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ミュージカルを語る その1

今までは「ホラー映画を語る」をやってきたが、
同時進行で「ミュージカルを語る」もやっていきたいと思う。えっ、なにその並び!?と思うが、一番思っているのは、本人である。

第1回はお気に入りの作品から始める

WiCKED -もう一つのオズの物語-

初演:2003年(日本:2006年、劇団四季)
演出:ジョー・マンテロ
作詞,作曲:スティーブン・シュワルツ
脚本:ウィニー・ホルツマン
原作:グレゴリー・マグワイア「オズの魔女記」

受賞歴:トニー賞 
      ミュージカル装置デザイン賞
      ミュージカル衣装デザイン賞
      主演女優賞(イディナ・メンゼル)
   ドラマ・デスク・アワード
      ミュージカル作品賞
      ミュージカル脚本賞
      ミュージカル演出賞
      ミュージカル衣装デザイン賞
      ミュージカル作詞賞
      ミュージカル装置デザイン賞
   グラミー賞
      最優秀ミュージカルキャストアルバム賞
                   その他
~ストーリー~
 話は西の悪い魔女が死んだところから始まる。オズの国民は善い魔女から「悪い魔女は死んだ」ということを聞かされ喜びに浸るが、国民のひとりから「あなたが悪い魔女と知り合いだったのは本当か」と訪ねられ、「はい」と答える。
 話は遡り、シズ大学に二人の少女が入学する。ひとりはとてもキュートでみんなから愛される人気者・ガリンダ。もうひとりは全身緑色の肌をもつ少女・エルファバ。エルファバをみた生徒たちは避けたり、気を失ったりと大慌て。エルファバがこの学校に入学したのは、妹のネッサローズが足が悪く車椅子生活のため、そのお世話係として共に入学したのだ。しかし、シズ大学の校長であるマダム・モリブルにはエルファバのことが知らされておらずネッサを自分の部屋で過ごすよう決めていた。そして、エルファバはひょんなことからガリンダと同室になってしまったのである。反発した二人。そして怒りが爆発したエルファバが叫んだ瞬間、魔法がうまれ皆驚いてしまう。被害にあったネッサに謝るも、これをみていたマダム・モリブルは大喜び。魔法の才能に気付き、彼女を「オズの魔法使い」の側近になるように特別の授業を受けるよう伝える。
 その他の授業もはじまり、唯一の動物の先生であるディラモンド教授が登壇するが、黒板の裏には「動物はしゃべるな!」と大きくかかれ、ショックを受けたディラモンド教授は生徒たちを追っ払う。そこに残ったエルファバはディラモンド教授から、動物と人が仲良く暮らすオズの国の現状について彼女に語る。
 そんなシズ大学に転校生がやってくる。それはウィンキー国の王子・フィエロである。彼は堕落さることが好きで頭も空っぽ。入学早々パーティーを始め出す。そんななか、マンチキンの小人・ボックはガリンダにパートナーを申し込むが、彼女にうまくかわされて、ネッサローズとパートナーを組むことになってしまった。それを知らずにガリンダのおかげでボックとパートナーになることを喜ぶエルファバは彼女にお礼を言いにいくが、そのときガリンダは祖母からのプレゼントである時代遅れの「黒いとんがり帽子」の処理に困り、仲間に言われエルファバに色々と言い、嫌がらせのつもりでプレゼントをする。人からプレゼントをもらったことのないエルファバは嬉しくて、そのお礼にガリンダも魔法の授業を受けさせるようマダム・モリブルに頼み込む。それを知ったガリンダは罪悪感も感じ、とんがり帽子をかぶってみんなに笑われるエルファバと共に踊り、それから仲良くなり友情を深めていく。そして、お互いを「ガリンダ」「エルフィ」と呼びあう
 その翌日、ディラモンド教授の授業がはじまるが、オズ当局により、彼は追放されてしまう。そして、当局の人は檻にいれたライオンをみなにみせ、動物はこれから檻に入れて言葉も習うことはないと伝える。怒るエルファバはフィエロを除いたクラスみんな(ガリンダは欠席)に魔法をかけ、ライオンを盗み、解放する。そのとき、二人の心になにかが動くも、フィエロは動揺し立ち去ってしまう。
 エルファバを見つけたマダム・モリブルは、オズの魔法使いから会いたいと手紙がきたことを伝える。そして、出発するエルファバは、フィエロのことでギクシャクし、ディラモンドへの追悼を込めて彼がいい間違えていたグリンダに改名することを宣言したあと、エルファバと共にオズの魔法使いに会いに行く。
 エメラルド・シティは全部が緑色でエルファバにとっては夢の世界。そして、そこで出会ったオズの魔法使いはてだの人間であった。そして、動物の事件の黒幕でもあったのだ。エルファバを気に入った魔法使いは彼女に魔法の書を渡す。それを読むと、そばにいた猿のチステリーから羽がはえたのだ。黒幕であることと、自分を協力者にしようとしていることに気づいたエルファバは彼の手をはねのけ高い塔へと逃げ出す。
 彼女を追ったグリンダは、ここでは幸せになれるのとエルファバを説得しつつ口論になるが、そのとき、ある声が響き渡る。それはマダム・モリブルの声であり、エルファバのことで、功績が称えられ、オズの国の広報官にまでのぼりつめたのだ。そして、モリブルは民衆に「彼女こそ邪悪な魔女、ウィキッド」だと伝える。ショックを受けたエルファバは魔法使いと戦うために魔法をかけたホウキに乗って西の空高く飛び、グリンダはここに残ると伝え、エルファバと別れを告げる。
 そして、民衆から愛される善い魔女となったグリンダと民衆の敵である西の悪い魔女となったエルファバは、名作「オズの魔法使い」の裏側でどんな人生を歩むのか

