レビュー

人気ハイスペックスマホの新モデル! au「HTC J butterfly HTV31」実力レポート

2015年6月5日に発売された、auのAndroidスマートフォン「HTC J butterfly HTV31」(HTC製。以下HTV31)。今夏モデルの技術トレンドを搭載したハイスペック機だが、カスタマイズ性や日本語入力環境が向上するなど、使い勝手にも注目したい1台だ。気になる実力をレポートしよう。

 

 

シリーズの“らしさ”を守りつつ、ひと回り大型化

「HTC J butterfly」シリーズの源流は、2012年初夏に登場した「HTC J ISW13HT」だ。その後、「HTC J butterfly」と名前を変え、2012年冬に「HTL21」が発売され、2014年秋には「HTL23」が登場した。グローバルモデルの「HTC J One」もリリースされているが、これらのモデルはいずれも、高性能・高機能スマホとして、ハイエンドユーザーから高い評価を得た。

HTV31は、HTC Jシリーズとしては5世代目、butterflyの名前を冠した製品としては3世代目となる。従来からの大きな変化としては、画面サイズが従来の5インチから5.2インチに大きくなったこと。これにともなって、ボディサイズも、約73(幅)×151(高さ)×10.1(厚さ)mmで重量約162gと、前モデルのHTL23よりも幅が3mm、高さが6mm、厚さが0.1mm、重量が6g大きくなった。少し大きくなったもののし、手によくなじむラウンドフォルムのデザインは継承されている。

カラーバリエーションはロッソ、シルク、インディゴ、という3色だが、特に注目したいのはインディゴだ。濃紺なのだが角度によっては黒く見えるようなエフェクトが施されており、シックでなかなか重厚な雰囲気。男性ユーザーの注目を集めそうなカラーだ。

背面全体が湾曲したデザインは最近では珍しくないが、butterflyシリーズはそのさきがけとなるスマートフォン。エッジが細く、曲面が大きくラウンドしたフォルムなどにシリーズの特徴がよく現れている

左側面にはメモリーカードスロット(左側)と、SMIカードスロット(右側)が配置されている

左側面にはメモリーカードスロット(左側)と、SMIカードスロット(右側)が配置されている

右側にはボリュームと電源のボタンが配置されている

右側にはボリュームと電源のボタンが配置されている

microSDXCメモリーカードは200GBまでの動作確認が取れている。SIMカードはVoLTE対応の「au Nano IC Card 04」のみ対応なので、現時点で格安SIMカードは利用できない

下面にはmicroUSBポートとヘッドホン端子が配置される。なおIPX5/7等級の防水仕様と、IP5X等級の防塵仕様をクリア。充電機能としては「QuickCharge 2.0」に対応しており、auの「共通ACアダプタ05」を使うことで急速充電が行える

上面に見えるのは赤外線通信ポートではないので注意

上面に見えるのは赤外線通信ポートではないので注意

カラーバリエーションは、ロッソ、シルク、インディゴの3色

カラーバリエーションは、ロッソ、シルク、インディゴの3色

今回検証で使用したインディゴは角度によっては黒のように見える

今回検証で使用したインディゴは角度によっては黒のように見える

国内で発売される歴代のHTC製スマホは、処理性能などの先進性が特徴だ。このHTV31についても、最新のオクタコアCPU「Snapdragon810 MSM8994(2.0GHz×4+1.5GHz×4)」、3GBのRAM、32GBストレージを搭載。OSは、Android 5.0。ライバルを凌駕する飛びぬけたハイスペックではないものの、今夏のハイエンドスマートフォンとして押さえるべきポイントはしっかりと押さえられた、文句なく先頭集団に属する一台である。

なお、32GBの内蔵ストレージのうちユーザーが利用できる領域として22.9GBが確保されているが、これは、同時期に発売されるauの32GBストレージを備えたAndroidスマートフォンよりも1GB程度空き容量が大きい。ストレージの空き容量はスマホの使い勝手に大きく結びつくので、わずか1GBといえどその差は無視できないポイントと言えよう。

Android 5.0とSnapdragon 810を組み合わせたHTV31は、処理性能と描画性能ともに良好で、動作はとてもなめらかだ。そのパワーは、ゲームや電子書籍などの大型アプリの起動の瞬間にその違いを実感できるが、WebコンテンツやTwitterのタイムラインをスクロールさせただけでも、Android 4.X世代とは明らかな違いが感じられる。一部に、本機の体感速度に不満を訴える声もあるが、クアッドコア+Android 4.X世代と比べて、大きな差があることは間違いない。

注目の高画質液晶、JDNのIPS-NEO液晶を搭載!

