今回の撮影には絵梨奈ちゃんたっての希望で、江ノ島の海が選ばれた。
「皆さんにメデューサとは違った(笑)、普段の私を見てもらいたかったんです。制服も最後の夏だし、修学旅行のハワイにも仕事で行けなかったので」

 早くから仕事に打ち込んできた人は学生時代のゆるい時間を犠牲にせざるを得ない。『仮面ライダーウィザード』の撮影の一方で、映画『PRECIOUS STONE』にも出演した。

「今回の映画ではスーパーポジティブなヒロインを演じました。会う人みんなに元気をあげられるような太陽みたいな女のコ。これまでは性格悪そうな役が多かったりもしたので、正反対と思うと吹っ切ってやれました。それと同時に、『仮面ライダーウィザード』のアットホームな現場に戻ってくると、またほっとしたのも事実でした」

 これからは女優業一筋、と澄んだ瞳を輝かせる。

「最終的な目標とかゴールは決めたくないです。幅広いジャンルの作品に出会って、そのとき与えられた役を一生懸命演じていけたらいいですね。そして次の目標をもてたらいい。とにかく、お芝居が好きになれたので、見ている人に何かを感じてもらえることを大事にしたい。見ている人が泣いたり笑ったりできるような、ちゃんと心に届くような。薄っぺらくない、重みのある演技をしたいと思います」

「始めたばかりで悪役ができてよかったね」と、ふとハギニワが言った。

 彼女を見ていて私もそう思った。いいヒト、を演じるのはたやすい。どうやったら悪の位置に立てるのかは、かえっていいヒトじゃなきゃできないものなのかもしれないな、と。

  • 出演:中山絵梨奈

    1995年千葉県生まれ。2008年、雑誌nicolaのモデルオーディションでグランプリに。同年10月から2013年10月までメインモデルとして活躍。その後、女優に転向、09年3月公開の映画『あとのまつり』で主演デビュー。現在、『仮面ライダーウィザード』のほか、CMや映像に引っ張りだこである。
    http://www.stardust.co.jp/profile/nakayamaerina.html
    公式ブログ http://www.star-studio.jp/n-erina/

  • 取材・文:森 綾

    1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本多数。自著には女性の生き方をテーマにしたものが多く『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)、映画『音楽人』の原作など。
    ブログ『森綾のおとなあやや日記』 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太