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落栗や霧なき夜に実を尽くし 芥川龍之介の俳句をどう読むか85

湯にはひり楽焼をやき本を読み煙草をすひてをるぞと思へ。

時々は念仏も申す湯の中に南部ののろけ聞き居る時は。

[大正十年 十月十日 岡栄一宛]

かぎろひの夕澄み渡る薄明かり青垣山はなかぞらに見ゆ

[大正十年 十月十二日 塚本八州宛]


世の中のおろかのひとり自がやけるがやける楽の茶碗に茶をたうべ居り

世の中のおろかのひとり翁さび念仏すと思へ湯壺の中に

[大正十年 十月十二日 香取秀真宛]


君がたぶ十あまり五つの甘し柿あな尊とぞやりつゝ見る

君がたぶ十あまりの柿赤ければ赤きをめでて食しがてぬかも

この柿のなり居るところ山川の水を清しと人住むらんか

君がたぶ柿のこゝだく枕べに赤きを見ればものも思はず

柿の実を画に描くべくは黄と赤と墨とを融きて描くべかりけり

そがひなるあるはもろむく柿の実のもながら赤く照りにけるかも

ひとり見ても嬉しき柿の甘柿のここだ赤きを母と二人見つ

柿の実の赤きにしるき山国の秋を懐しみくへど飽かぬかも

建御名方神の命も柿食ふと十握の剣捨てたまひけむ

[大正十年 十月三十一日 下島勲宛]


月の夜の落栗拾ひ尽くしけり

[大正十年 十一月四日 下島勲宛]


 これは「井月句集成る」という言葉が添えられていることから、よくぞ完成させましたね、よくぞ井月の句を拾いつくしましたね、という意味に理解している人もある句である。

落栗の座を定めるや窪溜り

 という井月の句にちなんだという人もいる。落栗とは井月自身のこと。そう考えると、

月の夜の落栗拾ひ尽くしけり

 この句には確かに井月の「月」が入っていて「井月句集成る」という感じがしなくもない句である。

落栗や月なき不波の板庇


発句会稿 明治26-29年 [5]

 ところで子規が書き写しているこの句のように、そもそも落栗という季題はやたらたくさん落ちるよと「尽きなき(月なき)」ところに趣がある。

落栗のはせを打ぬく夜明かな

蛸壺塚 橘店治兵衛 1768年

 そしてまずは音である。

俳諧拾万集 秋の部
俳諧拾万集 秋の部
俳諧拾万集 秋の部

 これなどはその季題に対してドストレートに詠んだ句であろう。落栗拾いは切りがないと詠んでいる。


俳諧拾万集 秋の部

 これは逆に落栗は尽きないかと思ったら月はあったよ、と剽げている句だ。

月の夜の落栗拾ひ尽くしけり

 この我鬼先生はいや月はあるよと落栗を拾い尽くしたと、本来尽きないものを月があると詠んだ洒落になっている。

 そしてもう一つ、「先生、神経衰弱で夜寝られません」と詠んでいる。そういうことであろう。本当に月夜に栗を拾っていたかどうかは別として。

 そしてなぜか四日後、筑波の金子歌子から栗がたくさん送られてくる。栗拾いせずとも栗はやってくる。

 こうしたところが芥川の面白いところだ。


新撰発句拾万集 上

4 345 6 8〓9 Sヤ〓2 1 09 6 181m 8〓9 9
25 220
945-4文學博士佐と醒雪校訂巖台小波佛諧叢書美術芭蕉翁全集7交内大正10東亰博文館藏版
凡例一本卷を稱して芭蕉翁全集とは當らざるに似たり。我々校訂者にありては、芭蕉の附合而已を簡略に抽出せる袖双子及び芭蕉文集、袖珍抄等に依りて其の文章と句合評などに於ける渠れが筆致を窺ふべき豫定なりしが出版者の都合上、繪詞傳、泊船集、七部集、續七部集、七部拾遺等を以て上梓の一切となすことゝなれり。されば內容は標題に副はずとの議りに對しては、我々校訂者に於て其の責に任ぜざるものなり。繪詞傳は往年去る書肆より出版されし事ありしが、其の肝要なる繪を除きある爲め識者間に於て、雜煮に餅のなきが如しとの笑ひを蒙むれり。されば前轍に鑑み、出來得る限りこれが面影を傳ふる事に腐心せり。原本は木版墨色濃淡の二度刷なれども、活版にては爲し易すからざる事なれば、一度刷りにて其の濃淡の差をも現出することゝなせり。繪詞傳の餘白に芭蕉を追悼し追懷する句々を挿入せるは、別に意あるに非一
凡例ず、例の出版者の注文にして、讀者に忠實なる以所なるべし。泊船集は兎角の評ある事はいふ迄もなし。さはれ芭蕉句集の最初のものとして、渠れが歿後五年にして當時に於て直接芭蕉門弟の手になれるものなれば、また他に異なる節に參考となる點多かるべきを思ひ、且つは名だゝるものなれば、我が愛藏の木版本を其儘原稿となせり。されば野晒紀行中に普通に行はるゝものとは段落の前後せる所あり。文章の上に於ても異なる節あるは〓究子に取りて注意に價ひすべし。ことに句中には甚だしく他と異なるものあり。秋風にをれて悲しき桑の杖として聞ゆるものが、桑の枝とあり。四方より花吹入れて鳰の湖とあるが、湖の海となりをるなど、旣に許六に依りて其の誤りを指示され居る事はさることながら、愁ひに訂正して其の眞を失ふよりはとて、遂に此の書に限り特に其儘になしおけり。續七部、七部拾遺は、何れも其の內容は蕉門必須のものにして、苟も俳諧に指を染めむほどのものは一度は深く〓究を要するものなり。今文集を缺ぎ附一一一合の大體を揭上せずと雖も、幸ひにこれを收め得たるは校訂當事者の滿足とする所なり。一小本七部集の大鵬館の序文を、續七部集に綴込みあり書肆の策略なるべし。今假りにこれを載す。一前卷同樣伊藤松宇氏の好意を謝す。一特に茲數年間に於ける我が木曜會員橋本小舸君の終始變らざる助力を多とするものなり。一一大正五年八月巖谷小波三凡例
解題五升庵蝶夢著法橋狩野正榮畫田偃武縮寫芭蕉翁繪詞傳(寛政五年板)蝶夢が熱誠なる芭蕉の崇拜者にして、又細心なる蕉風の〓究家なりしことは今更に贅せず。古來芭蕉を傳するもの極めて多き中に、本書は正確なる記錄のみによりて、毫も臆斷を交へず、最も信賴するに足る。且つその趣味多き挿畫は、座ろに翁が高雅なる生活を想見せしむるものあり。本書既に活字本なきにあらねど、その挿畫を盡く複製したるは、この叢書を以て初とす。原書は寬政四年芭蕉の百回忌に、狩野正榮の畫に、蝶夢自ら筆執りて、粟津の義仲寺なる、二十年以前に自己の造營せし芭蕉堂に納めしものにして、翌年、田偃武といふ人をして、原畫を多少改訂して縮寫せしめ、井口保孝をして文章を寫さしめし大本三册本なり。その畫は皆見通し二頁大にして、記事の頁は大抵餘白ある
芭蕉翁全集を、今活字に改めたるが爲に、空白更に多きを加へたれば、芭蕉追善の句及び桃隣が翁の足迹を逐ひし陸奧千鳥等を以て埋草としたり。「芭蕉の影」と題して小字を以て記せるものは今新に加へたるものなり。泊船集風國撰(元祿十一年版)泊船とは、芭蕉が宗房時代よりの堂の名なれば、泊船集は即ち芭蕉集といふに同じ。第一卷は芭蕉翁道の紀と題して、野晒紀行を揭げ、第二卷より第五卷迄は芭蕉庵拾遺稿と題して、翁が四季の發句を輯め、最後に雜の句二句を載す。而して最後の第六卷は、著者への文通の中より拾ひたる句のみなりとて、諸家の四季の發句二百數十章を載せたり。芭蕉、其角等を初として、蕉風の名流、略こゝに網羅せらる。風國は去來が甥にして、別に「木枯し」「菊の香」「初蟬」等の著もあり、京都の人ながら、芭蕉とも親しかりしかば、交遊の廣きも故ありといふべし。本書はこれを芭蕉句集として見れば、その自序にも記す如く、翁の句の集に見えしもの、耳に殘りしものを拾ひしのみにて、あながちに博く貢めんとはせず、奧の風國撰細道に見ゆるは大抵これを省きたるものなれば、不備なる點は恕すべしと雖も、自序に所謂る魯魚の誤のみならで、全く記憶の錯誤と見ゆるもの頗る多きは、さしもに翁に忠實なりし去來が甥の著とも思はれぬばかりなり。しかも芭蕉句集中の最初のものとして、翁が歿後四年目に完成したるものとして、幾多の缺點あるに拘らず、芭蕉〓究者の看過し難きものなり。本叢書には、曩に註釋集中に、芭蕉翁發句諸抄大成を收めたれば、今また、普通の句集を採らんも要なしとて、特にこの集を載せたり。俳諧七部集今更に七部集を收錄せんことはと、嘲る人もありぬべけれど、翁の全集にこれの缺けたらんは、金堂に本尊のおはせぬに似たらんかし。本叢書の註釋集には、七部集の註二種を收めたれど、婆心錄には發句なく、大鑑も僅かにその一部分のみを註せり。且つ今坊間に行はるゝ活字板の七部集どもは大抵小本二册本か、さらでも再版本に據りたるが如く、魯魚の誤もかつ〓〓見ゆめるを、今は初版本(婆心錄には、これをも再版なるべしと云へれど、これより以前のものは傳本あるこ解題
芭蕉翁全集四とを聞かず)によりて、橋本小舸氏が、極めて嚴密に校訂せられたれば、七部集の活字本としては、略完きに近からんか。解題は婆心錄などに盡きたれば、今唯その目を揭げむ。冬の日(尾張五歌仙)一卷(芭蕉撰)貞享元年版春の日一卷(荷今撰)貞享三年版荷兮撰曠野集八卷三册芭蕉序元祿二年撰珍碩撰ひさご集一卷越人序元祿三年版去來、凡兆撰猿簑六卷二册丈草跋、其角序元祿七年版孤屋、野坡、利牛撰炭俵二卷素龍序(芭蕉撰)一卷(荷今撰)荷兮撰芭蕉序八卷三册珍碩撰越人序一卷去來、凡兆撰丈草跋、其角序猿六卷二册孤屋、野坡、利牛撰素龍序炭二卷元祿七年版續猿簑二卷(支考撰)元祿十一年版冬の日、春の日は書中に撰者の名を明記せざれど、前者は芭蕉、後者は荷分と古き書目類にも見えたり。すべて某々撰と稱するものも、實は皆芭蕉が指導によりて、寧ろ助手たりしもののみ。唯續猿簑のみは出版書肆井筒屋庄兵衞の名を以て、その撰者の不明なるよしを記したれど芭蕉の遺稿を支考等が增成せしものなることは、殆ど疑を容れず。續七部集芭蕉堂關更編(寛政七年版)俳諧七部集に亞くべき撰集七部を集め、一小册子として再版したるものなり。俳諧年表に享和三年の條に見ゆるは再版本によりしにや。左にその書目と解題とを記さん。書目の左に記したるは初版の年代なり。俳諧深川集一卷洒堂撰解題二卷(支考撰)芭蕉堂關更編洒堂撰解五
芭蕉翁全集(元祿五年版)京の酒堂が江戶の芭蕉庵に下りて越年し、芭蕉、杉風、曾良等の名家と吟哦せし連句集なり。年代は猿簑以前なれども、寧ろ炭俵に近き調あるを以て聞ゆ。楚常撰、北枝補卯辰集四卷句空序(元祿四年版)北國の楚常といふ人が撰みし蕉門句集を、その歿後、北枝の補成せしものにて、四季の發句を四卷に輯めて、終に北枝と曾良と翁との、山中溫泉にての三吟、及び北枝、牧童等の歌仙三卷を載す。主として北國の蕉門を代表するものなり。勻塞許六撰、李由補(元祿九年版)五老井記を卷頭に、元祿五年蕉翁が許六亭を訪ひし時の連句以下、許六、木導、李由等一派の連句を序で、終に、癸酉の歲許六が江戶より西に歸りし時の芭蕉、杉風等が送別の詞及び紀行を揭ぐ。彥根一派の代表的撰集とすべし。李由撰、許六補韻塞千那跋(元祿九年)十二ヶ月に分ちし蕉門發句集なり。終に追加として、十二ヶ月のいづれとも定め難きものを載せて閏月と稱す。この集にも自ら彥根一派を中心とせること勿論なるべし。刀奈美山有磯海丈浪其浪草化角化序撰序撰(元祿八年版)姊妹篇にして、ともに東本願寺門跡一如大僧正の連枝なる、越中瑞泉寺住職浪化(元祿十六歿、三十二)の撰と稱すれど、實は洛の去來が主として撰定せるものに似たり。刀奈美山は多く連句にして僅かに發句を交へ、有磯海は全く四季の發句集なり。廣く蕉門の句を集めたれども、なほ北國と京都、近江の作者の句多し。浪化の撰集には別に名月集、續有磯海あり。芭蕉庵小文庫四卷史邦撰(元祿九年版)解題丈浪其浪草化角化序撰序撰史邦撰解七
芭蕉翁全集史邦が自序に、杉風の發起にて、深川の長溪寺に發句塚を建てしことを記したれば、その塚の落成を紀念せんとて、芭蕉庵裡の小文庫に殘りし遺稿を公にしたりといふ意味の書名なるべし。されど大體の體裁は同門の四季發句集に、翁と史邦とが小品文を交へ、且つ季每に歌仙一卷を添へたるものにして、史邦、山店、嵐竹の句最も多し。史邦は京に住して五雨亭と號し、芭蕉も暫しこゝに宿りて、檜笠菅蓑、桑の杖、自畫像などを贈れりといへり。史邦の傳は詳かならず、本書にも、邦が「侍の身を露にして月見哉」の句もあれば、士分の人なり、しなるべし。されど「牢人して東武へ下る日」とはし書きしたる句も見ゆれば、この集は或は牢人後東都にて成りしものか、さもあれ、選び入れし句は多く京と近江のものなり。知足編千鳥掛二卷男蝶羽跋素堂序(正德二年版)尾張鳴海の知足亭の主が撰びおけるを、その歿後二十年にして、男蝶羽が上梓したるものにして、四季の連句及び發句を輯めて上下二卷とせり。貞德、德元、立圃、知足編男蝶羽跋素堂序言水、三千風、月尋、才麿、露霑、冠里などの、蕉門以外の人々の名も多く見えて、純粹なる元祿蕉風のものにはあらねど、亦貞享頃の尾張地方の風調を中心とせる句集として、頗る興味饒きを覺ゆ。七部拾遺菊舍護車編月居、蒼虬序(享和三年版)これ亦七部集の拾遺にして、續七部集上梓の年には既に月居の序文も成りをり編者は書肆なれば、特に廣く讀まるべきものをとて集へたりしなるべしなり。月居の序には唯利益の爲に輯めたりと戯れたれど、蒼虬の序には、よく七部Loそれぞれの特長を說けり。左にその書目と梗槩とを列記して、初版の年次をも附記すべし。丙寅初懷紙其角等作(寶曆十一年、鶴齡堂版)貞享三年、丙寅の歲旦に成りし蕉翁と其角等との百韻にて、其角が「日の春をさすがに鶴の歩みかな」といふ句を立句としたり。この百韻は當初「鶴百韻」又は「鶴の解題九其角等作
芭蕉翁全集步」と稱したれど、出版せらられざること七十六年、寶曆に至つて書肆鶴齡堂の主人が、その寫本を獲て上梓したるものなり。この一卷は「冬の日」「春の日」についで、蕉風の略大成したる時代の作にして、殊にこの派にては、比較的珍しき百韻なれば、極めて注意すべきものなり。されば、正編七部集中の續猿簑を支考一派の私撰として斥くる者は、この初懷紙を以てこれに代へん〓とを主張せり。又本篇前半五十韻に蕉翁が自註と稱するものあり。寶曆十三年「花故事」と題して梓行し、後明和八年に「落葉考」と改題して再刻せり。その果して自註なりや否やといふことには多少の議論もあれど、とにかくに、頗る趣味ある評註なり。註釋集中の七部婆心錄に見ゆれば、參照せらるべし。芭蕉著野ざらし紀行素堂序又甲子吟行ともいふ。この紀行を初めて梓行せしは、泊船集中のものなり。後野ざらし紀行と題して、素堂が跋を卷頭におきかへて刊行したるものが即ち本書なれど、初版の刊行年次未だ考へ得ず。別に翁の自筆本を影寫せる本には甲子吟行と題せり。三歌仙曉臺編、靑雲補又、熱田三歌仙といふ。貞享の初、翁が桑名熱田の間に遊べりし頃、熱田の林桐葉等と唱和せし歌仙三卷に、その前後の作どもを書き添へたるものなり。その格調、略同年代なる「冬の日」に似て、なほ多少の古調を存せり。こは曉臺が、桑名にて發見せし三歌仙を基として、安永年間に編みおきしを、出版の期を得ざること三十年、この七部拾遺開版に際して、門人淡海靑雲居士といふ人が、更に新しき同人の句などをも追加して、菊舎に與へたるものなり。一ばし〓風編友靜一序(貞享三年版)羽州尾花澤の鈴木〓風が京都江戶に吟行して當時の名流と唱和せし連句集なり。當時、江戸には、芭蕉、其角風雪等に對立して、調和、才麿の徒あり、京には言水、一晶、信德、友靜等あり、俳壇は未だ全く蕉風に歸せず。この書、當代俳壇の縮寫として、最も注意するに足れり。〓風編友靜一序
兀峯撰芥舟初版跋關更再版序芭蕉翁全集兀峯撰芥舟初版跋桃の實關更再版序(元祿六年初版、安永四年再版)備前の士兀峯といふ人東都にありて芭蕉、嵐雪、其角、酒堂等と親交あり、自他の會心の句どもを輯め、短評や逸話をさへ加へたれば、頗る趣味ある集といふべし。初便著者を記さざれど、或は豐後の四野人朱拙(享保八年歿)の著かと思はるゝふしあ俳風の流行、俳味などに關する俳話どもを書き連ねたるものなるが、殊に輕bo快なる調に心ひかれし趣歷々たるが上に、卷末に樗子野坡の名も見ゆれば、或はその著とも思はるれど序文に、芭蕉も流行に後るゝ日あるべきことを言ひて憚らず、且つ「芭蕉老人」などの語を用ひたるは、野坡の筆と見做すべきものにあらず。終に附錄として猿雖亭にての蕉翁以下の歌仙一卷を載せ、これに卷頭なる元祿後久しく出十二年正月の自序を加へたるものが、恐くは初便の原本なるべし。版の期を得ざりし間に、野坡の門人梨里がその稿本を傳へて、更に享保三年に、芭序文蕉庵兩吟一卷を野坡より得て、これを追加したるもの即ち本書なるべし。に元祿十二年とありて終に享保三年とあるはこれが爲なり。この書も未だ單行本として出版せしものを見ず。其袋嵐雪撰(元祿三年版)同門の四季の發句を輯めて、終に連句數卷を添ふ、こは云ふまでもなく、嵐雪が代表的撰集にして、元祿蕉風のたゞ中なり。別に附錄として蕉翁の一座せし連句六卷を載す。こは菊舍主人車蓋が、天明七年に七部拾遺といふ名にて刊行せしを、今改めてこゝに附載せしものにして、嵐雪の撰集中のものにはあらず。この書も未だ單嵐雪撰芭蕉翁全集といふ名に對しては、その文集消息集等、なほ收錄すべきもの極めて多くして、徒に紙幅の狹きをかこつのみ。或は本書の如きは芭蕉その人の作物にあらぬもの餘りに多しと難ずるもあらん。そは思ふに芭蕉の俳道に未だ詳しからぬ人の批難なり。蕉門の俳味は同人唱和の間にあり、芭蕉の趣味は自作解題
第七編俳諧叢書芭蕉翁全集敢て類似の群書に遜らざるを信ずるものなり。老吟骨を得たるが如し」と。が主要なる撰集は、やがて翁が骨髓なり。の完からざるものも亦、翁が趣味の中核に近きものを選び出でたることに於て、この一編固より未だ完からず、庶幾くは好機を得て續篇を出さん。表せんとするは、俳に盲なるものゝ迷妄にはあらずや。の骨肉なり。の句中に盡きずして、連句の終始を蔽へり。芭蕉翁全集殊に翁が一座せる俳諧は盡く翁が添刪を經たるものにして高弟今の人、動もすれば、翁が發句と文章とを以て翁を代翁曰く「發句は門人に上手多し、俳諧はその七部集の如きは、全篇盡く芭蕉さもあれ、こ俳諧七部集泊芭蕉翁繪詞傳目炭猿ひ曠春冬さ船次蓑野ののご俵、集集集日日集目次次佐々醒雪識一二八八二六〇二五三二〇七二〇〇一六百一五三二三元一
目俳諧七部拾遺刀卯俳諧續七部集續野ざらし紀行有〓千俳諧深川集··初芭蕉庵小文庫芭蕉翁全集鳥奈猿懷磯辰掛美蓑紙集海山塞集集附其初桃三一目次畢のは歌錄袋便實し··仙二三六一九五五五六四五五一五三六五二一五一七五一二五〇九四十七四五四三〇四一九三·七三五三三四五三四三三一三
芭蕉翁全集文學博士巖谷佐々小醒波雪校訂
芭蕉翁繪詞傳
芭蕉翁全集ニしこたづかたじんひたちのすけたひらのまさまたひこ1芭蕉翁の氏族を尋ぬるに、柏原の御門の御ながれ、常陸助平正盛と申す人の末うひやうるのじようたひらのすゑむねへいひやうゑのじょうむねきよるくはに、右兵衞尉平季宗、其の子に彌平兵衞尉宗〓と申す人あり。六波羅の入道相よぜある海田上つはもの國の一門にして、寄重く、平家の士の中にも、宗徒の人にて、むらなき兵なりしとぞ。やへいざゑもんのじようむねきよやヘ愚按.東鑑に彌平左衞門尉。大系圖に右兵衞尉季宗の子宗〓。武家系圖に左衞門尉季宗、彌平ざゑもんのじようむねきよ左衞門尉宗〓さんかうほうげんへいぢものがたりへいひやうゑむねきよ參考保元平治物語に彌平兵衞宗〓は平季宗の子ぢうひやうゑのすけようなさけふか平治の亂に、左馬頭義朝の男、右兵衞佐賴朝を生捕りけるに、宗〓情深き武夫したまついあまにて、世になく勞り參らせける。其の宗〓が主と賴む人に、池の尼と申すあり:だおかげけるが、賴朝を見て、我が子の先立ちし面影に似たりと、あはれがりて、入道いのち相國へ色々に拵へ申し宥めて、遂に賴朝の命を乞ひ、伊豆の國へ流し遣はされむねまみあく、まのける。其の折も宗〓は殊に名殘を惜しみて、遠く近江の國迄も見送り參らせけかsどのまたる。其の後世かはりて、平家は衰へ源氏は榮えて、賴朝朝臣は、鎌倉殿と申しむねきよ大系圖に右兵衞尉季宗の子宗〓。やヘ彌平武家系圖に左衞門尉季宗、きほひまうむむひやうゑて勢猛になり給ふにも、さ其の昔し池の尼御前や宗〓兵衞が、おんわりなかりし恩をあまこぜ思召し出でゝ、尼御前の子の、池の大納言の許へ使ありて、御一門こそ都を出ほうこうでさせ給ふとも、御身の上は、賴朝が奉公にかへて申し宥むべし、あはれ、宗〓兵衞尉召具して、ねんごろさおち鎌倉に下向し給へかしと、懇に仰せ送られければ、一門は皆西國へ落行くに、大納言は獨り東國に下向すべしと、密かに宗〓をめし出でせんぢやうて其の由仰せけるに、宗〓いふやう、せんぢんおみそ戰場に向はせ給ふべくは、己れ進みて先陣に候ふべし、己が身の德つかむとて鎌倉へ下向しなば、はう はい御一門の人々傍輩の面々には何の面目ありて見えん。た君は東國に下向し給ふべし、己れは西國に馳ぜんと号にさむらひせ下り、御一門の御先途を見奉り、お仕事傍輩の士どもと共に、骸を曝さんこそ、弓矢取る身の、本意にて候ふものをと云ふに、大納言も、汝が申す所さることなかまくらかたれど、鎌倉よりも、汝を構へて具せよと申しおこせしものをと、とか、兎角に勸め給へども、宗〓更に受けひかず。斯くあらがひける評定の間に、ひやうぢやう遙かに日數のたお、さぶせちければ、今は遲れて西國へ下向せむも、どしごろ〓いがの≦あん面伏なりとて、年頃領せし伊賀國阿芭蕉翁繪詞傳三
芭蕉翁全集四Gy놓いたかs拜郡の、柘植庄に至り、若し鎌倉より索め出でられむもつゝましと、樣を變へしのて隱れ忍びて住みしと也。其の子家〓、土師三郞といふ。愚按、東鑑卷三、武衞、招請池前亞相給。是近日可有歸洛之間、爲餞別也。中略。武衞先召彌平左衞門尉宗〓。左籍門尉平家一族也。是亞相下著最初被尋申之處、依病遲留之由、被答申之間、定今者令下向歟之由、令ニ思案」之之故歟。而未參著之旨、亞相被申之。太違亨主御本意云々。此宗〓者池禪尼侍也。平治有事之刻、奉懸志於武衞、仍爲報謝其事、相具可下向給之由、被仰送之間、亞相城外之日、示此趣於宗〓處、宗〓云。令向戰場給者進可候先陣、而〓案關東之招引、爲被酬當初奉公歟、平家零落之今、參向之條尤稱耻存之由、直參屋島前內府云々。あづまかゝみ愚按、東鑑に斯くあれど、其の外の書に、宗〓の終りし事詳かならざれば、伊賀の蕉翁全傳げへいざゑもんのじようむねあるは、伊賀の國人の說に從ふ。其が上、大系圖に、宗〓が母の系譜に.柘植彌4左衞門尉宗きいへきよのは、まなはつとり〓の妾、家〓母とあり、住所を稱して、柘植と號したるならん。譬はば同時に同國同郡、服部ないざゑもんのじやういへながへいないざいげの人に、服部平內左衞門尉家長あり。是世にいふ伊賀平内左衞門尉也。今も柘植〓には、松尾といふ家多し。あたかはかつしまにし夫より五代を歷て、〓正といふ人に、子數多ありて家を分ち、山川、勝島、西樣を變へあた子數多ありて家を分ち、かは山川、かつしま勝島、にし西〓正といふ人に、かはをきたかはまつをもん川、松尾、北河と名乘る。代々柘植庄に住めり。其の末に、松尾與左衞門と申くうせし人、初めて國の府なる上野の赤坂に住めり。これ蕉翁の父なり。母は、伊せいしさいや豫の國の人とや、姓氏定かならず。其の子、二男四女あり。嫡子、儀左衞門命せ、はんざはん5)むねきまん〓後に半左衞門といふ。二男、半七郞宗房、童名金作、これ蕉翁なり。のちに名を更へて忠右衞門といふ。正保の初めに生る。明曆の比出でて、藤堂新七せんぎん郞良精の嫡子、主計良忠に仕へらる。良忠の別號蟬吟といふ。弓馬の業の暇にかおよはい恐また書こんは、風月の道を好み、和歌、及び俳諧をもてあそびて、時の宗匠北村季吟をもて師とす。宗房ともに隨ひて學ばれしとぞ。ぞくみやうとう愚按、蕉翁全傳には、蕉翁の俗名藤七郞とあり。藤堂の家には、半七郞と呼べりとぞ。兄を半作いしぶみ左衞門といへばなるべし。さるを浪花の遊行寺に、野坡が建てし、碑には、甚質と書けり。京そうりんじいしぶみたう都の雙林寺に、支考が立てし碑に、百地黨と書きしは、松尾氏の先祖に百司といひし別姓あり。其の誤りなりと、伊賀の國人傳ふ。芭蕉翁繪詞傳五

芭蕉翁全集八かずむねさるを、寛文六年四月といふに、思ひ掛けずも、主計失せられけるに、宗房、はびの其のなき主の遺髮を首にかけて、高野山に登りをさめしよりへ愚按、高野山の宿坊、報恩院の過去帳に、遺髪の御供松尾名古屋市場所) りりに此の世を敢果なみ、と記せり身を遁れんの心せちなりければ、暇を乞ふとぶん ぷ·雖も、さる文武の才あるを惜しみて許さねば、同じ秋の末なりけむ、主の舘に宿直しける夜、門の傍なる松を越え出て、我が住める家の隣りなる、城孫太夫が門の柱に、短册にかいて押しける發句に、雲とへだつ友かや雁の生わかれ愚按、此の時、良忠の子息の良長未だ三歲なりしを、宗房二なく忠を盡し家を繼がしむ。されば、續扶桑隱逸傳、第三卷、芭蕉翁傳に、仕府主君而有忠勤云。宗房の住みし家は、上野の玄蕃町といふ所にあり。の花が북なきがらを笠に隱すや枯尾華忘れ得ぬ空も十夜の涙かな木李去其節由來角啼くうちの狂氣をさませ濱衛なきあとや鼠も寒きともぢからされ上野木李去其節由來角つひに行く宗祇も寸白夜の霜いふことも涙になるや塚の霜曉の墓もゆるぐや 千鳥數寄一たびの醫師ものいはん歸り花凩よやみたる跡の船よばひ墓もどり十方なき世の時雨かな拜席に溜るなみだや朝の霜かさね着の老いの姿や苔の霜木曾柿や木の葉かつぎし塚の上日影さす塚にしぐれや湖水迄月雪に長き休みや笈の脚しけ絹に紙子取りあふ御影哉きさがたを問はず語りや草の霜ばせを葉の寒しと答ふ聲もなし芭蕉翁繪詞傳乙昌丈許紋探楚成詆露千尙徹角州房草六村芝江秀々玉那白士上九

芭蕉翁全集三ち;ちほこれより、延寶の年迄は、跡を雲霞にくらます龍の如く、山にや蟄せし、海にか、くや隱れし。然るに何れの年にや、武藏野の草の緣り求めて、深川といふ所に住み給ふとて、芭蕉を栽うる其の言葉に、風土芭蕉の心にや叶ひけむ、數株莖を備へ葉茂り重なりて庭を狹め、萱が軒端も隱るゝばかりなり。人呼びて草菴の名とす。此の葉の破れ易きに、世を觀じて、芭蕉野分して盥に雨をきく夜かな愚按、これより住庵を芭蕉庵と呼び、芭蕉翁と呼べりとぞ。其の頃年未だ四十に至らざるに、此の道の師とせし季吟、湖春父子を初め、翁の號を呼べる事も、偏へに隱德の餘りなるべし。号°初めの名は桃靑といひ、別號を風羅房といひしも、芭蕉といへるに等しく、風に破れ易き身を觀ぜしとぞ。一名を泊船堂と名ぜしも、深川は海に近き地にして、門泊東吳萬里船の詩の景に叶へばなるべし。隱逸傳にも、造廬於深川、扁號泊船堂云々。芭蕉の影某二澁張の笠かけて見ん墓の霜野童一夜來て泣く友にせん鳰の床風國野風童國徒然なる折りにや、笠をはり給ふ詞に、ㅎ秋風淋しき折り〓〓、竹取の工みに習ひ、妙觀が刀をかりて、自ら竹を割り竹〓を削りて笠作りの翁と名乘る。さに をにねを重ね夕べに干して、また重ね〓〓て、8)澁といふ物をもて色をさはし、廿日過ぐる程に、やゝ出できにけり。其の形ちさ裏の方にまき入り、外樣に吹きかへり、荷葉の半ば開くるに似て、をかしき姿る。也。西行法師が富士見笠か、東坡居士が雪見笠か、宮城野の露に供つれねば、つ吳天の雪に杖をやひかん。霰にさそひ時雨に傾け、漫ろにめでゝ殊に興ず。興の近藤井やうちにして俄に感ずる事あり。再ひ宗祇の時雨ならでも、假の宿りに袂を濡ほ〓して、笠の裏に書付け侍る。世にふるもさらに宗祇の宿りかなの意휴の耳にある聲のはづれや夕時雨悲しさも言ひちらしたる時雨哉之卓土道袋芳我眞似を泣きぬ小春の雉の聲芭蕉翁繪詞傳三三之卓土道袋芳三三

ある年、給ひけると也。うじて免れ給ひて、に遁るゝ方あらねば、なの菴の邊り近く火起りて、芭蕉翁全集いよ〓〓猶如火宅の理りを悟り、前なる渚の潮の中にひたり、Giulia bまへうしろ前後の家ともめら〓〓と燒くるに、たう只管無所住の思ひを定め藻をかつぎ煙りを凌ぎ、炎熾かん辛芭蕉翁繪詞傳ノさゝ波の時雨をきくか土の窓雪はれて浴る光りやかゞみ山待ちうけて泪みあはす時雨哉散際はもろむかし人といひて見過ぐる塚の霜今朝獨り泪をこぼ す木曾寺のゆめになしたる時雨哉霜消えて此悔まれて夜着かぶりけり冬籠り立ちかねて袖もしぐるや墓の前冬芭蕉衣にさけて初めての千鳥も啼くや礒の塚線香の煙り取りつかん便りもむなし枯柳き道廣し西覆櫻のふや紅火泪枯葉鉢のか芭哉哉山な蕉腰打つて木の葉を摑む別れ哉木がらしや何を力に吹く事ぞ入る月や日頃の數寄鹿の音も入りて悲しき野山哉石たてゝ墓も落付く霜夜哉見送りし庵ねぢて見る別れの岩よ冬木立まぼろしも住まぬ嵐の木の葉哉うろ〓〓とひざまづきたる木の葉哉の花がの姿や、袖のの朝霜朗岩か伴進土這木朴游回魚呑荒野晋靈泥臥正曲春支芝モ翁や左望龍華枝吹刀鳬光舟雀明子椿足高秀翠澄考柏

じ、いかにぞや、母は汝を疎むにあらじ、う汝、父に憎まれたるか、た。只これ天にして、母に疎まれたるか、汝が性の拙きをなけ、父は汝を憎むにあら其の頃圓覺寺の大巓和尙と申すが、泣くあり。江戶を出で、貞享元子の年、如く集まれりとぞ。らずとかや。讀みて、の風に倒れ雨に萎れて、の本卦を侯ひけるに、より食ふべき物投げて通るに。つ間と捨ておきけん、猿をきく人捨子に秋の風いかに其の身は潜むとすれど、いく霜に心ばせをの松かざり芭蕉翁全集此の河の早瀨にかけて、海道を上り給ひけるに、B)まことに聖典のいつはらざることわざの知く、芭蕉菴の春を壽き給ふならむ、はてん を考へ給ひければ、と小萩がもとの秋の風、뚤命つれなく世にあるに譬へたり。た外よりつどひあつまりて、周易の文に委しくおはしけり。浮世の波をぐに堪へず、き富士河の邊りにて、萃といふ卦に當れり。今宵や散らん明日や萎れむと、の三つばかりの捨子のされど、道を慕ふ輩、心を安くする事あ露ばかりの命待こは、あつまると或る人.一本の薄蟻の袂翁芭蕉翁繪詞傳花鳥よせがまれ盡すなぐさめし琴もなごりや冬の月菊打ちこけて指ぬき氷る淚かな朝日うけて霜もまばゆし塚の前此のかたみ行來に見せん丸頭巾松の霜見ぬ世の形りや檜木笠間違うてあはぬ命や村しぐれ今ははやかなしさかるゝ柳かな冬の日や師に奉公の間もなくて小野炭やあとに匂ひの殘りけり樒若葉の影曉起の馳휴X走冬か木立惟萬素重狢朔松吾牝如尺三然里顰氏睡巫泉我玄柿草

伊勢に詣で給ひて、入る程、芳野の奧に入り給ふに、彼のとく〓〓の〓水は、考芋洗ふ女西行ならば歌よまむ露とく〓〓試みに憂世すゝがばや柴人の通ふ道のみ僅かに見えて、芭蕉翁全集말西行谷の麓の流れに、昔しにかはらずと見えて、さいじやうにん西上人の草の菴のあとは、ん夢里の女の物洗ふをみて、さかしき谷を隔てたる、とく〓〓と雫落ちけり。奧の院より二町ばかり分け二四いと尊し。芭蕉翁繪詞傳塵矩燵から床のかけ繪を泪かな六疊に見殘されたり夢見たか啼いて飛行く浮寢鴨寒菊やすすぐ佛 の聞いて泣く聲もとヾかぬ枯野哉鶯の子鳴にくゝる時雨るゝや奧州へもゆかず年なやみ大根引あとはうづまぬ名殘哉主もなき時雨の庵に讃ばかり朝霜や夜着にちゞみしそれもみず力なき獅子のあがきや冬牡丹幻にみるは國〓へつたへてけふの時雨哉塚や淚の枯紙野にの霜冬膳樒樒のののかか華月端なな枝打つて鳥の嘆きや竹の霜冬柳かれて名ばかり殘りけり力なく墓にかけよるしぐれかな木兎の目にも涙のしぐれかな手をつけば霜も湯となる泪かな-冬の月襟にうけたる花桶の鳴る音悲し夜老茶の影其中淚半かのな霜一社苔配雪風車玄夏小如木爲閑來向蛋砂麻徹可震三鷺甫蘇力芝睡來虎木作行辱有タ几軒鳥上三房南

奈良の二月堂に參籠し給ふ。貞享二丑のとし、手箱、きみ云ひつゝ、なし。長月の初め、水とりやこもりの僧の沓の音誰が聟ぞ齒朶に餅おふうしの年汝が眉も稍老いたりと、何事も昔しにかはりて、山茶花の散煩手に取らば消えん淚ぞあつき秋の霜冬桃のなき人しらぬ俤や足もさなき跡や時雨れてたつる古障子芭蕉翁全集兄の守りぶくろよりとう出て、故〓に歸り給ひけるに、さの #伊賀の山家に年越え給ひて 、ゝはれぬぬ휴ち浮歎置うち泣きて、はらからの鬢白く、世き炬哉哉燵北堂の萱草も霜枯れはてゝ、母の白髪をがめよ、し眉皺より、b我陽尾洞峰和頭木只命ありてとの六浦島が子の玉今は跡だに芭蕉翁繪詞傳夢なれや活きたる文字の村衡歎く手の香もふるふや水仙花枯草に顏入れてなく男鹿かな水鳥の遠きわかれや聞とりて鳥も嘆くか笠を泣く時雨なつかたよりなや風もかく迄菊かれて側に小松も凋れけり何事もなみだになりぬ冬の庵茶のからの霜や涙のその一つ一生を紙衣の小しぼに浮む芭蕉々々枯葉に袖のしぐれ哉かろき身の果や木の葉の吹止まりの仕舞の時湖山し雨時の寒北枯か雨涯し南柳な哉半九氷仙望乍荻長槐式爲示風猿我陽尾洞殘節固杖翠木子年市之醉蜂麥雖二九峰和頭木

芭蕉翁全集こ大津の尙白が家にて湖水眺望に、唐崎の松は花より朧にて卯月の末、江戶に歸り給ひて夏衣未だ虱をとりつくさず秋も半ばの夜、ことに晴れ渡りしにや、名月や池をめぐりて夜もすがら貞享三寅のとし、草菴の春の夜に、古池や蛙とびこむ水の音雪のいと面白う降りける夕べ、おなじ心なる人の集まりて遊びけるに、ひと〓〓り貧しき菴なれば、人々薪かひに行くあれば、酒買ひに行くもあり。米かひにゆきの袋や投頭巾もとよ老舊の影廿八手向けせむ茶の木花咲く袖の下百歲限りある噂斗りや散り紅葉はら〓〓と泪かれ野の薄かな猿みのゝ袖のしぐれや行く嵐夢のあと誰が疊みしぞ夜着ふとん待ち〓〓ておもはぬ文に時雨かな便りなう霜にきえ行く月夜哉みて泣くや蓑笠の像に雪霰玉しひを世に分けおきて木の葉哉語り合うて共に悲しき霜夜哉せめてその笠見て行かんあられ笠〓耳の底に水鷄鳴く也冬の雨枝川や一羽放れて鳴く千鳥霜に散りて光り身にしむ牡丹哉手づからに木柴はく也塚の脇明けて鳴く冬の日影やかし坐敷芭蕉翁繪詞傳滿鳥路團空宗斗芦拔廉露素左冬伽水栗草友芽比從本不牧川覽次鶯香三三

芭蕉〓全集는まbeゆ上貞享四卯の年、春も彌生の空長閑に、うち霞みたる夕暮ならし。花の雲鐘は上野か淺草かた놓え鹿島邊りの月見んとて行き給ふに、雨頻りに降りて、月見るべくもあらず。根IM本寺の前の和尙おはする寺を、尋ね入りて臥しぬ。頗る人をして深省を發せしむと、吟じけむやうに、暫く〓淨の心を得るに似たり、寺にねてまこと顏なる月見かな佐愚按、この道の記、かしま紀行あり。此和尙は、佛頂禪師とて、江戶臨川寺に住持し給ひて、ばん蕉翁常に參禪し給ひけるとぞ。されば其角が書きし終焉の記にも、佛頂和尙に嗣法して、開禪の法師といはると云々。又三國相承宗分統譜に、臨川佛頂、芭蕉翁桃靑と、法脈をひけり。ゆんゆ神無月の初め、空定めなき景色、身は風雲の行方なき心地してとありて、旅人と我が名呼ばれむ初時雨はをほなこ參河尾張のかたに日比遊び給ひて、桑名よりくはで來ぬればといふ日永の里よつゑ つきざかsびんぜり、馬かりて杖突坂を登る程、荷鞍うちかへりて馬より落ちぬ。便なの旅人やゆ上うち霞みたる夕暮ならし。しか、一人旅さへあるをと、馬子に叱られながら、步行ならば杖突坂を落馬かな若葉の影휴〓鵜飼見し川邊も氷る泪哉文臺に去なぬ影也古頭巾此下にかくねむるらん雪佛十月を夢かと斗りさくら花なき人の詠めも四季の終り哉見をさめの顏はいつ頃雪の頃身をつめる悲しさを忘れ冬の月芳しき人の香もあれ塚の雪凩の外にあそぶや墓の月尋ね行きて枯野の草の根に語れ〓俤や二度三度よむ月時雨芭蕉翁繪詞傳低黃嵐同百氷神浮舟咸專耳山雪里花叔生竹孚迹三七

芭蕉翁全集伊賀に歸りつき給ひて、故〓や臍の〓になく年のくれ四〇若蕉の影〓+(枯芦や名をかき寄する潮頭時雨にもさめぬ別れや夢咄し俤やなにはを霜のふみをさめうらむべき便りもなしや神無月枯芝や聲も力もなきあらし是非わかぬ枯野に草の種もなし見るやうに頭巾をかけん庵の松聲たてぬ歎きや霜のきり〓〓す菊かれて匂ひを惜しむ居士衣哉山茶花を塚の賴みに植ゑもせんうき便り望み絕えたり霜柱菜の花は匂ひ手向ん斗り也東素桃湖太子八杉子太序龜潮彳隣風桑珊大松祐洛志水見送りも夢になりけり今朝の霜李里e骨肉にこたふるけふの時雨哉楚舟ち른たま貞享五辰の年、伊賀に春を迎へ給ふ。春立ちてまだ九日の野山かなちだいぶき阿波の庄の新大佛に詣でんとて、意專、惣七の人々を伴ひ行きふに、抑此の所は、南都東大寺の聖、俊乘上人の舊跡なり。仁王門、鐘樓の跡は、枯れたる草の底に隱れて、松ものいはゞ言問はん、礎ばかり菫のみしてと云ひけむも、在はあれん けかゝる景色に似たらん。猶分け入りて、蓮華座、獅子の座など、未だ苔の跡を殘せり。御佛は埋れながら、僅かに御ぐしのみ現然と拜まれさせ給ふに、上人い3の御影は未だ完くおはしまし侍るぞ、此の世の名殘、疑ふ所なく、誠に許多のおんはべ人の力を費したる上人の御願ひ、徒らになり侍る事の悲しく、涙も落ちそひて物語もなし。空しき石臺に額づきて、丈六にかげろふ高し石の上芭蕉翁繪詞傳四李楚里舟e四

行の枝折に迷ひ、たそがれの景色、參河の杜國を召具し給ひ、くて、探丸子別墅の花見催ほし給ひけるに、たんぐわんし徒らに口を閉ぢたるいと口惜しとぞ、愚按、一坐あり。面ありし時とぞ。樣々のこと思ひ出す櫻かなと芭蕉翁全集良長成人の後、其の筆のあと今に傳はれりとぞ。貞室がこれは〓〓とうちなぐりたるに、有明の月の哀れなる樣など心にせまり胸に滿ちて、この句に、別號を探丸といふ。初瀨、探丸の脇の句あり。龍門にかゝり、まかり給ひて、蕉翁が宗房たりし時の忠節をおぼし出で、かい給ふ。春の日早く筆にくれゆく云々。吉野の花に三日止まりて、我がいはむ言葉もなあるは西き曙翁の執筆にて初めて對水るらむ足もぬらさで渡る川芭蕉翁繪詞傳袖泣け〓〓と目に吹當たる木の葉哉花紅葉聲も小春に成りにけり初雪を思ひ寄らずの手向かな紅告げて來て死顏ゆかし冬の山むせぶとも芦の枯葉の燃えしよりその骸もかくやは雪の水仙花か錫杖にふみたがはざる木の葉哉はかなしや炬燵咄しも苔の下手時雨ふる白い卒都婆よ夕ならべたる繩床さびし冬たみ哉粟津が原の向時葉ちりたる雨南無あみだ佛趣向水樒もは靑しや朝氷面塚 の枯嵐鏡前哉籠柳寺の花直に手向けむ冬牡丹悲しむを包みかねたる木の葉かな霜消えて蓬を庵のちなみ哉若蕉の廿一一まかり給ひて、山壺濁琴直山露季角滄そ石杏用愚野桃風蓬蛙子風方タ沾吟蕉波ら人村陽好四五々川弦

罪深し。の業とも見えず。ふ魚を、汐たれつゝなど歌にも聞え侍るも、東須磨眞砂の上に干散らしけるを、西須磨、月見ても物たらはずや須磨の夏若し古戰場の名殘りを止めて、濱須磨と三所に分れて、今は斯る業するなども見えず。鳥の攫みさるを憎み弓をもて威す、わ さあながちに何業するとも見えず、かゝる事をなすにやと、いと海士きすごと云藻なるを、それより、芭蕉翁須磨に遊び給ふに、全集芭蕉翁繪詞傳0頭陀袋重きも袖のしぐれ哉五十二年夢一時のしぐれ哉凩枯寒菊のまたゝぞやあゝ此道の木葉搔心消えて頰に凝りつく涙哉その塚はさぞな枯野の土の色立ちされば心ぞ消ゆる塚の霜雪力何の繪こや形見庵の爐蓋に指の跡哀れしや菊は戶口に枯れて居る蔦草を見るや袖の雫ののやかの便りの風や引の聲に檜原もむせびけり霜咲後れたる名殘哀尋切られれねや殘るむ笠たるのなみだ哉壁枯の在初かな薄糸所氷須磨の蜑の矢先に啼くやほとゝぎす行人の德や十夜の道ひろき小莚や火にはなれたる身の凍え野ざらしの夕べや十餘年々の露の花が空も朧に殘れる、の敢果なき短夜の月もいとゞ艶は湖素馬艶虚ち蓬海其遊ト支淵千此左大凉四九春龍莧子谷り山動井糸子老泉川筋柳舟葉
タウ
美濃の國、この境はひ渡る程といへるも、這樣愚按、面白うてやがて悲しき鵜船かなかたつぶり角ふりわけよ須磨明石芭蕉翁全集わた長良川の邊りに、なが去年より今年の夏迄の道の記あり。がは른さすらへ歩行き、こゝの事にや。こ卯辰記行とも、しんき鵜遣ふ樣を見給ひて、おひ笈の小文ともいふ。ノ殘る名の手向にむせぶ時雨哉芭蕉翁繪詞傳初時雨笠より外のかたみなし終の野に捨てすましけり霜の杖十霜深靑石の陰もあはれや木の葉搔窓の雪はらひ果てたる拂子哉雪の夜をおもひ忍ぶや名付親句の神や此の十月の世のくやみ果カ歸山茶花や難波へ向いてつかみざし驚かみな月根さしは殘るばせを哉きて德は草花き菴霜夢に逢ひにし芭蕉菊をむかしの翁のとりはなしたり霜の蜜柑を袖ぬしなきうつゝ哉は涙の氷手向か朝か哉な哉嵐な旅凩爐開きになき人來ませ影ほふし檜月落凩のなにはや夢のさめどころ雪に葉の笠の近江の土や三世の緣おもひ泣かせよ猿の面見し人や落葉の底の人旅つひに宗祗の何れ冬野の面かくれ時雨哉苔蕉の廿二三景橫龜李林是一芝和秋寒山闇拙薯柴湖專介枳沾素五三桃ル翁下也吉雀莚水色玉蜂指候子雫月吟我風德堂

棄てたらんと思ふに、更科の里姨捨山の月見むと、と云ひけむも、くもあらず。て行き給ふに、き面影や姨ひとりなく月の友ラ芭蕉翁全集かど〓〓角々しき岩なども見えず。一五理りに知られて、姨捨山は八幡といふ里より南にあり。흔ね〓いとど涙も落ちそひければ、頻りに秋風の心に吹騒ぎて、そゞろに悲しきに、只あはれ深き山の姿なり。何故にか、西南に橫折れて冷じく高にしみなみ風雲の情を狂はすと老いたる人を慰めかねし芭蕉翁給詞傳猿戴時雨會や筆濡すほどは時雨れよ翁の日世にふるはさらに芭蕉の時雨哉芭蕉忌や我等が爲めの今日の月窯栞けふは〓へをしぐる哉芭焦忌や塚も日本の國の數芭蕉忌や時雨るゝ空を米買ひに深川にとり分けなくや友千鳥霜に伏して思ひ入ること地三尺凩に古人かやうの夢さむし目の先にまだちら〓〓と木の葉哉月泣く中に寒菊ひとり耐えけり蓑を人はいたゞくく雪ぞに今寺は日頃の假日のは菴翁やの時松雨旅の七哉硯風所竹の繪をかけて悲しき時雨哉力なや膝をかゝえてまたも來ぬ跡に立ちけり霜柱泣籠る冬や今年の廻り合ひすがりつく枝も枯れたる柳哉油炎の消えて悔むや冬冬籠籠の #正魯道一恆士存關曉鳥同樗嵐桃利石袋疎利孤野萍五七隱彥草丸朗亞更臺醉良雪隣合菊水雨牛屋坡水
下をき
芭蕉翁全集른元祿二巳の年、江戶の春にあひ給ひて、去年の、更科の秋やおぼし出でけむ。元日に田ごとの日こそ戀しけれ立ちそむる霞の空に、白川の關越えむと、坐ろ神の物につき侍りて、心を狂はせば取る物も手につかず、股引の破れをつゞり笠の〓つけかへて、松島の月先〓きづ心にかゝる。曾良は、常に軒を並べて、薪水の勞を助く。こたび松島、象潟の眺め共にせむ事を悅び、且は覊旅の難を勞らむといふに、召連れ給ふとや。bbりた3/下野の那須野をゆき給ふに、野飼の馬あり。草刈る男に嘆きよれば、野夫といきくどへども流石に情知らぬにはあらで、此の野は、縱橫に分れて、初々しき旅人の〓道ふみたがへむ、怪しう侍れば、この馬の止まる所にて、馬をかへし給へと貸あSOし侍りぬ。小さき者二人、馬の跡したひて走る。一人は小姫にて名をかさねといふ。きゝなれぬ名のやさしとは、書き給ふる。若葉の影第14笠の像 酢賣も袴着てをがめ日人更科の秋やおぼし出でけむ。笠の日人名も持たぬ松にも待つや翁の日達磨の畫かけて芭蕉を祭る哉ばせを忌や菜飯の色も草枕百年の紙衣を拜むなみだかな月華や洛陽の寺社殘りなくばせを忌と申し初めけり像の前表八章花の雲鐘は上野か淺草かかげろふわたる橋のもろびと銀の茶瓶もにえる春風にけふの數射のおびたゞしさは扨黑い若衆斗りが揃うたり岩踏む山のをんな禁制蔦の葉の皆うら見せて月の露かけて願ひの糸の夕榮芭蕉翁繪詞傳素定寥同其史月雅太角邦芭楚巨吐貢雪默一蕉龍龍江雨凍我得六

の問ふに、し衣裳を改めし事など、卯の花の白妙に、人心をとゞむ心元なき日數重なるまゝに、風流の始めやおくの田植うたで都へと便り求めしも理りなり。芭蕉翁全集秋風を耳に殘し、茨の花の咲きそひて、小倉〓輔が筆にもとゞめし。ま百白川の關にかゝりて、눔中にも、紅葉を面影にして、雪にも越ゆる心地ぞする。この關は三關の一つにして、この關如何に越えつるやと人旅心さだまりぬとか、靑葉の梢尙あはれなり。古人冠を正風騒のいか芭蕉翁繪詞傳けふはまた酒のむ龜を放生會春雨や蜂の巢傳ふ家根の漏蔦行燈には早しされども燈さねば霞こす山駕二挺かきすゑてほのかに白む十六夜の月小粒を一つ齒に當てゝ見る朝ゐそゞろにさくら散る比くれなゐの同岩に毛氈鶯鶯春の水女まじりの船さして梅しのびの殿に頭巾めさするやちりのこる餅表に八糞する章閏緣正の月先使立つ桂のはなのあかつきに壁に耳石のものいふ普請小屋このたび參る相撲たれ〓〓京遠からぬ千破劔あかさか苜蕉の廿一六佐兎逸千鳴愼歸芭去風雨起玉楚松芭六五國明賀丈皐車乘蕉釣宿考石斧水隣蕉

芭蕉翁全集六氣つ土忍文字摺の石を尋ねて、忍ぶの里をわけ入り給ふに、山陰に石なかば土に埋れpretひてあり。里の童の〓へけるは、昔しは、此の山の上に侍りしを、往來の人の、歩石の面麥草をあらして、此の石を試み侍るを憎みて、此の谷に落せば、下樣に伏したりといふ。早苗とる手もとや昔ししのぶ摺たけ くまこ二木に分れて、武隈の松にこそ目覺むる心地はすれ。根は土際より昔しの姿失はずと知らる。先づ能因法師思ひいづ。徃昔、陸奥の守にて下りし人、この木らだぶ돈を伐りて名取川の橋抗にせられたる事あればにや、松は此の度跡もなしと詠みせん さいたり。代々あるは伐りあるは植ゑつぎなどせしと聞くに、今時千載のかたちとつとのひて、目出たき松の景色になむと稱し給ふ。壺の石ぶみは、高さ六尺餘橫こシ三尺ばかりか、苔を穿ちて文字幽かなり。昔しより、詠み置ける歌枕、多く語りつたふといへども、山崩れ川落ちて道改まり、石は埋もれて土に隱れ、木は3も老いて若木にかはれば、其の跡慥かならぬ事のみを、玆に至りて疑ひなき千歳블きぞん めいの紀念、今眼前に古人の心を閱す。行脚の一德、存命のよろこび、を忘れて、淚も落つるばかりなりとは書き給ひける。2覊旅の勞れ芭蕉の影國々の硯に廻るしぐれかな邯鄲は借らず枯野の夢もかな表八章蠣よりは海苔をば老のうりもせで世はあは雪の笠のしばらくあさちふに宿參らする泊り狩忰ばかりはせめて奉公見一のまだはてやらぬ塵功記節季師走の笹もさら〓〓美しいけれど笑はぬ霜の月通夜の讀誦の何いのるらん芭蕉翁繪詞傳0素同丸芭鳳是鼠桃夏和梭蕉足物大種人星言六九

