【二次創作シナリオ】プリティーリズム オーロラドリーム ~ザ・バース・オブ・ オーロラライジング~

 ※以下の文章は、2017年1月以降ネット上にて限定公開ならびに即売会にて小数部頒布していた、「プリティーリズム・オーロラドリーム」ケイの二次創作シナリオ本です(オリキャラあり)。お暇があったら読んで頂けると嬉しいです、宜しくお願いします。


【人物】
 ケイ(18)プリズムスタァ
 濱田以蔵(52)ケイ所属事務所の社長
 豪徳寺(柳)ゆきえ(16)プリズムスタァ
 柳一二三(16)ゆきえの執事
 実況(声のみ)
 解説(声のみ)
 通行人1
 通行人2
 通行人3
 通行人4
 警備員
 審査委員長
 審査員1
 審査員2
 謎の少女

 春音あいら
 上葉みあ
 彩瀬なる
 真中らぁら
 ケイ(68)



【プロローグ】
○プリズム空間
あいら・みあ・なる・らぁらの声「プリティ
 ーリズム・オールスターセレクション!」
   春音あいら・上葉みあ・彩瀬なるが、
   真中らぁらにレクチャーをしている。
らぁら「あいらさん、みあさん、なるさん、
 今日も色んな事を教えて頂いてありがとう
 ございます!」
あいら「ハピラキ!」
みあ「これでまた、いっちばーんに近づいた
 ね」
なる「ハピなる!らぁらちゃんはお勉強屋さ
 んだね!」
らぁら「いえいえそんなぁ……それで、一つ
 質問があるんですけど、いいですか?」
あいら「なあに?らぁらちゃん」
みあ「さあ、このみあに何でも聞きなさい!」
らぁら「……プリズムスタァって、何ですか?」
あいら・みあ・なる「ぎゃふん!」
らぁら「……あれ?」
みあ「そこを分からずにレッスンを受けてい
 たのかね、チミは~!」
らぁら「ご、ごめんなさい~。アイドルとプ
 リズムスタァって、何が違うのかな~とか
 思っちゃったりして……」
なる「まあまあみあちゃん、私達もちゃんと
 は教えてなかったし」
あいら「そうそう」
ケイの声「はぁっ!」
   突如あいら達の前に、一枚のタロット
   カードが突き刺さる。
   カードが示すのは、「運命の車輪」。
あいら・みあ「こ、このタロットカードは!?」
ケイの声「時は、来たれり!(エコー)」
   ケイ(68)、現れる。
あいら「ケイさん!」
なる「ケイさん?」
みあ「怖いおばちゃん!」
らぁら「怖いおばちゃん?」
ケイ「プリズムショーは心の煌めき、プリズ
 ムジャンプは心の飛躍」
あいら「ケイさんは阿世知今日子さんのお母
 さんで、オーロラライジングを発明した、
 凄い人なんだよ」
らぁら「あのオーロラライジングを!?」
なる「すごぉい!」
みあ「顔はちょっと怖いけど……」
ケイ「そこの幼き少女よ」
らぁら「わ、私ですか?」
ケイ「プリズムスタァとは何か、それは過去
 の私の姿を見れば解るというものよ」
らぁら「そ、そうなんですか?」
あいら「はいはい、じゃあ今日の補習レッス
 ンは、ケイさんの若い頃のエピソードをプ
 レイバックしましょう!」
一同「はーい!」
らぁら「かしこま!」
タイトル「~ザ・バース・オブ・
 オーロラライジング~」

