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ポメラの話

 大怪獣ポメラ(挨拶)。

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 えー、ポメラの話をします。
 ポメラとは!
 ポケットイターの略である!
 何がやねんという感じかもしれないので説明しておきますと、オフィス用品や家庭用文具を販売する会社であるところの「キングジム」から発売されている、テキストエディット専用機みたいなもののことを指します。古い人には「プリント機能のないワープロ」と言えばわかりやすいかもしれませんね。本当、テキストを打つことしか出来ません。パソコンとは別物です。
 思い返せば2008年11月。当時、まだ20歳になったかどうかという頃、僕は高校卒業した頃に親に買ってもらった展示品のPCを使って、狂ったように小説を書いておりました。当時の僕は本当に狂っていたので、1週間に1作とか書いて、狂ったように応募しまくっておりました(それが実益を兼ねたかというと全くそうではありませんでしたが)。
 もうとにかく打鍵狂というか、テキストを書くのが好きで好きで仕方なかったんですね。まあそれは今もあんまり変わりませんが、「小説を書く」というよりも「文章を書く」ということが好きすぎて、なんでしょう……本末転倒感ありますけれども、「良いキーボードを手に入れよう」とか「モバイル端末で外にいても小説を書こう」とか、なんかそんな精神状態でした。あと、丁度ガラケーからスマホへの移行期間というか、黎明期? みたいな時代だったので、いち早くスマホに乗り換えたのも記憶しております。余談ですが、当時僕が買ったスマホは以下でした。「QWERTYキーボードが搭載されているスライド式且つタッチパネル式のスマートフォン! こりゃ打鍵が捗っちゃうね!」みたいな感じだったのを記憶しております。クソ高かったのも記憶しております。

 正直申し上げて、超使いにくかったし、タッチパネルも感圧式で反応悪かったし、電池の持ちも最高に悪かったです。いいとこなかったです。
 当然すぐにiPhoneに鞍替えするんですが。
 ともかく、そんな感じで打鍵狂であった僕のこと、キングジムから「ポメラDM10」が発売されるというニュースを知った時は飛びつきました。キングジム公式に商品紹介ページが残っていたので、興味のある方は是非見てください。このギミックを!

 可動式というか、なんでしょう、男心をくすぐる変形ギミックのついた打鍵マシーンが爆誕したのです。その瞬間にもう、「これは打鍵をするためだけに生まれたマシーンだ! 俺のだ!」みたいな気持ちになって、即買いしました。実際、どれくらい小説を書いたのかというと……どれくらい書いたんだろう? 長編を3本くらい書いた記憶がありますので、少なくとも50万字くらいはテキストを打っていたものと思われます。と言っても、本体メモリへ記録出来る総文字量は48,000文字、1ファイルあたりの上限は8,000文字と、長編小説の執筆には向かない仕様でした。でもまあ、ファイル分割をするとか、章を分けるとかすれば全然書けたので、あんまり気にせず書いていました。それよりも何よりも、「出先でふとした瞬間に小説が書けるなんてすげー!」ってめちゃくちゃ思っていました。かわいいな、僕。

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 でまあ、21歳くらいか? ポメラ買って1年後くらいに、なんらかの小説賞に引っかかって、いくらかの賞金をいただいたことがあって。その賞金で、僕はMacBookProを買ったんですね、確か。最初はMacMiniを買った気がするんですが、やっぱりノーパソの方が良いだろってことで、MacBookProに乗り換えたのです。で、そうなってくると「もうMacBookでいいじゃん」みたいな気持ちになって、あんまりポメラを使わなくなってしまって……まあでもポメラという製品が好きだから、DM20とか、DM5とか、後継機が出る度にチェックしては、無駄に買っていたりしました。それらで大した打鍵をしていなかったので、本当に無駄だったと言えます。無駄な衝動買いが好きだね。
 その後、DM25とか、DM100くらいになって行くにつれて……ポメラは「メモ用製品」から、割と「ライター向けの打鍵専用機」に変貌して行くんですよね。最大の魅力であった「キーボードの変形ガジェット」という要素を捨てて、ただの折りたたみ式の電子辞書みたいに成り下がります。もちろん、縦書きが出来るようになったり、バックライトがついたり、キーピッチが広くなったり、様々な進化を遂げるわけですけれども、僕は次第に、「ポメラ、いつからお前、そんなにつまらないやつになったんだ……?」みたいな気持ちになって、最新情報すら追わない日々が続きました。