 ごめんなさい。ストーリーが長すぎました。一幕だけでこの量に。。。反省。
 なぜ初回に「ウィキッド」を選んだかというと、率直に言ってしまえば「一番好きなミュージカルだから」である。始めるならまずはウィキッドだと思い、ここからスタートさせていく。

 ウィキッドの魅力としては、ストーリー、音楽、照明、衣装、全てにおいて完璧であるということである。ストーリーは分かりやすく、「オズの魔法使い」とリンクしているので、「オズの魔法使い」をみたあとに見ると、すべての秘密が明かになり面白い。例題をあげれば
・なぜドロシーは竜巻に乗ってオズの国へやってきたのか
・かかし、ブリキ、ライオンの誕生の秘密
・なぜ悪い魔女は死んだのか
等、伏線が回収されてすべてにつながるので面白い。
 「オズの魔法使いの序章」といわれているが、細かく言えば、一幕は「序章」で二幕は「舞台裏」である。
 そして、ストーリーにおいて、世界観がファンタジックでありつつ物語は政治的な部分もあり、ブロードウェイで「8to80」と言う言葉があるように8歳の子どもから80歳の大人まで楽しめるないようになっている。 
 余談だが、ストーリーの補足として、劇団四季版ではガリンダのくだりはなく、最初からグリンダに設定され、ディラモンドの追悼で改名する場面では「子どもができたらディラモンドという名前にする」という変更になっている。

 ファンタジックな部分としては舞台装置と衣装がおおきな役割をしている。このウィキッドの魅力の一つとしてあげられるのが「暗転がない」ということである。暗転がなく、歌ったり踊ったりしながら舞台転換がされていく。実際、全くないわけでもないが、それでも10秒ほど暗くなりすぐに次の物語にはいる。そのおかげで、観客は現実世界に戻ることなく、最後までこの物語の世界に入り浸ることができる。飽きさせないための策略であり、それは子どもや初心者にはありがたい仕掛けであると考える。
 そして、もう一つの魅力が「ファンタジーな衣装」である。ファンタジーを表現するために、シズ大学やエメラルドシティにでてくる人たちの服は「左右非対称」になっているのだ。ブレザーの襟が片方はギザギザになっているが、もう片方が丸みを帯びていたり、スカートが斜めになっていたりそれぞれにおおきな特徴があり、じっくりと見てしまう。ちなみに、私のお気に入りは、二幕のグリンダが着るドレスで、片方は長袖で、もう片方は袖がないスタイルになっている。このように特徴をみつけて何回も通うのも虜になる要因かもしれない。

 音楽はスティーブン・シュワルツが担当しているが、彼は「ピピン」などの音楽の他に「ノートルダムの鐘」や「ポカホンタス」の音楽を担当したり「リトルマーメイド」等の作曲に携わったりしている。そのためか、どこかディズニー感を感じさせるようなメロディだが、そのぶん聴きやすさがあり、世界観に引き込まれるメロディになっている。また、初演にてエルファバを演じていたのは、「アナと雪の女王」のエルサを担当したイディナ・メンゼルであり、うたのなかには彼女の声にあわせたメロディになっている部分もある。そのためか、1オクターブ半を地声で歌うようになっているのだそう。エルファバの歌はいつも思うが本当に音のふり幅が大きくて難しい。さすがいイディナである。
 
 成功するミュージカルの特徴として、いつも言われているのが、「音楽が独立してもヒットする」ということであり、「ウィキッド」も音楽だけでも大成功している。なかでも、グリンダとエルファバの別れのシーンで歌う「For Good」はアメリカで卒業式の定番ソングになっているという。

 Who can say if I've been charged for the better?
I do believe I have been charged for the better.
And because I knew you. Because I knew you.
Because I knew you.
I have been charged for good.


「もっと良い結果に変われたのではと言われるかもしれないけど、
私は良い方向に変われたと信じている
だって、あなたがいたから私は良い方向に変わることができたのだと知っている」

この歌詞を聴いたときは、思わず泣いてしまった。日本でも流行ればいいのに...。

 途中でも言ったが、このミュージカルは始めての人にもおすすめである。ここからスタートしてもいいかもしれないが、残念ながら現在、劇団四季で上演はされていない。
はやく再演することを私は願っている。

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