【本編】
○バーニングスケートリンク・外観
   小奇麗で近代的な外観。
   テロップ「1965年」。

○同・中
   がらんとした場内。
   掃除のおじさんが観客席をモップがけ
   している。
   スケートリンクの中心ではケイ(18)
   がジャンプへ向けて滑走している。
   ケイ、二段ジャンプ。
   周囲が業火に染まり、中心でケイが光
   り輝く。
ケイ「皇帝・演舞!」
   ケイの幻影が幾重にも分身し、至る所
   で華麗に舞い踊る。
   掃除のおじさん呆然とし、モップを地
   面にカツンと落とす。
   ジャンプが終わり、ケイ着地する。
以蔵の声「すばらしい、すばらしい!」
   ケイ、声の方を振り向くと、濱田以蔵
   (52)が観客席最前席で拍手をして
   いる。
ケイ「何の用?」
以蔵「何って、我がバーニングプロダクショ
 ンのトップスタァの調子を見に来たんじゃ
 ないか」
   以蔵、タバコを取り出し火を点ける。
ケイ「……気が散るから帰ってちょうだい」
以蔵「……その様子なら、次の大会もいけそ
 うだな」
ケイ「今回の対戦相手は?」
以蔵「大した奴はいない。ただ、豪徳寺ゆき
 えってのが新顔で、なかなかイケるらしい」
ケイ「豪徳寺ゆきえ……」
以蔵「なあに、心配するな。審査員にはちゃ
 んとコレを積んでおくから問題ないぜ」
   以蔵、手でマネーのジェスチャーを作
   る。
ケイ「……」
以蔵「まあ、買収したとバレない程度には、
 きちんと鍛錬しておいてくれよな、それじ
 ゃ」
   以蔵、煙草の吸殻を指で弾き、通路へ
   と去っていく。
   リンクにポトリと落ちる煙草の吸殻。
ケイ「……」
   ケイ、煙草の吸殻を見つめる。

○プリズムショー会場・全景
   歓声が聞こえる。

○同・入口・前
   入口には「ニューイヤーカップ」の看
   板。

○同・中
   観客ですし詰め状態である。
   リンク上では、ジャンプを終えたケイ
   がポーズを決めている。
実況の声「決まった!ケイ選手、得意の皇帝
 演舞!」
解説の声「正に唯一無二ですね」
実況「さあ得点は!」
   電光掲示板に、9680カラットと示
   される。
実況の声「9680カラット、歴代のベスト
 を更に更新してきました!勿論現在のトッ
 プ!」
   リンクの上のケイ、無表情。
    × × ×
   リンクの上を、豪徳寺ゆきえ(16)
   が可憐に踊っている。
実況の声「最終滑走者、豪徳寺ゆきえ選手、
 新人とは思えない堂々とした滑りです!」
   リンク袖でそれを見守るケイ。
   ゆきえ、ジャンプへの滑走に向かう。
   ゆきえ、二段ジャンプ。
   ゆきえの目前にまばゆい光の路が現れ、
   ゆきえがその上を軽快に滑走する。
ゆきえ「プラチナ・スパイラル!」
   ゆきえ、観客席に向けてウインク。
   観客、大歓声。
実況の声「決まった!新鋭、豪徳寺ゆきえ選
 手、最高難易度のプラチナスパイラルを決
 めて見せました!さあ、高得点が期待され
 ます!」
   電光掲示板に、6500カラットと示
   される。
実況の声「ああっと、6500カラット!」
解説の声「思ったより伸びませんでしたね」
実況の声「従いまして、今回のニューイヤー
 カップ、優勝はケイ選手に決まりました!」

○同・廊下
   廊下を独り歩くゆきえ。
   ゆきえの目前にケイが現れる。
ゆきえ「貴方は、ケイさん。お、おめでとう
 ございます」
ケイ「……貴方のジャンプ、私から見ても素
 晴らしかったわ。私の皇帝演舞には及ばな
 いにしても、8000カラット台後半の得
 点が出てもおかしくなかった」
ゆきえ「そ、そんな……」
   ケイ、ゆきえに近づき、タロットカー
   ドを渡す。
   示されたカードは「月」。
ケイ「『月』の意味は、嘘・まがい物。正に今
 のプリズムショー界そのもの」
ゆきえ「……」
ケイ「今はまだ私には届かないかもしれない
 けれど、きっと貴方は素晴らしい、私に匹
 敵するプリズムスタァになるわ。いや、な
 ってみせなさい。そうして、私達の実力で
 もって、今の虚飾にまみれたプリズムショ
 ー界を打破しましょう。皆の目を覚まさせ
 てあげるのよ」
   ゆきえ、タロットカードを握りしめ、
   決意の表情。
ゆきえ「わかりました、ケイさん」
ケイ「今度のプリズムクイーンカップは、ヤ
 ラセ無しの真剣勝負よ」
   ケイとゆきえ、握手する。

