レビュー

「iPhone 7」レビュー、360度どこから見ても真っ黒な「ジェットブラック」をチェック

アップルは2016年9月16日、スマートフォン(スマホ)の新機種「iPhone 7」と「iPhone 7 Plus」を発売した。国内ではNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの3キャリアが取り扱う。アップルストアではSIMフリー版の購入が可能だ。

3キャリアは、新型iPhoneの発売に合わせて、東京都内の各旗艦店で発売セレモニーを開催。ソフトバンク表参道店には約50人が列を作り、午前8時の発売開始をカウントダウンした。予約購入が推奨されるようになり、発売日のお祭りの規模は年々小さくなっているが、それでもアップルストア表参道店と銀座店には、それぞれ約200人が並ぶなど、盛り上がりを見せた。ただ、新色の「ジェットブラック」モデルと「iPhone 7 Plus」は、予約なしで購入可能な在庫がないことが前日に発表されるなど、一部混乱も生じたようだ。iPhone 7 Plusのジェットブラックは特に希少のようで、アップルストアでの出荷時期は11月になっている。都内の家電量販店では、予約分でも16日に入ってきたのは1台だけと、初回出荷台数はかなり少ないようだ。

ソフトバンクは参道店で発売セレモニーを開催。同社の代表取締役社長兼CEOの宮内謙氏、ゲストとしてテレビCMに登場するフリーアナウンサーの古館伊知郎さん、女優の広瀬すずさんが登場した

アップルストア表参道には約200人が並んでいた

アップルストア表参道には約200人が並んだ

価格.comマガジンでは、希少なiPhone 7とiPhone 7 Plusのジェットブラックモデルを入手できたので、ファーストインプレッションをお届けしたい。なお、より詳しい記事は来週公開する予定だ。

新色のジェットブラックは“真っ黒”

iPhone 7シリーズの形状は、従来モデルである「iPhone 6s」シリーズを踏襲しており、パッと見では違いがわかりにくい。それでも背面を見ると、アンテナ用の樹脂パーツが目立たない角にレイアウトされており、よりスッキリとした見た目となっている。注目は新色のジェットブラックだろう。

4.7型液晶ディスプレイを搭載するiPhone 7(左)、5.5型液晶ディスプレイを搭載するiPhone 7 Plus(右)。カラーはどちらもジェットブラック

ジェットブラックモデルの化粧箱

ジェットブラックモデルの化粧箱

高光沢仕上げのジェットブラックは、9段階の酸化皮膜処理と研磨加工を施したスペシャルなモデルだ。前面のガラスとの境目がわからないほどの高光沢仕上げで、ネジやアップルマーク、Lightning端子、スピーカーの中まで黒色に統一されており、360度どこから見ても真っ黒だ。光沢感のあるiPhoneは久しぶりで、古くからのiPhoneユーザーなら、「iPhone 3G」を思い出すかもしれない。硬度は7000シリーズアルミニウムで作られたほかのモデルと変わらないが、摩耗する場合があるので、アップルでは、摩耗が気になる人には、ケースで保護することを推奨している。

なお、ジェットブラックは128GBモデルと256GBモデルだけの限定カラーで、一番安価32GBモデルでは選べない。ストレージ容量を見ても、ジェットブラックが特別なモデルであることがわかる。

iPhone 7の背面。高光沢仕上げであることがわかるように、あえて光を反射して撮影してみた。iPhone 6や6sでは、“Dライン”などと呼ばれていたアンテナ用の樹脂パーツが、上端と下端にレイアウトされ、スッキリとしたデザインに変わっている。本体サイズはiPhone 6sから変わっておらず、重量は5g軽くなっている

ジェットブラックモデルは、前面のガラスとの境目がどこなのかわからないほどの高光沢仕上げ

ジェットブラックモデルは、前面のガラスとの境目がどこなのかわからないほどの高光沢仕上げ

ジェットブラックモデルは塗装だけでなく、質感もほかのモデルと異なっている。ほかのカラーはサラッとした手触りなのに対して、ジェットブラックモデルは手に吸いつくようなしっとりした手触りだ。他社の高光沢仕上げのスマホと同じように、指紋は目立つが、ひと目で最新のiPhoneであることがわかるジェットブラックモデルは、しばらくは一番人気のカラーになるだろう。それだけに手ごろな32GBモデルの設定がないのが残念だ。