造花の天工、色省然として美人の顔を粧ふ。松の綠こまやかに、らばふ。浙江の潮を湛ふ。の好風にして、松島に渡り、左に分れ右に連なる。芭蕉〓全集何れの人か筆をふるひ言葉をつくさむ。雄島の磯につき給ひて、凡そ洞庭、島々の數を盡して、しま〓〓枝葉潮風に吹き携めて、と西湖に恥ぢず。洋千早振る神の昔し、負へるあり枕せるあり、欹つものは天を指し、其の景を書連ね給ふに、屈曲自らためたるが如し。東南より海を入れて、2大山すみのなせる業にや、里左兒孫を愛するが如し。伏すものは波には松島は扶桑第一七二江の中三里、其の景ミ)芭蕉翁繪詞傳孫彥枝越して來た麁忽の早瀨ふりかへり、秋の蚊におかれぬ月の白團扇茶袋に彥根便りの熨斗つけて降らずとも竹植うる日は蓑と笠ついたての中垣とれば月の宿此道に草履は少し無地ながら萩三つよつはたく脚半かふかけ此の度ばかり我が草の庵はじめて秋の風わたるなり··夜のにしきの結納ねり出すだ覆ふや桃の小春かげ〇同端雷は居の峰にごろつく碁盤一面盃に靑柚ひらりともてなして一若葉物彼かたにたゞかしこまる聲の江にはるかに雲の筑表八橫た章ふや波郭根公一の素湖花關鬼翠夜千芭壽蘭梧米長耳舊芭七三丸雪口牛守髯兎牛蕉峰徑泉計羽得國蕉

いふ者に導かれて、出羽の國月山に登り給ふとて、雲の峯いくつ崩れて月の山芭蕉翁全集雲霧山氣の中に、木綿しめ身に引掛け、氷雪を踏みて登る事八里とかや、익寶冠に頭を包み、長長土浦の鬼の血といふその土の躑躅哉額閑にて掃くや三笠の花のな陸花筑鹿高天原る要や奧御代の姿や手波石島千にとる筑波山鳥要石塵土浦の額芭蕉翁繪詞傳物くさき雲水や霞まぬ瀧のうらおもて千汲雪な鶯は雨にして鳴くみぞれかな花はさけ湖水に魚は住まずとも花赤松の筑波根や辷つて轉けて藤の花年鳥鮎だののの木那須の黑羽に出づるうらみの瀧れ日櫻椎尾山瀧網合羽やけふの輝末水黑髪山の光に川やく苔花乘山垂る花の瀧のな色やし更靑腰は東櫻衣し何向川汲赤松の閑に鮎なにとる筑波山鳥花乘其一元垂る花の瀧なし更要櫻衣川石塵桃鄰七七强力と

芭蕉翁全集八〇ふ土象潟近く、潮風眞砂を吹きあげ、雨朦朧として鳥海の山隱る。雨も又奇なりとと雨後の晴色賴もしく、蜑の笘屋に膝をいれ、雨の晴間を待給ふに、其の朝天よきふ€く霽れける程に、:象潟に船を浮ぶ。先づ能因島に船をよせて、三年幽居の跡を듦う弔らひ、向ふの岸に船を上れば、花の上漕ぐとよまれし櫻の老木、西行法師のか紀念をのこす。南に鳥海山天を支へ、其の蔭うつりて江にあり。西はむやノみの關路を限り、東に堤を築いて、秋田に通ふみち遙かに、海北にかまへて、浪LEうち入るゝ所を潮ごしといふ。江の縱橫一里ばかり、面影松島に通ひて又異なきり。松島は笑ふが如く、象潟は恨むが如し。淋しさに悲みを加へて、地勢魂をなやますに似たり。象潟の雨や西施がねぶの花苦茶の廿二二陸奧千鳥草に臥す枕に痛し木瓜の刺桃隣黑羽の尋ぬる方や靑すだれ舘近淨坊寺幾とせの槻あやかれ蝸牛與市宗高氏神八幡宮叩首や扇をひらき目を閉ぎ玉藻の社木の下やくらがり照す山椿黑羽八景の內鵜匠どもつかうて見せよ前田川夏の月胸に物なし飯繩山笠松や先づ白雨の逃げ所籠らばや八鹽の里に夏三月手足玉卷蔦や九折留別山蜂の跡覺束な白牡丹芭蕉翁繪詞傳幾蝸牛叩首や山椿〇束な白牡丹八

芭蕉翁全集八四の축い,北陸道を歷て上り給ひ、越後の國出雲崎にて見渡し給ふに、佐渡が島は海の面)十八里、東西三十五里に横をりふしたり。むべ此の島は、黃金多く出でゝ、遍たぶて)く世の寶となれば、限りなき目出たき島にて侍るを、大罪朝敵の類ひ、遠流せまes ha ;らるゝに依りて、只恐しき名の聞えあるも本意なく、窓押開きて暫時の旅愁を勞らんとするに、日旣に海に沈みて、月ほの暗く、銀河半天にかゝりて、星き줄らきらと冴えたるに、沖の方より波の音しば〓〓運びて、魂けづるが如く、膓千切れてそゞろに悲し。あら海や佐渡に橫たふ天の河ミ一ぶりの關にとまり給ふ夜は、今日なん親知らず子しらずなどいふ北國一の、海難所を越えて疲れ侍れば、枕引寄せ寐たるに、宿の一間隔てゝ若き女の聲二人年老いたる男の聲も交りて、こ〓〓ばかりと聞ゆ、物語するを聞けば、越後の國新潟言といふ所の遊女なりし、伊勢參宮するとて、此の關迄男の送りて、翌日古〓にteかへす文を認め、敢果なき言傳などしやる也。白波のよする汀に身をはふらかし、し、あまの此の世を淺間しう下りて、定めなき契り、日々の業因、いかに拙しだと、ものいふを聞き〓〓寐入りて、朝旅立つに、我れ〓〓に出でむかひて、行方知らぬ旅路のうさ、餘り覺束なう悲しく侍れば、見え隱れにも御跡を慕ひ侍らん、衣の上の御情に、大慈の惠みを垂れて、結緣せさせ給へと涙を落す。不便の事には侍れども、我れ〓〓は、所々にてとまる方多し、只人の行くに任せて行くべし、神明の加護、必らず恙なかるべしと云ひ捨てゝ出づ。哀れさ暫くやまざりけらし。一家に遊女もねたり萩と月の 、廿二二御寶前にかけ奉る初しぐればせを忌やことしもまめで旅虱義仲寺へいそぎ候初時雨ばせを忌や晝から錠のあく庵ばせを忌に丸いあたまの披露哉芭蕉翁繪詞傳茶同同同同一八五

給ふとかや。加賀の太田の神社にて、cei社にこめられ侍るよし。の金を鏤め、おたし無殘やな甲の下のきり〓〓す芭蕉翁全集龍頭に鍬形うちたり。げにも平士の物にあらず。号집ひらざむらひがた樋口次郞が使せし事共緣起に見えたり實盛が甲錦のきれを見給ふ。も) ;)實盛討死の後、目庇より吹返しまで、木曾義仲願狀に添へて此の往昔、むこなか菊唐草のほりも義朝より賜はらせ芭蕉翁綸詞傳例幣の芭蕉野分して盥に雨を聞く夜哉芭蕉忌や古來稀れなる道の德筏へも梅津かつらの近ければ玄白と茄子に間違ふ醫者ひとり名月も來ませ〓もそのころは俤濱ゆふの頓寫經木やばせをの會雁町にふたひろほどな叔母のことづてからすを鳶の低う見て居るおの〓〓起きよ月はともあれの南に百傳馬揃ふる秋の來て○同年引きいる寺のむまの高し蓑 のはなむけゆ門き前むら雨の片々そゝぐ山の端に我影をいのれとうつす御神鏡夕顏や醉うて顏出す窓の穴海錢つけた荷の連におくるゝ川風さつと燈に夏の蟲渺表々八と章松の朝凪廿二二同同素車大巴巴尙百子芭仙眠魚蓬湖如普芭時丸雨斗蓼水美貢交蕉茶江尺戶堂風成蕉八九

芭蕉翁全集全聖寺といふ寺にとまりて、朝堂下に下り給ふに、もと迄追來る折りふし、庭中の柳ちれば、庭掃いて出るや寺に散るやなぎ愚按、春より秋迄の道の記、おくの細道といふ。と伊勢に尾張に近江を經て、伊賀に年こえ給ふ若き僧共紙硯をかゝへ階のう른た元祿三午の年、都近き伊賀に、年をとり給ひて、薦をきて誰人います花の春神路山に詣で給ひては、西行の涙をしたひ、何の木の花とも知らず匂ひかな裸にはまだ衣更着のあらしかな二見の浦にて、增賀の信を悲しむとありて、疑ふなうしほの花も浦の春の #〓侘びられし佛ゑがく時雨哉入る月や時雨ると空の底光り曉の墓もゆるぐや"千鳥數寄表八章蓑蟲の音を聞きに來よ草の庵五合ばかりは酒もある月世の中はまだ十日菊の香にめでゝ江戶踏むで見る非番たま〓〓黃から茶に裏は昔しの儘ながら千兩出來た一家ふるまひ宵の間の櫻も雪と降るからに苗代風の冴えかへりけり芭蕉翁繪詞傳杉丈同風草芭龜盤吏葉其菊鷺蕉求中中守雨平川九三時

芭蕉翁全集九六今年の一夏は國分山に籠り、山を下らで、里の童に谷川の石を拾はせて、一石に一字づゝの法華經をうつし給ふことあり。其の記に、石山の奧、岩間の後に山あり。國分山といふ其のかみ國分寺の名を傳ふなるJべし。麓に細き流を渡りて、翠微に登る事三曲二百步にして、八幡宮たゝせ給から神體は、彌陀の尊像とかや唯一の家には甚だ忌むなる事を、兩部光りを人の詣でざりければ、:)和げ、利益の塵を同うし給ふも亦貴し。日頃は、いと神Se炒ぎさび物靜かなる傍に、住みすてし草の戶あり。蓬根笹軒をかこみ、屋根もり壁落ちて、狐狸ふしどを得たり。幻住菴といふ。主の僧某は、勇士菅沼氏、曲に水子の伯父になむ侍りしを、今は八年ばかり昔しになりて、正に幻住老人の名둘をのみ殘せり。予れ又市中をさる事十年はかりにして、五十年やゝ近き身は、蓑虫のみのを失ひ、蝸牛家をはなれて、奧羽象潟の暑き日に面をこがし、高砂른た子あゆみ苦しき北海のあら磯に踵を破りて、今年湖水の波に漂ひ、にほの浮巢とあきの流れとゞまるべき芦の一本のかげ賴もしく、軒端茨あらため、墻根結ひそへ一石ふ出でじとさへ思ひなどして、そみぬ。卯月の初め、いと假そめに入りし山の、やがて、先づたのむ椎の木もあり夏木立〇187愚按、幻住菴記は、猿蓑集にあり。國分山の菴の跡には、蕉翁八十年に當り給ふ時、予しるした34の石を建つ。又石經を埋み給ふ上には、勢田の住人、雨橋、扇律等經塚の二字の石を立てぬ。材二二四表八章名月や門にさし來る汐かしらたちいでゝ猶夕暮の秋禿どもわするゝ扇よびかけて續いて走る赤裳むらさき便船に芦投げわたす步み板藁屋さびしう蠣むいて居る晝迄は小春なりしが打時雨しぐれぬ山も二つ三つ四つ芭蕉翁繪詞傳千夜乳芭打三蓼言蕉峰梧三月人思彥九七

湖水を望みて、れ、今のあはれなる樣こそ心とゞまれ、嵯峨なる去來が別業、元祿四未の年、雪のあした、さみだれや色紙へぎたる壁のあと柚のはなに昔しを忍ぶ料理の間奇石怪松も葎の下に隱れたる竹緣の前に、行く春をあふみの人と惜しみける大津繪の筆の始めは何佛比良三上雪かけわたせ鷺の橋芭蕉翁全集湖水を眺め給ひて、春を惜しみ給ふに、粟津の無名菴に、落柿舍に日頃掛錫し給ふに、春を迎へ給ふ時、彫らせし눌梁柚の木一本、畫ける壁も、作り磨かれし昔しの樣より花香ばしければ、風に破れ雨にぬ芭蕉翁給詞傳リ起きあがる菊ほのかなり雨の跡そこらから貰うて嵯峨の丸太建鳥おどす下部が弓矢わらはれて哀汗と湯の香を振分くる明衣哉水仙に我れは茶をせぬ或靑ねがはゞ蝶に生れかはらむ三人よれば尼もかしまし隣りあらはに月のやれがきれは田雪陸殺生石の 南あ表翁の螢の句に擬す奧○る八石を枕に夏の千水は花見し夢章鳥のひんがし主蟲心哉鳥廿二二(主哉桃葛金豊倉意富春芭嘯一〇一隣叟是扇鼠長屋步蕉山
いいさぁ
は羽織長う着なして、川中に床をならべて、四條河原の納涼を見て、ほに罵る。Th小督の局の舊跡にては、i愚按、河風やうすかき着たる夕涼みうきふしや竹の子となる人の果芭蕉翁全集流石に都の景色なるべし。훅き嵯峨日記にあり。法師老人、夜すがら酒飮み物食ひ遊ぶ。せう くんかき連ね給ひけるは、昭君村の柳、共に交はり、6巫女廟の花の昔し、もム左桶屋かぢやの弟子ら迄、女は帶の結目嚴めしく、夕月夜の頃より有明過ぐる迄、思ひやらるとて、暇えが男芭蕉翁綸詞傳咲きつくす草いろ〓〓のやどの月ふたつ三つ白髪に櫛の入ればえも夜は旣に一番鷄のこゑ〓〓に君火たけよき物見せむ雪丸け痘瘡恥づる妹なほ霧の籬より精靈をもてなし草の露ながら百日の鯉にをり〓〓〓も出て柴伊勢ものがたりよむやうな春かゝる出仕の例もそのかみ立つて蕗つむ年わすれ酒摺りのこしたる籾のさむしろ月ふりかへる後の朝かぜ都にたらぬものはなに〓〓橋同越えて石橋の露金屏の松の古さよ冬ごもり火桶をなかに手かヾまぬ友表八章の #廿二六 (祗兀蓼一祗鬼白芭玉和投士竹友白芭思ひやらるとて、門三子也茶ト秀蕉峰茶峰條文鷗翅蕉

に玉蟾の影を碎きて、いふなるよし、やかに照渡れり。(リ)月見むとて、鎻明けて月さし入れよ浮御堂芭蕉翁全集船を堅田の浦に泛め給ふに、今宵尙其のあたり遠からじと、かねてきゝぬ仲秋望の日は、新に千體佛の光りを添ふ。all待つ程もなく月さし出でゝ、かの堂上の欄干によるに、月の浮御堂にさし向ふを鏡山と湖上花水面芭蕉翁繪詞傳頃も夏瀧に飛込むこゝろかな氣散じや手形もいらず奧の花や四月に咲くを關の山初橋に來て踏みゝふまずみ蝸牛茂れ〓〓鰹陸さぞな所は小名の濱關〓絕橋小名濱須ヶ崎奧名も玉川の山千鳥玉郭柳公初月ももる越のちヾみの雲ひとへ松に圓居の祭りくつろぐ〇いつの間に野郞になりし鉢坊主旭から夕日に鳥の影おちて年の市線香買ひに出でばやなかへす〓〓も痰濱は干鰯の小判さらへるさそふ表羽織も八章瘤紙衣にの禮杖鰹苔蕉の鳥其二七桃虛畫祖斑牛深花芭隣舟鏡山石家松月蕉

芭蕉翁全集一一二三秋を歷て江戶に歸り、住菴におちゐ給ふに、舊友門人いかにととへば、兎も角もならでや雪の枯尾花元祿五申年、江戶に春を迎へ給ひて、年々や猿にきせたる猿の面數へ來ぬやしき〓〓の梅柳灣たい、古き菴近く、新に菴を作りて人々の參らせけるに、茅屋つき〓〓しう、松の柱竹の枝折戶、南にむかふ地は、富土に對して柴門景をすゝめて斜めに、浙江の潮注意三股の淀に湛へて、月を見るたより宜し。名月の粧ひにとて、先づ芭蕉を移す。其の葉廣うして琴を覆ふに足れり。或ひは半ば吹折れて、鳳鳥の尾を痛め、靑扇破れて風を悲む。たま〓〓花咲くも花やかならず、莖太けれども斧に當ずらず。かの山中不材の類木にたぐへて、その性よしとや。深川大橋の造作の頃初雪や懸けかゝりたる橋のうへ元祿六酉のとし、江戶におはして、隱れ家の春の心を、一一二舊友門人いかにととへば、人も見ぬ春やかゞみの裏の梅みちのく岩城の露沾のきみが、館の花見に招かれ給ひて、當坐、西行の菴もあらむ花の庭深川の末にて、船に月見給ふ折りふし、○川上とこの川下や月の友き元祿七戌のとし、春立ちそむるより、古〓の方ゆかしとやおぼしけむ、蓬來にきかばや伊勢の初だよりき、ち上野の花見にまかり給ふに、幕うち、騒ぎ、げを賴みて、四つ合器のそろはぬ花見心かなき尾張にて舊交の人に對して、世を旅に代かく小田の行きもどり伊賀の雪芝が許におはせし時、庭に松植ゑさせけるを、涼しさやすぐに野松の枝のなり芭蕉翁繪詞傳當坐、ものゝ音のさま〓〓なる傍の松か

同じく大堰河の邊り道遙し給ひて、超嵯峨の小倉山なる、六月や峰に雲おくあらし山松杉をほめてや風のかをる音芭蕉翁全集だ常寂寺に詣で給ひて、き芭蕉翁繪詞傳落ちつくや明日の五月にけふの雨言の葉や茂りを分けて塚二つ武軍辛崎とそ根とはいかに松の蟬めく二人の嫁や花あやめ隈仙實方中將及馬の塚武次信忠信兩妻の像の隈松の臺誰松殿の下凉み武軍丸山の構へも武き若葉星の井の名も賴もしや杜若義經腰掛松丸山城跡哉文塚山五の月字文ば安山淺字達井女に摺の石のかの香を覗けば答ふ藪蚊哉摺り石今も籠る原井土器投げん淺香山山幅知るか扇麥哉畠の幅奧陸千鳥の廿二八知下るか凉扇麥み哉畠桃一一七隣

芭蕉翁全集き)舊里に歸り、盆會營み給ひし時、家は皆杖に白髪の墓まゐり月の夜ごろ、同じ國におはして、今宵誰れ吉野の月も十六里九月八日、支考、惟然をめしつれて、難波の方へ旅立ち給ふ。こは奈良の舊都の、九日を見むとなり。はらからも、遠く送りいで、互に衰へゆく身の、此のbets別れの一しほ力なく思ほゆるとて、かご53供せし支考、惟然に、介抱よくしてなどいひて、後影見ゆる限り、立ちておはしけるとぞ。其の夜は猿澤のあたりに宿り≦給ふに、月隈なく鹿も聲亂れて、あはれなれば、びいとなくしり聲悲し夜の鹿の #并二陸奥千鳥桃隣宮城野并二桃隣野もとあらの若葉や花の一位南村にて病氣凌霄の木をはなれてはどこ這はん一息は親にましたる 〓水かな十符の菅刈頃に刈られぬ菅や一構鹽釜禰宜呼びに行けば日の入る夏神樂月凉し千賀の出汐は分の物松島橘や籬が島は這入口橋二つ滿汐凉し五大堂とみの山麥喰うて島々見つゝ富の山芭蕉翁繪詞傳若葉や花の一位刈一構橘橋這五入大口堂し

芭蕉翁全集二一四明くれば重陽なり。菊の香や奈良には古き佛たち十三夜の月かけて、住吉の市にまうで給ひて、升買うて分別かはる月見かなま古〓を出で給ひて後は、ななやみ勝ちに煩ひ給ふに、或時ひとりごち給ふは、此の秋は何で年よる雲に鳥居た三十日の夜より、泄痢といふ病ひに、いと强く惱み給ひて、物宣ふも力なく、にさ5.手足氷れる如くなり給ふと聞くより、京よりは去來、太刀も取敢へず馳下り、大津よりは木節、藥囊を肘にかけてかちより來つき、丈草をはじめ、正秀、乙レ州が輩迄、と聞くに從ひて難波に下り、病ひの床にいたはり仕へ奉つる。元より心神の煩ひなければ、は、小な不淨を憚りて人を近くも招き給はず。十月五日の朝より南の御堂の前、靜かなる所にうつし參らす。愚按、この家、花屋仁右衞門といふが別屋にて、今にあり。二一四な或時ひとりごち給ふは、今にあり。흴硯にすみする音흴八日の夜ふけて、かたはらに居ける、呑舟といふ男を召して、硯にすみする音のしけるを、如何ならんと、人々いぶかり思ふに、旅に病みて夢は枯野をかけめぐるきまた、枯野をめぐる夢心ともせばやとなむ、これさへ此の世の妄執ながら、風雅の道に死せん身の、道を切に思ふなり、生死の一大事を前に置きながら、此さん すゐやの道を心にこめ、いねても朝雨暮烟の間にかけり、醒めても山水野鳥の聲に驚く、之を佛の妄念といましめ給へるも、今ぞ身に覺え侍る。此の後は只生前のか、俳諧を、忘れ侍らむとのみ思ふよと、返すがへすも悔み給ふとかや。の #廿二三 (陸奧千鳥石の卷茂る藤やいかさま深き石の卷金花山御手洗や夏をこぼるゝ金花山芭蕉翁繪詞傳廿二三(桃隣

芭蕉翁全集一二八글九日十日、特に苦しげなるに、十日の暮より其の身〓りて常にあらず、愈賴みすくなく、人々心ならず思ふ。夜に入つて、去來を召してやゝ物語りあり。自ら一通の文認め給ふ。兄の許へ送らるゝなるべし、其の頃其角は、人と伴ひて紀の路迄上りし道、さるべき契りありてや、此の地にかく惱みおはすと聞いて胸騒ぎ、とく尋ね參りて、둘病床を伺ひ、力なき聲をきゝて、言葉をかはせりとぞ。十一日夜、木節をめして宣ひけるは、我が往生も明暮にせまりぬとぞ覺ゆ元より水宿雲棲の身の、る。此の藥かの藥とて、果敢なく求むべからず。願は5)§くば老人の藥をもて、唇をぬらしさふらはむと、深く賴みおき給ひて、後は左右の人を退けて、不淨の身を浴し、香を焚いて安臥し、ものいひ給はず。十二15日申の刻ばかりに、ねぶれるを期として、死顏美はしく笑を含み給ふ。行年五十一歲なり。其のからに物打ちかけ、;長櫃に納れて其の夜密かに、商人の用意5.か、に拵へ、川船にかきのせて、去來、其角、丈草より、壽貞が子の次郞兵衞迄、十餘人なきがらを守り奉つり、とt夜すがら笘洩る露霜の雫に袖寒く、ほ一人々々聲Pたてぬ念佛申して、年頃日頃の賴もしき詞、睦まじき〓へを忍びあふ。常に東こb〇五西に招かれて、越の白山の知らぬ果にて、かくもあらば、聞いて悲しむばかりならんに、一夜もなきがらに添ひ奉りつること、互の本意なれと、あるは喜び55あるは歎きて、十三日の朝伏見に着く。の花が휴陸奥千鳥桃隣金花山黃精の花やきんこの寄り所水晶や涼しき海を遠目鏡高館金堂や泥にも朽ちず蓮の花田植等のむかし語りや衣川軍せむ力も見えず飛ぶ螢虹吹いてぬけたか凉し龍の牙芭蕉翁繪詞傳一二九휴桃隣一二九

芭蕉翁全集一三二Sこの夜、膳所より、臥高、昌房、探志の面々は、行違ひて難波に下り、伊賀の製천親しき誰彼は、大和路を越えて、同じく來りしも、空しきからにさへ遲れ參らせて、悲しく別れゆきしとぞ。t伏見より、手々に擔きもて、b粟津の義仲寺に移し奉つる。玆なむ、國分山の椎aaがもとは、浮世へ遠くて跡とふものゝ、水向けむに賴り惡しゝ、木曾殿と塚をこと ぐさ可ヨ並べてとありし、常の言草によるものならし。からに召させ奉つる淨衣は、智月つちの尼、乙州が妻、縫ひて着せまゐらす。十四日、夕月夜打曇りがちに、物思へる月影のいと憐れなるに、木曾塚の右に並べ、土穿ちて納め奉つる。義仲寺のすなに は直愚上人を導師として、各々燒香し奉つるに、京難波、大津、膳所より、被°官隱者迄も此の翁を慕ひ奉つり、招かざるに來り集まるもの三百餘人也。此の地に自らふりたる松あり、柳あり。かねて塚となるの謂れならむと、其の儘奪比賽事〇に卵塔をまねび、あら墻をゆひ、冬枯の芭蕉を植ゑて、名の紀念とす。常に、ま風景を好み給ふ癖ありけるに、所は長等山を後にし、前には漣〓く湛へて、遺一三二探志の面々は、行違ひて難波に下り、伊賀の製천同じく來りしも、空しきからにさへ遲れ參ら骨を湖上の月に照すこと、かりそめならぬ德光の至りなるべし。陸奥千鳥荒野朴木.の葉や幸ひの下凉み古川秋山壽庵子の宿暑日や神農慕ふ道の草小町塚晝顏の夢や夕日を塚の上盤提山爲家の山桅白し盤提山山路唫おそろしき谷を隱すや葛の花燒飯に 靑山椒を力かな芭蕉翁繪詞傳桃隣朴暑の草晝爲白し盤提山-三三

