iPadをメインマシンとして使っていると、時々Windowsを使いたくなることがあるかもしれません。しかし、そのたびにWindows PCや、仮想化ソフトなどでWindowsを稼働できるようにしたMacに切り替えるのはやや面倒です。がっつりとWindowsを使うならまだしも、Windowsのアプリを一瞬開いたり、Windowsでしか開けないファイルをチェックしたりといったライトユースの場合は特にそのように感じるでしょう。iPadにWindowsを直接インストールすることはできませんが、そんなときはParallelsからリリースされている「Parallels Access」を使うことで、iPadからWindows PCやMac上で稼働しているWindowsにネットワーク経由でリモートアクセスして操作することが可能です。ここではAppleシリコン搭載MacにWindows 11をインストールして、それをiPadから利用する方法を解説していきます。

AppleシリコンMacでWindows 11が動く

Parallelsからリリースされている「Parallels Access」は、iPadやiPhone、Androidといったモバイルデバイスから、MacやWindows PCへネットワーク経由でリモートアクセスして、MacやWindows上のアプリを操作するためのものです。macOS 10.10以降を搭載したMacと、Windows 7以降を搭載したWindows PC(または仮想化マシン)に対応し、iPadの場合はiOS 9以降を搭載したiPad(第2世代以降)、iPad Air、iPad Proをサポートします。

セットアップ方法は実に簡単で、基本的にはMacやWindows PC、そして利用するモバイルデバイスの双方にParallels Accessをインストールしておくだけ。あとは、モバイルデバイスでParallels Accessを起動して、接続先となるMacやWindows PCへモバイル通信回線またはWi-Fiなどでアクセスすると、モバイルデバイス上にMacやWindows PCにインストールされているアプリが表示され、利用することができます。

ここでは、Appleシリコン(M1、M2チップ)を搭載したMacを持っているユーザ向けに、仮想化ソフトの「Parallels Desktop」を使ってWindows 11をAppleシリコンMacにインストールし、Windows 11のアクティベーションを行ったあと、Parallels Accessを使ってParallels Desktopが稼働するMac上のWindows 11にiPadからリモートアクセスする方法を解説します。

なお、Appleシリコン搭載Macでは、従来のIntel製CPUを搭載したMacで利用可能だった、Windows実行ユーティリティ「Boot Camp」が利用できません。また、仮想化ソフトを利用したWindowsのインストールも基本的には行うことができませんでしたが、2023年2月にマイクロソフトが晴れて正式サポートを表明。仮想化ソフトの「Parallels Desktop」を用いて、Arm版のWindows 11 ProとWindows 11 Enterpriseを稼働させることが可能となっています。

実行できるのはArm版のWindowsであるため機能に一部制限はあるものの、iPadでWindows 11をリモート操作できるようになれば便利に感じる人も多いはず。「仮想化ソフトでWindowsをインストール」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、手順は至ってシンプルですので、これからの解説を参考にして導入してみましょう。

Parallels DesktopとWindows 11のインストール

まずは、Appleシリコン搭載MacにParallels Desktopをインストールします。最新版の「Parallels Desktop 18 for Mac」はParallelsの公式サイトからダウンロード可能です。通常版、プロ版、ビジネス版が用意されているので好みのエディションを選んで購入しましょう。もっとも安価な通常版の価格は、新規ライセンスの場合が1万400円、アップグレードの場合が7,200円です。また、いきなり購入するのが躊躇われる場合は、14日間無料で利用可能なトライアル版を試してみましょう。

  • Parallelsの公式サイトへアクセスして、[今すぐ購入]または[無償トライアル版をダウンロード]をクリックします

  • [今すぐスタート]の下に記載された利用ステップを確認したあと、[無償トライアルをダウンロード]または[今すぐ購入]をクリックします(本記事では無償トライアルをダウンロードを選びました)

  • ダウンロードしたイメージファイルをダブルクリックして開き、画面内にある[Parallels Desktopのインストール.app]をクリックしてインストーラを起動します

  • インストーラを開き、次に表示されるダイアログで[ダウンロード]フォルダへのアクスを許可。「エンドユーザー使用許諾契約」に同意するとインストールが開始されます

  • Parallels Desktopのすべての機能を利用するには、Macのプライバシー設定でParallels DesktopにMacの各フォルダへのアクセス権を付与します

  • 「Windows 11のダウンロードとインストール」画面が開きます。画面下部にある[Windowsのインストール]をクリックすると、Windows 11のダウンロードが開始されます

  • 「WIndows 11のセットアップ画面が表示され、最初にカメラとマイクへのアクセスを許可するか尋ねられますので[OK]をクリックします

  • Windows 11のインストールが開始されます。そしてしばらく待つと、インストールが終了して自動で再起動します

  • Windows 11のアップデートなどが行われたあと、[インストール完了しました]と表示されれば無事インストール作業は終了です。[クリックして先に進む]をクリックします

