レビュー

3万円台の価格が魅力のWindows Phone「MADOSMA Q501」レビュー

2015年6月18日に発売開始された、マウスコンピューター「MADOSMA Q501」(マウスコンピューター製)は、国内では、auの「Windows Phone IS12T」からおよそ4年ぶりの登場となる、OSにWindows Phoneを搭載するSIMフリースマートフォンだ。3万円台前半という価格設定に加えて、この夏に登場予定の「Windows 10」のスマートフォン用エディション「Windows 10 Mobile」への対応が検討されていることもあって、初回予約は完売するなど、注目を集めている。そんなMADOSMA Q501のインプレッションをお届けしよう。

白をベースに、蛍光緑に近い明るい黄緑の製品ロゴが入る。高級感はないがスリムなスタイルが強調されている

白をベースに、蛍光緑に近い明るい黄緑の製品ロゴが入る。高級感はないがスリムなスタイルが強調されている

薄く、軽く、画面は大きく。4年分の進化が詰まった端末

まずは、MADOSMA Q501の概要を解説しよう。最新のスマートフォンの傾向と同じく、スリム&大画面のスマートフォンで、約70.4(幅)×142.8(高さ)×8.4(厚さ)mmで重量約125gというボディに、ハイビジョン表示に対応する約5.0インチのIPS液晶を搭載している。

基本性能では、クアッドコアプロセッサーの「Snapdragon 810 MSM8916(1.2GHz)」、1GBのRAM、8GBのストレージを搭載。加えて、16GBのmicroSDHCメモリーカードが同梱されている。なお、本機のmicroSDメモリーカードスロットは、大容量のSDXC規格に対応しており、64GBまで動作確認が取れている。

センサー類としては、GPS(A-GPS対応)、近接センサー、光センサー、加速度センサー、電子コンパスを装備。付加機能を見ると、ワンセグやフルセグなどのテレビチューナー、FeliCaポートといったAndroidスマートフォンではおなじみの機能は搭載されておらず、防水や防塵仕様も備わっていない。スマートフォンとして必要な基本機能は備えているが、全体的にはシンプルなハードウェア構成となっている。

本機のハードウェアと、日本マイクロソフトが社内用として採用しているWindows Phoneの高性能モデル「Lumia 830」(ノキア製)と比較すると、画面サイズと解像度、メモリーは共通しているが、ストレージが異なる。Lumia 830は16GB。MADOSMA Q501は8GBだが、16GBのmicroSDHCメモリーカードの増設分を含めれば上回っている。Windows Phoneは世界的に低価格な製品が多く、ハードウェアのスペック要求もそれほど高くはない。そうした世界的なトレンドの中で位置づけるなら、やや上位のスペックを備えた製品と言えそうだ。

また、プラットフォームが違うので直接比較することは難しいが、MADOSMA Q501の体感速度は、WebページやTwitterのタイムラインをスクロールさせた場合や、アプリの起動にかかるレスポンスにおいて、最新スマートフォンと比較しても大きな見劣りを感じない。体感速度でチェックする限り、コストパフォーマンスは良好である。

なお、マウスコンピューターの直販サイトでの販売価格は、消費税と送料込みで33,800円となっている。

ディスプレイに2枚の保護フィルムが張られた状態で出荷される。1枚目のフィルムは、写真のように各部の説明が書かれているが、これをはがすと本来の保護フィルムが姿を現す

5インチディスプレイを搭載したスマートフォンとして125gという重量はかなり軽い。最近のスマートフォンの中でも軽さは際立つ

裏ブタは取り外しが可能。オプションで新色の裏ブタが用意される

裏ブタは取り外しが可能。オプションで新色の裏ブタが用意される

microSIMサイズのSIMカードを使用する。SDXC規格対応のメモリーカードスロットも備えており、同梱の16GBのmicroSDメモリーカードを差し込んで使う

バッテリー容量は2300mAh。連続待ち受け時間は約460時間、連続通話時間は9時間。充電はmicroUSBポートを使うが、1A以上の電流が推奨されており、利用には急速充電対応ACアダプターなどが適している

本機はSIMフリースマートフォンなので、利用には何らかのSIMカードが必要だ。対応するのはmicroSIMで、対応バンドはNTTドコモやソフトバンクグループが採用するW-CDMA方式(3G)のバンド1/8/19(バンド6を内包する)と、国内のすべてのキャリアが対応するLTE方式(4G)のバンド1/3/19となっている。なお、キャリアアグリゲーションやVoLTEには対応していない。

今回の検証ではNTTドコモの回線を使ったMVNOのSIMカードで通信が行えたが、技術的にはソフトバンクやワイモバイルのSIMカードとの親和性も高そうだ。なお、auのSIMカードでは、CDMA2000方式に対応していないため音声通話やSMSが行えないことや、LTEサービスの中核を占めるバンド18に対応していないこともあり、通話エリアなどで制限が目立つことが予想される。

ちなみに、SIMカードのAPN設定については、MVNOを含む主要なSIMカードの通信設定がプリセットされているので、それを選ぶだけでよい。この点で、ユーザーの負担が軽減されている点は歓迎したい。

このように、3万円台前半の本体価格と、格安SIMを組み合わせられることから、本機は導入コストとランニングコストの両方をかなり低く抑えられる。数年間保有した場合のトータルコストでは、通信キャリア製のスマートフォンと大きな差が生じるはずだ。