芭蕉翁全集一三大愚按、芭蕉翁の三字の石碑は其の時に僧丈草が筆にて、其角去來の輩、建てぬとかや、廟の回りの石垣は、百川法橋經營し、行狀の碑文は、角上老人彫刻す。芭蕉堂は、蕉翁八十年の昔しおのれ蝶夢造立し、粟ぢ;津文庫は百年の今沂風成功す。繪法橋狩野正榮至信癸丑五月寫爲蝶夢師縮狩野正榮原圖少有所改定云田偃武ま如何なる宿世の因緣にや、おのれ、鳥を駈るの頃より、手ならひ文學ぶのいとすて、まあれば、芭蕉翁の風雅の體をしたふのあまり、ありし昔しの跡をなつかしみたらて、はじめ伊賀の國に生れ、浪花の津に終り、粟津の寺に祭り奉つりし迄のあ흩らましを繪にあらはさまほしく、近きとし、友なりける狩野法橋をかたらひよだえこりけるが、すでに筆を取りけるときは、計らずも內裏造營の御事はじまりて、公の務めにひまなく、やゝ六年を歷て今年の秋のすゑ、蕉翁繪詞傳なりぬ。そのなか、詞は、翁の自らかき給ひし、または其角がものせし終焉記、支考が笈日記の數數をもて綴る。さるに詞をかゝむに、時の右筆はたれならむと議するに、法橋のいふ。よしなのわざや、名筆えらみて何せむ。さは世にある人の手鑑などいひて、筆の寶あつむるがごとし。たゞ法師のありのまゝなる筆の、拙きあとをの一殘しなむこそ、後にこの道の人の見て、うべかゝる筆にもつゆ慚ぢず、みづか注二ら書けるぞ鳥滸ながら、道にまめやかなりし法師なりしよと、いはむは本意ならずやといさむるに、げにもさはいはれたり、必ず人に見すべきの料ならず、芭蕉翁綸詞傳
芭蕉翁全集偏へにこたび蕉翁の百回忌の、懷舊の手向けにこそと思ひかへし、たる老いの筆をそめて、義仲寺の芭蕉堂の影前に奉つるは、寛政四年子の冬十月十二日わなゝかれ蝶夢幻阿彌陀佛謹書寛政五年癸丑歲四月湖南菊一一井口保孝應需書蕉門俳諧書林橘井筒屋屋治庄兵兵衞衞泊船集
芭蕉翁全集泊船集叙黃門定家の卿の曰く。誹諧と申す體は、利口なり。ものをあざむきたる心なるべし。心なきものに心をつけ、ものいはぬものにものをいはせ、利口したるすがた成るべしとは、誹諧といふ字こゝろを、滑稽よりして註し給へるものにして、今の正風體にことなり。滑稽は管仲楚國にゆいて、楚人に答へしが如し。本朝にも一休和尙の、人にまじはれるたぐひならんかし。是は人に相あたる答辯の上にありてのはいかいにして、いはゆる利口なり。いま世にはいかいと專らいへるものは、只敷しまの上にありてのみなり。はいかいのこゝろは、よろづの道よろづのわざにもかようて有りぬべし。つらゆきの、はいかい歌と、歌の字を添へて書けるもこの故なるべし。はいかいの正風、いにしへは未だ發せずして道に悲しめる人もすくなし。遠くは賴朝、俊賴、忠もり、時まさ、西行、尊氏、頓阿、近くは宗祇、玄旨などの吟は書に筆せり。人みなしれる處也。其の吟跡は一端にとゞまりて、深く感情を呻吟するにたらず、月花に痩するにいたらず、西行、宗祇のあとをたづぬる人も聞かざりけるに、宗鑑貞德にいたりてはじめて道ひらけ、世人此時この道のたのしむべき事をしれりけり。時に宗因出でゝ古風くづれ、因が風流世に行はれて、ますます道廣くなりけるに、時至りけん、先師芭蕉翁出でゝ、奧のはてまで西行、宗祇の足あとをしたひありき給ひては、紀行數册子及び連歌は冬の日といふ五歌仙世にひゞき、ひさご、さるみのいできて新らしき風流を起し、正風泊船集叙
芭蕉翁全集の膓をみせ給ひ、句に千歲不易のすがた一時流行の乃變格あきらか也。其れよりかはる〓〓あたらしみをさぐり得たまひしは、すみだはら、續さる蓑是なり。抑も此道のすがた上代にありといへども、やうやく宗鑑、貞德にいたりて道ひらけ、先師を待つてはじめて正風妙に入り、さびしをりおのづからそなはれり。今たとひ人麿、赤人再生してはいかいにあそびたまふとも、必らず掌を撫してよしと稱せん。まことにはいかいのたのしむべき事、今の世にありなん。しかるに、先師の詠草遺稿旅泊の書きすて、津々浦々にすくなからず。今拾ふとも盡く得べからず。只集に出で或は人の耳にのこりけるほ句をひろひ、多くは新古をわかたず、尤も同士の家にかくせる遺章一行ももとめず、細道にのこりけるはかゝげず、集めて泊船堂の遺稿のひとつとなしぬ。僕つたなき筆につらね侍れば、魯魚の事は見る人校正し給へ。其の連歌の遺韻、文章、道の紀若干今さし置きぬ。尙國國にのこれる家珍も、より〓〓出したまへかしとしかいふ。元祿拾一寅年初秋風國謹識
芭蕉翁全集泊船集卷之一芭蕉翁道の紀一四四牛たれげに泣くあり。此の川の早瀬にかけて、浮世の波をしのぐにたず、露ばかりの命まつ間と捨て置きけむ、小萩がもとの秋の風、こよひやちるらんあすやしをれんと、袂より喰物なげてとほるに猿をきく人すて子にあきのかぜいかにいかにぞや汝ちゝににくまれたるか、母にうとまれたるか、父はなんぢを惡むにあらじ、母は汝をうとむにあらじ、唯是天にして、汝が性のつたなきをなけ。ひねもす大井川越ゆる日は、終日雨降りければ、秋の日の雨江戶に指折らん大井川ちり眼前道のべの木槿は馬にくはれ鳬二十日餘りの月かすかに見えて、山の根ぎはいとくらきに、馬上にむちをたれて、數里いまだ雞鳴きざんむならず、杜牧が早行の殘夢、小夜の中山に至りてたちまち驚く。千里に旅立ちて路粮をつゝまず、三更月下無何入といひけむ、むかしの人の杖にすがりて、貞享甲はたっ、子秋八月、江上の破屋をいづる程、風の聲そゞろさむげなり。野ざらしを心に風のしむ身かな秋十とせ却つて江戶を指す故〓關越ゆる日は雨降りて、山みな雲にかくれけり。霧しぐれ富士を見ぬ日ぞおもしろき何某千りといひけるは、此のたび路のたすけとなりて、萬いたはり心をつくし侍る。常に莫逆の交りふかく、朋友に信あるかな此の人、深川や芭蕉を富士に預け行く千り富士川の邊りを行くに、三ツばかりなる捨子の哀ちり馬に寢て殘夢月遠しちやのけふりおうし松葉や風瀑が伊勢に在りけるを尋ね音信れて、十日ばかり足をとゞむ。()暮れて外宮に詣で侍りけるに、一の鳥井の陰ほのくらく、御燈處々に見えて、また上もなき峯の松風身にしむばかりふかき心を起して。みそか月なし千とせの杉を抱くあらし腰間に寸鐵を不帶、襟に一囊を懸けて、手に十八の珠を携ふ。僧に似て塵あり俗に似て髪びんづらなし。我れ僧にあらずといへども、髪なききものは浮屠の屬にたぐへて、神前に入るをゆるさず。西行谷のふもとに流れあり、をんなどもの芋あらふをみるに。いもあらふ女西行ならば歌よまん其の日のかへさ、ある茶店に立寄りけるに、てふといひけるをんな、あが名に發句せよと云うて、泊船集卷之一白き絹出しけるに書付け侍る。蘭の香や蝶の翅にたきものす閑人の茅舍をとひて蔦植ゑて竹四五本のあらしかな長月の初め、故〓に歸りて、北堂の萱草も霜枯果てゝ、今は跡だになし。何事も昔しに替りて、はびんしろらからの鬢白く眉皺寄りて、只命有りてとのみ云ひて言葉はなきに、このかみの守り袋をほどきて、母の白髪をがめよ、浦島の子が玉手箱、なんぢが眉もやゝおいたりと、しばらくなきて、手にとらば消えんなみだぞあつき秋の霜大和國に行脚して、葛下の郡竹の內と云ふ所にいたる、此處はれいのちりが舊里なれば、日頃とヾまりて足を休む。藪よりおくに家在りわた弓や琵琶に慰む竹のおく二上山當麻寺詣で、庭上の松をみるに、凡そ千と十)をんなどもの芋あら凡そ千と
芭蕉翁全集せもへたるならん。大いさ牛をかくすともいふべぶつえんけん。かれ非情といへども、佛緣にひかれて、斧さん斤の罪をまぬかれたるぞ、幸ひにしてたつとし。僧朝顏幾死かへる法の松獨りよし野のおくにたどりけるに、まことに山深촉く、白雲峯に重なり、烟雨谷を埋んで、山賤の家處々にちひさく、西に木を伐る音東に響き、院々の鐘の聲心の底にこたふ。むかしより此の山に入りて世をわすれたる人の、おほくは詩にのがれ歌だんにかくる。いでや唐土の盧山といはんもまたむべならずや。ある坊に一夜をかりて碪打つてわれにきかせよや坊が妻さいじやうにん西上人の草のいほりのあとは、奧の院より右の方二町ばかりわけ入る程、柴人のかよふ道のみわづかに有りし、さかしき谷をへだてたるいとたふとみづし、彼のとく〓〓の〓水は、むかしにかはらずと見えて、今もとく〓〓と雫落ちける。露とく〓〓心見にうき世すゝがばやほ若是扶桑に伯夷あらば、かならず口をすゝがんもしこれ許由に〓げば、耳をあらはん。山を登り坂を下るに、秋の日既に斜になれば、名ある處々見殘して、先づ後醍醐帝の御陵を拜む。御廟年を經てしのぶは何をしのぶ草あるあ大和より山城を經て、近江路に入りて美濃にいたるに、います山中を過ぎて、いにしへ常盤の塚あり。伊勢の守武がいひける、よしとも殿に似たる秋風とは、いづれの處かにたりけん。我れも亦、義朝の心に似たりあきの風不破秋風や藪も畠も不破の關と大垣に泊りける夜は、木因が家をあるじとす。武C6藏野出でし時、野ざらしを心におもひて旅立ちければ、死にもせぬ旅ねの果よあきのくれ桑名本當寺にて冬牡丹千鳥よ雪のほとゝぎす草のまくらに寢あきて、まだほのくらき中に、のかたへ出でゝ、あけぼのやしら魚白き事一寸熱田に詣づ(80g社頭大いに破れ、築地はたふれて草村にかくる、こかしこに繩をはりて小社の跡をしるし、爰に石をすゑて其の神と名のる。よもぎ、しのぶ心のまゝに生えたるぞ、なか〓〓に目出度きよりも心とまりける。しのぶさへ枯れて餅かふやどり哉ふうぎん名護屋に入る道の程諷吟す狂句凩の身は竹齋に似たるかな草まくら犬もしぐるゝか夜の聲ゆき見にありきて泊船集卷之一市人よこの笠うらう雪の傘旅人を見る馬をさへながむる雪の旦かな海邊に日暮して海くれて鴨の聲ほのかに白し爰にわらぢをとき、かしこに杖をすてゝ、がらに年の暮れければ、年くれぬ笠きてわらぢはきながらといひ〓〓も山家にとしを越して、誰が增ぞ齒朶に餅おふ牛の年奈良に出づる道のほど春なれや名もなき山の朝霞二月堂に籠りて水取りや氷の僧の沓の音京に登りて、三井秋風が鳴瀧の山家をとふ。梅林梅白し昨日や鶴をぬすまれし濱たびね旅寢な
芭蕉翁全集樫の木の花にかまはぬすがたかなたちく伏見西岸寺任口上人にあうて我衣にふしみの桃の雫せよ大津に出づる道、山路を越えてやま路來てなにやらゆかしすみれ草湖水眺望辛崎の松は花よりおぼろにて晝の休らひとて旅店に腰を懸けてつゝじいけで其の陰に干鱈さく女吟行菜畠 に花見貌なる雀哉水口にて廿年を經て故人にあふ命二ツ中に活きたるさくらかな伊豆の國蛭が小島の桑門。これも去年の秋より行脚しけるに、我が名をきゝて、草の枕の道づれにもと、尾張の國まで跡をしたひ來たりければ、いざともに穗麥くらはんくさまくら此の僧われに〓げて曰く。圓覺寺大類和尙ことし若青む月のはじめ、迁化したまふよし、まことや夢のこゝちせらるゝに、先づ道より其角が方へ申しつかはしける。梅戀ひて卯の花拜むなみだかな贈杜國子白けしにはねもぐ蝶のかたみかな二たび桐葉子がもとに在りて、今やあづまにくだらんとするに、牡丹藥深く分出づる蜂の名殘かな甲斐の國山家にたちよりてゆく駒の麥に慰むやどりかな卯月の末いほりにかへり、旅のつかれをはらす。なつ衣いまだ虱をとりつくさず(後へに處々酬和の句、素堂の跋あり今える)素堂の文は七部拾遣に)出す。校訂者しるす菜える泊船集卷之二芭蕉庵拾遺稿洛陽年々や猿に着せたる猿の面蓬萊に聞かばやいせの初便り若菜菎蒻にけふは賣りかつ若菜かな風麥亭春たちてまだ九日の野山かな梅網代民部の息にあうて梅の木に猶やどり木や梅の花山里は萬歲おそし梅の花子良舘の後に梅ありといへば御子良子の一もと床し梅の花こんにやくのさしみも少し梅の花春もやゝけしきとゝのふ月と梅旅がらす古巢は梅になりにけりかぞへ來ぬ屋敷々々の梅柳梅が香にのつと日の出る山路かな風國撰次春の部元日に田ごとの日こそこひしけれ誰れやらが姿に似たりけさの春元日はひるまで寢てもちくひはづしぬ二日にもぬかりはせじな花の春三日口を閉ぢて題正月四日大津繪の筆のはじめは何佛京ちかき所に年をとりてこもを着て誰人います花の春年立つや新年ふるし米五升人も見ぬ春や鏡のうらの梅泊船集卷之二の
芭蕉翁全集いせにてその女亭暖簾の奧ものゆかし北の梅いがの城下に、うにといふ物あり。わるくさき香也。香ににほへうにほる岡の梅の花何某新八身まかりけるに、一周忌に父梅丸もとへ申し遣はされしよし、一歲夢のごとくにして、猶佛たちさらぬ歎きの程、おもひやる斗り也。梅が香にむかしの一字あはれ也餞乙州東武行梅若菜まりこの宿のとろゝ汁門人何がしみちのくに下るを、馬のはなむけしたまひて忘るなよ藪の中なる梅の花梅柳さぞ若衆かな女かな(天和の頃の吟なり)鶯うぐひすや餅に糞する緣の上鶯や柳のうしろ藪の 前うぐひすを魂にねむるか嬌柳(此の句もみなしぐり比也)椿鶯の笠おとしたるつばきかな柳はれ物に柳のさはるしなへかな傘に押分け見たる柳かな八九間空で雨ふる柳かな雲雀雲雀なく中の拍子や雉子の聲永き日を囀りたらぬひばりかな栖去之辯略之(小文庫に見えたり)わ馬のは雲雀より上に休らふ峠かな雉子高野にて父母のしきりに戀しきじの聲蛇くふと聞けばおそろし雉子の聲つばめさかづきに泥なおとしそむら燕陽炎かげろふや柴胡の糸の薄曇り枯芝やまだかげろふの一二寸伊賀新大佛之記今略之丈六に陽炎高し石のうへ春雨不性さやかき起されし春の雨春雨の木下にかゝる雫かな春雨や蟬の巢つたふやねのもり紙ぎぬのぬるともをらん雨の花泊船集卷之二花さぞな都淨瑠璃小歌こゝの花憂ては方知酒の聖貧しては覺錢神花に浮世我が酒白く食黑し(右二句は延寳の末の吟なるべし)大和の國草尾村にて花の陰謠に似たる旅寢かな木のもとに汁もなますも櫻かな(此句にて歌仙有り、ひさごといふ)いがの國花がきの庄は、そのかみ南部の八重櫻の料に、附せられけるといひ傳へ侍れば、一里はみな花守の子孫かややまとの國を行脚して、葛城山のふもとを過ぐるに、よもの花はさかりにて、峯峯はかすみ渡りたる明ぼのゝけしき、いとゞ艶なるに、彼の神のみかたちあしゝ
芭蕉翁全集と人の口さがなく、世にいひ傳へ侍れば、猶見たし花に明行く神の顏最中の桃の中よりはつざくら(いづれの集か咲きみだすとありぬ)よし野花ざかり山は日頃の朝ぼらけ奉納うらやまし浮世の北の山櫻景〓も花見の座には七兵衞西行像讃すてはてゝ身はなきものとおもへども二月十七日神路山を出づるとて、西行のなみだをしたひ、增賀の信をかなしむ。裸にはまだ二月のあらしかな櫻をはなとねどころにせぬぞ、花にねぬはるの鳥のこゝろよ。花に寢ぬ是もたぐひかねずみの巢春の夜は櫻に明けて仕舞ひけり餞別此のこゝろ推せよ花に五器一具種芋や花のさかりを賣りありく花を吸ふ虻なくらひそ友すゞめちる花や鳥もおどろく琴の塵(この句琴と大鼓と笙と、かきし繪の賛也)觀音のいらかみやりつ花の雲其角が曰く。かねは上野か淺草かと、聞えし前の年の春吟也。尤も病起の眺望成るべし。一聯二句の格也。句を呼びて句花にねぬ雪のふる日はさむくこそあれ花のふる日はうかれこそすれ花の雲鐘は上野か淺草かとす。奈良七重七堂伽藍八重ざくら宗無亭花も宿にはじめ終りや廿日程明日は檜の木とかや、谷の老木のいへる事あり。きのふは夢と過ぎてあすはいまだ來らず。生前一樽のたのしみ外に、あつひすは〓〓といひくらして、終に賢者の警をうけぬ。さびしさや花のあたりのあすならう貌に似ぬ發句も出でよ初櫻洒落堂の記略之四方より花吹入れて湖の海芳野山の花見んとて、伊賀の國より旅立び1/3ミち申されしに、尾州の杜國を同行にて、筆をとりて檜の木笠の裏に戯ふれられしとぞ。泊船集卷之二芳野にて櫻見せうぞ檜の木笠さま〓〓の事おもひ出す櫻かな(此句故郷にてなるよし)山ざくら瓦ふくもの先づふたつしばらくは花の上なる月夜かなうへのゝ花(詞がきはすみだはらにあり)四つごきのそろはぬ花見心かな酒のみゐたる人の繪に月花もなくて酒飮む獨りかな三聖人の圖月花の是やまことの主たち山ぶき山ぶきや宇治の焙爐の匂ふ時ほろ〓〓と山吹ちるか瀧の音涅槃ねはん會や皺手合はする數珠の音
芭蕉翁全集いせにて神がきやおもひも掛けず涅槃像留別鮎の子のしら魚送る別れかな蛙古池や蛙飛込む水 の音二月吉日とて是橘が、剃髮入醫門を賀す。はつむまに狐のそりし頭哉菩提山山寺のかなしさつげよ〓ほり大和行脚のときに、たんば市とかやいふに處にて、日の暮れかゝりけるを、藤の覺か束なく咲きこぼれけるを、草臥れて宿かるころや藤の花苔〓水凍解けて筆に汲干す〓水かな重三靑柳の泥にしだるゝ汐干かな草菴に桃さくらあり。門人に其角嵐雪あり。兩の手に桃と櫻や草の餅深川の草菴を出でたまふとて草の戶も住みかはる世や雛の家悼呂丸當歸よりあはれは塚の菫草猫のこひ猫のこひ休むとき閨の朧月麥飯にやつるゝ戀か猫のつま蝶蝶の飛ぶばかり野中の日影哉起きよ〓〓我が友にせんぬる胡蝶蜆子の賛白魚や黑き目を明く法の網古奈良にて故人に別る二俣に別れ初めけり鹿の角二見の圖を拜見し侍りてうたがふな潮の花も浦の春いせ神法樂何の木の花ともしらずにほひかな題しらず木曾の情雪や生えぬく春の草おとろひや齒に喰當てし海苔の砂雀子と聲なきかはす鼠の巢大比枝やしを引きすてし一かすみ(此の句は翁の吟なるよし、ある人にききぬ。實否はしらずしるしぬ。)道細し相撲とり草の花の露(相撲とり草は菫草の事なるべし。○春季に入れぬ。秋の句たるや。)行く春を近江の人とをしみける泊船集卷之二行く春や鳥啼き魚の目はなみだ(此句の詞書細道にあり。)○春季
芭蕉翁全集泊船集卷之三芭蕉菴拾遺稿洛陽二五六なす野の原にて野を橫に馬引きむけよ蜀魂子規まねくか麥のむら尾花ほとゝぎす大竹原を漏る月夜杜鵑聲横たふや水の上郭公啼き〓〓飛ぶぞいそがはし烏賊賣の聲まぎらはし子規木がくれて茶摘も聞くや子規京にゐて京なつかしや子規ある人の一周忌に杜鵑鳴く音や古き硯箱子規なくや五尺のあやめ草更衣ひとつ脫いでうしろにおひぬ更衣夏來ても只一ツ葉の一葉哉曠野には一葉を一ツ哉と誤りぬ。ならにて風國撰次夏の部山崎宗鑑が舊跡有りがたきすがた拜まん杜若郭公須磨の蜑の矢さきに啼くや郭公(此の詞書は、須磨紀行に見え侍る。是は須磨の蜑の鳶烏を追ふとて、矢を放ちけるに、源平のむかしもおもはれて、吟じたまふなりけり。)郭公正月は梅の花さかり〓く聞かん耳に香燒きて霍公の灌佛の日に生れあふ鹿の子哉笋竹の子や稚き時の繪のすまひ牡丹寒からぬ露や牡丹の花の蜜卯の花卯の花やくらき柳の及びごしほたる草の葉を落つるより飛ぶ螢哉己が火を木々の螢や花の宿ほたる火や船頭醉うておぼつかな風薰丈山の像風薰る羽織は襟もつくろはずさゝ波や風の薰りの相拍子小倉山松杉をほめてや風の薫る音泊船集卷之三落柿舍柚の花にむかしをしのぶ料理の間おなじく五月雨や色紙まくれし壁のあと(二句の時月おなじからずや)瓜我れに似な二ツにわれし眞桑瓜是は門人之道に遣はされし也)朝露によごれて凉し瓜の土花と實と一度に瓜のさかりかな夕べにもあさにもつかず瓜の花瓜の皮むいた處や蓮臺野柳ごり片荷はすゞし初眞桑(此句にて歌仙あり市の菴に見ゆ)美濃に入りて山陰や身をやしなはん瓜畠初眞桑たてにやわらん輪に切らん一五七
芭蕉翁全集此の句は酒田にての吟なり。にやら。四ツにやわらん輪にやせんとあやまりしるしけり。五月雨日の道や葵傾くさつき雨さみだれを集めて早し最上川大井川水出でゝ、島田塚本氏のもとにとどまりて。さみだれの空吹きおとせ大井川兼て耳驚かしたる二堂開帳す(ほそみち)五月雨のふり殘してや光堂五月雨や蠶わづらふ桑のはた髮生えて容顏靑し五月雨五月雨にかくれぬものやせたの橋露沾公に申し侍る〓五月雨に鳰の浮巢を見に行かんいづれの集なすびちさはまだ靑葉ながらになすび汁(是は島田にての吟草也)七日羽黑山にこもりて鶴が岡に出づる。重行亭産めづらしや山を出羽の初なすびひるがほひるがほにひるねせうもの床の山子ども等よ晝顏咲きぬ瓜むかんひるがほに米つき凉むあはれ也粽粽ゆふかたてにはさむ額髮物がたりのすがたも、一集にあるべきものとて、去來が猿みのに遣はされしよし給はりぬ。前がき今略しぬ。あやめ草紐にむすばん草鞋の〓田うゑ奧州しら河の關こえて風流のはじめや奧の田うゑうた田一枚うゑてたちさる柳哉笈日記に「渺々と尻ならべたる田うゑ哉」と云ふ句を入集いたされけれど、是は伊丹の句にて、翁の句にはあらず。晝寢ひや〓〓と壁をふまへて晝寢哉晋の淵明をうらやむ窓形りに晝寢の臺やたかむしろ月山にて雲の嶺いくつ崩れて月の山大津丹野亭ひら〓〓とあくる扇や雲のみね蓮の香に目をかよはすや面の鼻(丹野は能太夫なればかくは申されし也)湖やあつさををしむ雲のみね泊船集卷之三大津湖仙亭水雞此宿は水雞もしらぬ扉哉露川が等さやまで道おくりして、り寢す。水雞啼くと人のいへばやさや泊り蟬頓て死ぬけしきも見えず蟬の聲さびしさや岩にしみ込む蟬の聲稻葉山搗鐘もひゞくやうなりせみの聲タ顏夕顏や醉うて顏出す窓の穴夕顏にかんぺうむいてあそびけり夕顏の白く夜の後架に帋燭とりて(是は天和の頃の句なり)凉共にか
芭蕉翁全集○川中の根木によころぶ凉み哉飯あふぐ嚊がちそうや夕凉み○凉しさや海に入りたる最上川四條の川原すゞみとて、夕月夜のころより有明過ぐる頃まで、川中に床をならべて、夜すがら酒のみものくひあそぶ。おんなは帶のむすびめいかめかしく、をとこは羽織ながう着なして、法師、老人ともに交り、桶やかぢやの弟子子までいとま得がほにうたひのゝしる、さすがに都のけしきなるべし。川風や薄かき着たる夕すゞみ閑居をおもひたちける人のもとに行きて凉しさはさし圖に見ゆる住居かな淵菴不玉亭あつみ山や吹浦懸けて夕涼み尾花澤〓風にて一六〇すゞしさを我が宿にしてねまる也腰長腰長や鶴脛ぬれて海凉し象潟象潟の雨や西施が合歡の花西行櫻西行法師象潟の櫻はなみに埋もれてはなの上こぐ蜑のつり船花の上漕ぐとよみたまひけむ、古き櫻もいまだ蚶滿寺のしりへ殘りて、陰波を浸せる夕晴、いと凉しければ、夕晴や櫻に凉む波の花十八樓の記(笈日記に見えたり)此のあたり目にみゆるものは皆凉し野明亭すゞしさを繪にうつし見嵯峨の竹風瀑を餞別す○法師忘れずば小夜の中山にて凉め雪芝亭凉しさや直に野松の枝の形り唐破風の入日や薄き夕凉み詞書畧之秣負ふ人を枝折の夏野かなもろき人にたとへん花も夏野かな(此の句は追悼の吟也)。かたつぶり角ふり分けよすま明石あかしの夜泊蛸壺やはかなき夢を夏の月あかし郭公聞行くかたや島一ツすま月を見ても物たらはずや須磨の夏すまあかしの句、如此ならべて申されしにはあらず、今集めならべしものなりけり。泊船集卷之三正成之像鐵肝石心此人の情なでしこにかゝるなみだや楠の露竹醉日ふらずとも竹植うる日は蓑と笠岐阜にておもしろうてやがてかなしき鵜舟哉名にしあへる鵜飼といふものを見侍らんとて、暮掛けていざなひ申されしに、人人稻葉の木陰に席をまうけ、盃を擧げてまたたぐひ長良の川の鮎鱠はしがき略しぬ。蚤虱馬のはりこくまくらもとするが路駿河路や花橘も茶のにほひ富士目にかゝる時やことさら五月不二
芭蕉翁全集〓瀧〓瀧や波にちりこむ靑松葉波に塵なしといふを、加樣になしけるは、翁の遺言也。〓瀧の水くませてやところてんとありしは、野明に引きさきすてさせたまふ。笈日記に水くみよせてといふはあやまりなるよし。嵐山六月や峯に雲置くあらし山那須の溫泉湯をむすぶちかひもおなじ岩〓水逢龍尙舍物の名を先づとふ萩の若葉哉許六木曾路におもむくに旅人の心にも似よ椎のはなうき人の旅にもならへ木曾の蠅岐阜山城あとや古井の〓水先づ問はむ尾州に入りての吟とかや世を旅にしろかく小田の行きもどり盤齋うしろむきの像に賛團扇もてあふがん人の背つき奧州かさしま笠島やいづこ五月のぬかり道出羽の最上を過ぎて眉掃を面影にして紅粉の花千子が身まかりけるを、みのゝ國より去來がもとへ、申しつかはし侍りける。なき人の小袖も今や土用干幻住菴(記は猿蓑にあり)先づたのむ椎の木もあり夏木立佛頂禪師の菴をたゝく木つゝきも菴はやぶらず夏木立留別人々川さきまで送りて、餞別の句をいふ其のかへし。麥の穂を便りにつかむわかれ哉かんこ鳥うき我れをさびしがらせよかんこ鳥詞がきはもらしぬ。(細道)世の人の見付けぬ花や軒の栗加州北枝に別れたまふとて。もの書きて扇子引さく名殘哉武隈の松見せ申せ遲櫻と、擧白と云ふ者餞別したりければ、櫻より松は二本を三月越奧州高舘にてなつ草や兵どもの夢の跡最上川あつき日を海に入りたり最上川あぢさゐ泊船集卷之三餞別の句をいふあぢさゐや藪を小庭の別ざしき二乘軒椿門は葎の若葉哉藪若葉哉靑葉して御目の雫拭はばや殺生石石の香や夏草赤く露暑し美濃巳百亭やどりせんあかざの杖になる日まで鰹鎌倉を生きて出でけん初鰹鰹賣いかなる人を醉はすらん芽舍の畫賛に葎さへ若葉やさしや破れ家題しらず〓椹の實や花なき蝶の世すて酒是はみなしぐり頃の句也。
芭蕉翁全集這出でよかひやが下の蟾の聲篠の露袴にかけし茂りかな此句のはしがき、後の旅にあれば今もらしぬ。我が宿は蚊のちひさきを馳走かなとんみりと樗や雨の花曇りなまくさし小なきが上の鮠の腸夏の夜や崩れて明けしひやし物うぐひすや竹の子藪に老を鳴く水無月や鯛はあれども鹽くぢら靑ざしや草餅の穗に出でつらん闇の夜や巢をまどはしてなく千鳥大津木節亭秋ちかき心の寄るや四疊半泊船集卷之四芭蕉菴拾遺稿洛陽風國撰次秋秋の部越後の國高田醫師何がしを宿として藥園にいづれの花を草枕初秋や疊みながらの蚊屋の夜着文月の六日も常の夜には似ず七タ合歡の木の葉ごしもいとへ星の影出雲ざきにて荒海や佐渡に橫たふ天の河弔初秋七日雨星元祿六文月七日の夜、風雲天にみち、の風雲天にみち、白浪銀河の岸をひたして、烏鵲も橋杭をながし、葉梶をふき折るけしき、二星も屋形をうしなふべし。今宵猶たゞに過さんも殘り多し。燈かゝげ添へる折りふし、遍昭小町が哥を吟ずる人あり。是によつて此の二首を探りて、雨星の心をなぐさめむとす。小町が哥高水に星も旅寢や岩の上遍昭が哥七夕にかさねばうとし絹合羽杉風野童亭七夕や秋をさだむるはじめの夜素堂の母七十餘り七としの秋、七月七日ことぶきする。萬葉七種をもて題とす、是につらなる者七人、此の結緣にふれて、名また七叟のよはひにならふ。七株の萩の手もとや星のあき泊船集卷之四荻萩かゞ小松にてしほらしき名や小松ふく荻すゝき萩はらや一夜はやどせ山の家この句、續見なしぐりの頃也また「狼も一夜はやどせ萩がもと」と加樣にもきこえ侍りけり。笈日記には、芦がもとゝありぬ。小萩ちれますほの小貝こさかづきしら露をこぼさぬ萩のうねりかなをみなめしひよろ〓〓と猶露けしやをみなめし家はみな杖にしら髪の墓參り此の句前書、續さるみのにありぬ。たままつりかゞの國を過ぐるとて。杉風
芭蕉翁全集熊坂がゆかりやいつの玉まつり玉まつりけふも燒場のけぶりかな尼壽貞が身まかりけるときゝて。數ならぬ身となおもひぞ玉祭りあさがほ閉關(文は史邦が小文庫にしるしぬ。)あさがほや晝は鎻おろす門の垣嵐雪が繪書きしに賛のぞみければ、蕣は下手の書くさへあはれ也かうぐわい旅だちけるころ、人々郊外に送りて、三盃を傾けけるに。蕣は酒もりしらぬ盛りかなあさがほに我れはめしくふ男かな此の句前がき、みなしぐり集に見えたり。稻妻あの雲はいなづまを待つ便りかないなづまや闇のかた行く五位の聲寄李下いなづまを手にとる闇の紙燭かな稻妻にさとらぬ人の貴さよ此の句の詞書、己が光集に見えたり。骸骨繪賛に稻づまや顏のところが薄の穂この句詞書は續さるに見えたり。秋風あか〓〓と日は難面くも秋の風秋風の吹けども靑し栗のいが那谷の觀音にて石山の石より白し秋のかぜ加賀山中桃妖に名をつけ給ひて桃の木の其葉ちらすな秋の風一笑といふ者、此の道に好める名のほのぼのと聞えて、世に知る人も侍りしに、去年の冬早世したりとぞ、其の兄追善を三催ほすに、塚も動け我がなく聲はあきの風牛部屋に蚊の聲よわしあきのかぜ座右之銘人の短をいふ事なかれ己が長をとく事なかれ物いへば唇寒し秋の風西東あはれさおなじ秋の風これは去來、千子いせの紀行書きて、深川へ送りけるかへりに、此の句を其のおくに書付けたまひしなり。月大曾根の成就院にて。ありとあるたとへにも似ず三ケの月此の句いづれの集にやら、五文字を、何事のとありぬ。更科姨捨之辨今略之泊船集卷之四(小文庫に見えたり)俤や姨ひとりなく月の友いざよひもまださらしなの郡かな元祿三年つるがの湊に月をみて、氣頃の明神に詣で、遊行上人の古例をきく。月〓し遊行のもてる砂の上雲折り〓〓人を休むる月見かな座頭かと人に見られて月見哉見る影やまだかたなりも宵月夜此の句は阿叟、宗房と名のりたまひし頃の吟なり。短册に見え侍りけり。名月は二つ有つても瀨田の月名月や門にさし込む潮がしら夏掛けて明月暑き凉みかな常陸へまかりける船中にて。明ぼのや廿七夜も三ヶの月堅田十六夜の辨二句(今略之小文庫)何事の今略之
芭蕉翁全集鎻明けて月さし入れよ浮御堂安々と出でゝいざよふ月の雲我が宿は四角な影を窓の月侘びてすめ月侘網笠の窓を家として天和の頃の句也月さびよ明智が妻のはなしせん此の句の詞書勸進帳に見えたり。柴の戶の月や其のまゝあみだ坊此の句のはしがき、小文庫に見えたり。名月や座にうつくしき貌もなし此の句の說初せみ集に見えたり。寺に寢て誠顏なる月見かな此句は鹿島にまうでたまうて、根本寺にての口號なるよし。三ヶ月の地は朧なりそば畠此の句には三ヶ月の記あり。今略之深川の五本松といふ處に船をさして。川上とこの川下と月の友十六夜はわづかに闇のはじめかな敦賀にて。名月や北國日和さだめなき淺水のはしを渡る時、俗あさうつといふ。〓少納言の橋はとあり、一條あさむつのとかける處なり。あさむつや月見の旅の明けはなれ玉江にて。月見せよ玉江の芦を刈らぬさき湯尾月に名を包みかねてやいもの神燧山義仲の寢覺の山か月悲し濱○月のみか雨に相撲もなかりけりこよひたれ芳野の月も十六里米くるゝ友をこよひの月の客いざよひや海老にるほどの宵のやみ正秀亭初曾興行月代や膝に手を置く宵の宿九たび起きても月の七つかな大阪畦止亭月下に送兒月澄むや狐こはがる兒の供名月や池をめぐりて夜もすがら義仲寺にて三井寺の門たゝかばやけふの月橋桁のしのぶは月の名ごりかないざよひはとり分け闇のはじめかな三ヶ月や蕣の夕べつぼむらん此の一句は延寶のすゑ、天和のはじめの吟ならし。入る月のあとは机の四隅かな泊船集卷之四東順身まかりける頃、傳かきて此の句添へ遺し申されし、句兄弟集に見ゆ。戶をひらけば西に山あり、伊吹山といふ。花にもよらず雪にもよらず、只これ孤山の德あり。其のまゝに月もたのまじ伊吹山いが山中にありて。二句名月にふもとの霧や田のくもり名月の花かと見えて棉畠虫盆過ぎて宵やみくらし虫の聲聽閑蓑虫の音を聞きに來よ草の菴此の句いづれの集にか、いがばせを菴と前書あれど、是は深川の菴なるべし。蜻蛉やとりつきかねし草の上堅田にて
芭蕉翁全集海士のやは小海老にまじるいとゞ哉胡蝶にもならで秋ふる菜虫かな床に來て斯に入るやきり〓〓す白髪ぬく枕の下やきり〓〓す加賀小松と云ふ處、多田の神社の寶物として、實もりが菊からくさのかぶと同じく錦のきれ有り、遠き事ながら、まのあたり憐れに覺えて。むざんやな甲の下のきり〓〓す鳥田中の法藏寺にて。刈りあとや早稻かた〓〓の鴫の聲堅田にて病雁の夜さむに落ちて旅寢かな桐の木に鶉なくなる塀の內鷹の目も今やくれぬとなく鶉老の名のありともしらで四十から草の花草いろ〓〓おの〓〓花の手がらかな美濃如水別墅こもりゐて木の實草の實ひらはゞやばせを船となり帆となる風のばせをかな此の句翁の製なりとある人申されし、しらず。(一品の句なり。校訂者誌す)ばせを野分して盥に雨を聞く夜哉菊菊の露落ちてひろへばぬかごかないざよひのいづれか今朝にのこる菊稻こぎの姥もめでたし菊の花痩せながらわりなき菊のつぼみかな菊の香や庭に切れたる履の底見處のあれや野分の後の菊實否は琴箱や古物店の背戶の菊此の句は去來の物がたりにて聞侍りぬ。草の戶や日ぐれてくれし菊の酒此の句は、乙州が酒を携へて來りし時の事なるよし。草菴の雨起きあがる菊ほのか也水のあと加州山中重陽山中や菊は手をらぬ湯のにほひ菊の花咲くや石屋の石の間木因亭かくれがや月と菊とに田三反ならの重陽菊の香や奈良にはふるき佛達くらがり峠にて菊の香にくらがり登る節句かな左柳亭泊船集卷之四はやくさけ九日もちかし菊の花難波その亭白菊の目に立てゝ見る塵もなし此句にて哥仙あり。芙蓉きり雨の空を芙蓉の天氣かな畫賛枝ぶりの日に〓〓に替る芙蓉かな木曾路にて棧や命をからむ蔦かづらほゝづき鬼灯は實も葉もからももみぢかな畫賛雞頭や雁の來る時尙あかし唐がらし深川夜遊靑くてもあるべき物を唐がらし
芭蕉翁全集此の句にて哥仙あり。深川集に見えたり。無名菴草の戶をしれや穂蓼に唐がらし伊賀山中二句そばはまだ花でもてなす山路かな松たけやしらぬ木の葉のへばり付きならにてぴいとなく尻聲かなし夜の鹿野分猪もともにふかるゝ野分かな秋のくれとは枯枝に鳥のとまりけり秋の暮こちらむけ我れもさびしき秋のくれ此の句は雲竹がうしろむきの像に、賛のぞみけるに書きて遣はされし、人聲や此の道かへる秋のくれ此の道や行く人なしに秋のくれ深川集に見えたり。大阪〓水茶店四郞左衞門にて松風の軒をめぐつて秋くれぬ早稻の香や分入る右はありそ海同行曾良に別れたまふとてけふよりや書付消さん笠のつゆ一家に遊女も寢たり荻と月庭はいて出でばや寺にちる柳此の二句、詞書は細道にとヾめられつればもらしぬ。ある草菴にいざなはれて秋さびし手ごとにむけや瓜なすび越前いろの濱にてさびしさや須磨にかちたる浦の秋守榮院門に入れば蘭に蘇鐵のにほひ哉悼松倉嵐蘭(文は笈日記末若葉等に出づ)秋風に折れてかなしき桑の枝初七日詣墓みしやその七日は墓の三ケの月長月三日なりければ也。野々宮野々宮の花表に蔦もなかりけり鳴海知足亭よき家や雀よろこぶ背戶の秋畫賛西行の草鞋もかゝれ松の露住よしの市升かうて分別かはる月見かな車庸亭面白き秋の朝寢や亭主ぶり草菴をたづねて粟稗にまづしくもなし草の菴泊船集卷之四元祿二とせの秋、みのゝ國大垣より、いせのせんぐうにまうで侍りしふねの中にて、おくりける人に申したる句、はまぐりのふた見へわかれゆく秋ぞ內宮はことをさまりて、下宮のせんぐうをがみ侍りて、たふとさにみなおしあひぬ御辻宮女木澤桐奚興行秋に添うて行かばや末は小松川關の住素牛何がし、大垣の旅店を訪づれ侍りしに、彼の藤しろみかさといひけん花は、宗祇のむかしににほひて、藤の實は俳諧にせん花のあときぬた猿引は猿の小袖をきぬたかな入麵の下たきたつる夜寒かな題しらず
芭蕉翁全集夕顏や秋はいろ〓〓の瓢かなおくられつ送りつ果は木曾の秋初茸やまだ日數へぬ秋の露むかしきけちゝぶ殿さへすまふとり稻すゞめ茶の木畠や逃處秋の夜を打崩したるはなしかな菊の後大根の外さらになし榎の實ちるむくの羽音や初あらし此の秋はなんで年よる雲に鳥山はみな蜜柑の色の黃になりて暮秋のけしきを桐動く秋の終りや蔦の霜行く秋の猶たのもしや靑蜜柑行く秋や手を廣げたる栗のいが秋もはやはらつく雨に月の形り行く秋や身に引きまとふ三布蒲團秋深き隣りは何をする人ぞ憶老杜髭風を吹いて暮秋歎ずるは誰れが子ぞ此の句は延寶天和のあいだの流行なるべし。旅人と我が名よばれん初霽手づから雨の侘笠をはりて世にふるもさらに宗祗のしぐれ哉此の句五文字を、世の中と笈日記にはしるされける、筆のあやまりなるべし。みなしぐりの頃也。雪深川天橋半ばかゝりけも頃初雪や掛けかゝりたるはしの上初雪や水仙の葉のたわむまで大佛造營をよろこびたまひで初雪やいつ大佛の柱だて初雪や聖小僧の笈の色初雪や幸ひ菴に罷ある深川八貧(文は今略之)米かひに雪の袋やなげ頭巾深川夜雪泊船集卷之五芭蕉菴拾遺稿洛陽風冬の部國撰次冬の部しぐれ島田、塚本氏に詠草有り。馬かたはしらじしぐれの大井川初しぐれ猿も小蓑をほしげなりけふ斗り人も年よれ初しぐれ島田の宿にて宿かして名を名のらするしぐれ哉不二一尾根はしぐるゝ雲かふじのゆき舊里の道すがらしぐるゝや田のあらかぶの黑むほど泊船集卷之五
芭蕉翁全集酒飮めばいとゞ寢られね夜の雪對友人君火をたけよき物見せん雪丸け兎も角もならでや雪の枯尾花ひごろにくき烏も雪のあした哉熱田御造宮とぎ直す鏡も〓し雪の花ため付けて雪見にまかる紙子かな雪ごとにうつばりたわむ住居かな雪と雪こよひ師走の名月か此の句は尾州にて、中あしき人をなだめられけるとぞ。いざさらば雪見にころぶ處まで山中に子供とあそびて雪の中に兎の皮の髭つくれ小町畫賛貴さや雪降らぬ日も蓑と笠一七六信濃路を過ぐるに雪ちるや穗屋の薄の刈殘し夜着は重し吳天に雪を見るあらん此の句は延寶の頃の吟なるべし。こがらしこがらしの身は竹齋に似たるかな道の記には、狂句こがらしとありけり。後に狂句の文字をはぶき給ひしよし。此の句を卷頭として五哥仙有り、冬の日と云ふ是なり。凩や頰ばれ痛む人の顏こがらしに岩吹きとがる杉間かな三州菅沼亭京にあきて此の木がらしや冬住居ミノ耕雪別墅こがらしに匂ひやつけし歸り花冬籠り冬ごもりまたよりそはん此のはしらしばし隱れ居ける人に申し遣はす先づ祝へ梅を心の冬ごもり金屏に松のふるびや冬ごもり千川亭折り〓〓に伊吹を見てや冬籠り贈酒堂(詞書、市の菴に見えたり)難波津や田にしのふたも冬ごもり深川冬夜の感櫓の聲波をうつて膓氷る夜やなみだ天和の頃の句也。落葉留主の間にあれたる神の落葉かなたゞの權現にて宮人よ我が名をちらせ落葉川明照寺にて百年の氣色を庭の落葉かなおなじく泊船集卷之五たふとがる淚やそめてちるもみぢ夷講ゑびす講酢賣に袴着せに鳬振賣の雁あはれなり夷講御命講御命講や油のやうな酒五升大根引鞍壺に小坊主のるや大根引埋火埋火や壁には客の影ぼふし追善に埋火もきゆや泪の煑ゆる音水仙水仙や白き障子のともうつり其のにほひ桃より白し水仙花寒菊寒菊や粉糠のかゝる臼の端
芭蕉翁全集大津にて三尺の山も嵐の木の葉かなふるき世をしのびて霜の後撫し子咲ける火桶かな口切支梁亭口切に境の庭ぞなつかしき爐びらきや左官老行く鬢の霜あられいかめしき音や雹の檜の木かさ雜水に琵琶きく軒のあられかなふぐ汁あら何ともなきのふは過ぎてふぐと汁江戶三吟の句也。熱田にてあそび來ぬ純釣りかねて七里迄西行が超過の心をいへる、山家集の題に習ふ。一露もこぼさぬ菊の永かな星崎星崎の闇を見よとや啼く千鳥星崎や闇を見よとて、ともきこえぬ。いらこ崎鷹ひとつ見付てうれしいらこ崎ある人のもとにて麥はえてよきかくれ家や畠村訪杜國紀行すくみ行くや馬上に氷る影ぼふしさむさ葱白くあらひたてたるさむさかな旅宿ごを燒きて手拭炙る寒さ哉越人と吉田の驛にて寒けれど二人旅寢ぞだのもしき笈日記に、おもしろきとありぬ。其の後越人かたへ申遣はされし句、二人見し雪は今年もふりけるか霜人の菴をたづねてさればこそあれたきまゝの霜の菴此の句笈日記には、逢杜國といふ前書にて、あひたきまゝのとありぬ。書きあやまりなるべし。葛の葉のおもて見せけりけさの霜霜の後葎をとひて花みなかれて哀れをこぼす草の種病中藥のむさらでも霜のまくらかな探梅防川亭·香をさぐる梅に家みる軒ばかな打ちよりて花入さぐれ梅椿泊船集卷之五大通菴の主道圓士、芳名を聞く事したしきまゝに、ま見えん事をちぎりしに、つひにその日をまたず、初冬一夜の霜と降りぬ。今日は尙ひとめぐりにあたれりといふをきゝて、其のかたち見ばや枯木の杖の長鳳來寺夜着ひとつ祈り出して旅寢かな翁つゝがなく霜月初の日、深川の舊艸にかへりたまうて都出て神も旅寢の日數かなはちたゝき長嘯の塚もめぐるか鉢たゝき納豆きる音しばしまて鉢たゝき年忘れせつかれて年忘れする機嫌かな此忘れながるゝ年の淀ならん
芭蕉翁全集乙州が新宅にて人に家をかはせて我れは年忘れすゝはらひ對門人の僧是や世の煤にそまらぬ古格子煤掃の說(今略之小文庫)煤はきやくれ行く宿の高鼾煤はきは己が棚つる大工かな旅行煤はきは杉の木の間の嵐かな旅をして見しや浮世の煤はらひ題しらずから鮭も穴也の痩も寒の中月花の愚に針たてん寒の入馬ぼく〓〓我れを繪にみる枯野かなこの句夏野かな、ともある人申されし。貧山の釜霜に啼く聲寒し氷苦く偃鼠に咽をうるほせり右二句は、次韻の頃の吟なるべし。住みつかぬ旅の心や置炬燵毛衣に包みてぬくし鴨の足面白し雪にやならん冬の雨芹燒やすそ輪の田井の初氷冬がれの磯にけさ見るとさか哉としのくれ月白き師走は子路が寢覺かなかいつぶりかくれ見師走の海の鳰何をこの師走の市に行くからす乞うて喰ひ貰うてくらひ、さすがにとしのくれかゝれば、めでたき人の數にもいらん老いのくれ分別の底たゝき見年のくれ盜人にあうた夜もありとしのくれ月雪とのさばりけらしとしのくれ鹽鯛の齒ぐきもさむし魚の店魚とりの心はしらずとしのくれ蛤の生きるかひあれとしの暮ふるさとや臍の緒になくとしの暮年の市線香買ひに出でばやな節季候の來れば風雅も師走哉節季候を雀のわらふ出たち哉有明も三十日にちかし餅の音病中の吟旅にやんで夢は枯野をかけ廻る死前の事は、枯尾花に見えたり。雜句あさよさを誰れまつしまぞかたごゝろ是は路通がもゝねぶりに、翁の句なりと書出しぬ。杖つき坂かちならば杖つき坂を落馬かな泊船集卷之六泊船集卷之六机砌にのこりたる文のはし〓〓より、高客の佳章を拾ひとりて、追加となしぬ。家外に一句をもとめず。洛風國撰春一とせに一度つまるゝ菜づなかな畑から頭巾呼ぶなり若菜つみ若菜つみ敷物やらうさん俵若草に初音がましや朝鳥踏分くる雪が動けばはや若な物をいふ友もしら髪の若菜哉若菜つむあとは木をわる畠かな梅おもふさま遊ぶに梅はちらばちれ芭其去野惟風越蕉角來坡然國人惟然
石山へまゐらばとても朧月手をはなつ中に落ちけりおぼろ月鶯に啼きそやさるゝ雉子かなとめどなき雲雀の中の山路哉骨折りて我が巢にかへるつばめ哉遠のりに草臥れて聞く鶉かな松陰やひらうた雉子のあたゝまりちりこもる花や繋若の紙の間もろともに影も蹈むべき花の陰豐後朱拙此の春は登りあはんなど、あふさかや花の梢のくるま道ちる花の世やそば切をくひ仕まふ雉來しけるに園城寺にあそびて弟魯町が故郷へかへるを送りておぼろ月泊船集卷之六イカ大つ尼イカ筑前黑崎;風去近風助圓萬去風智越國來之國童解乎來國いひ月人糸柳巢に引いて見る雀かなほんほりと日のあたりたる柳かな鶯や巢を掛けかへて寢る覺悟鶯の啼きあらしたる菜畑かな鶯のあだ啼いてすむくもりかな鶯や椿の中をごそつかす鶯に目白はすうというてのく鶯は長刀にのる若衆かなうぐひすや鼠ちりゆく閨の隙たちならぶ木もふるびたり梅の花梅干の花とてをしむ小僧哉夕月におもしろ過ぎよ梅の花雪はまだあそびたらぬに梅の花宮守はわづかに梅のくらしかな柳如行亭にて鶯芭蕉翁全集イカイカ筑前黑崎;近風助圓萬之國童解乎)可野ぶんご風林幽朱支其難波越中井浪舍爲風西たんごヒタ林羅有國六紅風去去風露國來來國吟坡川國紅泉拙考角春をしき八入楓のみどり哉ちら〓〓とはた打つ空や南風冷汁の海苔に夏まつけしき哉曲水や筧まかする宿ならばつぼふかき盃とらん桃の花雛立てゝ刀自になる也娘の子重石までも〓いで廻りしこてふ哉しら魚の一段づゝや鹽さかひあと足も地におちつかず猫の戀·戶障子を明けはなしたる彼岸哉宵闇もおぼろに出たか出でゝ見よ庭鳥の聲もしまらずおぼろ月師の菴いつ見ん鳰の朧月義仲寺をおもふ題しらずひがん三猫のこひ一八三しら魚胡てふ越中越中ぶんご日田奧州二本松嵐好和其北ぶんごヒタ机壺若水惟紫惟靑風泉角枝ん下中芝札然道氏鳶の輪につれてよらばや山ざくら此頃やあとさきしらず花に蝶立ちもどり花見や過す畠行てつばうの矢さきにちるや山櫻木の空の天狗も今は花の友花ざかり大腹中になりけらし花雁の聲おぼろ〓〓と何百里麥くひし雁とおもへどわかれ哉木の枝にしばしかゝるやいかのぼり此の木かとのぞくや松の若みどり朝明の賀茂を手にとる柳かな秘藏から柳にのぼる是はさて惟然へ申し遣はしける歸雁と里人のいへり大淀なりひらの松はかれて、一八二同世つきの松長サキ丈猿卓卯去杉支野嵐團い こ風東ミノ關草雖袋七來風考水雪友國鵑同長サキ丈猿卓卯去杉越中越中嵐好和其北其北ぶんごヒタ角枝ん支野嵐團い こ靑風泉下中芝札草雖袋七來風考水雪友
卯の花に兼房見ゆる白髪かな猪の見事になりて茂りかなこしかたの見たてすゞしき茂り哉さつばりところもたゝかれ更衣蝶々もかるみ覺えよ更衣子をつれて猫も身がるし更衣小坊主のとなりありきや更衣冷酒にうは鬚にくき祭りかな呼聲はたえてほたるのさかり哉草も木も螢くさゝや水の音しほらしう草光らかすほたるかな更高舘にて木曾塚にまうづ眞愚上人にわかるゝ松の尾神事に曲水の子をいたみて泊船集卷之六衣なく聲はおのが餌食か郭公船さをのとゞく程なり霍公子規山田の水に色がつく住よしを忘れてやゐる郭公橫雲の間や山出しの子規飛びこんだまゝか都の子規郭公たとへちか道猿すべり早苗にもわがいろ黑き日數哉淀にて郭奧州今のしら河に出づる公今出しぬ。この句、山ぶきに春を渡して靑葉哉行く春や星もあらしも春の持夏芭蕉翁全集菊の香の夏の部に書きたがへ侍れば支丈考草江戶曾京都路玄大つ智三州豐前中津野白眠坡雪山ぶんご玖珠正曲秀風さか爲風爲丈浪越中井浪諷難波去丈正化竹來草秀芭良健梅月有草有國蕉石も木も一眼にひかるあつさかな〓夕立にはしり下るや竹の蟻夕だちいろ〓〓の作となり鳬麥の跡ひつそりと田うゑのあとの晝寢哉夏桃も庭をのぞくや夏木立橘や虻にさゝるゝ塀の陰日限も來ぬにとら屋ののぼりかなねぢ切つて鬼の皮はぐちまき哉ちまきさみだれや風つれて來て戶を叩く五月雨の空をくゞりて月夜哉さみだれや植田の中のかいつぶりさみだれの尻をくゝるや稻びかりあつさ八幡堤を過ぐる五月雨幟橘一八五夏木立晝寢國の名にひらく牡丹のめでたさよ一まづはぼたんくづるゝひる間哉靑鷺や世間ながむる田うゑうたさへづりを略して夏の小鳥かな川狩をじつと見てゐる鳥かないとゞさへ桑名に寢たり行々子おのがねの尼や水雞の磯の闇白鷺の人音聞くや麥の中やう〓〓と出て鳴く時かかんこ鳥くびたてゝ鵜のむれ登る早瀨哉灌佛や麥もはたけに二年越し子規なかねばならぬ月夜哉ほたぼたん仰木の里の書懷鳥灌る佛一八四·京ぶんご日田ヲハリ去可如水ト爲夏畑吾風泥來曉行札梢有仲國足越中井浪風路國健越中正浪嘯;北丈去丈去愼ぶんご玖珠丈浪女草化諷朱來草來秀化風人草竹拙
貌出して山々を包みまはするもみぢかな夕つゆや何ともしれぬ虫が來る外はいざ雨氣のもやう蘭の色蟷螂や裾はらふ手にすがり付き蟷螂の出ばをうしなふや稻の中早稻の穂をゆりそろへけり秋の風黑雲は森で晴れけり柿紅葉蜻蛉の休みてゐるに一葉かな蜻蛉や日を立てゝゐる穗たて原觜に引倒されな土堤の鴫こぼれたる粟穗の雀あれへ飛べ國々の風にもまけずわたる雁白はりの久しうともる燈籠かな雁燈籠たなばたや船手はあそぶ茶の烟泊船集卷之六もみぢ蜻蛉馬や人見る荻の中早稻蟷螂菊粟に雀荻虫ぶんご玖珠越中魚住出羽つるが岡越中高岡ヲヲハリぶんご玖珠出羽天童大つ夾尾州衣ヲハリ長如重十可ぶんご玖珠湖ハ東愚ぶんごヒ頭野ぶんご自尙風始吹洲水行丈庭雀椎信タ水紅日田性白國いそがしき中を出ぬくるすゞみ哉山門に風とる友や小商人酒のめば奧からにらむ凉みかなつゝ立つて帆になる袖や夕凉み秋ちかき事もわかれのひとつかなはなれ場や又おちつかぬ菱の花かぶるゝなけふの細道草いきり貰はうよ玉江の麥の刈仕まひ帷子にあたゝまりまつ日の出かな雞の砂にすりこむあつさかな相國寺にて夕凉みおなじく惟然にわかるゝ惟然にわかるゝ玉江にて旅芭蕉翁全集行風游風花いか少年丈幸草路おなじく靑拾越中ありは貝濫越中今石動吹惟丈風國刀國然草國八朔にはややゝ寒き草の露女子繪に業平書きて草の露草のつゆ見る內にとかりまはるや霧の船ほつこりと紅葉が見ゆる霧の中粟の穂やうづらをまねぐ秋のかぜ何事にさはぎくつくぞ四十がら夕ぐれを思ふまゝにもなくうづら中島も落ついてなくうづらかな朝からのけしきをやはり秋のくれほつかりと鹿も立つたり秋のくれ蠅打をまだすてぬ也うらの秋肥後にて霧槇の尾にあそびて春日にてうづら四十がら一八七京越中富山聞城寺尾州安藝竹原野朱麻越中魚住背自朱惟露風泥童拙タ角然拙然川國雨足秋もまだ七夕の夜の明けやすし三か月の秋を運ぶや草の上さらに見る金剛山をあきの風から駕籠をつりてもどるや秋の風釣ばりやなぐりかねたる秋の風秋風や羽織をまくる小脇指踊り子とちそうせらるゝ髭をとこ秋たつや鷹のとや毛のさしのこりぬれて行く人もをかしや雨の萩みたらしやなかばながるゝ年忘れ七初秋の心をあきかぜ秋タかゞ小松にて糺にて一八六京麻越中魚住背タ角安藝竹原雨野朱風泥猿風舍壺正北魯長サキ浪芭素童拙國足雖國羅中秀枝町化蕉堂
