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“オーディオ用USBケーブル”の基本を解説! 普通のUSBケーブルとの違いは?

今も昔も、オーディオ趣味の中で重要な役割を果たす周辺アクセサリーと言えば、オーディオ機器同士をつなぐ「ケーブル」だ。特に、近年主流となっている音楽配信の再生やハイレゾ再生など、デジタルオーディオの世界で使うケーブルと言えば、「USBケーブル」だろう。パソコンとUSB-D/Aコンバーターと接続する用途を中心に、ヘッドホン再生からスピーカーを使ったシステムまで、数万円〜数百万円もの幅広い価格帯のオーディオ機器で利用される、最もメジャーなデジタルケーブルとなっている。

そんなわけで、「オーディオグレード」をうたうUSBケーブルも、近年は本当に多くのブランドから数多くの製品が発売されている。「オーディオ用のUSBケーブル」が求められる理由は、もちろんそれを使うことで音質向上が望めるからだ。ここでは、主にこれからデジタルオーディオを始めてみようという人に向けて、オーディオ用USBケーブルの基本や、8メーカーの製品をピックアップしてご紹介する。

デジタルオーディオ再生で、オーディオ用USBケーブルを使うメリット

普通のパソコン用のUSBケーブルは、信号を安定的に伝送することと、ときに高速伝送することを目的としているので、当たり前だが音楽再生時の音質については考慮されていない。それに対して、オーディオ用のUSBケーブルは、高品位な導体や絶縁体を使用するといったアナログのオーディオケーブルと同じ特殊な構造を持っており、「音質優先」の設計になっている。

一般的なUSBでのオーディオ信号の送信には、リアルタイム性を重視するアイソクロナス転送が使用されているが、本方式はエラーが発生しても再送が行われない。そこで、オーディオ用USBケーブルには特に安定した伝送特性が求められる(※2021/10/5 一部内容を追記しました)。

オーディオ用USBケーブルの付け替えによって、デジタルオーディオ再生の音楽性を追求したり、自分好みの音をねらうことができる

オーディオ用USBケーブルの付け替えによって、デジタルオーディオ再生の音楽性を追求したり、自分好みの音をねらうことができる

筆者は、常日頃から数多くのUSBケーブルをテストしているのだが、数あるデジタルオーディオ用ケーブルの中でも、USBケーブルは特に種類を付け替えることによる音の変化幅が大きいと感じている。その理由として、まずUSBケーブルは、1本のケーブル内に電源ラインと信号ラインが同居しているため、電源干渉の影響が音に出やすいことが大きいと思われる。そこで、信号伝送に使用される導体素材や、電源の干渉を抑える構造などの違いが、より音に変化を与えやすいからだと推測する。

具体的には、普通のPC用USBケーブルで接続していたパソコンとUSB-DACを、オーディオ用USBケーブルに付け替えて音楽再生すると、聴感上の分解能が上がり、音に透明感や立ち上がりのよさなどが付加されるといった効果が期待できる。その半面、一般的なPC用のものと比べてオーディオ用USBケーブルは価格が高く、数十万円もする製品も存在する。

オーディオ用USBケーブルの端子、規格、長さなどの基本

オーディオ用USBケーブルの端子形状や規格などの要素についても、軽く触れておこう。とは言っても、基本はパソコン用と同様で、端子形状についてはType-A、Type-B、Type-C、micro USBなどの種類になる。また、USBケーブルの規格としては、現在では2.0からUSB 3.1 Gen2のものが中心に流通している。オーディオ用に限っては、まず使う機材の端子に合わせたケーブルを選択すれば大丈夫だ。

さまざまな端子形状。なお、AndroidスマホなどとUSB-DACを接続するときは、場合によりUSB On-The-Go(OTG)をサポートしたケーブルやコネクターを利用しなくてはいけない場合もあるので注意

さまざまな端子形状。なお、AndroidスマホなどとUSB-DACを接続するときは、場合によりUSB On-The-Go(OTG)をサポートしたケーブルやコネクターを利用しなくてはいけない場合もあるので注意

またUSBケーブルは、ほかのオーディオ用デジタルケーブルより、長さに対する音質変化(劣化)が比較的大きいので、可能な限り短いほうがよい。これまでにさまざまなオーディオ用USBケーブルを使ってきた筆者の感覚としては(あくまでも個人の感覚だが)、最大でも3mまでに留めておいたほうがよさそうに思う。

オーディオ用USBケーブルは「PC周辺機器メーカー」と「オーディオメーカー」から選べる

現在、オーディオ用USBケーブルを開発・販売しているメーカーは、大きく分けて2種類ある。「パソコン周辺機器メーカー」と「オーディオメーカー」だ。オーディオ用USBケーブルの世界で、両者がしのぎを削っている(?)ような状態になっていて、実はおもしろい。以下より、それぞれの特徴を紹介しながら、具体的な製品例をご紹介しよう。いずれも筆者が実際に音楽再生で使用し、音質向上効果を感じられたクオリティの高い製品となる。

