リン・ミンメイ、伊達杏子、初音ミクetc…バーチャルアイドルの歴史をアニラジ元パーソナリティー・おたっきぃ佐々木が語る

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 「初音ミク」などに代表されるような、実際には存在しない架空のアイドルである“バーチャルアイドル”。

 ラジオパーソナリティのおたっきぃ佐々木さんと、声優の天海由梨奈さんが出演するニコニコ生放送番組「やっぱ、アニメでしょう」では、「バーチャルアイドル」をテーマに80年代初頭に登場したキャラクターからはじまり、現在のカスタマイズできるバーチャルアイドルまで、その歴史を深く掘り下げました。

左から天海由梨奈さん、おたっきぃ佐々木さん。

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「なめ猫」「リン・ミンメイ」の登場がバーチャルアイドルのはじまり

天海:
 今回のテーマはこちらです。「バーチャルアイドル」。

おたっきぃ佐々木(以下、おたささ):
 そういう雑誌もありましたがそちらではなく(笑)、いわゆる本当のバーチャルアイドルの今昔をちょっと見ていきたいなと。バーチャルアイドルって、どんなイメージがありますか?

天海:
 私は年代的には初音ミクですかね。

初音ミク。
(画像は初音ミク公式ブログより)

おたささ:
 初音ミク、強いですよね。でも初音ミクが生まれる前に様々なキャラクターがいて、実際初音ミクの源流と思えるキャラクターとかもたくさんいたんですよ。きょうはそんな話をいろいろしていきたいと思うのですが、バーチャルアイドルって、何がバーチャルアイドルだと思いますか?

天海:
 う〜ん……実際にはいないけれど、アイドルをやっているみたいな?

おたささ:
 でしょう? そう考えると、これは今までで俺がはじめて言うんじゃないかと思うんですけど、バーチャルアイドルをいろいろ考えていった結果、現実にはいないけれど歌ったりして、レコードを出したりする存在というのが、バーチャルアイドルという言葉は90年前半に生まれた言葉なんですが、それよりだいぶ前の1980年頃にいました。なめ猫!

なめ猫。
(画像はAmazonより)

天海:
 なめ猫! 猫が学ランを着て「なめんなよ」みたいな。

おたささ:
 免許証に「死ぬまで有効」みたいな。あれですよ。あれはある意味、存在してないじゃないですか。猫はいますけれど、猫は本来学ランを着ていないじゃないですか。そう考えると、実際には存在しないけれど、いかにもそういうキャラクターがいるようにして、レコードを出して写真集を出して、キャラクターグッズが出ている。

 立派なバーチャルアイドルだと思うんですよ。

天海:
 ほぉ……。

おたささ:
 でも二次元キャラでアイドルとかたくさんいたんですけれど、キャラクター名でレコードを出してるっていうのがあまりないんですね。そう考えるとその走りになるのが『超時空要塞マクロス』のリン・ミンメイというアイドルがいるのですが、これがちゃんとリン・ミンメイ名義でレコードを出しています。ということは、キャラクターとして曲を出しているということになりますね。

 たとえば歌手名でレコードを出していると、それは違うという話なんですね。ここがたぶん難しいところだと思うんですけれど、1983年に『「超時空要塞マクロス」 マクロス3〜ミスD.J.』というのが発売されるんですよ。  

『超時空要塞マクロス」 マクロス3〜ミスD.J』
(画像はAmazonより)

 『超時空要塞マクロス』って、なんとなくいろいろなシリーズがあるので、イメージはあると思うんですけれど、宇宙空間を飛んでいるマクロスの館内放送でミンメイがラジオをやっているという設定で、そのミンメイのラジオをレコードにした……。

天海:
 え〜!

おたささ:
  だからラジオのしゃべりなんですよ。たぶんラジオ番組っていうのをドラマにして、その中でもちゃんと敵が攻めてきて戦闘シーンになって、ちょっと大変になるとかそういう『超時空要塞マクロス』の世界観が中に組み込まれているんですよ。これをリアルタイムで13歳くらいの時に聞いて、すごい衝撃を受けたんですよね。

天海:
 今この説明でもかなり衝撃を受けています(笑)。

おたささ:
 でしょう? まだ1983年ですよ。80年代初頭にある意味、そういうベースがはじまりつつあった。

80年代半ば、アニメキャラによるラジオがスタート

おたささ:
 そのあとになってくると、やっぱりこれなんですよね。コメントにも流れていますけれど、1985年に発売されたOVA『メガゾーン23』に登場する時祭イヴっていうキャラクターがいるんですよ。これは作中でデジタル的に作られたアイドルというのを描いた。

 ただ、曲は宮里久美名義だったのであれなんですけれど……でも作品としては本当に時祭イヴという電脳空間のアイドルというのが描かれた最初なんじゃないかなと。なんかちょっと初音ミクっぽいイメージあると思いませんか。髪が緑色だし。紫色っぽいのもあるけれど。

『メガゾーン23』。
(画像はAmazonより)

天海:
 かわいい〜!