待望の防水対応! ホームボタンの変更は賛否両論

iPhone 7シリーズへの買い替え動機として、防水対応をあげる人は少なくないはずだ。アップルのWebページでは防水ではなく、「耐水」と表記されているが、これはIP67等級に適合していることを意味している。水深1mに30分間浸しても、内部に水が入らないというもので、誤って水没してもすぐに取り出せば問題ないということだ。これまでiPhoneを使うのをためらわれたシーン、たとえば、雨の中や水の近くなどでも安心して利用できる。

ただ、防水カメラや防水スマホを使ったことがある人はわかると思うが、経年劣化により、防水性能が下がることがある。アップルも、耐水性能が永続的に維持されるものではないとしている。また、水濡れによる損傷は補償の対象外なので、防水と言っても過信はしないほうがいいだろう。

ボディで大きく変わったのがホームボタンだ。物理的な押し込み式ではなく、感圧式に変わっている。あたかも押しているように振動する仕組みで、腕時計型端末「Apple Watch」やノートパソコン「MacBook」のトラックパッドと同じ「Taptic Engine」が使われている。実際のところはどうなのか。2回押して、アプリを切り替えたり、長く押してSiriを起動したりといった、従来からの操作は自然に行える。最初は違和感があったが、すぐに慣れた。人によっては、「何か違う」と感じるかもしれないが、感覚の変化であって、レスポンスやできることは変わっていない。振動の強さは3タイプから選べるので、好みの強さを選ぶといいだろう。

iPhoneを操作するうえで、ホームボタンは何度も使うもので、長くiPhoneを使っていると、どうしても故障するリスクが高まる。iPhone 7シリーズでは、物理ボタンを廃止したことで、ホームボタンの故障リスクが減ったとも言える。

感圧式に変わったホームボタン。Taptic EngineのAPIはサードパーティにも公開されており、Taptic Engineならではの細かな振動を使ったゲームアプリなどの登場が期待される

ホームボタンの振動の強さは3パターンから選べる

ホームボタンの振動の強さは3パターンから選べる

デュアルカメラの2倍ズームは意外と使い勝手がよさそう

iPhone 7シリーズは、カメラ機能も大幅に強化されている。背面カメラの画素数は1200万画素で変わらないが、F1.8の明るいレンズを搭載。レンズの枚数も5枚から6枚に増え、広い色域での撮影が可能となった。また、これまでは大きな“Plus”にしか搭載されていなかった光学式手ブレ補正がiPhone 7に搭載されたのもポイントだ。

いっぽうのiPhone 7 Plusは、28oの広角レンズと56mmの望遠レンズを搭載したデュアルカメラで、光学2倍ズームが可能となった。2倍ズームは、正直、大したことがないと思っていたが、意外と寄れる。猫や人などを撮影するときに、近づかなくいいのは案外助かかりそうだ。望遠レンズを搭載したカメラ側は、光学式手ブレ補正が働かず、レンズもF2.8と広角レンズを搭載したカメラ側よりも仕様的には劣るのが気になるが、画質に関しては追ってレポートしたい。

また、iPhone 7 Plusでは、デジタル一眼カメラで撮影したような、背景をぼかして被写体の人を引き立たせる「被写界深度エフェクト」が年内に追加される予定だ。この機能を使えば、きれいなポートレートが撮影できるようになる。人以外で使えるのかなど、気になる点の多いエフェクトの登場に期待したい。

iPhone 7 Plusのデュアルカメラ

iPhone 7 Plusのデュアルカメラ

iPhone 7 Plusで撮影した猫。左が「1×」、右が「2X」(光学2倍ズーム)

iPhone 7 Plusで撮影した猫。左が「1×」、右が「2X」(光学2倍ズーム)

