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世界全体の携帯電話の利用可能領域カバー率の実情をさぐる(2024年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
山の中でも使える携帯電話。どこまでカバーされているのか(写真:イメージマート)

今や日常生活には欠かせない存在の携帯電話。その携帯電話のサービスはどこまでの領域をカバーしているのだろうか。国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)の公開資料から確認する。

次以降に示すのは携帯電話のサービス網がどの程度普及しているのか、利用可能な領域のカバー率を人口比で示したもの。例えばこの値が90.0%なら、その国・地域に住む人のうち90.0%が携帯電話のサービスを受けられる場所に住んでいることになる。その人が実際に携帯電話を利用しているか否かは勘案されていない。

なお地域の属性別区分だが、今件公開データにおいて、かつては「先進国」「新興国」で行われていた。しかし2022年公開分からこの区分は無くなり、代わりに世帯年収や開発状況に応じた区分が行われるようになっている。そこで今回は高世帯年収国(High-income。世界銀行定義で年収1万3205米ドル以上の国81か国)と後発開発途上国(国連開発計画委員会(CDP)が認定した基準に基づき、国連経済社会理事会の審議を経て、国連総会の決議により認定された特に開発の遅れた国々を指す。一人あたりのGNI3年間平均が1018米ドル以下で、HAI(Human Assets Index。栄養不足人口の割合、5歳以下乳幼児死亡率、妊産婦死亡率、中等教育就学率、成人識字率を指標化したもの)やEVI(Economic Vulnerability Index。外的ショックからの経済的脆弱性を表す指標)が一定数以下の国)の状況を確認する。

まずは単純な携帯電話の利用可能領域カバー率。スマートフォンだけでなく従来型携帯電話も含み、さらにインターネットが利用できるか否かも問われていない。単に通話ができるだけでも該当する。なおこの値は現時点では2015年以降のものが公開されている。

↑ 携帯電話利用可能領域カバー率(対人口比)
↑ 携帯電話利用可能領域カバー率(対人口比)

2015年の時点ですでに高世帯年収国では人口比で99.6%もの領域をカバーしている。つまり携帯電話が利用できない地域に住んでいる人は0.4%に過ぎない。他方後発開発途上国では86.9%。つまり7人に1人ほどは携帯電話が利用できない地域で生活をしていることになる。しかし見方を変えれば、7人に6人ぐらいはすでに携帯電話が利用できる地域にいることになる。

直近の2023年では高世帯年収国が99.8%、後発開発途上国では93.1%。高世帯年収国はほぼ頭打ちだが、後発開発途上国はまだ伸びる余裕がある。それでもすでに20人に18人以上は携帯電話が使える地域での生活を営んでいる計算になる。

続いて単純な携帯電話の利用が可能なだけでなく、少なくともLTEかWiMAXが使える地域に住んでいる人の割合。実質的にスマートフォンによるインターネットへのアクセスが利用可能な地域と解釈して問題はないだろう。

↑ 少なくともLTEかWiMAXが使える携帯電話利用領域カバー率(対人口比)
↑ 少なくともLTEかWiMAXが使える携帯電話利用領域カバー率(対人口比)

2015年の時点で高世帯年収国では94.3%だったのに対し、後発開発途上国では15.4%と1/6程度にとどまっていた。ところがこの数年で後発開発途上国ではカバー率が増加し、直近の2023年では56.3%と半数を超えて6割に迫る値を示している。今や後発開発途上国でも2人に1人以上はインフラの観点でスマートフォンでインターネットを利用できる地域に住んでいる計算となる。

「利用できる」と「利用している」は別物なので、後発開発途上国におけるスマートフォンによるインターネットアクセスの利用率がこの数年で数倍に増えたわけではない。この値は単に利用できるか否かのみを問われているため、品質・安定性やコストパフォーマンスの観点においてカバー率と同じような成長を示しているとは限らない。とはいえ、新興国でのカバー率の増加度合いは、それらの国の人口を勘案すると、インターネットの世界に大きな変化をもたらしうるとの認識ができるのは当然の話といえるだろう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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