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アンコウはなぜ吊るし切りにするのか

加藤楸邨がアンコウを詠んだ有名な俳句があります。

鮟鱇の 骨まで凍てて ぶちきらる

「ぶちきらる」という荒々しい表現が何とも印象的です。
いかにも厳ついアンコウを捌くときの豪快な様子がうかがえます。

アンコウは寒い季節になると旬を迎えます。
冬になると魚屋さんに吊るされているのを見かけることがあります。

ずんぐりむっくりの体型は、どう見ても泳ぎが得意とは思えません。
やはり海底に潜んで、じっと獲物を待つ生態なのでしょう。

口だけがやたらと大きく、体の三分の一ほどもあります。
近づく獲物を何でも丸のみにしてしまう姿が想像できます。

アンコウは体が大きく身が柔らかく表面がぬるぬるしています。
まな板に乗せて捌くのが難しい魚です。

そのため大型のアンコウを捌くときは、吊るし切りにします。
昔から伝わる解体方法です。

アゴのところに手鉤をかけて吊るし、回転させながら捌きます。
口から水を注ぎ、身を膨らませるのがコツです。

最近は各地でアンコウの吊るし切りが実演されています。
とくに観光地では人気があるそうです。

熟練した職人が出刃包丁一本で鮮やかに捌いていくと
最後には大きな口と背骨だけが残ります。

その姿を見ると残酷に感じられるかもしれませんが、
生きものの命をいただいく有難さがよくわかります。


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