○バーニングプロダクション・全景
   10階立ての高層ビル。

○同・社長室・中
   机をはさんで、以蔵とケイ。
   以蔵は屈んで、足の爪を切っている。
以蔵「どうした、急に押しかけてきて」
ケイ「今度のプリズムクイーンカップ」
以蔵「安心しろ、今度も勝たせてやる」
ケイ「八百長・買収、一切なしで頼むわ」
以蔵「……はあ?」
ケイ「真剣勝負で、頂点に立ってみたいのよ」
以蔵「そりゃ、確かにお前に実力で勝てる奴
 は居ないが……」
ケイ「お願いします」
   ケイ、頭を下げる。
以蔵「おいおい、お前に頭を下げられたんじ
 ゃあ……」
ケイ「お願いします……!」
以蔵「……ああもう、分ったよ、今回は好き
 にやらせる、その代わり、絶対に勝てよ!」
ケイ「ありがとう」
   ケイ、一礼して、部屋から退室する。
   以蔵、足の指をフッとひと吹きし、引
   き出しを開ける。
   机の中には、ゆきえと柳一二三(16)
   が一緒に写った、隠し撮り写真。
以蔵「サマはしないと言ったが……念には念
 を入れないとねえ……ククク」

○バーニングスケートリンク・外観

○同・中
   ケイが鬼気迫る表情でレッスンに励ん
   でいる。
ケイ(M)「今度こそ真剣勝負でやれる。プリ
 ズムショー界に新しい歴史を刻み込むのよ
 ……その為には新しいジャンプ。皇帝演舞
 を上回る、全く新しいジャンプを跳ばなけ
 れば……」

○街・中
   ケイが街中を歩いている。
   ケイ、電気屋の前を通りかかる。
   電気屋のテレビの前に人だかり。
通行人1「プリズムスタァの謝罪会見だって
 よ」
通行人2「何々、プリズムスタァが隠れて恋
 人作ってたんだって」
通行人3「マジかよ!」
通行人4「責任を取って引退、かあ」
   ケイ、立ち止まり、横目でそれを見る。
   テレビには、頭を下げるゆきえの姿が
映っている。
   ケイの目が見開かれる。

○市立公園・入口
   入口に「市立公園」文字。

○公園・中
   公園の街路樹は葉が全て落ちている。
   ゆきえと一二三が寄り添って歩いてい
   る。
   ケイがゆきえと一二三の前に現れる。
ゆきえ「ケイさん……」
ケイ「ゆきえ……」
ゆきえ「すみません、私の不徳の致すところ
 で」
一二三「私とお嬢様の写真が、週刊誌に漏れ
 てしまいまして……」
ケイ「……」
ゆきえ「私は家を出て、一二三さんと二人で
 暮らしていきます……ケイさんの活躍、陰
 ながら応援しています」
一二三「さっ、行きましょう、お嬢様」
   ゆきえと一二三、ケイに一礼し、ケイ
   の横を通り過ぎて去っていく。
ケイ「写真……まさか、濱田以蔵!」

○バーニングプロダクション・社長室・中
   ケイがドアをバンと開けて中に入って
   くる。
以蔵「おいおい、おっかねえ顔だなあ」
ケイ「貴方!」
以蔵「何だよ急に」
ケイ「約束はどうなったの?」
以蔵「俺は約束は破ってないぜ。八百長、買
 収は一切してない」
ケイ「じゃあ……」
以蔵「ただ、ちょろっと情報を漏らしただけ
 だ。新進気鋭のお嬢様プリズムスタァが、
 あろうことか執事とデキてるってな」
ケイ「……」
以蔵「分かってくれよ、お前がイカサマなし
 だっていうもんだから、こっちは少しでも
 お前の勝率を上げる為に努力したんだよ」
ケイ「第一、何で恋人が居るってだけで、引
 退しなくちゃあいけないのよ。こんなのお
 かしいわ」
以蔵「……お前、プリズムスタァってのが何
だか分からずに今までやってきたのか?」
ケイ「……はあ?」
以蔵「プリズムスタァはお客様あってのもの。
 ファンを魅了し、喜ばせる為に存在してる
 のさ。そんなプリズムスタァが恋人なんて
 作っていい筈がないだろ」
ケイ「そんなことはない!プリズムスタァは
 アスリートとして、プリズムショーだって
 純粋な競技としての可能性を秘めて……」
  以蔵、机をドン!と叩く。
ケイ「……ッ!」
以蔵「甘ったれたことをぬかすな!」
ケイ「……」
以蔵「プリズムスタァなんて所詮商品に過ぎ
 ない」
ケイ「……」
以蔵「プリズムショーだってプロレスと同じ。
 観客が喜ぶようにお膳立てしてやることが
 第一なんだよ、分かったか!ああ?」
   ケイと以蔵、沈黙し、しばし睨みあう。
ケイ「貴方とはこれまでね」
   ケイ、タロットカードを投げる。
   机に突き刺さったカードが示すのは
   「愚者」の逆位置。
ケイ「さようなら、愚かな人よ」
以蔵「辞めるのか」
   ケイ、黙って振り返り、入口へと歩い
   ていく。
以蔵「ここを辞めて、まともにプリズムスタ
 ァが続けられると思うなよ!」
   ケイ、ドアを出、扉がバタリと閉まる。