出てみれば雲まで月のけはしさよ名月や〓明月や志賀の磯田の榎の實いろ酒田夜泊念佛きく加古のとまりの月夜哉月澄むや空也の鹿もかへれがし三つに見る夜はありながら月の空けふの月婆とは呼ばぬ小町かな名月や蚊屋よりもるゝ馬の面川ぞひの畠をありく月見哉猶月にしるや美の路の芋の味その玉を羽黑にかへせ法の月加古のとまりにて津楚口にて申されけるをおもひ出で先師空也の鹿のかへる明けがたと、三夜の月悼遠流の天宥法師月松原くゞるむしの聲惟竹出羽つるが岡千はりま姫路ち風土か秋女行杉惟芭大然〓山月國芳色露冬がれや鷺はからすのあまり枝雪の道我が足跡の大きさよ六つ過の雪のくらみやほの明り雪雲のとり放したる月夜哉初雪にかくれあふする菜の靑み薪もわらん宿かせ雪のしづかさよくせものやとんとないだる宵の雪さかまくやふりつむ嶺の雪の雲九重に見なれぬ雪の厚さかな雪水仙やあひに時雨のつよう來るしづかさは赤松石を時雨哉さを鹿の身すがらもどるしぐれ哉寒さ冬がれ奥州ある寺に入りて金閣寺にて泊船集卷之六あられ亥の子冬の月朱芦京浪沙風惟沙丈去十風若芭蕉翁全集朱沙ちくぜん黑崎丈去明草來十越中高岡風丈國若ぶんご日田芝惟竹出羽つるが岡千はりま姫路〓山秋女行杉惟芭拙角化明國然然月國色露風然蕉冬草の都ちかくや鳥の聲橋々や暮いそがしきこよみ賣枯野にて目にたつものは小松かな茶の花に見うしなうたる狐哉瀧幅や氷の中のいざり松かたつかぬ千鳥の聲や名古有磯初霜や橋杭かくす水いきりこがらしにしばらくくらき菴哉出來町のふるがね店に落葉かなこがらしの雲より落つる木の葉哉有明にふりむきがたき寒さかなをし船の沙にきしるや冬の月丹波路はつよき餅くふ亥の子哉小坊主のつまにうけとるあられ哉冬がれに身をなげ込むやとまり鳥題しらずこがらし落葉霜一八九千鳥酒になるげんかいなだのしぐれ哉後の世の事など松のしぐれ哉あたゝかに宿は物くふしぐれ哉山がらの里かせぎするしぐれかな海山のしぐれつきあふ菴の上風雲や時雨をくゞる比良おもて冬雁鳴いて目を明く菊のつぼみかな折りふしは酢になる菊のさかな哉菊の香や奈良はいく代の男ぶり日ももはや笑止にくれて夜寒哉名とり川の前で落馬や稻の中菊花の讃ならにて旅人をいたはりて鳥落人と仙臺にこゆ二八大つ越中高岡去素梅梅風來覽主山國越中越中高岡ぶんご日田好-野露左風村紅川次ぶんご玖珠諷孤釣ぶんご日田頭其竹屋壺水角野諷野去同丈土同芭素出羽鶴か岡翠江州八幡素兒明竹坡來草芳蕉
芭蕉翁全集大根引上々の天氣でけふの大根引夫婦して茶のあいさつや大根引手ならひの師匠へやるや大根引今樣もしらぬはざびし大根引持病にこもりける頃介病を壹人前する炬燵哉鉢たゝきへうたんに打ちつ答へつ鉢たゝき裏門の竹にひゃくや鉢たゝき橫町の嚊もきよげに年の餅行く年を蹴ちらかしけり市の人年もはや牛の尾程の便りかな泊船集梓工へ遣はしたる後篋底をさぐりて露沾公にて西行の菴もあらん花の庭一九〇娘をうしなひけるにみの關一鳴海大知風ぶんごの國幽泉、申し遣はしぬ。入相の山にこたふるやよひかな陽炎やひさしに粘る雨くもり松風や靑砂をすゝる鹿の形り菴室にふとき烟りや花ざかり夏船に笠きてたつは名取かなわるい雲みなかたづくや五月晴寢がへりにとりつくものも暑さ哉又しても百日紅のながめがな女郞花松へとれたる地のしめり名月や瀨をなでゝ行く雲の形り名月の前へ廻るや山の上一畔はなんにもならで花すゝき穂すゝきをこぼしつめたる野分哉蜻蛉の休みてゐるに一葉かな(右重出なり。一八七上段、校訂者誌す)午虛足國風國釣壺日田越中高岡幽泉渭白日田朱拙越中高岡はりまひめぢ北人元灌越中今石動溫故越中呂風越中荻人越中林紅水札ぶんご玖珠曲風ぶんご日田愚信去來爲丈仙臺桃風去有草調國來芭蕉同所呼丁越中路健ぶんご日田野紅同女りん黑崎少年助童ぶんご日田芝角ぶんご玖珠頭水豐前中津僧眠山助童越中高岡十丈沙明飯時をねらうて來るや鰯船初あきをくつろぎかゝる稻の中秋風や殘る燕のひらめかす朝夕に見る子見たがる躍りかなむつくりと肥えたる聲や風の鹿行くあきや日はつる〓〓と長繩手一雪吹やり過しけり馬の陰鳥飛んで犬けつまづく雪野哉何が扨おもひ切つたる竹の雪木がらしにふかれてゐても柳かな行くとしや木の葉混りのくだけ炭長崎より來る去來子、書中に小倉にて七夕のひる、七夕をよけてやたゝが船躍りたゝは漁夫の女、船躍は雨乞なり。七夕は黑崎、沙明にてうちつけに星待つ顏や浦の宿泊船集卷之六長さき盆會に見し人も今は孫子や墓參り同所諏訪大明神にまうでゝ貴さを京でかたるもすはの月田上といふ山家にて山家にて魚喰ふ上に早稻の飯是は漁村のかよひ路也樫の木の色もさむるや秋の空田上の名月名月やたがみにせまる旅心丈草子へも御つたへなさるべく候八月卅日去來風國丈一九
元祿十一戊寅年十一月吉日京寺町二條上ル町井筒屋庄兵衞板俳諧七部集全
冬野菊まで尋ぬる蝶の羽折れて初雪のことしも袴着て歸る霜にまだ見る蕣の食野杜水綾ひとへ居湯に志賀の花漉きて廊下は藤のかげつたふ也我がいのり明がたの星はらむべくうしの跡とふらふ草の夕ぐれにあはれさの謎にもとけし時鳥日東の李白が坊に月を見て巾に秋水一斗もりつくす夜ぞ(4)木槿をはさむ琵琶打ほら我菴は鷺に宿かすあたりにて髪はやす間をしのぶ身の程朝鮮のほそり薄のにほひなき有明の主水に酒屋つくらせてたそやとばしる笠の山茶花狂句木枯の身は竹齋に似たる哉芭蕉箕に鮗の魚をいたゞき鳥賊は夷の國のうらかたけふはいもとの眉かきに行きかしらの露をふるふあか馬おもへども壯年いまだころもを振るはず日のちり〓〓に野に米を刈る狂歌の才士、此國にたどりし事を、ふと人、我れさへあはれに覺えける。むかしの笠は長途の雨にほころび、紙衣は泊り泊思ひ出て申侍る。りの嵐にもめたり。侘びつくしたるわび俳諧七部集冬の日芭蕉翁全集日尾張五哥仙全芭蕉杜國重五杜國野水荷分杜國芭蕉荷分重五芭蕉野水重五芭蕉野水正平杜國重五野水荷兮櫛箱に餅すうる閨のほのかなる初花の世とや嫁のいかめしく小三太に盃とらせひとつうたひき床ふけて語ればいとこなる男雨越ゆる淺香の田螺ほりうゑてお、奧のきさらぎを唯なきになく繩あみのかゞりは破れ壁落ちて口をしと瘤をちぎる力なき麻呂が月袖に鞨鼓をならすらむ桃花をたをる貞德の富Noしら〓〓と碎けしは人の骨か何笠ぬぎて無理にもぬるゝ北時雨盜人の記念の松の吹折れてのり物に簾透く顏おぼろなるしばし宗祇の名をつけし水いまぞ恨みの矢をはなつ聲黃昏を橫にながむる月細しうぐひす起きよ紙燭ともしてかぶろいくらの春ぞかはゆき月は遲かれ牡丹ぬす人明日はかたぎに首送りせむ二の尼に近衞の花の盛りきく隣りさかしき町に下り居るら〓田中なる小萬が柳落つるころ影法の曉さむく火を燒きて僞りのつらしと乳を絞りすてあるじは貧にたへし虛家消えぬ卒塔婆にすご〓〓となくBrは緣さまだけの恨み殘りしこつ〓〓とのみ地藏切る町うづらふけれと車ひきけり冬がれわけてひとり唐苣蝶は葎にとばかり鼻かむ霧に船ひく人はちんばか一五芭蕉野水杜國荷分杜國芭蕉かり、重五重五野水芭蕉荷兮野水杜國正平重五荷兮杜國野水荷分杜國芭蕉荷分重五芭蕉野水重五杜國野水荷分杜國芭蕉荷分重五
烹る事を許して沙魚を放しける三日月の東は暗くかねの聲かげうすき行燈けしに起侘びてあだ人と樽を棺に呑みほさむ雪の狂吳の國の笠めづらしき捨てし子は柴刈る長にのびつらむ岡崎や矢矧の橋のながきかな縣おすけうれしげに囀る雲雀ちり〓〓と芥子の一重に名をこぼす禪누秋湖かすかに琴かへす者襟に高尾が片袖をとく庄屋のまつをよみておくりぬ晦眞こゑよき念佛藪を隔つる五こふる花見次郞と仰がれて晝の馬のねぶた顏なり日形げ俳諧七部集冬の日を寒く刀賣る年すあんどんみむすすなれの畠六反三ケの花鸚鵡尾ながの鳥軍袂より硯をひらき山かげにしうせん秋蟬の虛に聲きくしづかさは月にたてる唐輪の髪の赤枯れて蓮池に鶯の子遊ぶ夕まぐれ奉加めす御堂に道すがら美濃で打ちける基を忘る篠ふかく梢は柿の蔕さびししらかみいさむ越の獨活刈ひとりは典侍の局か內侍か藤の實つたふ雫ぼつちり戀せぬきめた臨濟をまつ窓に手づから薄樣をすきひとつの傘の·下擧りさすねざめ〓〓のさても七十三線からむ不破の關人芭蕉翁全集りんざい혹sunこ金打荷ひ野荷杜野芭杜重荷重野荷杜はせを野芭重とこく水兮國水蕉國五分五水兮國水蕉五荷重杜芭重野芭荷野杜荷重杜芭重野分五國蕉五水蕉分水國分五國蕉五水賀茂川や胡麻千代祭り徽近み風吹かぬ秋の日瓶に酒なき日おもふ事布搗歌にわらはれて花棘馬骨の霜に咲きかへり炭賣のおのが妻こそ黑からめうきは二十を越ゆる三平いは倉の聟なつかしのころ荻織るかさを市に振らする鶴見るまどの月かすか也ひとの粧ひをかゞみ磨寒いばらばどなには津に、らはたこ: 3まか一九七?智とぎさむこがれ飛ぶたましひ花の陰に入るその望の日を我れもおなじくおもひかねつも夜の帶引くまがきまで津浪の水にくづれ行き忍ぶ間のわざとて雛を作り居る朝月夜双六うちの旅寢しては露萩のすまふ力を選ばれずらうたけに物讀む娘かしづきて馬糞搔くあふぎに風の打ちかすみ齒朶の葉を初狩人の矢に負うてしみやうぶつゝみかねて月とり落す霽かな佛喰うたる魚解きけり命婦の君より米なんどこす紅花買ふ道に子規きく蕎麥〓燈籠ふたつに情くらぶる茶の湯者をしむ野邊の蒲公英ん氷北の御門をだ杖をひく事僅かに十步にはろふみゆく水のいなづますごろくさへ靑し滋賀樂の坊おしあけの春しほどGy一九九たんだあし火燒く家はすゝけたれ重杜野重荷羽芭野杜荷五國水五分笠蕉水國分荷重はせを分五芭荷杜重野荷杜野芭杜重正荷芭野重蕉兮五水分國水蕉國五平分蕉水五國
寂として椿の花の落つる音秋の頃旅の御連歌いとかりに泥のうへに尾を引く鯉を拾ひ得て雉追に烏帽子の女五三十え骨を見て坐に泪ぐみうちかへりたび衣笛に落花を打拂ひ江を近く獨樂菴と世を捨てゝ夏ふかき山橘にさくら見む茶に糸遊をそむる風の香漸くはれて富士見ゆる寺の庭に木曾つくる戀の薄衣籠輿ゆ我が月出でよ身はおぼろなる麻かりといふ歌の集あむ乞食の蓑をもらふしのゝめ酌とる御幸に進む水のみくすり3のふ俳諧七部集冬の日どくらくあんtheるす木瓜の山あひ童蘭切りにいではハれんかけNoうすぎぬはやり來て撫子かざる正月に賤の家に賢なる女見てかへる西南に桂の花のつぼむとき八十年を三つ見る母もちて白燕濁らぬ水に羽を洗ひ花に泣く櫻の黴とすてにける霧下りて本〓の鐘七つきくかど門守の翁に紙子かりて寢る捨てられてくねるか鴛の離れ鳥釣瓶に粟をあらふ日のくれ蘭のあぶらにト木うつ音なかだちそむる七夕のつま宣旨かしこく釵を鑄る僧ものいはず欵冬を呑む冬まつ納豆たゝくなるべし血刀かくす月の暗きに火置かぬ火燵なき人を見むら·:)なつと芭蕉翁全集んなでしこかびしめきかんざし重杜荷芭野羽杜重芭荷羽野重杜荷芭野杜荷重芭羽杜野重荷羽芭野杜荷重芭羽五國兮蕉水笠國五蕉分笠水五國分蕉水國分五蕉笠國水五今笠蕉水國分五蕉笠色ふかき男猫ひとつを捨てかねて元政の草の袂も破れぬべし芥子あまの小坊交りに打ちむれてしづかさに飯臺覗く月の前水干を秀句の聖わかやかに釣柿に屋根ふかれたる片庇ことに照る年の小角豆の花もるしふし萱かや春の白洲の雪はきを呼ぶ伏見木幡の鐘花をうつ折るゝ蓮の實たてる蓮の實露山茶花匂ふ笠のこがらし豆腐つくりて母の喪に入るがきみ屋置く狐風や悲しきまばらに炭團つく白ぼた5はんだいただかたひさし音もなき具足に月のうす〓〓と樫檜山家の體を木の葉降る霜月や鸛のイ々並び居てひきずる牛の鹽こぼれつゝ冬の朝日のあはれなりけり田舎眺望つ玉そこつく〓〓北の方なく〓〓簾おしやりて粥すゝるあかつき花にかしこまりいがきして誰れともしらぬ人の像寅の日の旦を鍛冶の急起きてねられぬ夢を責むるむら雨狩泥にこゝろの〓き芹の根鼓手雲かうばしき南京の地衣の下に鎧ふ春風むくる辨慶の宮す一九八5追加一九九野重杜芭野羽杜重芭荷羽野うりつかけい水五國蕉水笠國五蕉分笠水荷羽杜重芭分笠國五蕉杜羽芭重荷芭やすゐ羽野國笠蕉五兮笠蕉水
貞享甲子歲京寺町二條上ル町井筒屋庄兵衞板黑髪をたばぬるほどに切殘しはださむ松の木に宮司が門はうつぶきてぶんうつかりと麥なぐる家に連待ちて柳よき蔭ぞこゝらに鞠なきや鳥居より半道奧の砂行きて霧はらふ鏡に人の影うつり肌寒み一度は骨をほどく世に文王の林にけふも土つりてけいはだしの跡も見えぬ時雨ぞ顏ふところに梓きゝ居る入りかゝる日に蝶いそぐなり花に長男の紙鳶あぐる比わや〓〓とのみ神輿かく里雨のしづくの角のなき草傾いともかしこき五位の針立おの〓〓なみだ笛を戴く城せい俳諧七部集春の日おとな乳からみをかくす晨明あづさあ)はりだてあけしろがねとくさ刈下着に髪を茶筌していかに見ーよと難面く牛をうつ霰銀ひだりに橋をすかす岐阜山檜笠に宮をやつす朝露たるに樽火にあぶる枯原の松び蛤かかりしたぎ芭蕉翁全集はわれたむ月は海かれちやせんはち重雨昌荷雨李荷重李昌重雨昌荷雨李荷野芭杜重荷羽笠水蕉國五今五桐圭今桐風今五風圭五桐圭兮桐風分春奈良坂や畑うつ山の八重ざくらおもしろう霞むかた〓〓の鐘三月六日野水亭にて二〇一子規西行ならば歌よまむ傘の內近付きになる雨の暮にほんで世にあはぬ局涙に年とりて穂蓼生ふ藏を住居に侘びなして朝あさぼらけいく春を花と竹とにいそがしくね釣瓶ひとつを二人してわけ弟も兄も鳥とりにゆく記念にもらふ嵯峨の苣畑朝熊おるゝ出家ぼく〓〓我が名を橋の名によばる月念佛寒げに秋あはれなり朗ぶつ豆腐を鳶にとられけりPar須磨寺に汗の帷子脫ぎかへむ汐風によく〓〓きけば鷗なく山かすむ月一時に館立てゝ春めくや人さま〓〓の伊勢參りくもりに沖の岩黑く見え鎧ながらの火にあたるなり櫻ちる中馬な二月十八日ひ出ではべる。どちかきにたちより、のどかなり。く比、かたに行きぬ曙見むと、ひと とき並松のかたも見えわたりて、かたびら人々の戶叩きあひて、がくつれ重五が枝折置ける、渡し舟さわがしくなりゆし秀リけさの氣色をおも荷重執昌李雨重分竹墻ほ熱田の五筆圭風桐五いとの日全二〇〇旦野藁水荷重執昌李雨重分五筆圭風桐五李昌重雨昌荷雨李荷重李昌風圭五桐圭兮桐風分五風圭
0磯際に施餓鬼の僧の集まりて咲きわけの菊にはをしき白露ぞ尋ねよる坊主は住まず錠おりて雨の日も瓶燒くやらむ煙たつ立つてのる渡しの舟の月影に蕨烹る岩木の臭き宿かりて蛙のみ聞いてゆゝしき寢覺哉蘆額B+6A秋の和名にかゝる解いてやおかむ枝むすぶ松岩のあひより藏みゆる里ひだるき事も旅のひとつにまじ〓〓人をみたる馬の子荷分室にて今宵は更けたりとてやみぬ。三月十六日にあたるはる雨のもりの法俳諧七部集春の日穗を摺る傘の端こ旦藁が田家にとまりて順ふ同十九日野旦越冬野越荷野旦執冬荷越旦水藥人文水人分水藁筆文分人藁のどけしや筑紫の袂伊勢の帶轉びだる木の根に花の鮎とらむ里人に薦を施す秋の雨旅衣あたまばかりを蚊屋かりて鱈負うて大津の濱に入りにけり表町ゆづりて二人髪剃む笠白き太秦祭過ぎにけり松風に倒れぬほどの酒の醉春の旅節供なるらむ袴着て諷つくせる春の萩月なき浪に重石おく橋何やら聞かむ我が國のこゑ曉菊ある垣によい子見て置く賣りのこしたる蟲放つ月口すゝぐべき〓水流るふみたふす萬日の原い芭蕉翁全集かに車ゆくすぢ3湯の山旦越越旦野羽越野羽越旦荷越旦野執羽越荷藥人人藁水笠人水笠人藁分人藁水筆笠人分9風のなき秋の日舟に網入れよ瀧壺に柴押しまげて音とめむ朝毎の露あはれさに麥つくるむさぼりに帛着てありく世の中に紹鷗が瓢はありて米はなくあらましの雜魚寢筑摩も見て過ぎぬ永き日や今朝をきのふに忘るらむ跡ぞ花四の宮よりは唐輪にて初雁の聲にみづから火を打ちぬ鳥羽の湊の踊りわらひに碁うちを送るきぬ〓〓の月莚二枚もひろきわが菴岩苔とりの籠にさげられ連歌のもとにあたるいそがし簀の子草生る五月雨の中春ゆく道の笠もむつかし別れの月になみだあらはせつ はiくさ な二〇三見つけたり二十九日の月さむき田を持ちて花見る里に生れけり陽炎の燃殘りたる夫婦にて君のつとめに氷踏みわけ高びくのみぞ雪の山々漣や三井の末寺のあと取に力の筋をつぎし中の子一夜かす宿は馬かふ寺なれや朝夕の若葉のために枸杞植ゑて大年は念佛となふる惠美須棚物おもふ軍の中は片脇に春雨袖に御歌いたゞくこは魂まつるきさらぎの月宮古に二十日はやき麥の粉ものごと無我によき隣り也名もかち栗と爺申上げ內侍のえらぶ代々の眉の圖海水産じ二〇·野冬荷野旦越冬旦越冬野越荷野旦荷冬羽荷越旦野羽荷越旦野羽荷越旦野羽荷水文分水藁人文藁人文水人分水藁分文笠今人藁水笠分人藁水笠今人藁水笠分
榎木迄櫻の遲き詠めかな麓寺かくれぬものは櫻かな足あとに櫻を曲る菴ふたつ花に埋もれて夢より直に死なむ哉山や花墻根々々の酒はやし傘張の睡り胡蝶のやどり哉古池や蛙とびこむ水のおと蚊ひとつにねられぬ夜半ぞ春の暮山畑の茶つみをかざす夕日哉藤の花たゞうつむいて別れ哉みかへれば白壁いやし夕がすみは春野吟餞別しらかべ郭公さゆのみ燒きてぬる夜哉ほとゝぎす其の山鳥の尾は長し夏俳諧七部集春の日に朔日を鷹もつ鍛冶のいかめしくきさらぎや餅酒すべき雪ありて山吹のあぶなき岨のくづれ哉月なき空の門はやくあけ行幸のために洗ふ土器たち蝶水のみにおるゝ岩橋追三月十九日加舟泉亭かby山は花所殘らず遊ぶ日に我が春の若水汲みに晝起きてくもらず照らず雲雀鳴く也餅をくひつゝいはふ君が代つら〓〓一期聟の名もなし芭蕉翁全集追越執荷螽聽舟人筆分髭雪泉李九同重越荷李杜越龜重芭越荷冬旦越荷風白五人分風國人洞五蕉人分文藁人分夏川の曉の夏蔭茶屋の遲きかな蓮池のふかさわするゝ浮葉哉萱草は隨分あつき花の色箒木の微雨こぼれて鳴く蚊哉馬かへておくれたりけり夏の月すゞかけやしてゆく空の衣川傘をたゝまで螢見る夜哉若竹のうらふみたるゝ雀かなうれしさは葉がくれ梅のひとつ哉はゝき木は眺むる中に昏れにけり夕顏に雜炊あつきわら家哉かつこ鳥板屋の脊戶の一里塚譬喩品の、老聃曰。逢坂の夜は、武藏坊をとぶらふほんぎふすゐ音に宿かる木曾路哉知足之足常足二〇五三界無安猶如火宅といへる笠みゆるほどに明か也お出重昌同荷塵柳越聽商舟龜杜越五圭兮交雨人雪露泉洞國人片摘むとてこけて酒なき瓢かな先づ明けて野の末ひくき霞かな朝日二分柳の動く匂ひかなけふとても小松おふらん牛の夢星はら〓〓霞まぬ先の四方の色腰てらす元日里の睡りかな曙の人顏牡丹霞にひらきけり舟々の小松に雪の殘りけり鯉の音水ほの闇く梅白し門は松芍藥園の雪さむしけさの春海は程あり麥の原初春の遠里牛のなき日哉元日の木の間の競馬足ゆるし昌陸の松とは盡きぬ御代の春のがれたる人のもとへゆくとて春二〇四舟龜杜越旦同荷聽呑犀杜旦羽舟雨昌重利兮交雨人雪露泉洞國人藁分雪霞タ國藁笠泉桐圭五重
芭蕉翁全集心を六月の汗ぬぐひ居る臺かな秋は脊戶の畑なすび黃みてきり〓〓す貧家の玉祭魂祭柱にむかふゆふべかな雁きゝてまた一寢入する夜哉雲折り〓〓人をやすむる月見哉山寺に米つくほどの月夜哉瓦ふく家も面白や秋の月八島をかける屏風の繪を見て具足着た顏のみ多し月見舟待戀こぬ殿を唐黍高し見おろさむ閑居增戀秋ひとり琴柱はづれて寢ぬ夜哉二〇六朝顔はすゑ一輪に成りにけり冬舟泉越人馬はぬれ牛は夕日の村しぐれ芭蕉翁をやどし侍りて霜寒き旅寢に蚊屋を着せ申す雪のはら蕣の子の薄哉馬をさへながむる雪のあした哉行燈の煤けぞ寒き雪のくれ芭蕉翁をおくりてかへる時この比の氷ふみわる名殘哉隱士にかりなる室をまうけてあたらしき茶袋ひとつ冬ごもり杜國旦藁大理座如昌芭越行碧蕉人越雨芭越野人桐蕉人水杜國同荷分荷分貞享三丙寅年仲秋下浣荷分曠野集序尾陽蓬左橿木堂主人荷兮子、集を編みて名をあらのといふ。何故に此の名あることを知らず。予はるかにおもひやるに、ひとゝせ此の〓に旅寢せしをり〓〓の書捨、あつめて冬の日といふ其の日かげ相續きて春の日また世にかゞやかす。げにや衣更着やよひの空のけしき、柳櫻の錦を爭ひ、てふ鳥のおのがさま〓〓なる風情につきて、いさゝか實をそこなふものもあればにや、いとゆふのいとかすかなる心のはしの、有るかなきかにたどりて、姫百合の名にしもつかず、雲雀の大空にはなれて、無景のきはまりなき、道芝のみちしるべせむと、此の野の原の野守とはなれるべし。元祿二年彌生芭蕉桃二〇七靑俳諧七部集曠野集序
曠野集卷之一見あげしが麓になりぬ花の瀧下々の下の客といはれむ花の宿花のなか下戶引いて來るかひな哉何事ぞ花みる人の長刀山里に喰もの强ひる花見哉暮淋し花のうしろの鬼瓦薄曇りけだかく花の林かな花のやま常折りくぶる枝もなし峯の雲すこしは花もまじるべし花のやまどことらまへて歌よまむ我がまゝをいはする花のあるじ哉これはこれはとばかり花の吉野山花三十句よしのにて俳諧七部集曠野集卷之一卷卷卷荒野集目錄卷卷卷初冬初秋初夏歲日花之之之之之之六仲冬芭蕉翁全集五仲秋四仲夏三初春二郭公一六仲冬五仲秋四仲夏三初春二郭公一歲暮暮秋暮夏仲春月雪暮春津俊島一越龜野去尙友晨信路貞似井人洞水來白五風德通室首出して岡の花見よ蚫とり花鳥とこけらふき居る瓦上哉獨り來て友選びけり花のやまなりあひや初花よりの物わすれおもしろや理窟はなしに花の雲山あひの花を夕日に見出したり花に來て美しくなる心かなあらけなや風車賣る花のとき疱瘡のあとまだ見ゆる花見哉連れだつや從弟はをかし花の時をる時になりて迯げけり花の枝柴舟の花咲きにけり宵の雨はつ花に誰が傘ぞいまいまし冷汁に散りてもよしや花の蔭ちる花は酒ぬす人よ盜人よ兄弟のいろはあげけり花の時酒呑み居たる人の繪に二〇九卷卷員釋〓名所雜之之外神祇八旅七祝述懷戀二〇八荷冬冬野越心た薄傘荷鷗岐阜ト津島長胡舟鼠無常兮文松水人苗つ芝下分步枝虹及泉彈
名月やはだしでありく草の中名月やかいつきたてゝつなぐ舟名月やとしに十二は有りながら峠まで硯抱をかしげにほめて詠むる月夜哉雨の月どこともなしの薄あかり月ひとつばひとりがちの今宵哉それがしも月見る中のひとり哉むづかしと月を見る日は火も燒かじ名月の心いそぎに見るものと覺えて人の月見哉名月や鼓の聲と犬のこゑ名月は夜明くる際もなかりけりひとつ屋やいかい事みる今日の月どこまでも見とほす月の野中哉屋わたりの宵はさびしや月の影けうとさにすこし脇むく月夜哉俳諧七部集曠野集卷之一へて月見かな子規はゞかりもなき鳥かなほとゝぎすどれから聞む野の廣き跡や先氣のつく野邊の郭公おひし子の口眞似するや時鳥蠟燭のひかりにくしやほとゝぎすいそがしきなかに聞きけり蜀魂目には靑葉山時鳥初がつを鳥籠の憂目みつらむ郭公杜宇二十句橿の木の花にかまはぬすがた哉月花もなくて酒のむひとり哉ある人のもとにて發句せよとありければ放ちやるときにほとゝぎすを飼ひおくものに求め得てある人の山家にいたりて芭蕉翁全集鼠柳重松津島越釣素季同芭彈風五下人雪堂吟荷野二傘昌文越龜任長一市津島昌越一湍鼠同芭兮水水下碧鱗人洞他虹髪柳碧人雪水彈蕉何日とも見さだめがたや宵の月五夕月夜あんどんけしてしばし見む四何事の見たてにも似ず三日の月三見る人もたしなき月のゆふべ哉暮いかに月の氣もなし海の果朔影ふた夜たらぬ程見る月夜哉宵に見し橋はさびしや月の影名月はありきもたらぬ林かな名月や下戶と下戶との睦まじき名月や海も思はず山も見ずいつの月もあとを忘れてあはれ也二十三夜日日日日日二かる〓〓と笹のうへゆく月夜哉月三十句うつかりと春の心ぞほとゝぎすうつかりとうつぶき居たり子規歌がるた憎き人かなほとゝぎす馬と馬よばりあひけり時鳥くらがりや力がましきほとゝぎすあぶなしや今起きてきく郭公嬉しさや寢入らぬ先の子規ほとゝぎす十日もはやき夜舟哉三聲ほど跡のをかしや子規蚊屋臭き寢覺うつゝや時鳥晴れちぎる空鳴行くや子規れしにたゞありあけの月ぞのこれると吟じら淀にて二一〇梅十二歲市李智大津鈍同岐阜傘杏風同-落舌山桃月可伊豫ト芭同荷杉一釣胡去荷梅十二歲市李智大津同-落泉枝蕉兮風髪雪及來分舌山桃月下雨泉髪梧
伊勢浦や御木引休む今朝の春若水をうちかけて見よ雪の梅ふたつこそ老には足らねとしの春齒固に梅の花かむにほひかな元日は明けすましたる霞かな元朝や何となけれど遲ざくらかざり木にならで年ふる柏かな月雪の爲にもしたし門の松うたか否連歌にあらずにし肴松かざり伊勢が家買ふ人は誰れ若水や凡そ千年のつるべ繩たれ人の手がらもからじ花の春二日にもぬかりはせじな花の春俳諧七部集曠野集卷之二曠野集卷之二歲日雪降りて馬屋にはひる雀かなくらき夜に物陰見たり雪の隈ものかげのふらぬも雪のひとつ哉初雪に戶明けぬ留守の菴哉はつ雪を見てから顔を洗ひけり車道雪なき冬のあした哉重なるや雪のある山たヾの山竹の雪落ちて夜るなく雀かないざ行かむ雪見にころぶ處まで雪の日や船頭どのゝ顏の色能きほどにはなして歸る月夜哉銀あまのがは雪二十句大津にて七河見習ふ比や月のそら六日日芭蕉翁全集日同龜落岐阜大垣加賀路釋如一一去文其風鈴軒古芭洞梧行笑通晶來鱗角梵蕉加賀京鳬二是松越小加塵芭其岐阜岡崎鶴仙水芳幸人春生交蕉角髮聲正月の魚のかしらや炭だはら野々宮やとしの旦はいかならむ佛より神ぞたふとき今朝の春蓬萊や舟の匠のかんなくづ佐保姫やふかいの面いかならむ見おぼえむこや新玉の年の海連れて來て子にまはせけり萬歲樂松かざりにと誰が思ひだすたはら物今朝と起きて繩ぶしほどく柳哉うら白もはみちる神の馬屋哉月花のはじめは琵琶の木どり哉高し引馬つるゝ年男山柴にうら白まじる竈かなとし男千秋樂をならひけり小柑子栗や拾はむまつの門去年の春ちひさかりしが芋頭ことぶきの名をつけて見む宿の梅二一三舟かけていくかふれども海の雪はかられし雪の見處あり處はつ雪や先づ草履にて隣りまでちら〓〓や淡雪かゝる酒强飯雪のくれ猶さやけしや鷹の聲雪の朝から鮭わくる聲高し雪の江の大舟よりは小舟かな初雪やおしにぎる手の綺麗也雪の日や川筋ばかりほそ〓〓と夜の雪落さぬやうに枝折らむ京傘冬朴と湍同鼠長胡一同釣重舟舟元昌芳野路荷桂冬芳傘鷺除岐阜下文什め水彈虹及井雪五泉泉廣碧川水通分タ文川下汀風
蝶鳥をまてるけしきやものゝ枝水仙の見る間を春に得たりけりかれ芝やまだかげろふの一二寸行く人の蓑をはなれぬ霞かなゆき〓〓て程のかはらぬ霞かなさと霞むゆふべを松のさかり哉鶯に水くみこぼすあした哉鶯になじみもなきや新屋敷うぐひすの聲に脫ぎたる頭巾哉鶯にちひさき藪も捨てられしあけぼのや鶯とまるはね釣瓶同同津島伊賀夢市一'々柳笑桐わたし我等式が宿にも來るや今朝の春我れは春目かどに立てるまつ毛哉巳のとしやむかしの春の覺束な僧貞般同室齋つまの下かくしかねたる接穗哉つきたかと兒のぬき見るさし木哉かげろふや馬の眼のとろ〓〓と初萬歲のやどを隣りにあけにけりしづやしづ御階にけふの麥厚し初夢や濱名の橋の今のさまはつ春のめでたき名なり堅魚々曙は春のはじめやたうふくらますのうをたてゝ見む霞やうつる大鏡袖すりて松の葉契る今朝の春傘に齒朶かゝりけり惠方棚鶯の聲聞きまゐれとし男大服は去年の靑葉の匂ひかなあひ〓〓に松なき門もおもしろやけさの春さびしからざる閑かかな接當座題さし木俳諧七部集曠野集卷之二木春芭蕉翁全集傘下舟泉荷分路通傘下芭蕉冬文塵交野水梅舌貞室同荷分犬山昌防勝川同越人同野水梅舌タ道柳風冬松笑桐川舟や手をのべてつむ土筆土橋やよこにはえたるつくぐ〓しすご〓〓と案山子のけゝり土筆すご〓〓と摘むやつまずや土筆すご〓〓と親子摘み鳬つく〓〓し立白に若草見たる明屋かな蛛の井に春雨かゝる雫かなはやぶさの尻つまげたる白尾哉春の雨弟どもを呼んで來よ同はる雨はいせの望一がこより哉春藪ふかく蝶氣のつかぬ椿かな同曉のつるべにあがる椿かな椿鶯のなくや餌拾ふ片手にもうぐひすの鳴きそこなへる嵐かな梅の木に猶やどり木や梅の花みのむしと知れつる梅のさかり哉花もなき梅のすはえぞ賴もしき梅折りてあたり見まはす野中哉藪見しれもどりに折らむ梅の花網代民部の息に逢うてむめの花もの氣に入らぬけしき哉鷹居ゑて折るにもどかし梅の花石釣りてつぼみたる梅折らしけり吾がうらも殘しておかぬ若菜哉側濡れて袂のおもき磯菜かな女出て鶴たつあとの若菜哉七草をたゝきたがりて泣く子かな精出して摘むとも見えぬ若菜哉若菜つむ跡は木をわる畑かな鷗玄素岐阜藤小加賀俊津島野越步察秋蘿春似水人白尾鷹雨二一五冬文鹽車蕉笠其角舟泉龜十一歲奇助生野水鼠彈湍水ト枝荷分去來若長良芭風蕉蕉笠冬松一落梧越人鷗步玄察小加賀俊津島野春似水越人髪
枯芝や若葉たづねて行くこてふゆふやみの唐網にいるかはづかな飛入りてしばし水ゆくかはづかなあかつきをむつかしさうに鳴く蛙手をついて歌申し上ぐる蛙かな高聲につらをあかむる雉子かな暮かやはらの中を出かぬる胡蝶かな機櫚の葉にとまらで過ぐる胡蝶哉はつ蝶を兒の見出す笑ひかな不圖と飛んで後に居なほる蛙かないくすべり骨をる岸の蛙かな鳴立てゝいりあひ聞かぬ蛙かな行きかゝり輪繩解いてやる雉子哉あふのきに寢て見む野べの雲雀哉春風にちからくらぶる雲雀かな蝙蝠にみだるゝ月のやなぎ哉いそがしき野鍛冶を知らぬ柳哉風吹かぬ日は我がなりの柳哉吹くかぜに鷹片よする柳哉吹く風に牛のわきむく柳かなみじかくて垣にのがるゝ柳かなさはれども髪のゆがまぬ柳哉とりつきて筏をとむる柳哉すがれ〓〓柳は風にとりつかむ尺ばかりはやたわみぬる柳哉さし柳たゞ直なるもおもしろし何事もなしと過行く柳哉風の吹く方をうしろの柳かな池に鵝なし假名書習ふ柳陰土筆頭巾にたまるひとつより蘭亭の主人、筆意ある故なり。池に鵝を愛せられしは、靑俳諧七部集曠野集卷之二春芭蕉翁全集百歲炊玉梅餌柳風-松津島落下梧去來越人落梧宗山崎鹽鑑車一除風野水同荷今校遊松芳杏雨此橋杏雨昌碧一小春一越人野水素堂靑江井雪笑笑燕の巢をのぞきゆく雀かな今來たといはぬばかりの燕かな去年の巢の土ぬり直す燕かな遊ぶともゆくともしらぬ燕哉とりつきて山吹のぞくいはねかな一重かと山吹のぞくゆふべかな山吹とてふの紛れぬあらしかな松明に山吹うすし夜のいろほろ〓〓と山吹ちるか瀧のおとはげ山やおぼろの月のすみ所麥畑の人みるはるの塘哉ゆくてふのとまりのこさぬ薊哉くさかりてすみれ選出す童哉晝ばかり日のさす洞のすみれ哉ほうろくの土とるあとはすみれ哉ねぶたしと馬にはのらぬすみれ草何の氣もつかぬに土手のすみれ哉すご〓〓と山やくれけむ遲ざくらうしろより見られぬ岨のさくら哉手のとゞくほどは折らるゝ櫻哉とき〓〓は蓑干す櫻咲きにけり廣庭に一本うゑしさくら哉つばきまで折りそへらるゝ櫻かな萬歲を仕舞うてうてる春田哉うごくとも見えで畑うつ麓かな菜の花の畦うちのこすながめかななの花の座敷にうつる日影かな菜の花や杉菜の土手のあひ〓〓に麥の葉に菜の花かゝる嵐哉哉仲菊の名は忘れたれどもうゑにけり引くいきにうしろへころぶ柳かな靑柳にもたれて通す車哉春二一七二一六同岐阜蓬襟ト雨雪枝長虹長之俊似去來野水芭蕉式大阪杜之國燭遊鷗步舟泉野水荷兮忠知一冬松一橋除風笑艸越人昌碧去來〓洞傘下長虹不悔生林鷗步素秋髪
菴の夜もみじかくなりぬ少しづつ深川の菴にて散るたびに兒ぞひろひぬ芥子の花大粒な雨にこたへし芥子の花けし散りて直に實を見るゆふべ哉鳥とんであぶなきけしの一重哉しら芥子にはかなや蝶の鼠いろむぎがらにしかるゝ里の葵かな麥かりて桑の木ばかり殘りけり枯色はむぎばかり見る夏野かな上げ土にいつの種とて麥一穂はげ山や下行く水の澤卯木ゆあびして若葉見にゆく夕べかなひら〓〓と若葉にとまる胡蝶哉わけもなく其の木〓〓の若葉哉若葉からすぐにながめの冬木かな切かぶの若葉を見ればさくらかな俳諧七部集積野集卷之三行く春のあみ鹽からを殘しけり永き日や油しめ木のよわるおと永き日やがねつくあとも暮れぬ也篝火に藤のすゝけぬ鵜舟哉朧夜やながくてしろき藤の花山まゆに花咲きかぬる躑躅かな人霞む舟と陸との鹽干かな親も子もおなじ飮手や桃の酒なら漬に親よぶ浦の鹽干哉角落ちてやすくも見ゆる小鹿かな友減りて鳴音かひなや夜の雁黃昏にたてだされたる燕かな芭蕉翁全集岐阜玄夢鈍同岐阜吉東李落嵐鈍作者不知生竹龜藤不次巡桃梧蘭可林寮々可洞洞蘿交三輪同野ト龜兼荷友傘越蕉旦鼠嵐雪水枝洞正分重下人笠藁彈蚊のやせて鎧の上にとまりけり雨のくれ傘のぐるりに鳴く蚊かな蚊やり火に寢所せまく成りにけり蚊のむれて栂の一木の曇りけりこゝらかとのぞくあやめの軒端哉水汲みてぬれたる袖のほたるかなくさかりの袖よりいづる螢かな雨の夜は下ばかりゆく螢かな道細く追はれぬ澤のほたるかなくらきよりくらき人呼ぶ螢かな窓くらき障子をのぼるほたる哉刈草の馬屋にひかるほたるかな宵の間は笹にみだるゝほたるかなはじめて葎室をとふらはれけるころ二一九櫻井二杏小秋鷗ト含靑風不一亢一さびしさの色はおぼえずかつこ鳥柿の木のいたり過ぎたる若葉哉いちはつは男なるらむかきつばた夏來てもたゞ一つ葉のひとつかな髭にたく香もあるべしころもがへ更衣襟もをらずやだヾくさにころもがへ曠野集卷之三ころもがへ刀もさして見たき哉更衣や白きはものに手のつかず初山路にて申しつかはしける忘れがたく、せうはくらうじんるとて、ふ香を、肖柏老人のもちたまひしあらし山とい夏雪の朝、明くる若葉のころ文鱗に越人が持ちきたるを馬のはなむけに文鱗がくれけ釋越芭荷一鼠傘路人井蕉兮彈下通仲夏二一八野越芭一荷笑水雨春芳步枝咕江笛交髪輔水人井蕉兮
笠をきてみな〓〓蓮に暮れにけり蓮見む日ぞさかやきは割るゝとも吹きちりて水の上ゆくはちすかなすゞしさを忘れてもどる川邊哉提灯のどこやらゆかし凉み舟涼しさや樓の下ゆく水の音飛石の石龍や草の下凉みおもはずの人に逢ひけり夕納凉はき庭の砂あつからぬ曇りかな簾してすゞしや宿の這入口涼しさよ白雨ながら入る日かげすゞしさに榎もやらぬ木蔭かな夕立に干傘ぬ雲の峰腰かけどころたくむなり楠もうごくやう也蟬のこゑ暮俳諧七部集曠野集卷之三夏るゝ垣穂哉聲あらば鮎も鳴くらむ鵜飼舟鵜のつらに篝こぼれてあはれ也おもしろうてやがて悲しき鵜舟哉おもしろうさうしさはくる鵜繩哉五月雨は傘に音なきを雨間かなこの頃は小粒になりぬ五月雨五月雨に柳きはまる汀かな聞居ればたゝくでもなき水鷄哉笋の時よりしるし弓の竹竹の子に行燈さげてまはりけり足のべて姫百合草折らす晝寢哉汐引きて藻の花しぼむ暑さ哉藻の花をかつげる蜑の鬘かな同おなじく岐阜にておなじところにて芭蕉翁全集古晨松坂秀岐阜未同俊津島·如鳴海同荷ト去玄旨法印傘野昌梵風正學枝似風分來下水碧大津龜尙-野去長此兒胡越荷芭貞梵風正學枝似風人兮蕉室洞白龍水來虹橘竹及綿の花たま〓〓蘭に似たる哉釣鐘草後に付いたる名なるべし麻の露みなこぼれけり馬の路虫ぼしや幕をふるへばさくら花直垂をぬがずに掬ぶしみづかなかたびらは淺黃着てゆく〓水哉引立てゝ馬にのまするしみづかな連れあまた待たせて掬ぶしみづ哉すみきりて汐干の沖の〓水哉はら〓〓としみづに松の古葉哉河骨に水のわれゆくながれ哉名はへちま夕がほに似てあはれ也山路來て夕顏見たる野中かな夕顏は蚊の鳴くほどのくらさ哉ゆふがほのしぼむは人のしらぬ也夕顏や秋はいろ〓〓の瓢かなすびつさへすごきに夏の炭俵菴の留主に夏の夜やたき火に簾見ゆる里冷まじやともしび殘る夏のあさ撫子や蒔繪書く人を恨むらむ蘭の花や泥によごるゝ宵の雨虹の根をかくす野中の樗かな松笠のみどりを見たる夏野哉鴨の巢の見えたりあるは隱れたり曲江に篝の見えぬ鵜舟かな先ふねの親もかまはぬ鵜舟かな二二一素越李岐阜ト一尙潦文俊長芙長市津島偕野芭其旦藤越同鈍ト路梅淳大津堂人晨枝髪白月瀾似虹水虹柳雪水蕉角藁蘿人可枝通餌兒
わが宿はどこやら秋の草葉かなどことなく地に這ふ蔦のあはれ也藪の中に紅葉みじかき立枝哉しらぬ人とものいひてみる紅葉哉紅葉には誰がをしへける酒の燗山賤が廣驚つくりて笑ひけり田と畑をひとりにたのむ案山子哉鹿の音に人の顏見るゆふべかな斧のねや蝙蝠いづる秋のくれ石切の音もきゝけり秋のくれ谷川や茶袋そゝぐ秋のくれかれ朶に烏のとまりけり秋のくれとし〓〓の古根に高き薄かなつく〓〓と繪を見る秋の扇かな仲わが草庵にたづねられし頃俳諧七部集曠野集卷之四秋隣りなるあさがほ竹にうつしけり朝顏を其の子にやるなくらふものあさがほの白きは露も見えぬ也蕣や垣ほのまゝのじだらくさ朝がほは酒盛しらぬさかりかな男くさき羽織をほしの手向かなかたびらのちゞむや秋の夕景色梧の葉やひとつかぶらむ秋の風ちからなや麻刈るあとの秋の風曠野集卷之四き)一葉ちる音かしましきばかり也初子を守るものに、て松島雲居の寺にて秋芭蕉翁全集鷗同いひし詞の句になり荷文芭杏方津島仙圓越步兮鱗蕉雨生化解人宗越林東其重一伊豫一ト傘益津島小加賀芭俊鷗同圓越和水斧順角五泉髪枝下音春蕉似步解人山路の菊野菊とも亦違ひけりなにとなく植ゑしが菊の白き哉碪打ちて我れに聞かせよ坊がつま蓮の實のぬけつくしたる蓮のみかしら菊のちらぬぞすこし口をしき暮いそがしや野分の空の夜這星さぞ砧孫六やしきしづやしき心にもかゝらぬ市のきぬたかなばつとしてねられぬ蚊屋の別れ哉松の木に吹きあてられな秋のてふ一本の蘆の穗瘦せしゐせき哉恥ぢもせず我なり秋とおこりけり秋よしのにて關の素牛にあひて素堂へまかりて二二三行く人や堀にはまらむむらすゝき草ばう〓〓名もしらぬ小草花さく野菊哉もえきれて紙燭をなぐる薄かな棚つくるはじめさびしき葡萄哉ひよろ〓〓と猶露けしや女郞花ふまれても猶美しや萩の花いなづまやきのふは東けふは西あの雲は稻妻をまつたよりかなきり〓〓す燈臺消えて鳴きにけりまつ虫は通る跡より鳴きにけり畦道にのりものすうるいなばかな凉しさは座敷よりつる鱸かな秋風やしらきの弓に弦はらむ葉より葉にものいふやうな露の音あさがほやひくみの水に殘る月宗祇法師のこと葉によりてからぬも荷ふ花野哉二二二越昌巴加賀芭加賀北伏見胡荷任作者不知芭舟其芭素一鷺昌去鼠胡及兮口蕉泉角蕉秋髪汀長來彈及其曉胡舟防越素人碧丈笑蕉角〓及泉川入枝堂
爐を出でゝ度々月ぞおもしろき寒鷹狩の路にひきたる蕪かなこがらしに吹きとられけり鷹の巾鷹居ゑて石けつまづく枯野哉蓮池のかたちは見ゆる枯葉かな冬枯に風のやすみもなき野哉あたらしき釣瓶にかかる葱かな靑くともとくさは冬の見物かな石臼の破れてをかしやつはの花月縫ひものをたたみてあたる火燵哉のどけしや麥まく頃のころも更麥まきて綺麗になりし庵かな蓑蟲のいつから見るやかへり花梨の花しぐれにぬれて猶淋し茶の花はもののついでに見たる哉枇杷の花人のわするる木蔭かな蘆の穗や招ぐ哀れよりちるあはれ殘る葉も殘らずちれや梅もどき淋しさは橿の實落つる寐覺かな淋しさは橿の實落つる寐覺かなかなぐりて蔦さへ霜の鹽木かな蘆濃州千伊豫二タ閣水けふになりて菊作らうと思ひけりきくの露凋める人や鬢帽子かはらけの手ぎは見せばや菊の花て、箔つけたる土器出されければ一色やつくらぬ菊の花ざかり荷今が室に旅ねする夜、草臥なほせと俳諧七部集曠野集卷之五芭蕉翁全集月野水蕉笠杏雨松芳一髪洞雪文鱗胡及落梧-同昌碧野水李一晨髪一路通加生同其角曉語枝井夜をこめて雪舟に乘りたるよめり哉長虹ぬつくりと雪舟に乘りたるにくさ哉荷分峠より雪舟のりおろす鹽木かな鼠彈打ちをりて何ぞにしたき氷柱哉兼題雪舟つきはりてまつ葉かきけり薄氷深き池氷のときにのぞきけり水棚の菜の葉に見たるこほり哉霜の朝せんだんの實のこぼれけりいたゞける柴をおろせばあられ哉柴の戶をほどく間にやむ霰かな搔きよする馬糞にまじる霰かなしら浪とつれてたばしる霰かなおろしおく鐘しづかなる霰かな同勝杜宗杏林重勝津島吉國之雨斧治吉仲あさ漬の大根あらふ月夜かな木の葉たく跡はさびしき圍爐裏哉一葉づつ柿の葉みなに成りにけりこがらしに二日の月の吹きちるかわたし守ばかり蓑きる時雨かな釣がねの下降りのこすしぐれかな今朝は猶空ばかり見るしぐれかな見しりあふ人のやどりの時雨哉人を待ちうくる日にはつしぐれ何おもひ出す此の夕べ一夜きて三井寺うたへ初しぐれあめつちのはなしとだゆる時雨哉萬句興行に京なる人に申しつかはしける初曠野集卷之五冬冬二三五二二四夜舟除風俊似勝吉杜國宗之杏雨林斧俊似同一荷分傘下炊玉落梧荷分湍水尙白湖春髪
芭蕉翁全集馬屋より雪舟引出すあしたかな一井雪舟引や休むも直に立つてゐる龜洞つけかへて遲るゝ雪舟のはや緒哉含呫白炭ノ靑海や羽白黑鴨赤がしら忠知舟にたく火に聲たつる千鳥かな龜洞朝鮮を見たもあるらむ友千どり村俊井を掘るものは六月寒く、米つくをとこは冬裸なり汗出して谷に突きこむ氷室かな冬松海鼠腸の壺埋めたき氷室哉利重炭竈の穴ふさぐやら薄けぶり龜洞膝ぶしをつゝめど出づる寒さかな鹽車加賀火とぼして幾日になりぬ冬椿笑いつこけし庇おこせば冬つばき龜洞冬ごもり又よりそはむ此のはしら芭蕉歲暮餅つきや內にも居らず酒くらひ李下吾がかいてよめぬものあり年の暮尙白もち花の後はすゝけて散りぬべし野水春ちかく榾つみかゆる菜畑かな龜洞煤はらひ梅にさげたる瓢かな一髮木曾の月みてかへる人の、みやげにとて杼の實ひとつおくらる。年のくれまでうしなはず、かざりにやせむとてとしの暮杼の實ひとつころ〓〓と荷分門松をうりて蛤ひと荷ひ內習田作にねずみ追ふ夜の寒さかな龜洞分習洞冬利龜鹽加賀龜芭松重洞車笑洞蕉李下曠野集卷之六雜年中行事內十二句供屠蘇白散いはけなやとそなめ初むる人次第春日祭年ごとに鳥居の藤のつぼみかな石〓水臨時祭沓音もしづかにかざすさくら哉灌佛けふの日やついでに洗ふ佛達端午おも痩せて葵付けたるかみうすし施米うちあけて施すこめぞ蟲くさき俳諧七部集曠野集卷之六乞巧奠わか菜よりたなばた草ぞ覺えよき駒迎爪髪もたびのすがたや駒むかへ選蟲草の葉や足のをれたるきり〓〓す十月更衣玉しきの衣かへよとかへりばな五節舞姫にいく度指ををりにけり追儺おはれてや脇にはづるゝ鬼の面詩題十六句今日不知誰計會春風春水一時來氷りゐし添水またなる春の風白片落梅浮濶水荷兮二二七
芭蕉翁全集水鳥のはしに付きたる梅しろし春來無傳閑遊少花うりに留主たのまるゝ隣りかな花下忘歸因美景ねいりなばもの引着せよ花の下留春春不留春歸人寂寞行く春もこゝろ得顏の野守かな巖風吹袂衣不寒復不熱綿脫はまつかぜ聞きに行くころか池晩蓮芳謝蓮の香も行水したるけしきかな暑月貧家何處有客來唯贈北窓風凉めとて切りぬきにけり北のまど大底四時心總苦就中斷腸是秋天雪の旅それらではなし秋の空夜來風雨後秋氣颯然新秋の雨はれて瓜よぶ人もなし遲々鐘漏初長夜耿々星河欲曙天一しきりひだるう成りて夜ぞ長き殘影燈開牆斜光月穿麻獨寢や泣きたる顏にまどの月萬物秋霜能懷色白ぎくや素がほで見むを秋の霜十月江南天氣好可憐冬景似春美こがらしもしばし息つく小春哉寂寞深村夜殘雁雪中聞鉢たゝき出もこぬむらや雪のかり白頭夜禮佛名經佛名の禮に腰懷く白髪かな禪閣の選びのこし給ひしも、さすがにをかしくて舟泉鋸鋼目立かげろふの夕日にいたきつぶり哉付木突さつき關水鶏ではなし人の家釣瓶繩打かへるさや酒のみによる秋の里糊賣あさ露のぎぼう拆りけむつくも髪馬糞搔こがらしの松の葉搔とつれ立ちて李夫人越魂在何詳香煙引到焚處かげろふの抱きつけば我が衣かな楊貴妃雲髯半偏新睡覺花冠不整下堂はる風に帶ゆるみたる寢顏かな昭陽人小頭鞋履窄衣裳靑黛默眉眉細長 外人不見々應笑もの數奇やむかしの春の儘ならむ傳講七部集曠野集卷之六西施宮中拾得娥眉斧不獻我王是愛君花ながら植ゑかへらるゝ牡丹かな主昭君玉貌風沙勝畫圖よの木にもまぎれぬ冬の柳かな-日留主をすること侍りて卯寢屋の蚊や御佛供燒く火に行でゝ行く辰杜若生けん繪畫の來る日かな釣雪越人講釋の眠りにつかふあふぎ哉午水あびよ藍干す上を踏まずとも未蟬の音に武家の夕食過ぎにけり
苔とりし跡には土もなかりけりおく山は霰に減るか岩のかど海岩藏舟於壑藏山於澤謂之固然而夜一方は梅さく桃の繼木かな謂人牛馬四足是謂天、落馬首穿牛鼻是秋のくれ鵜川々々の火ぶりかな川おもしろと鰯引きけり盆の月海枝ながら蟲うりに行く蜀漆哉里鴫突の行く影長き日あしかな野鹿笛の上手をつくすあはれさよさみだれや鷄とまるはね作り所にありて生をたつこと是非なし。山申魚魚蟲鳥〓越同同含兒樹人俳諧七部集曠野集卷之七芭蕉翁全集同湍同含兒樹水呫竹水曠野集卷之七鳴聲のつくろひもなき鶉かな鷄頭のいろ〓〓のかたちをかしや月の雲うつくしき人に見らるゝ〓かなほとゝぎす鳴きやむ時を知りに鳬散りはてゝ跡なきものは花火かな七夕よ物かすこともなきむかしからながら師走の市に賣るさゞい山法師藤-鈍者壽銳者天絕聖棄知大盜乃止半有々力者負之而走岩然休直房雪になるまで紅きかな二三〇五月雨にかくれぬものや瀨田の橋麥うつや內外もなき志賀のさと芳野出て布子賣る惜し更衣關越えて爰も藤しろみさかかな雪一殘る鬼獄さむき彌生かな嵯峨までは見事あゆみぬ花盛り藁一把かりて花みる阿波手かなから崎の松は花よりおぼろにてしら魚の骨や式部が大江やま八重がすみ奧まで見たる龍田哉名きたるを見て吟じ給ふと也。美濃の國せきといふ所の山寺に、琵琶橋眺望所二三一ふぢの咲宗祇法師含呫鼠湍長一市桂荷湍芭荷杜芭重杜蕉五國分水蕉分國彈水虹井山タ
くるとて狩野桶といふ物、蜘の巢の是も散行く秋のいほおくられつおくりつ果は木曾の秋月に行く脇差つめよ馬のうへしつかはす越人旅だちけるよし聞きて、更科の月は二人に見られけり霧はれよすがたを松に見えぬ迄物いはじたゞさへ秋の悲しさよあき風に申しかねたる別れかななき〓〓てたもとにすがる秋の蟬稻妻にはしりつきたる別れかな芭蕉士を送る夕立にどの大名か一しぼり五月雨や柱目を出す市の家さらしなに行く人々にむかひて俳諧七部集曠野集卷之七其角のはなむけにお路芭野京より申荷鼠舟野一釣傘松通蕉水分彈泉水井下冬ざれの獨轆轤や小野のおく珍らしと生海鼠を燒くや小野の奧むさし野とおもへど冬の日脚かなから崎やとまり合せて初しぐれ湖を屋根から見せむ村しぐれ武藏野や幾ところにも見る時雨鴫突は萱津のあまのむまごかな鴫突の馬やり過す鳥羽田かな唐土に富士あらばけふの月も見よ夕月や杖に水なぶる角田川いざよひもまだ更科の郡かなみよしのはいかに秋立つ貝のおといざのぼれ嵯峨の鮎食ひに都鳥牛もなし鳥羽のあたりの五月雨湖の水まさりけり五月雨九月十三夜角田川にて芭蕉雞全集鼠舟野一釣傘松津島俊伊豫洗隨尙舟淵胡素越芭破貞一去彈泉水井雪下芳笑似惡友白泉支及堂人蕉笠室髮來里人のわたり候かはしの霜からしりの馬に見てゆく千鳥哉天龍でたゝかれたまへ雪のくれあゝたつたひとりたつたる冬の宿夢に見し羽織は綿の入りにけりいく落葉それほど袖も綻びず旅なれぬ刀うたてや村しぐれ草枕犬もしぐるゝか夜のこゑ澤菴の墓を別れの秋のくれよくきけば親舟に打つきぬた哉入る月に今しばしゆくとまりかなとまりとまり稻すり歌も替りけり狩野桶に鹿をなつけよ秋の山越人と吉田の驛にて其角にわかるゝ時鳴海にて芭蕉子に逢うて品川にて人にわかるゝとて二三三蚊をころすうちに夜明くる旅寢哉寢入らぬに食燒く宿ぞ明易き子規なみだおさへて笑ひけりひとつ脫いでうしろにおひぬ更衣のどけしや港のひるの生ざかな日の入りや舟に見て行く桃のはなさくら咲く里を眠りて通りけり花のかげ謠に似たる旅ねかな雲雀より上にやすらふ峠かな旅夜るの日や不破の小家の煤拂星崎のやみを見よとや鳴くちどりよし野山もたゞ大雪のゆふべ哉雪の不二藁屋ひとつに隱れけりある人の餞別に大和國平尾村にて二三二津島常芭文京一玄ち荷宗傘越荷野荷昌冬除芭荷一タ同芭如芭野湍因下人分水今秀蕉鱗井寮ね兮碧松風蕉分髪楓蕪行蕪水水
つまなしと家主やくれし女郞花一めぐり人まちかぬるをどり哉宵闇の稻妻消すや月のかほさゝげめし妹が垣根は荒れにけり蟲ほしに小袖きて見るをんな哉むし干の目にたつ枕ふたつかな蚊屋出でゝねがほまた見る別れ哉きぬ〓〓や餘の事よりも時鳥春の野に心ある人の素顔かな行年や親に白髪をかくしけりさま〓〓の過ぎしをおもふ年の暮ふる里や臍の〓になくとしの暮戀さびしき折りに六宮粉黛無顏色老をまたずして鬢先におとろふ俳諧七部集曠野集卷之七肩ぎぬは戾子にてゆるせ老の夏一本のなすびもあまる住居かなさうぶ入る湯をもらひけり一盤あやめさす軒さへよそのついで哉父母のしきりに戀し雉子のこゑ櫻見て行きあたりたる乞食哉ちる花にたぶさ恥ぢけり奧の院餘處の田の蛙入れぬも浮世かな子をひとり守りて田を打つ孀かな消ゆる時は氷もきえて走るなり旅ねして見しやうき世のすゝ拂寒けれど二人旅ねぞたのもしき述高野にて高野にて草菴を捨てゝ出づる時懷芭蕉翁全集荷尙長心冬文長除伊勢一有妻棘文瀾虹風越除芭杉杏同荷芭梅杜落快路同芭分白虹人風蕉風雨兮蕉舌國梧宣通蕉南無や空たヾ有明のほとゝぎす咲きつちりつ隙なきけしの畠かなちる花を南無阿彌陀佛と夕べ哉おそろしや後朝のころ鉢鼓き後朝をあられ見よとて戾りけり山畑にものおもはばや蕪引うたゝねに火燵消えたる別れかな物おもひ火燵をあけていかならむ松の中しぐるゝ旅の嫁かな妻の名のあらば消し玉へ神送りしりながら薄に明くるつまどかな無まつ期に末期に松坂の浮瓢といふ人のみまかりたるに無常迅速常二三五堺元傘守昌冬松嵐舟俊越小順下武碧松芳泉似人春目や遠う耳やちかよる年のくれ榾の火に親子足さす侘寢かなたらちめの暖甫や冷めん鐘の聲あはれなる落葉に燒くや島さより落葉かく身はつぶね共ならばやな木がらしの落葉に破る小指かなさればこそあれたき儘の霜の宿かり家をむさぼる菊の垣穗かなかくれ家やよめなの中に殘る菊似合しや白髪にかつぐ麻木賣古〓の事思ひ出づる曉に一籠おくられてある人のもとより、鎌倉建長寺に詣でゝ舊里の人にいひつかはす人のいほりをたづねて九月十日素堂の亭にて見よやとて落葉を二三四西去鼠荷越杜芭曉嵐龜武來彈分人國傘守昌冬松嵐舟俊越小西去鼠荷杜芭曉嵐龜下武碧松芳義泉似人春武來彈分國蕉語雪洞
