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S1より日常的に付き合いやすいS2

執筆:John Evans(ジョン・エバンス)翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
現在のロータスは2025年に向けて、アルピーヌと手を組んで新しい電動2シーター・スポーツの開発を進めているようだ。ロータスの次章が始まるわけだが、1996年に販売がスタートしたエリーゼに対する関心度は、今も高いままにある。

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ロータスの運命を変えるほどヒットした、エリーゼS1。だが数年後、欧州の衝突安全規定へ対応するため、アップデートを迫られる。多額の資金が必要となったロータスは、アメリカのビッグ3、ゼネラル・モータース(GM)へ接近した。


ロータス・エリーゼS2(2000〜2010年/英国仕様)

GMはオペル・ブランドからスピードスター、英国ではヴォグゾールVX220を名乗る、独自のスポーツモデルの販売を条件に協力を承諾。改良が加えられたエリーゼを仕上げ、ロータスはS2と名付けた。

エリーゼS2の生産は2000年から2010年まで。以降はS3へと進化するが、基本的にはフェイスリフトを受けたS2といって良い。

純粋主義を貫くドライバーには、S1こそオリジナルで、ベストのエリーゼだと主張する人もいる。しかしS2は、しなやかなビルシュタイン社製サスペンションに大径ホイール、簡単なルーフシステムと低いサイドシルを獲得し、より日常的に付き合いやすい。

シャシーはS1の改良版だが、スタイリングは一新されていた。ただし、ボディは射出成形のグラスファイバー・コンポジットでできており、残念ながら水分を吸収しやすい。

ローバーとトヨタ社製の4気筒エンジン

ロータス・エリーゼS2に搭載されたエンジンは、当初はS1の進化版といえる、ローバー社製のKシリーズ・ユニット。1.8L自然吸気から最高出力121psを発生し、0-100km/h加速を5.6秒でこなした。

2002年に111Sが登場。エンジンブロックは同じながら可変バルブタイミング機構が載り、最高出力は162psへ引き上げられた。111Sにはクロスレシオの5速MTが組み合わされている。


ロータス・エリーゼS2(2000〜2010年/英国仕様)

またサーキット走行へ打ち込みたいドライバー向けに、スポーツ135と、さらにハードコアな135Rも登場している。探す価値はあるだろう。

2004年、エリーゼRの登場に合わせてトヨタ社製の1.8L VVTL-iエンジンが登用される。最高出力は192psに届き、0-100km/h加速時間を4.9秒へ縮めた。6速MTに加え、新しいパワーアシスト・ブレーキも獲得している。

2年後の2006年、すべてのエリーゼS2からKシリーズ・ユニットが退役。エントリーグレードのエリーゼSにも1.8Lのトヨタ・ユニットが積まれ、最高出力136psを発揮した。

ほかにもプロバックス・ブランドのシートに、LEDテールライト、ヨコハマAD07タイヤなど、細かな変更も加えられている。スーパーチャージャーの載ったS2、エリーゼSCは2008年に登場。222psを獲得している。

111Rと交代するカタチで、192psのエリーゼRも投入。S3へバトンタッチするまで、S2のラインナップを構成した。

S2の価格は今後上昇する可能性大

英国では、S2の初期型はロングルーフという愛称が付いている。2002年以降のエリーゼより、わずかにルーフが長いことが理由だ。ルーフ長に関係なく、S1よりS2の方が水密性は高い。

後期のショートルーフは、オペル・スピードスター用として開発された理由もあり、より水漏れしにくいことが特長。S2でうれしいオプションが、スポーツエグゾーストと高性能ブレーキだろう。


ロータス・エリーゼS2(2000〜2010年/英国仕様)

大切にガレージ保管されてきたような、状態の良いエリーゼS2は数がどんどん少なくなっている。しかもS3は生産終了間際。S2の価格は、今後上昇すると考えられる。

興味を抱いたのなら、多くの人が動き出す前に、先に手を打った方が賢明かもしれない。ガレージがなくても高品質なカバーでボディを保護しつつ、大切に乗っていただきたいと思う。

専門家の意見を聞いてみる

バリー・エリー:バリー・エリー・スポーツカーズ代表

「1996年にS1のエリーゼが登場して以来、扱っています。金額を考えると、S2のエリーゼはベストのドライバーズカーといえるでしょう」


ロータス・エリーゼS2(2000〜2010年/英国仕様)