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 暗い話なので軽く流しますが、高校卒業後、大学も行かずに「作家になるんや!」と意気込んでいた僕なんですが、なんの将来設計もなくやっていたわけじゃなくて、両親とかとこう……「○歳まで頑張るみたいな指標を決めた方がいいかもね」みたいなことをやんわり会話していて、僕の中ではそれが「25歳」だったんですよ。なので、「25歳までに、多少文章で稼げてたとしても、食っていけるレベルになっていなかったら潔く辞めよう」みたいな感じで小説を書いていたんです。で、実際に25歳になった頃、まあいくらかお金はもらえていたけれど、一般的なレベルではないし、こりゃ向いてねえやってことで、辞めたんです。
 で、なんかプログラムの勉強とか初めて就職して、33歳の今はふつーに社会人として仕事をしているわけですが……。
 ほら!
 めでたく32歳に実名で出版したじゃないですか!
 社会人として生きつつ、趣味として小説を書いて……みたいな生活をしていて、ありがたいことに出版させていただいた。で、仕事もほんのり落ち着いてきたり、実生活も落ち着いてきた感じがあったので、仕事を辞めるわけじゃないけれど、もうちょっと小説もきちんとやろ〜みたいな気持ちになったんですね、去年の中頃に。

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 で、ポメラを買おうと。
 急に思い立ったんですよ。
 DM10から始まったポメラも、今やDM200まで進化していまして。

 見た目も完全に電子辞書ですし、当時の格好よさとは無縁になってきているんですけれども、機能とかしっかり調べてみるとかなり使い勝手が良さそうで。縦書き実装、バックライト搭載、MacやiPhoneとの同期も手軽になって、ATOKも進化していて、打鍵専用マシーンとしては、もうこの上ないレベルになっているっぽい。画面もでかいのに越したことはないし、フォントも綺麗。無線LANも搭載していて、連携も楽。
 そんなわけで、約半年? ポメラを使ってみた感想を書いてみようと思います(前置きが長すぎる)。

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購入当時に書いた謎の叫び

 結論から言うと、めちゃくちゃ良い買い物だった。
 僕の打鍵設備って、現実的に利用しているものだと「MacBookAir」と「iMac+Realforce」と「iPhone」と「ポメラDM200」があるんですけれども、「休日とかにがっつり打鍵する」という状況においては、ポメラの右に出るものはないと言っていいくらい、めちゃくちゃ良いです。
 キーボードがJIS配列なので、Macから移行した瞬間にだけちょっと違和感があるんですけれども、仕事中は普通にJIS配列のキーボードで仕事しているのであんまり関係ないな、という感じです。段組したり、レイアウトを凝って小説を書くとなると、画面がでかいiMacで作業するのが一番なんですけれども、単に文章を打ち込む、集中してただひたすらに小説を書く、という作業をする際は、マジでポメラ最強という状態に、今はなっています。
 昔から感覚的な表現としてよく使うのが、テキストの打ち込み——つまり、ここで言う「ポメラでの打鍵」というのは、本当に感覚的な話なんですけれど、僕にとっては「木彫り」みたいな作業なんですよ。なんか……木材を買って来て、それをただ削る作業。小説を書く作業ってのは「無から有を生み出す作業」みたいな感じなんですけれど、僕の感覚的には「大気中に漂っている『言葉』を整形して、人語に訳す」というか……なんでしょうね、あんまり意味がわからないかもしれません。感覚的な話です。「言葉」を組み合わせるというよりは、「言葉」から不要な「言葉」を排除する作業に近い感じ。
 何言ってるんだろう。
 感覚的には「引き算」する作業なんですよ。特に最近は真面目にプロット的なものを作ってから打鍵することが増えたので、「大きな木片」というプロットがあって、そこから不要なものを排除する。で、その排除されたものが「木彫りの仏像」的な感じで出来上がる。それが僕が小説を書くときに最初に出来る、草稿というか、初稿というか、まあそんな感じなんです。
 で、そういう作業をするときはやっぱり集中したい。集中したいときは、MacとかiPhoneみたいなものよりも、ポメラみたいに打鍵に特化した製品を使う方がやりやすいわけで。そんな感じもあるので、僕みたいな打鍵馬鹿、あるいは漆黒の打鍵師には、ポメラという機械は非常に相性が良いのです。

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 以前、「作業机画像大好きおじさんの夕べ」という記事で「Macポチった」って話をしたんですけれども、上記したように「ポメラが強すぎる」という知見を得てしまったので、MacBookAirの強みが半減してしまった。そもそも、MacBookAirでやることって打鍵作業がほとんどだったので、ポメラがそこに上手い具合に滑り込んでくれた感じがあるんですね。
 Twitterとかではあんまり叫ばなくなってしまっていますけれども、まあ「買ったギターが超弾きやすい」とか「リピってる食材が毎日美味い」とかみたいな感じで、わざわざつぶやく必要もないくらい、生活に溶け込んでいます。とにかくもう、書きやすい。書きやすいし、バッテリーが長持ちするし、同期が楽。
 ポメラの同期には「ポメラSync」と「アップロード」と「SDカードでのデータ移管」という手段があるんですけれども、僕はもっぱら「アップロード」を利用しています。『ポメラDM200』は無線LANを搭載しているので、作成したファイルをメールで飛ばせるんですね。とは言えまあ、結構「ずーっとポメラの中で書き続けている」状態が続いているので、ほとんど同期することってないんですが、SDカードの抜き差しみたいな無駄作業が減ったので、個人的な超絶喜ばしいです。

