ほとんどの場合携帯電話各社のネットワークでの利用に限定されます。インターネットへの接続は「〜放題」の適用外となり、定額プランも高額になります。携帯電話ではインターネットは標準ではないのです。

PCとの接続

F1100は、無線LAN、Bluetooth、USBと複数の外部インターフェースを装備しており、利用環境に応じて選択することができます。利用にあたってはBluetoothや無線LANを設定しなくてはならず、最低限のPCや周辺機器に関する知識を必要とします。
携帯電話は外部とのインターフェースをほとんど持っていません。専用のUSBケーブルとソフトウェアが添付されていますが、着うたなど携帯電話用の音楽データのやりとりやPIMデータのバックアップ、デジカメ写真転送のための機能です。

データ

PCとF1100の間でデータを同一のものにする機能が“同期”です。F1100の場合、内蔵されたOutlook MobileのデータをPCのOutlookと同期させることができます。F1100とPCを同期することで両方のデータを、常に最新のしかも同一化することができます。USBやBluetoothでPCと接続し、同期ソフトを起動するだけで、メールやスケジュール、連絡先、TODOリスト、データファイルをほとんど自動的に同期することができます。
携帯電話のPIMやメールは機器単体での利用を前提としていますので、専用ケーブルでPCと接続して、さらに専用ソフトでデータを操作します。Outlookやメールソフトなどとの同期には、サードパーティ製の同期ソフトを利用することになります。

メール

F1100が扱うメールはインターネットメールです。会社のメールアドレスやプライベートで使っているメールアドレスで送受信できます。メールの設定はユーザー自身が行うことになりますので、携帯電話のメールに比べるとハードルは高いようです。
携帯電話のメールは、iモードやezweb、Softbankなど携帯電話会社独自のネットワークのメールです。メールは携帯電話に直接着信するPushメール方式です。
スマートフォンでもBlackBerryは別で、専用ネットワークで専用のサーバーに接続するシステムです。携帯電話と同様にPushメールです。BlackBerryがビジネスユーザーに人気があるのは、このネットワークがセキュリティ上有利であることが大きな理由と言われています。

Webページ

F1100は、Internet Explorer Moblieを搭載しておりPC用のWebサイトを表示します。インターネット接続に無線LANを使用すれば、PCと変わらない速度で同じコンテンツを利用することができます。OperaやNetFrontなど好みのブラウザをインストールして使用することもできます。
携帯電話は、各携帯電話会社の専用のWebサイトを表示します。ブラウザは機種固有のもので変更することはできません。しかし最近では、フルブラウザを装備してPC用Webサイトを閲覧可能な携帯電話も増えています。

アプリケーション

F1100はWindows Mobile 6を搭載しており、互換性のあるアプリケーションをインストールして使用することができます。スマートフォンは、OSが同じであれば、メーカーや機種が異なっても同じアプリケーションを利用可能です。標準装備のソフトを入れ替えたり、サードパーティのソフトやシェアウェア、フリーウェアで自由にカスタマイズすることができます。
携帯電話は、PIMやアクセサリなどの内蔵されているアプリケーションは削除したり他のものに置き換えたりすることはできません。追加は可能ですが、iアプリ(ドコモ)、Brew(au)、S!アプリ(Softbank)のように携帯電話会社ごとに異なるプラットフォームに対応するアプリケーションを用意する必要があります。

スマートフォンのハードとソフト

ハードウェアの特徴

F1100を例に、典型的なスマートフォンのハードウェア的な特徴を下図に示します。

ボディスタイル

スマートフォンの特徴はそのボディスタイルにも表れています。キーボードの種類とその実装方法によりデザインが異なります。

スマートフォンのボディタイプ
テンキータイプ ストレートタイプ スライド式 併用タイプ
テンキーによる文字入力に馴れた日本国内ユーザーには有利。ボディが軽量コンパクトになる利点がある 可動部がなく直線的なボディスタイル、海外のスマートフォンで人気があるスタイル 文字入力時にはスライド式のフルキーボードを引き出して使う。画面やキーを大きくできる利点がある 通話時にはテンキー、PIMなどの使用時にはスライド式のフルキーを引き出して使う。電話利用が多いユーザーに便利

