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タキシードスーツが似合う俳優といえば役所広司氏だ。見られて着せられてなんぼの役者の中でも、あれほどタキシードを自然体で着こなしている俳優はいない。そりゃあそうだろう。カンヌ国際映画祭をはじめ、日本アカデミー賞や東京国際映画祭、ブルーリボン賞などなど、いまや彼が主演する作品は国内外で開催される映画祭の常連である。必然的にタキシードを着る機会も多くなるというものだ。




カンヌでのタキシードは「ジョルジオ アルマーニ」

例えば、2023年の第76回カンヌ国際映画祭では、主演を務めたヴィム・ヴェンダース監督の『PERFECT DAYS(パーフェクト・デイズ)』で見事、男優賞を受賞。小津安二郎監督を尊敬してやまないヴェンダース氏に「役所は私にとっての笠智衆だ」と言わしめた、淡々と毎日を暮らすトイレ清掃員の演技が評価された。日本人の俳優では19年ぶり2人目の受賞という快挙だ。

この時に役所氏が着ていたのは、「ジョルジオ アルマーニ」のメイド トゥ メジャーのタキシードスーツ。179㎝の長身にトレードマークのオールバックにしたシルバーグレイの長髪でさらりと着こなし、カンヌ国際映画祭のレッドカーペットに颯爽(さっそう)と登場した。

タキシードを自然体で着こなせるといったって、そもそもイケオジなんだからタキシードが似合うし、いつもスタイリストが用意したものを着ているんでしょうとおっしゃる人もいるだろうが、それは違う。役所氏のフォーマルスタイルは、日本アカデミー賞の場でも話題になった。

22年3月に開催された第45回日本アカデミー賞では、映画『すばらしき世界』で優秀主演男優賞を受賞した役所氏。ロシアによるウクライナ侵攻の戦争が終わりをみせない世界情勢の中での授賞式で、役所氏はさりげなくスーツの胸ポケットに刺したポケットチーフを青と黄色のウクライナ国旗の配色にして登場した。ご本人はこれについて授賞式でも受賞後のインタビューでもいっさい触れずにコメントもしなかったが、SNSでは「さりげない平和ヘの意思表示が素晴らしい!」と、瞬く間にバズったのだ。