芭蕉翁全集いひやりける橘のかをり顏見ぬばかりなり荷分いもうとの追善に京手のうへに悲しく消ゆるほたる哉去來ある人子うしなはれける時申しつかはすあだ花の小瓜と見ゆるちぎり哉荷兮世をはやく妻の身まかりける頃水無月の桐の一葉とおもふべし野水辭世あはれなり燈籠ひとつに主コ齊子におくれける頃似た顔のあらば出て見む一躍り落梧一原野にておく露や小町がほねの見事さよ釣雪妻の追善にをみなへししでの里人それ賴む自悅二三六李下が妻のみまかりしをいたみてねられずやかたへひえ行く北颪し去コ齊身まかりし後その人の鼾さへなし秋のくれ其母におくれける子のあはれををさな子やひとり食くふ秋の暮尙ある人の追善に埋火もきゆやなみだの烹ゆるおと芭旅にてみまかりける人を淡雪のとゞかぬうちに消えにけり鼠加賀鳥邊野のかたや念佛の冬の月小荷分來其角尙白荷兮芭蕉野水鼠加賀小彈春落梧釣雪自悅事法華八講の侍るよし、尊きことなれば聽聞にまかりて、序品のこゝろをちる花の間はむかしばなしかな越人女房の聽聞所と覺えて、御簾たれおく暗き所あり、龍女成佛の所に至りて、しのびあへず鼻かむ聲のしければほろ〓〓と落つる淚やへびのたま同觀音の尾上のさくら咲きにけり俊似古寺やつるさぬかねのすみれ草一井八島にて伊豫海士の家聖呼びこむやよひかな千閣咲きにけりふべんな寺の紅牡丹一井夏山や本蔭々々の江湖部屋蕪葉奈良にて灌佛の日に生れあふ鹿の子かな芭蕉灌佛のその頃〓ししらかさね尙白高野にて曠野集卷之八釋〓伊勢にて神がきやおもひもかけず涅槃像芭蕉負うてくる母おろしけりねはん像鼠彈西行上人五百歲忌にはつきりと有明のこるさくら哉荷今おなじ遠忌に連翹や其の望の日としをれけり胡及うで首に蜂の巢かくる二王かな松芳木履はく信もありけり雨の花杜國つりがねを扇でたゝく花のてら冬松花に酒僧ともわびむ鹽さかな其角貞享つちのえ辰の歲、彌生一日東照宮の別當、僧正の御房に、慈惠大師遷座執俳諧七部集職野集卷之八芭鼠蕉彈似井荷今伊豫千一蕪閣井葉芭尙蕉白二三七
かわくときしみづ見付くる山邊哉月の頃隣りの榎木きりにけり竹たてゝおけば取りつく大角豆哉雙六のあひて呼びこむついり哉雪の日やさか樽ひろふあまの家まつ白に梅のさきたつみなみ哉千觀が馬もかせはし年のくれ朝寐する人のさはりや鉢鼓つくり置いてこはされもせじ雪佛如暗得燈如病得醫如渡得船如子得母如商人得主如裸者得衣如寒者得火藥王品七句俳諧七部集曠野集卷之八垣越に引導覗くばせをかな稻づまに大佛をがむ野中かな攝待にたヾゆく人を止めけり攝待のはしら見立てむ松のかげたま祭道ふみあくる野菊かな魂まつり舟より酒を手向けけり石籠に施餓鬼の棚のくづれかな折りかけの火を取る蟲の悲しさよおどろくや門もてありく施餓鬼棚ほころびや僧の縫ひをる夏ごろも夏かげの晝寐はほんのほとけ哉齊に來て菴一日のしみづかな平等施一切即身即佛おもふこと流れて通るしみづ哉十如是こしの扇禮義ばかりの御山かな芭蕉翁全集胡其文一ト荷俊釣ト龜文探荷鼠愚荷加賀一及角潤井枝分似雪枝洞里丸分彈益今笑雪宮の後川わたり見るさくらかな花に來て齒朶かざり見る社かな繪馬みる人のうしろのさくら哉門あかで梅の瑞籬をがみけり月代もしみるほどなり梅のつゆ覺えなくあたまぞさがる神の梅何とやらをがめば寒しむめの花燈のかすかなりけり梅の中上下のさはらぬやうに神の梅うぐひすも水浴びて來よかみの梅しん〓〓と梅ちりかゝる庭火哉きさらぎや二十四日の月の梅古宮や雪しるかゝる獅子頭神二月二十五日奉納に祇二三九秋の夜やおびゆる時に起さるゝ雪折やかゝる二王のかた腕曙や伽藍々々の雪見廻ひたふとさの涙や直に氷るらむ衣着て又はなしけり一しぐれ鉢の子に木綿をうくる法師かな進み出て坊主をかしや月の舟燕も御寺のつゞみかへりうて雁くはぬ心佛にならはぬぞ同古寺の雪鎌倉の安國論寺にてるに、人のもとにありて、ある寺の興行にも雁を食らはずとを不食不閣、ある人四時の景物なりとて、またしぐれければ其の心を感じて、立ちいでむとしけ二三八俊荷越鼠ト一其荷水鷄と鶉似分人彈枝井角分我れ李鈍玄重雨舟越釣昌龜同荷釣俊荷越鼠荷桃可寮五桐泉人雪碧洞今雪似分人彈分
芭蕉翁全集御手洗の木の葉の中のかはづ哉ほとゝぎす神樂の中を通りけり宮守の灯をわくる火串かな破扇一度にながす御そぎかな川原まで瘧まぎれに御祓哉こがらしや里の子のぞく神輿部屋此の月のえびすはこちにゐます哉冬ざれや禰宜のさげたる油筒若宮奉納きゝしらぬ歌も妙なり神神樂跡の方と寢直す夜のかぐらかな鈴鹿川夜あけの旅の神樂かなかつらぎの神にはふとき庭火哉橋杭や御祓かゝる煤はらひ祝肩付はいくよになりぬ長閑なり二四〇好玄龜未荷尙松落葉察洞學分白芳梧荷分が四十の春に幾はるも竹其のまゝに見ゆるかな重君が代やみがくことなき玉つばき越靑苔は何ほどもとれ沖の石傘いきみだま疊の上に杖つかん龜千代の秋にほひにしるし今年米同しばしかくれ居ける人に申し遺はす先づ祝へむめをこゝろの冬籠り芭五人下洞蕪利野昌村ト重水碧俊枝冬文猿を聞いて實に下る三聲のなみだといへるも、實の字、老杜のこゝろなるをや、猶雁の句を慕ひて麥をわすれ華におぼれぬ雁ならし素堂この文人のことづかりてとゞけられしを、三人ひらき幾度も吟じて手をさしかざす峰のかげろふ野かんじき鑷の路もしどろに春の來て荷ものしづかなるおこし米うり越門の石月待つ闇のやすらひに風の目利を初秋の雲武士の鷹うつ山もほどちかししをりについて瀧の鳴る音袋より經とり出す草のうへづぶと降られて過ぐるむら雨立ちかへり松明直ぎる道の端千句いとなむ北やまの寺二四一曠野集員外誰れか花をおもはざらむ。たれか市中にありて朝の景色を見む。我れ東四明の麓にありて、花のこゝろはこれを心とす。よつて佐川田喜六の、よしの山あさなあさなといへる歌を、實にかんす。又「麥くひし雁と思へど別れかな。此句尾陽の野水子の作とて、芭蕉翁の傳へしをなほざりに聞きしに、さいつ頃、田野へ居をうつして、實に此の句を感ず。むかしあまた有りける人の中に、虎の物がたりせしに、とらに追はれたる人ありて、獨り色を變じたるよし、誠のおほふ可らざる事左の如し。俳諧七部集曠野集員外野荷越水兮人水今人水兮人水分
むく起にものいひつけて亦睡り配所にて干魚の加減覺えつゝ垢離かく人の着るものゝ番向ふまで突きやるほどの小舟にて日のいでやけふはなにせむ暖に時々にものさへくはぬ花の春袖ぞ露けき嵯峨の法輪秋風に女車の髭をとこ凉しやと莚もてくる川の端いくつともなくてめつたに藏造る道の邊に立暮したる禰宜が麻歌うたうたる聲のほそ〓〓八重山吹ははたちなるべし心やすげに土もらふなり湯殿まゐりの木綿たつ也たらかされしやイめる月樂する頃とおもふ年榮俳諸七部集職野集員外かしこまる諫めに淚こぼすらし露しぐれ步鵜に出づる暮かけて月のかげ寄合ひにけり辻相撲柏木の脚氣の比のつく〓〓とふら〓〓ときのふの市の鹽いなだ冬の日のてか〓〓としてかき曇り明くるやら西も東もかねのこゑ露の身は泥のやうなる物思ひ姥ざくら一重櫻も咲殘り狐つうさしとしのぶ不破の萬作秋になるより里の酒桶さゝやくことの皆聞えつる豕子に行くと羽織うちきてさぶうなりたる利根の川舟秋を猶なく盗人の妻あてごともなき夕月夜哉かくびやう芭蕉翁全集きとや人の見るらむ묵びと野舟釣昌荷龜舟野昌釣龜荷野舟釣昌荷水泉雪碧兮洞泉水碧雪洞分水泉雪碧分水人兮水人兮水人兮水人今水人分水人夕月の雲の白さをうち詠め一駄過してこれも古綿荻の聲どこともしらぬ所ぞや夜寒の蓑を裾に引著せ百足の懼る藥たきけりのどけしや早き泊りに荷を解きてはるの舟間に酒のなき里遠淺や浪にしめさす蜊とりけぶたきやうにみゆる月影夕霞染物とりてかへるらむ柳のうらのかまきりの卵美しき鰌うきけり春の水二四三じついたつくりに落つる精進人なみに脇差さして花に行く桶のかつらを入れしまひけり夏の日や見るまに泥の照付いて水しほばゆき安房】のつばくらもおほかた歸る寮の窓やゝはつ秋のやみあがりなる盃もわするばかりの下戶の月おもひ逢うたりどれも高田派いりこみて足輕町の藪ふかし門を過行く茄子よびこむわき ざししやうじん小湊大根きざみてほすにいそがし墨ぞめは正月ごとにわすれつゝ捨てゝ春ふる奉加帳なり花さかり都もいまだ定らず水せきとめて池のかへとりかくす物見せよと人の立ちかゝり火箸のはねて手のあつき也舟荷冬松泉分文芳龜龜筆釣舟野昌荷洞洞雪泉水碧分野釣昌荷龜舟野昌釣龜荷水雪碧分洞泉水碧雪洞分洞分水人分水人分
ボ天仙蓼に冷食あさし春の暮代まゐりたゞやす〓〓と請負ひて通ひ路のついはりこけて逃げ歸り月の秋旅の月の朝鶯つけにいそぐらむ初あらしはつせの寮の坊主共引捨てし車は琵琶のかたぎにて土肥を夕べ〓〓にかきよせてほとゝぎす待ぬ心の折りもありた錢花咲きけりと心まめなり印判雨のわか葉にたてる戶の口六位にありし戀のうはきさ菜畑ふむなとよばりかけたり一荷になひし露のきくらげあらさがなくも人のからかひ一俳諧七部集曠野集員外おとす袖ぞものうきひやめし貫に鰹一ふしたさに出づるなりE号山里の秋めづらしと生鰯隆達も入齒に聲のしわがるゝ灯に手をおほひつゝはるの風なに事もうちしめりたる花の貌幾年を順禮もせず口をしき高みより踏み外してぞ落ちにける火鼠の皮の衣をたづねきてけふも亦物拾はむと立出づる秋草のとてもなき程咲きみだれ十日のきくのをしき事なり數珠くりかけて脇息のうへ月のおぼろや飛鳥井の君ちよまで双紙の繪を先にみる酒の半ばに膳もちてたつおちよ淚見せじとうち笑ひつゝtたま〓〓砂の中の木のはし弓ひきたぐる勝相撲とて芭蕉翁全集海中はなまいわし荷野同荷同野兮水分水松荷冬松舟冬荷舟松荷冬松舟冬荷舟松同分同水同分同水同分水水分芳今文芳泉文分泉芳兮文芳泉文兮泉芳供奉の草鞋を谷へ三方の數むづかしと火にくぶる庇をつけてすまひかはりぬ忍ぶともしらぬ顏にて一二年ころ〓〓と寢たる木賃の草枕太鼓たゝきに階子のぼるか暑き日や腹かけばかり引結び山の端に松と樅とのかすかなるめでたくもよばれにけらし生身魂駒のやど昨日は信濃けふは甲斐たゞ人となりて着物うちはおり氣だてのよきと聟にほしがるきつきたばこにくら〓〓とする八日の月のすきといるまで秋のあらしに昔淨瑠璃夕べせはしき酒ついでやるかけがねかけよ看經の中二四五かんきんはきこみだきさらぎや瀑を買ひに夜をこめて春の朝赤貝はきてありく兒黃昏の門さまだけに新分けけしの花とりなほす間に散りに鳬つく〓〓と錦着る身のうとましくさびしさは垂井の宿の冬の雨ざぶ〓〓とながれをわたる月の影そら面白顏見にもどる花の 旅立次第々々にあたゝかになる曉味噌する音の隣りさわがし莚ふまへて蕎麥あふつみゆ馬のとほれば馬のいなゝく長持買うてかへるやゝさむsctあかがひふかくき山口の家提婆はだいたきゞわ品ぼん二四、よむ荷冬松舟冬荷舟松荷冬松舟冬荷舟水同分水水兮水同分水分水今水分同水分文芳泉文分泉芳分文芳泉文分泉
あれこれと猫の子を選る樣々に眞木柱つかへおさへてよりかゝりとつくりを誰が置代へて轉ぶらむ月に柄をさしたらばよき團かなきばしら年たくるまであはうなりけり使の者に返事おもひがけなきかぜふきのそら蚊のをるばかり夏の夜の疵夏の夜の疵といふ、團と、つづきぬ。なるおもしろに、月さしのぼる氣色は、宗鑑法師の句をずむじ出すに、またするら柄をさしたらばよき猶其の跡もやまずSek晝の暑さもなく傘越段人おひにゆくはるの川岸ぐ々や小鹽大原嵯峨の花芭蕉〓翁全集濯藤ばかま誰れ窮窟にめでつらむ雁がねも靜かに聞けばからびすや酒しひならふこの比の月深川の夜俳諧七部集曠野集員外百萬もくるひ所よ花の春おろ〓〓と小諸の宿の畫時分にぎはしく瓜や苴やを荷ひ込みむつ〓〓と月みる顏の親に似てふく風にゑのころ草のふら〓〓と半白をおこせばきり〓〓す飛ぶ皆田樂きれてさくら淋しき干せる疊のころぶ町中人の請にはたつこともなし同ば音はこはす築山の秋に80申強す念佛同芭越蕉人傘越人下人下人下人同下同人下筆同人同下人筆同涼た破れ戶の釘うち付くる春の末月と花比良の高ねを北にして手もつかず晝の御膳もすべりきぬ後朝やあまりかぼそくあてやかに此の里に古き玄蕃の名をつたへいそがしと師走の空に立出でゝなにごとも長安は是れ名利の地瓢簞の大きさ五石ばかり也)見世はさびしき麥のひきわり雲雀さへづるころの肌ぬぎ物いそくさき舟路なりけり風ひきたまふ聲のうつくし足駄はかせぬ雨のあけぼのひとり世話やく寺の跡とり醫のおほきこそ目ぐるほしけれ風にふかれてかへる市人理をはなれたる秋の夕ぐれミ二四七灯臺の油こぼして押しかくし歌合獨古鎌首まゐらるゝ醉ざめの水の飮みたき比なれやうちむれて浦の苦屋の鹽干見よ花の賀にこらへかねたる淚落つわがまゝにいつか此世を背くべき喰ふ柿も亦くふ柿も皆澁し大勢の人に法華をこなされてどこでやら手の筋みせて物思ひまた獻立のみなちがひけりたゞしづかなる雨のふり出し內へはひりてなほほゆる犬、着ものゝ糊のこはき春かぜ寢ながら書くか文字のゆがむ戶秋のけしきの畑見る客月の夕べに釣瓶繩うつまみおもたげに泣きはらすかほとかのな154 Car二四六越芭越芭越芭越芭越芭越同芭同越蕉同人蕉人蕉人蕉人蕉人蕉人蕉人同下同人 同下同人同下同人同下同人下
道ばたに乞食の鎭守垣ゆひて夕まぐれまたうらめしき紙子夜着滿月に不斷櫻をながめばや穴いちに塵うちはらひ草枕夕鴉宿の長さに腹のたつやゝ思ひ寢もしねられず打臥してあぢきなや戶にはさまるゝ衣の妻西王母東方朔も目には見ず饅頭をうれしさ袖に包みけるひゝなねん弓すゝびたる突きあげのまど念者法師は秋のあきかぜ雛かざりて伊勢の八朔いくつの笠を荷ふ强力米つく音は師走なりけり戀の親とも逢ふ夜たのまむよしや鸚鵡の舌のみじかきうき世につけて死ぬ人は損じや俳諧七部集曠野集員外はふかみこ10がうりきつ花の頃談義參りもうらやましいかめしく瓦庇の木藥屋秋の田をからせぬ公事の長びきて行く月のうはの空にて消えさうにあやにくに類ふ妹が夕ながめほとゝぎす鼠のあるゝ最中に人去つていまだ御座の匂ひける家なくて服装につゝむ十寸鏡田にしを喰うて腥きくち馳走する子の痩せてかひなきさい〓〓ながら文字問ひにくる砧も遠く鞍にいねぶりかきほあの雲はたがなみだつゝむぞ垣穗のさゝげ露はこぼれて初瀨に籠もる堂の片隅ものおもひゐる神子のものいひ芭蕉翁全集かわらひさし同角同人同角同人同角同人同角同人角蕉人蕉人蕉人蕉人蕉人蕉人蕉人蕉人今朝よりも油あげする玉だすきなみだみるはなれ〓〓のうき雲に疱瘡貌の透きとほる程齒の白きはねあひて牧にまじらぬ里の馬月の宿書を引きちらす中にねて我れもらじ新酒は人の醒めやすきあん唱歌はしらず聲ほそりやるあ行燈はりてか後ぞひよべといふがわりなき川越くれば城下のみち外面藥の草わけにゆく秋うそ寒しいつも湯嫌ひどんがほへ二四九る浪人らうにん花の香にあさつき膾みどり也むしろ敷くべき喚續の春ものきゝわかぬ馬士の圖とりよびつぎそめいろの富士は淺黃に秋のくれ酒熟さ耳につきたるさゝめごと3いとを空蟬の魂離の煩みのおそろしき恨みたる淚まぶたにとゞまりて誰れか來て裾にかけたる夏衣菊萩の庭に疊を引きづりてちぢ落着に荷分の文や天津厂花とさしたる草の一瓶魚をもつらぬ月の江の舟やけどなほして見しつらきかなあとなかりける金二萬兩靜御前に舞をすゝむるあ齒ぎしりにさへあかつきの鐘飮んでわするゝ茶は水になるま三夜さの月見雲なかりけりつま翁に伴なはれて來る人のめづらしきにき子を他人とも名付たりけいひとかめ二貫、越其角同人同角同人同角同人同角同人角嵐越雪嵐人越同雪同人同雪同人同同人
うらかた春雨のくらがり峠こえすまし朝ごとの干魚備ふるみづ垣に占を上手にめさるうらやまし軒ながく月こそさはれ五十間雨やみて雲のちぎるゝ面白や柳誰れより花を先へ見てとる黍もてはやすいにしへの酒寂しき秋を女夫居りけりねぶりころべと雲雀鳴くなりちるかと例の莚道えんだうど夕月の入りぎは早き塘ぎはさぎくさや正木を引きに誘ふらむかた肩衣はづれ酒に醉ふ人かけひの先の瓶氷る朝里の炭賣はいつ冬ごもりきぎね俳諧七部集曠野集員外かはこしわがせこをわりなくかくす緣の下川越の歩にさゝれ行く秋の雨思ふさま押し合ふ月にくたびれつ山川や鵜の喰ものをさがすらむ初雪やことしのびたる桐の木にしづねぶと痛がる顏のきたなきあらこと〓〓し長櫃の萩賤を遠から見るべかりけり日のみじかきと冬の朝起ながひつあさおきちる花に日はくるれども長咄ししら露の群れて泣きゐる女客着物を碪にうてと一つ脫ぎよぶこ鳥とは何をいふらむつれなの醫者のうしろ姿や明日は髮そる宵の月かげSet芭蕉翁全集一鼠長胡鼠井彈虹及彈落同野同落野梧水梧水梧水同梧同水梧同水梧水梧水梧水人越人雪越雪はなしする內もさい〓〓手を洗ひはるのくれありき〓〓も睡るらむ若者のさし矢射てをる花の陰浦風に脛ふきまくる月凉しなにごとかよばりあひては打笑ひうと〓〓と寢起ながらに湯を沸す問はれても涙に物の言ひにくき里ふかく踊り〓へに二三日ぐうし寒ゆく夜半の越の雪鋤宮司が妻にはれられて憂き葛籠とゞきて切りほどく文たはらに鰤をつかみこむ秋座敷ほどある蚊屋を釣りけり紙子の綿の裾に落ちつゝ蒜くらふ香に遠ざかりけりみるもかしこき紀伊の御魂屋蛤とりはみな女中なり中に二五一おたまや恥かしといやがる馬にかき乘せて何事を泣きけむ髪を振りおほひくわら〓〓と轄ぬけたる米車耳や齒やようても花の數ならず烹た玉子なまの玉子も一文にいつやらも鶯聞きぬ此のおくに峰の松あぢなあたりを見出したり更る夜の湯はむつかしと水飮みてかゝる府中を飴ねぶりゆくしか〓〓物もいはぬつれなき挑灯過ぎて跡闇きくれ山伏住みて人しかるなり具足めさせにけふの初午下戶は皆いく月のおぼろげ旅するうちの心綺麗さこそぐり起す相住の僧すがゝき習ふ比のうきこひdeは二五〇ずみむう一鼠長胡鼠一胡長一鼠長胡鼠一胡長一井彈虹及彈井及虹井彈虹及彈井及虹井水梧水梧水梧水同梧水梧水梧水梧水梧
芭蕉翁全集木ばさみにあかるうなりし松の枝長發育秤にかる人々の興胡此の年になりて灸の跡もなき一まくらもせずにつひ寐入る月鼠暮過ぎて障子の陰のうそ寒き胡こぎたるやうにしぼむ萩の葉長御有樣入道の宮のはかなげに鼠衣引きかぶる人の足音一毒なりと瓜一きれも喰はぬ也長片風たちてすぐる白雨胡板へぎて踏所なき庭の內-はねのぬけたる黑き唐丸鼠ぬく〓〓と日足のしれぬ花曇り長虹見わたすほどは皆つゝじなり胡及京寺町通二條上ル町井筒屋筒井庄兵衞板虹及井彈及虹彈井虹及井彈虹及ひさご集序江南の珍碩、我れにひさごを送れり。これは是水漿をもり酒をたしなむ器にもあらず。或は大樽につくりて江湖をわたれといへるふくべにも異なり。吾また後の惠子にして用ふることを知らず。つら〓〓そのほとりに睡り、あやまりて此のうちに陷る。醒めてみるに、日月陽秋きらゝかにして、雪のあけぼの闇の郭公もかげたることなく、猶吾が知人ども見え來りて、皆風雅の藻思をいへり。知らず是はいづれのところにして、乾坤の外なる事を、出でゝその事を云うて、每日此の內にをどり入る。元祿三六月越智越人俳諧七部集ひさご集
ひさご芭蕉翁全集膳紫蘇の實をかますに入るゝ夕間暮蝙蝠の長閑につらをさし出して秋の色宮ものぞかせ給ひけりいろ〓〓の名もむつかしや春の草こそぐられては笑ふおもかげ親子ならびて月に物くふ駕籠のとまらぬ峠越えたりうたれて蝶の夢はさめぬる俳諧七部集ひさご集花さけば芳野あたりを欠廻り花すゝきあまり招けばうら枯れて一貫の錢むつかしとかへしけり唯醫者のくすりは飮まぬ分別蛇にさゝるゝ春の山中翁十二四方な珍碩十二る草庵の露曲水十二かけまは物思ふ身にもの喰へとせつかれていふ事を唯一方へ落しけり入込みに諏訪の涌湯の夕間暮鞍置ける三歲駒に秋の來て月待ちて假の內裏の司召旅人の虱かきゆく春くれて木のもとに汁も鱠も櫻かなほそき筋より戀つのりつゝ中にもせいの高き山伏名はさまぐ〓に降替る雨籾臼つくる柚がはやわざはきも習はぬ太刀の鞘西日のどかによき天氣なり花見つかさあしひきはだ膳所珍路翁碩翁曲珍同通同碩同通碩水翁水碩翁翁水碩翁水碩翁水碩翁水碩鮠釣のちひさくみゆる川の端ほうどんうつ里のはづれの月の影ながめやる秋の夕べぞだヾひろきかはらざる世を退屈もせずに過ぎ此の村の廣きに醫者のなかりけりしほのさす緣の下迄和日なりたび姿稚きひとの嫗つれてこしらへし藥もうれず年の暮うつり香の羽織を首にひきまきて生鯛あがる浦の春かな花はあかいよ月は朧夜庄野の里の犬におどされ念佛申してをがむみづがき小六うたひし市のかへるさ蕎また泣出す酒のさめぎはそろばんおけばものしりといふ麥おものせ眞白に山の胴中うん二三五じょうミ赤憎まれていらぬ躍りの肝を煎る中々に土間に居われば蛋もなした双六の目を覗くまで暮れかゝり手うすもの羅に日をいとはるゝ御かたち何よりも蝶の現ぞあはれなる千部讀む花のさかりの一身田秋風の舟をこはがる波の音月夜々々に明けわたる月わが名は里のなぶりものなり假の持佛にむか酒ではげたるあたまなるらむ熊野みたきと泣き給ひけり文書くほどのちからさへなき順禮死ぬる道のかげろふ雁ゆくかたや白子若松月見る顏の袖重きつゆ束か弓紀の關守が頑にふ念佛ts二五四かたくないつしんでんわかき越荷分人分人分人分同碩同通同碩同通同碩水碩翁水碩翁水碩翁水碩翁水碩翁水碩
杉村の花は若葉に雨氣づき髪くせに枕の跡を寢直して看經の嗽にまぎるゝ咳氣聲糊剛き夜着にちひさき御座敷きてから風の大岡寺繩手吹透したそがれは舟幽靈の泣くやらん時々は百姓までも鳥帽子にてのみにゆく居酒の荒の一騷ぎくる春に付けても都わすられずゆ醉を細目にあけて吹るゝ四十は老いのうつくしき際蟲のこはるに用叶へたき連れも力もみな座頭なり配所を見廻ふ供御の蛤古きばくちの殘る鎌倉半ふべの月に菜食嗅出す氣俳諧七部集ひさご集違ごはんの坊主泣出す鐵砲の遠音に曇る卯月かな城法庭下花ざかり又百人の膳立に汗の香をかゝへて衣をとり殘し忍ぶ夜のをかしうなりて笑ひ出すなれ加减又とは出來じひしほ味噌珍しやまゆ烹る也と立ちとまり春は旅ともおもはざる旅しきりに雨はうちあげてふる逢ふより顏を見ぬ別れして何ともせぬに落つる釣棚文珠の智惠も繁特が愚癡すもゝもつ珍碩九芭蕉翁全集翁子のみな裸むし路通八ぜんだて荷分十野怒野乙珍里怒泥乙野里珍泥怒野乙珍里徑越人八同分同人同分人兮人兮人誰徑州碩東誰土州徑東碩土誰徑州碩東鶯の寒き聲にて鳴きいだし秋萩の御前にちかき坊主衆獨り寢て奧の間ひろき旅の月百姓の木綿仕まへば冬の來て龜の甲烹らるゝ時は鳴きもせず風呂の加減のしづかなりけり雪のやうなるかますこの塵小歌そろふるからうすの繩唯雜蟷螂落ちてきゆる行燈5)牛rj糞んに風のふく音二五七あんどん月花に庄屋をよつて高ぶらせ雪舟に乘る越の遊女の寒さうに見知られて岩屋に足も留められず馬に召す神主殿をうらやみてけふも亦川原咄しをよくおぼえ女郞花心細氣におそはれて碁いさかひ二人しらける有明に雨風にますほの小貝拾はせて煮しめの鹽のからき早蕨壹步につなぐ丁百の錢それ世はなみだ雨としぐれと顔のおかしき生れつきなり目の中おもく見やりがちなる秋の夜番の物まをのこゑ一なまぬるひとつ餬ひかねたり砂の小麥の痩せてはら〓〓里こぞり山の下刈こ法正二三六田の片隅に苗のとりさし怒誰六野徑六珍碩五里東六筆泥土六乙州六泥乙乙二野及正昌探里珍州州嘯徑肩秀房志東碩怒珍乙野里泥怒乙泥里野筆珍怒乙泥里土誰碩州徑東土誰州土東徑碩誰州土東
本堂はまだ荒壁のはしら組雲雀鳴く里は厩糞かき散し江戶酒を花咲く度に戀しがりいらぬとて大脇ざしも打ちくれて月氷る師走の空の銀河須磨はまだ物不自由なる臺所誓文を百もたてたる別れ路に蟲は皆つゞれ〓〓と鳴くやらむ月影に利休の家を鼻にかけかた火を吹いて居る禪門の祖父あひの山彈く春の入相獨りある子も矮鷄に替へける無理に居ゑたる膳も進まず狐の恐る弓かりにやるなみだぐみけり供の侍片足々々の木履たづぬる度々芋を貰はるゝなりし俳俳七部集ひさご集き)まざは〓〓と切籠の紙手に風吹いていきりたる鎗一すぢに挾箱暗がりに藥鑵の下をもやし付け染めてうき木綿袷のねずみ色かさうす曇る日はとんみりと霜をれて葢に盛る鳥羽の町屋の今年米錢入の巾着さげて月に行く御簾の香に吹きそこなひし笛の役はつ花に雛の卷樽居ゑならべ轉馬を呼ばる我がまはり口水くみかふる選りあまされて寒きあけぼの鉢いひならふ聲の出かぬる雀を荷ふ籠のぢゝめきまだ上京も見ゆるやゝさむ寐ごとに起きて聞けば鳥鳴く心のそこに戀ぞありける芭蕉翁全集だるこひ鯉棚の秋だな二野及正昌探里珍乙二野及正昌探里珍碩秀碩同秀碩 秀 碩秀碩秀碩秀碩秀碩同嘯徑肩秀房志東碩州嘯徑肩秀房志東碩子規御小人町の雨あがり幾日路も苦で月見る役者船藤垣の窓に紙燭を挾みおき齒を痛む人の姿を繪に書いてちる花に雪踏挽きづる音ありて澤山に兀め〓〓と叱られてたふとげに小判かぞふる革袴北野の馬場にもゆるかげろふやしほの楓木の芽萌立つ秋入り初むる肥後の隈本薄雪たわむすゝき痩せたり羅綾の袂しぼり給ひぬ呼びありけども猫は歸らず素布子ひとつ夜寒なりけり口上果てぬいにさまの時宜正秀十九にん珍碩十七§疇あぜ觜ぶとのわやくに鳴きし春の空花の頃晝の日待に節ご着て手みじかに手拭ねぢて腰にさげ目をぬらす禿のうそにとりあげて喰物に味のつくこそ嬉しけれ明くればかすむ野鼠の顏かまへをかしき門口の文字田正秀四乙州四さゝらに狂ふ獅子の春風繩を集むる寺の煤掃くうちは次に居替はる!こひにはかたき最上侍奉加の序にもほのか成る月道いまや苗代時の角大師野及肩同珍碩同野徑同里東同の二六八だ上茨五五し二嘯同探志同寺町二條上ル町二五九井筒屋庄兵衞板正珍秀秀同碩昌房同二野及正昌探里珍乙嘯徑肩秀房志東碩州秀碩秀碩秀碩秀碩秀碩秀碩秀碩秀
芭蕉翁全集二六〇晋其角序俳諧の集つくる事、古今にわたりて此の道のおもて起すべき時なれや。幻術の第一として、其の句に魂の入らざれば、夢にゆめ見るに似たるべし。久しく世にとゞまり、長く人にうつりて、不變の變を知らしむ。五德はいふに及ばず、心をこらすべきたしなみ也。彼の西行上人の、骨にて人をつくりたてゝ、聲はわれたる笛を吹くやうになむはべると申されける、人には成りて侍れども、五つの聲のわかれざるは、反魂の法のおろそかに侍るにや。さればたましひの入りたらば、アイウエオよくひゞきて、いかならむ吟聲も出でぬべし。只俳諧に魂の入りたらむにこそとて、我が翁行脚の頃、伊賀越しける山中にて、猿に小みのを着せて、はいかいの神を入れたまひければ、たちまち斷膓のおもひを叫びけむ、あだに恐るべき幻術也。これを元として此の集をつくりたて、猿みのとは名づけ申されける。是が序も其の心をとり魂を合せて、去來凡兆のほしげなるにまかせて書す。二六〇晋序いそがしや沖の時雨の眞帆片帆はつ霜に行くや北斗の星の前一いろも動くものなき霜夜哉淀にてはつしもに何とおよるぞ船の中歸り花それにもしかむ莚切れ禪寺の松の落葉や神無月かみなづき百舌鳥のゐる野中の杭よ十月こがらしや頰腫痛む人の顏砂よけや蜑のかたへの冬木立奈良にて棹鹿のかさなり臥せる枯野哉澁柿をながめて通る十夜哉茶の花やほるゝ人なき靈聖女蓑蟲の茶の花ゆゑに折られける古寺の簀子も靑し冬がまへ翁の堅田に閑居を聞きて二六一去伊賀百野來歳水猿蓑集卷之一冬初しぐれ猿も小蓑をほしげ也あれ聞けと時雨來る夜の鐘の聲時雨きや並びかねたる炒ぶね幾人か時雨かけぬく勢田の橋鍵持の猶振りたつるしぐれ哉廣澤やひとりしぐるゝ沼太郞舟人にぬかれて乘りし時雨かな伊賀の境に入りてなつかしや奈良の隣りの一時雨しぐるゝや黑木つむ屋の窓明り馬かりて竹田の里や行くしぐれだまされし星の光りや小夜時雨新田に稗殻煙るしぐれ哉俳諧七部集猿養集卷之一芭其千僧丈膳所正史尙蕉角那草秀邦白其同凡嵐芭凡角兆蘭蕉兆伊賀土膳所裾越伊賀猿凡芳道人雖兆曾凡大津乙羽膳所昌良兆州紅房
霜やけの手を吹いてやる雪まろげはつ雪に鷹部屋のぞく朝朗初雪や內に居さうな人は誰れみぞれ降る音や朝飯の出來る迄呼びかへす鮒賣見えぬあられ哉鵲の橋よりこぼす霰かな機欄の葉の霰に狂ふあらし哉膝つきにかしこまりゐる霰かなしづかさを數珠も思はず網代守魚のかげ鵜のやるせなき氷哉疊み目は我が手のあとぞ紙衾首出してはつ雪見ばや此の衾見やるさへ旅人寒し石部山御白砂に候す題竹戶之衾り略之翁行脚のふるき衾をあたへらる。俳諧七部集猿蓑集卷之一門前の小家もあそぶ冬至哉寢心や巨燵蒲團のさめぬ內住みつかぬ旅のこゝろや置火燵炭竈に手負の猪の倒れけり茶湯とてつめたき日にも稽古哉道ばたに多賀の鳥居の寒さ哉一夜々々寒き姿や釣干菜尾頭のこゝろもとなきなまこかな今は世をたのむけしきや冬の蜂水無月の水を種にや水仙花膳まはり外にものなし赤柏神迎霜月朔旦晦日も過行くうばがゐのこ哉草この寒さ牡丹の花のまつ裸雜炊のなどころならば冬ごもりへ水口だちか馬の鈴津芭蕉翁全集膳所伊賀羽史其畫凡示野史美濃竹大津尼記あ智月江戶伊賀尾張凡其芭凡龜尙探去旦不羽州坂田良伊賀兆角蕉兆翁白丸來藁玉品丈探曾珍尙車伊賀其紅邦角好兆蜂童邦草丸良戶碩白來角夜神樂や鼻息白し面の內住吉奉納一月は我れに米かせ鉢たゝき鉢たゝきあはれは顏に似ぬものかから鮭も空也の瘦せも寒の內乳のみ子に世を渡したる師走哉靑亞追悼ひつかけて行くや雪吹のてしま蓙誰れとても健かならば雪のたび雪の日は竹の子笠ぞまさりける衰老は簾もあげず庵の雪草庵の留主をとひて雪ちるや穂屋の薄の刈殘し信濃路を過ぐるになが〓〓と川一筋や雪の原下京や雪つむうへの夜の雨わきも子が爪紅粉殘す雪まろげ二五三からしりの蒲團ばかりや冬の旅この木戶や鎻のさゝれて冬の月襟卷に首引入れて冬の月死ぬるまで操なるらむ鷹の顏鳥共も寢入つて居るか余吾の海水底を見て來た顏の小鴨哉筏士の見かへる跡や鴛の中矢田の野や浦のなぐれに鳴く衛いつ迄か雪にまぶれて鳴く千鳥背門口の入江にのぼる千鳥哉狼のあと踏消すや濱千鳥あら磯やはしり馴れたる友衛浦風や巴をくづすむら千鳥まじはりは紙子の切を讓りけり貧みゝづくは眠る處をさゝれけり木兎やおもひ切つたる晝の面交二六八Be其丈乙芭尙去卯長崎羽尾張其芭同凡探暮長崎其杉旦路丈木凡千丈史去曾丈半伊賀芥尾張角草州蕉白來七笠角蕉兆丸年角風藁通草節兆那草邦來良草殘境
起々の心うごかすかきつばた井のすゑに淺々〓し杜若靑くさき匂ひもゆかしけしの花似合しきけしの一重や須磨の里智惠のある人には見せじけしの花ちるときの心安さよ米囊花葉がくれぬ花を牡丹の姿かな花水にうつしかへたる茂り哉若楓茶いろになるも一さかりうき我れをさびしがらせよ閑古鳥松島や鶴に身をかれほとゝぎす起出でゝ物にまぎれぬ朝の間の四月八日詣慈母墓別題去來之嵯峨落柿舍旅館庭せばく庭草を見ず俳諧七部集猿養集卷之二翁に供せられてすまあかしにわたりて僧二句仙半嵐杜亡人珍越全江戶其曲膳所芭曾化殘蘭國碩人峰角水蕉良としの暮破れ袴の幾くだりいね〓〓と人にいはれつ年の暮やりくれて又やさむしろ歲の暮大どしや手のおかれたる人ごゝろくれて行く年のまうけや伊勢熊野うす壁の一重は何かとしの宿歲の夜や曾祖父をきけば小手枕弱法師我が門ゆるせ餅の札人に家を買はせて我れは年忘れ家々やかたちいやしきすゝ拂節季候に又のぞむべき事もなし乙州が新宅にて芭蕉翁全集仙全江戶其曲膳所芭曾同祐順伊賀杉路其羽同去長其芭化峰角水蕉良風通角紅來和角蕉甫琢隈篠の廣葉うるはし餅粽蛸壺や竹の子の力を誰れにたとふべき洗濯やきぬにもみ込む柿の花誰れのぞくならの都の閨の桐破垣やわざと鹿子のかよひ道豆植うる畑も木部屋も名所哉粽結ふかた手にはさむ額髮屋根葺と並びてふける菖蒲哉君が代や筑摩祭りも鍋一つ明石夜泊猪に吹きかへさるゝともしかなたけのこや稚き時の繪のすさびたけの子や畠隣りに惡太郞豐國にて南都旅店五月三日わたましせる家にて二六五はかなき夢を夏の月猿蓑集卷之二こひ死なば我が塚でなけ時鳥心なき代官殿やほとゝぎすほとゝぎす瀧よりかみのわたり哉入相のひゞきの中やほとゝぎす蜀魂なくや木の間の角櫓晝迄はさのみいそがず時鳥ほとゝぎす何もなき野の門構時鳥けふに限りて誰れもなし野を橫に馬引きむけよほとゝぎす夏がすみ曇り行き衞や時鳥有明の面おこすやほとゝぎすとよめりければ松島一見の時、夏千鳥もかるや鶴の毛衣んがまへ奧遊女去丈羽史智凡尙芭木其州來草紅邦月兆白蕉節角二六四岩江戶芭其越芭正芭去凡薄尾張千曾凡翁蕉角人蕉秀蕉來兆芝那良兆
芭蕉翁全集さびしさに客人やとふ祭りかな尙五月六日大阪うち死の遠忌を弔ひて伊賀大阪や見ぬよよ夏夏の五十年蟬奧州高館にて夏草や兵共が夢 の跡芭這出でよかひ屋が下の蟾の聲同此の境はひわたるほどゝいへるもこゝの事にやかたつぶり角ふりわけよ須磨明石芭蕉五月雨に家ふり捨てゝなめくじり凡兆ひね麥の味なき空や五月雨いひしだい木節馬士の謂次第なりさつき雨史邦奧州名取の郡に入りて、中將實方の塚はいづくにやと尋ね侍れば、道より一里半ばかり左の方、笠島といふ處にありとをしふ。ふりつゞきたる五月雨いとわりなく打過ぐるに二六六笠島やいづこ五月のぬかり道芭蕉大和紀伊のさかひはてなし坂にて、往來の順禮をとヾめて奉加勸めければ、料足つゝみたる紙のはしに書きつけ侍るつゞくりもはてなし坂や五月雨去來び髪剃や一夜に金情て五月雨凡兆日の道や葵傾く五月雨芭蕉縫物や着もせでよごす五月雨羽紅七十餘の老醫みまかりけるに、弟子どもこぞりてなくまゝ、予に悼みの句乞ひける。その老醫いまそかりし時も、更に見知れる人にあらざりければ、哀れにも思ひよらずして、古來稀れなる年にこそといへど、兎角ゆるさざりければ六尺も力おとしや五月雨其角白吟蕉其角百姓も麥に取りつく茶摘歌去しがらきや茶山しに行く夫婦づれ正膳所つかみ合ふ子共のたけや麥畠游孫を愛して麥藁の家してやらむ雨蛙智江戶麥出來て鰹迄喰ふ山家哉花しら川の關こえて風流のはじめや奧の田植うた芭出羽の最上を過ぎて眉掃を面影にして紅粉の花同法隆寺開帳、南無佛の太子を拜す御袴のはづれなつかし紅粉の花千伊賀田の畝の豆つたひ行く螢かな萬膳所曲水の樓にて螢火や吹きとばされて鳰のやみ去勢田の螢見二句闇の夜や子供泣出す螢ぶね凡俳諧七部集猿養集卷之二去正膳所游來秀刀ほたる見や船頭醉うておぼつかな芭蕉三熊野へ詣でける時長崎螢火やこゝおそろしき八鬼尾谷田上尼あながちに鵜とせりあはぬ鷗かな尙白草むらや百合は中々はなの自半殘病後大阪空つりやかしらふらつく百合の花何處すゞ風や我れより先に百合の花乙州燒蚊辭を作りて子やなかむ其子の母も蚊の喰はむ嵐蘭餞別膳所立ちさまや蚊屋もはづさぬ旅の宿里東うとく成る人につれて、參宮する從者にはなむけしてみじか夜を吉次が冠者に名殘哉其角隙明くや蚤の出て行く耳の穴丈草下闇や地蟲ながらの蟬の聲嵐雪二六七芭蕉長崎田上尼尙白半殘智江戶花月紅大阪何乙處州芭蕉嵐蘭那乎去來其丈嵐角草雪凡兆
芭蕉葉は何になれとや秋の風秋風風蓮をちからに花ひとつ猿蓑集卷之三終文月や六日も常の夜には似ず三葉ちりて跡は枯木や桐の苗大比叡やはこぶ野菜の露しげしはつ露や猪の臥芝の起きあがりあさ露や鬱金畠の秋の風蘆原や鷺の寐ぬ夜を秋の風夜秋風きくや裏の山加賀の全昌寺に宿す人に似て猿も手を組む秋の風かつくりとぬけ初むる齒や秋の風此の句東武よりきこゆ、秋俳諧七部集猿養集卷之三もし素堂か江戶杉芭凡野去凡山曾珍路不知讀人來良碩通風靑草は湯入ながめむあつさ哉夕がほによばれてつらき暑さ哉千子が身まかりけるを開きて、じねんこの藪ふく風ぞあつかりしたゞ暑し籬によれば髪の落日の岡やこがれて暑き牛の舌水無月も鼻つきあはす數寄屋哉日の暑さ盥の底の蟻かな日燒田や時々つらくなく蛙白雨や蓮一枚の捨あたま素堂之蓮池邊白雨や鐘きゝはづす日の夕舟引の妻の唱歌か合歡の花渡りかけて藻の花のぞく流れ哉哀れさや盲麻刈る露のたま頓て死ぬけしきはみえず蟬の聲客ぶりや居處かふるせみの聲芭蕉翁全果江戶芭凡野去凡山曾みのゝ巴江戶羽野木正同凡乙嵐山紅童節秀兆州伊賀膳所史千凡槐芭探蕉兆童來兆川良碩通風兆州蘭那那兆市蕉志山にて卯七に別れてつくしよりかへりけるに、まねき〓〓〓の先の薄かなける序でに八瀨をはらに遊吟して、迷ひ子の親の心やすゝき原秋風やとても薄はうごくはずそよ〓〓や藪の內より初あらしはてもなく瀨のなる音や秋黴雨高燈籠ひるはものうき柱かな手を懸けてをらで過行く木槿哉笑ふにも泣くにも似ざる木槿哉蕣やぬかごの蔓のほどかれず朝がほは鶴眠むる間のさかり哉みやこにも住みまじりけり相撲取七夕やあまりいそがばころぶべし合歡の木の葉ごしもいとへ星の影二六九柴うりの文書り日見といふ凡羽子三河旦史千杉嵐及膳所風伊賀去杜伊賀少年芭兆紅尹藁邦那風蘭肩麥來若蕉雲のみね今のは比叡に似た物かはじめて洛に入りて夕ぐれや〓並びたる雲の峯月鉾や兒の額のうす粧ひ唇に墨つく兒のすゞみ哉すゞしさや朝草門·に荷ひ込むじだらくにねれば凉しき夕べかな水無月や朝食くはぬ夕すゞみなき人の小袖も今や土用干りける國より去來がもとへ、二六八申しつかはし侍之大阪去曾千凡宗嵐芭之大阪去曾千凡宗嵐芭道來良那兆次蘭蕉
稗の穗の馬迯したるけしき哉一戶や衣もやぶるゝこまむかへ初潮や鳴門の浪の飛脚舟僧正のいもとの小屋のきぬたかな月見れば人の砧にいそがはし明月や處は寺の茶の木はらかゝる夜の月も見にけり野邊送り仲秋の望、月〓し遊行のもてる砂の上明神に詣で、元祿二年敦賀の湊に月を見て、向のよき宿も月見る契りかな降りかねてこよひになりぬ月の雨吹く風の相手や空に月一つ京筑紫去年の月とふ僧仲間ばせを葉や打ちかへし行く月の影影ぼふしたぶさ見送る朝月夜俳諧七部集猿養集卷之三越去凡尙羽昌膳所去猶子を送葬して芭遊行上人の古例をききて氣比の曾尙凡丈乙卓伊賀人來兆白紅房來蕉良白兆草州袋.海士の家は小海老に交るいとゞ哉病雁の夜寒に落ちて旅ね哉初雁に行燈とるなまくらもと百舌鳥鳴くや入日さし込む女松原桐の木にうづら鳴くなる塀の內いづくにかたふれ臥すとも萩の原草刈よそれが思ひか萩の露君が手もまじる成るべしはな薄のあたり憐れにおぼえて物として、同じく錦のきれ有り、加賀の小松といふ處、堅田にてだちけるとての國にていたはり侍りて、り三越路にかゝり行脚しけるに、元祿二年翁に供せられて、芭蕉翁全集遠き事ながらま實盛が菊から草のかぶと、多田の神社の寶同芭落亡人凡芭曾伊勢まで先みちのくよ平田加賀李去蕉梧兆蕉良由來越去凡尙羽昌膳所去落亡人凡芭曾人來兆白紅房來蕉梧兆蕉良鳩吹くや澁柿原の蕎麥畑物の音ひとりたふるゝ案山子哉しら浪やゆらつく橋の下紅葉柿ぬしや梢はちか自題落柿舍稻かつぐ母に出むかふうなゐ哉この頃のおもはるゝ哉稻の秋高土手に鷄の鳴く日や雲ちぎれ菊を切る跡まばらにもなかりけり田舎間のうすべり寒し菊の宿鰐つと比もあるらし鱸つり上行くと下くる雲や秋の天旅枕鹿のつき合ふ軒の下むつかしき拍子もみえず里神樂あやまりてきゝうおさふる〓哉澁糟やからすも食はず荒畠一鳥不鳴山更幽二七〇きあらし山まかりけるに友達の、月影や拍手もるゝ膝の上加茂に詣、おもしろう松笠もえよ薄月夜月見せむ伏見の城の捨郭粟稗と目出度くなりぬはつ月夜三日月に鱶のあたまをかくしけり葉月や矢橋に渡る人とめむはたおりや壁に來て鳴く夜は月夜菜畑や二葉の中の虫の聲むざんやな甲の下のきり〓〓すたなこの社の神垣に取りつきてよみしとやの上人の翁を茅舍に宿していせにまうでける時六條にかみそりいただくとてしでに涙のかゝる哉と、二七〇史土伊賀去半之千亡人風尙芭か邦芳來殘道子江戶凡土珍其尙半凡珍千曾凡塵加州小松去生來嵐正去半之千亡人風尙芭兆芳碩角白殘兆碩里良兆蘭秀來殘道子麥白蕉
芭蕉翁全集肌寒し竹切る山のうす紅葉神田祭さればこそひなの拍子のめなる哉神田祭りの鼓うつおと蚊拍子さへあづまなりとや花すゝき大名衆をまつり哉嵐行く秋の四五日弱るすゝき哉丈立出づる秋の夕べや風ほろし凡世の中は鶺鴒の尾のひまもなし同鹽魚の齒にはさかふや秋の暮荷二七二凡兆猿蓑集卷之四春梅咲いて人の怒りの悔いもあり上薦の山莊にまし〓〓けるに、奉りて梅が香や山路獵入る犬のまね梅が香や分入る里は牛の角庭興梅が香や砂利しき流す谷の奥はつ蝶や骨なき身にも梅の花梅が香や酒のかよひの新しきうめの木や此の一筋を蕗のたう子良館の後に梅在りといへば御子良子の一もとゆかし梅の花瘦藪や作りたふれの軒の梅足露候し沽嵐丈凡同荷雪草兆去加賀句來空兮土半膳所蟬其芳殘鼠角芭千蕉那灰捨てゝ白梅うるむ垣根哉凡兆膳所日當りの梅咲くころや屑牛房支幽暗香浮動月黃昏入相の梅になり込むひゞきかな風麥武江におもむく旅亭の殘夢寐ぐるしき窓の細目や闇の梅乙州辛未のとし彌生のはじめつかた、吉野の山に日くれて、梅の匂ひしきりなりければ、舊友嵐窓が「見ぬかたの花や匂ひを案內者。といふ句を、日頃はふるき事のやうに思ひはべれども、折にふれて感動身にしみわたり、淚も落す斗りなれば、其夜のゆめに正しくまみえて悅べるけしき有り、亡人いまだ風雅を忘れざるや夢さつて又一匂ひ宵の梅嵐蘭百八のかねて迷ひや闇の梅其角俳諧七部集猿養集卷之四凡膳所支兆幽ひとり寐も能き宿とらむ初子の日野畠や鴈追ひのけて摘む若菜はつ市や雪に漕來る若菜舟宵の月西になづなのきこゆなり憶翁の客中裾折つて菜をつみしらん草枕つみ捨てゝ蹈付けがたき若菜哉七種や跡にうかるゝ朝がらす我が事と鯲のにげし根芹哉うすらひやわづかに咲ける芹の花朧とは松のくろさに月夜哉鉢たゝきこぬ夜となれば朧なり鶯の雪ふみおとす垣穂かなうぐひすやはや一聲のしたりがほ鶯や遠路ながら禮がへし鶯や下駄の齒につく小田の土鶯や窓に灸をすゑながら二二三去史嵐如來邦蘭行風麥嵐路其丈其同去伊賀〓.江戶溪其凡伊賀魚雪通角草角來桐石角兆日嵐其蘭角
俳諧七部集猿養集卷之四闇の夜や巢をまどはして鳴く衝荷鞍ふむ春のすゞめや緣の先日の影やごもくの上の親すゞめいかのぼりこゝにもすむや潦紙鳶きれて白根が嶽を行方哉蝶の來て一夜寢にけり葱のぎぼ里人の臍落したる田螺かなもゝの花境しまらぬ垣根哉桃柳くばりありくやをんなの子はる風にこかすな雛の駕籠の衆振舞や下座に直る去年の雛蜂とまる木舞の竹や虫の糞き泥龜や苗代水の畦つたひはる雨のあがるや軒になく雀春雨や田蓑のしまの鯲賣不性さやかき起されし春の雨春雨や山より出づる雲の門骨柴のかられながらも木の芽哉出替や幼ごゝろに物あはれ出替や櫃にあまれるござのたけ野の梅のちりしほ寒き二月哉春風にぬぎもさだめぬ羽織哉露沾公にて餘寒の當座うき友にかまれて猫の空ながめうらやましおもひ切る時猫の戀麥めしにやつるゝ戀か猫の妻田家に在りて待中の正月もはやくだり月雪汁や蛤いかす場のすみ靑柳のしだれや鯉の住處よこた川植處なき柳かな垣ごしにとらへてはなす柳哉此の瘤はさるの持つべき柳かなやぶの雪柳ばかりはすがた哉芭蕉翁全集ほ伊賀加賀山中三河伊賀芭土珍園桃半嵐鳥羽荻去昌史羽史芭猿蕉芳碩風妖殘推巢紅子來房邦紅邦蕉雖同伊賀同楊木-尙遠ト江戶探凡嵐龜尙龜去越芭兆雪翁.白翁來人蕉水白啖白水宅丸菫草小鍋あらひし跡やこれ山吹や木瓜莇旅して見たく野はなりぬ子や待たむ餘り雲雀の高あがり笄もくしもむかしやちり椿白玉の露にきはつく椿かなひばり鳴く中の拍子や雉子の聲かすみより見えくる雲のかしら哉鷲の巢の樟の枯枝に日は入りぬまをかへて畫髪けづらむも物むつかしと、わが身かよわく病ひがちなりければ、preas芭蕉庵のふるきを訪ふさまよひてあやふきところ〓〓、越より飛驛へ行くとて、字治の焙爐の匂ふ時讃二七五道もなき山路に籠のわたりの羽此の春さ車芭山江戶曲芭杉石伊賀凡春雨や屋根の小草に花咲きぬ立ちさわぐ今や紀の雁いせの雁藏並ぶ裏は燕のかよひ道みのむしや常のなりにて涅槃像彼岸まへさむさも一夜二夜哉狗脊のちりにゑらるゝわらび哉かげろふや柴胡の糸の薄曇り野馬に子供あそばす狐哉いとゆふに貌引きのばせ作り獨活いとゆふのいとあそぶ也虛木立かげろふやほろ〓〓落つる岸の砂陽炎や土もこなさぬあらおこし·陽炎や取りつきかぬる雪の上春雨にたゝき出したりつく〓〓し人の手にとられて後や櫻海苔白魚や海苔は下部のかい合せ中高山に臥して二十四だ羽山江戶曲芭杉石伊賀凡嵐澤伊賀凡野路嵐配伊賀芭凡氷伊賀土百荷元杉尾張其紅來蕉店水蕉風口兆虎雉兆水通雪カ蕉兆固芳歲分志峯角
芭蕉〓全集津國山本蝸牛打ちかぶぜたる椿かな鶯の笠おとしたる椿かな芭伊賀はつざくらまた追々にさけばこそ利東叡山にあそぶ小坊主や松にかくれて山ざくら其一枝はをらぬもわろし山ざくら尙鷄の聲もきこゆる山櫻凡眞先に見し枝ならむちる櫻丈有明のはつ〓〓に咲く遲ざくら史常齋にはづれてけふは花の鳥千葛城のふもとを過ぐる猶見たし花にあけ行く神の顏芭蕉伊賀の國花垣の庄は、そのかみ南良の八重櫻の料に、附せられけるといひ傳へはんべれば一里はみな花守の子孫かや同亡父の墓、東武谷中にありしに、三歲二五六にてわかれ、二十年の後かの地に下りぬ墓の前に櫻植ゑ置き侍るよし、かね〓〓母の物語りつたへて、その櫻をたづね侘びけるに、他の墓猶櫻咲きみだれ侍ればまがはしや花吸ふ蜂の往還り園知人にあはじ〓〓と花見哉去ある僧の嫌ひし花の都かな凡兆浪人のやどにて鼠共春の夜あれそ花靱半殘腥きはな最中のゆふべかな伊賀長眉花も奧有りとや、よしのに深く吟じ入りて、大峰やよしのゝ奧の花の果曾良道灌山にのぼる道灌や花はその代を嵐かな嵐蘭源氏の繪を見て津國山本坂上氏芭蕉伊賀利雪其尙凡丈史千角白兆草邦那園去凡風來兆曾良同三歲嵐蘭欄干に花ちる花の立ちすがた庚午の歲家を燒きて燒けに鳬されども花はちりすましはなちるや伽藍の樞おとし行く海棠の花は滿ちたり夜の月大和行脚のとき草臥れて宿かる比や藤の花山鳥や躑躅よけ行く尾のひねりやまつゞじ海に見よとや夕日影兎角して卯の花つぼむ彌生哉鷽の聲きゝそめてより山路哉木曾塚其の春の石ともならず木曾の馬春の夜はたれか初瀨の堂籠り望湖水惜春行く春を近江の人とをしみける羽紅猿蓑集卷之五加州北凡普枝兆船鳶の羽も刷ひぬはつしぐれ一ふき風の木の葉しづまる股引の朝からぬるゝ川こえてけたぬきをおどす篠張の弓まひら戶に蔦這ひかゝる宵の月人にもくれず名物の梨かきなぐる墨繪をかしく秋暮れてはきごゝろよきめりやすの足袋何事も無言の內はしづかなり里みえ初めて午の貝ふくほつれたる去年の寐蓙のしたたるく芙蓉のはなのはら〓〓とちる吸物は先づ出來されしすゐぜんじ三里あまりの道かゝへける二七七去來芭蕪凡兆史邦蕉來邦兆來蕉兆邦蕉來芭探智山江戶式蕉丸月川之乙曾州良芭蕉俳諧七部集猿養集卷之五
せい柴の戶や蕎麥ぬすまれて歌をよむ靑天に有明月の朝ぼらけせはしげに櫛でかしらを搔散らしうき人を枳殼垣よりくヾらせむ痩骨のまだ起直る力なき火ともしに暮るれば登る峯の寺苔ながら花に並ぶる手水鉢湖水の秋の比良の初霜いち時に二日の物も喰うて置きこの春も虚同が男居なりにておもひ切つたる死ぐるひ見よ隣りをかりて車引きこむほとゝぎす皆鳴き仕舞うたり雪今や別れの刀さし出すひとり直りしけさの腹立さし木つきたる月の朧夜高げに寒芭蕉翁全集chき嶋の北風茴戶障子もむしろかこひの賣屋敷追つたてゝ早き御馬の刀持五六さる引の猿と世を經る秋の月立ちかゝり屏風を倒す女子共魚の骨しはぶる迄の老いを見てこそ〓〓と草鞋を作る月夜ざし待人入れし小御門の鎰足袋ふみよごす黑ぼこの道湯殿は竹の簀子わびしき能登の七尾の冬は住みうき蚤をふるひに起きしはつ秋でつちが荷ふ水こぼしたり年に一斗の地子はかるなり僧やゝさむく寺にかへるかてんじやうまもりいつか色づく香俳諧七部集猿養集卷之五本生木つけたるの實を吹落す夕嵐なま瀦蕉兆來蕉兆來蕉兆來蕉兆來蕉兆來蕉兆邦蕉來邦兆來蕉兆邦蕉來邦兆來蕉兆邦道心のおこりは花のつぼむ時草村に蛙こはがる夕まぐれ此の筋は銀も見しらず不自由さよ市中は物のにほひや夏の月二番草取りも果さず穗に出でゝ蕗の芽とりに行燈ゆりけすたゞどびやうしに長き脇指灰うちたゝくうるめ一枚あつし〓〓と門々の聲わきぎし新疊敷きならしたる月かげに灰汁桶の雫やみけりきり〓〓すならべて嬉し十のさかづきあぶらかすりて宵寢する秋二七九手のひらに虱這はする花の蔭何故ぞ粥すゝるにも涙ぐみ草庵に暫く居ては打ちやぶりそのまゝにころび落ちたる升落さま〓〓に品かはりたる戀をしてかすみうごかぬ晝のねぶたさ御留守となれば廣き板敷浮世の果はみな小町なり命うれしき撰集のさたゆがみて蓋のあはぬ半櫃凡兆十二芭蕉十二去來十二押合うて寢ては又たつ假まくら一一枇杷の古葉に木芽もえたつたゝらの雲のまだ赤き空ぬのこ着習ふ風の夕ぐれ去來九しりがひ鞦つくる窓のはな芭蕉九凡兆九二七八史邦九凡去野芭來水蕉兆凡去芭來蕉兆來蕉兆來蕉兆來蕉兆來蕉兆來蕉兆來邦兆來蕉兆
