エンタープライズ向けクラウドストレージ

by Canonical on 21 November 2023

写真:Denys NevozhaiUnsplashより

ホワイトペーパー – 企業向けのソフトウェア定義

データを中心とする組織は、いつか必ずデータの増加に直面します。現在、1日に生成されるデータは推定で2,500ペタバイト(PB)を上回ります。これほど大量のデータを処理する必要のある組織はわずかですが、組織の成長を事前に計画することは重要です。

ハードウェアとソフトウェアが密接に組み合わされている旧来のアプライアンスベースのストレージシステムは、維持管理や拡張に費用がかかり、運用も困難です。通常、さまざまなモデルのアプライアンス間の移行やより新しい世代への移行には、複雑で大規模なリプレースと時間のかかるデータ移行が必要になります。

これらの従来から課題に加えて、アプリケーションの動作が変化するという事実も併せて考える必要があります。ブロックサービスとファイルサービスのみを提供するマルチプロトコルストレージシステムだけに頼ることはできなくなりました。最新のアプリケーションの多くは、ストレージのニーズに対してS3やSwiftなどのRESTベースのAPIを幅広く利用しています。ソフトウェア定義ストレージソリューションは、1つのクラスターでさまざまなニーズに対応するため、ストレージサイロの回避に役立ちます。

ソフトウェア定義ストレージとは

ソフトウェア定義ストレージ(SDS)システムとは、ベンダーが提供するハードウェアと緊密に結びついた従来型のアプライアンスとは異なり、基盤となるハードウェアを抽象化するストレージソリューションの一種です。つまりSDSのユーザーは、市販の既製ハードウェア(コモディティハードウェア)を使用してストレージシステムを構築しながら、パフォーマンスとコストの目標をどちらも達成できます。

コモディティハードウェアとオープンソースのソフトウェアを組み合わせることで、柔軟性はさらに拡大します。組織は煩雑なライセンス契約から解放され、ブラックボックスの部分を信頼することなくセキュリティ体制を強化できるほか、本格的なオープンな標準が実現し、最新のハードウェアと革新的なソフトウェアを利用できます。

Cephは市場をリードするオープンソースのソフトウェア定義ストレージシステムであり、ベアメタルサーバーやOpenStackインフラおよびKubernetesインフラのストレージ、あるいはS3 APIやSwift APIを介したアプリケーションの直接的なストレージとして使用できます。たとえば、本番環境で稼働しているOpenStackクラウドの70%以上が、ブロックス、ファイル、オブジェクトストレージのバックエンドとしてCephを使用しています。

Cephを利用したエンタープライズ向けクラウドストレージ

Cephは、回復力に優れた単一のクラスターから、大規模な拡張性を備えたブロック、ファイル、オブジェクトのストレージを提供できるように設計されています。単一障害点がなく、無停止のソフトウェア更新に対応し、ローカルおよびリモートのレプリケーション、圧縮、保存データの暗号化を可能にする機能を有しているため、Cephはエンタープライズ環境での使用に最適です。

Cephクラスターは、x86またはARM64のコモディティハードウェアのみで構築され、それぞれSSDとハードディスクを組み合わせて提供します。内部(クラスター)および外部(クライアント)との通信には、標準的な市販のイーサネットが使用されます。市販のハードウェアを使用することで、ストレージシステムの高度な構成が可能になるだけでなく、一般的なアプライアンスベースのシステムと比較して経済的にも優位になります。異種ハードウェアはクラスターの拡大に応じたサポートが可能です。

Cephでは、企業のストレージニーズの拡大に応じて、アクセスプロトコルやパフォーマンス要件を問わずあらゆるストレージニーズを満たすように単一のクラスターを拡張できるため、ストレージサイロを排除できます。