  • Parallelsアカウントにサインインします。アカウントを保持していない場合は、[新規ユーザの場合]を選び、氏名やメールアドレス、パスワードを入力して[アカウントの作成]をクリックします

  • 「Windows使用許諾契約」に同意すると、Microsoft Edgeが開きます。「Windows 11 Installed Successfully」と表示されたら一連のインストール作業は終了です

Windows 11のアクティベーション

このように、Parallels Desktop 18 for MacはParallels Desktop自体のインストールから、Windows 11のダウンロード&インストールまでを一連の流れで行えるので非常に便利です。そしてWindows 11をインストールできたら、次にWindows 11上でアクティベーション作業を行いましょう。Windowsの操作に慣れていなくても、こちらも簡単に行えます。

  • Mac上で稼働するWindows 11の画面で[スタート]ボタンをクリックすると「スタートメニュー」が表示されます。ここで[設定]をクリックします

  • 「Windowsを今すぐライセンス認証する」の画面が表示されます。プロダクトキーを持っていない場合は[プロダクトキーを購入する]をクリックします。なお、プロダクトキーをすでに持っている場合は[プロダクトキーの入力]をクリックしましょう

  • MacのWebブラウザが起動し、Microsoft Storeが表示されます。メールアドレスと場所を設定して[サインアップ]をクリックします

  • Windows 11 Proの購入画面が表示されますので購入しましょう。購入後、画面にプロダクトキーが表示されます

  • Windows 11の[設定]→[システム]を開きます。[ライセンス認証を今すぐ実行]をクリックします

  • [プロダクトキーを変更する]の横にある[変更]ボタンをクリックして、Windows 11のプロダクトキーを入力してライセンス認証を行えば完了です

iPadにParallels Accessをインストール

MacでWindows 11が稼働するようになったら、いよいよiPadで操作するための設定に移ります。まずはiPadでApp Storeを開いて「Parallels Access」をインストール、またMacに「Parallels Access agent」をインストールします(どちらが先でも問題ありません)。iPad向けのParallels Accessは無料、一方Mac版のParallels Accessは単体購入する場合は1年間2,000円からとなっていますが、Parallels Desktopのサブスクリプション版を購入していればサブスクリプション期間中は無料で利用可能です(単発購入の場合は3カ月間無料)。

  • iPadのApp Storeを開き、Parallels Accessを検索してインストールを行います

  • iPadでParallels Accessを開き、Parallelsアカウントに登録したメールアドレスとパスワード入力して[サインイン]をクリックします

  • Parallelsアカウントに登録したメールアドレスにアクセス承認のメールが届きます。許可したあと、「デバイス確認」の画面で[確認済み]をクリックします

  • iPadでParallels Accessのメイン画面が開きますので、いったん起動したままの状態にしておきます

  • 次に、MacにParallels Access agentをインストールします。メニューバーにあるParallels Desktopのアイコンから[環境設定]を開き、ツールバー右端の[Parallels Access]をクリックしてインストールします。なお、Parallels AccessはParallelsの公式サイトからもダウンロード可能です

  • Parallels Accessを利用するために、Macの「アクセシビリティ」の設定で権限を付与します。その後、「画面収録」などにも必要に応じて権限を付与します

  • Parallels Accessのメイン画面が表示されます。画面に表示されているように、このあとiPadにParallels Accessのインストール作業を行っても問題ありません

  • iPadのParallels Accessの画面上に表示されている接続先のMacの下にある[→]ボタンをタップします

  • ローカルネットワーク上にある接続先のMacへの接続を求める画面が表示されるので、[許可]をタップします

  • iPadからMacにリモートアクセスして、Mac上のいくつかアプリが一覧表示されます。ここで「Parallels Desktop」をタップします

  • iPad上でWindows 11が表示されます。あとはWindowsを操作するように、タップやダブルタップ、ドラッグなどでメニューやアプリを操作しましょう

iPadで操作するのも十分に実用的

さて、ここまでAppleシリコン搭載Macを介して、iPadでWindows 11を操作する方法を解説してきました。最初のセットアップは多少の時間を要しますが、一度セットアップしてしまえばあとはiPadからParallels Accessを起動して利用するだけなので手間は感じないでしょう。

Windowsをどのように利用したいかという目的によっても変わりますが、個人的にはiPadでWindowsのアプリやファイルを開いてちょっと作業する分には十分活用できると思います。iPadでのWindowsの操作感は、利用するiPadの画面サイズやネットワーク環境によっても違ってきますので、そのあたりは実際に使ってみて実用度を判断してみてください。

  • iPadからMacへリモートアクセスするには、Mac側でParallels Accessを起動してアクセスを可能にしておく必要があります。Parallels Accessの画面で「アクセス不可」となっている場合は、[Accessをオンにする]をクリックしましょう