おたささ:
 これが1985年。まだまだ80年代半ばですよ。時祭イヴっていう名前だったので、時のお祭り、時の記念日というのが実は6月10日なんです。なので、時の記念日の前の日の6月9日を勝手に時祭イヴの日って(笑)。

 俺がすごい投稿していたアニメ雑誌にそういう投稿があって、それがすごく面白くて覚えてるっていうね。本当にどうでもいい情報なんですけれど(笑)。ここからすごいんですよ。1985年11月からはじまったラジオ番組「今夜はそっとくりいむレモン」という番組がありまして。

 これは『くりいむレモン』というアダルトアニメがありまして、ビデオでリリースされたんですけれど。主人公の野々村亜美というキャラクターが、そのままパーソナリティを務める。ある意味、アニメキャラクターによるはじめての番組なんじゃないかなと。

『くりいむれもん』。
(画像はAmazonより)

 もちろん聞いていたんですけれど、本当にこれがなかったら俺、この世界とかを目指そうとかいう気は……。本当に偶然だったんだけれど、「ラジオ面白そうだな」って思うことはなかったんじゃないかなっていうくらい。

天海:
 じゃ佐々木さんの原点は……。

おたささ:
 ラジオのほうの原点はたぶんここですよ! コメントにもありますけれど、もう「亜美、飛んじゃう!」ですよ(笑)。もうおっさんたちはゲラゲラ笑ってますけれど、わからないですよね。

「とんじゃう」とコメントが投下される。

天海:
 ……わからないです(笑)。

おたささ:
 わからないでいたほうがいいです(笑)。

90年には3DCGになった美少女が登場!

おたささ:
 どんどんいきますよ。1986年に3DCGソフトのShade PROというのが発売されます。当時はPC-9800で発売されたのですが、このあと1992年発売のShade IIの頃に、ついに3DCGで描かれた女の子が作例として載っていて、加藤直之さんの『沈黙の美女』というのがパッケージの中に入っているっていう。

 ある意味、3D少女というのが出はじめたのがShade PROという1986年。

天海:
 全然わからないです……(笑)。

おたささ:
 天海さんもうそろそろ生まれるかな……?

天海:
 もうちょっと……生まれないですね。やっと姉が生まれたくらいですね(笑)。

おたささ:
 (笑)。

 もうちょっといきますよ。1989年、「伊集院光のオールナイトニッポン」から生まれた芳賀ゆい。これは話の中で、大島渚監督という映画監督がいたじゃないですか。それで大島渚監督って、どう考えてもアイドルの名前だよねみたいな話から、どんな名前がアイドルっぽい名前だ? みたいな。

 「歯がゆい」ってあるじゃないですか。「はがゆいって、アイドルの名前だよね」「はがゆい! アイドルだね!」みたいな話になって、「じゃ芳賀ゆいっていうアイドル、作っちゃおうぜ」ってなって。

天海:
 そこから生まれたんですね。

おたささ:
 そういうネタで企画が進行して、握手会が開催されました。

天海:
 え!?

おたささ:
 実際には存在しないんだけれど、握手担当の女性を何人か雇いまして、壁に穴があいていて、手が出ていて握手するっていう。ある意味すごいバーチャルというか、お遊びとして。でもCDとかビデオとか写真集とかが発売されて、最後に伊集院さんとのスキャンダルがネタとして週刊誌に載せてもらったりとか(笑)。

 そんなお遊びがありました。

90年代後半に「バーチャルアイドル」はマニアに浸透

おたささ:
 90年代に入っていきます。91年に『ストリートファイターII』がリリース。ここからが格闘ゲームブーム。格闘ゲームといえば、格闘ゲームの女の子がブームになって、そしてコスプレがブームになった。コスプレブームが一番火がついたのがここだと思うんですよね。そういうところで現実とキャラクターの区別というのが曖昧になっていくというか。

 94年にはゲームのヒロインを集めた雑誌、その名も「Virtual IDOL」が創刊。現在のキャラクター重視なシーンの方向性を作り上げた一つの雑誌なんじゃないかなという見方をしています。同じ1994年、『マクロスプラス』に登場したシャロン・アップル。

 これは作品内ではバーチャロイドシンガーという言い方をして、作中で描かれた人々は現実に存在しないのがわかった上で、ちゃんとアイドルとして認識している。また楽曲がすごい。菅野よう子さんが担当していたので、なんかもうアイドルシーンの80年代アイドルの松田聖子とか中森明菜がいる中で、いきなりUAが来ちゃったみたいな。

『マクロスプラス』の劇中に登場するシャロン・アップルのCD『MACROSS PLUS The Cream P・U・F』
(画像はAmazonより)

 でも完全にここは初音ミク前夜な感じですよね。そして90年代初頭のギャルゲーブームに人気を博した『ときめきメモリアル』の藤崎詩織もアイドルとして1996年くらいには……。

天海:
 私生まれました!