○市営スケートリンク・外観
   普通の外観のスケートリンク。

○同・入口・中
   ケイがバッグを抱え、中に入ろうとする。
   ケイの目の前に警備員が立ちふさがる。
警備員「貴方の入場は認められていません」
ケイ「何?練習の予約はきちんととったのよ」
警備員「上からの命令でして……」
ケイ「……」
警備員「申し訳ございません」
ケイ「……そう、そういう事ね」
   ケイ、振り返り、去っていく。

○夜行列車・外観(夜)
   暗闇を照らしながら進む列車。

○同・客車・中(夜)
   窓際の席で外を眺めるケイ。
ケイ(M)「何箇所かリンクを当たったみたけ
 れど、入れなかった。恐らく全国のスケー
 トリンクに手が回っているわね……こうな
 ると、残る練習手段は……」

○北海道・屈斜路湖
   空は曇っている。
   山あいにある広大な湖の表面は、綺麗
   に凍っている。
   独り佇むケイ。
ケイ「流石にここまでは邪魔されないわね」
   ケイ、湖へと滑り出す。
ケイ(M)「バーニングプロダクションも、私
 が出場すること自体は妨害できない。でも、
 恐らく審査員は全員買収される筈……一体
 どうすれば……」
    × × ×
   風が強くなり、吹雪きだす。
   周りの視界が急激に悪くなる。
   湖上に取り残されるケイ。
ケイ「しまった、何も見えない」
   ケイ、やみくもに滑るも、岸にたどり
   着くことができない。
ケイ「まずい……」
   吹雪は更に勢いを増す。
   ケイ、肩を抱き、うずくまる。
ケイ「このままだと……意識が……」
   ケイの瞼がゆっくりと降りていき、閉
   じ……ようとしたその瞬間、吹雪がピ
   タリと止む。
   見開かれるケイの瞳。
   笑い声が聞こえる。
   ケイ、顔を上げる。
   空は晴れ、オーロラの輝きに満ちてい
   る。
   湖上では、光を身に纏い、背中に虹色
   の羽を生やした少女が、楽し気に舞い
   踊っている。
ケイ「……あれは!?」
   少女が、ケイの元に近づいてくる。
少女「貴方の」
ケイ「えっ?」
少女「貴方の一番大事なものは何?」
ケイ「一番……大事なもの?」
少女「そう、一番大事なもの」
ケイ「それは……プリズムショー」
少女「プリズムショー?」
ケイ「私はスタァたちが心躍らせ、華麗にリ
 ンクを舞うプリズムショーが好き。スタァ
 たちが心をときめかせ、空へと飛び立つプ
 リズムジャンプが好き。そんな心のプリズ
 ムを、穢れた魑魅魍魎の手から解放したい。
 それが今の私の夢」
少女「プリズムショーは心の煌めき、プリズ
 ムジャンプは心の飛躍」
ケイ「……」
少女「貴方のその夢を想う気持ちだけを込め
 て、空高く跳ぶのよ。そうすれば貴方の体
 は自然に、オーロラの輝きによって導かれ
 るわ」
ケイ「……オーロラの……輝き?」
   少女、クスリと笑う。
   少女、振り返り、ケイの元から去って
   いく。
ケイ「ちょっと待って……!?」
   少女の行く先に虹色の橋がかかり、先
   にドアが現れる。
   ケイ、驚きの表情。
   少女、虹色の橋を渡り、開いたドアを
   くぐって去っていく。ドアが閉まり、
   虹の橋と共に消える。
   空のオーロラは消え、代わりに快晴と
   なる。
   湖上に独り立ち尽くすケイ。
ケイ「今のは……」
   ケイ、ふと下を向くと、タロットカー
   ドが一枚落ちている。
   示されたカードは、天使の描かれた「審
   判」。
ケイ「……エンジェル!」

