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ダーウィンに
なれなかった男

DECEMBER 2008

文=デビッド・クアメン 写真=ロバート・クラーク

150年前、ダーウィンと同時に進化の理論を提唱した博物学者、ウォレス。常識にとらわれず、好奇心のままに突き進んだ男の壮快な生涯を追った。

 ボルネオ(カリマンタン)島の東1000キロの海に浮かぶ小さな火山の島、テルナテ島。オランダ統治時代に香辛料などの交易地として繁栄した、熱帯の森林に包まれた島だ。今から150年前、ここからロンドンへ向け差し出された一通の手紙が、科学の歴史を一変させた……。

 現在のテルナテ島には、海岸沿いに市場や住宅が点在するが、内陸部は変わらず森林に覆われている。運がよければ、この森のどこかでシロハタフウチョウに出会えるかもしれない。エメラルド色の胸に、肩から白い飾り羽をのばした華麗な鳥だ。この鳥の発見者であり、学名セミオプテラ・ワラキ(Semioptera wallacii)にその名を残す人物こそ、件(くだん)の手紙の差出人アルフレッド・ラッセル・ウォレスである。

 英国の若き博物学者だったウォレスは、1850年代終わりから60年代初めにかけて、アジアとオーストラリアに挟まれたマレー諸島でフィールド調査を行っていた。そして1858年3月9日、ここテルナテ島からオランダの郵便蒸気船でヨーロッパに向け手紙を出すのである。

 宛先はチャールズ・ダーウィン。「変種がもとの型から無限に遠ざかる傾向について」と題する小論文を同封していた。ウォレスは10年余り調査を進め、熟考を重ねた末に、わずか2日間でこの論文を書き上げたのだ。そこには「進化」や「自然選択(自然淘汰(とうた))」といった言葉はいっさい登場しないが、内容はまさしく自然選択による進化の理論だった。それは、当時すでに正統派の博物学者として知られていたダーウィンが、アイデアを温めながらも、発表を差し控えていた理論と瓜二つだった。

 進化論の提唱者はダーウィンとされているが、当時まだ駆け出しの研究者だったウォレスが、ダーウィンとほぼ同時期にこの理論を導き出していたことは、科学史ではよく知られたエピソードである。生前ウォレスは、ダーウィンの年下の研究者仲間として知られただけでなく、社会思想にまでおよぶ幅広い執筆活動で名をなした。しかし、1913年に死去した後は、その名はしだいに忘れ去られていった。

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