スマートフォンのソフトウェア

スマートフォンには次表のようなOSが搭載されています。

スマートフォンのOS
OS 主なメーカー 概要
Windows Mobile 富士通、i-mate、Qtek、Dopod、O2、HP他 Outlookやお気に入りの同期などWindowsとの相性の良さが特徴。機器組込用として開発されたWindowsCEがベースで現在はWindows Mobile 6。ProfessionalとStandardの2種類があり、前者はタッチパネルで操作する
Symbian OS Nokia Motorola、Samsung、Sony Ericsson他 英国PSION社のPDA用OSが発展したもの。リソースの小さい携帯機器用で省メモリ・省電力が特徴。
欧米の携帯端末では幅広いシェアを獲得している。ドコモのF905iなどFOMAシリーズの一部にも搭載されている
BlackBerry OS Research In Motion OSは独自のもので、もともとページャ(ポケットベル)。独自のサーバーと独自ネットワークで、端末は一種のシンクライアントに近く、セキュリティ上有利と評価されている
Palm OS Palm、GPL(GS PDA)他 軽快な動作、簡単手軽なPCとの同期、手頃な価格で人気を博したPDAのOSが発展したもの。互換OSのPDAを発売したHandspring 社がPalmOSのTreoシリーズでスマートフォン市場に参入したが、現在TreoはWindows Mobile
iPhone OS Apple Mac OS Xのサブセット版を基盤とするOS。Mac OS Xのウィジェットを始めMac OS Xの基本的なアプリケーションが動作する。タッチパネルで全てを操作するユニークな操作性が特徴

機種やメーカーによって異なりますが、スマートフォンには、ほぼ共通に搭載されるアプリケーションがあります。F1100を例に表にしました。
最初から内蔵されている以下のようなアプリケーションも、市販のアプリケーションやシェアウェア、フリーウェアなど別のものに入れ替えることができます。

F1100スマートフォンのソフトウェア
アプリケーション 機能
Outlook Mobile
(個人情報管理、PIM)
住所録(電話帳)・スケジュール・メモやTODOリストなど、個人情報を入力・表示・編集する。出先で入力したデータをPCと同期させて常に最新の状態を保つことができる
Outlook Mobile
(メールソフト)
PC用のメールソフトとほぼ同等の機能を持ち、送受信可能。Pushメールに対応しているものが多く、メールを自動的に受信可能
Internet Explorer Mobile
(Webブラウザ)
PC向けのWebページを閲覧可能。画面全体の縮小表示や、スクロール表示など小さな画面でWebを表示するために工夫されている
Picsel PDF Viewer
(ドキュメントビューア)
Word、Excel、PowerPoint、PDF、画像データなどを表示する。
Mobile版のWordやExcelを搭載しデータを編集できるものもある
Windows Media Player
(マルチメディア)
音楽や動画などマルチメディアコンテンツを再生する。出先でのプレゼンテーションや携帯音楽プレーヤーとして使うことができる
ActiveSync
(同期ソフト)
スマートフォンとPCのデータを同期する。PCにインストールして使用。USBやBluetoothでPCと接続し、メールやスケジュール、連絡先、TODOリスト、データファイルなどをほとんど自動的に同期する

スマートフォンの本格的な普及は?

1999年、iモードがサービスを開始し、BlackBerryが発売されました。今日、iモード契約者数は約4800万人に達し、BlackBerryのユーザーは1200万人、スマートフォン市場では世界最大のユーザーを抱えています。モバイルビジネスの勝ち組と言えるこの両者は、スマートフォンを軸に対照的なビジネスを展開し、今日の隆盛を築き上げています。そして今、両者とも大きな転機に差しかかっています。

