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スマートフォン用Bluetoothリモコン4機種の使い勝手を検証

間もなく訪れる夏休み。ドライブの計画を立てている人も多いだろう。最近はスマートフォンをカーナビやカーオーディオとして使う人も増えているが、小さな画面をタッチ操作するため、使いにくさを感じている人も少なくないだろう。ここでは、そんな車載スマートフォンの使い勝手を高めてくれるBluetoothリモコンの4製品をピックアップし、検証結果をお届けしよう。

カーナビなどの操作を行いやすくするスマートフォン用のリモコン。価格的にも2,000〜5,000円程度と手ごろな4製品を紹介する

スマホをナビとして使うなら、Bluetoothリモコンの導入はメリットが大きい

スマートフォンのカーナビ機能には数多くのメリットがある。そのほとんどが通信を介してサーバーとつながっているので、常に最新の地図データを使えるし、音声認識機能を活用すれば、目的地も簡単に見つけられる。会員登録すれば交通情報までリアルタイムで提供してくれるものまである。特に最近は無料アプリが一般化したこともあり、その手ごろさと便利さは格段に向上したと言っていいだろう。
スマホを車の中で使う際の最大のネックは、画面サイズが小さいことだ。安全上、運転中はスマホをホルダーなどに置いて使うことが原則で、ダッシュボードの上、あるいはエアコンのルーバーの前にホルダーをセットする必要がある。そのため、スマホの小さな画面では視認性と操作性の両面で不満を感じやすくなる。

そんな不満を解消するツールとして、Bluetoothを使ったリモコンが存在する。今回の検証では、「Yahoo!カーナビ」で使える「SoftBank SELECTION ナビうま ハンドルリモコン for Yahoo!カーナビ リモコン」、ゼンリン「いつもNAVI」対応の「デンソー KKP(くるくるピ)」、NAVITIME用の「ナビタイム カーナビリモコン」の3つをメインに、オーディオ機能をコントロールできる汎用リモコン「サンワダイレクト SP-01M」を番外編として取り上げ、それぞれの使い勝手を検証した。

「Yahoo!カーナビ」専用設計のコントローラー
SoftBank SELECTION「ナビうま ハンドルリモコン for Yahoo!カーナビ リモコン」

サイズ:約 35.0(幅)×70.0(高さ)×15.5(厚さ)mm
対応OS:iOS 9.3以降、Android 4.4以降

「ナビうま ハンドルリモコン」は、無料で使えるカーナビアプリ「Yahoo!カーナビ」専用のリモコンだ。スマートフォンとはBluetoothを介して接続し、ペアリングは「Yahoo!カーナビ」のアプリ上で行なう。ペアリングを済ませておけば、次回からはスマホに近づけるだけで自動接続してくれるので、接続はとても簡単だ。

ステアリングホイールに取り付けて利用するのが基本だが、サイズもコンパクトな本機ならマジックテープなどを用意して、ダッシュボードやコンソールに貼り付けて使ってもいいだろう

今回は、同梱される専用ホルダーとゴム製ベルトを使い、ステアリングホイールに取り付けてみた。最初に、ホルダーを取り付けて、リモコンをホルダーのフックに引っかければ固定は終了する。ベルトに柔軟性があるため、取り付け作業は難しくない。ただ、ステアリングホイールの太さにもよるが、ベルトの端がはみ出てしまい、見ばえが少々よくない。気になる場合、ハサミで切ってしまってもいいだろう。

Bluetooth設定は、端末側の設定で行わず、「Yahoo!カーナビ」アプリ上で行う

Bluetooth設定は、端末側の設定で行わず、「Yahoo!カーナビ」アプリ上で行う

このリモコンで操作できるのは、地図の上下左右スクロール、ズームインおよびズームアウト、OK/キャンセル操作、音声認識操作(音声認識はスマートフォンのマイクを使う)など、ナビ操作の大半がリモコンから行える。