LINEやTwitterなどはあるが、アプリの整備は発展途上

筆者にとっても、Windows Phoneのレビューは約4年ぶりとなるが、タイル状のアイコンが並ぶホーム画面や、テキスト主体のアプリの画面デザインなどは大きく変わっていない。魅力だったOfficeの搭載も継続されている。

そんな久しぶりのWindows Phone体験だが、大きく変わったと感じるのは、クラウドとの連携が強化されている点だ。MADOSMA Q501は、最初にOutlook.comやHotmailなどマイクロソフトのアカウントを登録する必要があり、これを行うことで、メールアドレスや連絡先、Internet Explorerのお気に入り、オンラインストレージの「OneDrive」との接続などが自動的に行われる。撮影データやOfficeドキュメントなどをOneDrive上に保存しておけば、いちいちPCと有線で接続してデータの同期を取る必要もない。クラウド連携が強化されているPC版の「Windows 8.1」との親和性はかなり向上している。

タイルが並ぶ独特のWindows Phone 8.1のホーム画面。タイルのサイズや位置は自在に調整できる

タイルが並ぶ独特のWindows Phone 8.1のホーム画面。タイルのサイズや位置は自在に調整できる

ホーム画面を右にフリックすると表示しきれないタイルが表示される

ホーム画面を右にフリックすると表示しきれないタイルが表示される

通知メニューには、受信したメールが表示される

通知メニューには、受信したメールが表示される

編集機能も備えたOfficeを標準で備えているのが大きな魅力。マイクロソフトのオンラインストレージサービスOneDrive上にファイルを保存しておけば、出先でもシームレスにファイルの編集が行える

日本語の文字入力ももちろん可能。テンキーモードでは右のカーソルボタンが2つあるなど、少々荒削りな部分も見受けられる

国内でWindows Phoneが定着できなかった大きな理由は、アプリがなかなかそろわないうちに、端末が陳腐化してしまったことや、プリインストールされる地図のサービスの貧弱さが原因として指摘されることが多い。

アプリのダウンロードを一手に担うWindows ストアでは、日本語に対応するアプリも見られた。メジャーなアプリとしては、「LINE」、「Twitter」、「ジョルダン乗り換え案内」、「Dropbox」などがあった。ライバルと比較して潤沢とまではいえないが、最低限の利用環境は用意されていると言える。

いっぽうで、日本でのユーザーがほとんどいないこともあり、ゲームや電子書籍など国内で利用できる、日本人の好むようなエンターテインメント系やデジタルコンテンツ閲覧アプリはほとんどない。この点でスマートフォンをゲーム機としても利用したいユーザーにとって、現状のMADOSMA Q501は厳しい部分がある。

プリインストールの地図アプリ「Bing Maps」は、日本国内の地図データがなく、PC版のBing Mapsには現状では遠く及ばない。この点はマウスコンピューターも深く認識しているようで、対応を急いでいる。当面はWebブラウザーを使って各種の地図サービスを使うことになるだろう。

アプリのダウンロードは、Windowsストアのみから行う仕組み

アプリのダウンロードは、Windowsストアのみから行う仕組み

Windows Phone用のLINEアプリも用意されていた

Windows Phone用のLINEアプリも用意されていた

プリインストールされる地図アプリBing Mapsは日本地図のデータが事実上ないに等しい。精細な地図が用意されているPC版のBing Mapsレベルへの強化が早急に望まれる

国内にほとんどユーザーがいないこともあり、MADOSMA Q501で利用できるアプリにはまだ不満はある。だが、年内に予定されているWindows 10 Mobileの登場で改善される可能性がある。Windows 10は、PC用とスマートデバイス用で別々だったアプリを「Windowsユニバーサルアプリ」に統合し、タブレット、スマートフォン、IoT機器を問わずに実行できるようになる。ユーザーの多いPCとアプリが共通化すれば、アプリの開発も行いやすくなるはずだ。本機は、現時点では明言されていないが、Windows 10 Mobileへの対応が検討されている。

まとめ
Windows 10 Mobileへのアップデートを見据えて手に入れても面白い

MADOSMA Q501は、国内で発売されるWindows Phoneの正規モデルとしては久しぶりの新製品となる。マニア向けのスマートフォンではあるが、トータルコストが安く、ほかの端末とは明らかに違う個性を持っている。基本性能が高く、動作がスピーディーなのもポイントで、セカンド機やサード機として、なかなか遊びがいのある端末に仕上がっていると思う。また、Officeに標準対応していることや、Windowsとの連携も良好なので、ビジネス向けスマートフォンとしても適している。

Windows Phoneのアプリやコンテンツの対応状況については、iOSやAndroidのような先行するスマートデバイスと大きな差はあるが、その点については、Windows 10 Mobileの登場によって改善されることに期待しよう。MADOSMA Q501は、正式な発表があったわけではないが、現時点でのWindows 10 Mobileのハードウェア要件を考慮すると、十分にWindows 10 Mobileへのアップデートが可能な端末である。現状でもWindows 10 Mobileの開発途中バージョンであるInsider Preview版がインストールできる。状況によっては、もしかすると、Windows 10 Mobileをいち早く利用できる端末になるかもしれない。その点にも期待して、この端末を手に入れておくのもいいだろう。

田中 巧(編集部)
Writer / Editor
田中 巧(編集部)
通信を中心にしたIT系を主に担当。Androidを中心にしたスマートデバイスおよびその周辺機器には特に注力しており、対象となる端末はほぼすべて何らかの形で使用している。
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