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【復刻】ソフトバンク和田毅10年以上前から変わらぬ「本格派」の美学 ワインドアップから必殺外角ストレート

 ソフトバンクの和田毅が10日の楽天戦で、6月9日の巨人戦(ペイペイドーム)以来2カ月ぶりの6勝目を挙げた。パ・リーグで42歳以上の投手が6勝を挙げるのは史上初の快挙。そんな和田が2010年に語った「投手としての美学」の記事を復刻する。

 ◆ソフトバンク9―1ロッテ(2010年4月8日、ヤフードーム)
 今季初めての「左うちわ」と言っていいだろう。堪能した和田の129球。中でも忘れられない1球がある。3回だ。先頭打者の西岡剛をカウント1-0から真っすぐで追い込んだ。球速は138㌔。それでも、外角低めに突き刺したストレートに西岡は反応できず、金縛りにあったように右打席で動けなかった。

 味方が同点に追いついた直後の守り。しかも、ロッテは西岡からの好打順だった。細心の注意を要するリードオフマンを三球三振に仕留めて、和田とホークスの視界が広がった気がする。猛烈な長打攻勢が飛び出すのは、その裏の攻撃からだった。だからこそ、流れを引き寄せた138㌔のストレートに魅せられた。

 「スギ(杉内俊哉)は(右打者の)インコースに投げれば、ファウルが取れる。そういう投球スタイルなんだと思います。でも、僕は右の外側なんです」

 絶対の自信を持つ生命線。それは右バッターの外角だ。和田はプレートの最も一塁寄りから投げ込む。「左(腕)だから、やっぱり角度は欲しい。常にイメージしているのは、打者に向かっていく軌道で最後に浮き上がるボールなんです」。右打者にとって最も遠い「外角低め」に球威や切れを伴った真っすぐを決められれば、簡単には打たれない。大松尚逸を除いて右を8人並べたロッテ打線が沈黙したのも必然だった。

 優しげな顔立ちや、細身の体格からは想像がつかないが、和田こそ「本格派」だと思うときがある。開幕前に話を聞いたときだった。ワインドアップ投法にこだわる理由について尋ねると、こう答えた。「プロですもん。しなくなったら、ワインドアップがなくなってしまう気がする。子どもたちが見ていますからね。僕もそうやって野球をずっとやってきましたから」

 振りかぶる、振りかぶらないの是非を問うたわけではない。人それぞれに考えはあるからだ。それでも、最初の「プロですもん」との言葉に、和田の先発投手としての美学が込められているような気がした。ワインドアップ投法で締めくくった、尊い完投勝利。攻めの気持ちで貫き通した〝必殺〟の外角ストレートとともに、和田の2010年が本格スタートした。

次のページにパ・リーグ42歳以上投手の年間勝利数

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西口 憲一

西口 憲一

編集委員

立命館大学でアメリカンフットボールに打ち込み、「人の心を動かし、心に残るような記事を書きたい」とスポーツ記者を志しました。 1993年西日本新聞社入社。 運動部からスタートし、以来、福岡→大分→福岡→東京→福岡→東京→福岡。 主にプロ野球(ダイエー、ソフトバンク、西武)やソフトボールを取材。1999年ダイエー初優勝、2008年北京と2021年東京の両五輪でのソフトボール金メダル獲得に心が震えました。 現在はバレーボールVリーグ女子の久光スプリングスの記事も書いています。福岡市出身。

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