個人ユーザーからビジネスユーザーへ

日本国内では、携帯電話がメール、Web、音楽配信、テレビ・ラジオ、音楽プレーヤー、ゲーム、決済機能など独自に機能を発展させてきました。個人ユーザーをiモードやezwebなど自社ネットワークに囲い込み、手軽で便利な機能や娯楽性の強いコンテンツを提供して成長してきました。個人ユーザーの増加がこうしたビジネスモデルを支えてきました。しかし国内の携帯電話は契約件数1億を突破し、個人契約者数は頭打ちになってきています。個人ユーザーの増加を前提としたビジネスモデルの限界が見え始めたのです。
こうした中で、携帯電話会社が注目するのがビジネスや法人需要です。個人情報保護法の施行、IT統制の厳格化、相次いだ情報の漏洩や流出防止のために、業務用PCの社外持ち出しが禁止されるようになりました。そこで、移動中や外出先でのメールのやり取りやWeb閲覧のためのデバイスとして、PC並の機能を持つ携帯電話が注目されるようになりました。中でもそうしたニーズに適合するスマートフォンが注目され始めました。

ビジネスユーザーから個人ユーザーへ

一方の流れでは、BlackBerryはビジネスパーソンをターゲットに、メールができるキーボード付きポケベルとしてスタートし、携帯電話やPIM、ブラウザ、ドキュメントビューワなど、ビジネス機能を次々に追加し、スマートフォン市場で世界最大の1200万人のユーザー数を持つまでに成長しています。欧米のスマートフォンは、すべてのメーカーがBlackBerryと同じビジネスユーザーをターゲットにしてきました。
しかし、ビジネス一辺倒のスマートフォン市場に新しい風が吹きました。登場からわずか半年で400万台を販売したiPhoneです。音楽プレーヤーであるiPodを中心とする娯楽性の強い仕様、キーボードのない斬新なデザインとユニークな操作性は、ビジネス一本槍のスマートフォンの既成概念を覆し、新しいスマートフォンの時代を印象づけました。

動き始めた国内のスマートフォン市場

国内市場では2005年末にPHSのウィルコムがスマートフォンを発売しました。シャープ製のスライド式キーボードを装備したW-ZERO3は、半年後に登場した後継機と合わせて1年間で50万台近くを販売しました。当時の加入者数は430万人(2006年12月時点)の中での実績ですから大ヒットです。続いて、携帯電話各社から次々とスマートフォンが登場しました。
2008年3月には、富士通がスマートフォンF1100を発表しました。iモードやおサイフケータイ、ワンセグなど個人ユーザーに人気のある機能は一切搭載せず、PCと親和性の高いWindows Mobile 6 StandardをOSとして、ビジネスユーザー向けに、指紋認証・開閉ロック・パスワードマネージャなどのセキュリティ機能、公衆無線LAN対応・FOMAハイスピード対応、無線LANでのVoIPサポートなどネットワーク機能を強化したスマートフォンです。モビリティとセキュリティを重視するビジネスユースに最適なスマートフォンソリューションとなることが期待されます。
2008年後半には、PHS・携帯電話会社で唯一スマートフォンを出していないauも発売を予定しており、日本でも本格的なスマートフォンの時代が始まりました。

高まるニーズと期待

2007年11月の米In-Statが発表した、今後の世界のスマートフォン市場の動向などを予測した調査レポートでは、「スマートフォン販売額は、2007〜2011年の5年間に世界で年間平均成長率が30%を突破し、世界携帯電話市場の中にスマートフォン売上の占める割合が大きく増加し、スマートフォンの年間販売台数は、世界のノートPC販売台数を上回るようになる」と予測しています。
Appleファンを中心にiPhoneの国内発売を待望する声が上がっています。娯楽性の強いiPhoneのようなスマートフォンは、日本のこれまでの携帯電話の延長線上にあり、個人ユーザー向けに大いに普及する可能性があります。しかし、携帯電話会社の仕様に基づいてメーカーが製造した端末を、携帯電話会社が販売する仕組みの中では、iPhoneの国内販売は難しいところがあります。携帯電話会社のビジネスモデルを大きく変えなくてはならないからです。
しかし、一般の携帯電話市場にかげりが見える今、ディズニー携帯(Softbank)やブランド携帯(NTTドコモ・プラダデザイン)のように既存の殻を破る新しい携帯電話のビジネスモデルの模索が始まっています。ビジネスや法人需要はもとより、iPhoneに代表される高機能・高付加価値の個人向け携帯電話として、関係者がスマートフォンに寄せる期待は小さくないようです。

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