○ビッグスタジアム・全景
   大きなスタジアム。

○同・入口
   「プリズムクイーンカップ」の看板。

○同・リンク・中
   大勢の観客で満員である。
   
○同・廊下・中
   以蔵、廊下で煙草を吸っている。
   廊下のドアが開き、ケイが現れる。
   以蔵、ニタニタと笑いながら、
以蔵「おう、久しぶりだな」
   ケイ、以蔵を冷たく一瞥し、以蔵の横
   を通り過ぎる。
   以蔵、ケイの背中に向かって・
以蔵「十分に練習はできたかなぁ?」
   ケイ、振り返り、不敵に微笑む。
   以蔵、怪訝な表情。
   ケイ、奥へと去っていく。
以蔵(M)「練習場からは完全に締め出してや
 った筈だが、どこかで練習場所にありつけ
 たのか……?まあいい、こっちは審判団の
 買収の手筈も済んでいる、万に一つ、あい
 つの勝ちはない。クックック」

○同・リンク・中
実況の声「本年度プリズムクイーンカップ、
 最後の滑走者は、優勝候補との呼び声も高
 い、ケイ選手です」
解説の声「しかしですね、情報によりますと、
 ケイ選手はまともに練習場にも姿を現さな
 かったという話もあります」
実況の声「そうなんですか。練習不足が懸念
 されますが、さあ、ケイ選手、どんな滑り
 を見せてくれるのか、注目です」
   ケイ、袖口から現れ、リンク中央に至
   る。
   音楽が流れ出し、ケイ、激しく踊り出
   す。
   リンク袖口でタバコを持ち、ケイをニ
   ヤニヤと眺める以蔵。

○(回想)屈斜路湖
少女「貴方のその夢を想う気持ちだけを込め
 て、空高く跳ぶのよ。そうすれば貴方の体
 は自然に、オーロラの輝きによって導かれ
 るわ」

○ビッグスタジアム・リンク・中
   ケイの体がZONEの輝きに包まれる。
ケイ(M)「プリズムジャンプは心の飛躍。極
 限まで心を研ぎ澄まし、一番大切なものだ
 けを映し出す……今の私に出来ることは、そ
 れだけ。だからこそ、このジャンプに今ま
 での全人生を注ぎ込む!プリズムショー界
 の輝かしい未来へと、祈りを込めて……!」
   ケイ、二段ジャンプ。
ケイ「オーロラ……」
   ケイの体が空高く浮かび上がっていく。
ケイ「ライジング!」
   ケイが天空で体を広げると、瞬く間に
   オーロラの輝きが会場全体を包み込
   んでいく。
   巨大なオーロラの煌めき、米粒のよう
   に小さく映るケイ。
   煌めきは勢いを増し、ハレーションす
   る。
   ケイ、ジャンプを終え、ゆっくりと着
   地する。
   静まり返る観客席。
   以蔵、ポカンと口を開け、煙草を手から
   ポロリと落とす。
実況の声「……」
解説の声「……」
   突如、観客席がドッと物凄い歓声で湧
   く。
実況の声「素晴らしい!素晴らしい!」
解説の声「何というものを見せてくれたんで
 しょうか!?」
実況の声「ケイ選手、驚愕のジャンプです!
 さあ、得点の方は!?」
   電光掲示板は10000カラットを示
   す。
実況の声「フルマーク!史上初の満点です!」
   ケイ、驚きの表情。
以蔵「はあ!?」
解説の声「これは納得ですね」
実況の声「本年度プリズムクイーンカップ、
 優勝者はケイ選手に決まりました!」

○柳宅・全景
   質素な雰囲気の一階建て一軒家。

○同・中
   柳ゆきえと柳一二三がテレビの前で喜
   びあっている。
ゆきえ「おめでとうございます、ケイさん!」

○ビッグスタジアム・中
   以蔵、慌てて、審査員席へと駆け寄る。
以蔵「あの話はどうなったんですか!?」
審査委員長「これほと凄いものを見せられて
 しまっては、得点を操作するなど無理だ」
以蔵「しかし……!」
審査員1「圧倒的過ぎる。ここで八百長など
 がバレたら、世間が何を言うか分からない」
審査員2「私は目が覚めた、もう貴様らプロ
 ダクションの言いなりにはならんぞ」
以蔵「……」
審査委員長「とにかく、彼女をプリズムショ
 ー界に君臨させておいた方が、我々プリズ
 ムショー協会としても得策ということだ、
 諦めたまえ」
以蔵「……くそっ!」
   以蔵、苦々しい顔で去っていく。
以蔵(M)「ケイめ、覚えてろよ……!」
    × × ×
   表彰台で観客に手を振る、笑顔のケイ。
ケイ(M)「私が変えていってみせる。プリズ
 ムショー界の未来を……!」 