懷に手をあたゝむる秋の月萩の札すゝきの札によみなして卯の刻の箕手に並ぶ小西方ほつしんのはじめにこゆる鈴鹿山放ちやるうづらの跡はみえもせず片隅に虫齒かゝへて暮の月雲雀鳴く小田に土持つ比なれや梅若菜まりこの宿のとろゝ汁汐さだまらぬ外の海づら雀かたよる百舌鳥の一聲內藏頭かと呼ぶ聲はたれ稻の葉延の力なきかぜ二階の客はたゝれたるあきすみきる松のしづかなりけりしとき祝うて下されにけりかさあたらしき春の曙餞乙州東武行俳諧七部集猿養集卷之五かみはの능にしがた冬空のあれになりたる北颪かへるやら山陰つたふ四十がら花とちる身は西念が衣着てきん っぱ町內の秋も更行く明やしき金鍔と人によばるゝ身のやすさものおもひけふは忘れて休む日に夕めしにかますこ喰へば風薫る乘出して肱に餘る春の駒千代經べき物をさまん〓子の日して柴さす家のむねをからげる木曾の酢莖に春もくれつゝ何をみるにも露ばかりなりあつ風呂すきの宵々の月迎へせはしき殿よりのふみ蛭の口處をかきて氣味よき摩耶が高根に雲のかゝれる鶯の音にたびら雪降る芭蕉翁全集なきかひな芭凡智素珍乙蕉州兆月州男碩州蕉碩男蕉州男碩州凡智兆來水兆蕉水來兆蕉來水蕉兆水來兆蕉形ちなき繪を習ひたる會津盆咳聲の隣りはちかき緣づたひ小刀の蛤刃なる細工ばこ大膽に思ひくづれぬ戀をして汗ぬぐひ端のしるしの紺の糸春の日に仕舞うてかへる經机鍵の柄に立ちすがりたる花の暮此夏もかなめをくゝる破れ扇こゝもとはおもふ便りも須磨の浦灰まきちらすからしなの跡ん添へばそふほどこくめんな顔醬油ねさせてしばし月みるむね打合せ着たるかたぎぬ棚に火ともす大年の夜身はぬれ紙の取所なきわかれせはしき鷄の下店屋物くふ供の手がはりがたなはまぐりば二八一糸ざくら腹一ぱいに咲きにけり晝ねぶる靑鷺の身のたふとさよ物賣の尻ごゑ高く名乘りすて堤より田の靑やぎていさぎよきうそつきに自慢いはせて遊ぶらむ夕月夜岡の萱ねの御廟守るすさまじき女の智惠もはかなくて春しよろ〓〓水に藺のそよぐらむ雨のやどりの加茂のやしろはよき社なり又も大事の鮮を取出す人もわすれしあかそぶの水何お凡兆九旅の馳走に有明しおくはもひ草狼のなく三芭蕉九月曙の野水九無そ常迅速じやうじん そくあか二八〇去來九ら嵐猿園土半正去蘭風芳雖風殘雖風殘芳殘芳殘來秀兆來水來兆蕉水來蕉兆來水兆蕉水來蕉
芭蕉翁全集うす雪かゝる竹の割下駄史邦花にまたことしのつれも定まらず野水雛の袂を染むるはるかぜ羽紅芭蕉三乙州五土芳三珍碩三園風三素男三猿雖二智月一嵐蘭一凡兆二史邦一去來二野水一正秀一羽紅一半殘四猿蓑集卷之六幻住菴記芭蕉草石山の奧、岩間のうしろに山あり、國分山といふ。そのかみ國分寺の名を傳ふなるべし。麓に細き流すゐびれを渡りて、翠微に登る事三曲二百步にして、八幡しんたいだ宮たゝせ給ふ。神體は彌陀の尊像とかや。唯一の家には甚だ忌むなる事を、兩部光りを和らげ、利益の塵を同うし給ふも亦たふとし。日比は人の詣でざりければ、いとゞ神さび物しづかなる傍に、住捨てし草の戶あり。よもぎ根笹軒をかこみ、屋根もり壁落ちて狐狸ふしどを得たり。幻住菴といdoあるじの僧何がしは、勇士菅沼氏曲水子の伯父になむ侍りしを、今は八とせ許りむかしになりて、まさに幻住老人の名のみ殘せり。予又市中を去ること十年計りにして、五十年やゝ近き身は、蓑虫のみのを失ひ蝸牛家を離れて、奧羽象潟のあつき日に面をこがし、高すなごあゆみくるしき北あらいそた五海の荒礒にきびすを破りて、ことし湖水の波に漂ひ、鳰の浮巢の流れとどまるべき蘆の一本のかげのはなたのもしく、軒端茨あらため垣根結ひ添へなどして、卯月の初めいとかりそめに入りし山の、やがて出でじとさへおもひそみぬ。さすがに春の名殘も遠からず、つゝじ咲きのこり山藤松にかゝりて、時鳥しば〓〓過ぐる程、宿かし鳥の便りさへあるを、木つゝきのつゝくともいとはじなどそゞろにことうなんせうじやうどうてい興じて、魂吳楚東南にはしり、身は瀟湘洞庭にたつ。山は未申にそばだち、人家よきほどに隔り、なんくん南薰峰よりおろし、北風海を浸して凉し、且庭大山比良の高根より、辛崎の松は霞こめて、城あり橋あり釣たゝる船あり。笠とりに通ふ木樵の聲、麓の小田に早苗とる歌、螢とびかふ夕闇の空に、水鷄のたゝく音、美景ものとしてたらずといふ事俳諧七部集猿養集卷之六なし。中にも三上山は士峰の俤にかよひて、武藏野すみかたのかみやまのふるき栖も思ひ出でられ、田上山に古人を又ふ。さゝほが嶽千丈が峰、袴腰といふ山あり。黑津の50里はいとくろう茂りて、網代守るにぞとよみけむてうばう萬葉集の姿也けり。猶眺望くまなからむと、後ろの峰に這ひのぼり、松の棚作り、藁の圓坐を敷きて猿の腰掛と名付く、彼の海棠に巢をいとなひ主ば53薄峰に菴を結べる、王翁除住が徒にはあらず。唯すゐへきさんみんせんがん睡辟山民と成りて、潺顏に足をなげ出し、空山にひね虱を捫りて坐す。たま〓〓心まめなる時は、谷の〓水を汲みて自ら炊ぐ、とく〓〓の雫を侘びて一爐の備へいとかろし。はた昔し住みけむ人の、殊に心高く住みなしはべりて、たくみおける物ずきもなし。持佛一間を隔てゝ、夜のものをさむべき? sinざん處などいさゝかしつらへり。さるを筑紫高良山のひと僧正は、加茂の甲斐何某が嚴子にて、此のたび洛が、にのぼりいまそかりけるを、ある人をして額を乞
芭蕉翁全集jb.いとやす〓〓と筆をそめて、幻住菴の三字をかたみおくらる。頓て草菴の記念となしぬ。すべて山居といひ旅寐といひ、ひのきかさすがみのさる器たくはふべくもなし。木曾の檜笠越の菅蓑ばかり、枕の上の柱にかけたり。ひるは稀れ〓〓とふらふ人々に心を動かし、あるは宮守の翁里のをのこ共入來りて、ゐのしゝの稻くひあらし、兎の豆畑にかよふなど、我が聞きしらぬ農談、日旣に山の端にかゝれば、夜坐靜かに月を待つては影を伴ひ、燈を取つては周兩に是非をこらす。かくいへばとて、ひたぶるに閑寂を好み、山野に跡をかくさむとにはあらず、cheやゝ病身人に倦みて、世をいとひし人に似たり。歳倩ら年月のうつりこし、拙き身の科をおもふに、あるjps時は仕官懸命の地をうらやみ、ree一たびは佛籬祖室の扉に入らむとせしも、たよりなき風雲に身をせしやうがいめ、花鳥に情を勞して、暫く生涯のはかり事とさへなれば、終に無能無才にして此の一筋につなが二八四る。樂天は五臟の神を破り、老杜は痩せたり。賢愚文質のひとしからざるも、いづれか幻の栖ならずやと、おもひ捨てゝふしぬ。先づたのむ椎の木もあり夏木立題芭蕉翁國分山幻住菴記之後何世無隱士以心隱爲賢也。何處無山川風景因人美也。間讀芭蕉翁幻住菴記乃識其賢且知山川得其人而益美矣。可謂人與山川共相得焉。廻作鄙章一篇歌之白。琶湖南分國分嶺古松鬱兮綠陰〓茅屋竹緣纔數間內有佳人獨養生滿口錦繡輝山川風景依稀入誹城此地自古富勝覽今日因君尙益榮元祿庚午仲秋日震軒具草几右日記時鳥脊中見てやる麓かな曲水くつさめの跡しづか也夏の山野水曲野水水膳所朴水美濃垂井市隱鷄もはら〓〓時か水鷄なく海山に五月雨そふや一くらみ軒ちかき岩梨をるな猿のあし細脛のやすめ處や夏のやま贈紙帳おもふ事紙帳にかけと送りけりいつたきて蕗の葉にもるおふくそも螢飛ぶ疊の上もこけの露顏や葎の中の花うつぎたと〓〓し峰に下駄はく五月闇五羽六羽庵とりまはすかんこ鳥木つゝきにわたして明くる水鷄哉笠あふつ柱すゞしや風の色月待や海を尻目に夕すゞみしづかさは栗の葉沈む〓水哉凉しさやともに米かむ椎が本訪ふに留主なり俳諧七部集猿養集卷之六去凡千珍來兆那碩椎の木をだかへて啼くやせみの聲目の下や手洗ふほどに海凉し文に云ひこす膳所米や早苗のたけに夕凉み麥の粉を土產す一袋これや鳥羽田のことし麥書音一夏入る山さばかりや旅寐ずき夕立や檜木の臭の一しきり昇猿腰掛秋風や田上山のくぼみより贈蓑しら露もまだあらみのゝゆくへ哉木履ぬく傍に生えけり蓼の花包紙に書く縫ひにこす藥袋や萩の露稻の花これを佛の土產哉二五半殘野里乙膳所怒探元膳所泥史正亡人柳如徑東州誰志志土邦秀陰行之道長崎魯及町肩尙白北木枝節膳所扇智月
書。書中皆有佳句。日蘊月隆各程文章。猿蓑者、寫興而已突指下幾人凡兆夫少國翁導學、標節有窓鐵等達御斯有歳屬跋辛未仲夏、余掛錫於洛陽旅亭。毫不揣拙。庶幾一蓑高張有補干詞海漁人云.何棄其人乎哉。果分四序作六卷。故不遑廣捜他家文林也。維貶元祿四稔爲難通信。此生気弄無已自調絕超無暇自表者也が是四方塗夜條々往來或千里奇芭蕉翁滑稽之首體也。非」比彼山寺偸衣朝市頂冠笑、只任心感物且有施倪婦人不琢磨者、麁言細語爲喜同志。偶會兆來吟席。見需記此事題書尾、風狂野衲然有昆仲騒士不集錄者、索居竄栖丈草漢雖無至其域書卒援すゞしさや此の庵をさへ住捨てし春雨やあらしも果てず戶のひづみ蓮の實の供に飛入る庵かな啼くやいとゞ鹽に埃りのたまる迄桶の輪やきれて鳴止むきり〓〓す同里はいま夕めしどきの暑さ哉石山や行かで果せし秋の風明年彌生尋舊庵越人と同じく訪合うて芭蕉翁全集夏俳諧七部集猿養集卷之六曾嵐等越何昌羽良蘭哉人處房紅京寺町二條上ル丁井筒屋庄兵衞板正丈竹草二六七書漢之書二八六之書
芭蕉翁全集俵序炭此の集を撰める孤屋野坡利牛等は、常に芭蕉の軒に行きかよひ、瓦の窓をひらき心の泉をくみしりて、十あまりなゝの文字の野風をはげみあへる輩也。霜凍り冬とのゝあれませる夜、この二三子席に侍りて火桶にけし炭をおこす。菴主これに口をほとけ、宋人の手龜らずといへる藥是ならんと、しのゝ折箸に糖のさゝやかなるを竪におき橫になほしつゝ、金屏の松の古さよ冬籠と、舌よりまろびいづる聲のみたりが耳に入り、とくもうつるうのめ鷹のめどもの、是に魂のすわりたるけにや、これを思ひ立ち、はるの日ののつと出でしより、秋の月にかしらかたふけつゝやゝ吟じ終り、篇なりて竟にあめつちの二卷にわかつとなむ。是をひらき見るに、有聲の繪をあやどりをさむれば、又くぬぎ炭の筋見えたり。けだしくも題號をかく付侍ることは、詩の正義にいへる五つのしな、あるは、やまとの卷々のたぐひにはあらねど、例の口に任せたるにもあらず、竊により所ありつる事ならし。ひと日芭蕉旅行の首途に、やつがれが手をたづさへて再會の期を契り、かつ此等の集の事に及んで、かの冬籠の夜、きり火桶のもとにより、くぬぎ炭のふる歌をうちずしつるうつりに、炭たはらといへるは俳也けりとひとりごちたるを、小子聞き居りてよしとおもひうるにや、此の集を撰ぶ媒となりにたり。この心もてよろしう序書きてよといひ捨てゝ別れぬ。今此の事をかうがへ、其の初めをおもふに、題號おのづからひゞけり。さらに辨をつくる境にはあらじかしと口をつぐむ。元祿七の年夏閏さつき初三の日素龍書
隣りへも知らせず嫁をつれて來て俳諧炭俵集上卷隣りから節々嫁を呼びに來るあちこちすれば晝のかねうつせつ〓〓泥染を長き流れにのばすらむウ早稻も晩稻も相生に出る細々と朔日ごろの宵の月片道は春の小坂のかたまりて兼好も莚織りけり花ざかり嵐雪千鳥啼く一夜々々に寒うなり終宵尼の持病を押へける預けたるみそとりにやる向河岸奈良かよひおなじつらなる細基手御頭へ菊もらはるゝめいわくさ宵の內はら〓〓とせし月の雲梅が香にのつと日の出る山路哉芭蕉家普請を春の手すきにとり付きて上のたよりにあがる米の直か處々んに雉子の啼きたつ外をざまくに圍ふ相撲場屏風の陰にみゆる菓子盆魚に喰ひあくはまの雜水あざみや苣に雀鮨もる未進の高のはてぬ算用藪越しはなすあきのさびしきこんにやくばかり殘る名月ひたといひ出すお袋の事ことしは雨のふらぬ六月娘を堅う人にあはせぬ三俳諧七部集俳諧炭俵集上卷芭蕉翁全集吟野坡利牛嵐雪野坡利牛嵐雪野坡利牛芭蕉野坡芭蕉野坡芭蕉芭蕉野坡芭蕉野坡芭蕉野坡芭蕉同野坡同芭蕉同野坡奉公のくるしき顏に墨ぬりて漸うと雨降りやみてあきの風雜役の鞍を下せば日がくれて로人のさはらぬ松くろむなりや綱ぬきのいぼの跡ある雪の上黑谷のくちは岡崎聖護院增が來て娘の世とは成りにけりくはた〓〓と河內の荷物送り懸けどの家も東の方に窓をあけ法印の湯治を送る花ざかりはつ午に女房のおやこ振舞うて門しめてだまつてねたる面白さ江戶の左右むかひの亭主登られてちやうしやう町衆のつらりと醉うて花の陰門で押さるゝ壬生の念佛露を相手に居合ひとぬきみ金佛の細き御足をさするらむ抱揚ぐる子の小便をする鷄頭みては又斯かく飯の中なる芋をほる月五百のかけを二度に取りけり方々に十夜の內のかねの音東風風に糞のいきれを吹廻しはつ雁に乘掛下地敷いて見る此のかいわいの小鳥みなよる心みらるゝ箸のせんたくてう〓〓しくも譽むるかいわり繩手を下りて靑麥の出來又このはるも濟ぬ牢人桐の木高く月さゆるなりことしのくれは何も囉はぬひらうた金で表がへするこちにもいれどから白をかすたゞ居るまゝに肬わづらふ二九一利牛嵐雪野坡利牛嵐雪野坡利牛嵐雪野坡利牛嵐雪野坡利牛嵐雪野坡利牛嵐雪同野坡芭蕉野坡芭蕉野坡芭蕉野坡芭蕉野坡芭蕉野坡同芭蕉野坡芭蕉野坡
そくさい息災に祖父のしらがのめでたさよ年貢すんだとほめられにけり花見にと女子ばかりがつれ立ちてうははり上張を通さぬほどの雨降りて晝の水鷄のはしる溝川よこ雲にそよ〓〓風の吹出すこのごろは宿の通りもうすらぎしすた〓〓しゆく言うて荷ふ落鮎名月のまに合はせたき芋畑今のまに雪の厚さを指してみる着の儘にすくむでねれば汗をかき空豆の花咲きにけり麥の緣孤屋獨りある母をすゝめて花の陰鎌倉の便りきかせに走らするかした處のしれぬ細引賣手からうつてみせたるたゝき鉦堪忍ならぬ七夕の照り置きわすれたるかねを尋ぬるまだかびのこる正月の餅弟はとう〓〓江戶で人になる黍の穂は殘らず風に吹倒れき左芭蕉孤屋岱水利牛餘のくさなしに菫たんぼゝ茜の上にひばりさへづる山の根際の鉦かすかなり客を送りて提ぐる燭臺そつとのぞけば酒の最中ひらり〓〓とゆきのふり出し今に庄屋のくちはほどけず馬場の喧嘩の跡にすむ月各九句ふか川にまかりて俳諧七部集俳諧炭俵集上卷芭蕉翁全集岱水芭蕉利牛孤屋岱水利牛孤屋芭蕉利牛岱水芭蕉孤屋岱水利牛孤屋利牛岱水芭蕉野坡利牛嵐雪野坡利牛嵐雪野坡利牛嵐雪野坡暮の月干葉の茹汁わるくさしウぢゝめきの中でより出するりほあか掃けば跡から檀ちるなりまゆみ竿竹に茶色の紬たぐりよせ日のあたる方はあからむ竹の色十二三辨の衣裳の打ちそろひ吹るべんゝ胼もつらき闇の夜松坂や矢川へはひるうら通り雨あがり數珠懸鳩の鳴出して與力町よりむかふ西かぜ3子は裸父はてゝれで早苗舟なへふね利牛泣く事のひそかに出來し淺ぢふに不屆な隣りと中のわるうなり名ふとん丸けてものおもひ居る雪の跡吹きはがしたる朧月鯲汁わかい者よりよくなりて風細う夜明がらすの鳴きわたりこの春はどうやら花の靜かなり妹をよい處からもらはるゝそうづ僧都のもとへまづ文をやるきり〓〓す薪の下より鳴出してウどたりと塀のころぶ秋風寢所に誰れもねてゐぬ宵の月坊主になれどやはり仁平次馬が離れてわめく人聲茶の買置をさげて賣出す家のながれたあとを見に行く只綺麗さに口すゝぐ水本堂はしる音はとろ〓〓岸のいばらの眞白に咲くはつち坊主を上へあがらすかれし柳を今にをしみて百晩の仕事の工夫するなり韻二九三二六、利牛孤屋野坡利牛孤屋野坡利牛孤屋野坡利牛孤屋野坡利牛孤屋野坡芭蕉利牛岱水芭蕉孤屋岱水利牛孤屋芭蕉利牛岱水芭蕉孤屋岱水利牛孤屋芭蕉
機嫌能きかいごは庭に起きかゝりにはえん緣端に腫れたる足を投出して小ばな晝のころの空靜かなり物每も子持になればだゞくさに麥畑の替地に渡る傍示杭鍋の鑄かけを念入れて見る15しび錢さしに菰引きちぎる朝の月薄雪のこまかに初手を降出しけふはけんかく寂しかりけり一つくなりに鱈の雲膓しよてくもわた妓王寺のうへに上れば二尊院又御局の古着いたゞくわうじにそんゐん切蜣の喰倒したる植たばこ瘡り日を紛らかせども待ちごゝろ축籐ですげたる下駄の重たき段々に西國武士の荷のつどひ尙きのふより今日は大旱1)目を縫うて無理に鳴かする鵙の聲三ウなめすゝきとる裏の塀あはひつれあひの名を賤しげに呼廻はりかゞさずに中の巳の日を祭るなりない袖を振つてみするも物おもひほか〓〓と二日灸のいほひ出で帶賣の戾り連立つ花ぐもり生きながら直に打込むひしご漬近江路のうらの詞を聞初めて天氣の相よ三日月の照き)賣手もしらず賴政の筆又だのしみて美濃だよりきくくばり納豆を仕込む廣庭舞羽の糸も手につかず繰る御影供ごろの人のそはつくほろ〓〓あへの膳にこぼるゝ椋の實落つる屋根くさるなり俳諧七部集俳諧炭俵集上卷芭蕉翁全集利牛野坡孤屋利牛野坡孤屋利牛野坡孤屋利牛野坡孤屋利牛野坡孤屋利牛野坡孤屋野坡利牛孤屋野坡利牛孤屋野坡利牛孤屋野坡利牛孤屋野坡利牛孤屋野坡花の內引越して居る樫原능尻輕にする返事聞きよくほや〓〓とどんどほこらす雲斷れすぢかひに木綿袷の龍田川月花にかきあげ城の跡ばかり弦十四五兩のふりまはしする打らおもし颪海雲··とる桶廣袖をうへにひつぱる船の者き拭立てゝお上の敷居ひからする入舟つやく月の六月投打もはら立つまゝにめつた也敷金に弓同心のあとを繼ぎ丸九十日濕をわづらふby大水のあげくに畑の砂のけて名なん尙言ひつのる詞からかひ何年ねんほ菩提しれぬ栃の木だおちかゝるうそ〓〓時の雨の音燃えしさる薪を尻手に指しくべて餅搗の臼を年々買替へて濱迄は宿の男の荷をかゝへす)伐透す樅と檜のすれあひて戶でからくみし水風呂の屋根ひつそりと盆は過ぎたる淨土寺くれの月橫に負ひ來る古柱二ウずゐきの長のあまるごつていも御茶屋の見ゆる宿の取りつぎ入來る人に味噌豆を出す水菜に鯨まじる惣汁天滿の狀をまた忘れけり足なし基盤よう借りに來るむく起きにして參る觀音師走比丘尼の諷の寒さよ赤い小宮はあたらしき內となりの裏の遠き井のもと二九五二九四野坡孤屋利牛野坡孤屋利牛野坡孤屋利牛野坡孤屋利牛野坡孤屋利牛野坡孤屋孤屋利牛孤屋野坡利牛孤屋野坡利牛孤屋野坡利牛孤屋野坡利牛孤屋野坡利牛
梅ちるや糸の光りの日の匂ひ梅が香の筋に立ちよる初日哉彼岸過ぎ一重の花の咲立てゝなつ暑病の殊に土用をうるさがりもはや仕事もならぬおとろへやみ長閑さや寒の殘りも三ヶ一おぼろ月まだはなされぬ頭巾哉大原や蝶の出てまふ朧月朧月一足づゝもわかれかな僧丈去草來朧月一足づゝもわかれかなうちむれて若葉摘む野に脛かゆし七草や粧ひしかけて切刻みとばしるも顏に匂へる薺かな紅梅は娘すまする妻戶かなみな〓〓に咲きそろはねど梅の花赤みその口を明けけり梅の花うめ咲きて湯殿の崩れ直しけり減りもせぬ鍛冶屋のみせの店曝し門ん建直なほす町の相談定免を今年の風に欲ぼりて名ウ包んで戾る鮭のやきもの夕月に醫者の名字を聞きはぐり叮嚀に仙臺俵の口かゞり氣にかゝる朔日しまの精進箸やはらかものを嫁の襟もとばし里離れ順禮引のぶらつきて三人ながらおもしろき春幾月ぶりでこゆる逢坂訴訟が濟んで土手になる筋深川の會に洛よりの文のはしに窓のうちを見こみてうんじ果てたる八專のそらをなごどもの七くさはやすをみて俳諧七部集俳諧炭俵集上卷芭蕉翁全集伊賀土芳利牛仙花仙杖野坡其角杉風野坡游刀利牛支考執筆野坡孤屋利牛野坡孤屋利牛野坡孤屋利牛野坡孤屋利牛野坡孤屋利牛椿傘に押分けみたる柳哉町なかへしだるゝ宿の柳かなせきれいの尾は見付けざる柳哉늘五人扶持とりてしだるゝ柳哉障子ごし月のなびかす柳かなこねりをもへらして植ゑし柳かな柳鶯の一聲も念を入れにけり鶯や門はたま〓〓豆麩賣うぐひすの聲に起きゆく雀哉鶯に藥をしへむ聲の文うぐひすにほうと息する朝哉あや鶯ねこの子のくんづほぐれつ胡蝶哉猫の戀初手から鳴いて哀れ也十五日立つや睦月の古手賣うめ咲くや白の挽木のよきまがり梅一木つれ〓〓草の姿かな梅長松が親の名で來る御慶哉初日影我れ莖立とつまればや目下にも中の詞や年の時宜猶いきれ門徒坊主の水祝ひち)喰積や木曾のにほひの檜物いそがしき春を雀のかきばかま刀さす供もつれたし今朝の春春や祝ふ丹波の鹿も歸るとて岱洒大阪正膳所去京杉水堂秀來風春や祝ふ丹波の鹿も歸るとてみちのくのけふ關越えむ箱の海老東雲やまひら戶はづすかざり松逢萊に聞かばや伊勢の初便り立春之部發句春二九七二六六芭蕉利牛一風野坡素龍湖春利牛野坡桃隣其角嵐雪其角野坡之大阪道曲翠露沾野坡利牛孤屋沾圃岱水濁子芭蕉
法度場の垣より內は菫かな氣相よき靑葉の麥の嵐哉鳥の行く燒野の隈や風の末ほそ〓〓とごみ燒く門のつばめ哉散りのこるつゝじの藥や二三本春雨や蜂の巢つたふ屋根の漏瀧つぼに命打ちこむ小あゆ哉題しらず靑柳の泥にしだるゝ潮干哉藪垣や馬の貌かくもゝの花麻の種毎年踏まる桃の花日半路をてられて來るや桃の花鬼の子に餅を居うるも雛かなかつらぎの神はいづれぞ夜の雛晝舟に乘るやふしみの桃の花帶ほどに川のながるゝ潮干哉旅行にて俳諧七部集俳諧炭俵集上卷花守や白きかしらを突きあはせ中下もそれ相應の花見かな何がしのかうの殿の花見に侍りてうか〓〓と來ては花見の留守居哉めづらしや內で花見のはつめしか四つ五器の揃はぬ花見心かな幕打ちさわぎ、はき掃除してから椿散りにけり鳥のねも絕えず家陰の赤椿鋸にからきめみせて花椿念入れて冬からつぼむ椿哉枝長く伐らぬ習ひを椿かな土はこぶ羅にちり込む椿かなかげをたのみてゑさまざまなりにけるかたはらの、花うへ野の花見にまかり侍りしに、ものゝ音、芭蕉翁全集小うたのこ去素丈杉芭人々野支嵐曲湖孤松美濃芭孤利野如其桃沾野仙猿伊賀怒子芭爲嵯峨田夫華雖誰珊蕉有野支嵐曲湖孤坡蕉屋牛坡行角隣德來龍草風蕉坡考雪翠春屋食の時みなあつまるや山ざくら折りかへる昆布だしや花に氣のつく庫裏坊主祭りまであそぶ日なくて花見哉おちつきは魚屋まかせや櫻がり山ざくら小川飛越すをなごかな誰が母ぞ花に數珠くる遲ざくら老僧も袈裟かつぎたる花見哉山ざくらちるや小川の水車花はよも毛蟲にならじ家櫻あだなりと花に五戒の櫻かな牡丹すく人もや花見とはさくら柿の袈裟ゆすり直すや花の中朝めしのだかれてもをのこヾいきる花見哉あすと云ふ花見の宵のくらさ哉上巳櫻でふくや臺所湯を片膝や庭の花梅さくらふた月ばかり別れけり雲霞どこまで行くもおなじ事此の集いまだ半ばなる比、事ありけるに、品川までみ送りて利野孤屋旅立つ二九九同野孤同利普越前福井祐之大阪智大津尼嵐其湖斜〓孤坡屋牛全甫道月雪角春北枝嶺口屋牛坡坡屋
枯柴に晝がほあつし足のまめ並松を見がけて町のあつさ哉帷子のしたぬぎ懸くる袷哉みをのやは首の骨こそ甲なれ文もなく口上もなし粽五把五日迄水すみかぬるあやめかな菖蒲懸けてみばやさつきの風の色五月雨や傘に付けたる小人形浦風やむらがる蠅のはなれぎは麥畑や出ぬけても猶麥の中駿河路や花橘も茶の匂ひはげ山の力およばぬあつさ哉二三番鷄は鳴けどもあつさ哉夏端おなじこゝろをおなじ時に俳諧七部集俳諧炭俵集上卷旅午棹の歌はやうら凉しめじか舟うの花に扣きありくやかつらかけ卯の花に蘆毛の馬の夜明かなうの花の絕間たゝかむ闇の門卯の花やくらき柳の及ごし扇屋の暖簾白し衣がへ花の跡けさはよほどの茂り哉雀よりやすきすがたや衣がへ綿をぬく旅ねはせはし衣更衣がへ十日はやくば花ざかり鹽魚の裏ほす日也衣がへ題しらず旅行にうの花首夏部之發句夏芭蕉翁全集芭猿魯長崎斜臥素仙嵐桃洒大阪其岱野湖支許去芭利子雪九野嵐蕉雖町嶺高龍花雪隣堂角水坡春考六來蕉牛珊芝節坡雪夕すゞみあぶなき石にのぼりけり凉しさや浮洲のうへのざこくらべすゞしさをしれと杓の雫かな崎風はすぐれて凉し五位の聲行燈をしひてとらするすゞみ哉凉しさよ塀にまたがる竹の枝月影にうごく夏木や葉の光り川中の根本によころぶすゞみ哉凉五月雨や顏も枕もものゝ本五月雨や露の葉にもる〓薩さみだれに小鮒をにぎる子供哉五月雨の色や淀川大和川さみだれやとなりへ懸くる丸木橋五月雨此の句は島田よりの便りにこの句は桃隣より書きてこしぬ三〇一刈りこみし麥の匂ひや宿の內翁の旅行を川崎まで送りて麥跡の田植やおそき螢どき麥の穗と共にそよぐや筑波山柿寺に麥穗いやしや作りどり麥子規顏の出されぬ格子かな時鳥啼く〓〓風が雨になる靑雲や舟ながしやる子規木がくれて茶摘も聞くや郭公挑灯の空に詮なしほとゝぎす行燈を月の夜にせむほとゝぎすほとゝぎす一二の橋の夜明かな聞く迄は二階に寐たりほとゝぎすうぐひすや竹の子藪に老を鳴く髭宗祇池に蓮ある心かな郭公灣長崎女野去〓備前智探卯か芭岱嵐野桃素利許千〓美濃野利素芭杉嵐其桃芭素坡來峰月芝七な蕉水蘭坡隣龍牛六川口坡牛龍蕉風雪角隣蕉堂
笹のはに枕付けてや星むかへ明月や不二見ゆるかと駿河町家こぼつ木立も寒し後の月もち汐の橋のひくさよけふの月松陰や生船揚げに江の月見名月や誰れ吹起す森の鳩家買うてことし見初むる月夜哉名月や緣とりまはす黍の虛明月や見つめても居ぬ夜一よさ名七むさしの仲秋の月、俳諧七部集俳諧炭俵集下卷タ望峰の不盡筑波をいけ ぶね月はじめて見侍りて、其素其利里洒荷去湖角龍角牛東堂分來春秋の秋の俳諧炭俵集下卷部月を翫びて時候の序をえらばず秋のあはれいづれか〓〓の中に團賣り侍町のあつさかな猪の牙にもげたる茄子哉なりかゝる蟬がら落す李哉一いきれ蝶もうろつく若葉哉螢見し雨の夕ベや水葵雨乞の雨着こはがるかり着哉曉のめをさまさせよ蓮の花はへ山や人もすさめぬ生ぐるみ晝がほや雨降りたらぬ花の顔やまぶきも巴も出づる田植かな早乙女にかへてとりたる菜飯哉世の中や年貢畠のけしの花熨斗むくや磯菜すゞしき島がまへ橘や定家机のありどころ三日月の陰にてすゞむ哀れかな木曾路にて題しらず芭蕉翁全集其素怒爲嵯峨殘美濃楚仙丈乙北智許嵐里正杉素角龍風有香舟花草州鯤月六雪東秀風堂朝顏や朝がほや晝は錠おろす門の垣盆の月ねたかと門をたゝきけり踊るべきほどには醉うて盆の月たうきびにかげろふ軒や玉まつり七夕やふりかはりたる天の川星合にもえ立つ紅やかやの緣こうろぎや箸で追ひやる膳の上蟷螂にくんで落ちたるぬかご哉悔みいふ人のとぎれやきり〓〓す年よれば聲はかるゝぞきり〓〓すてしかなと朝貌這はす柳かな朝孟蘭盆鹿秋閉虫日傭出て行く跡の垣貌關,)行く雲をねてゐてみるや夏座敷改めて酒に名のつくあつさ哉竹の子や兒の齒ぐきの美しきたをながめ出してぎて物がたりし其の夕つかた、ある人の別墅にいざなはれ、あるじせられければ、一枝はすげなき竹の若葉哉けうときは鷲の栖や雲の峰はもりなど、ある會に、かたく戒め給ひて諾せしむ。さるべき人、名あるかぎりを取出て、それをよく知りてあらきあ僕が酒をたしむことを、三〇〇汗をかきて野外のか盡日打和利しかるに嵐仙祐坡牛甫三〇三孤爲嵯峨丈智大津湖利芭野李江州洒嵐孤野屋有草月春合蕉坡由堂雪屋坡雪花甫
芭蕉翁全集友鹿の啼くを見かへる小鹿哉人のもとめによりてみつねがた鹿のふむ跡や硯の躬恒形旅行のとき七ヶ近江路やすがひに立てる鹿の長草花宮城野の萩や夏より秋の花花すゝきとらへちからやむら雀片岡の萩や刈りほす稻の端蘆の穂や顏撫揚ぐる夢ごゝろなには津にて蘆のほに箸うつかたや客の膳女中の茸狩を見て茸狩や鼻の先なる歌がるた園菊菊畑おくある霧のくもり哉紺菊も色に呼出す九日哉車來秋植物柿のなる本を子どもの寄りどころ利牛落栗や谷にながるゝ蟹の甲祐甫秋風や茄子の數のあらはるゝ木白箕に干して窓にとちふく綿の桃孤屋たうがらしの名を、南蠻がらしといへるは、かれが治世南ばんにて久しかりしゆゑにや、未詳、ほゝづき、天のぞき、そら見、八つなりなどいへるは、おのがかたちをこのめる人々の、もてあそびて付けたるなるべし。みなやさみやうもくしからぬ名目は、汝がむまれ付きのふてんししぜんつゝかなれば、天資自然の理、さらさら恨むべからず。かれが愛をうくるや、石臺にのせられて、竹緣のはしのかたにあるは、上々の仕合也。ともすれば、すりばちのわれ、そこぬけのつる素龍土芳桃野猿丈隣童雖草去來其角杉桃風隣べに土かはれて、やねのはづれ、二階のつま、物ほしのひかげをたのめるなど、あやふくみえ侍るを、蕣のはかなきたぐひには、たれも〓〓おもはず、大かたは、かつら髭つり鬚のますらをにかしづかれて、びんぼ樽の口をうつすみじきむささかなとなり、不食無菜のときふと取6出され、おほくはやつこ豆麩の比紅葉の色をみするを、榮花の頂上とせり、かくはいへど、ある人北野まうでの歸さに、みちのほとりの小童に、これ節に一兩くれて、汝が靑々とひとつみのりしを、所望せし事ありといへば、いやしめらるべきにもあらず。しかしいまは、その人々もこの世をさりつれば、いよ〓〓愛をもたのむべからず。からきめもみすべからずと、小序をしかいふ。俳諧七部集俳諧炭俵集下卷石臺を終にねこぎや唐がらし題しらず相撲取ならぶや秋のからにしき水風呂の下や案山子の身の終り碪ひとりよき染物の匂ひかな秋のくれいよ〓〓かるくなる身哉く茸狩や黃蕈も兒は嬉し顏夕がほの汁は秋しる夜寒かなくる秋は風ばかりでもなかりけり秋風に蝶やあぶなき池のうへ庖丁の片袖くらし月の雲野坡嵐丈洒荷利支北僧依其雪草堂兮合考枝々角三〇五
江の舟や曲突にとまる雪の鷺海山の鳥啼立つる雪吹かな炭賣の橫町さがる雪吹哉初雪や先づ馬屋から消えそむる朱の鞍や佐野へわたりの雪の駒杉の葉の雪朧なり夜の鶴雪の日やうすやうくもるうつし物雪の日に庵借さうぞ鷦鷯はつ雪や塀の崩れの蔦のうへ初雪の見事や馬の鼻ばしらはつ雪にとなりを顏でをしへけりかなしさの胸に折れ込む枯野哉冬の夜飯道寺にて雪題不知に出しぬよりの狀の端に在りつるを見て、俳諧七部集俳諧炭俵集下卷つ凩や初霜や猫の毛も立つ臺所凩の藪にとゞまる小家かな刈蕎麥の跡の霜ふむすゞめ哉冬枯の磯に今朝みるとさか哉芋くひの腹へらしけり初時雨箒目に木枯の根にすがり付く檜皮かな蜘の巢のきれ行く冬や小松原櫻木や菰張りまはす冬がまへ市中や木の葉も落ちずふじ颪凩や沖よりさむき山のきれ初時南宮山に詣でゝまたゝき診しげき猫の雨霜の蘇鐵のさむさ哉冬ひはだ面冬之部芭蕉翁全集呂羽黑亡人丸素乙湖許北支猿依買利野今爰〓游桃八楚殘桐斜支芭桃其龍州タ六枝考雖々山牛坡口刀隣桑舟香實嶺梁蕉隣角煤拂ひ障子をはくは手代哉煤はきは己が棚つる大工かな庚申やことに火燵のある座敷白魚のしろき匂ひや杉の箸寒菊や粉糠のかゝる臼の端おはかま着ぬ聟入もあり年の暮この暮も又くりかへし同じ事待つ春や氷にまじる塵あくた山臥の見事に出立つ師走哉餅つきや元服さする草履取海へ降る霰や雲に波の音誰れと誰が緣組すんで里神樂榾の火やあかつき方の五六尺御火燒の盆物とるな村がらすほ禪門の革足袋おろす十夜哉歲たすゝはき暮三〇七魚店や莚打上げて冬の月足もともしらけて寒し冬の月右の二句は深川の庵へ訪れし比、蕎麥切に吸物もなき寒さ哉この比は先づ挨拶もさむさ哉人聲の夜半を過ぐる寒さ哉神送り荒れたる宵の土大根鉢卷をとれば若衆ぞ大根引鞍壺に小坊主乘るや大根引小夜しぐれとなりの白は挽止みぬ有明となれば度々しぐれ哉もらぬほど今日は時雨よ草の庵黑みけり沖の時雨の行きどころさむさを下の五文字にすゑて大根引といふ事を旅寐のころ芭蕉翁をわが芽屋にまねきて李杉智嵐野萬芭同其殘丈之智許芭丈他國里我東眉利示野洒野芭野許斜由風月雪坡乎蕉角香草道月六蕉牛蜂坡堂坡蕉坡六嶺草
其角孤屋各十六句弧屋旅立つ事出來て、洛へのぼりけるゆゑ小栗讀む片言ませて哀れなり紙燭して尋ねて來たり酒の殘名ウ五上塗なしに張つておく壁君こねばこはれ次第の家となり道くだり拾ひあつめて案山子哉桃隣辛崎へ雀のこもる秋の暮に、今四句未滿にして吟じ終りぬ。入る月に夜はほんのりと打明けて朝霧におくれて一羽海わたる鷹日傭揃ふる貝吹きてさ秋の空尾上の杉に離れたり其角行く年よ京へとならば狀ひとつ爪取つて心やさしや年ごもり年の夜は豆はしらかす俵かな鍋ぶたのけば〓〓しさよ年の暮なしよせて鶯一羽としのくれ下京は宇治の糞舟さしつれて祖父が手の火桶も落すばかりなり5月のかくるゝ四扉の門としの暮互にこすき錢遣ひどんどゝ水の落ちる秋風天野氏興行けふもたらつく浮前の船北より冷ゆる月の雲行き稗と鹽との片荷つる籠つたひ道には丸太ころばす俳諧秋之部有りし其のかへりごとに芭蕉よりの文に、くれの事いかゞなど俳諧七部集俳諧炭俵集下卷芭蕉翁全集利牛野坡孤屋其角孤屋其角孤屋其角孤屋其角同孤屋同其角同孤屋湖春素龍野坡猿雖孤屋智月臺所けふは奇麗にはき立てゝより平の機に火桶はとり置きて人の物負はねば樂な花ごゝろ時ならず念佛きこゆる盆の內はんなりと細工にそまる紅うこん年よりた者を常住ねめまはし瓜の花是からなんぼ手にかゝる近くに居れど長谷をまだみぬは銅壺よりなまぬる汲んでつかふ也す.鈴繩に鮭のさはればひゞくなり顏にもの着てうたゝねの月産むかひの小言たれも見廻はずもはや彌生も十五日たつ鴫まつ黑にきてあそぶなり鍵持ばかりもどる夕月分けにならるゝ嫁の仕合つよう降りたる雨のつひやむ塀の外まで桐のひろがる年の豆蜜柑の核も落ちちりて夏草のぶとにさゝれてやつれけりいざ心跡なき金のつかひ道貫之の梅津桂の花もちぢ行燈の引出しさがすはした錢道者のはさむ編笠の節田の畔に早苗把ねて投げて置き足輕の子守して居る八つ下りいつより寒い十月のそら帶ときながら水風呂をまつあばたといへば小僧いやがる宮の縮のあたらしき內むかしの子ありしのばせて置く鴈の下りたる筏ながるゝ息吹きかへす霍亂の針坊主の着たる蓑はをかしき三〇九野坡桃隣利牛野坡桃隣利牛野坡桃隣利牛野坡桃隣利牛野坡桃隣利牛野坡桃隣孤屋其角孤屋其角孤屋同其角孤屋其角孤屋其角孤屋其角孤屋其角孤屋其角
しん新畠の糞もおちつく雪の上砂にぬくみのうつる靑草ばたかみ髪置は雪踏とらする思案にて隙を盜んで今日もねてくる川越の帶しの水をあぶながり此の島の餓鬼も手を摺る月と花が燒物に組合せたる富田紛名京は惣別家に念入るとんだえび帷子も肩にかゝらぬ暑さにて風やみて秋の鷗の尻さがりウ壁をたゝきて寐せぬ夕月算用に浮世を立つる京ずまひよいやうに我手に占を置いてみる同じ事老の咄しのあくどくて此度の藥はきゝし秋の露買込んだ米で身體たゝまるゝ芭蕉翁全集しんだいちらほらと米の揚場の行戾り鯉の鳴子の綱をひかふるあげば中よくて傍輩合の借いらひどたくたと大晦日も四つの鐘干物を日向の方へいざらせて內でより菜がなうても花の陰杉の木末に月かたぐなり無筆のこのむ狀の後先又沙汰なしにむすめ產鹽出す鴨の苞ほどくなり平地の寺のうすき藪垣吹きとられたる笠とりに行くちつとも風のふかぬ長閑さ先づ沖までは見ゆる入舟しやうしんこれはあはぬ商ひだまされて又薪部屋に待つ歸るけしきか燕ざはつく俳諧七部集俳諧炭俵集下卷芭蕉孤屋利牛芭蕉野坡利牛孤屋野坡芭蕉孤屋利牛芭蕉野坡利牛孤屋野坡芭蕉野坡利牛桃隣野坡利牛桃隣利牛野坡桃隣利牛野坡桃隣利牛野坡桃隣利牛明けしらむ籠挑灯を吹きけしてけん肩癖にはる湯屋の膏藥小さげ下看を一舟濱に打明けて日の出るまへの赤き冬空ざかな雪の松をれ口みれば尙寒し杉風上置の干葉刻むもうはの空網の者近づき舟に聲かけて好物の餅を絕さぬ秋の風番匠が樅の小節を引きかねて降つてはやすみ時雨する軒ぶし振賣の雁あはれなりえびす講芭蕉竹の皮雪踏に替へる夏の來て馬の荷物のさはる干ものせつた熊谷の堤きれたる秋の水ウ粟をかられてひろき畠地身にあたる風もふは〓〓薄月夜どこもかも花の三月中時分粕買の七つさがりを音づれて馬に出ぬ日は内で戀するかひひだるきは殊に軍の大事なり淡氣の雪に雜談もせぬあは二三疊寢所もらふ門の脇星さへみえず二十八日割木の安き國の露霜箱こしらへて鰹節うるあひだとぎるゝ大名の供輪炭のちりをはらふ春風目黑まゐりのつれのねちみやく塀に門ある五十石取片はげ山に月をみるかな芭蕉野坡孤屋利牛各九句神無月二十日深川にて即興三一一三一〇石菊沾圃子珊野坡岱水利牛桃隣子珊芭蕉孤屋利牛孤屋野坡孤屋利牛芭蕉野坡利牛孤屋野坡芭蕉孤屋利牛芭蕉野坡利牛孤屋野坡
續猿蓑集卷之上きのふから日和かたまる月の色初荷とる馬子もこのみの羽織着て八九間空で雨降る柳かな笹の葉に小路埋みておもしろき約束の小鳥一さげ賣りに來て脇ざしにかへてほしがる旅刀澁柿もことしは風に吹かれたり內はどさつく晩のふるまひ春のからすの畠ほるこゑ煤をしまへばはや餅の段孫が跡とる祖父の借錢狗脊かれて肌寒うなるあたまうつなと門の書つけ十里ばかりの餘所へ出かゝりき、(書つきをけと訂正しあり。俳諧七部集續獲養集卷之上校訂者記す)芭雪舟でなくばと自慢こきちらし餅米を搗いて俵へはかり込み茶むしろのきはつく上に花散りて名朝曇りはれて氣味よき雉子の聲又けさも佛の食で埓を明け宵々の月をかこちて旅大工しんもの思ひたゞ欝々と親がゝり手前者のひとりもみえぬ浦の秋損ばかりして賢がほ也隣りへ行きて火をとりて來る脊戶へ廻れば山へ行くみち川からすぐに小鮎いらする脊中へのぼる兒をかはゆがるわざ〓〓わせて藥代の禮取集めてはおほき精進日めつたに風のはやる盆過稻に子のさす雨のはら〓〓눅ま、なかしや芭蕉翁全集うつくまんおとそうじび芭里馬沾蕉蕉沽里莧沾蕉莧里蕉沾圃莧圃杉利子沾依桃曾孤岱杉石子桃依利野杉風牛珊圃々隣良屋水風菊珊隣々合坡風有明におくるゝ花のたてあひて削ぐやうに長刀坂の冬の風むれて來て栗も榎もむくの聲月待に傍輩衆の打ちそろひ濱出しの牛に俵をはこぶ也禪寺に一日あそぶ砂の上長持に小擧の仲間そは〓〓と春無盡まづ落札が作太夫いづくへか後は沙汰なき甥坊主伊勢の下向にべつたりと逢ひ見事にそろふ籾のはえ口やつと聞出す京の道づればん籬の菊の名乘りさまぐ槻の角のはてぬ貫穴伴なれぬ娵にはかくす內證くはらりと空の晴るゝ靑雲僧はし;)ある駕のわき三一三元祿七歲次申成六月廿八日花の雨あらそふ內に降出して約束にかゞみて居れば蚊に喰はれすゝけぬる御前の箔のはげかゝり大阪の人にすれたる冬の月誹諧炭俵下卷之終利牛三杉風五石菊二男まじりに蓬そろふる七つのかねに駕籠呼びに來る次の小部屋でつにむせる聲酒をとまれば祖母の氣に入る曾良二子珊五野坡二江戶白銀町京寺町通撰者芭蕉門人は岱水三利合二孤屋二池田氏小泉氏志太氏本屋利孤野桃隣四沾圃二本屋井筒屋庄兵衞藤助岱桃曾利子芭蕉一杉依々二野利水隣風良牛珊坡合牛屋坡里蕉沾里莧沾蕉莧里蕉沾里寛沾蕉莧里
町切に月見の頭の集め錢大根のそだゝぬ土にふしくれていさみたつ鷹引きすうる嵐かな荷がちら〓〓と通る馬次上下ともに朝茶のむ秋冬のまさきの霜ながら飛ぶ俳諧七部集續獲養集卷之上花の陰巢を立つ雉子の舞ひかへり直のしれた帷子時のもらひ物此の盆は實の母のあと問うて肌入れて秋になしけり暮の月卑下して庭ひ有付いて行く出羽の庄內顏にこぼるゝ玉笹の露あら田の土のかわくかげろふ聞いて氣味よき杉苗の風かたびらどきによい料理くふざよすぎたる茶前の天氣きづかはし悔しさはけふの一步の見そこなひ霜氣たる蕪喰ふ子ども五六人立家を買うてはひれば秋暮れてから雀の字や揃うて渡る鳥の聲沼有るふりしたる國方の客-請狀すんで奉公ぶりする莚を敷いて外の洗足ふつ〓〓なるをのぞく甘酒てり葉の岸のおもしろき月と花ははやのこらぬ春のたゞくれて引立てゝ無理に舞はするたをやかさ瀨がしらのぼるかげろふの水そつと火入におとす薫まぶたに星のこぼれかゝれる芭蕉翁全集里馬芭沾圃里沾莧蕉圃馬里沾莧莧里沾莧里沾莧圃圃里沾莧里沾莧里沾莧里莧沾蕉寛柴舟の花の中よりつつと出て草の葉にくぼみの水の澄みちぎり狀箱を駿河の飛脚うけ取りて爼の鱸に水をかけながし智恩院の替りの噂極まりて砂を這ふ蕀の中の絡線のけふのあつさはそよりともせぬ賣物の澁紙つゝみおろし置き百姓になりて世間も長閑さよ柳の傍へ門をたてけり有明高う明けはつるそらうき旅は鵙とつれ立つわたり鳥伊駒氣づかふ綿とりの雨まだ七つにはならぬ日の影目利で家はよい暮しなりさくらの後は楓わかやぐごまめを膳にあらめ片菜しぶかみ탈三一五の聲かたさい錢かりてまだ取りつかぬ小商ひ殿のお立のあとは淋しき口々に寺の指圖を書直し汁の實にこまる茄子の出盛りて年々に屋うちの者と中惡しくうぐひすの路には雪を掃殘し春靜俵米もしめりて重き花盛り明けはつる伊勢の辛洲の年籠り臺所秋の住所に住みかへて何事もなくてめでたき駒むかへあからむ麥をまづ苅つてとる三崎敦賀の荷のかさむ也しなぬ合點で煩うてゐる蓑はしらみのわかぬ一德座頭のむすこ女房呼びけり風にたすかる早稻の穗の月かなる竿の染纏づ놓三一四そめ沾莧里沾蒐里沾莧里沾莧里沾莧里沾莧里沾莧里沾蒐里沾莧里沾蒐里沾蒐里沾
芭蕉翁全集別れを人がいひ出せば泣く火燵の火いけて勝手をしづまらせ一.石ふみし確の米折り〓〓は突目の起る天氣相房ラかげん仰に加減のちがふ夜寒さ月影にことしたばこを吸うてみるおもひのまゝに早稻で屋根ふく手拂ひに娘をやつて娵のさた參宮の衆をこちで仕立つる花のあと躑躅のかたがおもしろい寺のひけたる山際の春冬よりはすくなうなりし池の鴨一雨ふりてあたゝかな風三一六水かるゝ池の中より道ありてぢ篠竹まじる柴をいたゞく鷄があがるとやがて暮の月通りのなさに見世たつる秋かつ盆しまひ一荷で直ぎる鮨の魚晝寐の癖をなほしかねけり聟が來てにつともせずに物語るミ言中國よりの狀の吉左右朔日の日はどこへやら振舞はれ一重羽織が失せてたづぬるきさんじな靑葉の比の樅楓山に門あるありあけの月初あらし畠の人のかけまはり(原本畑を畠と訂正しあり。校訂者記す)みぢぎは水際光る濱の小いわし見て通る紀三井は花の咲きかゝり荷持ひとりにいとゞ永き日里莧沾里莧沾里莧沾里莧沾里支惟考然蕉考然蕉考然蕉考然蕉考然蕉考猿蓑にもれたる霜の松露哉日は寒けれど靜かなる岡沾圃芭蕉こち風の又西になり北になりわが手に脉を大事がらるゝ後呼の內儀は今度屋敷から喧〓のさたもむざとせられぬ大せつな日が二日ある暮の鐘雪かき分けし中の泥道あかけ來る程の乘掛は皆出家衆奧の世並は近年の作酒よりも肴のやすき月見して赤鷄頭を庭の正面定まらぬ娘のこゝろ取りしづめ寐汗のとまる今朝がたの夢鳥籠をつらりとおこす松の風大工つかひの奧に聞ゆる米搗もけふはよしとて歸る也なかから身で市の中をおしあふ此のあたり彌生は花のけもなくて俳諧七部集續猿養集卷之上然蕉考然蕉考然蕉考然蕉考然蕉考蕉然鴨のあぶらのまだぬけぬ春考今宵賦野盤子支考今宵は六月十六日のそら水にかよひ、月は東方の특こ〓亂山にかゝげて、衣裳に湖水の秋をふくむ。されば今宵の遊び、初めより尊卑の席をくばらねど、しば〓〓酌みてみたらす人、そこ〓〓に凉みふして野を思ひ山を思ふ。たま〓〓かたりなせる人さへ、さらに人を興ぜしめむとにあらねば、あながちに辯のたくみをもとめず、唯萍の水にしたがひ、水の魚をすましむるたとへにぞ侍りける。阿叟は深川の草菴に四年の春秋をかさねて、ことしはみな月さ月のあはひを渡りて、伊賀の山中に父母のこは(、たら古墳をとふらひ、洛の嵯峨山に旅寐して、加茂祗園の凉みにもたゞよはず、かくてや此の山に秋をまたれけむと思ふに、さすが湖水の納凉も忘れが三一七
芭蕉翁全集たくて、又三四里の暑を凌ぎて爰に草鞋の駕をとゞむ。今宵は菅沼氏をあるじとして、僧あり俗あり、俗にして僧に似たるものあり、その交りの淡さものは、砂川の岸小松を浸せるが如し。深からねばすごからず、かつ味なうして人にあかるるなし。幾年なつかしかりし人々の、さしむきて忘るゝに似たれど、おのづから喜べる色、人の顏にうかびて、おぼえず鷄鳴きて月も傾きけるや。まして魂祭る比は、阿叟も古さとの方へと心ざし申されしを、支考は伊勢の方に住み處求めて、時店雨の比はむかへむなとも思ふなり。しからば湖の水鳥の、やがてはら〓〓に立ちわかれて、いつか此もの遊びに同じからむ。去年の今宵は夢の如く、明年はいまだ來らず、今宵の興宴何ぞあからさまなはつばいらん。そゞろに醉うて眠るものあらば、罰盃の數に水をのませむと、たはふれあひぬ。夏の夜や崩れて明けし冷し物芭蕉三一八露ははらりと蓮の緣先鶯はいつその程に音を入れて古き革籠に反故おし込む月影の雪もちかよる雲の色しまうて錢を分くる駕かきか〓は猪を狩場の外へ追ひにがし山から石に名を書いて出す飯櫃なる面桶にはさむ火打鎌鳶で工夫をしたる照降りおれが事歌によまるゝ橋の番持佛のかほに夕日さし込む달平畦に菜を蒔立てしたばこ跡秋風わたる門の居風呂馬引いて賑はひ初むる月の影尾張でつきしもとの名になる餅好のことしの花にあらはれて正月ものゝ襟もよごさず曲臥惟支芭翠高然考蕉翠高然考蕉翠考然高蕉翠高芭蕉然考蕉翠高蕉考然翠高蕉考翠然高然高考春風に普請のつもりいたす也藪から村へぬけるうら道喰ひかねぬ聟も舅も口きいて何ぞの時は山伏になる笹つとを棒に付けたるはさみ箱蕨こはばる卯月野の末相宿と後先にたつ矢木の町き際の日和に雪の氣遣ひ呑こゝろ手をせぬ酒の引きはなし着替の分を舟へあづくる封付けし文箱來たる月の暮そろ〓〓ありく盆の上薦衆蟲籠つる四條の角の河源河高瀨をあぐる表ー固今の間に鑓を見かくす橋の上大きな鐘のどんに聞ゆる盛りなる花にも扉おしよせて腰かけつみじ藤棚の下俳諧七部集續猿養集卷之下續猿蓑集卷之下春の部花櫻溫石のあかるゝ夜半やはつ櫻露沾寢時分に又見む月かはつ櫻其角顏に似ぬほつ句も出でよ初櫻芭蕉ちか道や木の股くヾる花の山洞木角いれし人をかしらや花の友丈草花散つて竹見る軒のやすさ哉洒堂富貴なる酒屋にあそびて、文君が爪音も.醉のまぎれに思ひ出らるゝに酒部屋に琴の音せよ窓の花惟然賭にして降出されけりさくら狩支考人の氣もかく窺はしはつ櫻沾德くもる日や野中の花の北面猿雖七つより花見に起こる女中哉陽和三一九然考德雖和
蠅うちになるゝ雀の子飼哉雀子や姉に貰ひし鸚の櫃巢の中や身を細うして親燕燕や田をおりかへす馬のあと駒鳥の音ぞ似合しき白銀屋駒鳥の目のさやはづす高根哉春雨や蓑につゝまむ雉子の聲瀧壺もひしげと雉のほろゝ哉鶯や柳のうしろ藪のまへ鶯に手もと休めむながしもとうぐひすや野は塀越の風呂上り鶯に長刀かゝる承塵かな鳥附魚輪をかけて馬乘過ぐる柳かな靑柳のしだれくヾれや馬の曲ちか道を〓へちからや古柳時々は水にうちけり川柳濡緣や薺こぼるゝ土ながら若八重櫻京にも移る奈良茶哉一日は花見のあてや旦那寺ぬり直す壁のしめりや軒の花はなやかに置床なほす花の春花笠をきせて似合はむ人は誰れ一少年其角ながれ木の根やあらるゝ花の瀧山門に花もの〓〓し木のふとり咲きかゝる花や飯米五十石蒟蒻の名物とはむ山ざくら田蓑虫の出方にひらく櫻哉二の膳やさくら吹込む鯛の鼻わが庭や木ぶり見直すはつ櫻咲く花をむつかしげなる老木哉見る所おもふところやはつ櫻俳諧七部集續猿養集卷之下菜家芭蕉翁全集河瓢槐市峰少年野嵐童長虹傘下洒堂去來芭蕉智月史邦其角巴丈九節李江東意由元嵐雪同沾圃卓袋如雪一桃首李里卓袋子珊沾荷木節乙州鷺桐堤よりころび落つれば菫かな茨はら咲きそふものも鬼あざみ味はひや櫻の花によめがはぎ宵の雨しるや土筆の長みじか川淀や沫をやすむるあしの角春の野やいづれの草にかぶれけむ若草や松につけたき蟻の道なぐりても萠えたつ世話や春の草しら魚をふるひ寄せたる四手哉鮎の子のかげろふと共にちらつく小鮎哉心すさまし瀧の音春深川にあそびて白魚のしろき噂も盡きぬべししら魚の一かたまりや汐たるみ行く鴨や東風につれての磯惜しみそれ〓〓の朧のなりや梅柳身につけと祈るや梅の籬ぎは寢所や梅のにほひをたて籠めむしら梅やたしかな家もなきあたり薄雪や梅の際まで下駄の跡あたらしき翠簾まだ寒し梅の花病僧の庭はく梅のさかり哉投入や梅の相手は蕗の薹里坊に碓きくや梅の花守梅のあそび業なり野老賣きさらぎや大黑棚も梅の花春もやゝ氣色とゝのふ月と梅一かぶの牡丹は寒き若菜哉夕浪の舟にきこゆる薺哉梟の鳴きやむ岨のわか菜かな梅附柳芳野西河の瀧天神の社に詣でゝ草三三三二〇尼羽此紅筋馬莧荒雀車來闇指猿雖正秀其角山蜂子珊圃水土芳釣箒千那遊糸大丹千川魚日万乎曾良良品昌房其角野水芭蕉尾頭孤屋曲翠
春雨や光りうつろふ鍛冶が槌春雨や枕くづるゝうたひ本春雨や唐丸あがる臺どころ咄しさへ調子合ひけり春の雨物よわき草の座とりや春の雨春雨山の端をちから良なり春の月春藪疇や穂麥にとゞく藤の花掘りおこすつゝじの株や蟻のより山ふきも散るか祭りの鱘なます山吹や垣に干したる蓑一重ちり椿あまりもろさに續いでみるける時なにがし主馬が、款冬田家の人に對して俳諧七部集續猿養集卷之下附春雪月附躑躅蛙藤·桃支武江の旅店をたづね游乃〓魯長崎〓雪洒闇野首考刀龍口町口芝堂指晝寐して花にせはしき胡蝶哉風吹に舞の出來たる小蝶哉蝶の舞おつる椿にうたるゝな衣更着のかさねや寒き蝶の羽とまりても翅は動く胡蝶哉おもひかねその里たける野猫哉うき戀にたへでや猫の盜み喰ひわが影や月になほ啼く猫の戀蒲公英や葉にはそぐはぬ花盛り日の影に猫の抓出す獨活芽哉味噌部屋のにほひに肥る三葉哉早わらびや笠とり山の柱うりふみ倒す形りに花さく土大根踏みまたぐ土堤の切目や蕗の薹春猫戀白日しづか也鹿附胡蝶芭蕉翁全集·桃支魯長崎〓雪洒闇野雪重出羽闇惟柳己美濃支探圃一タ正乃拙首考町口芝堂指坡窓行指然梅百考丸箔桐可秀龍候三月盡引鳥の中に交るや田螺とり三尺の鯉はぬる見ゆ春の池春の日や茶の木の中の小室節木の芽たつ雀かくれやぬけ參り聲每に獨活や野老や市の中小米花奈良のはづれの鍛冶が家かげろふや巖に腰の掛けちから黑ぼこの松のそだちや若綠若草やまたぎ越えたる桐の苗出がはりやあはれ勸むる奉加帳雜品川に富士の影なき汐干哉のぼり帆の淡路はなれぬ汐干哉汐行きつくや蛙の居る石の直淡雪や雨に追はるゝ春の笠春干p取りあげて見るや椿のほぞの穴穗は枯れて薹に花咲く椿かな小服綿に光りをやどせ玉つばき花さそふ桃や歌舞妓の脇躍梅さくら中をたるます桃の花伏見かと菜種の上の桃の花金柑はまだ盛りなり桃の花白桃やしづくも落ちず水の色桃千刈の田をかへすなり難波人苗札や笠縫おきの宵月夜妙福のこゝろあてあり櫻麻振落し行くや廣野の鹿の角江東の李由が祖父の懷舊の法事に、春といふ事をのおの經文題のほつ句に、附椿耕洞殘角彌陀の光明其水雪介桃一此木澤お木香上角鷗芝我隣鷺筋節雉三二三支仙正均美濃苔万配土風許闇去風風洞殘角一此木澤浪化秀水蘇乎力芳睡六指來睡麥木香上鷺筋節雉
