CPUの選び方
PCパーツの中でも、パソコンの性能に最も影響するのが「パソコンの頭脳」であるCPU。ここでは、そんなCPUの役割から主なCPUメーカーの製品ラインアップまでを紹介。さらに、CPUのスペックの確認方法や、用途ごとにピッタリなCPUの選び方までを解説します。
2024/2/19 更新
目次
CPUは、パソコン上のあらゆる作業の処理を行う「パソコンの頭脳」にあたるパーツです。具体的な例としては、マウスやキーボードなどの入力装置や、ハードディスクやメモリーなどの記憶装置からデータを受け取り、演算・加工をしたうえで表示装置や周辺機器などに出力します。このようにCPU自体は小さなパーツですが、パソコンの性能を大きく左右する重要な役割を担っています。
また、近年では4K映像の動画編集やハイエンドな3Dゲームといった高度な演算処理を必要とするソフトウェアが利用されるようになってきたため、クロック周波数の向上だけでは対応しきれなくなってきました。そのため、現在販売されている製品には、1つのボードに4つのCPUコアを搭載した4コア(クワッドコア)、同じく8つの8コア(オクタコア)といったマルチコアの採用や、1つのコアを擬似的に2つのコアとして動作させるマルチスレッディング技術を採用することで性能の向上が図られています。
CPUメーカーとしては、intel(インテル)とAMDの2社が有名で、現在世界のシェアのほとんどを占めています。これまでは「Core i」シリーズを販売するインテルが絶大なシェアを誇っていましたが、近年では「Core i」シリーズと同等以上の性能を持ちながらも価格を抑えたAMD製CPU「Ryzen」シリーズが自作PCユーザーを中心に人気が爆発。各メーカーのノートPCにもモバイル向け「Ryzen」が採用されるなど、一般ユーザーにも認知度が高まっています。ここでは、インテルとAMDの主なCPUラインアップと特徴を解説します。
インテル・AMDの主なCPUラインアップ
intel | AMD | |||
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区分 | モデル名 | コア/スレッド数 | モデル名 | コア/スレッド数 |
業務用モデル | Xeon | 最大56コア/112スレッド | Ryzen Threadripper | 最大64コア/128スレッド |
最上位モデル | Core i9 | 最大16コア/24スレッド | Ryzen 9 | 最大16コア/32スレッド |
上位モデル | Core i7 | 最大12コア/20スレッド | Ryzen 7 | 最大8コア/16スレッド |
中位モデル | Core i5 | 最大10コア/16スレッド | Ryzen 5 | 最大6コア/12スレッド |
下位モデル | Core i3 | 最大4コア/8スレッド | Ryzen 3 | 最大4コア/4スレッド |
廉価モデル | Pentium / Celeron | 最大4コア/4スレッド | − | − |
デスクトップPC・ノートPCを問わず、多くの製品に搭載されているインテル製のCPU。家庭でネットサーフィンや動画視聴を楽しみたいライトユーザーから、プロのデザイナーやプログラマーまで、あらゆるニーズに応えるスペックのCPUをブランドに分けて幅広く展開しています。また、CPU内にGPU(グラフィック機能)を搭載(一部のモデルを除く)しており、別途ビデオカードを用意しなくてもモニターに映像を出力することができるのも大きな特徴です。
インテルの業務用CPUです。「Core i」シリーズとの大きな違いは搭載するコア数で、2021年3月時点での最上位モデル「Xeon Platinum 9282」は56ものコアを搭載しています。大容量の処理に耐えうる安定性が特徴で、ワークステーション・サーバーやアプリケーション開発、4K・8K動画の編集など、CPU性能をフルに使用する用途に向いています。
「Core i」シリーズの上位モデルです。最新世代となる第12世代の搭載コア数は12。「Core i9」よりも全体的にクロック周波数が抑えられているものの、個人向けの用途であれば動画編集からゲームまで、負荷の大きい処理でも快適に行うことができます。とくにゲーミング性能は、「Core i9」にも引けを取らないほどです。