【エピローグ】
○プリズム空間
ケイ「……という事よ、幼き少女」
らぁら「な、何だか難しかったけど……大変
 なんですね」
ケイ「ピュアーな心の煌めきを胸に、踊り、
 ジャンプする。そうして、アスリートとし
 て公正にしのぎを削り合うのが、プリズム
 スタァ本来のあるべき姿」
らぁら「はあ……」
ケイ「しかし、しばしばプリズムショー界を
 己の思うがままに支配しようとする輩が現
 れる。そうした悪魔たちに屈することなく、
 まがい物でない本物の夢を、人々に見せ続
 けていく……それもまた、プリズムスタァ
 の役目なのよ」
らぁら「うーん、なるほど、分からないけど、
 良くわかりました!」
あいら「ただ、誰かも言っていたけれど、『心
 に煌めきを持っていない人は居ない』」
みあ「アイドルもプリズムスタァも同じで、
 自分のハートを磨き続けることが、大事な
 んだよ!」
らぁら「はい!私頑張ります!」
なる「それじゃあ、今日のレッスンのまとめ
 は……」
一同「『いつも心に煌めきを』!」
らぁら「ありがとうございます!これでまた
 一つ、ハートが輝くヒントを手に入れまし
 た。らぁらは煌めきのセンター!次回のレ
 ッスンでは、どんなヒントが貰えるのかな、
 楽しみ!」

                  <了>









【読まなくてもいい・妄想的・あとがき】
 この本では、アニメ「プリティーリズム・オーロラドリームに登場するケイの過去の話(オーロラライジング誕生の話)を、オリキャラ足し完全二次創作シナリオ(脚本)で、勝手にでっち上げてみました。如何でしたでしょうか……単位ぐらいは来てくれると有難いです。
 そもそもなぜこのシナリオを書こうと思ったのかというと、ツイッターでヒキヒキさん(@hikihikihiking)という方が「(ケイの言う)エンジェル=プリズムの使者」説を提唱なさっていて、それになるほどなと思った所が始まりです。
https://twitter.com/hikihikihiking/status/813746970456182784
 で、「ケイがプリズムの使者と出会い、オーロラライジングを完成させる話」を勝手に書いちゃおうかなと思ったワケですが、何せあのケイなので、精神的に葛藤したりする姿が全く見えてきませんでした。欽太郎と出会った時点で皇帝演舞は飛んでるわオーロラライジング飛んじゃうわで、どんだけ鋼の精神だよってなる。「極限まで心を漂泊して本当に大切なものだけをつかみ取る」それがオーロラライジングな筈じゃなかったの??と。
という訳で、ケイには葛藤は似合わない、じゃあ障害に立ち向かうキャラクターにしようと思いまして。それで、ケイの思想について思いをはせてみました。丁度、阿世知欽太郎がプリズムショーをエンターテイメントとして捉えていたので、逆にケイはプリズムショーを競技として、プリズムスタァを純粋なアスリートとして捉えていたのでは?と考えると、割とキャラにマッチしているような気がしたので、そういう形にしました。
 プリズムショーの競技化、プリズムスタァのアスリート化の障害となるのが、プリズムショーを単純に見世物と同列とだけ見ている勢力で、ケイはそれと戦うことになる、という事にしました。
 そうすると、ケイがオーロラライジングを跳ぶ上で心に抱いたものは何かというものを考えた場合、それは、恐らく「プリズムショーそのものに対する、純粋かつ熾烈な愛情」であろう、という事になりました。
 あと、別に年表を作って添付しておりますが、それを辿るとケイが活動していたのは恐らく1960~70年代で、また、DMF27話に登場した老婦人ゆきえがプリズムスタァとして活動し、柳一二三と結婚して引退したのがDMF時間から50年前、1965年なので、「もしかしたらケイとゆきえは邂逅していたかもしれない」という妄想が頭をよぎりまして、今回のシナリオにえいやっと盛り込んでしまいました。プリズムスタァは昔はアイドルとしての側面も強く、ゆきえのように、恋人がいるというだけで引退させられたり、そなたのように結婚を隠さなければいけなかったりした訳で……ケイがそれをどう思っていたかは、想像に難くないな、と思いました。
 あと、どうでもいいですが、屈斜路湖で実際にスケートをしている動画がユーチューブに上がっていたので、それを参考にしました(オーロラは見えないですけど)。
 とまあこんな感じで、妄想に妄想を重ねていって、お蔭様でシナリオが一本できました。また何かパッと思い浮かんだら、突発的に書いてみようかと思います。

                          2017.1.6 eifonen


(プリティーリズムAD,DMF時系列)


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