名優・菅原文太の軌跡をたどる…『仁義なき戦い』から幻の親子共演作まで|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
名優・菅原文太の軌跡をたどる…『仁義なき戦い』から幻の親子共演作まで

コラム

名優・菅原文太の軌跡をたどる…『仁義なき戦い』から幻の親子共演作まで

8月16日で生誕90周年を迎えた名優・菅原文太。半世紀以上にわたる俳優生活で主演を務めた映画は70本近くにのぼり、出演映画は実に220本以上。時代を超えて多くの映画ファンを魅了してきた。そこで本稿では、菅原の雄大なキャリアを代表作と共に振り返り、その型破りな魅力に迫っていきたい。

1970年代の東映実録路線でスターダムを駆け上がった菅原文太(写真は『実録・飛車角 狼どもの仁義』より)
1970年代の東映実録路線でスターダムを駆け上がった菅原文太(写真は『実録・飛車角 狼どもの仁義』より)[c]東映

ファッションモデルから映画俳優へ!主演作がない苦悩の時代も…

1933年8月16日に宮城県仙台市で生まれた菅原は、早稲田大学在学中に当時設立さればかりの劇団四季に入団。その後大学を中退し、東宝の『哀愁の街に霧が降る』(56)で映画デビューを飾る。1957年には、日本初の男性専門モデルクラブである「SOSモデルエージェンシー」を岡田眞澄らと設立し、ファッションモデルとしての活動を行う一方で、スカウトをきっかけに映画俳優となるべく、1958年に新東宝へと入社する。

当時25歳!若き日の菅原文太が亡霊と対峙する貴重なスリラー『海女の化物屋敷』
当時25歳!若き日の菅原文太が亡霊と対峙する貴重なスリラー『海女の化物屋敷』[c]国際放映

『白線秘密地帯』(58)で本格的な俳優デビューを迎え、『海女の化物屋敷』(59)が映画初主演となった。カルト的人気を誇る曲谷守平が監督した『海女の化物屋敷』は、殺人事件と心霊現象、そして隠された財宝が絡み合う“海女もの"スリラー。資産家である青山家は、父が自殺して以降、母親の狂死、姉の家出、兄の遭難、兄嫁の変死と次々に不幸が続いていた。ある夜、残された由美(瀬戸麗子)は兄嫁の亡霊に襲われる。助けを求められた親友の恭子(三原葉子)は、恋人である野々宮刑事(菅原)に調査を依頼するが、青山家での一件とつながる殺人事件が発生してしまう。公開当時25歳、初々しくも勇ましい菅原の姿に注目したい一作だ。

新東宝在籍時は、長身の二枚目若手スター「ハンサムタワーズ」の一員として吉田輝雄らと共に売り出され、『九十九本目の生娘』(59)などに主演するも、1961年に新東宝が倒産したことを受けて松竹へ移籍。約5年間の松竹在籍期間中には、巨匠・木下恵介監督の『死闘の伝説』(63)など多くの映画に出演していたが、脇役ばかりで主演作は1本もなかった。そんななか、『男の顔は履歴書』(66)などで共演した安藤昇の薦めにより、1967年に東映へと移籍することになる。

日本を代表するスターに!“実録ヤクザ路線"で魅せた菅原の凄み

【写真を見る】菅原文太の代表作を写真で振り返り!『仁義なき戦い』の痺れるラストシーン「弾はまだ残っとるがよ‥」
【写真を見る】菅原文太の代表作を写真で振り返り!『仁義なき戦い』の痺れるラストシーン「弾はまだ残っとるがよ‥」[c]東映

二度目の転籍後の菅原は、『網走番外地 吹雪の斗争』(67)で高倉健と初共演を果たし、北島三郎主演の『兄弟仁義 逆縁の盃』(68)や藤純子主演の『緋牡丹博徒 一宿一飯』(68)など人気シリーズに出演。後の“実録ヤクザ路線”の先駆けとなる『現代やくざ 与太者の掟』(69)で8年ぶりに主演へとカムバックする。1970年には「東映カレンダー」の1月を梅宮辰夫と共に飾るなど、会社からの期待や人気が急上昇。任侠映画を中心に次々と主演映画が制作され、「現代やくざ」シリーズ(69~72)や「関東テキヤ一家」シリーズ(69~71)、「まむしの兄弟」シリーズ(71~75)などで俳優としての頭角を現していく。

そして深作欣二監督の『仁義なき戦い』(73)で、日本映画界を代表するスターへの仲間入りを果たす。飯干晃一のドキュメントノベルを原作した本作は、敗戦直後の広島県呉市を舞台にやくざの世界に生きる若者たちの群像をドキュメンタリータッチで描き、菅原は激しい抗争のなかで耐える男・広能昌三を演じた。痺れる色気を放つ表情と共に、魅力たっぷりの広島弁で広能を演じきっている。本作の大ヒットを機に東映は、『山口組外伝 九州進攻作戦』(74)など“実録ヤクザ路線"の作品を量産していくことになり、「仁義なき戦い」もシリーズ化。深作監督と菅原主演では計8作品が制作された。

県警・市政・ヤクザが三つ巴となって駆け引きが繰り広げられる実録路線の名作『県警対組織暴力』
県警・市政・ヤクザが三つ巴となって駆け引きが繰り広げられる実録路線の名作『県警対組織暴力』[c]東映

そんな“実録ヤクザ路線"の作品群において『県警対組織暴力』(75)は、菅原と深作監督のタッグ作の集大成とも評されている。本作は、ベテラン刑事の久能(菅原)と、大原組若衆頭の広谷(松方弘樹)の友情を軸に、警察からやくざへと寝返る刑事や権力と癒着する刑事など、社会に巣食う悪の実態を描く。共演には梅宮辰夫、金子信雄、成田三樹夫、田中邦衛ら「仁義なき戦い」シリーズでもおなじみの面々が顔をそろえ、当時の日本映画のパワーを余すところなく感じることができる一本だ。

菅原文太のコミカルな演技に人気が集まった「トラック野郎」シリーズ
菅原文太のコミカルな演技に人気が集まった「トラック野郎」シリーズ[c]東映


また、同時期の菅原を代表するもう一つの人気シリーズである「トラック野郎」シリーズ(75~79)も忘れてはならない。記念すべき第1作『トラック野郎 御意見無用』(75)では、スケベで短気だが人情に熱い長距離トラック運転手の星桃次郎(菅原)が、一目惚れしたマドンナ・洋子(中島ゆたか)を恋人の元へ送り届けるため“一番星号”を走らせる。任侠ものや実録路線とは違ったコミカルで豪快な菅原の演技に人気が集まり、計10作品が制作される大ヒットシリーズとなった。

東映チャンネル「生誕90年記念 菅原文太主演作特集」放送スケジュール
■8月
『仁義なき戦い 4Kリマスター版[R15+]』 8月17日(木)20:00~ ほか
『現代やくざ 与太者の掟』 8月18日(金)20:00~ ほか
『関東テキヤ一家』 8月19日(土)20:00~ ほか
『懲役太郎 まむしの兄弟』 8月20日(日)20:00~ ほか
『海女の化物屋敷』 8月27日(日)14:00~

■9月
『トラック野郎 御意見無用』 9月1日(金)13:00~ ほか
『実録・飛車角 狼どもの仁義』9月2日(土)18:00~ ほか
『ビッグボス BIG BOSS』 9月5日(火)13:00~ ほか
『ボクサー』 9月8日(金)22:00~ ほか
『県警対組織暴力 4Kリマスター版』 9月9日(土)22:00~ ほか

詳しくは公式ホームページをご確認ください