22日、Windows Mobile搭載スマートフォンの情報サイト「WindowsケータイFAN」とブログ「Kzou’s Diary」の共催で、NTTドコモ「T-01A」(東芝製)のブロガー向け内覧会が開催された。会の中程に設けられたプレゼンテーションの時間では、東芝モバイルコミュニケーション社商品統括部 新規事業商品企画部の狩野明弘氏が、T-01Aの商品化の経緯や、開発中のエピソードなどを紹介した。

薄型ボディと4.1型ワイドの大画面が特徴のWindows Mobile搭載スマートフォン「T-01A」

薄型大画面のフルタッチ型スマートフォンという、これまでの東芝製携帯電話とは一線を画す今回のT-01Aだが、同社にとってチャレンジとも言えるこの製品を開発するに至った背景には、昨今の携帯電話市場における急激な状況の変化がある。通信事業者各社が、携帯電話端末を安く売り月々の通信料で安売り分を回収する、という従来の事業モデルを改めたことで、安い料金プランが提供されるようになった分、端末の価格は上昇した。

東芝でT-01Aの商品企画を担当した狩野明弘氏

加えて、携帯電話の機能的な進化が飽和気味になってきたことや、経済状況の悪化といった要因もあり、端末の買い換えサイクルは長期化している。T-01Aは、メーカーにとって厳しいこの状況に対応するため「東芝の中でも新しいカテゴリの端末を作らなければならないという話が上がり、1年半ほど前に構想を練り始めた」(狩野氏)ものだという。そして2008年4月、社内に新規事業商品企画部が設立され、プロジェクトが正式にスタートした。

新規事業進出の目的を果たすためには、これまでとは違う「新しいものの登場感」が市場に十分伝わることが必要と考え、大きく4つの基本コンセプトが設定された。そのうち2つは、誰もが一目見てわかる「薄さ」と「大画面」だ。残りの2つは、サクサクとした使用感を実現する「高速さ」、そして、片手でも使いやすいユーザーインタフェースなどの「操作感」だという。

薄さについては、当初は最終的な仕様である「約9.9mm」よりもさらに小さい数字を目標にしており、開発の過程でこの数字になったということだが、本体の形状を工夫することでカタログ値よりも薄く見えるように工夫している。同じ外形寸法でも、真四角なものと丸みを帯びたものであれば、丸みのあるもののほうが厚さを感じさせない。このためボディは全周にわたって角のない形になった。

約9.9mmというカタログ値よりも薄さを感じさせるようにデザインしたというボディ

また、凹凸のない美しさを実現するため、側面以外のハードウェアキーを省いた。多くのWindows Mobile機で共通して搭載している通話・終話キーもなくしているが、これについては、プラットフォームとしての連続性を持たせたいマイクロソフトとの間で議論があったという。しかし検討の末、通話・終話のハードウェアキーはなくても良いという判断となった。マイクロソフト側のサポートもあり、結果的には画面上のボタンとして通話・終話キーを実装することができた。

そのほか、当初は充電ランプ、リマインダランプ、照度センサーの搭載ため、ボディ前面には3個の穴が空けられていたが、これも見た目の美しさを損ねるということで、開発陣の努力により1個の穴の中に全部入れ込むことが可能になったという。

画面の下側(親指で触れている部分)には画面表示の拡大/縮小を行う専用のタッチパッドが設けられている

上部にある半透明の穴の中に充電LED、リマインダLED、照度センサーが搭載されている

サクサクとした高速さの実現はCPUパワーに依存する部分が大きいとして、まだ採用例の少ないQualcommの「Snapdragon」(最大1GHz動作)を搭載した。Snapdragon搭載機器が商品として発売されるのは「おそらく世界初」(狩野氏)。これにより、処理待ち時に画面中央に表示される回転アイコンは「ほとんど見ずに済むようになるのではないか」(同)というレベルの速度を実現した。実際に会場でサンプルを試用したブロガーの間でも、レスポンスの良さは好評だった。