「Core i」シリーズの下位モデルで、搭載するコア数は4。ネットサーフィンや動画視聴、軽めの資料作成など、ライトな用途であれば十分こなせるスペックです。価格も安めで消費電力や発熱も低いため、低予算でそこそこのスペックのパソコンを組みたい方や、コンパクトなケースを使って省スペースPCを組みたい方にピッタリの製品です。
「Pentium」の下位モデルです。コア数は4または2。低価格パソコンや組み込みシステムなどに採用されています。こちらもアーキテクチャに「Core i」を採用したモデルと「Atom」を採用したモデルがラインアップ。非力ですが消費電力が低いので、「安価な静音PC」が欲しい、「低予算でオーバークロックなどの遊び用PC」を組みたい方に向いた製品です。
インテルに次ぐ第2のCPUメーカーとして、「Athlon」や「Sempron」、「Opteron」といった“知る人ぞ知る”玄人向けのラインアップが中心だったAMD。しかし、同価格帯のインテル製CPUのスペックを上回る「Ryzen」シリーズの登場で状況は一変、「Ryzen旋風」が巻き起こりました。現在も自作PCユーザーたちの高い支持を得ており、2021年3月時点で最新となる第4世代「Ryzen 5000」シリーズは一部モデルが品薄になるほどの人気です。
AMDの超ハイエンドCPUです。2021年3月時点の最上位モデルとなる第3世代「Ryzen Threadripper 3990X」は、64ものコアを搭載。4K動画編集やソフトウェアのコンパイルなど、高いマルチスレッド処理を求めるクリエーター向けの製品です。また、CPUソケットには独自の「sTRX4」(第1〜2世代は「TR4」)が採用されています。
「Ryzen」シリーズの上位モデルで、搭載コア数は8。「Core i7」のスペックに相当する製品で、動画編集からゲームまで、あらゆる作業を快適に行うことができます。「Ryzen」全般に言えることですが、「Core i」シリーズよりもマルチスレッド性能が高いため、動画配信・編集といったマルチタスク作業がメイン場合は「Ryzen」のほうが向いています。
CPU選びで最も重要なのは、パソコンの用途とCPUのスペックが合致しているかをチェックすること。ネットサーフィンや動画視聴がメインであれば中位モデルのCPUで十分ですし、4K動画の編集や3Dゲームなどを楽しみたいのであれば、ハイエンドCPUが必要となります。ここでは、自分の用途にピッタリなCPUを選ぶ際に知っておきたいポイントを紹介します。
インテル、AMDともに主力のCPUは「Core i ○」「Ryzen ○」といったように、○部分に入る数字(グレード)が大きいものほど高性能で、負荷の大きな作業をこなすことができます。また、CPUはPCパーツの中でもとくに技術進歩が著しい製品です。そのため、同じシリーズ名であっても発売時期によって「第○世代」と分類されており、より新しい世代のモデルほど性能の向上などが図られています。2024年2月時点では、インテルの「Core i」シリーズは第14世代が最新です。なお、1〜2世代前のモデルであれば、それほどスペックに差はありませんが、3〜4世代以前のあまり古いモデルは避けたほうがいいでしょう。
※第3世代RyzenにGPUを搭載したモデルがRyzen 4000シリーズとして販売されているため、5000シリーズは第4世代になります。第5世代ではありませんので注意が必要です。
「コア」は演算処理を行う中核部分で、2コアの場合には1コアCPUの2つ分、4コアCPUであれば同時に4つ分の処理をまとめてこなすことができます。コアの数が多いほど「大事な処理が複数あるとき」に手分けしてすばやく行うことができるため、4K動画編集やエンコードといったマルチコアCPU向けに処理を並列化したアプリケーションの実行速度が向上します。
一方「スレッド」はOS上で認識されるCPUの「論理コア」で、インテルの「Hyper-Threading Technology」や AMDの「Simultaneous Multithreading Technology」といった技術によってパソコンに実際の物理コア数よりも多いコア数として認識させ、より効率的に処理を行うというものです。ただし、実際にはコア数が増えているわけではないため、処理状況によっては速度が向上しない場合もあります。
