ハエトリグモは「生物と非生物」を目で見分けられる
ハエトリグモは「生物と非生物」を目で見分けられる / Credit: pixabay
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ハエトリグモは動きから生物と非生物を見分ける視力を持つと判明

2021.08.27 Friday

2021.08.02 Monday

人家にもよく出没するハエトリグモは、小さいながらも優れた視力の持ち主です。

そんなハエトリグモに、脊椎動物でしか知られていない視覚能力の存在が明らかになりました。

米・ハーバード大学(Harvard University)の研究によると、ハエトリグモの目には、動きの特徴だけで生物と非生物を見分ける能力があったとのこと。

この能力が無脊椎動物に見つかったのは初めてです。

研究は、7月15日付けで科学誌『PLOS Biology』に掲載されています。

Jumping Spiders Seem to Have a Cognitive Ability Only Previously Found in Vertebrates https://www.sciencealert.com/jumping-spiders-seem-to-have-a-special-ability-only-seen-in-vertebrates Harvard study shows that jumping spiders can identify biological motion https://news.harvard.edu/gazette/story/2021/07/harvard-study-shows-that-jumping-spiders-can-identify-biological-motion/
Perception of biological motion by jumping spiders https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.3001172

ハエトリグモは生物の動きが目でわかる

考えてみれば、動物たちが、動くものと動かないもの、生物と非生物を見分けるのは当然のことです。

獲物を追いかけたり、天敵から逃げるには、その能力が欠かせません。

その一方で、無脊椎動物にそれと同じ能力があるかは不明でした。

そこで研究チームは、無脊椎動物の中でも優れた視力を持つ「ハエトリグモ」を実験対象としました。

ハエトリグモには、他のクモと同様に目が8つありますが、中央の2個がとくに大きく発達し、その側に2個の副眼がついています。

実験では、北半球に生息するハエトリグモ60匹を集め、ポイントライトテストを行いました。

ポイントライトテストとは、たとえば、人体の主要な関節部に光のドットを貼り付け、その動きのパターンから人間かどうかを識別するものです。

チームは、ハエトリグモのために特別に設計した光源ディスプレイを用意。

そこに、ハエトリグモの関節に対応したドットパターンや、生物の動きとは異なるランダムパターン、他にクモのシルエット動く楕円を映しました。

対象となるクモは、球状のトレッドミルの上に固定し、ディスプレイに映る各パターンに対して、どのような反応を示すかを観察します。

ハエトリグモのドットパターン
ハエトリグモのドットパターン / Credit: De Agrò et al., PLOS Biology(2021)

その結果、ハエトリグモは、生物のドットパターンにはあまり反応せずに画面を見ていましたが、興味深いことに、非生物のランダムパターンには敏感に反応して、体をよく回転させていました。

一見すると、ランダムパターンを生物と認識しているように思われますが、そうではありません。

これには、ハエトリグモの目の仕組みが関係しています。

8つの目の中で最も視力が高いのは、中央に並ぶ2つの主眼で、側にある副眼はそれより視力が劣るものの、ほぼ360度の視界を確保するのに役立っています。

そして、研究主任のマッシモ・デ・アグロ氏は、次のように説明します。

「ハエトリグモが前面に並ぶ4つの目で明確に生物と分かる動きを認識した場合、体を動かす必要はありません。

しかし、生物かどうか怪しい動き(ランダムパターン)を見た場合、副眼ではなく、視力の高い中央の主眼でしっかり確認しようと、体を回転させているのでしょう。

つまり、生物のドットパターンはすぐに理解できるのに対し、ランダムパターンは、生物なのか非生物なのか、まだ判断できていないのです」

このことから、アグロ氏と研究チームは「ハエトリグモには、動きのパターンだけで生物を見分ける視覚能力がある」と結論しました。

今回の成果は、同じ能力が無脊椎動物に広く存在することを示唆しており、チームは今後、昆虫やカタツムリを対象に同様の実験をしたいと考えています。

また、実験に協力してくれた60匹のハエトリグモはすべて無傷で野生に帰されたとのことです。

家に出たハエトリグモも、ちゃんと私たちを人間と理解しているのかもしれません。

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