間話「真門まもんじゃね?」②





 マモンに衝撃が走った。マモンの隣でサマエルが「そんなことってあるぅ?」って顔をしているが、気にならないほどの衝撃だった。


 十代後半に差し掛かった少女は、とても澄んだ魂をしていた。

 背中まである艶やかな黒髪、少し性格が内気なのか猫背ではあるが、身長は少し高めだ。マモンには気にならないが、きっと年頃の少年であれば、彼女のたわわに実った乳房に目が釘付けになるだろう。

 容姿は、特別整っているわけではないが、少し困った感じの笑顔から愛嬌を感じる。


 ――なにより家名が素敵だった。


「まままままままままままま」

「おい、マモン、気持ちはわかるがしっかりしろ。もうまもんまもんさえ言えてないじゃないか」

「お、落ち着け、落ち着けまもんまもん。俺は強欲な魔族だが、紳士的な魔族でもある。初対面の女性に不快な思いをさせるなどあってはならない、まもんまもん」


 緊張するマモンとサマエルに気にせず、森田のおばあちゃんは豪快に笑った。


「うちの孫は可愛いだろう? 体格もよし、胸も尻も大きんでな、元気なあかちゃんばんばん産むぞ!」

「も、もう、おばあちゃん! 変なこと言わないでよ!」

「照れるな照れるな! サマエルちゃんとマモンちゃんがいい関係だったら、あたしゃ余計なことはしないんだけどね。弟妹のような関係だって聞いたから、お節介だと承知でね!」


 知らない間に弟妹の関係にされていたサマエルが、マモンの尻をつねった。


「……いつのまにお前は私の弟になったんだ?」

「ま、まも……サマエル様にとって俺は可愛い弟のような存在ではないですか」

「まあいいさ。森田のおばあちゃん、マモンにいい話を持ってきてくれたのは嬉しいが、年頃の女の子にこんなおっさんじゃかわいそうじゃないか?」

「なーに言ってんの、サマエルちゃん! マモンちゃんはいい子じゃないか。お仕事も真面目にやって、こーんなじじいばばあにも優しくしてくれる。うちの孫にはね、マモンちゃんみたいな素敵な男性がちょうどいいんだよ!」

「……お前、素敵な男性だったのか?」

「まもんまもん! 俺はいつでも素敵です!」


 高評価のマモンに、サマエルは少し困惑気味だ。

 SNSといい、動画といい、世間はマモンに好印象のようだ。解せない。


「あ、あの、さまたん! じゃなくて、サマエルさん!」

「――いま、なんと?」


 魂の名前を亜子の呼ばれたサマエルが少し驚いたように彼女の顔を見た。

 亜子は少し照れたように、手を差し出してきた。


「あ、あの、動画を始めた頃からずっと見ていました!」

「え?」

「マモンさんも面白くて好きですけど、以前ののんびりな感じも大好きで、よかったら握手してください!」

「――もちろんだとも! まさか森田のおばあちゃんのお孫さんが私の動画を初期から見てくれていたなんて! うれしいな! よかったら、おばあちゃんとおじいちゃんで夕食を食べにきてほしい。歓迎する! マモンもいい奴だから、姉としておすすめだぞー!」






「サマエル様、めっちゃチョロすぎ。手のひらくるっくるですね、まもんまもん」






 古参のファンと出会って喜ぶサマエルに、マモンも同じように喜ぶのだった。


 ちなみに、マモンと真門亜子は『まずはお友達から』となった。






 〜〜あとがき〜〜

 森田のおばあちゃん「マモンちゃんがうちの孫と結婚して婿入りしたら真門マモンだろう? 普段からまもんまもん言ってるから、ちょうどいいと思ってねぇ!」

 さまたん「まさかの理由!?」


 ※ちょっと裏設定※

 真門亜子さんは、厳しい両親に育てられ勉強ばかりの日々でした。高校で人間関係でいろいろあって心がぽっきり。見かねたおばあちゃんとおじいちゃんが田舎へ連れてきた感じです。


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