▼パソコン周辺機器メーカーのUSBケーブル

まずは、パソコン周辺機器メーカーが手がける製品から。各メーカーとも、これまでのパソコン周辺機器開発で培われたIT技術を武器にして開発されており、そこに高音質設計を取り入れているものが多い。

・エレコム「DH-AB10」

パソコン周辺機器メーカーのエレコムが発売するオーディオ用USBケーブル。オーディオグレードのケーブルの中では大変安価だが、ケーブル部は編み込みで、コネクター部分にはアルミケースを使用。さらに金メッキコネクターを採用するなどスペック的にコストパフォーマンスにすぐれる。

・アイ・オー・データ機器「fidata HFU2」

パソコン周辺機器メーカーのアイ・オー・データ機器が、同社の高品位なオーディオ製品に冠する「fidata」ブランドで発売するUSBケーブル。銀メッキ銅線の導体を採用し、高品質コネクターと組み合わせた設計で、これまでのオーディオ製品開発で培われたノイズ対策など、細部の音質対策も徹底している。

・エイム電子「SHIELDIO UAC-F010」

エイム電子は、1983年にコンピューター/ネットワークのデータ通信用ケーブルメーカーとして誕生した国産メーカーで、技術力の高さで知られている。同社は元々業務用のケーブルを得意とするが、近年人気上昇中なのがコンシューマー用に開発された製品だ。ノイズシールド効果を追求した「N-ZEROコンセプト」を持ち、高純度無酸素銅と純銀コーティングを採用した導体と、独自構造に安定した伝送特性を誇る。

▼オーディオメーカーのUSBケーブル

続いては、オーディオメーカーが開発する製品を紹介しよう。基本的にはIT関連の知見があるメーカーの技術を利用しながらも、各社独自の高品位導体を使うといった形で、より音楽性の再現に注力するモデルが多い。

・AudioQuest「USB 2 Forest USB2」

AudioQuestは、米カリフォルニア州アーバインに拠点を置くオーディオアクセサリーメーカー。同社のケーブルは入門者からベテランまで「定番」として人気があり、ラインアップも多い。「Forest」は同社USBケーブルの中では最も安価で手が届きやすい製品。導体がやわらかく、取り回しにすぐれているところも魅力だ。

・サエク「SUS-020」

人気の国産オーディオアクセサリーメーカー、SAEC(サエク)のUSBケーブル。導体には超低歪率で高伝導率105%IACSの電気的特性を備える「PC-Triple C/EX」を用い、絶縁体には比誘電率特性にすぐれたフッ素樹脂を採用する。なおケーブル周りの加工は、スーパーコンピューター「京」の配線にも使われている絶縁技術を持つ会社で行われている。

・Zonotone「Grandio USB-2.0」

Zonotone(ゾノトーン)は、コアなオーディオファイルから絶大な人気を誇る国産オーディオブランドだ。そんな同社が開発した待望の新作USBケーブルが本製品。導体は、純度の高い6N(99.9999%)Cu、純銀コートOFCと、ブランド初となる高純度無酸素銅線のCUHDを採用。信号線と電源線をケーブル内部で分離する4芯方式を採用する。

・M&Mデザイン「SN-USB6000A-B」

創設者が元バイクのエンジンチューナーという異例の経歴を持ちながら、カーオーディオの大会で世界No.1になるなど、オーディオ関連業界での実績も十分な国産ケーブルメーカー、MMデザイン。本製品は、導体サイズを最適化し、信号と電源ラインのそれぞれに適切なシールドを施しているほか、アルミ無垢材から削り出された独自のコネクターも魅力だ。

・ACOUSTIC REVIVE「USB-1.0SP-TripleC」

人気の国産アクセサリーメーカー、ACOUSTIC REVIVE(アコースティックリバイブ)は、早くから電源ラインと信号ラインを完全分離したUSBケーブルを市場に投入してオーディオ界にインパクトを与えたが、その最新モデルが本ケーブル。導体はPC-Triple C、輻射ノイズと外来ノイズの飛び込みを防止するカーボンSFチューブ(CSF)を採用するなどの独自構造を持ち、良質なマテリアルを採用しているのが特徴だ。

まとめ

近年、音楽再生の主流となりつつある「Amazon Music HD」「Apple Music」などのストリーミングサービスや、ハイビット、ハイサンプリングレートのハイレゾファイル再生などを高品位に楽しむ場合に欠かせないのが、USBケーブルだ。特にオーディオ用USBケーブルを上手に選んで使うと、投入したコストを超えるような音質向上効果や音の変化を享受できることもある。せっかくデジタルオーディオを楽しむなら、ぜひ、自分の好みにあったUSBケーブルを見つけ出してほしい。

土方久明
Writer
土方久明
ハイレゾやストリーミングなど、デジタルオーディオ界の第一人者。テクノロジスト集団・チームラボのコンピューター/ネットワークエンジニアを経て、ハイエンドオーディオやカーAVの評論家として活躍中。
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