CPUの中には、末尾に英字が付いたモデルも存在します。この英字は「サフィックス」と呼ばれるもので、たとえばインテルのデスクトップ向けモデルなら「K」はオーバークロックに向いた倍率ロックフリーモデル、「F」ならGPU(グラフィック機能)非搭載モデルといった特徴を持っています。CPUを選ぶ際は、世代やグレートとともにサフィックスもチェックするといいでしょう。
※「Ryzen」シリーズは基本的にGPU非搭載のため、サフィックス「G」が付いたモデル以外は別途ビデオカードが必要となります。
ここでは、「ゲーミングPC」「ビジネス用PC」「動画編集用PC」「プライベート用PC」の4つの用途に適したCPUと、各種PCパーツの構成例を紹介します。
PCでゲームをプレイする際に重要なのが、CPUとビデオカードとのスペックバランス。たとえば、「GeForce RTX 3080」や「Radeon RX 6800 XT」を搭載したハイエンドビデオカードを搭載しても、CPUが「Core i3」では性能を十分に発揮することができません。というのも、ゲーム画面の描写処理はビデオカードで行われますが、ゲーム内の処理(FPSなら銃弾のヒット判定など)はCPUで行うためで、性能の低いPCパーツが足を引っ張って全体の性能が低くなる“ボトルネック”が発生してしまうことも。各PCパーツの性能を引き出すためにも、CPUとビデオカードは同クラスでそろえるといいでしょう。
Excelでグラフを作りながらWordで書類作成、さらにパワーポイントでプレゼン資料を作成するなど、複数のアプリケーションを併用するなら「Core i3」「Ryzen 3」以上、できれば「Core i5」「Ryzen 5」以上のモデルがいいでしょう。ただし、「Ryzen」シリーズは基本的にGPU(グラフィック機能)を搭載していないため、サフィックス「G」付きのGPU搭載モデルを選ぶか、別途ビデオカード(ビジネス用途なら4,000〜5,000円程度のモデルで十分です)を用意する必要があります。メモリーは8GBあれば十分ですが、ExcelやAccessなどの巨大データを扱うなら16GB以上あると安心です。また、ストレージはSSDを選ぶとPCやアプリケーションの起動が速くなり、より快適に作業を行うことができます。
動画編集作業において、最も重要となるのがCPUのスペックです。作業時の安定性や動画のエンコード(書き出し)時間はCPUのスペックとメモリーの容量で決まるため、簡単なフルHD動画編集を行う場合でもCPUは「Core i5」or「Ryzen 5」以上、ストレスなく動画編集を行いたい場合は、「Core i7」or「Ryzen 7」以上。メモリーは最低8GB、できれば16GBは欲しいところです。また、動画編集においてビデオカードは必須ではありませんが、複数のモニターを接続したい場合や、テロップやトランジションを多用した動画を快適に編集したい場合、ビデオカードで処理を行うことでエンコード時間を短縮する「GPGPU」を利用したい場合は搭載するといいでしょう。
ネットサーフィンや動画視聴、ライトな音楽・イラスト制作など、プライベートな用途でパソコンを使用する場合、現行モデルの「Core i3」や「Ryzen 3」に8GB以上のメモリーを搭載すればストレスなく利用することができます。また、「今すぐではないけれど、いずれ簡単な動画編集や3Dゲームなどもやってみたい」と考えている方は、1ランク上の「Core i5」や「Ryzen 5」を選んでおきましょう。メモリーやビデオカードを増設するだけで、動画編集や3Dゲームを楽しむことができます。
ここでは、CPU選びの際に知っておくと役立つ機能やスペックについて個別に解説。ぜひチェックして、自分の用途にピッタリな製品を選びましょう。
CPU内部に設けられた高速な記憶装置のことです。CPUのキャッシュは、1次キャッシュ(高速・小容量)、2次キャッシュ(中速・中容量)、3次キャッシュ(低速・大容量)という階層構造になっており、1次→2次→3次の順にアクセスする仕組みです。キャッシュの容量が大きいほどメインメモリーへのアクセスを減らすことができるため、処理を高速化することができます。なお、CPUの性能が高くなるにつれて、搭載するキャッシュの容量や速度も高くなります。
2次キャッシュ
3次キャッシュ
