「偽善」「兵士の命は重要でない?」…プーチン長女が異例のメディア出演、「無神経」な発言に批判が
<父プーチン大統領がウクライナの戦場に送り込んだ大勢の兵士が死亡しているなか「偽善的だ」との声も>
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の娘であるマリヤ・ボロンツォワが、2023年12月にインタビューに応じていたことが分かった。プーチンの家族がメディアに出るのは、きわめて異例のこと。「最も価値があるのは命」などの発言をめぐり、ネット上では多くの批判の声が飛び交っている。 【動画】母親似?父親似? 異例のメディア出演で、インタビューに答えたプーチン長女のマリア ボロンツォワは2023年12月16日に、医療系の非営利団体「Medtech」のインタビューに応じ、世界的な医療の進歩や文学、音楽芸術への関心について42分間にわたって語った。 彼女がインタビューに出演することは、ロシアの人気ソーシャルメディア「フコンタクテ」で大々的に宣伝されたものの、ユーチューブ上で公開された動画の視聴回数は、1月12日の時点で1万回に達していなかった。 長年公の場に姿を見せて来なかったボロンツォワはインタビューの中で、ロシアは「経済中心の社会」ではなく「人間中心の社会」であり、「最も価値があるのは人間の命だ」と語った。彼女がプーチンの娘だという紹介はなく、会話の中にも出てくることはなかった。 ボロンツォワは、プーチンと2013年に離婚した最初の妻リュドミラ・シュクレブネワの間に生まれた二人の娘のうちの一人だ。ボロンツォワも妹のカテリーナ・チホノワも、それぞれ子どもがいる。プーチンが二人を自分の娘だと公に認めたことはなく、ロシア政府も二人の生活に関する詳しい情報は一切公表して来なかった。ボロンツォワがロシアによるウクライナ侵攻について公にコメントしたことはない。 ■「前線に送られた兵士の命は」など批判的なコメント 複数のX(旧ツイッター)ユーザーは、今回のインタビューでボロンツォワがロシア社会における人間の命の価値について発言したことに注目。父親であるプーチンが、もう2年近く続いているウクライナでの戦争に対して強硬姿勢を貫いているなか、偽善的な発言だと示唆した。 英BBCのジャーナリストであるフランシス・スカーは12日、「彼女の父親の『部分動員』によってバフムトやマリインカの前線に派遣された人々は、彼女の意見に賛同するだろうか」とXに投稿した。 ロシア、ベラルーシやウクライナの外交政策を取材しているジャーナリストのニコラ・ミコビッチは11日に、「私たちにとって最も価値あるものは人間の命だ――プーチンの娘であるマリヤ・ボロンツォワの発言」と投稿。「もちろんそうだ。特に厳重に要塞化されたウクライナ軍の拠点に突入させられたロシア軍の兵士たちの命が」と書き込んだ。 ■インタビュアーは過去にモスクワ市長の下で勤務 米当局者らは2023年12月、2022年2月24日のウクライナ侵攻から始まった今回の戦争におけるロシア軍の死傷者は31万5000人にのぼっているとの推定を明らかにした。これは戦争が始まる前のロシア軍の要員の87%に相当する数だ。プーチンは2022年9月に部分動員令を発令し、30万人の予備役を招集している。 ウクライナの市民団体によれば、2023年11月までに確認されたウクライナ軍の死者は2万4500人に達した。米ニューヨーク・タイムズ紙は2023年8月に、複数の米当局者(匿名)の話として、ウクライナの総死者数は7万人近くに達していると報じていた。 今回ボロンツォワにインタビューを行ったのは、非営利団体「Medtech」モスクワ支部のCEOを務めるビヤチェスラフ・シュレニンだ。ロシア語の独立系メディア「Agentstvo」によれば、シュレニンは2013年から2017年までモスクワ市長事務所で働いていた。同事務所での最終職位は第一副首席補佐官だった。
キャサリン・ファン