2008年に初代モデルが登場して以降、ライター/記者/作家など、日本語のプロたちを中心にファンを増やし続けてきたのが、キングジムのデジタルメモツール「ポメラ」シリーズです。
なかでも、2016年に登場したフラグシップモデル「ポメラ DM200」は、打鍵フィーリングの向上や、日本語入力FEPに専用ATOKを搭載するなど、テキスト入力効率をとにかくストイックに追求した仕様で話題になりました。
そんな「ポメラ DM200」が、発売から6年を経て大幅にパワーアップ。新しいフラグシップ後継モデル「ポメラ DM250」として2022年7月29日に発売されました。
そこで今回は、「DM200」と「DM250」、一体どこがどう異なるのか? 何がよくなったのか? そもそも買い替えるべきか? といった辺りを中心にチェックしていきましょう。
実際問題として、テキスト入力専用機という限定的な枠内で動くツールということもあって、発売から6年とはいえ、「DM200」にスペック的な劣りを感じる機会は現状あまりないと思います。もちろん、物理的な故障などがあれば別ですが、このまましばらく「DM200」を使い続けてもいいんじゃない?という人はいるかも。見た目やサイズもほぼ変わってませんし。
6年ぶりにアップデートされたフラグシップモデルの後継機「ポメラ DM250」
「DM250」(手前)と、前モデルの「DM200」(後ろ)。本体色がわずかにグレーに変わったのと、電源キーの位置が変更された以外は、外見的な変化はほぼ同じ
もちろん、細かな変更ポイントはかなり多いんですが、目に見えて大きく変わったのは……。
【変更点1】1ファイル当たりの最大文字数
10万字→20万字
【変更点2】本体ストレージ
128MB→メイン1.3GB+ゴミ箱0.6GB
【変更点3】充電用インターフェイス
Micro-USB B→USB Type-C
【変更点4】連続使用時間
18時間→24時間
……ぐらい。ただ逆に言えば、「ずっと愛用していた『DM200』が根本から別物に変わっちゃった!?」というような心配はないわけです。上記の変更点は、これまでの使い勝手の部分を変えることなく、快適化を図ったポイントと解釈してよさそう。
USBコネクタの変更とともに快適度アップしたのが、充電状況が外から見えるLED。ちなみに、充電時間も5時間→4時間と短縮されています
上書き保存すると、自動でバックアップデータが生成されます。ファイルネーム末尾に「_bak」が付くので、元データとは区別できるのがうれしい
対して、外からあまり見えにくいけど、「これ、待ってた!」という新機能も結構搭載されています。
たとえば、ストレージの増加にともなって追加されたのが、オートバックアップとゴミ箱機能です。オートバックアップは、ファイルを上書き保存するたびに、保存前の状態を自動でバックアップ領域に保存するというもの。間違えて上書きしてしまっても、1回は取り返しがきくのがありがたいです(事前にファイル管理設定が必要)。
ゴミ箱は、削除済みファイルの一時的な置き場として機能するので、ここから復旧が可能です。
文字数の常時表示で、作業効率は大幅アップ。よく見ると右下のバッテリー残量も数値表示に変更されています
あと、地味に最高だと感じたのが、画面から常に「文字数」が視認できるところ。これは、本当に待っていた……というか、これまでのシリーズを通してずっと不満だったポイントがついに改善された、という気持ちです。
いちいちメニューやファンクションキーからプロパティを開いて確認しなくても、画面下部に目をやれば、現在の文字数がカウントされているわけで。正直なところ、これだけでも「DM200」から買い替えアリだぞ、と主張したいぐらい。
脚本執筆に特化したシナリオモード。議事録の書き残しにも使えそう?