  • ブロックストレージのニーズは、拡張性の高いマルチパスネイティブのブロックトランスポートであるRADOS Block Device(RBD)プロトコルを通じて提供されます。レガシー環境をサポートするため、iSCSIもゲートウェイ経由で対応できます。また、将来のリリースではNVMeoFもサポートされる予定です。
  • 共有ファイルストレージは、CephFS(CephのネイティブPOSIX互換プロトコル)またはNFSプロトコルのいずれかを通じて提供されます。
  • S3とSwiftのAPIの両方と互換性のあるオブジェクトストレージAPIも完全にサポートされています。

Canonical Cephはオープンソースストレージの賢い選択肢

この数年間に、Cephを取り巻くエコシステムには数多くの変化がありました。SUSEはRancherの買収後にCephベースのストレージ製品の提供を短期間で終了しました。RedHatはIBMに買収され、同社のCeph部門はIBM内のプロプライエタリストレージ部門に統合されました。

これらの変化の間も、Canonicalのオープンソースへの取り組みは変わっていません。Ubuntu Proにより、現在UbuntuにデプロイされているCanonical Cephクラスターは最低でも5年間サポートされ、セキュリティパッチのサポートを10年間まで延長するオプションもあります。

詳しい情報を入手するには

Canonicalのホワイトペーパー「エンタープライズ向けソフトウェア定義ストレージガイド」では、柔軟性を高め、コストを削減しながら従来のアプライアンスベースのストレージシステムからSDSに移行し、使い慣れた機能を維持する方法について総合的に紹介しています。

その他のリソース

ニュースレターのサインアップ

Ubuntuニュースレターの配信登録

お客様が購読登録を行われる場合、以下の条件に同意されたことになります。Canonicalのプライバシーに関するお知らせ個人情報保護ポリシー

関連記事

CentOSのサポート終了(EOL)– Cephストレージへの影響は?

暗闇から光の中へ、新たな前進 2020年に、CentOS ProjectはCentOS Streamのみに注力することを発表しました。つまりCentOS 7がRed Hat Enterprise Linuxと共通性を持つ最後のリリースです。2024年6月30日のCentOS 7のサポート終了(EOL)により、OSのセキュリティ更新、パッチ、新機能のリリースがなくなります。 このバージョンのCentOSにCephをデプロイすると、将来の困難は見えています。EOLの課題を切り抜ける方法はいくつかありますが、それぞれに短所があります。 リスク 何もしなければ、デプロイメントが古くなるにつれてCephの新しいバージョンにアップグレードする道がなくなり、新しい機能を得られなくなりま […]

MicroCephを使用したエッジストレージ

MicroCephならどこでも手軽にエッジストレージ データはあらゆる場所に存在します。大規模な集中型のデータセンターだけでなく、小売店、リモートオフィスや支店、撮影現場のような出先、そして自動車の中にも。エッジストレージの目的は、ローカル処理、ネットワークの遅い場所では不可能なコンテンツでの共同作業、そして取り込み(ローカルで作成されたコンテンツをキャプチャして保護し、他のシステムで利用できるようにすること)です。 すべてのシナリオには2つの共通点があります。生成されるデータが重要で、その場所の帯域幅が限られていることです。 従来、このような場合にはシングルボードコンピューターを使用していましたが、時代の変化とともにデータの重要性が高まり、性能の向上と冗長性が求められる […]

クラウドストレージのセキュリティに関するベストプラクティス

Cephのセキュリティ機能でデータを保護 クラウドストレージシステムにデータを安全に保存するには データはあらゆる組織にとって貴重な資産であり、紛失や漏洩は大惨事になりかねません。システム障害を防げなければ、業務データを失い、営業不能に陥って経営破綻に至る可能性もあります。機密データが漏洩すれば、企業は評判を落とすだけでなく巨額の罰金を科されます。 今回のブログ記事では、こうしたリスクに注目するとともにCephのセキュリティ機能でリスクを軽減する方法を説明します。まず、最も一般的なデータ侵害の例を挙げましょう。 物理的な盗難/輸送 ストレージ関連のハードウェア、ディスク、またはストレージシステム全体が失われると、機密情報が漏洩する可能性があります。たとえば従来の盗難です。 […]


© 2024 Canonical Ltd. Ubuntu および Canonical は、Canonical Ltd の登録商標です。