里々の姿かはりぬ夏木立橙や日にこがれたる夏木立郭公かさいの森や中やどり淀よりも勢田になけがし子規燕の居なじむそらや郭公鳴瀧の名にやせりあふ郭公蜀魄鳴かぬ夜しろし朝熊山しら濱や何を木陰にほとゝぎすほとゝぎす鳴くや湖水のさゝ濁り曉の雹をさそふやほとゝぎす木園中通りけるとや此の句は石山の麓にて、郭俳諧七部集續獲養集卷之附草花二句公野闇沾順禮の吟じて蘆如支曾丈其はつ春やよく仕て過ぐる無調法万歲や左右にひらいて松の陰楪の世阿彌まつりや靑かづら明くる夜のほのかに嬉しよめが君人も見ぬ春や鏡のうらの梅鶯元日や夜深き衣のうら表母方の紋めづらしやきそ始め蓬萊の具につかひたし螺の貝莚道は年のかすみの立所哉朧夜を白酒賣の名殘かな若うぐひすや雜煮過ぎての里つゞきに橘見する羽ぶ冬年孫をまうけて水老父の文に書越し侍れば詩にいへる衣裳を〓倒すといふ事を、歲や手に美しき薄氷旦芭蕉翁全集き哉風土去嵐其芭千山圃尙百少年支睡芳來雪角蕉川蜂箔白歲武仙考夏之部野闇沾蘆如支曾丈其風土去嵐其芭千支荻指圃本雪考良草角睡芳來雪角蕉川考客あるじ共に蓮の蠅おはむ蓮の葉や心もとなき水離れ蘭の花にひた〓〓水の濁り哉藻の花をちゞみ寄せたる入江哉夕がほや裸でおきて夜半過夕がほや醉うてかほ出す窓の穴畫がほや日はくもれども花盛り夏菊や茄子の花は先へさく手のとゞく水際うれし杜若冷汁はひえすましたり杜若山もえにのがれて咲くや杜若白雲や垣ねを渡るゆりの花姫百合や上よりさがる蜘の糸年切の老木も柿の若葉哉此の中の古木はいづれ柿の花ばせを庵の即興題山家之百合三二五虫ぼしのその日に似たり藏開かち栗や餅に和らぐそのしめり我宿はかつらに鏡すゑにけり元日や置きどころなき猫の五器濡れいろや大かはらけの初日影世の業や髭はあれども若夷枇杷の葉のなほ慥か也はつ霞鮭の簀の寒氣をほどく初日哉元日やはつ春や年は若狭の白比丘尼齒朶の葉に見よ包尾の鯛のそり背たら負ふ物を見せばや花の春子共にはまづ總領や藏びらきまだ片なりの梅の花良白此殘嵐亡人芭沾伊賀拙宇多都沾尾支候圃頭考素千此圃沾是竹任山斜前左耕野蔦猿品雪筋香蘭蕉圃龍川筋角圃樂戶行蜂嶺川柳雪童季雖
積みあげて暑さいやます疊哉煤さがる日盛りあつし臺所げにもとは請けて寐冷の暑さかな李盛る見せのほこりの暑さ哉夜凉みやむかひの見世は月がさす凉しさや一重羽織の風たまり()筍にぬはるゝ岸の崩れかな立ちよればむつと鍛冶屋の暑さ哉粘になる蚫も夜のあつさかなあつき日や扇をかざす手のほそり草の戶や暑さを月に取りかへす茨ゆふ垣もしまらぬ暑さかな取〓の內のあつさや棒つかひきかたばみや照りかたまりし庭の隅藪醫者のいさめ申されしに答へ侍る盛竹の子俳諧七部集續猿養集卷之下夏可沾里卓印我素尾張怒乙正万野里我三日月に草の螢は明けにけり蚊遺火の烟そるゝ螢かな里の子が燕握る早苗かな田植歌まてなる顏の諷ひ出しふとる身の植ゑおくれたる早苗哉早乙女に結むでやらむ笠の紐京入や鳥羽の田植の歸る中麁相なる膳は出されぬ牡丹哉姫瓜や袖に入れても重からず朝露によごれて凉し瓜の土一田づゝ行きめぐりてや水の音納螢早ぼたん瓜凉(原本顏にをのと訂正しあり。苗野許支北校訂者記す)重魚闇卯長崎風至芭芭蕉翁全集可里我野許風至芭誠圃東袋苔峯覽風州秀乎荻圃眉荻六考枝行日指七弦曉蕉籠の目や潮こぼるゝはつ鰹蟬鳴くやぬの織る窓の暮時分森の蟬凉しき聲やあつき聲きつと來て啼いて去りけり蟬の聲白雨や中戾りして蟬の聲ゆふ立に傘かる家やま一町夕立やちらしかけたる竹の皮白雨や蓮の葉たゝく池の蘆夕立にさし合はせけり日傘五月雨や腫よごれぬ磯づたひさみだれや蠶煩ふ桑の畑しら鷺や靑くもならず黴雨の中若竹や煙りのいづる庫裏の窓雜蟬五月雨かつを夏附夕立職人の帷子きたる夕すゞみ默禮にこまるすゞみや石の上立ちありく人にまぎれてすゞみ哉いそがしき中をぬけたる凉みかな凉風も出來した壁のこはれ哉生醉をねぢすくめたる凉みかな凉しさや緣より足をぶらさげる腰かけて中にすゞしき階子哉漫興凉しさよ牛の尾振つて川の中石ぶしや裏門明けて夕すゞみ凉しさや駕籠を出でゝの繩手道ばせを葉や風なきうちの朝凉み無果花や廣葉にむかふ夕凉み涼しさや竹握り行く藪づたひばせを翁を茅屋にまねきて深川の庵に宿して三句三二六三二七葉曉乙胡正圃曉苔拙沾芭不出羽曲土正去同游雪支洒万牡長崎重史惟半拾烏州故秀水鳥蘇候圃蕉玉翠芳秀來刀芝考堂乎年翠邦然殘
芭)凛翁全集畫寐して手の動き止む團扇哉杉蟲の喰ふ夏菜とぼしや寺の畑伊勢〓夏瘦もねがひの中のひとつなり如川狩にいでゝしか燒くや麥がらくべて柳鮠文異草に我れかちがほや園の紫蘇蔦夕闇はほたるもしるや酒はやし水せばきところに老母をやしなひて魚あぶる幸ひもあれ澁うちは馬梅むきや笊かたむく日の面重翠澤潟や道付けかふる雨の跡野童蝸牛つの引く藤のそよぎ哉水鷗晋の淵明をうらやむ窓形りに晝寐の臺や簞芭蕉粘ごはな帷子かぶる晝寐哉惟然貧僧のくるしみ、冬の寒さはふせぐよすがなきに、夏日の納凉は扇一本にし三二八杉伊勢〓如風口眞て世上に交はる帷子のねがひはやすし錢五百支考鳥雫鷗莧翠童鷗もれず、しからば、前は寂寞をむねとし、後は風興をもつばらにす、吾が心何ぞ是非をはかる事をなさむ。たゞ後の人なほあるべし。支考評秋之部名月名月にふもとの霧や田のくもりはせを名月の花かと見えて棉畠ことしは伊賀の山中にして、名月の夜この二句をなし出して、いづれか是いづれか非ならむと侍りしに、此の間わかつべからず。月をまつ高根の雲ははれにけり心あるべき初時雨哉と圓位ほふしの辿り申されし麓は、霧橫はり水ながれて、平田渺々と曇りたるは、老杜が、唯雲水のみなりといへるにもかなへるなるべし。その次の棉ばたけは、言葉麁にして心はなやかなり。いはゞ今のこのむ所の一筋に便りあらむ。月のかつらの宮はなるひかりを花とちらすばかりにと、おもひやりたれば花に〓香あり月に陰ありて、是も詩歌の間を俳諧七部集續猿養集卷之下はせを名月の海より冷える田蓑かな明月や西にかゝれば蚊屋のつきもの〓〓の心根とはむ月見哉二つ有ばいさかひやせむけふの月名月や長屋の陰を人の行く明月や更科よりのとまり客明月や灰吹捨つる陰もなし中切の梨に氣のつく月見哉名月や草のくらみに白き花明月や遠見の松に人もなし拜む氣もなくてたふとやけふの月明月や寢ぬ所には門しめず三三九酒如露智闇凉不配左圃山風堂行沾月指葉玉カ柳水蜂國
をみなへし鵜坂の杖にたゝかれな女郞花ねびぬ馬骨の姿かな細工にもならぬ桔梗のつぼみ哉朝露秋たつや中に吹かるゝ雲の峯粟ぬかや庭に片よる今朝の秋鷄頭の枯れのぼる葉はものうしや鷄頭花百合は過ぎ芙蓉を語る命哉弓固とる頃なれや藤ばかま折り〓〓や雨戶にさはる荻の聲鷄頭や雁の來る時猶あかしさよ姫のなまりも床しつまね花一すぢは花野にちかし畑道秋立贈芭蕉菴俳諧七部集續猿養集卷之下の色透通す桔梗哉ちる事しらぬ日數哉草秋待宵の月に床しや定飛脚舟引の道かたよけて月見哉飛入の客に手をうつ月見哉芥子蒔と畑まで行かむ月見哉明月や何も拾はず夜の道明月や聲かしましき女中方場に居て月見ながらや莚機名月や里のにほひの靑手柴山鳥のちつとも寐ぬや峯の月柿の名の五助と共に月見哉二見まで庵地たづぬる月見哉明月にかくれし星の哀れなり老の身は今宵の月も內でみむ名月や四五人のりし船ぶね淀川のほとりに日をくらしてひ立ちけるにいせの山田にありて、芭蕉翁全集景丈正野丹利木宗如空支かりの庵をおも泥重需桃草秀荻楓合枝比眞牙考芹友笑雪至芭万史風支烏馬濁·隨柳左露景丈正野丹利木宗如空支芝曉蕉乎邦麥浪栗莧子友梅次川桃草秀荻楓合枝比眞牙考竈馬や顏に飛びつくふくろ棚朝顏の莟かぞへむ薄月夜風毎に長くらべけり蔦かづら山人の晝寐をしばれ蔦かづら蔦の葉やのこらずうごく秋の風蟷螂や腹をひやすか石の上蜻蛉や何の味ある竿の先みの蟲や形りに似合ひし月の影秋の夜や夢と鼾ときり〓〓す(右の句後にて挿入せるものらしく思はる。校訂者記す)火の消えて胴にまよふか蟲の聲ぎほうしの傍に經よむいとゞ哉蟲朝がほにしをれし人や髮帽子水も有りあさがほたもて錫の舟あさがほの這うてしだるゝ柳哉朝がほ附鳥三三一女可杉桃加賀山中荷蔦探杜水正北其風闇田上尼雫丸若鷗秀枝南角麥指下妖兮朝風七夕をいかなる神にいはふべき船形りの雲しばらくや星の影星合を見置きて語れ朝鳥更行くや水田のうへの天の川七いざよひは闇の間もなしそばの花十六夜はわづかに闇のはじめ哉川上とこの川しもや月の友月かげや海の音きく長廊下蔦かづら月まだたらぬ梢哉露おきて月入るあとや塀のやね姨捨を闇にのぼるやけふの月深川の末、秘してつたへ侍りしを思ひ出でゝ家に三老女といふ事あり。てやタ薰 姫の五本松といふ所に船をさし團もち三三〇亡父將監が乙沾東凉惟猿同芭牧里馬沾州圃潮葉然雖蕉童東莧圃杉桃加賀山中荷下妖兮其風闇田上尼角麥指乙沾東凉惟猿同芭州圃潮葉然雖蕉
そのつるや西瓜上戶の花の種百なりていくらが物ぞ唐がらし肌寒き始めにあかし蕎麥の莖一霜の寒さや芋のずんど刈り居りよさに河原鶸來る小菜畑山雀のどこやらに鳴く霜の稻早稻刈つて落つきがほや小百姓蕎麥はまだ花でもてなす山路哉さまたげる道もにくまじ疇の稻木の下に狸出むかふ穂懸哉起しせし人は迯げゝり蕎麥の花農寢がへりに鹿おどろかす鳴子哉尻すぼに夜明の鹿や風の音の孫に逢ひて大師河原にあそびて、いせの斗從に山家をとはれて俳諧七部集續猿蓑集卷之下業樽次といふもの沾木惟同支斗乃芭如買車一風圃節然考從龍蕉雪山酌睡獨り居て留主ものすごし稻の殿稻あれ〓〓て末は海行く野分かなふんばるや野分にむかふはしら賣おのづから草のしなへを野分哉松の葉や細きにも似ず秋の聲何なりとからめかし行く秋の風雀子の髭も黑むや秋の風秋風や二番たばこのねさせ時老いの名の有りともしらで四十雀粟の穂を見あぐる時や鳴く鶉鶺鴒や走り失せたる白川原雁がねにゆらつく浦の苦屋哉ぬけがらにならびて死ぬる秋の蟬蓮の實に輕さくらべむ蟬の(やをのと訂正せるものなるべし。校訂者記す)秋妻風芭蕉翁全集空から少年猿九圃風·支式游芭支氷馬丈示沾如買車一風少年猿九圃風·支式游圃考從龍蕉雪山庸酌睡東雖節燕國考之刀蕉考固莧草峯殘る蚊や粟がらの小家つくらむ松の中五六十海老つひやして殿一つ行く秋や手を廣げたる栗の毬行く秋を鼓弓の糸の恨みかな廣澤や背負うて歸る秋の暮借りかけし庵の噂やけふの菊むかばきやかゝる山路の菊の露煮木綿の雫に寒し菊の花ゑぼし子やなど白菊の玉牡丹翁草二百十日も恙がなし(右の句後にて入れたるものゝ如し。あら鷹の壁にちかづく夜寒哉雜暮題畫屏菊秋秋三三三忘れ時出る秋の雨はぜ校訂者記す)畦團之芭乙野丈〓支濁蔦口二友止友道蕉州水草峯考子雫後屋の塀にすれたり村紅葉松茸やしらぬ木の葉のへばりつく松茸や秋空や日和くるはす柿の色鹿あり。原本(いせの斗從に山家をとはれて。はつ茸や鹽にも漬けず一盛りつぶ〓〓と箒をもるゝ榎實哉炭燒に澁柿たのむ便りかな團栗の落ちて飛びけり石ぼとけいなづまや闇の方行く五位の聲明ぼのや稻妻戾る雲の端稻妻や雲にへりとる海の上楓伊賀の山中に阿叟の閑居を訪らひて木實校訂者記す)都にちかき山の形り附菌三北芭以上二行を消し惟沾重洒玄爲芭土宗鯤蕉然圃翠堂芭乙野丈〓支濁蔦北芭芭土宗止友道蕉州水草峯考子雫鯤蕉圃翠堂虎有蕉芳比
芭蕉翁全集身ぶるひに露のこぼるゝ靱哉荻子更る夜や稻こぐ家の笑ひ聲萬乎桑門柿の葉に燒みそ盛らむ薄箸宗波本間主馬が宅に、骸骨どもの笛鼓をかまへて能する處を畫きて、舞臺の壁にかけたり。まことに生前のたはふれなどは、このあそびにことならむや、かの觸體を枕として、終に夢うつゝをわかたざるも、たゞこの生前をしめさるるものなり稻妻やかほのところが薄の穗ばせを三三四冬冬之部時雨附霜○この頃の垣の結目やはつ時雨しぐれねば又松風の只をかずけふばかり人も年よれ初時雨一時雨またくづをるゝ日影哉初しぐれ小鍋の芋の煮加減平押に五反田くもる時雨哉柴賣やいでゝしぐれの幾廻り椀賣も出でよ芳野の初しぐれ穴熊の出ては引込む時雨かな更くる夜や鏡にうつる一しぐれ石に置いて香爐をぬらすしぐれ哉柿包む日和もなしやむらしぐれ高みよりしぐれて里は寢る時分浮雲をそなたの空におきにしの之野北芭露馬野闇空爲鷄野露里坡枝蕉沾莧明指牙有口荻川圃ばせを日影よりこそあめになりけれ沖西の朝日くり出す時雨哉沾はつ霜や犬の土かく爪の跡北ひとつ葉や一葉々々のけさの霜支元祿辛酉之初冬九日素堂菊園之遊重陽の宴を神無月のけふにまうけ侍る事は、その頃は花いまだめぐみもやらず、菊花ひらく時則ち重陽といへるこころにより、かつは展重陽のためしなきにしもあらねば、なほ秋菊を詠じて人々をすゝめられける事になりぬ。菊の香や庭に切れたる履の底芭柚の色や起きあがりたる菊の露其菊の氣味ふかき境や藪の中桃○八專の雨やあつまる菊の露沾何魚のかざしに置かん菊の枝曾菊畠客も圓座をにじりけり馬俳諧七部集續猿蓑集卷之下柴桑の隱士、無絃の琴を翫びしをおもふに、菊も輪の大ならむ事をむさぼり造化もうばふに及ばじ、今その菊をまなびて、おのづからなるを愛すといへども、家に菊在りて琴なし、かげたるにあらずやとて、人見竹洞老人、素琴を送られしより、是を夕べにし是を朝にして、あるは聲なきに聽き、あるは風にしらべあはせて、自らほこりぬ。うるしせぬ琴や作らぬ菊の友素草附木水仙や練塀われし日の透間曲なほ〓く咲くや葉がちの水仙花氷水仙の花のみだれや藪屋しき惟范蠡が趙南のこゝろをいへる、山家集の題に習ふ。一露もこぼさぬ菊の氷かな芭三三五圃鯤考堂蕉角隣圃良莧曲翠氷固惟然山家集2.芭蕉
鷦鷯家はとぎるゝはだれ雪雪あられ心のかはる寒さ哉朝こみや月雪うすき酒の味初雪や門に橋あり夕まぐれ雪自由さや月を追行く置火燵侘しさは夜着を懸けたる火燵哉埋火や壁には客の影ぼふし埋水仙や門を出づれば江の月夜何事も寐入るまでなり紙ふすまあら猫のかけ出す軒や冬の月喰ひものや門賣りありく冬の月かくふつや腹をならべて降る霰冬月越の川にのみある魚なり。杜父魚は河豚の大さにて水上に浮ぶ、俳諧七部集續猿養集卷之下火附衾祐タ同其洞桃少年芭支小丈里拙凩や背中吹かるゝ牛の聲木がらしや色にもみえず散りもせず野は枯れてのばすものなし鶴の首草枯れに手うつてたゝぬ鴨もあり冬枯れに去年きて見たる友もなし牛の行く道は枯野のはじめ哉枯れはてゝ霜に耻ぢずや女郞花はひるより先づ取つてみる落葉哉麓より足さはりよき木の葉哉冬川や木の葉は黑き岩の間星さえて江の鮒ひそむ落葉哉おもひなし木の葉ちる夜や星の數山茶花も落ちてや雪の散り椿冬梅のひとつふたつや鳥の聲山茶花は元より開く歸り花本柳坊宗比の庵をたづねて木葉附冬枯芭蕉翁全集凩祐タ同其洞桃少年芭支小丈里風智支利乃桃杉伊勢枳惟露沾露土車甫菊角木先蕉考春草圃侯斤月考牛龍醉風道風然沾德笠芳庸煤はきやあたまにかぶるみなと紙煤はきや鼠追ひこむ黃楊の中狼を送りかへすか鉢たゝき娵入の門も過ぎけり鉢たゝき鉢たゝき干鮭賣をすゝめけり食時やかならず下手の鉢叩夜神樂に齒も喰ひしめぬ寒さ哉伊賀大和かさなる山や雪の花髮剃は降來る雪か比良の嶽思はずの雪見や日枝の前後(原本米鸞を黃逸と訂正しあり。煤掃神片壁や雪降りかゝるすさ俵ふたつ子も草鞋を出すやけふの雪雪垣やしらぬ人には霜のたで鉢たゝき附餅つき樂三三七校訂者記す)一鹽にはつ白魚や雪の前見え透くや子持ひらめのうす氷うか〓〓と海月に交るなまこ哉杓む汐にころび入るべきなまこ哉たつ鴨を犬追ひかくるつゝみ哉氅につゝみてぬくし鴨の足入海や碇の筌に鳴く千どり小夜ちどり庚申まちの舟屋形追ひかけて電にころぶ千鳥かな塵濱にたゝぬ日もなし浦千鳥惠比須講鶩も鴨になりにけりえびす講酢うりに袴着せにけりこがらしや藁まきちらす牛の角木枯や刈田の畔の鐵氣水鳥夷のとのうみを見て附いを講三三六赤井口黃殘沾許馬路史配陽丈圃支蔦杉岱車利亡人乍芭闇丈蔦句利芭塵惟逸香圃六莧草邦力和草吟考雫風水庸雪木蕉指草雫空合蕉生然
菊刈や冬たく薪の置處爼板に人參の根の寒さ哉山陰や猿が尻抓く冬日向火燵より寢に行く時は夜半哉霜ばしらおのがあげしや土龍寒聲や山伏村の長つゝみ桶の輪のひとつあたらし年の暮引結ぶ一つぶ銀やとしの暮打ちこぼす小豆も市のしはす哉年の市誰れを呼ぶらむ羽織どの袴着ぬ聟入りもありとしの暮大年や親子たはらのさし荷ひ猿も木にのぼりすますや年の暮賣石やとつてもいなずとしの暮門砂やまきてしはすの洗ひ髪こねかへす道もしはすの市のさま歲暮もち搗の手傳ひするや小山伏餅つゝやあがりかねたる鷄のとや餅つきや火をかいて行く男部屋煤掃や折敷一枚ふみくだく煤はきやわすれて出づる鉢叩才覺な隣りのかゝや煤見舞附節季候蕉全集衣配俳諧七部集續猿蓑集卷之下杉沾雪圃仙猿荻正其李萬車草里曾馬嵐岱惟闇美濃馬風圃谷芝仙杖雖子秀角由乎來士東良佛蘭水然如莧やま伏や坊主をやとふ魂祭寢道具のかた〓〓やうき魂祭食物もみな水くさし魂まつり灌佛や釋迦と提婆は從弟としちる花や佛うまれて二三日灌佛やつゝじならぶる井戶のやね貧福のまことをしるや涅槃像山寺や猫廻り居るねはん像ねはん會や皺手合はする珠數の音涅槃像あかき表具も目にたゝず甲成の夏、魂のもとより消息せられければ、灌涅祭佛槃大津に侍りしを、三三九舊里にこのかみ沾去嵐之不曲山不芭沾圃來雪道玉翠井の水のあたゝかになる寒さ哉植竹に河風寒し道の端小屏風に茶を挽きかゝる寒さ哉裁屑は末の子がもつ衣配り節季候の拍子をぬかす明家哉節季候や弱りて歸る藪の中漸うに寢所出來ぬ年の中餘所に寢てどんすの夜着の年忘れ盜人に逢うた夜もあり年の暮りし。一しきり鳴いて靜けし除夜の鷄かゝることもいひ殘して、此句は圖司呂丸が、濱荻に氣を結ばせてとしの暮天鵝毛のさいふさがして年の暮て、雜冬伊勢にまうで侍りければ、羽ぐろより京にのぼると三三八李土斜利山桃小年尙土支芭今はなき人とはなそのとしの暮惟下芳嶺合蜂後白芳考蕉然釋〓之部附追善哀傷之不曲山不芭沾李土斜利山桃小年尙土支芭惟道玉翠蜂撤蕉圃下芳嶺合蜂後白芳考蕉然
芭蕉翁全集歸りて盆會をいとなむとて家はみな杖にしら髪の墓參り。悼少年二句かなしさや麻木の箸もおとななみその親をしりぬ其の子は秋の風鎌倉の龍口寺に詣でゝ首の座は稻妻のする其時かはか原や稻妻やどる桶の水御影講めいかう柚も柿もをがまれにけり御影講臘八腸をさぐりて見れば納豆汁何のあれ彼のあれけふは大師講雜題洛東の眞如堂にして、の時涼しくも野山にみつる念佛哉三四〇あると無きと二本さし鳬けしの花けし畑や散りしづまりて佛在世ものゝふに川越間ふや富士詣手まはしに朝の間凉し夏念佛食堂に雀鳴くなり夕時雨旅之部智乙重野支月州翠坡考芭蕉惟支然考木支節梁送別元祿七年の夏、りて麥ぬかに餅屋の見世の別れ哉別るゝや柿くひながら坂の上惟許六が木曾路におもむく時旅人の心にも似よ椎の花芭留別洛の惟然が、宅より古〓に歸る時鼠ども出立の芋をこかしけり丈ばせを翁の別れを見送沾圃荷惟今然許如六行芭蕉善行寺如來開帳去來草亡人文臺の扇ひらけば秋すゞし呂丸我が蒲團いたゞく旅の寒さかな沾圃常陸の國あしあらひといふ所に行暮れてやどり求めむとせしに、其の夜はさる事ありとて宿をかさざりければ、-夜別時の軒の下にかゞまりふして緣に寐る情や梅に小豆粥支考はつ瓜や道にわづらふ枕もと同元祿三年の冬、粟津の草庵より武江におもむくとて、島田の驛塚本が家にいたりて宿かりて名をなのらする時雨哉はせを鮎の子の白魚送る別れ哉芭蕉甲斐のみのぶに詣でける時、宇都の山邊にかゝりて年よりて牛にのりけり蔦の路木節稻妻や浮世をめぐる鈴鹿山越人にべもなくつひたつ蟬や旅の宿野徑出羽の國におもむくとき、みちのくのさかひを過ぎてそのかみは谷地なりけらし小夜砧公羽十團子も小つぶになりぬ秋の風許六大名の寐間にもねたる夜寒哉同くまの路くるしさも茶にはかつへぬ盆の旅曾良つばくらは土で家する木曾路哉猿雖明ぼのはたちばなくらし旅姿我峯煎りつけて砂路あつし原の馬史邦回國の心ざしも漸々いせの國にいたりて俳諧七部集續猿蓑集卷之下考公許同羽六はせを三四一
芭蕉翁全集續猿蓑は芭蕉翁の一派の書也。何人の撰といふ事をしらず。翁迁化の後、伊賀上野翁の兄、松尾なにがしの許にあり。某懇望年を經て、漸う今歲の春本書をあたへ世に廣むる事をゆるし給へり。書中或は墨けしあるひは書入等のおほく侍るは、草稿の書なればり。一字をかへず一行をあらためず、その書其の手跡を以て直ちに板行をなす物也元祿十一寅五月吉日ゐづつ屋庄兵衞書庄兵衞書續七部集
芭蕉翁全集三四四續七部集序俳書數萬卷のなかにも、ばせを七部と稱して、正風にこゝろざすともがら、几上にのせずといふことなし。されど、春の日に翁の連句なきことをはしたなしといへるもありけり。こゝに續七部集なる璧に玉をつらねて、一毛のきずなしといはむ。まことに龜鑑となるべきものなり。されば、この道をしたふ人々ら、これをまくらとして、夢にだも古翁にまみえん事をねがふべきものならんかし。寛政七乙卯冬三四四芭蕉堂闌更掛乞に戀のこゝろを持せばや翠簾にみぞるゝ下賀茂の社家(3)寒徹す山雀籠の中返り正氣散のむ風のかるさよ目の張りに先づ千石はしてやりてきゆる斗りに鐙おさふる踏みまよふ落花の雪の朝月夜那智の御山の春遲き空弓はじめすぐり立てたる息子共荷とりに馬士の海へ飛びこむ名町中の鳥居は赤くきよんとして吹きもしこらず野分しづまる革足袋に地雪踏重き秋の霜伏見あたりの古手屋の月玉水の早苗ときけば懷かしや我が跡からも鉦鼓うち來る山伏を切つてかけたる關の前蕉堂蘭水堂蕉水蘭蕉堂蘭水堂蕉水蘭蕉俳諧深川集壬申九月に江戶へくだり、ことしきさらぎのはじめ、しきをとく芭蕉庵に越年して洛にのぼりてふろ洒堂深川夜遊靑くても有るべきものを唐辛子提げておもたき秋の新ら鍬暮の月槻のこつぱかたよせて坊主がしらの先にたゝるゝ松山の腰は躑躅の咲きわたり焙爐の炭をくだす川舟ウ祝ひ日の冴えかへりたる小豆粥ふふすま摑むで洗ふ油手俳諧深川集芭蕉洒堂嵐蘭岱水堂蕉水蘭
長持に注連ひらめかす花の旅駿河の田植ゆり輪いたゞく皆ばら〓〓祭見る向ふの見せの竹すだれ下着の紅に顏のかゞやく雲雀鳴きたつ聲も濁らず糸の塵ほそき指にて擇分くる雨がたき空に明澄む鰯雲節季薪一駄なくても年は取られけりあの男やらじと路をたてふさぎひやゝかに中稻の花を吹きおとし迎へかねたる駒のくたびれ出かゝりて茶の湯の客を誘ひ合ひ畠山の內裏の歌もしまざるをへだつ吉候さむき雪の編笠とひらく傘も田岡崎ウはごあ雉子のほろゝにきほふ若草米五升人がくれたら花見せむ莚片荷に換揚げて水田も暮るゝ人の聲ごを抱へこむ土間のへつゝひ不斷たつ池鯉鮒の宿の木綿市たてこめてある道の大日乘物で和尙は禮にあるかるゝつきあひさらり〓〓と〓降るなり付合は皆上戶にて呑みあかし鎧もたねばならぬ世の中芭蕉翁全集鯨さ旨げゆく馬取の卸脊乘行く霜ふみて冴えそむる鐘ぞ十夜の場の月しのび返しにのこる橙草庵の留主だい~俳諧深川集杉曾洒風良堂波菊良堂風隣波良菊風堂波隣菊良堂水蘭堂蕉蘭水蕉堂水蘭堂名能因が身は留まらぬ雁の聲陽釋迦に讃する壁の掛もの花の春小田原陣の前の年壹步いれたる細布はなさぬ玉子吸ふ顏もをかしき濁り酒蒲團の時宜のあはれ秋の夜月出でゝ八つの太鼓を打ち仕廻ひ太刀なぎなたの光る塀ごし五六人天臺坊主いろめきて地を摺るばかり駕籠の振袖蓮の葉はちひさき岸の杜若其のまゝつくる鱠一皿中形の半着ものも旅馴れてえだ垂さがる松は久しき人聲も御藏出る日のにぎやかに朝のいとまの提たばこうる炎もえてかはる川筋三四六靑鷺の榎に宿す露の音相國寺牡丹の花のさかりにて築地のどかに典藥の駕籠乗掛の挑灯しめす朝颪東椀の蓋とる蕗に竹の子綿ふたりの柱杖あと先につくむかし咄しに野郞泣かする月の色氷ものこる小鮒賣鷦鷯階子の鎰を傳ひ來て洗足に客と名の付く寒さ哉きぬ〓〓は宵の踊の箔を着て西衆の若黨つるゝ草まくら春は其のまゝなゝくさも立つ追手の月ぞ澄みきる館升、双二日とまりし宗鑑が客、할ぶ冬む下戶は亭主の仕合なるべし。〓三四七きの里煎茶一斗米五洒嵐芭許堂蘭堂六蘭蕉六堂蕉蘭堂六蘭蕉六宗桃石風良波隣菊風堂波隣菊良堂風筆波隣菊
名〓げに注連をはゆる社家町兒にみやこをば去年の行脚に思はれて苣の二葉のもえてほのめくみよしの房の双ぶ川口西日入る花は庵の間半床水つきの稻のしづくに肩重し鳥のなみだか枇杷のうすいろ酒で乞食の成りやすき月日盛りに鯔賣る聲を夢ごゝろ行く雲の長門の國を秋立ちて鎧凡卑して鎖すともなき旅の宿咲初めて忍ぶたよりも猿すべりこ露に朽けん一腰のばら〓〓と錢落したる石のうへ細かなる雨にもしぼる蝶のはねか俳諧深川集ESままたるゝ釋迦堂のくれなぐるさ空坊のく)錆緣名こもそう奉行の鍵に誰れもかくるゝ今はやる單羽織を着つれ立ち高觀音にから崎を見るうつすりと門の瓦に雪降りて先づ積みかはるとしの物成り火とぼして砧あてがふ子供達月夜に髪をあらふ採出し馬方を待戀つらき井戶の端よごれしむねにかゝる麥の粉朝露に濡れわたりたる藍の花又まねかるゝ四國ゆかしきうつり行く後撰の風を讀興し今は敗れし今川 の薦僧の師に廻りあふ春の末塚のわらびのもゆる石原村は花田づらの草の靑みたて汐さしかゝる星川の橋芭蕉翁全集ず3%家合梁堂竹奚蘭蕉堂合奚竹梁堂蘭水堂合蕉蘭堂六蘭蕉六堂蕉蘭堂六蘭 蕉堂六蕉暮れかゝる日に代かふる雁苅かぶや水田の上の秋の雲す。草の末嵐竹亭を訪ひて、友をもよほしそのあとをつぐ九月廿日あまり、興のたえん事ををしみて、三九九翁に供せられて、卒に十句を吟洒嵐洛の舊堂淺花ざかり御室の路の人通り太刀持ばかりふたごゝろなき谷つたひ流しかけたる竹筏上毛吹かるゝ白ほろの鷲盆に物音も簾靜かにおろしこめ麥と菜種の野は錦皮剝の物煮て喰ふ宵の月は倍え黃みたる門前の坂算ふる丸藥の數也掛菜春めく打大豆の汁綠さす六田の柳掘植ゑてあらたに橋をふみそむる也雞のたま子の數を產みそろへ大戶をあけに出づる裸身旅人の咄しに月の明けわたり秋の野馬のさま〓〓の形り山雀の笠に縫ふべき草もなし箏口切に堺の庭ぞなつかしき見支梁亭口切たる藪のはつ霜初花に伊勢の蚫のとれそめて釣る日はあかう出る二月朔日段垣に木やり聞ゆる堀の内樟若やぐ宮川のかみ三四八洒嵐堂竹芭也桐岱洒利嵐支蕉蕉梁竹奚水堂合蘭梁合奚梁蘭堂竹奚蕉蘭蘭蕉六堂
花吸ふと鳴く鵝のひよ〓〓と鼠の穴をふさぐ二ン月春先に田の荒仕事隙明きて母とむすこがてゝをあなづる錢の利をしめて百づゝならべ置き伏見の戀を晩鐘にきく深艸はをなごばかりの下屋敷鮒ふごの鮎をあぐる染付晴れかゝる節句の朝の天氣合赤手すりたる馬士の詫言新簀子先づ二疊敷く彌生來て梟の鳴きやむ岨の若菜かなおぼろの月の椿つら〓〓松の中俳諧深川集らか花の影射來す鏑防ぐらん懷にこぼす淚のやゝ寒き鎧にはねのあがる春雨鷄とつていたゞく三方の熨斗場小作りな內儀かしこき初あらし餅つきの釜まはし出す雪の上水卷藁に肩休まするはづし弓窓を明くれば壁に入る虹さし汐の門の柱に打ちよせてしばし見送る我が客の笠糞も鳴くなと月待の戀に古戰場月も靜に澄みわたり衣うつ麓は馬の寒がりて(以下前書の意味なり。仙得たる房州の傳手草んかさなる鰤の桶漬け芭蕉翁全集きぶる道のかぶらふせ校訂者誌す霧き)雨すむ夕べの鼠とる犬曲同洒翠堂京同去野游探臥正昌膳所昌嵐北芭同翠同堂同翠同堂同翠房來徑刀志高秀房蘭鯤蕉竹堂蘭鯤蕉名何を心に行々子鳥鳴く笠縫の里とみえたる竹の皮追ひおろす犬も疊の上に寢て筏に切りし大根の湯煮通天の紅葉もちらす初時雨ところてん喰ふ小割立じままだ暮れぬうちより藥師押合うて戀もがさつに城下の月頰當をはづして月を打詠め惡菊やりて若衆々々となぶらるゝ山雀籠のかさま〓〓かはる月額の形り世の中は手間もいらずに年寄りてしどろに生えて赤き雞頭侘しさや甲斐の夕氣の小麥餅畫は衣をつゝむ風呂敷七兵衞かげきよが秋る三五一折釘{里裏のすゝみ起せば去年の雪長芋鎌入れぬ山は公事なき花の春女夫聞えよき加賀の藏本ゆるさるゝ二軒並んで家のあたらし枝作る松に階子をさしかけて時雨に馬を下りる冬の日操おりの腰にさげたる操の總たばこ飮む子の北座淋しき六月は綿の二葉に麥刈りて太鼓聞ゆる源太夫の宮老僧の帽子つれたる秋の昏風に實のいる賤が破れ戶暖に遊ぶ狐の耳かきての芽のもゆる赤土かたぶく木庵の燒付くる蛤茶屋の朝の月池の小隅に芹の水音三五〇禪野臥正游探同車同之大阪同素同景同史同野堂同翠同堂同翠同堂同翠同堂同翠同堂徑高秀刀志唐道牛桃邦童
芭蕉翁全集待宵の身をもだえたる四ツの鐘ほして干かねる絹の下帶逗留の內をあかれて口をしき門に立添ふたそがれの空森の花甍見えたる增上寺潮に音なき鳥の囀り三六、佛名や饅頭は香の薄けふり洒歲昏腹中の反古見分けん年のくれ素餘興としわすれ盃に桃の花書かん洒堂膝にのせたる琵琶のこがらし素堂宵の月よく寢る客に宿かして芭蕉(梅人の盡力に依り、寛政二年に再版せしものには、右餘興歌仙を繼ぎて、梅人、鼠十、梅林、蒼谷、魚葉、梅府等の附合あり。されどこゝに用なければ除けり。校訂者誌す。)同翠同堂同翠洒堂素堂忘年書懷素堂亭節季候節季候を雀のわらふ出立かな餅春餅つきやあがりかねたる鷄の泊屋衣配う文箱の先づ模樣見る衣くばり佛名芭蕉嵐蘭曾良俳諧深川集終この言草はこしのしら根の梺、鶴來の里の楚常子、哥林に樂しむあまり、かつ實を拾ひ、すき人どもに味はせん事をおもひしかど、その秋のはじめかし、世を夢になしぬ。跡に一つゝみのものあり。立花氏北枝是を袖にして、猶しば栗のゑめるも、どんぐりのころ〓〓せしもとりあつめて、我が住むかたの山の名にしいふ卯辰集とはいふなるべし。桑門句空書書
鶯やうは毛しをれて雨あがりけふの梅勝ちたり右も椿かなさりながらむめにはじまる月夜哉駕籠よりは牛の上から梅のはなおどけずとをらばをれかし梅の花酒毒だちに障らぬ梅のにほひかな手鼻かむ音さへ梅の匂ひ哉蝶鳥にあぶなき梅の雫かな匂ふらし梅さく里の牛の角寒しやと歸る春野の風ぐもりにが〓〓しいつ迄嵐ふきのたう氷とけて鮒うく池の東かなのこる雪下部あまたにあぐまれし殘雪を見渡す病中に春さむきとし卯辰集卷第一興貌の陽氣也曙のをしや春たつ夷がしまはる立つやさすが聞きよき海の音元日に誰れか越えゆく不破の關薦を着て誰人います花の春來るとしのおもゆにつなぐ命哉東君また身の恥ゆるしたびにけり春立つや山家に入つて袖の數けさの春は李白が酒の上にあり日の春をさすがに鶴の歩み哉江戸にて湖水のほとりに春を迎へて病にふして我が山里に春をむかへて卯辰集卷第翁集春同江戶尾張曾胡野萬秋之坊良及水子七尾勤牧小翁釋秋之坊楚常李翁句宗岫秋之坊曲空鑑唐譽芬貞杉其東尒風芳文童春室風角うつむいてきけば草なるひばり哉雲雀より上に休らふ峠かな山地の遊びに出づる花表かな鈴鹿の社にてひとたびは寢てをがまるゝ涅槃哉涅槃像人はまづ見る阿難哉木つたひてましらのころぶ柳哉蝶の羽におし分けらるゝ柳かな雪はぢく柳やいそぐ淺みどり白椿ちるや岩根のうつせ貝栗持ちておもひをのぶる木の目哉いたづらに柿接いで居る彼岸哉種ものや池にひたりて春の水鹽河〓やはるも蛙のなかぬ時白魚や海におし出すにごり水潮さかひしろ魚のかぎる風情ありうぐひすのはまり過ぎたる山家哉三五五雪消えてあはれに出でし朝日塚木曾義仲の塚に詣で麥のためまづ風ゆらぐ雪の上十錢を得て芹賣の歸りけり七種のみくさは摘みし雪野かなしら雪の若菜こやして消えにけりかれ薄がさくさと摘むなづなかな藪の中のなづなは人にあはぬ也若殿を抱いてまたうつ薺哉たゝくにも君を忘れぬ薺哉卯杖とはうさかの神の切りにけん正月やかならず醉うて夕附夜のどかさに又かりそむる酒債哉四日には寢てもや春の花心山は富士野はむさしにて年とりぬ越中の國字坂の神祭の事におもひより萬牧北漁子童枝川京句翁風小松松住宮腰鶴來石動李遲楚蘇致薫李普楚越梅字北尼智大津尼美食女北小四智英牧紅句空喬東櫻常守〓煙東人常人雫白枝月枝春睡月之ん童尒空
手にとれば猶うつくしき菫かな羽をれし蝶あゆみよるすみれ哉草をたつ小蝶や風の一なびき海棠にゆらりと來たる胡蝶哉とらへても放したうなるつばめ哉川舟の跡に鳴來るつばめ哉靑柳に追出されたる燕哉蛙子のおよぎ習ひし古江かな飛びとんで穴へ落ちたる蛙かなあまかへる柳を落ちて益もなし笹の家のひくさや空になく蛙うち返し寢られぬ背戶の蛙哉鳴出でゝみななく小田のかはづ哉まだ鳴くか曉過ぎの江の蛙はる雨や木のよごれとる下雫もるまでは庵にしらじ春の雨卯辰集卷第一夕ぐれの籬に蝶のたつを見をりて孤雨紅燕普宮腰-句雨鶴來魚其流字孤宇石動雨一糸きれて蛸はしら根を行衞哉陽炎を見はるやものゝくらきほど磯の家の菊植分けむ歸る膓しづかさや朧は月の香のやうに砂よりや霞ゆり出す岸の浪朧粟ケ崎の漁家にてかげろふや弓張月のくもるほど月羽こく鴈も旅寢哉橋衍や日はさしながら夕霞きじ鳴いて跡は木を伐る響きかな屋腰より雉子鳴きゆく山路哉火屋ひとつ鳴殘したるきヾす哉鳴く雉子やみどりのび立つ小松原かけはづす鷹より落つるひばり哉若草に鳩をかくしてやなく雲雀獨りたゞみだれ初めてや鳴く雲雀ひとつともふたつともきく雲雀哉芭蕉翁全集桃山中少人小松楚蕉春貞漁譽北蘇四斧梅其南秋之坊元葉常下幾善川風枝守睡ト露糟甫之舟邑尒子人草空柏素糟志路舟笑白邑なりたるを元祿三のとしの大火に庭の櫻も埃りに湖や心はしりて四方の花四方より花吹入れて鳰の海花や雲橋よりわかる道の數寢に來るな花のちる迄山烏中々に花のつよみや深みどり雨ほち〓〓ふらじとて行く花見哉花に只來てはほしがる庵哉梨一木菜の花二間四方かな草庵をとむらひて菜の花に虻しづか也朧月なの花や幾野かゞやく朝日影里の晝菜の花深し鷄の聲隱れ家や食喰ひさして摘む五加木おもしろき盜みや月のうこぎ垣寢る所ありて行くらめたつ小蝶松住北翁柳浮素孤漁春其拾同牧李北枝川葉洗舟川幾春雨や淋しきやうで梅柳遍昭の蓑さへもたじ春の雨秋之坊によす雨降つていつ迄ぬるゝ木蓮花ひとつ家のもゝぞ野道の春の色ふつゝかに靑葉や交じる桃の花曙やことに桃花の鷄の聲手を上げてうたれぬ猫の夫かななつかしき人のなつけん猫のつまくさの芽のうへに干しおく莚かな草もえて土のほろつく野澤哉たんぽゝや芹生小原のまがひ道七くさにあはでさかりや鼓草春の野に袂も袖もつくし哉頭陀袋うち明けて選る土筆哉君いくら我れはやつくし五七本わすれめや胡葱膾浦小鯛三五六三十七尼言破雨其知女和不魚津牧何大坂和須李牧其拾同牧李北漁牧川葉洗舟川幾糟葉童東枝川童蕗瓶邑角月之的童處平之東笛
家つとや包みこぼれし藤の花木々は藤春の柳を尋ねける柿の花蟻のちからを斗るかな雲に只蠶がひする人は古代のすがたかなやま吹に干しつゞけたる手染かな山ぶきやをる手をはぢく瀧の露黄なる花は皆やまぶきか川向ひ碁笥かくす寺は自慢のさくら哉此の儘に罪つくる身の日は永し嚴しまよごれぬ足を春の浪空大豆の花に初瀨の道もなし餞山吹やよりむく岸の舟はやし西大寺にて卯辰集卷第一いづく島に詣でしころ初瀨にまうづとて烏の巢だつわかれ哉別またも見る闇かは花のあかりある花も見ず止長にかゝる碁打哉手折るとて花にかり着の袖長し獺やちらぬ花ふむよし野川醉臥して次手に花を二日見む渦のまくはなとめぐれる鱗哉提灯にちりかゝる迄花見哉花咲いて猶いかめしき二王かな何人ぞもとゆひ拂ふ花の寺これは扨ゆけども〓〓はなのやま村雨や我が跡ぬれぬ花の下肌のよき石に眠らん花の山ちる花を澤蟹かつぐ岩間かな海士が家磯邊の花のおもて哉かいそんが來て見ん花の安宅哉燒けにけりされ共花はちりすまし判官をおもふ芭蕉翁全集京可楚江戶曾林楚譽路春大津乙同小松秋之坊一古可拾斧柳三遲春松住十歲梅路元字楚傘庭友葉ト絮秋櫻之露通之路常四同句同州睡空廻常良陰常風舟幾行く春や蕨ほうけてつねの草窓ひとつ有りとて暮るゝ春日哉秋之坊にていたづらに富士見て永き日をたてな孔余が武藏にゆく時たのもしき子を置きちるや姥櫻秋之坊老母追悼岩根ふみひとめ〓〓や山ざくら水鳥の胸に分けゆく櫻かなとにかくに胸うごく若木の櫻哉風流の國主なるらん山ざくら旅山ざくら見ゆる昨日の所かなむら雨の羽織干にけり山櫻根ながらや櫻のせゆく渡し舟かしましく櫻いためそてらつゝき夕風やあひだを置いてちるさくら錫杖よ心つくしのやまざくらおもしろや海にむかへば山櫻草朝な〓〓花を立ちのく乞食哉行よし野にて花のちりけるを庵三六八牧萬浪越中いなみ同北李紅桃少年柳おなじ所不鶴來女同句草童子化枝尒三三五野尾張李北牧李紅桃少年柳おなじ所不鶴來女同東尒英江中句草水東枝童枝空籬
芭蕉翁全集卯辰集卷第二夏ふもとの里を見おろして衣かへせしや綿ほす谷の家句空土を着る節もあるべし更衣富山秋之坊更科に戀しがるなりほとゝぎす五幾違風振舞の中に聞きけりほとゝぎす長皿坂もとにしばしすみ侍りしころ貌見せぬ尼も爰らやほとゝぎす句空橘やいつの野中の郭公翁時鳥まことはとりがすくないか牧童辨慶はかしこまりけり佛生會玉斧やとはれて鬼に成りたる祭かな少人古庭牡丹ちり芍藥ひらく旦かな桃英一輪のぼたんやちりてそこら內其糟三六〇何事ぞぼたんをいかる猫の樣南麥の穂や芍藥埋む里の背戶自四睡が武府にゆくをり牡丹散りて心もおかずわかれけり北ちる事は催ほしに似ぬ牡丹哉牧童子におくれたる人につかはしける夘木垣似たる子のなく恨み哉楚常うの花はたが折來しもしなびけり秋之坊靑鷺のなどやねむれる杜若小松致〓鶴來女かきつばたしどろに咲きし古江哉不中八橋をかける繪を見て橋每に踏みはずしなんかきつばた唐尒尼が薗泪にやそだつ芥子の花草籬竹の子ををる音響く小寺かな濃茂小麥田に鳴くや狐の妻をなみ鶴來踈松麥秋は身の置きどころなかりけり京風喬石山のほとりに、かりなる庵をしつら南自甫笑枝童句翁牧玉少人古桃其空童斧庭英糟ひて先づ賴む椎の木もあり夏木立翁ゆく水や裏屋芹咲く夏こだち越常富山雨をだに雫にしなす茂りかな違風水橋ひとつ屋は捨てもせぬ世の茂り哉ト幽くだけずもあだに成りにし桐の花幾葉ひよく〓〓と人跡になく水鷄哉伯之まこも刈るうさに戶扣く水鷄かも圓木淋しがる人をよばるやかんこ鳥孤舟浮雲にまぎれても行く夏の月乙州廿日とてやさしや遲き夏の月楚常短夜や百合咲きかけて明けにけり林陰しのぶもじずりの石は、みちのくふくしまの驛にありて、往來の人の、麥くさを取りて、このいしをこゝろみけるを、里びとゞも心うくおもひて、此の谷にまろばし落しぬ。石の面はしたさ卯辰集卷第二まにふしたれば、今はさるわざする事もなく、風雅の昔しにかはれるをなげ早苗つかむ手もとや昔ししのぶ摺翁更科山を見やりてところ〓〓雲ある谷のさなへかな紅さみだれやあかるき方に鷄の聲雲降出でし日もわすれけり五月雨三中將實方の塚は、みちのく名取の郡、笠島と云ふ所にて、道より一里ばかり侍るといへど、雨しきりにふりて日もくれかゝりければ。かさ島やいづこ五月のぬかり道翁さみだれや軒に崩れし土火桶字路僧の路通、おもひたつ心とゞまらざりければ。尾張さみだれや夕食くうて立出づる荷分三六一翁尒口秋尾張荷分
川かぜやうつくしき人にかられし扇子哉思へども雜の歌かく扇子かな蟬の脫ははたらくやうで哀れなりせみの鳴く中に起きたるうづら哉頓てしぬけしきも見えず蟬の聲水うてや蟬もすゞめもぬるゝ程空蟬や石の花表を鳴捨てしむさし野は蟬の鳴くべき草もなし梢より海ゆく蟬の命かな雫にはさのみきえぬかひむろもり東雲や耳そばだつる氷室守花鳥に死はぐれひて蚤むしろ四條河原凉少人のあふぎに無常迅速病薄柿着たる夕凉み中蓴菜の名の人めくもあはれ也渡りかけて藻の花のぞく流れかな辨ながら百合草は臥しけり夏の雨鬼ゆりのひとりすむ法師のためか夏の菊あぢさゐは只おしやすき扉かな人ありや窓の枇杷くふ山烏靑梅を買うて花問ふ里家哉山さとや明けゆく窓の麥いり粉鴨の子や袋に入れしまこも刈もの取りおく氣色ぞ池にかる眞菰鷺立ちて人やら分くるあやめ草小雨して田貝ふみわる花かつみさみだれに龜の甲ふむ山田かな五月雨やけふも亦きく松の鷺幻住庵の夕べを尋ねてある女房に申し侍る芭蕉翁全集まことしからぬ赤さ哉高岡其-李梅市何楚京萬雨加秋之坊子生邑翁孤萬句又翁尾張高岡七尾女伯井楚三邑旦李貞市滴舟子空笑角井東露巷處常之關常岡姿藁東喜巷水夢中に申し侍る夕暮やはげならびなる雲の峯ゆふだちの氣色に逃ぐるちんば哉白雨や猫の尾をふむ簀子緣六月は凉むばかりぞ萩の聲すゞしげに蘇積屋が家の川柳川凉み扨もちひさき扇子かな顏洗ふ川邊凉しや魚の影捨舟に乘つてはすつるすゞみ哉よわる身のものにもつかぬ凉み哉とく起きて米をももらへ朝すゞみ秋の坊の行脚に凉しさや下馬より末の小松ばら猶凉し松には人の居りかはりすゞみ〓〓ゆく〓〓森の田中哉松原に山臥凉し袖まくら川ばたにあたま剃りあふ凉み哉打拂ふ扇にうつる蚊やりかなほち〓〓と草の音きく蚊やり哉蚊に覺めて馬屋の音も哀れなりほころびを明は尋ねん蚊帳かなかり蚊屋の庵にあまる笑ひ哉山の井に蚊の鳴きいづる夕べ哉まゆはきを俤にして紅の花つかれ鵜やたれ羽干すまの峯の月妹背山をとこばかりの鵜舟かな乘る駕籠をひらりとぬけし螢哉家に來て袖よりにぐる螢かな打ちかへし扇に這のぼるよりおるゝは多きほたる哉螢火にとびつく魚や水の音瀧津瀨やひかりそろへて飛ぶ螢さびしさや一尺きえてゆく螢水汲みに跡や先やのほたるかなすほたるかな三六二三六三京去柳小遙乙玉蘭其何李雨四句同楚蘆李好春康三翁行萬源一春蘭鐘小松唐北乙來妻春里州斧子糟處東邑睡空常沼東幾樂秋山子之洞幾子昏尒枝州
蜻蛉の古畑や所々に麻のはな來る秋を好きける物を袖の露外げしほを告ぐるや早稻の時鳥實のる時民の捨置く田面哉夕暮や早稻立ちのびて人見えず河骨にかゝる匂ひや早稻の花君が代はかくす事なき稻葉哉早稻の香や分入る右は有曾海ひとり寢げ來したる返しに楚常身まかりしよし、越中に入りて卯辰集第三立居にちりぬ稻の花鶴來母のもとより告李北貞李遙松七尾少人牧一翁圃枝室東里鶴重笑卯辰集卷第三秋はす二本切れば淋しや寺の庭いたづらに蓮に立ちし吹矢哉夏の日やがんび喰ふ蟲の紅に撫子や貴妃の喰ひさく花のつま麻にそふ葱蔘よはなれくじさは行きぬけて家珍しや櫻あさ誰がふせる斯なるらんさくら麻寢ぐるしく燈あつき枕かなあつき日やおもげに落つる瀧の水雨乞や近江となりし川の數茶碗ひとつかり出したる〓水哉松伐りて古年の〓水のまがひ哉岩に只口付けて呑むしみづかな曙やはづむ〓水の中汲まんはきながら履を洗ふ〓水かな餞別せし返しに病みよわりて山里に歸る頃、芭蕉翁全集おの〓〓白遠牧春楚普宮腰新自山中乙英古-一北函里童幾常笑人露笑州男之庭泉枝第三鶴來李北白遠牧春楚普宮腰新自山中乙英古-一北圃枝函里童幾常あはれにしなしたるみどり子の墓にま月薄しもし魂あらば此のあたり楚常追善玉祭なく〓〓質を置く女熊坂が其の名やいつの玉祭り聲ひくに魂まつ宵の一間哉聖靈に近付きもなし草枕聖靈も我れも旅寢は水ばかり旅宿玉祭聖靈やけふこよろぎの磯の波銀河かきまくりても渡れかし雨明方の星にかしたる袷哉七夕を笑うて寢入る端居かなゐりてくま坂さかと云ふ所にておなじ時夜松住牧雨翁盛李楚句宇雨牧童柳弘蟲おくり賤がしわざや夏はらへゆふがほに片尻かけぬさんだはらひざがちに蚊やりの細き住居哉夕貌のさけども遲き夫かなゆふがほやふくべやまがふ君が宿晝がほは鹽燒く賤の詠めかな尋ぬる戀松住雨翁山中自北盧幽萬僧光盛李楚句宇雨牧柳弘東常空路邑童笑枝水子子山
村雨や萩の根にある蜂の聲川音やむくげ咲く戶はまだ起きず峨に分入る頃霧ふかき旦、いつの間に背戶の木槿は咲きぬ覽咲きつゞき其の家忘れしむくげ垣つくろはぬ里の木槿のにほひ哉翁にぞ蚊屋つり草を習ひける秋の野に花やら實やらゑのこ草くひものや大きにかへて女郞花娘の追善にひとつ葉をたよりや岩の女郞花つぶ〓〓と露けし屠所の女郞花しかられて芭蕉の陰の小僧哉稻妻の形りはばせをの廣葉哉野田の山もとを伴ひありきて熊野へまうでける道すがら卯辰集卷第三渡月橋を渡りて、うす霧のまがきにしめるわり木哉宵闇や霧の氣色に鳴海潟霧くらき歩みちからや鷄の聲稻づまに行く先々の小家哉稻妻やしば〓〓見ゆる膳所の城いなずまのつかへて戾る板戶哉稻妻に馬引きかくる田面かな行く雲のうつり替ふれる殘暑哉赤々と日はつれなくも秋の風高燈籠しばらくあつで嶺の月高燈籠松の木の間に見ゆる哉秋風に卒都婆きはつく涙哉庵のわびしさよ籬の花の朝しめりとはよみたれども、旅船行中七月旣望芭蕉翁全集九歲句其湊孤素幽洞魚翁北長不冷北きた嵯不鶴來女四北如柳中腫枝楚素乙遠一九歲鶴來女長不秋之坊句孤素幽洞魚翁北袖枝常洗州里風空角茂白洗子梨素枝皿中幾秋か甲にきえぬ鬢の霜あなむざん甲の下のきり〓〓す三句書、色々にくだけて秋の小てふ哉秋草に何のゆかりぞ黑き蝶引きまけて草に首ありきり〓〓す物にあたり尻ほつ立つるつゝり虫はた〓〓のはたと入來る葎かな竹のつに泣鈴舟をくつはむし蟷螂や露引きこぼす萩の枝はぎに來て立てばおもたき雀哉萩見つゝゆけば此の野の祭哉萩原や鉢の子洗ふわすれ水夕露に盃ながせ萩の原多田の神社にまうでゝ、氣多の社にまうでゝ三六七並に實盛がよろひかぶとを拜す。曾翁木曾義仲の願牧萬乙同四英北雨忍牧楚良童子州睡之枝邑市常家こぼし詠むる庭の芭蕉哉葬の庭にのどけし鶴の聲朝顏やきのふは五つけふは三つ蕣は咲きならべてぞしぼみける面なげに物うち着たる相撲哉山陰の水のみにゆくすまふかな小さくらとわろびず名乘る相撲哉春夏はやせて秋死ぬ哀れかな露は袖に葬禮せんと立ちさわぎさぞあらん仕のこす事や露の數古御所や露日にのこる石の橋しら露もまだあらみのゝ行衞哉舟でなし只朝きりに木に乘りておなじあはれを雨鹿身まかりし時わかくて身まかりし人に翁へ蓑をおくりて三六六六曾翁北雨忍牧楚閏宮腰其牧北春盛秋之坊盧之糟童枝幾弘水鶴來何尾張旦雨北楚良睡之枝邑市童常之藁邑枝常
さびしさに來ればおもやも礁かな打つものは淋しさしらぬきぬた哉眠りつゝ現につよき碪かな待宵のちからに成りしきぬたかな越中に碪うつなり夜中過ぎますら男が矢を放つ間や鹿の聲起きあがる墓の後の小鹿かな吹くからに鹿ぞうつむく山颪雁落ちて蘆半町のそよぎかな跡にたつは姥鳴といふ鳥なるか蓮がらの猶こそ〓〓と行衞哉鳥の糞つきても拾ふ菌かな是非ともの栗柄峠に泊りて翁の捨てゆく庵に行きて山色〓淨心秋も半ば過ぎゆく頃命よ露の赤毛蓼月見する座にうつくしき貌もなし座敷より我が舟さして月見かな櫂上げて休める舟の月見哉月は田面海鳴りそふる夜頃哉子を抱いて湯の月のぞくましら哉鑰もなき庵預くる月見かな隈もなく名もなき原の月見哉山中の溫泉にて稻舟も月も我が屋も明けにけり月の夜や道いそがしき人のくせ南天の枝にうつろふ月夜哉くもれども月夜はやさし丸木橋逢坂やおの〓〓月のおもひ入れ月を松にかけたり外しても見たりかしましき樫の雫や月の隅芭蕉葉の打ちかへされし月夜哉くさずりのうら珍しや秋の風芭蕉翁全集孤遲七川大坂四草孤句遙龜乙紅翁浮如洞秋之坊意北葉柳梨情枝五歲順漁長左邑北楚乙北岫舟櫻里柳睡籬舟空里洞州尒曲之川皿里姿枝常州枝しき島やへちまの糸も捨てたりき市人の聲にもあはず鴉瓜ひよ鳥の行方見れば山女かなもの書きて扇引さく名殘かな足はやき朝戶の音ややゝ寒みあさ寒み醉のまぎれにわかればや捨つる身のもの冷じくさす戶哉音程はものにあたらぬ野分哉猪もともに吹るゝ野分かな燈心をゆりこむ夜半の碪かな三ヶ月の藪に道あるきぬた哉笑うて出づる朝きりの中書きて給はる松岡にて翁に別れ侍りし時、旅わたりして草庵をたづねありきて三六九となく〓〓申し侍る鶴來あふぎに南椎李北翁萬村雨や見る〓〓沈む澤桔梗よりうたん藪越しにきく鼓哉咲くまゝに只さく儘に野菊哉ゆく路の野菊の果は漆かな刈萱や露もち顔の草のふしはなすゝき戶にはさまれし夜風哉蜻蛉もともにまねくや花すゝきむら〓〓とむら〓〓とあり花薄おり立ちて馬かふる野の薄かな起きもせず寐もせぬ雨の薄かな寐覺めても起きちからなし萩薄はなすゝきまねけば喰ふ野馬哉花薄きびは穂に出てくはれけりわや〓〓月見舟櫓繩きれたる笑ひ哉このかみにおくれて我れも病にふして、りうたんをかくしてと坊へ押込む月見かな三六八幾玉句柳同牧三盛民姉松住柳川路〓宮腰萬唐雨葉斧空北翁萬句柳同牧三盛民姉松住柳川路〓宮腰萬唐雨空晏童岡弘屋通流子尒邑甫雪圃枝聲空晏童岡弘屋