ヘッドホン端子の廃止の影響はすぐに感じる

既報の通り、iPhone 7シリーズには3.5mmのヘッドホン端子がない。付属の「EarPods」はLightning端子に接続して利用する「EarPods with Lightning Connector」に変わっている。ワイヤレス化が進んでおり、自然な流れではあるが、ヘッドホン端子廃止の影響はすぐに感じた。ヘッドホンで音楽を聞きながら充電ができないのだ。これは、いろいろなシーンで不便に感じるかもしれない。充電しながらヘッドホンで音楽を聞くためには、「iPhone Lightning Dock」を使うか、同時に発表された「AirPods」、もしくはBluetooth接続のヘッドホンを使わなければならない。サードパーティのアダプターを使うという手もある。

アダプターが付属するので、既存のヘッドホンを接続することは可能だ。小さなアダプターだが、ヘッドホン側に接続しておけば、忘れることはないだろう。

3.5mmヘッドホン端子はなくなり、端子があったところにはスピーカーが内蔵された。ヘッドホン端子はなくなったが本体の厚さは変わっていない

ヘッドホン接続用のアダプター「Lightning - 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプタ」が付属するので、手持ちのヘッドホンはそのまま利用できる。ヘッドホン側につないでおけば忘れる心配はないだろう。ヘッドホンはLightning端子に接続する「EarPods with Lightning Connector」

「Suica」が使える「Apple Pay」は10月スタート

アップルは10月から国内で決済サービス「Apple Pay」を開始する。iPhone 7シリーズの日本モデルにはフェリカが搭載されており、東日本旅客鉄道(JR東日本)の「Suica」にも対応する。iPhone 7シリーズや同時に発売された「Apple Watch Series 2」で、電車やバスに乗れるようになるのだ。もちろん、Suicaが利用できる店舗での支払いにも使える。「おサイフケータイ」が使えないからといって、iPhone購入に踏み切れなかった人にとっては待ちに待ったフェリカ対応だろう。

Suicaの設定は、手持ちのSuicaカード(Suica定期券も含む)をiPhone 7シリーズにタップするだけ。これで500円のデポジットを含むSuicaの情報がiPhone 7シリーズに移行される。Apple Payに登録できるカードは最大8枚までで、複数のSuicaを登録して、使い分けることもできる。Apple Payにクレジットカードを登録しておけば、チャージや定期券の更新も可能だ。Suicaカードを持っていない場合は、JR東日本が別途用意するSuicaアプリケーションの中で、Apple Payといっしょに使えるSuicaを作れる。

Suicaで改札を通る場合は、アプリケーションを起動したり、スリープを解除したりする必要はない。電源が切れていたとしても改札を通れる。Suicaを登録したiPhone 7シリーズを紛失しても、リモートワイプ(遠隔消去)を実行すれば、個人情報がすべて消去できるので悪用される心配もない。「マップ」アプリと連動し、目的地までSuicaの残高で行けるかどうかも教えてくれるようになるので、かなり便利になりそうだ。

注意点は、現時点、「PASMO」などフェリカを搭載したほかの交通系カードに対応していないこと。遅かれ早かれ対応はすると予想されるが、いつになるかはわからない。また、登録できるクレジットカードにVisaが入っていないのも大きな問題になりそうだ。サービス開始直後は少し混乱が起こりそうだが、どうなるかは蓋を開けてみないとわからない。Suica対応のApple Payの使い勝手に関しては、サービスがスタートしてから詳しくレポートしたい。

このほかにも、「iOS 10」や着実にパワーアップしているパフォーマンス面など、iPhone 7シリーズには詳しくチェックすべきポイントがまだまだある。価格.comマガジンでは追って詳しくレポートする予定だ。

三浦善弘(編集部)
Writer / Editor
三浦善弘(編集部)
出版社で月刊誌やWebメディアの編集・記者を経験し、2013年にカカクコム入社。「価格.comマガジン」にて、PCやスマートフォン分野を担当。取材歴は20年以上。現在は「価格.comマガジン」全体を統括する。
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