回路が処理の歩調を合わせるために使う信号が1秒間に何回発生するか示すもので、「秒単位でどれほどの計算が可能か」を示す数値です。単位はGHz(ギガヘルツ)で、同一のCPUでコア数が同じであれば、動作周波数の値が大きいほど処理速度は高速になり、TDP(最大発熱量)も大きくなります。
CPUはマザーボード上にあるソケットに装着しますが、CPUのメーカーやモデルによってソケット形状が異なります。そのため、マザーボードは、CPUに対応したソケット形状のモデルを選択しましょう。現行モデルでは、インテルのLGA1700やLGA1200、AMDのSocket AM4が主流です。
インテル製CPUの主なソケット形状
AMD製CPUの主なソケット形状
熱設計電力とも訳され、CPUの設計上想定される最大発熱量を表します。CPUクーラーを選ぶ際の目安となる数値であり、TDPが高いCPUは大型CPUクーラーや大容量電源を用意しないと動作が安定しません。逆にTDPが小さければ小さいほど、低消費電力なCPUであるといえます。
自作PCの場合は可能です。メーカー製PCやBTOパソコンの場合は難しい場合もあります
自作PCのCPUを交換する際は、搭載するマザーボードに対応したCPUを選びましょう。メーカー製PCや一部のBTOパソコン、ベアボーンキットなどは、ケースやマザーボードに独自仕様のものを採用していたり、CPUが固定されていたりすることがあり、交換が難しい場合も。また、保証の対象外になってしまう点にも注意が必要です。
最低限「プラスドライバー」さえあれば組み立てることができます
プラスドライバーのほかに、手が届きにくい位置の配線がしやすい「ラジオペンチ」や、マザーボード上のディップスイッチを操作する際に便利な「マイナスドライバー」、静電気を防いでくれる「帯電防止手袋」などがあると便利です。なお、自作PCの組み立てに必要な工具類をセットにした「自作PC工具セット」も販売されているので、こちらを購入するのもいいでしょう。
バルク品は業者向け品、リテール(BOX)品はメーカー正規品です
CPUに限らず、PCパーツにはバルク品とリテール(BOX)品があります。バルク品は、業者やショップがPCパーツメーカーからまとめ買いした商品を小売りにして売られている商品のことです。保証期間が短かったり、説明書がなかったり、簡易パッケージであることが多いものの、リテール品(BOX)よりも低価格で販売されているのが特徴です。いっぽうリテール(BOX)品は、PCパーツメーカーがメーカーの正規保証や説明書、パッケージなどをセットにして一般ユーザーに販売するために出荷した正規品となっています。
開発コードネーム
「Intel Core」や「AMD Ryzen」などのブランド名とは別に、「Comet Lake」(コメットレイク)や、「Vermeer」(フェルメール)といった、プロセスルールやアーキテクチャごとにCPUに付けられる名前のこと。メーカーがそれぞれの製品を識別するために開発中に用いる名称・愛称を、ユーザー側も使っています。
同時マルチスレッディング
1つのCPUで複数の演算を同時に処理する機能。単一スレッドでは完全には使われないCPU内部資源を複数のスレッド(論理コア)に分配することで、CPUが本来持つ並列性を最大限に引き出してシステム全体のパフォーマンスを向上させるのが目的です。インテルでは「Hyper-Threading」(ハイパースレッディング)、AMDでは「Simultaneous Multithreading Technology」(サイマルテイニアス マルチスレッディング テクノロジー)と呼んでいます。
メモリーコントローラー
メモリーのデータを読み書きする際にメモリーを制御する装置・機能のこと。メモリーコントローラーは、以前チップセットに搭載されていましたが、最近ではCPUに内蔵されるようになっています。メモリーコントローラーによって対応メモリーの速度が決まります。
プロセスルール
半導体回路の配線の幅のこと。プロセスルールが小さくなるほど、1つのチップに搭載するトランジスタの数が多くなり、性能が高くなります。2021年12月時点での最新モデルとなるインテルの第12世代「Core i」シリーズはIntel 7(10nm)、AMDの第4世代「Ryzen」シリーズでは7nmとなっています。
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