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【江戸時代の生活の知恵】サステナブルな住居の構造とは?

公開日: 更新日:2024.01.12
【江戸時代の生活の知恵】サステナブルな住居の構造とは?


現代のサステナビリティのトレンドが、実は江戸時代の日本にも見られることをご存知でしょうか。

遠い昔から日本の住居は、自然と共生する形で、効率的で持続可能な工夫が凝らされたサステナブルな構造だったのです。


木造の建築

木造

木材の豊富な利用

江戸時代の日本では、国土が豊富な森林に恵まれていたため、木材を主要な建築材料として利用していました。また、持続可能な伐採方法や植樹活動を通じて、資源を継続的に確保する取り組みが行われていました。

木材は豊富に手に入り、再生可能な資源であり、環境にやさしい材料です。さらに木材は軽くて扱いやすく、加工しやすいため、住居の建築に適していました。


断熱性と調湿効果

木材はその性質上、断熱性と調湿効果に優れています。

木材は熱伝導率が低いため、熱が伝わりにくく、室内の温度を保つことができます。夏は涼しく、冬は暖かく保つことができるため、エネルギーの節約にも繋がります。

また、木材は、空気を含む繊維構造をしているため、湿気を吸収したり放出したりすることができます。この調湿効果により、室内の湿度を適切に保つことができます。

江戸時代の住居は、この特性を活かして、四季を通じて心地よい室内環境を作り出していました。


節約的な設計

江戸時代の住居は、限られた空間と資源を最大限に活用するための工夫が凝らされていました。

吹き抜けの設計により、住居の中心部まで自然光を届けることができました。これにより、昼間の間は人工の照明を必要とせず、光の節約が実現されていました。
また、吹き抜けは熱の循環を助け、夏の暑さや冬の寒さを緩和する役割も果たしていました。

障子は、紙と木を主材料とした軽量な仕切りとしての機能を持ちながら、部屋の明るさを調節する役割も果たしていました。これにより、部屋の使用状況や時間帯に応じて、最適な照明やプライバシーの確保が可能となりました。

廊下土間もまた、住居の温度調節や風通しの向上に寄与していました。特に、家の前後にある通り風を効果的に取り入れ、自然のエアコンのように機能させることで、居住者が快適に過ごせる空間を創出していました。


和室の利用

和室

江戸時代の日本において、住居の特徴的な要素の一つは和室でした。和室は日本独自のデザインと文化を反映し、快適な生活空間を提供する役割を果たしました。


畳敷きの床

和室に欠かせない畳は、イネ科の植物から作られる天然素材です。柔らかく、足触りが良いため、生活の中心となる床として使用されていました。
畳は調湿性に優れており、湿度の高い日本の気候に適しています。また、夏は冷ややかで、冬は暖かな畳の上での生活は、エネルギーの節約にも寄与しています。


押入れと床下収納

和室には通常、押入れ(おしいれ)と呼ばれる収納スペースが設けられていました。
押入れは、収納スペースとしての役割だけでなく、季節ごとの衣替えや日常生活の道具を整理する場としても利用されていました。

また、床下にも床下収納があり、押し入れ同様に、効率的な空間活用の一環として設計され、生活用品や季節の道具を収納するのに役立っていました。


室内と庭園の調和

和室は通常、庭園と調和するようにデザインされており、室内と庭の一体感は和室の大きな特徴のひとつです。
縁側や床の間からの景色を楽しみ、四季の移り変わりを感じることができるデザインは、自然との調和を大切にする日本文化を象徴しています。

また、このような構造は、風通しを良くするため、自然な冷暖房としても機能していました。


多目的な使用

和室は、一日の中でさまざまな使い方がされていました。昼は居間として、夜は寝室として使用されるなど、一つの部屋で多機能を果たしていたのです。
家具や調度品を移動させることで、空間の使い方を簡単に変えることができ、効率的なスペース活用が可能でした。

このような多目的な使用は、空間を有効活用するとともに、日常生活をシンプルにするための工夫とも言えます。


軒先の庇

軒先

江戸時代の住居には、軒先の庇と呼ばれる屋根の出っ張りがありました。


建物の保護

軒先の庇は、雨や雪を適切に逸らし、壁面や基礎に雨水が直接当たるのを防ぎました。これによって、壁材や土壁の劣化、木材の腐食を大幅に減少させ、建物の寿命を延ばしていたのです。

このことは長期的に建物の修繕や取り替えの頻度を減らすことができ、資源の節約や廃棄物の削減に繋がっていました。


節約的なエネルギー利用

庇は、夏の強い日差しを遮り、室内の温度上昇を防ぐことで、自然のエアコンの役割を果たしていました。また庇が夏の熱を遮断することで、室内の温度上昇を抑え、住居内の過度な乾燥を避ける役割も果たしていました。このような自然の恩恵を活かす設計により、冷房の必要を減少させ、エネルギー消費を節約することができました。

冬には庇が冷たい風を遮り、室内の温度を保つ助けとなっていました。また、低くなった太陽の角度を利用し、室内への日差しを取り込むことで暖房効果を得ることができました。

この結果、室内の温度を適切に保ち、住む人の生活を快適にする役割を果たしていました。


軒先の庇と建物の美的要素

江戸時代の建築において、軒先の庇は単なる機能的な要素にとどまらず、建物の美的要素としても重要な役割を果たしていました。

まず、庇の存在により、建物の外観にリズムと深みが生まれました。長く伸びる庇は、建物の水平線を強調し、構造の安定感と調和を感じさせるものでした。また、庇の下に形成される影は、日の移り変わりとともに様々な表情を見せ、季節や時間の流れを感じさせる独特の美しさを持っていました。