「特にビルシュタイン社製のサスペンションは逸品。S1のオーナーが、純正のコニ社製から交換するケースも少なくありません。S2のコンポジット・ボディは水分を吸収しやすく、維持管理が重要です」

「わたしイチオシのS2は、162psの111S。Kシリーズ・ユニットのパワーデリバリーは漸進的で、クロスレシオのMTはとても甘美。今のところ、S1よりS2の方が価値は高いといえるでしょう」

「価格は、オリジナル状態の方が高くなりがち。弊社では、状態の良いS2をいつも揃えるようにしています」

購入時に気をつけたいポイント

エンジン

Kシリーズ・エンジンのヘッドガスケットは、噂ほどトラブルには見舞われにくい。それでも、オイルのレベルゲージに冷却水が混ざったことでの乳化成分が付着していないか、確認はしておきたい。タイミングベルト交換は、5万8000kmか4年毎の指定だ。

Kシリーズの場合、ラジエターのプラスティック製タンクから冷却水が漏れていないか確かめたい。トヨタ社製のエンジンは、タイミングチェーン式となる。

トランスミッション


ロータス・エリーゼS2(2000〜2010年/英国仕様)

Kシリーズを載せたS2でも、クラッチの問題は起きにくい。サーキット走行にもよく耐える。試乗時は、ベアリングが鳴いていないか聞き耳を立てる。

トヨタ・エンジンの場合、クラッチが寿命前でも破損することがある。3速へ入りにくいケースもあるようだ。

サスペンションとブレーキ

フロントのアッパー・ウイッシュボーンの取り付け部分が腐食していないか調べる。修理は難しく、S2が廃車にされる原因でもある。

ボディ

シャシーとコンポジット・ボディとの接合部分がきれいな状態か確かめる。一体成型のクラムシェル・ボンネットは高価。亀裂なども細かく調べたい。コンポジット素材は水分を含み、水ぶくれのように膨らむことがある。

取り外せるルーフの状態も確かめたい。価格は高く、英国ではロングで1560ポンド(24万円)、ショートで1080ポンド(16万円)する。

インテリア

エアコンが機能するか確かめる。アルミ製パイプからガス漏れするケースがある。

サイドシルは高く、足などがぶつかりやすい。初期のS2の中には、S1用のフロアマットが接着されている例がある。アルミ製のフロアに鉄粉などが溜まるとヤスリのように表面を削り、湿気と反応して腐食することも。

英国ではいくら払うべき?

1万5000ポンド(231万円)〜1万6999ポンド(260万円)

121psの初期のS2が英国では見つかる。走行距離は多くても7万2000km程度。ディーラーが扱う例も多い。

1万7000ポンド(261万円)〜1万9999ポンド(307万円)

2002年から2005年式の、111Sが英国では選べる。走行距離は7万2000km前後が多い様子。走行距離の長い135Rも含まれてくる。

2万ポンド(308万円)〜2万2999ポンド(353万円)

2004年から2006年のトヨタ・エンジンを載せた111Rが選べるようになる。走行距離は5万6000km前後が中心のようだ。

2万3000ポンド(354万円)以上

走行距離4万9000kmの特別仕様、2003年式タイプ49 111Sなどの特別仕様や、状態の良いエリーゼS2が英国では見つかる。

知っておくべきこと

ロータスは、S2にオプション・パッケージを設定している。ツーリング・パッケージではフロントのフォグライトにカーペット、追加の防音材などが装備された。車重は7kgほど重くなる。ほかにもスポーツとスーパースポーツ・パッケージが存在していた。

英国で掘り出し物を発見

ロータス・エリーゼS2 登録:2002年 走行:4万9800km 価格:1万6995ポンド(261万円)

手入れの行き届いた、エントリグレードのエリーゼS2。殆どの期間がガレージ保管だったということで、ボディの塗装や劣化の心配はいらないだろう。


ロータス・エリーゼS2(2002年/英国仕様)

オプション類として、スポーツエグゾーストにインダクション・キット、高性能ブレーキなどが付いている。タイヤはヨコハマで、まだ溝も充分残っているという。適切なモディファイが加えられた、魅力的な1台といえる。