HTV31のディスプレイをくわしく見てみよう。サイズは約5.2インチで、1440×2560のWQHD表示に対応している。auの今夏モデルで本機のほかにWQHDに対応するのは、「Galaxy S6 edge」と、「isai vivid」のみで、いずれも高いハードウェア性能を誇る製品である。

なお、HTV31の液晶ディスプレイは、スペック表には「Super LCD3」と言う記載があるだけだが、その正体は、ジャパンディスプレイ(JDN)の開発したモバイル用高画質液晶「IPS-NEO」である。IPS-NEOは、広視野角と発色のよさで定評のあるIPS液晶をベースにしつつ、欠点だった斜め方向から見たときのバックライトのわずかな光の漏れが抑えられている。そのため黒の表現力が向上しており、暗部の引き締まった映像を表現できる。

HTV31と同じIPS-NEOパネルを搭載するスマートフォンとして、ファーウェイのSIMフリー機「Ascend Mate 7」があり、好評を博しているが、本機はその画質にWQHDという解像度が加わったもので、現時点で見るとスマートフォンのディスプレイとしては屈指の表現力を備えたものとなっている。

旧機種のHTL21を左に、HTV31を右に並べて月面のクレーター画像を表示してみた。クレーター部分の情報量の増大に高解像度化の影響が見て取れる。また、漆黒の宇宙の表現でもIPS-NEOパネルの優位性が感じられる

ぱっと見たときのインパクトより、使い続けたときの実用性を重視したHTC製スマホのディスプレイは、ホワイトバランスをいたずらに吊り上げていない。電子書籍の背景は、輝く白と言うより、目をいたわるなめらかな白だ。WQHD表示はさすがに緻密で、細かなルビまでフォントの質感が再現できている

バッテリー周辺を見てみると、容量2700mAhという内蔵式バッテリーを備え、連続通話時間約1120分、連続待ち受け時間が約370時間というスペック値となっている。これは、ハードウェアスペックで共通点の多い「isai Vivid」の連続通話時間約1300分と比べるとバッテリー容量の違い(isai Vividは3000mAh)が差として現れているといえる。また、クアッドコアCPUを備える前モデルHTL23では、連続通話時間が約1010分、連続待受時間が約430時間(4G LTEエリアの場合)となっており、新モデルでは、連続待ち受け時間が短くなっている。

本機に限らず、Snapdragon 810を搭載するスマートフォンは、連続待ち受け時間が短くなる傾向があり、今回検証した試作機ではあるものの、利用ペースによらず1日に1回程度のペースで充電が必要だった。

期待を裏切らない機能性。サブカメラでも4K動画の撮影が可能

次に、HTV31を機能面から見てみよう。

通信機能では、「au VoLTE」に対応し、同機能に対応するauスマートフォンや一部のケータイとの間で高音質の音声通話が可能になった。また、従来からのFDD-LTEのキャリアアグリゲーション(CA)に加えて、WiMAX2+のCAにも対応しており、これを使うことによりダウンロード時で最大225Mbpsの通信が可能になっている。

なお、FDD-LTEの対応周波数帯は、バンド1(2.1GHz帯)、バンド3(1.7GHz帯)、バンド18とバンド26(800MHz帯、バンド26の中にバンド18が内包される関係)、バンド28(700MHz帯)となっている。なお、TDD-LTE(WiMAX2+)のバンド41、ローミング用としてW-CDMAのバンド1(2.1GHz)も利用可能だ。

フルセグおよびワンセグチューナーを搭載するほか(2015年6月9日修正:フルセグ時の録画はワンセグとして行う)、MHLを使った有線とMiracastを使ったワイヤレスの映像出力も可能(2015年6月12日修正、テレビの外部モニターへの出力は行えない)。もちろんFeliCaポート、NFCポート、急速充電のQuickCharge 2.0に対応している。ステレオスピーカーや、ハイレゾ音源対応、サウンドエンハンサーの「DOLBY AUDIO」に対応するなど、オーディオ機能も申し分ない。