ボタンは上下2つのグループに分けられ、上側は主として地図のスクロール用で、下側は地図のスケールチェンジや目的地検索のための音声認識、現在地ボタンなどが並ぶ。“長押しモード”も備わり、たとえば方向ボタンを長押しすると連続スクロールとなるし、下側の真ん中にある現在地ボタンは長押しすることで現在地から事前に登録した自宅までのルートをワンタッチで表示できる。矢印ボタンは現在地ボタンだ。

ボタンは上下のグループに分けられており、上側には主として地図のスクロール用のボタンが、下側には地図のズームインおよびズームアウト、音声認識や現在地ボタンなどが並んでいる

実際にクルマを走らせながら、本機を操作してみた。目的地の検索は基本的に音声認識機能を使う。「マイク/検索」ボタンを押せば音声による検索モードに入るので、希望の施設名を読み上げる。施設名をそのまま読み上げてもいいし、「新宿のファミレス」とか、「近くのコンビニ」など、最初から絞り込み条件を加えても対応は可能。もちろん住所や電話番号による直接入力にも対応し、これらは「Yahoo!カーナビ」本来の機能がそのまま活かされている。
その使い勝手は、スマホ画面をタッチ操作するのとは比較にならない。走行中であっても上下左右キーで地図はスクロールできるし、ズームインおよびズームアウトキーを押せば地図の縮尺変更も自在だ。使いにくい思いをしながら手を伸ばして操作していた過去の苦労が一気に過去のものになった。なお、ほかのBluetooth機器と併用も可能なので、「Yahoo!カーナビ」を操作しながら、スマホ内の音楽をカーオーディオで再生したり、ハンズフリー通話も可能である。

強いて難を言えば、リモコンの取り付け位置をよく考えないと邪魔になりやすいことだが、走行中でも指先の操作だけで「Yahoo!カーナビ」を使えるわけで、Yahoo!カーナビを使う機会が多いなら導入の価値は大いにあると言えよう。

リモコンと接続する設定を選ぶと、「Yahoo!カーナビ」アプリ上で操作マニュアルが呼び出せる

リモコンと接続する設定を選ぶと、「Yahoo!カーナビ」アプリ上で操作マニュアルが呼び出せる

ゼンリン「いつもNAVIドライブ」、オーディオ再生アプリ「Spin n' Click」とも連携可能
デンソー「KKP(くるくるピ)」

サイズ:約49(直径)×11.5(高さ)mm
対応OS:iOS 8.3以降、Android 4.4以降

「KKP」は、直径5cmほどの円形ボディのリモコン。中央部にくるくる回る“ロータリースイッチ”と、クリック感がある“エンタースイッチ”を備えピッとクリックする操作感から「KKP(くるくるピ)」のネーミングが与えられた。スマートフォンとはBluetoothで接続し、一度ペアリングすれば再接続は自動で行える。

どの角度でも自在にセットできる円形タイプのリモコン。直径約5cmなのでステアリングに取り付けると少し大きめに感じる

本体は円形だが、これはステアリングの上下左右どの位置で取り付けても自由な角度を選べるというメリットを生み出している。リモコン本体の電池ブタは金属製になっていて、ホルダー側にはマグネットが内蔵されている。しかも、ホルダー側には放射状にスリットが刻まれており、ここにリモコン本体にある出っ張りをはめ込んで固定する。つまり、リモコン本体はマグネットとスリットによってガッチリ固定されるが、取り付け確度は自由に調節できるのだ。

ホルダー側には磁石が内蔵されており、金属製のボタン電池ブタを吸い付けて設置する。取り付け確度は自由に調節できる

また、「KKP」は「いつもNAVIドライブ」の専用リモコンではないことも見落とせない点だ。そのため、専用のコントロールアプリ「Spin n’Click」が用意されており、「いつもNAVIドライブ」もこの「Spin n’Click」を介しての利用となる。ただ、使いにくいかと言えばそんなことはない。「Spin n’Click」は「KKP」で利用できるアプリをランチャーとして一括管理する機能を備えており、スマホ内にある対応アプリを自動的にセットアップしてくれる。また、アイシンAWのナビアプリ「NAVIelite」にも対応しており、むしろ、「Spin n’Click」によってKKP」の利用範囲が広がっているのだ。

