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季語六角成分図「寒海苔」

俳句ポスト 第254回 2020年11月12日週の兼題。

季語六角成分図「寒海苔」より。
(視覚)緑がかった黒が濃く艶やか。海、波、岩場、海苔粗朶、舟など収穫に関する風景。干す、詰める、調理の様子(後半は「海苔掻き(初春)」との詠み分けに注意)。
(嗅覚)海苔の香が強い。磯、潮の香。
(聴覚)冬の高い風音。岩場を打つ波の音。
(触覚)若いうちに収穫されるため、柔らかい。
(味覚)塩味、渋味、香ばしさ。口溶けがよい。
(連想力)熨斗、水引、お歳暮のやり取り。暮れのはなやぎ、忙しなさ。寒中の労働。北海道、有明海。
★味覚、視覚が強いが、触覚、嗅覚もあり突出した感覚はないという印象。季語の成り立ちとしては昨年の寒椿に似ており、元々は春の季語であるものを「寒」を付け晩冬の季語としている。
★今回、寒海苔の正体が二点三点し、大変混乱しました…最初は寒中に岩場で収穫する岩海苔のイメージでしたが、私の持つ角川歳時記では生活季語で、新海苔の傍題でした。一方、俳句ポストの底本である講談社大歳時記では植物季語とのこと。ここで大混乱。
★まとめると、海苔(岩海苔も含む)のうち、冬に収穫され出回るもの(生活季語)で、収穫される前の状態も含む(植物季語)。
新海苔はお歳暮の定番として暮の時期のはなやぎを体現するものであり、艶や色の濃さなど品質の高さを賛美する側面が強いのに対し、寒海苔は冬の岩海苔掻きに代表される極寒の海の厳しさ、労働のつらさへの思いが含まれている、という違いになるかと思います。寒海苔が新海苔に近い形で使われている例句もあり、はっきり分かれているわけではないと思いますが、寒椿と同じく「寒」の一文字をいかに担保しているかが句作のポイントとなりそうです。

季語六角成分図に関する注意事項


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