サイレントマジョリティー(silent majority)は、「静かなる多数派」「声なき声」とも呼ばれ、「民衆の多くは穏健な考え方を持ち、強く意見を主張しないため、注意深くその声に耳を傾けるべきである」という考え方です。

この言葉は、サイレントマジョリティーとは異なる主張を持つ一部の少数派が、折に触れて強硬な意見を表明することに対する反対語としての意味にもなっています。本稿では、サイレントマジョリティーとの意味や使用例を詳しく解説していきます。

  • サイレントマジョリティーの意味を理解しましょう

サイレントマジョリティーとは?

「サイレントマジョリティー」は、1969年にアメリカ大統領・ニクソンのベトナム戦争に対する国民の支持を求めた演説で用いられた言葉で、「サイレントマジョリティー」を「my fellow(仲間たちよ)」と呼びかけたこの演説は、多数の国民の支持を得ました。

ベトナム戦争泥沼化のなか、1968年にアメリカ合衆国第37代大統領に就任したニクソンは、その就任演説で「対立の時代から話し合いの時代へと」と述べ、選挙公約のベトナム戦争の早期解決をめざし、米軍の段階的撤退を打ち出しました。

演説のなかで、早期完全撤退を主張する反戦グループの意見を、早期撤退はベトナムに大惨事を引き起こすとして避け、最善の方法としての段階的撤退をサイレントマジョリティーに訴えたのです。

サイレントマジョリティーの意味

「サイレントマジョリティー」は、その後、「静かな多数派」「声なき声」と言う意味に解釈され、いろいろなジャンルで使われ、一般社会に市民権を獲得しました。主に政治やビジネスの場で用いられることが多い言葉です。

サイレントマジョリティーの語源

「サイレントマジョリティー」は、英語の「silent majority」の和訳で、分析すると形容詞「silent」と名詞「majority」の単語に区分けされます。このため、「サイレント・マジョリティー」と区分けして和訳する場合もあります。

この項では、「サイレントマジョリティー」を構成する「サイレント」「マジョリティー」「マイノリティー」を語源を取り上げ、言葉の意味などを説明します。

語源1:サイレント

「サイレント」は英語で形容詞silentとなり、その意味は「おしゃべりでない、口数の少ない、無口の」などを表します。

用例は、silent majorityのほか、a silent person(無口な人)、a silent protest(無言の抗議)、silent assent(黙諾)、fall silent(急に黙り込む)などがあります。

語源2:マジョリティー

「マジョリティー」は英語で名詞majorityとなり、その意味は、「多数派、多数党」などを表し、語義的には形容詞major(多数の)から由来しています。

用例は、majority verdict(過半数判決)、majority rule(多数決原理)、majority decision(多数決原理)などがあります。

語源3:マイノリティー

「マイノリティー」は「マジョリティー」の対義語で、英語で名詞minorityとなり、その意味は「(多数に対する)少数、少数党、少数派」などを表し、語義的には形容詞minor(少数派の)から由来しています。

用例は、a minority opinion(少数意見)、a minority language(少数派の言語)などがあります。

サイレントマジョリティーの使用例

「サイレントマジョリティー」は、1969年にアメリカ大統領ニクソンのベトナム戦争に対する国民の支持を求めた演説「ベトナム化」で用いられた言葉で、その後、「静かな多数派」「声なき声」と言う意味に解釈され、マーケティングなどのジャンルで使われています。

この項では、マーケティングと政治におけるサイレントマジョリティーを取り上げ、使用場面により表す意味の違いを考察します。

  • サイレントマジョリティーの使用例をチェックしましょう

マーケティングにおけるサイレントマジョリティー

マーケティングにおけるサイレントマジョリティーは「積極的には発言しない大多数の消費者」を意味し、このサイレントマジョリティーのニーズの把握が大切な課題でした。

最近のSNSの発展により、企業はさまざまな消費者の商品やサービスに対する意見や感想を把握できるようになり、消費者の生の声を反映した新たなニーズや改善策に結びつけることで、サイレントマジョリティーをターゲットにした新しいマーケティング戦略が可能になりました。

政治におけるサイレントマジョリティー

政治におけるサイレントマジョリティーは、「有権者などの相対的多数派」を意味し、現体制・制度のもと社会的利益を享受する側の「物言わぬ多数派」と解釈されてきました。

昨今の金融・経済危機・グローバリゼーションを発端にして、サイレントマジョリティーの中でも経済的格差が生まれたり、失業率が高止まりしたりするなど、既得利益を失った層が政治行動を積極化する「バックラッシュ現象」が顕在化しています。

サイレントマジョリティーの対義語3つ

サイレントマジョリティーの対義語は、マイノリティ・グループ(少数者集団)で社会的地位や待遇がサイレントマジョリティーと比べて劣っている立場におかれた集団としてとらえられます。

このようなマイノリティ・グループは、サイレントマジョリティーに対する同調・反応・反発などの政治的行為や行動により、「ノイジーマイノリティー」「ボーカルマイノリティー」「ラウンドマイノリティー」などに区分されます。

対義語1:ノイジーマイノリティー

ノイジーマイノリティー(noisy minority)は、「口やかましい少数者集団、うるさい少数派」を意味します。

noisyには「喧しい、騒々しい、うるさい」などの意味があり、マイノリティーとしての政治的行為や行動などの主張に論理性や脈絡性がなく、雑音と同じように騒ぐだけという批判的意味合いが強くなります。

対義語2:ボーカルマイノリティー

ボーカルマイノリティー(vocal minority)は、「政治的主張や意見を遠慮なく表明する少数派、声の大きい少数者」を意味します。

vocalには「言葉に表す、自由にしゃべる、やかましく主張する」などの意味があり、積極的に主張する意味合いが強くなります。

対義語3:ラウドマイノリティー

ラウドマイノリティー(loud minority)は、「政治的主張や意見を声高にしつこく、うるさく主張する少数派」を意味します。

loudには「声が大きい、熱心な、うるさい」などの意味があり、声高に粘り強く主張する意味合いが強くなります。

サイレントマジョリティーの意味はわかりましたか?

「静かな多数派」・「声なき声」とも呼ばれる「サイレントマジョリティー」の用語は、政治・マーケティング・カルチャーなど各分野で取り上げられていますが、その意味は使用場面ごとに異なります。

本記事では、皆さんの理解に役立つように、使用場面ごとの意味と由来、関連語や対義語を詳細に解説しました。