KKPは、専用アプリ「Spin n’Click」を介して使う。スマホ内の対応アプリを検索してリストに自動登録してくれるほか、ほかのアプリの対応の橋渡しもしてくれる

「KKP」による「いつもNAVIドライブ」の使い勝手を検証しよう。地図スケールのズームインおよびズームアウトはロータリースイッチを回すだけだし、地図のスクロールも周囲の方向キーを押すだけと、使い勝手は良好だ。スクロールした場所で「エンター」を押せば、そのまま目的地として設定できるほか、現在地に戻りたい時は「バック」キーを押すだけだ。この一連の流れがとてもシンプルでわかりやすい。

だが、音声入力のためのボタンがないので、目的地の検索はスマホ本体でしか行えない。このあたりは専用リモコンではないマイナス面なのかもしれない。このリモコンが有利なのは走行中での操作だろう。スマホのタッチ操作よりも明らかに軽快だし、何よりステアリングホイールから手を離さずに操作できるのは安全面でも大きなメリットにつながるはずだ。

KKPからは目的地検索はできないが、地図をスクロールさせて、目的地に設定するのはラクに行える

KKPからは目的地検索はできないが、地図をスクロールさせて、目的地に設定するのはラクに行える

見逃せないのが「バック」と「ホーム」ボタンの下にある“マルチファンクションキー”だ。たとえば「いつもNAVIドライブ」を利用時は、このスイッチにミュージック、高速道路または一般道の切り替え、渋滞情報のうちひとつを割り当てられる。ミュージックを割り当てておけば音楽再生や音量調節が簡単に行えるようになる。「いつもNAVIドライブ」でこのリモコンを一度使い始めれば、手放せなくなりそうだ。

マルチファンクションキーでミュージックを選び、ホイールで操作すると、ジャケット写真をめくるようにスクロールできる。洗練されたユーザーインターフェイスも魅力だ

ボイスコントロールを呼び出す、「カーナビタイム」および「ドライブサポーター」専用リモコン
ナビタイム「カーナビリモコン」

サイズ:約36(直径)×10.6(高さ)mm
対応OS:iOS 8.0以降、Android 4.3以降

「カーナビリモコン」は、「カーナビタイム」で利用できる専用リモコンだ。元々このリモコンはナビタイムジャパンが2016年1月からカーナビタイムユーザー向けに、キャンペーンでプレゼント(先着4000人)していたものだが、現在は有料で販売されている。シンプルに大型のボタンがひとつ備わるだけで、ステアリングに取り付けて使う。接続はBluetoothだが、ペアリングしなくてもアプリを立ち上げると自動的につながる仕組みとなっている。

このリモコンは、基本的に「カーナビタイム」のボイスコントロールを使うためのもので、使い方はとてもシンプルだ。ボタンを1クリックすると音声コントロールが起動し、もう一度クリックすると音声コントロールのキャンセルとなる。ダブルクリックすれば「渋滞情報」や「案内情報」を音声でガイドし、長押しすれば「自宅へ帰る」モードへ移行する。つまり、ボタンの押し方次第で、よく使う機能を呼び出せる、シンプルなリモコンなのだ。

リモコンは中央に大きなボタンがひとつあるのみ。1クリック、2クリック、長押しという押し方の違いで操作を切り替える

実際に使ってみたが、ボタンを1プッシュするだけで基本機能が操作できる極めてシンプルなコマンド構造になっていることに感心した。このリモコンを見ただけでは、「ホントに機能的に役立つのか?」と心配になりそうだが、使ってみればそんなことはない。認識率の高い「カーナビタイム」を、安全に使いやすくすることがこのリモコンの真価といってよいだろう。

