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【映画雑記】ジョン・カーペンター版「光る眼」/ただのリメイクに終わらないカーペンターの手腕に唸る。

 中古のDVDで我慢していたジョン・カーペンター(JC)版「光る眼」がついにHDリマスターされてブルーレイでリリース、昨年末に告知されてポチって以来待ちに待っておった。

 1960年の古典ホラー「未知空間の恐怖 光る眼」をJCがリメイクし、1995年に公開した作品。原作はジョン・ウィンダムの「呪われた村」。主演はこの映画の直後に落馬事故で全身不随になってしまったクリストファー・リーヴマーク・ハミルも端役で出演。いまは何してるかわかんないマイケル・パレなんかも出ている。公開当時は主力映画雑誌や、「宇宙船」のようなマニア誌でさえ、スーパーマンとルーク・スカイウォーカーがついにB級映画にしか出られなくなったというような言い草の、どこかナメた扱いをしていた記憶がある。

 しかし、そこは我らがJC。そんな単純な話なわけないのであります。

 ある日、ある田舎町ですべての生命が失神状態となり、数時間後にみな意識を取り戻す。ところがその後、不可解にも処女を含む10人の女性が同時に妊娠。5人の男児と4人の女児が産まれ、1人は死産であった。月日が流れ、成長した子どもたち。彼らは知能は高いが常に無表情で全く感情を見せない。そのうち親たちの心配をよそに、集団で行動するようになる。そして、徐々にその不気味な能力を発揮し始めるのである。

 同じく古典ホラーのリメイクであるJCの「遊星からの物体X」や、「SF/ボディスナッチャー」にも通ずる静かに進行する侵略SFものである。基本プロットはオリジナル版に忠実なのだが、1人は死産になるという設定はJC版独自の改変。彼らは生殖のためなのか、男女一対のカップルになるように生まれていた。そして1人が死産になった。強固な目的とひとつの精神のもとに生きる子どもたちの中で、余ってしまった1人がはぐれものになってしまう。非常にうまい展開。この改変がオリジナル版にはない「共感」、「感情」とは?という起伏をもたらしている。さらにダメ押しで、いかにもカーペンターらしい独自のエピローグが加わることでより深い余韻が残る映画となった。自分はこの短いエピローグがとても好きで、映画のテーマが深まったと思うし、JC好きとしてもしびれてしまうシビレ節なんである。

 今回のリマスター版は、テレビ放送時とビデオリリース時の二種類の日本語吹替が収録されている。テレビ版のクリストファー・リーヴは「スーパーマン」以来お約束のささきいさお。ビデオ版は池田秀一であった。池田氏といえば昨今はシャア少佐の雰囲気をアテ書きされた高飛車な雰囲気の役ばかりこなしている印象だが、クリストファー・リーヴが時折見せる神経質な芝居にうまくあっていて物凄くよかった。ささきいさお氏も負けじと「スーパーマン」とは違う貫禄を見せつけていて、どちらも甲乙付けがたい名演となっています。

 というわけで、一般的な映画好きには「買う」対象にはならなそうだけど、強くおすすめいたします。

いや!買って、見るべし。

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