特集ワイド
「ウルトラマンは子供に夢を与える仕事なんだ」 スーツアクター古谷敏さん
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「特集ワイド」の新年企画「サブカル巡礼2021」第1回は映画「シン・ウルトラマン」。1966年7月から全39話放送された「ウルトラマン」で、スーツアクターとして主役を演じた俳優、古谷敏さん(77)にヒーローとしての満身の演技、子供たちに与えた影響を聞いた。【藤原章生】
――身長180センチで手足が長いのがウルトラマンに選ばれた理由ですか。
◆それを美術総監督の成田亨さん(1929~2002年)が発見してくれたんですよね。「ウルトラマン」の前の番組「ウルトラQ」では宇宙人のケムール人と怪獣ラゴンもやりました。
――「ウルトラマンは敏(びん)さんじゃなくてはダメなんだよ」と成田さんに説得されたと聞きましたが、呼び出されたのですか。
◆そうです。当時、僕は東宝の専属俳優だったので、(東京の)成城にある東宝撮影所の大部屋にいたんです。ケムール人を演じた時点で、成田さんはウルトラマンを作っていて、「ケムール人の古谷敏」を今度のヒーローに入れようと考えていたんです。それで「敏(びん)ちゃん、『主役』だから来てよ」って事務所の人に呼ばれて、打診されたんですけどお断りしたんです。
「僕には俳優として夢がある。顔を出してこそ俳優なんで、ぬいぐるみには入りたくない」と断ったのですが、それから4、5日して、今度は成田さんが直接訪ねて来られて「敏さん、今度のヒーローは敏さんしかいないんだよ」と。「なんでですか」って言ったら「敏さんの体形がどうしても次のヒーローには必要なんだ。敏さんのために作ったデザインだから」って。「仮面をかぶって苦しい思いをしたくないし、背の高い男性モデルはいっぱいいるじゃないですか」と断ったんです。そしたら「隊員は誰でもできる。でも、この主役は敏さんしかできないんだ」と粘り強く口説かれてね、優しい顔、優しい声で。成城の中華料理屋でした。
――中華を食べながらですか。
◆はい。まあ、ビールを飲んだりしてね。で、「どうしてもやってほしい、敏さんしかいない。後は一切考えていないから頼む」と説得されました。映画とテレビの過渡期でしたし、僕も映画界で生きていけるかわからない状況だし、映画の観客数がどんどん減って、テレビは映画を通り越してずっと上にいく時代でしょ。だから、…
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