さらに、庇に用いられる素材や彫刻、装飾などは、家主の趣味や地域の特色を反映し、一つ一つが独自の美的価値を持っていました。これらのディテールは、建物全体の質感や風格を高め、訪れる者の目を引きつける存在となっていました。


自然素材の利用

自然素材

壁:自然の風合いと機能

江戸時代の住居では、土壁や粘土を使った壁が一般的でした。

土壁は、主に粘土や砂、稲わらなどを混ぜ合わせて作られるもので、これを壁として塗り固めることで自然な断熱材としての役割を果たしていました。夏は涼しく、冬は暖かい、というのが土壁の最大の特徴で、これによりエネルギーの節約や快適な室内環境が実現されました。

また、粘土は湿度の調整機能も持っており、日本の湿気多い気候において、部屋の中の湿度を適切なレベルに保つ役割も果たしていました。さらに、土壁は吸音性にも優れており、静かな室内環境を作り出す助けとなっていました。

デザイン面では、土壁はその質感や色合いが独特で、和の情緒を感じさせるものでした。自然の風合いを活かし、様々な手法で装飾されることもあり、その美しさは現代の住宅にも取り入れられることが多いです。


紙の障子:伝統的な美学

江戸時代の住居設計には、自然素材の使用が非常に特徴的であり、中でも紙の障子は独特の美しさと機能性を兼ね備えた要素でした。

障子紙は、和紙を基本とし、特に白い薄手の紙が好まれました。この和索は柔らかく、光を柔和に透過させる性質を持っています。日中は、外からの自然光をやわらかく取り入れ、室内を明るく照らすことができました。夜には、室内の灯りをほのかに外に漏らし、幽玄な雰囲気を作り出すことができました。

また、障子は紙の特性を活かし、部屋の間仕切りや窓の役割も果たしていました。これにより、プライバシーを保ちつつ、空間の区切りを柔軟に変えることができ、多機能な空間利用が可能でした。
さらに、和紙の調湿効果もあり、部屋の湿度を一定に保つ役割も担っていました。


照明:自然素材の灯り

江戸時代には、現代のような電気照明は存在せず、日常の照明には自然の光や火を利用していました。照明の素材や方法にも、自然を活かす知恵が詰まっていました。

日中の照明には、障子や格子窓を通して自然光を取り入れる工夫がされていました。特に障子は、紙の薄さで光をやわらかく室内に拡散させ、明るく穏やかな空間を作り出す役割がありました。
また、家の配置や窓の位置も、最大限の自然光を取り入れるように工夫されていたのです。

夜間や暗い場所での照明としては、ランタンや行灯、蝋燭などが使われていました。これらの照明器具は、竹や和紙、金属などの自然素材を活用して制作され、そのデザインには和の美意識が反映されていました。

これらの自然素材による照明は、柔らかな光を放ち、人々の生活を温かみのあるものにしていました。


長屋

長屋

長屋の構造と空間利用

江戸時代の長屋は、複数の家族や単身者が連続して住む集合住宅の一形態として、都市部に多く見られました。一つの長屋には複数の独立した住戸が繋がっており、前面に店を構えることも多くありました。

狭い敷地を効果的に活用するため、縦に長い間取りや、多目的に使用できる和室などの工夫が見られました。これにより、住居と商業の両方の機能を兼ね備えることができました。


集合住宅としての利点:一緒に暮らすコミュニティ

長屋は、現代のアパートやマンションに通じる集合住宅の先駆けともいえる存在です。土地の限られた都市部での高い人口密度に対応するための住宅形態として、土地の有効活用や建材の節約を実現し、限られたスペースで多くの人々が快適に生活するための知恵として生まれました。

共用の廊下や庭、共同の水場など、共有スペースプライベートなスペースがうまくバランスされていました。これにより、住民は互いのプライバシーを尊重しつつ、住民同士のコミュニケーションも生まれ、緊密なコミュニティを形成していました。
また、共用の設備や空間の利用は、エネルギーや資源の節約にも寄与していました。


持続可能性とエコロジー:伝統的なエコロジカルデザイン

長屋は、持続可能性とエコロジーの観点から見ても非常に優れた住宅形態でした。建築材料には地域の自然素材が利用され、効率的な空間設計によって、自然の風を最大限に取り入れるなど、エコロジカルな考え方が盛り込まれていました。夏は涼しく、冬は暖かく過ごせるような工夫が随所に見られ、冷暖房のエネルギー消費を抑えることができました。

共有スペースの存在は、住民同士の助け合いや資源の共有を促進し、社会的な持続可能性にも貢献していました。このような伝統的な知恵は、現代のエコロジー志向の都市設計や住居設計にも参考にされています。



江戸時代の住居の知恵は、時を越えて私たちに多くの示唆を与えてくれます。
当時の人々の生活の中で培われた持続可能な考え方は、現代のサステナビリティへの取り組みとも共通する部分が多いのです。

過去の智慧を再発見し、それを今の生活に取り入れることで、より持続可能で心地よい生活を実現する手がかりとなることでしょう。



(このブログの一部画像はBing Image Creatorを使って作成しています。)





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この記事を書いた人

中川

環境開発学を専攻し、大学時代に交換留学で訪れた北欧でエコライフに目覚めました。帰国後、国内外のエコプロジェクトに参加し、サステナブルな食文化や食品ロス削減のヒントを発信しています。

監修者

文 美月

株式会社ロスゼロ 代表取締役
大学卒業後、金融機関・結婚・出産を経て2001年起業。ヘアアクセサリーECで約450万点を販売したのち、リユースにも注力。途上国10か国への寄贈、職業支援を行う。「もったいないものを活かす」リユース経験を活かし、2018年ロスゼロを開始。趣味は運動と長風呂。