目的地検索は音声認識によって行うのが基本。自然な会話で操作できるほど認識精度は高いが、起動までにややラグがあった

ボタンを長押しすると登録した自宅へのルート探索モードとなる

ボタンを長押しすると登録した自宅へのルート探索モードとなる

ここまでのレポートでも述べたように、「カーナビリモコン」は「カーナビタイム」のすぐれた音声コントロールがあってこその機能。あいまいなコマンドに対しても相当な高率でヒットして適切な対応をするため、ボタンの操作で、音声検索をすぐに呼び出せるのが魅力だ。リモコン自体も小さめであるので、ステアリングホイールに取り付けても違和感を思ったほど感じなかったのもよい。「カーナビタイム」専用としてよくできたリモコンと言えるだろう。

あいまいな発話にも対応し、「お腹減った」とか、「近くの○○」と言ったコマンドにも対応する

あいまいな発話にも対応し、「お腹減った」とか、「近くの○○」と言ったコマンドにも対応する

各種メディアプレーヤーや音楽配信サービスに対応する汎用リモコン
サンワダイレクト「SP-01M」

サイズ:約36(直径)×8(高さ)mm
対応OS:iOS 7.0以降、Android 4.0以降

iPhoneやAndroidスマホ、ポータブルオーディオプレーヤーなどのコントロールを行えるリモコンがサンワダイレクトの「SP-01M」だ。重量はわずか10gしかない小型軽量設計で、ステアリングホイールに装着して使う以外に、携帯リモコンとして使うこともできる。なお、コントロールできる機能は音楽の再生と一時停止のほか、トラックサーチやボリュームのアップとダウンに対応するのみである。

単純にスマホ内の楽曲再生をコントロールするためのリモコン。表面がフラットなので手探り操作は難しい

単純にスマホ内の楽曲再生をコントロールするためのリモコン。表面がフラットなので手探り操作は難しい

付属品として、ステアリングホイールへの装着に使うホルダーと、ダッシュボードやコンソールへの貼り付けに使う両面テープが同梱されている。Bluetooth接続はキーボードとして認識される「HIDプロファイル」を使用。リモコン本体の裏側にあるペアリングボタンを押してスマートフォン側でそのプロファイルを選ぶと作業は終了し、次回からは自動的に認識されるようになる。これでスマートフォンに手を伸ばさなくても、音楽のコントロールが可能になる。

付属のストラップを使ってカバンなどにつないでぶら下げておくこともできる

付属のストラップを使ってカバンなどにつないでぶら下げておくこともできる

このリモコンのポイントは、Bluetoothのプロファイルとして「HID」を利用している点にある。このプロファイルはキーボード操作を行うために用意されたもので、これとは別に音楽などのオーディオ信号を無線通信するプロファイル「A2DP」を同時に接続して使えるのだ。今回は「iPhone 6」と本リモコンを接続し、いっぽうで「iPhone 6」はカーオーディオとBluetooth接続して音楽再生を行った。この両立ができることこそ、本リモコンの価値があると言っていいだろう。

リモコン本体の裏側。ペアリングの設定は矢印のボタンを長押しして行う

リモコン本体の裏側。ペアリングの設定は矢印のボタンを長押しして行う

本機は、カーナビの操作には対応していないものの、スマホに保存した音楽を手元で操作して楽しめるメリットは大きい。使った印象としては、Bluetooth接続特有のタイムラグは若干あるものの、それほど違和感はない。ただ、このリモコンの表面はほぼフラットであるため、手探りでの操作は難しい。イルミネーションも備えていないため、特に夜間は確認しながらの操作となってしまいそうだが、ステアリングリモコンやスマホコントロール機能を搭載していないクルマなら導入する価値は大きそうだ。

会田 肇
Writer
会田 肇
カーナビやカーオーディオのレポートを基点に、クルマの先端技術であるITS取材に取り組む。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。
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田中 巧(編集部)
Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよびその周辺機器には特に注力しており、対象となる端末はほぼすべて何らかの形で使用している。
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