1GHzのSnapdragonによる高速な動作は参加ブロガーからも好評

加えて狩野氏は、国内ではNTTドコモ向けの製品であることから遠慮しつつも、T-01Aは「元々グローバル向けに展開することを考えていた」機種であることに言及。既に欧州では「TG01」の製品名で発表されており、当初海外では流通業者を通じて東芝製品として発売することも検討していたという。

結果的には従来通り通信事業者向け(いわゆる"キャリアブランド")の製品としてリリースすることを優先し、商品としてはドコモを通じての提供が最初の発表となったが、欧州ならびに北米市場での発売は引き続き視野に入れており、場合によっては「期せずして世界と同時期の発売に」(狩野氏)なる可能性も否定しなかった。営業サイドからは、ワンセグ受信機能など日本市場向けのフィーチャーがないことを懸念する声も上がったということだが、先の4大コンセプトを保ちながら「グローバルで通用する端末を出すという信念」(同)を貫き、現在の仕様に落ち着いた。

とはいえ、日本のユーザーが安心して使えるよう、主にドコモのサービスを活用した国内向けの専用機能も用意されている。紛失時等の遠隔ロックサービス「おまかせロック」がドコモのスマートフォンとしては初めて利用可能となったほか、ドコモが提供するインターネット接続サービス「mopera U」の初期設定を簡単に済ませられる「遠隔設定サービス」に対応する予定だ。

ドコモのスマートフォンとしては初めて「おまかせロック」に対応する

初心者にもWindows Mobileアプリを使いやすくする「Aplio」

ドルフィンシステムの福島幹雄氏

Windows Mobile搭載スマートフォンは、ユーザーが自分でアプリやコンテンツを追加できる自由度の高さがメリットのひとつだが、一方で初心者にとっては自由であるがゆえに「どんなアプリがあるか知るすべがない」「アプリのインストール方法がわからない」といった問題に直面することがある。

今回の内覧会では、このような問題を解決するために考案されたシステム「Aplio(アプリオ)」を、開発元・ドルフィンシステムの福島幹雄氏が紹介した。

Aplioはいわば「アプリを検索・インストールするためのアプリ」であり、Windows MobileデバイスにAplioを導入することで、ユーザーはiPhoneの「App Store」のような使い勝手でアプリを入手できるようになる。アプリのリストは「WindowsケータイFAN(WindowsCE FAN)」のソフトウェアライブラリを利用しており、現時点で既に数百本のアプリが登録されている。

使いたいアプリをカートに入れ、インストールボタンを押すとアプリがダウンロードされ、インストーラーが起動する。.NET Frameworkなど、アプリ本体以外にも必要なファイルがある場合はそれらも合わせてダウンロードされる

青空文庫から無料の書籍をダウンロードできるメニューや、「読書」「通勤」「お出かけ」といったシーン別に複数のアプリを一括インストールする機能も備えており、Windows Mobileを初めて使うユーザーでもスマートフォンのメリットを享受できるようなさまざまな工夫が加えられている。

また、今回の内覧会の主催者でもあるブログ「Kzou's Diary」のKzouさんは、T-01Aの操作デモンストレーションを行ったほか、自身が編集長を務めるT-01Aの公式サイト「Toshiba Mobile Plaza」を紹介。T-01Aからアクセスするのに最適なデザインとなっており、T-01Aの便利な使い方やアプリの紹介、メールマガジンの発行などを行う。

T-01Aの試作機を使い込んだKzouさん曰く「USBホスト機能が優秀で、認識するデバイスはかなり多い」。上の画像は、電源供給できるUSBハブを利用して多数のデバイスを同時接続した例

発売にあわせて、T-01Aでの閲覧に最適化された公式サイト「Toshiba Mobile Plaza」を開設。リンクアイコンが出荷時から用意される予定で、Windows Mobileを初めて使うユーザーにもT-01Aの楽しみ方をわかりやすく伝える