おたささ:
 だから96年くらいには「バーチャルアイドル」という言葉は、雑誌も出たし、割とマニアにとっては浸透している。だから生まれた頃にはバーチャルアイドル時代だったんだよ。

天海:
 なるほど、深いですね。

おたささ:
 バーチャルアイドルっ子だよ(笑)。

天海:
 そうですよね(笑)。

00年代、ついに「アイマス」と「初音ミク」が登場! アイドルを自分でプロデュースできる時代へ

おたささ:
 そんな感じで、96年に伊達杏子、98年にテライユキ。こんへんは3DCGアイドル。だからグラビアアイドルが3DCGとして登場する。写真集とかも出ています。

 どんどん3DCGのラフが上がっていって、動きも滑らかになっていって、結果2005年、それまでは格闘ゲームとかで技術が使われていたのですが、ついに『THE IDOLM@STER』がリリースされます。

天海:
 来ましたね!

おたささ:
 要するに3Dアイドルを育成して、そのステージを見ることができる。ここで完全に生まれてくるわけですよ。今までずっと流れを説明しましたけれどゲームを作ってきた技術畑の部分がドーンとあって、アニメが作ってきたコンテンツとしての面白さの部分。

 アイドル畑としての楽しみの世界観の土台というのが三本柱で動きながら行ったり来たりしながら、バーチャルアイドルっていうものを作り上げてきた感じになるわけですね。そして2007年にボーカロイド初音ミクが登場。もうここからはみなさんも知っていると思いますが、ついにバーチャルアイドルを手に入れちゃったわけですよね。

天海:
 そうですよね。自分でプロデュースできるようになっちゃいましたもんね。

おたささ:
 MikuMikuDance【※】で動かしたりとか。そんな感じで様々なボーカロイドの登場を経て、現在のバーチャルYouTuberたちへの存在の流れになってくるわけですよ。ざっくりとお送りしたんですけれど、まぁそんな感じで。さっき説明した通り、ゲームの世界、アニメの世界、アイドルの世界と、そんな三本柱を行ったり来たり。

※MikuMikuDance
樋口優氏が制作した、プリセットされたキャラクターの3Dモデルを操作しコンピュータアニメーションを作成する3DCGソフトウェア。略称はMMD。デフォルトで初音ミクなどVOCALOIDキャラクターの3Dモデルを使用できる。

 そのどれが欠けても今のシーンはなかったんじゃないかなと。初音ミクもそうでしょう。たとえば歌は歌唱する部分もあれば、絵を描いて。それはアイドル的な部分だったり、ライブをやったりするっていうのは、アイドル的なパートだったりするし、コンテンツの話的な部分。

 歌とか作りながら、それ以外のお話とか、世界観を作り込むところではアニメがベースになっている。そこの行ったり来たりを楽しむのが、バーチャルアイドルの楽しみ方なんじゃないかな。

バーチャルアイドルは2次元寄りの3次元? ますます境界線が曖昧に

おたささ:
 (メールを読む)『超時空要塞マクロス』を含め、キャラクターと中身の境界線が曖昧になっている感じがします。

 そうですよね。『THE IDOLM@STER』とか、それこそ『ラブライブ!』ってライブを見に行った時に声優さんのライブなのか、キャラクターのライブなのかよくわからないじゃないですか。

天海:
 確かに言われてみればそうですね。

おたささ:
 もう完全にキャラクターがライブしているのを、中の人がトレースしているのか、むしろこっちが本物でアニメとかゲームがトレースしているのかって、「どっちが本物だと思う?」と言われると、どっちもありなんじゃない? みたいな。そういう境界線はどちらが主なのか、主と副が曖昧になっている。でもそこが楽しいのかなと思うし。

 (メールを読む)バーチャルアイドルって、3Dコスプレとも言えるんじゃないでしょうか。

 これはそうだね。

天海:
 上手いですね。3Dコスプレ。

おたささ:
 ある意味極端なことを言えば、俺だってバーチャルアイドルになれるわけですからね。だから夢があるよね。

天海:
 無限大ですね(笑)。

おたささ:
 (メールを読む)バーチャルアイドルって自分好みにカスタマイズできるのも魅力じゃないでしょうか。

 そうそう。そういうところですよね。

天海:
 自分の好きなものだけ詰め込めますもんね。

おたささ:
 (メールを読む)2.5次元は3次元上からの2次元。バーチャルアイドルは2次元寄りの3次元。2次元の中も細分化されていっているのではないでしょうか。

 なるほどね……。

天海:
 難しくてわからない……(笑)。

おたささ:
 2.5次元ってよく言うじゃないですか。アニメの舞台とか。あれも3次元なのか、2次元なのか。あえて2.5次元という言い方をする、みたいな。3次元寄りの2次元。バーチャルアイドルは2次元寄りの3次元。

天海:
 うんうん。

おたささ:
 2次元と3次元が境界が曖昧になっているのかなっていうところは、すごいあるわけですよね。

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おたっきぃ佐々木と天海由梨奈の やっぱ、アニメでしょう#7

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