本機の特徴であるカメラ機能を見てみよう。メインカメラは2020万画素というかなりのハイスペックだが、さらに被写界深度を計測する2個目のレンズと組み合わされている。これによって、画面の動きに合わせて奥行きの変化する擬似3D写真や、撮影後にピント位置を変更する「UFocus」といったユニークなカメラ機能を利用できる。また、メインカメラはRAWデータでの出力にも新たに対応している。サブカメラの画素数が約1300万画素に強化され、メインカメラとサブカメラの両方が4K動画の撮影に対応している。ソーシャルメディアなどで自分撮りの機会の多いユーザーにはうってつけだ。

メインカメラは2020万画素。これに被写界深度を測定する2個目のレンズを組み合わせている

メインカメラは2020万画素。これに被写界深度を測定する2個目のレンズを組み合わせている

サブカメラとしては驚きの約1300万という高画素センサーを搭載。カメラ自体もボディの中心線に位置しており、構えやすく自分撮りでも自然な構図になりやすい

リニューアルされた日本語入力アプリ「iWnn IME」はソフトウェアキーボードをフロート化

リニューアルされた日本語入力アプリ「iWnn IME」はソフトウェアキーボードをフロート化

ソフトウェアキーボードを自在に透明化させることができる

ソフトウェアキーボードを自在に透明化させることができる

キーボードのサイズも自在に調整可能

キーボードのサイズも自在に調整可能

大画面で気になる文字入力の操作性も確保されている

大画面で気になる文字入力の操作性も確保されている

従来から搭載されていたデザインテーマ機能が大幅に強化されているのも注目点だ。本機のテーマ機能は、インターネットからデザインをダウンロードして組み合わせて利用することができる。また、アイコンデザインの変更のように、今まで少々技術や知識が必要だったカスタマイズも簡単に行えるようになっている。こうしたテーマ機能を駆使すれば、自分だけのスマートフォンに仕上げることでさらに愛着がわくだろう。

アイコンデザインやメニュー周りのカラー、壁紙などがセットになったデザインテーマをダウロードできる

アイコンデザインやメニュー周りのカラー、壁紙などがセットになったデザインテーマをダウロードできる

難しかった画面カスタマイズが簡単に行える

難しかった画面カスタマイズが簡単に行える

テーマはインターネットからダウンロードできる

テーマはインターネットからダウンロードできる

テーマは、壁紙、アイコン、フォント、サウンドなどの要素別でもダウンロードできるので、テーマをべすにさらに自分好みの画面にカスタマイズできる

高性能・高機能を継承し、使い勝手も向上した第3世代butterfly

HTV31は、オクタコアCPU、Android 5.0、WQHD液晶、VoLTE、キャリアアグリゲーションなど今夏のスマートフォンで注目を集める技術を漏れなく搭載した、文句なしの高性能モデルだ。そのスペックの高さは従来のbutterflyシリーズ同様に、“最高”にこだわるユーザーにとって格好の一台であろう。

さらに、サブカメラが4K動画の撮影に対応するなどカメラ機能も高く、メインカメラの「UFocus」や擬似3D機能、RAWデータでの出力など、カメラ機能にこだわるユーザーにも満足できる内容となっている。また、画像の編集もなかなか強力で、ソーシャルメディア向きのインパクトのある画像を作成できる点も魅力だ。

だが、本機の魅力はそうした性能・機能の高さにとどまらない。たとえば、Androidスマホの魅力ではあるものの、少々敷居の高かったカスタマイズを簡単に行える「テーマ」が充実しており、自分だけのスマホに育て上げる楽しさを誰もが体験できる点や、日本語入力環境、ソーシャルメディアに適した高性能なインカメラなど、洗練された使い勝手も大きな魅力である。

このように、HTV31は、高性能・高機能という従来の特徴を拡張しつつ、使い勝手も向上している。今まで以上に、幅広いユーザーが満足できるスマートフォンに仕上がっていると言えるだろう。

田中 巧(編集部)
Writer / Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよびその周辺機器には特に注力しており、対象となる端末はほぼすべて何らかの形で使用している。
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