画面表示でユニークなのが、シナリオモード。
こちらは、パッと見てわかるように、脚本や座談会などを書くのに最適化された表示モードです。2エリアを切り替えつつ、書き進めるのは従来のアウトラインモードと同様ですが、見出しごとに階層化するのではなく、シーンやキャストの名前ごとにテキスト領域が分けられるのが特徴です。
これは、万人に必要な機能だとは思いませんが、もしかしたらユーザー(脚本家・放送作家といった人たち)から要望があったのかもしれません。
「ポメラ」の新型と聞けば、やはりキーボード周りがどうなったか?は多くの人が気になるところでしょう。
キーピッチは、従来と変わらず横17mmを確保し、打ちやすさは変わらない印象です。ただ、キーストロークがやや浅くなり、タッチもカチャカチャした感じが薄くなったように感じられます。
個人的には、「DM200」のメカニカルな打鍵感が好みだったので、ちょっと寂しいかも。とはいえ、しばらく打っていればすぐなじむとは思いますが。
わずかにカチャカチャ感が減って、静音性が高くなった新キーボード
キートップの端を押しても全面が垂直に沈むV字リンク機構は、従来モデルから続いて搭載されているようです。なので、ラフにキーを押しても、ミスなく入力できるのは、これまでどおり。これも、入力効率に関わる大事なポイントなので、違和感なく打てるのは助かります。
付属のキートップステッカーは、中央から貼る位置を1列ズラすことで「親指シフト2」モードに対応します
ちなみに、キートップステッカーを使用することで設定できるキー配列は、従来の「US配列」と「親指シフト1」に加え、新たに右手を1列ズラした改良型の「親指シフト2」も追加されています。
開発者が親指シフターということもあって、「親指シフト2」は指先が詰まりにくく、快適に打てるように考えられているとのこと。
故事成句などの間違いを指摘してくれる、「ATOK for pomera」の校正支援機能。「じゃまだな」と感じたら、設定からオフにするのもあり
もうひとつ重要なのが、日本語FEP。こちらも引き続き、「ポメラ」専用にチューンされた「ATOK for pomera[Professional]」を搭載しています。
このATOKは、「DM200」当時から大きな売りのひとつ。かなりスムーズな入力変換が行える優秀なものでした。
さらに、「DM250」のATOKは、読み・仮名づかいの誤りや、言葉の誤用を指摘する校正支援機能を大幅に強化しています。
ただ、これに関しては「意図しての誤用風表現まで指摘される」という面倒くささもあって、良し悪しといったところでしょう。
「ポメラ」は、あくまでも入力専用機なので、外部へのデータを送信やプリントアウトをする場合は、いったんPCやスマホにテキストデータを転送する必要があります。
方法は、シリーズ定番の「QRコード」と、Wi-Fi経由の「Gmail」での「アップロード」、そして新たな「アプリとの接続」の3つ。
「pomera Link」と「DM250」を接続中。Wi-Fiがつながるまでやや時間がかかることも
専用アプリ「pomera Link」(iOS/Android)は、アドホックモードでスマホと「DM250」をWi-Fi接続し、データを送受信する設計です。
アプリからは、「DM250」のメインメモリーが閲覧できるので、必要なファイルを選択し、保存や編集が可能です。
リンクすると、このようにメモリ内が見えます。アプリからは、ファイルネームよりタイムスタンプのほうが大きく表示されるという、ちょっと不思議な仕様
「DM200」に実装された「ポメラSync」(Wi-Fi経由でiPhoneやMacのメモアプリとテキスト共有する機能)は、設定がややこしく、かつトラブルも多かったけど……、「pomera Link」アプリは設定がスムーズで閲覧性もよく、グッと使いやすくなりました。
ただ、相変わらずWi-Fiそのものが弱く、接続するのにモタつくのは残念ですが……。
「DM250」を仕事でバリバリ使ってみましたが、すでに「DM200」には戻れないな……という気分
ひとまず先行して10日間ほど試してみての結論ですが、個人的には「DM200」からの買い替えは「行くべき!」で間違いないと思います。
スペック的には、驚くほどの変化はありませんが、それ以外にアップデートされた部分が、とにかくありがたみが強い。
すでに「オートバックアップあって助かったー!」という経験もしました。また、文字数の常時表示がない世界には、2度と戻りたくありません。地味に充電LEDも便利です。
特に、「ポメラ」を普段からヘビーに使っている人なら、損はまずないと思います。あとはもう、「買い替え、いつにする?」ぐらいの話なので、お早めにぜひ。新規で「ポメラ」導入を考えてる人ならなおのこと、迷ってる時間があるならもう買っちゃうべき。