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 色々な文章をポメラで書いた上で行き着いたフォーマットは、「原稿用紙的な見た目でツールバーを消し、禁則ぶら下げ処理」です。原稿用紙と言っても、ページ単位で別れてはいなくて、左側に向かって延々とマス目が続く巻物みたいな感じです。新規ファイルを開いた瞬間はこんな感じ。

これが意外と使いやすい

 あとはF10キーを押すと現在の文字数が確認出来るのが超絶便利です。
 一段落した時とかにF10を押して「2,000文字」とか見えると、「そろそろ区切っても良いかなあ」みたいな気持ちになります。そのくらい打鍵に没頭出来ると言いますか、まあとにかく使っていて気持ち良い機械です。こんな感じで、プロパティを1キーで表示出来るので、ふとした瞬間にどんくらい書いたのかが確認出来て便利。

短編小説書くくらいだと非常に便利

 2022年に入ってから、あんまり酒飲まなくなったとか、外に出なくなったとか、まあ年末年始のイベントごとが終わって割と暇になったりとかがあって、最近は暇さえあればずーっと打鍵をしている気がします。また別の日記で書こうと思いますけれども、『HAPPY PEOPLE』という、ミニチュア写真+短編小説というコンテンツをやっていて、79ヶ月もの沈黙を破ってようやく復活したんですけれども、これの小説も全部ポメラで書いています。3,000字〜5,000字くらいの短編小説なので、推敲まで全部ポメラでやっています。まあ縦書きから横書きになるので、noteに公開する時にちょっとした修正は加えますが、ほぼ全てポメラで完結するので、20歳前後の頃みたいな、「あ〜〜打鍵楽しいな〜〜」状態が戻りつつあります。
 要はまあ……20歳前後の頃って、僕の世界って「本屋とパソコン」だったんですよ。もちろん、友人関係だったり、ネット上の交流とかもあったんですけれども、それって今みたいに24時間365日フルタイムで動いてるものじゃなかったので、なんて言うんだろう……簡単に逃げられたんですよ。パソコンさえ付けなければ、すぐに自分の世界に逃避出来た。
 でも、今ってスマホは24365で稼働していて、パソコンもほぼずっと起動しっぱなしで、仕事もパソコンで、逃避するのが難しい感じがあって。そんな時、もちろん完全に逃避出来るわけじゃないんですけれど、ポメラを開いて「小説書くかあ」と向き直った瞬間、ちょっとだけ逃げられるんですね。小説の世界に逃避して、「あ〜〜打鍵楽しいな〜〜」という、謎の非現実感に浸れる。僕の集中力がないせいじゃないか、と言われればそれまでなんですけれども、無音で、孤独で、邪魔のない世界で打鍵音だけが響いて、物語が創造されていくだけの環境が、すごく心地良いのです。

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 まあそんな感じの、「ポメラ使ってるよ」というお話でした。
 逆に! 逆に言えばですね、めちゃくちゃ小説書いてる感じなのに、「まだ書き途中だから」という理由で『カクヨム』とかに軽率に公開しなくなった気がします。
 カクヨムに最後に投稿したのは2021年9月4日なんですけれども、Twitterの過去ログとか調べて見たら、どうやらカクヨムに最後の投稿をした翌日に「ポメラDM200」を買っていて、それ以降なーんにもしていないみたいです。ポメラの内部にばかり小説が溜まっているから、「書けた! 投稿しよう!」みたいな感じじゃなく、「書けた! だいぶ溜まってきたぞ……ムフフ」って感じになっているっぽいです。ポメラの中に俺の小説の全てがあるんだ……! みたいな状態と申しますか。これ、バックアップ取ってないからポメラ壊れたら終わるな、と今気付いたので、早めにバックアップしておこうと思いました。
 まーでもなんか……ハピポのおかげでポメラから吸い出す、という作業を結構頻繁にやるようになって小慣れてきたので、ある程度書き溜まった小説を随時放出出来れば良いなとか、そんなことをぼんやりと考えております。
 趣味で書いてねえで仕事としてやれ、という感じもある気がしますが……まあ、ぼちぼち、なんか、やれればいいかな、と思っております。
 プログラマと作家という二足のわらじをですね、頑張って履き続けられればと……考えてみると、キーボード大好きですね、僕。まあ、今思えばプログラマを目指したのも、「打鍵するのは得意だし」くらいの動機だった気もするな……。
 そんなこんなで、「ポメラと打鍵事情」でした。
 お前、日記に書くこと、20歳前後から変わってないな。
 まあ変わらない良さもあるということで。
 以上! さようなら!


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