釣瓶くる音凩と成りにけり木がらしや顏のみ動く鳩の聲凩によりかゝり行く馬上かな木がらしや晩鐘ひとつ馬十疋爐の隅に身や酎の神といはゝれん山あらし來よさむがりて明すべし淋しき庵のすさみから風や水はちゞみて網代杭さむき夜の雨だりすごき寢覺哉見やるさへ旅人寒し石部山藁曲げて壁におし込む寒さ哉寒さ來て野守の花の簀子綠冬卯辰集卷第四路通の行脚を送りて卯辰集卷第四二句秋の野を壁土にとる哀れ哉しよんぼりと山田のかヾし時雨鳬物の音は水のむ獺と案山子哉よしあしをいはで守るはかゞし哉いざり火にかじかや波の下むせびあきの日や猿一つれの山のはし秋の日や猶いたづらに馬子の鞭鷺鳴いて秋の日よわき曇り哉秋や猶崩れし池のにごり水すばしりや秋ふく風のねらひ網秋かぜや息災過ぎて野人也取跡や淋しく見えしずゐき畑有山中秋淋し我省十景、山中かうろぎばしにて身芭蕉翁全集二句高瀨漁火雨楚梅春同秋之坊露邑幾常鶴來甚鶴來女·大津尼何智之子月僧德和雲光草楚翁楚意牧紅四北如露邑幾常籬常子角口山常情童尒睡枝柳葉茶つぼやありともしらでゆく嵐十月にふるはしぐれと名をかへてひえながら打寢て時雨きくばかり垣あれて菊のうら見るしぐれ哉德利さげて賤の子うたふ時雨哉しぐれきゝ時雨聞き夜のしぐれ哉ふり初めて日半々々の時雨かな古地藏しぐれ催ほす巷かなしぐれけり頓てその儘春でなし亂山に日影あるあり夕時雨奧山は猿一聲にしぐれけり初しぐれ猿も小簑をほしげ也鉢の木やぬしなきつゝじ返り咲く木枯に咲いて見せたる八手かな三七一とかくに悲しき時伊賀へ歸る山中にて身まかりたる人の庭のけしきを秋の雨鷄の尾のしたりけり鮭とんで行く秋のさて〓〓人をなかせたりあき暮れて淋しき炭の匂ひ哉人は住居はかりすごすや秋の暮樫の葉の持ちこたへぬも哀れなり目に高し稻刈る末の御調藏二葉なる麥田にやせしいなご哉つふ足の跡のみ多し刈田原行く馬の笑ふにもちる柳かな心あつて樽にもみぢをしかせけり山川にいぼりかゝりし紅葉哉さヾ波殘る川邊哉しら菊の一重は寒し秋の暮小家つゞき垣根々々の黄菊哉蓬生に持ちあはせけり菊くらべかもうりの方にかたかる庵哉冬瓜や花にも葉にも捨てられし宗同北洞四梅句斧小松牧紅幽翁漁林尾張孤小松何宮腰宮腰越昌楚橡雨何李秋之坊如圓橡牧遲盧圓人碧常衾處靑柏之東柳木靑童櫻水木因枝梨睡露空ト童尒子川陰
兒めきて泣きつゝ寢るや年の暮戀しさもなくて寢られぬ師走哉おもしろもなうて身にしむ神樂哉ちればこそいとゞ櫻はめでたけれ鰒喰らうてや死ぬかと思ふふぐと汁寢る恩に門の雪はく乞食哉寒山讃折るとてもあまり至極の雪吹哉なんの實ぞたま〓〓見だす雪の門舟さして柳の雪を打ちかぶり元日の心や雪の朝茶の湯しら雪の花とも見えぬつぶり哉初雪のかくしえぬ石のはづれ哉集かゝりたるをりしにあはず、野田の山もとに住む人を、老人をまもり居ゑて第四牧小松かたへの垣にかつらのたづねまか楚乙北斧其秋之坊北其孤李三常州枝童ト角枝糟舟東岡十月の望皆落ちて梢に丸し月の影あさ戶明けて霜消ゆる迄何もせず燐火や今朝は霜おくかれ蓬藪過ぎて霜のみ寒し葱苳ねがはばや戀をばせじと日蓮忌此の夕べたぞや落葉にすべる音庵の暮と云ふ事をはく路も木の葉はもとの庵哉葉をしくも、海のかたはしぐるゝに、這出でゝ落葉にねまる蛙かな地ごくへは落ちぬ木の葉の夕べ哉宗祇十三回忌哀れにもつるみて落つる木の葉哉我れもとて袋に入れし落葉かな囊中略有七千首芭蕉翁全集孤其牧柳何鶴來句句をりしりがほなりや。庵の庭は木の跡鶴來宗四牧不員百年風月身白糟童晏之空空杢鑑睡童牧小松楚乙北斧其孤其牧柳何鶴來句秋之坊北枝三常州枝童ト角岡白糟童晏之空空睡童柴かりこかす峯の笹道靑淵に獺の飛込む水の音鞘ばしりしをやがてとめけり月よしと相撲に袴踏みぬきて花野みだるゝ山の曲め馬かりて燕追行くわかれかな遊ぶ元祿二の秋、三兩吟三十三翁をおくりて山中溫泉に北翁曾北翁曾輕薄を申しつくせる歲暮哉いざ汲まん年の酒屋のうはたまり大年や難波堀江の鴨の聲一とせや餅つく臼のわすれ水物うりの聲聞きたゆる師走哉草菴をしつらひけるとしの暮に年の暮わやめくを只餘波哉はつ雪や松にはなくて菊のはに初雪や人のありくと日のさずと狐ゆく跡は霜ふる氷かな辛風の蓑ぬきて見るつらゝ哉寒念佛歸る庵も氷るらん行く道の音おもしろき氷哉有明の其のまゝ氷る盥かな曙やひがしも桶もうす氷さむしろや雹ふりおく旅芝居種馬の駒待ちあはすあられかな水仙はほの咲く筈のみぞれかな山茶花やさすがふりさす庭の雪山茶花や蝶のおらぬも靜かなり舟よせて立てば足見ん都鳥簗火絕えて鴨落つる夜の寒さ哉鴛の女の世をあまりなる姿哉から崎の鮒煮る霜の月見哉北翁曾北翁曾枝良枝良鶴來北楚牧雨康孤字萬朱同楚幾李雨楚蕉北牧其春萬荷盧良枝童角幾子兮水枝常童鹿樂白路子花常葉東邑常下枝
銀春長閑さやしらゝ難波の貝づくし花の香は古き都の町作り有明の祭の上座かたくなに秋風は物いはぬ子の涙にて先祖の貧をつたへたる門露白うつくしかれとのぞく覆面手枕にしとねのほこり打拂ひ髮はそらねど魚くはぬなり落書に戀しき君が名も有りて蓮の糸とるも中遊女四五人田舍わたらひ霰降つき小袖薰賣の古風なりきまづ拂ふ獵の弓のを小殘たもとの續く葬禮る左の山は菅の寺芭蕉翁全集鍋せに出す芹燒る其仍の箱竹々罪ふかき頃の點取ともゝ卷からげ臍の垢ほり盡したる世の中やしばりつきたる涙さへうき入御簾に跡戾りして覗くらん樗陰馬の燒鐵ふすぶらせ虛言つく人の顏をじろ〓〓だヾくさにつむ箒木のから式部が夢は泣いつ笑ふつちつくりとあたま結ひける袴着に盆の李を置こぼしけり旅の月夜は物たらずなりつゝり蟲靜かに見れば動き出で月花は男なぶりと詠むべき雪はつもれど去なぬ物買の酒とりにやる春の蛤蜊水雲は畠のうねを作るかときぼり〓〓て淀の晝船卯辰集卷第四牧北翁北翁曾北翁曾北翁曾北翁曾北翁曾北童枝州童枝州童枝州童枝州童枝州童枝枝良枝良枝良枝良枝良枝夏來ては葉さまにくさる赤椿唐の芋料りまどひし夕間暮額もぬかず角入れてより雁歸る鉢ふせ峠あれやらん小歌許りのあがる所化寮宿肌寒くなえたる衣のうすよごれ行花の香の太秦迄も押移り怨靈の段讀返すむかし本炙する日ともいへば風ひきいさかひてのがれ行くらん後つき涙もろける里の肝さがせどもとれぬ釣瓶に草臥れてつらし〓〓とならす鰐口かさある月の雲にかまはずいつの日か障子に張りし人歩帳燈とぼす頃のむら雨の二階の裏はみな山三七五煎鐘ついて遊ばん花のちりかゝる醉寺狂仲綱が宇治の網代と打泳めあかねをしぼる水のしら浪細長き仙女の姿たをやかに雨晴れくもり枇杷つはるなり疱瘡は桑名日長もはやり過ぎ小畑も近く伊勢の神風初發心草の枕に修行してあはれに作る三ヶ月の脇鴨ふたつ臺にすゑても淋しさよ非藏人なるひとの菊畑に人と彌生暮行く使を立てる口上八朔や脾の臟つよき柿喰ひ柿喰三吟乙州筆翁同北同翁同北同翁同北翁童州童枝州童枝州童枝州童枝州童枝州枝枝枝
藥初しぐれ居士衣かぶる折りもあり吹山と水との日々の春うぐひすは杜子美に馴るゝ花の陰を旅枕しらぬ亭主を賴みにていて通りし夜の尺八削る床の片隅屎の馬を行きぬけにけり幾度も小鯛ねぎりて買ひもせず秋の夕べを頭なぶらせあの月は耳にかけたらかゝるべき木賊つりおく音はさら〓〓鷹宿の壁も疊もよごされて洗ひすごせる河〓は味なき人の年の霜の降る夜に寄りにけり霜六吟卯辰集卷第四むら薄おほふ隣りの味噌くさき晝寢せぬ日のくせのむか腹橋普請木の切れさがす役に付き池のすぼんの甲のはげたり埓明かぬ神に歩みを運びかけあだなる戀にやとふ物書陣小屋の秋の餘波をいさめかね髭籠の柿を見せてとりおくさかやきの湯の湧きかぬる夕月夜足の灸のいはひかへりし道草の旅の牝馬追ひかけて西もひがしも蕪引く空凩やいずこをならす琵琶の海琵琶五吟うかとはなかぬ小鳥鶯芭焦翁全集四筆李牧漁紅北睡東童川尒枝牧北魚小乙童春州春枝素春州童枝素春州睡童枝素春州童相撲はすけど祖宜のぬるさよ垂井根深ときけばゆかしき藪醫者のとろゝはげたる箱ながら照降りもしどろもどろに春めきて花見よと局かしらにいざなはれはづみもぬけてものおもふ頃はえ〓〓と秋の空なる赤とんぼ水風呂を跡の先のと長びかせまづなげ出すかねの狀箱山科の談所になれば衣着て戀種のとはぬ事迄云ひ過しまた仲人をしそこなひたり浪は敦賀の磯にうつなり山道の草鞋ふなりに作りかけ鼻につきたる旅の燒魚こたつふさげば廣う成りぬる時々は月にきしくる部にて三七七醉食打うつくしき袂を蠅のせゝるらん簀戶の番鳥帽子着ながらうそ寒く扨々野邊の露のいろ〓〓月の前痛む腹をば押しさすり越の毛坊が情のこはさよ松にきあはす辛崎の茶屋狂ゆるさぬものか妹が疱瘡馬盥額に成るまでやり置きて交る〓〓にたかる飴うち春の日に開帳したる刀自佛人は思ひに角おとす鹿花はちる物を見つめて涙ぐみ伏見の月のむかしめきたり布袋にも能う似し人の踊り出し無欲にまつる聖靈の棚は坂本領のちこぼす郭公かな頭分東童川尒枝睡童東余川睡枝東童川尒枝枝素春州童枝素春州童枝素春州童枝素
芭蕉翁全集月夜烏も寢ぼれ行くらん身にしめる風より蚤はとらへられどこやら芋のわるき腹あひとり立てゝかりに連歌の草の庵鶴見に出づる人はさわがし風かはる夜は星影のきらめきてふきぶりがちに木綿ねり揚げ起きるにも寢るにもとらぬ角頭巾いらぬもの迄かさぬなりけり溝ぎはの花に後地を盛出して春の小鮒の口ならぶ見ゆ三·八枝睡川童余東睡枝童川余元祿四年卯月日賀陽庶人北枝夏を主とす。霍山鳴が井盤の納涼、西上人の柳の陰も、今此の水に俤添ひぬ。其の德其の要廣大にして、神佛の尊きをすゝしめ、且つ堯の井を堀り禹の水土を夷らぎてより、四民猶おだやかならしむ。後に山あり。さゝ栗の岡といふ。晴に臨み雪に對して眺望きはまりなし。湖水の島々、江南江北の山のたゝずまひ、日枝伊吹の嵩、比良三上の高根に眸をさく。申酉の方に衛が岡あり、聖德太子の御歌より犬上の名所となりぬ。杖を曳きては籬を廻り岡に登る。薇は韲をたすけ、粟は茗粥を炊ぐ、抑も庵は纔に莚三枚を設けて膝を窄め、賓主六人一座に全からず。茶碗五つ枕五つ、筆墨の外に物なし。月に杜字を添へ、驛路の鈴に里の砧を合せて秋をかなしむ。庭に箒をあてず、樹に木鉗を入れず、窓前の草自らなり。たま〓〓畑を穿ちては狛の瓜種を求め、五色の茄子を植うるといへども、山蟻の爲めにせゝり落さる。噫々僭居三十九勻塞許六選五老井記許六靈泉あり、水のたゝふる事纔に尺あまりにして、三尺の盆池より流れ出づる事、潺々滔々たり。五老井と名づく、列埜をひらきて五老菴を結ぶ。主人姓は森名は許六、みづから五老井居士と僭す。がは五老は予が別號也。驛が原不知哉川流れて、鳥籠の山南にちかし、十旬の休暇をうかがひ半日の閑を領する所也。遙かにきく、東江ばせをの翁、錫を坂西に赴しめ給へるの折ふし、靈泉を共に汲みて、風騒の匂ひを葎の中にとゞめむとならし。其の水の〓き事は惠山の泉脉を通じ、あまきことは肅州の金泉にひとし。立ちかへる春の朝、白散の藥をさげてより以後、四時の生涯を養ふ事かぞふべからず。一とせの間にわきて泉を翫ぶ事は勻塞許六選許六
芭蕉翁全集士、文〓に僻する事二十餘年、子膽、芝瑞を師とし、楊子、呆道人が骨髓を窺うて、雪裡の芭蕉、夏天の梅、自然に一味の風雅を兼ねむとす。世上予が筆痕を樂みて予が心頭のたのしびをしらず。風雅は是非をあらそひ、〓圖は〓童の前の戯れとなる。いまだ風雅の爲めに文〓を樂むものをきかす。予と共に志を同うして、はやく我れをたすけよや〓〓。終日樹下に徘徊すれども、更に答ふる物なし。四隣の鳥の聲.花間の蜂蝶のみ、笑うて靑天に腹つゞみを鼓し。五老の流に脚を洗うて還る。于時元祿五年壬申春貳月。於盤欒樹林下濺〓毫水すぢを尋ねて見れば柳かなけふばかり人も年よれ初時雨野は仕付けたる麥のあら士油實を賣む小粒の吟味して汁の煮えたつ秋の風ばな宿の月奧へ入るほど古疊先づ工夫する蚊屋の釣りやうウ才ばりの傍輩中に憎まれてたきこ燒焦したる小妻もみ消す粽つむ笹の葉色に明けわたりか.輾磑をのぼるならの入口半分は鎧はぬ人もうち交り船追ひのけて蛸の喰飽き宵闇はあらぶる神の宮遷し北より荻の風そよぎたつ八月は旅面白き小服綿燒山ごえの雲の赤はげ打起す畠も花の木陰にてばせを許六洒堂岱水嵐蘭筆水翁六堂紫水翁六堂黃水元祿壬申冬十月三日許六亭興行なつらも長閑に鶴の卵わる名春ふかく隱者の富貴なつかしや當摩の丞を酒に醉はするさつばりと鱈一本に年暮れて夜着たゝみ置く長持の上灯の影めづらしき甲待ち山ほとゝぎす山を出る聲兒達は鮎のしら燒ゆるされて尻目にかよふ翠簾の女房いかやうな戀もしつべきうす霙琵琶をかゝへて出づる駕物有明は昆舍門堂の小方丈舌のまはらぬ狐やゝ寒ウ一すぢも靑き葉のなき薄原篠ふみ下る筥根路の 坂宗長のうき寸白も筆の跡茶磨たしなむ百姓の家勻塞翁六堂蘭水翁六堂蘭水翁六堂蘭水翁六花の春まつへて廻る神樂米七十の賀の若菜莖立堂蘭四唫鱈船や比良より北は雪げしき蘆浦納豆寢せ初むるころ酒道具つけて家賣る年暮れて京の返事に機嫌なほする月くらき腰湯に裾のぬれ廻りがん一城わたる四十雀雁ウ盆過に濱手の早稻を米にして女房の供に夫のいかるゝ門口に化粧立てたる宿の者向ふに付くる日野の壺皿紫蘇の葉のちり〓〓となる夏の暮さんない尻のあまる小盟李由許六汝邨徐寅六由寅邦由六村寅
芭蕉翁全集引飯の算用たてる男部屋肩で風きる後の出がはり大坂は木綿のやすき秋の來て月夜に語る奧の世の中一あらし老樹の花の崩れたち池は田蕎麥に蛙鳴くなり名永き日の十三鐘に暮れかゝり惣々醉うて禮をいはるゝ肥足にこびとの革袋のはな〓ずれ廻したふれのつゞく前橋傾城の心中咄し一ぱいにも上のお駕籠の揃ふ朝明o掃きちぎる小庭に柘を作りたてうつぶけて置く溜塗の丸物喰の先づ口もとにほれ初めてやいとの隙をもらふかこつけそよ〓〓と麻に風たつ夕月夜三八二腮に挾んでむすぶ犢鼻禪豐島御蓙一枚持つて草枕河に聞きあく信濃海道鵤につちくれ鳩の啼きつれて糊のまゝ子の鍋をはだける此の春は閏に花の遲なはり苣も赤菜も冴えかへる色六由寅村六由村寅由六村 寅六村由寅由六寅村六由村寅三吟秋もはや雁おり揃ふ寒さ哉藁を見てからかゝる屋普請〓,暮の月宿へはひれば草臥れて何ともしれずうまい臭する大勢の中で精出す疊さしはやい七つの鐘の穿鑿ウ葬禮に傘は隣へことづけて野坡許六利牛坡六牛坡女房の酌に一つ呑むなり餅米は手つけの銀をあてゝ置きかい暮れかゝる番町の坂用心のやねの確に雪降りて玉子の殻の多き掃溜何事も年を越ゆれば長閑なる日野商人のもどる春風後家鞘をひねくり廻す花心踏崩さるゝ寺の芝土手しん〓〓と月夜の水の落つる音惣嫁追出す肌の寒けさ名秋さきはならぬ米やもざはめきて峯入前の三井の振舞一ふりの雨に凉しき槇の色女子ばかりがもの思ひ居る煤掃の道具で戀の顯はるゝはやう濟みたる町の寄合勻塞六牛坡六坡牛六坡牛六坡牛六六坡六坡雪隱は場を通つて奧に在りニばんばともえて食の焦つく旅人のもらひばかりに伊達をして法界祭日ぐれから行く霜稗の穂の見え初むる月の代醉 の競ひに鹿を追ふ也ウ根原越し水のたしなきかり枕痺癬をうつる江戶の絹買懸隔に暑や寒むやの梅雨の中立ちまはつては座敷掃くなり一年の醬油喰込む花盛り彌生の雉子の鳴きさかる聲坡六坡六坡六同坡六坡六筆三吟5)嶋を見かへる鷄のさむさ哉宵の豆腐の氷る爼板三八三木導朱袖
灯籠の果もちかづく地藏盆五十過ぎてはならぬ先懸荒海の久世戶を越ゆる鴨の聲白靑い疊に月の澄みきる土器をしばしひかふる舞の內尼になる宵は潜かに洗ひ髪星は氣疎く光る能す秋かぜに吹きすかされてけふの月膳にほろりと泪つれなき相撲とりの勸進元を喰ひたてゝ河原柳の一いそがしう見せるも戀の一思案たよりのかしこさに伯父の跡まで丸めけり川石の色の露けさ三勻るやうに家の手番唫塞たびに上る綿の直ばいにちる雪[空gir名藪筒藥首にふらつく春の風彌生も暮れて夜著の洗濯葮葺の五門徒寺に花もちり皺の手に琥珀の珠數のたふとさよ漁村砧うつ隣りは馬のいなゝきて芬々とよい茶を入れて茶漬喰ひ座五器ふいて下女は化粧にかかり鳬鷹場の上を鴈わたるなり壹 步泣出すたびにくらがりをむくせつかれて又藥〓もとするひつそりと曹洞宗の夏は濟みて暮切つて灯とぼすまでの薄月夜たはふたる昨日の草鞋隙やりても敷の並ぶ濱の澁糟動かぬ嵯峨の有明へ昇いで上る駕物が錢を腰中に卷く芭蕉翁全集汝木許邨村導六邨導六邨導六村導六村導六許導六袖導六袖導六袖導六袖導六導六名水風呂を据ゑて燒きたる藏の内師走にしきる支那の糞取り傾城の土葬はかなき淺茅原掃除の跡の小僧が母にばつと名の立つ夕凉又ほめられて見する手鑑食繼に莖大根を折曲げてさヾ波や大津にたよる浪人衆むす子が嫁をあつらへてやる作で染物に雲の模樣も一はやりめつきりと拵へ藥仕出來して伊勢路の者の錢の取りあきより飴に日のさす頃は長閑にて出替花ざかり衣類法度の御觸狀み水增雲に夏の月半分時の外のそはつきき過じ十藥도ぎる三八五の城臭下花盛りつれ〓〓草を引出し佐和山多屋の薺聞ゆる木どりではてぬ夷大黑珊瑚珠の色うつくしき夏羽織解毒の禮を孫にいはする精進に箸馳走する旅の宿脚半の紐の廻る草臥れ桑粒のほろ〓〓落つる雨の中宮正月の夜食は餅に極まりて矢口のさとにかゝる玉川御前から甲を脫いで月を見る早乙女の子持は畔に腰懸けて瓜春から雨の降りつゞく年まだなでしこに秋の初かぜ前に茄子戶板の上の魂祭井ゆたかに藤堂の藤皺よるかひ割の帶導六邨導六村導六邨導六村導六邨導六袖六導六袖導六袖導六袖導六袖導六袖
ウ上下で送りむかへの魂まつり腹のふくれた躍り聞ゆる月の秋うそ〓〓時の切通し中でとつたる屋根の麥がら奉公ぶり出替前のきは立ちて日向に照らす顏の陽炎じゆんけいの膳据ゑ渡す花見哉二勻唫塞ウ五年が中に女房三人穗むけの風に五反百姓月雪にいつも八百屋の作兵衞よい寺になる黃檗の山水もなき河原雲雀の夏の雲武士荷が來れば馬が休まぬひた〓〓と腹疫病にまゐられて菊の花金をならべて遊びけり秋もやう〓〓湯豆腐の月西行の軍法ばなし小夜更けて細う凉しき水のくま〓〓誰が宿ぞ穴明き岩に紅牡丹二二吟ほんちやう本町の垢塵の末は花曇りつけ木の輾る東風遙か也芭蕉翁全集霞茅野もかれて冬は來にけり寺晩よい花もはや端々は火をともしから〓〓と烹豆の上に日のさして一請狀の判を見に來るまで通す晝と場の馬時の雨筏に下す炭俵中に鶯の聲許李六同由同六同由毛許程米紈六己〓丸己六紈巒六己巒六巒己執己六紈六導名白い物直を持揚げて年の暮兄ほか〓〓と豆腐の布に湯氣立ちてひよつと餌ざしの出づる塀間上紺の衣にはねのきれ草鞋牛がつかへてよどむ逢坂姊がもどつてふえる喰口する〓〓と大根の市の四ツさがり革羽織着て江戶の良寒初鷹のまだ寢處も定まらず氣を付けて見る小の十五夜靑雲に若草山の夏あらし驗鳥帽子で禰宜の出ツ入ツする慳貪な女房の顔を化粧ひたて氣を得たる尾張商ひちやツくりと澁の餘りに罠懸けて死こしらへの布を嗜む弟ながら妾三八七奉公へあはひ名即非の下で禪にかたふく늙閑さにやつれ果てたる擧句集峯入の過怠に字治の橋かけて松茸植ゑる野屋舗の山靑みたる下弦の月の夜明方脉が早うて夢もむすばず傾城の地女になるもあはれなり只身代は眞木の物つかうたる公事の勝口順風にしらゝ吹上げ見渡してとやかくともはや日もなき年の暮戶板平目の鍋をとりまく山ごしのかねに六尺おき直し花の陰越前衆の旅枕酒とたばこで世にもすむ哉奉公の邪魔になるほど戀をして一本鍵に冴えかへるなりけげん簡略由六由六由同六由六由六由六由六由六巒六己巒紈己六丸巒六己巒執己六紈巒
芭蕉翁全集祐筆の手を習ひ込むたはれ文御夜詰ひけて世間靜まる鼠鳴に灯口の丁子祝ひ入れ棚から物の落ちた音なり水風呂の中より見たる暮の月後の彼岸の談義草臥れ醬油の二番にかゝる初紅葉田舎芝居の穢多をこはがる雨乞の躍りの代にやね葺きてわめいて通る宿の馬方竈の火もほのかに明けて茶の出花分限見かけて多賀の頭さす三八八蕎麥切のおろしの音に座つくりて相役同志の御用さゝやく懷のふくれてつれる夏衣きふな雁齒を人に押さるゝ家々に烟りをたてる揚屋町松めづらかに羽子ひゞく也數の子に扣き牛蒡の小重箱春日奧ある醫者の新宅人宿の後はやがて城の塀ふか外郞買に荷は先へやる雪隱を覗いて廻る腹ごゝろ根太つぶして相撲崩るゝ秋の日に村中こぞる喰ひ祭いつか出てある暮方の月息災で花見る人はうらやまし一步もらうて長閑なりけり雪消えて上ぐる佛の御洗濯六由六由六由同六由六由六木朱汝馬米胡毛程徐導袖邨佛巒布執己寅六由導袖邨佛巒布亡師三回忌報恩月雪に淋しがられし紙子哉小春の壁の草靑みたり許六李由藤に暮れたる細呂木の關はいたて佩板のひた〓〓濡るゝ川越して味噌燒く門を扣き明けたりから臼の棹に積みたる古莚馬が放れて菅笠を喰ふいひはやす鏡の食屋見て行かむ早麥あからむ並松の風黑い帶女の仕たる夏の月夜宮の町の山のはり番後先にだんだと通る十駄物木曾材木でかゝる琵琶橋ウならべ置く大落雁の箱の蓋日は赤う出て雪のひらつくめる旨後から被の裾をつまみ上げ門の外より拜む大佛ごろ〓〓と車の音の花曇り其衣更着の夢 の境界勻塞紈己寅六由導袖邨佛巒布丸己寅六由辭は世橫に鼻は竪也雪佛目馬佛悼馬佛茲に丙子霜月廿二日、六成堂の馬佛、例の箭血をはしらして終に身まかりぬ。六たびやうぎんせき年の多病に毎座吟席を欠ぐ、ことしも仲秋又病床に臥して、諸士が三夜の遊びをしらず。事終りて一軸を送れば、跋を作りて自ら病める佛と披露す。しかはあれつゐぜんはうおんど、亡師三回忌の追善報恩の席まで這出で、そくさいで花見る人はうらやましといひ出でし句も、けふのむかしとはなりらぬ。蒼くすゝどきものゝふの顏色も、干ま鮭と死貌をあらそひ、兩眼を利觜にかけられ、いたづらに鳥の腹を肥す。噫々かかたうでなし、風雅の片腕をおとされ、花下月前三八九筆
芭蕉翁全集の遊びに、ながく一人を欠ぐ事、千悔萬れいぜんかうつゐたう悔の悲み、涙空しく靈前にそゝぎ、各燒香追悼して斷金のちぎりを謝すのみ干鮭もさぞな子供の離れ際李由時雨てはつと友千鳥なく錢芷道中の味噌にこまらぬ旅ねして許六湯桶の酒に月のかたふく朱袖主の留守ぬけて出でたる一をどり木導うす燒の香に秋の初風程己ウ湖を北に見渡す柴屋町汝邨西大名の二かしらつく徐寅鼻よせて嗅いで廻れる鮎の鮨毛執点灸の順にかたびらの蠅米巒放參の鉦しづまれば沓の音執筆去年の秋、かりそめに面をあはせ、ことし五月の初め親切に別れををしむ。其のわかれにのぞみて、ひと日草扉をたゝいて、終日閑談をらなす。其の器畫を好み。風雅を愛す。予こころみにとふ事あり。〓は何の爲め好むや。風雅の爲め好むといへり。風雅は何の爲め愛すや、〓の爲め愛すといへり。其のまなぶ事二にして用をなす事一つなり。まことや君子たのは多能を耻づと云へれば、品ふたつにして用一つなる事可感にや。〓はとつて予が師とし、風雅はをでしへて子が弟子となす。されどもひつたんめう師が〓は精神徹に入り、筆端妙をふるふ、其の幽遠なる所予が見る癸酉記行並師友之餞別許六離別詞所にあらず。予が風雅は夏炉冬扇のごとし。衆にさかひて用ふる所しやくあさいぎやうなし。ただ釋阿、西行のことばのみ、かりそめに云ひちらされしあだなるたはふれごとも、あはれなる所多し。後鳥羽上皇のかゝせ給ぢひしものにも、これらは歌に實ありてしかも悲しひをそふるとのたまひ侍りしとかや。さればこの御ことばを力として、心細き一筋をたどりうしなふる事なかれ。猶古じん人の跡をもとめず、古人の求めたる所をもとめよと、南山大師の筆の道も見えたり。風雅も又これに同じと云うて、燈をかゝげて柴門の外に送りてわかゝるのみ。元祿六孟夏末風羅坊芭蕉述勻塞おなじく五月六日の頃、旅だゝむと申しつかはしけるにおどろき、例の次郞兵衞を使として、後の旅は、我れも木曾路を經て、眞一文らうせゐげんじやうたいめん字に五老井と志す、彥城の諸子に、はやく對面せむ事を常々にねがふ。かならず人に沙汰す늘たんざくる事なかれと、こまやかに文して、色紙短尺繪讃の類もたせ給はる。猶離別の情あさからずとて、發句などいとねんごろにしたゝめかことはがきさねて、詞書をそへてむまのはなむけを寄せせんべつられたり。並に杉風子各餞別あり。其の詞木曾路を經て、舊里にかへる人は森川氏許六〓と云ふ。古しへより風雅に情ある人々は、後わらんぢやれがさに笈をかけ草鞋に足をいため、破笠に霜露をいとうて、おのれが心をせめて、物の實としる事をよろこべり。今仕官おほやけの爲めには、長劔を腰にはさみ、乘かけの後に鍵をも
芭蕉翁全集かたせ、歩行若黨の黑き羽織のもすそは、風にひるがへしたるありさま。此の人の本意にはあるべからず。椎の花の心にも似よ木曾の旅ばせをうき人の旅にも習へ木曾の蠅同けつぢやう兩句一句に決定すべきよし申されたれどめつ一油たる今滅後の形見にふたつながらならべ侍る餞別笠摺や葺きわたしたるあやめ草杉風梟鳴いて跡もさらなる靑田哉桃隣木を流し〓〓行く涼しさよ百里木曾の山路の旅行をそゝれば、〓圖俳諧のたすけにすらんといひて、草氏蚊のなきを又かこつけて旅ねかな才波安氏夏草にあくび移さむ駕籠の者孟退田氏千鳥たつ夏の氣色や諏訪の海奚魚甲斐の道すぢを〓へて三九二手の跡をわすれな甲斐の覆盆子時不二淺間中にかけはしほとゝぎすいに兼し客の形見や夏の月夏山の形りみ忘れぬわかれかな門氏陳林氏隣松氏日前氏達曲郭鮮化我しゐの歌をして大井路お前に至るようなる點をちょうせいせいかん-あいむれの50kmal: ¥200~あいずくちゃうせむあそやまきおる〓あとこのしとれと入人あるのしい一日と一面一本を施設ふゆううます〓とや角しーろれこ愛杉風桃隣百里〓圖俳諧草氏才安氏孟田氏奚波退魚天真實〓四月歌仙ども多ければ、餞別の俳諧今こゝに略す。ほと·ぎす身になり行く空に、蜀魂の一聲も尋常ならず。月〓落ち鳥啼きて、やや市に行く人の足音は、已に首途をすすめぬ。明くれば)五月六日武江の館を退く。卯の花に蘆花の馬の夜明哉日々の文章は、去んぬる記行にゆづりて筆をとゞせんばいむ。猶名所ところ〓〓の句共、おほくは前輩の集に出でたればこれをももらす。しかはあれど、旅(の情のをかしきをあつめ、たはふれに賦作り、旅すく翁のなぐさめに書きあつめて草庵へおくる。さうあん今ついでよければ、亡師のかたみの一列にこれをしるす。甲路記行五十年の行脚に、一點の難も蒙らぬは西上人獨りぎやくりよ)の上也。蘇氏八州の逆旅は皆不平の上の流浪也。古人は是なるも非なるも、共に風雅の境を出でずして、萬古の情を述べたり。我れ雲水の客となる事二十年、ある時は不破〓見が明月に鞭をあげ、士峯の空に顏をあふぐ事五たび、又むさしかむつわれたけを經て、碓氷の雪にまよひ、木曾の若葉を分入る事已に六度に及ぶ。東西南北に奔走する事合せて十一度也。水村山郭木のふり石のたゝずまひ、前後左右はまのあたりにおぼえぬ。明朝赴かむとする道は、甲斐の猿橋を渡りて上の諏訪にかうり、si又もや木曾の川音のゆかしきに、枕を支へむと灯こせんぢやう下に先達の紀行を披きて、名所の和歌古戰場の由ふ來をとゞめて、旅行の嚢に收め、足袋はゞきの破れを補ひ、竹杖の節をおろして枕の上にかけたり、我れむつまじき翁に別れ、行末覺束なく、心理は勻塞風狂人が旅の賦並小序たび烹旅は風雅の花、風雅は過客の魂、西行宗祇の見殘せしは皆誹諧の情也。我が翁白川の田植歌を聞き初め、奧羽の間を廻り、高館の夏草三九三
芭蕉翁全集つはものどもに兵共が夢を驚かし、あつみ山の夕すゞみはには吹浦をながめ、佐渡に橫たふ天の川に初あき秋の袂をしばる。それより蛤の二見を渡りてらくはつりきりやうかん七百三十餘程を吟ず。曾良が落髪の力量を感じ。一鉢の飯を分けて風流を盡さる、ひと日たざふだんばせを庵を敲き、〓の雜談に及ぶ時、予に旅十躰の繪をかゝせて讃して、何某が求めに應くす。其風雅にたより、俗語をあつめ狂賦五段となす。穴賢奧の細道草枕の類にはあらず。りよてんしょゐんけんびし旅店のさま上段に書院劒菱のすかし、火のなき火燵にやぐらかけて、門口の入湯桶傾けて居ゑたり。庭に小砂のさはるは、夜べの殘りもいぶかし、たてじま出女の竪島は春秋をしらず。根太板敷は落ちて隅てんじやう隅まで疊とゞかず。天井ふすまは雨もりにきはつかなあんどうき、鐵行燈はくらく、紙は童部の心といふ事に燃えたり。錢賣草鞋賣にせがまれ、やう〓〓に枕を傾むけ、心よき寢入ばなは馬さしの聲に夢を破る。たびびと出たちは七ツと云ひふくめたるに、旅人も亭主もよく寢て、夜の明けてふためくつらも又にくし。大名の寢間にもねたる寒さ哉か道づれの上をいはば、船頭の胸つくしをとり、駕籠廻しをたゝき、馬さしとつかみ合ひ、一僕の後にさがるをねめまはし、鷄の鳴かぬにつれの男をちやうちん第5起し、挑燈とぼして夜道を行くを手柄のやうにし、湯の一番に入りたがるは何の爲めぞや、「つはのおれた枯葉に雨のはら〓〓。といふ前に、世話やきの友にあきたる旅の宿といふ句も此の情にかなへり。海道の賣物に餅酒のなき所もなし。摺針峠の餅をみらいえんわう喰はねば、未來烙王の前にて、からきめを見るといひやそうめんへゝ。寒天にも冷素麵をすゝむるは逢坂の茶屋、みつけだい饅頭のほか〓〓と見えたるは見付の臺也。玉子の煮ぬきは木曾の旅、はな紙は竹にはさみ、錢の看でんがく板は筒をかけたり。蒟蒻の田樂は、何者の喰ひけ:ぶ。一とせの名殘も暮れて、世にある人々のことでかはりぶく月日を、出替の季と定めけるは、世をやすうおくる人にも似たり。出女も出がはり顏や年の暮らうへうはく流浪漂泊の上にこそ、あはれなるためしはおほけね獨坊主には宿をかし兼ね、同じ所に二夜はとみたたあまれめず。五月雨の朝、霙の夕暮に、情深きあるじは長持臭き衣かして、ぬれたる物を燒火にあぶる。あるは三方荒神といふ物にしがみつきて、暫らく店足を休むれ共、極めの札場より追ひおろされて、却つてのらぬ先より股をすくめ、兩方の手に、杖詰つるを携へて歩むべしとも見えず。人間病死の到來はわくわいちう時も所もまたず。醫療のたすけはうとく、懷中のふりぐすりきふびやうじゆんれいひきやく酒香振藥はやう〓〓急病を防ぐ、巡禮飛脚の族は、路まかため頭に倒れ臥す、片目なる肝煎に追ひ立てられ。老僧の愍れみにて門下に入る、おとろへかさなり終に黃泉の下に赴く、かねて何國の土とならん終りむので乘懸に春の蜜柑やうつの山舟、川の上、馬、駕籠の情しば〓〓かぞへ難し、てがたさい五月の大水もかり借の手形に書入れ、おのが草のしやくせん戶は流るれど、首たけの借錢を納して、暫らく息を繼ぐものは、島田、金谷の賊也。水の淺深を何文川とこたへたるは、大きなる洒落也。天龍の中の瀨は、馬人足を空にまどふ。乘る人は股だけ入れて荷を肩にかけてまち、あがる者は負はれ支度わたして舟端に立つ。旦那が鍵をかたねたるは渡し場555うまかたかかきけいちゆうの情也。馬士駕籠昇は、輕重に日月をおくり。ぜん盃の酒に徒然の氣をやしなふ。一生を漂々飄々とえんしよげんとうすまして、雲助の號を蒙ふる。炎暑の日、玄冬のあしたも、榎の木の下に眠りて蟻の都にいたる、し終に飮喰を座敷につかず、汁かけて出す馬方の食と作られ、小便のはしりながら、吸がらは手の裏にはたき、錢は耳の穴に納め、金はふんどしに結勻塞
芭蕉翁全集をしらず、犬はしりの土中にこめて、年の疑ひ、iso衣類の模樣を小札にしるされて、何國のいかなる人といふ名もしらずなり行く也。岡部の辻堂の笠に經文をよみて、同行の別れを惜しみ、隅田川のは号念佛を尋ねて亡子の古墳に登る。今來古往の人、旅懷の情を盡して風雅の膓をさらす。能因は白川の歌をよみて、二たびみちのくへ赴き、不二都鳥の二句を求めて、すみやかに故里に歸る者は、貞室老人也。東海道の一すぢもしらぬ人、風雅におぼつかなしといひし翁の聲、耳の底にとゞまる。于時元祿九年丙子冬臘月日於風狂堂選之五老井主人武林森羽官許六子孟耶觀主頭月澤衞人買年僧李由三六九許六子買年僧李由風雅の實體山野に滿ちて、いまだ亡師の跡をさまさず、しかれども、取捨のたよりをうしなひては、やゝ面々の楊貴妃に誇り、おのが甲に似せて是非をあらそふに、翁の〓像唇を動さず、面受口決の輩も、ひとりひとり露ときえ、雲と成南後、何を範とし誰れを柱とせむ。嗟乎かなしむべし。俳諧滅盡三十年に過ぐべからず。かの優婆鞠多は數滴の油をこぼし。夫子は觚ならんや〓〓と歎ず。まことに後世の翁をまつは、筆の跡なりとて、許六と額を合せ、函底に埋もれし古翁の句、遠近親疎の佳什を列ね侍りぬ。曾丹好忠の家集に習ひ、十二月をわけ、終に韵塞と題す。元祿九丙子冬臘月買年李由自序
韻鬢の霜無言の時のすがたかな我が形りの哀れに見ゆる枯野哉亡師一周忌にみづから畫像を寫して、ぐわぎう智こがらしや百姓起きて出づる家木枯や簀子の下を通る音風にうめる間寒きいり湯哉木がらしにいつすがりてや雨蛙刈株に一すぢ靑し冬の稻乘物につかへまはるや大根引同じ日に山三井寺の大根引水鼻にまこと見せけりおとりこし時雨來る空や八百屋の御取越麥糞の土に落ちつくしぐれ哉原中や星はつて居て降る時雨松山や時雨の脚のはこびやうもらぬかと先づおもひつく時雨哉狼の道をつけたる落ばかな雜水の恩をおくるや落葉搔寒山と拾得とよるおちば搔あかぎれの膏藥つゝむ落葉哉生壁にぬり込む門のおちばかな御玄家も過ぎて銀杏の落葉哉百年の氣色を庭の落葉哉毛許木如老李芭蕉翁野坡に贈りて深川の什物に寄附す。て殊勝に覺え侍りければ、竹樹密に土石老いたりと、年におよぶとかや、御堂奉賀の辭に曰く、誠に木立物ふり當寺此平田に地をうつされてより、已に百十韻宿明照寺(配信中味)本鮮香)塞月芭蕉翁全集塞李由亡人ヱド馬奚〓佛魚口ヱド子李珊由長サキ牡年許六智月正秀許六千那汝村李由如行利合程己毛紈許六木導如老李元由選初雪や一面に降る勢田の橋初雪やならぶ伊丹のかはら葺あげ汐に弟雪ちかし鴨の聲瀧つぼを覗いて見たる小鴨かな明けがたや城をとりまく鴨の聲水鳥も寢あたゝまるか靜かなり行きかへり客に成りけりえびす講御命講や紙子のうへの麻ばかま御命講や顱のあをき新比丘尼脇見して中さかねたるこたつ哉小若衆に念者きはまる火燵哉山寺は山椒くさき火たつかな見臺に髮ゆふうちの火燧哉爐開や左官老行く鬢の霜初雪や網代の小屋の高斯はつ雪や獄屋見舞の重の內鴻の列を崩さぬしぐれかな惟然が、田上の草庵に入りけるに贈る米流れたる一方は藪の手傳ふしぐれ哉雲や時雨と長等山有馬歸路蒟蒻の湯氣あたゝかにしぐれ哉蔦の葉の落ちた處を時雨けり初時雨百舌鳥野の使もどつたか新藁の屋根の雫や初しぐれ裝束の廉も倒さぬ神の留守兀山や化をあらはす神無月一しきり闇もあかるし神無月許松大サカ素ヲハリ朱風覽袖神無月豆腐のうれるあらし哉炭燒や朧の〓水鼻を見る夜の中に木の葉を聞くや駕籠のやね其〓角口掃きおろす牛の背中の落葉哉旅無名庵にて當座行三九九三九八汝村錢芷李由朱袖支ヱド程梁己許六李由去來奚魚許六徐寅李由角上毛執翁米巒丈艸北枝猿雖此筋諷大方事許竹六杉風其角如行
かな物にさはる手もとや神樂姫星寒き三の鼓や松のかぜ住よしにて網代守宇治の駕籠舁と成りにけり御鷹野にすくんで居たり網代守麥主の淚をこぼす鷹野かな紅の鷹の大〓や玉あられ冬瓜のかくてもあられ降る夜哉これほどの霰に寒き朝かな川越のふどしをしぼるみぞれ哉霙降る宿のしまりや蓑の夜者水鼻を吹ききつて行く雪吹かな帆ばしらに雪降りそふや風面十四屋は海手に寒し雪の門わづかなるスサにたよりや壁の雪初しもや麥まで土のうら表朝霜を火桶にのこす寒さ哉萱屋根に霜見る朝の日和哉霜畑やとり殘されし種茄子格の花に明行く霜夜かな水風呂に垢の落ちたるしもよ哉初霜に覆ひかゝるや闇の星初霜や七夜の朝の樽さかな芭蕉庵主十二日月並興行ふくろ戶の押繪に書くや水仙花寒菊や火を燒くかたの眞さかり鼻息や朝飯まつ間の江湖部屋繩すだれ鼻で分けたるづきん哉初雪ををしまではたく頭巾哉はつ雪や拂ひもあえずかいつぶり望まれける時去米が雪の門を題にすゑて、晋子に句を霜韻月芭蕉翁全集塞徐寅大サカ規柳李由胡布京同北謙利枝山牛許六不知作者句空日鮮毛紈丈草李由泥足許六汝村桐汝奚村許六千川〓口木導李由許六木導毛紈許六蕎麥粕の枕の音の寒さかな鵬のかしらも寒し柞原寒ければ寢られずねれば猶寒し氣をつけて見るほど寒し枯すゝき大髭に剃刀の飛ぶさむさかな鮫洗ふさゝらの音のさむさかな兩脇に足袋屋の弟子の寒さ哉葱白く洗ひたてたるさむさ哉寒き日は猶りきむなりたばこ切極松の葉の赤ばる方や冬の暮冬の月杉を澄するあらし哉塀裏の桐の木ずゑや冬の月狼のかりま高なり冬の月鶯に啼いて見せけり鷦鷯晩方の聲や碎くるみそさゞい雪の日や先からさきへ子取婆乞食の事いうて寢る夜の雪六條の豆腐の沙汰や夜の雪しづかさや二冬なれて京の夜土鑊子や燒火になるゝ冬籠冬籠鼓の筒のほこりかな人を吐く息を習はん冬籠大儀して鍋蓋ひとつ冬ごもり舟あてゝきや〓〓氷る寢覺哉京程李吾其米木千李杉己由仲角巒導那由風旅綿帽子の糊をちからや冬の蠅飛退いて鼠の笑ふふすま哉紙子着て樟柱にさはる音さわがしくならぬとり得や古紙子肩置の出所かくすかみこかな干鮭に喰ひさかれたる紙子哉鷹啼くやしのび返しの霜の冴え行行月四〇一四〇〇支考汝邨杉風許六角上木導毛紈翁千那許六木導朱袖奚魚許六惟然程己李由米巒木導千那李由杉風許六蕪下錢芷正秀李由木導遲望
寺町や向ひ合せの梅の花桶鉢もほされぬ梅の盛り哉白魚や黑き目を明く法の網古猫の相伴にあふ卯枝哉なゝ草や次手に扣く鳥の骨七種や明けぬに聟の枕もと爼板に寒し蕪の靑雫蜆子畫賛正待春や机に揃ふ書の小口春ちかき三年味噌の名殘哉訴へを直に聽く也節布子衣くばりいそがぬ顏の廿日頃示小坊主阿段餅の手をはたいて出づる衣配膝かしら出して餅押す寒さ哉節季候をまねて出でけり煤はらひ節季候もはやす乙子の祝ひ哉渡し場や人行きとまる年の市長崎に唐物もなし年の市傾城もいとゞねられね寒念佛寒聲を引ずる松の嵐かな客人に見物させて藥喰禪僧や悟つたうへのくすり喰臘八や腹を探れば納豆汁臘八に愚痴を一臼しらげばや臘八は何とたゝくぞはちたゝき納豆きる音しばしまて鉢扣嫁入の門も過ぎけり鉢たゝき寒き夜や二階の下の車井戶菜大根の土に喰ひつくさむさ哉物賣の急になりたる寒さ哉さむき夜は裾に鞍置く旅ねかな韻月芭蕉翁全集塞李由岱水翁許六此筋桃隣其角浪化李由許六望翠木導東ヲハリ推胡布毛紈奚魚氷化奚魚李由禪■田芦桃本許六諷竹木導翁許六探志乙州風國左次黑土の庚申塚やおぼろ月おぼろ夜や塀の棟木の鳥の糞寶引に夜をねぬ貌の朧かなそれ〓〓の朧の形りや梅やなぎかぞへ來ぬ屋敷々々の梅柳豆腐やもむかしの顏や檐の梅深川懷舊ふるび行く心はしらず坊の梅かしこさの脫いで行きけり梅の花上塗に澁つくむめの匂ひかなむめが香に濃花色の小袖哉梅がゝや通り過ぐれば弓の音むめがゝや山の大師の廻り月梅が香ややねに干したる酒袋ふり袖のちらと見えけり闇の梅寄梅戀から風をうけつながしつ梅の花行く年に疊の跡や尻の形り行く年や多賀造宮の訴訟人來年は〓〓とて暮れにけり來年は〓〓とて暮れにけり同じ人に又あふ年の一日かな露ヲハリ仙川化木綿買ふ門の座頭や年のくれ股引や膝から破れて年の暮氷魚といふ名こそをしけれ年の暮追鳥も山に歸るか年のくれ問ひかへす咄もなしや年わすれ煎茶に食粒の入る師走哉煤の手に一步を渡す師走哉すゝ掃や園爐裏にくばる番椒煤掃に砧すさまじ雪の上すゝはきに鼻の欠げたる佛哉煤はらひ不動に似たる眼かな松かぜや琴とりまはす煤拂長明がいかに見るらんすゝ拂四〇三許六徐寅李由千那翁許六諷竹角上保大サカ許直六毛紈汝村朱袖野坡木導去來許六百里馬佛千那丈草曲翠胡布岱水李由嵐蘭米巒木導臥高介我
逢坂や鶯きかば小關越鶯や此のまに雪も降りながしうぐひすに浮れて脫ぐや下ひとつ鶯の鳴破つたる紙子かなうぐひすやまん丸に出る聲の色幸ひに柳も寐るや春の雨やぶ入や親なき里の春の雨養父入の客のとりけり蕗の薹春雨や鶯這入る石燈籠鶯の聲もさはらぬ日より哉はるさめに水のいさみや雲出川物よわき草の座とりや春の雨春雨やはなれ〓〓の金屏風氷凝解にほつれて咲くや蕗の花海じ山の霞冥加や生れ國朧々直に霞みて明けにけり灸の點干ぬ間も寒し春の風古佐和や赤菜の中の春の風春風にむかふ椿のしめりかな鳥の巢に蓋して置けば椿かな雀子と聲鳴きかはす鼠の巢かげろふや破風の瓦の如意寶珠陽炎や足もとにつく戾駕籠くろき物ひとつは空の雲雀哉日中のあをみにすわる雲雀哉砂川や芝にながれて鳴くひばり眞直に矢橋を渡る胡てふ哉蟷螂の夢見て逃ぐる胡蝶かな蜂の子をのがれて蝶のそだち哉大峯や櫻の底の雉子の聲思ひ子をしかるに似たり雉子の聲二俣にわかれ初めけり鹿の角乞食の寢所かへるや朧月題餘寒韻芭蕉翁全集塞許六馬佛野坡支考翁許六去來李由隱山許六木導如行丈草李由千那翁支考濁子千川許六木導尙白杉風昌房吾仲〓口許六李由木導米巒千那杉風毛紈菜の花や豆の粉食の晝げしき唐人のうしろむきたる柳かな結ひたての髪を撫でたる柳哉我がまゝに枝のそろはぬ柳哉伐りたてゝ空に靑みや川柳川上へ流るゝやうな柳かな風のむきけふは隣りの柳哉梅が香をくだく柳の梢かな傾城の生れかはりか猫の妻初茸の盆と見えけり野老賣掃きためを捨てかけておく春の雪下萠の氣色を消すや春の雪春雪や茶糞の上のむら鳥雛事のつゞきにあそぶ花見哉芳野山又ちる方に花めぐり菜の花や畑まぶりの大蕪二ン月の雨より細き柳哉涅槃像後は釋迦の立佛草の戶の草もゆかしや花の雲了明照十二世超芦の葉の達磨に似たる蛙哉糞草の烟るも二日やいと哉菜の花を身うちにつけてなく蛙百姓の訴訟顏なる蛙かな苗代やうれし顏にもなく蛙苗代を先づあてにして歸る雁きさらぎや身は思はねど押やいと二三奈良にて故人に別る大和巡路の頃、六田の渡りにて五斗の米の爲めに、腰を折るに懶し寄霞谷元政上人月月四〇五四〇四李由去來左次毛紈許六李由木導毛紈許六汝村毛執千那許六李由如元徐寅此筋子珊木導汝村木導其角許六李由毛紈
紬着る草臥れて地にとりつくや木瓜の花行く春に飽くや干鱈のむしり物ゆく春に佐渡や越後の鳥曇行く春や麓におとす馬糞鷹大和路の望みの春も暮れにけり水風呂の置處なし春の暮藤の花さすや茶摘の荷ひ籠うどの香や膳のむかひの稻葉山獨活の香に亭主のすゝむ出立哉革足袋や野はあたゝかに木瓜の花永き日や大佛殿の普請聲方へも越えむと申しければ旅難波の諷竹、韻其の頃岐阜の方よりの文通にらく行脚の頭陀をとヾめて、客に取つけ木瓜の花行塞之道といひける時、李許〓ウ大ツ嵐許諷李許又美濃のしば殘錢李由六口月竹六竹由六香芷由金の間の庭一ぱいや八重櫻春の夜は櫻に明けて仕廻ひけり山彥に散果したるさくら哉茶のはりにそしつて散るや山櫻大竹の間に咲くや山ざくら鯉のぼる瀧の濁りや山櫻伐口を人のをしむや山ざくら寢とすれば棒突きまはる花見哉玉饅頭で人を尋ねよ山ざくら壁土に道せばめけり花ざかり花の山常にながるゝ井戶ひとつ崖端をひとりが覗けば花の山花にいざ節振舞の遲なはり日あたりの花見る顏や婢子の目年々に猶いそがしや花盛り東叡山吟行二句遊五老井芭蕉翁全集중こ李許〓ウ大ツ嵐許諷李許錢李李翁米許木毛徐同其句諷野望孟ヱ許由六口月竹六竹由六芷由由巒六導紈寅角空竹坡翠退六風の日は何にかたよる杜字傾城に喰ひつかれたるあはせかな杜時鳥眞一文字のきほひ哉外宮內宮とたんに聞くや杜宇草臥れて三井に歸るかほとゝぎす笋の鮓を啼出せほとゝぎす上ひとつ脫いで大工の衣がへ水引いて髪ゆふ姫や更衣世の中をうしろの皺や衣がへ兄蜀子もふまず枕もふまず杜鵑いつとろに袷になるや黑木賣鵑鴨川の水山魂門は胡桃の茂り哉弟遊長命寺が顏見合すや蜀魂四〇七法師懺法のあはれ過ぎたる日の永さ長々と蛸も伸びする春の海出替に都司王丸の葛籠哉五器箸に離れて出るや一季者出替りに替るや髮の結ひ心紙屑や出がはり跡の物淋し出替や傘提げて夕ながめ松原に風を殘して鹽干哉鹿島には杉菜の生えるしほひ哉草足あとのやさしきもある汐干哉室咲の桃に糀のほこりかな火は燃えて家に人なしもゝの花實をねらふ足輕町の桃の花桃さくや宇治の糞船通ふ時鵜の巢や日は入りはてゝ散る櫻逢坂のかたまる頃や初ざくら餅にいな振舞や鯲汁四〇大四月其徐去毛李千木丈杉程其許李支許附六五五肅李木千許風山一ヒコネ土梨ヒコネ鼠朱程汝千角寅來執由那導草風己角六由考六鳥山由導那六國店呫芳期彈袖己村那
いはひは松柏を植ゑた痕ありすしの石五月ひるがほに晝寢せうもの床の山むづかしきすゑのとまりや幟竹なよ竹の末葉殘して紙のぼり競馬見てもどりは陣の噺し哉柑類の花の盛りの御室哉猫の手も江戶拵へや夏ごろも布杭に桶の尻ほす五月哉さみだれや焙爐にかける繭の臭五月雨や蠶わづらふ桑ばたけ夕だちのかしら入れたる梅雨哉許六が、東武吟行のころ、仁和寺懷舊韻へ文のおとづれに塞東武に赴くと聞きて申し送る翁美濃路より李由が許胡其朱旬大ツ亡人李可ミ汝翁丈布角袖兒由吟村草熊谷の堤あがればけしの花本庄の三ッ目の橋やけしの花芥子の香にたま〓〓似たる牡丹哉蠟燭にしづから獅子の血を干しつけて牡丹哉三味線の音にはり合はぬ牡丹哉楠の鎧ぬがれしぼたんかな靑天に向つてひらく牡丹哉烏賊賣の聲まぎらはし杜字ほとゝぎす勢田は鱸の自慢かな芥子の花を見る。信濃上野を過ぎ、畫いふ句の力を得たり。題觀心寺牡丹聞きて大津に住み侍る頃、賛芭蕉翁全集まりかへるぼたんかな許馬頭初見米嚢花」とむさしの地にいりて汝陳李許木其汝翁許勢田にてはつねを六村曲由六導翁嵐許許木其汝翁許勢田にてはつねを草竹六六導角邨六風呂屋より直に見に行く螢かな月澤の夜遊胴龜や昨日植ゑたる田の濁り燕の下腹さはる早苗かな菩薩とはならでや道の餘り苗腰のして念佛申す田植かな靑鷺や世間ながむる田植歌凉風や靑田のうへの雲の影投げられてもろき命や築の鮎大名に馴れたる鮎や大井川箸持ちて鵜籠を覗く宵月夜伊勢荻や鵜の進む夜の風の音見物の火にはぐれたる步行鵜哉鍛冶の火も篝に曇る鵜ぶね哉蓑笠もあら鵜つかひや川おろし出女や水鏡見るところてん晝顏の果も見えけりところてむ四句四〇九笋の勢にこけたり鮓の石竹の子に身をする猫のたはれ哉筍やからげてかつぐ手傘鼻紙の覆盆子に染まる畫寢哉草臥れや蕗の葉もりの蔓いちごくらがりに覆盆子喰ひけり草枕日あたりや紺屋のうらの杜若藤棚や池の小すみのかきつばた傘にかゝやく色やかきつばた佛法を裸にしたる產湯一哉灌佛や捨子すなはち寺の沙彌卯の花に隣りありきやぬれ鼠うの花の葉は持ちながら笹の垣卯の花をかざしに關の晴着哉花芥子や握りつめたるあたゝまりつくろひける事おもひ出して白川の關こえける時、四〇八李許木朱汝史許奚木許其諷土曾竹田の太夫裝束木由六導袖村邦六魚導六角竹芳良導木許胡乙吏ミノ正許此毛朱馬去汝李木許李許木朱汝史許奚木許其諷土曾導六布州明秀六筋執袖佛來村由導六由六導袖村邦六魚導六角竹芳良
すゞ風や與市を招ぐ女なしかさねて武者繪かきたる扇つきつけら朝顔や扇の骨をかきね哉ある方より〓扇の葬に當座所望いそがしきから白踏の團かな鷹匠のはしり付きたる〓水哉爪紅の濡色動く〓水哉凉しさや松の葉越の破風造りあげ笘に凉むばかりぞ向ふ風肩衣はおの〓〓すゞし帆かけ船中間の堀を見てゐる夕すゞみ山伏の髪すきたてゝ夕すゞみ前おたれはづして町の夕すゞみ此のあたり二三度もどる凉みかな乳母どもの食の噂や夕すゞみ中入や面をはづして一すゞみれて塞長サカサガ長サキ同其許徐卯野魯支木許李野毛汝角六寅七明町考導六由坡執村夏富士にほつれて凉し雲の緣田の草におはれ〓〓て富士詣撫子の泄は落さじ麻地酒南天にしばしと干すや汗拭一竿は死裝束や土用ぼし內張の錢の暑さや土用干有難き時代にあふや土用干かしこさに合戰なしに飛ぶ螢苗塚を休み處や飛ぶほたる夜の更るほど大きなるほたる哉れける。八十に餘る老祖父、六つけて、りといひつたふ。宇治川の螢は、月芭蕉翁全集はやく死したとばかり、今の世は昔日三位入道の亡魂な子孫の榮えゆくに汝奚史山許願は許六亡父杉理性軒許李汝村魚邦店六風六由邨長サカサガ長サキ許徐卯野魯支木許李野毛汝同汝奚史山許許六寅七明町考導六由坡執村村魚邦店六六七蛋虱馬の尿するまくらもと川越や蚤にわかるゝ橫田川水無月やとりおくれたる舟日待口の代て蠅をはせぬか瓜つくり大垣は夜明になりぬ眞桑瓜旅世をいとふ心のはしか蚊屋の中蚊やり火や食にさしあふ西の岡月代をさはきたてけり蚊のうなり凉風や峠に足をふみかける旅素堂の母、宿山中て題とす、月七日にことぶきする。行行月四一一これにつらなる者七人、七十あまり七としの秋、此萬葉七種をも七翁彫奚利眠彥根謙乙苔イガ許あつみ山吹浦かけて夕すゞみ棧やあぶな氣もなし蟬の聲蟬鳴くや土用の中の畫談義米の直も大かた似たるあつさ哉川端をうちかへしたる暑さ哉惣に兀長持のあつさかな大磯や砂のひかりのあつさ哉桐の葉に埃りのたまる暑さ哉ゆふだちやひし〓〓とやむ鳥の聲白雨に一足はやし旅籠町夕立に幾人乳母の雨やどり照りまけて夕立雲の崩れけり眞白に繭干す庭や雲の嶺暮待や藪のひかへの雲の峯雲の峯石臼を挽く隣りかな木曾路伊賀の舊友より文通の返しに四一〇月翁彫奚利眠彥根謙乙苔イガ許翁許程羅大サカ游如陳孤李此許猿奚去李棠魚合石山州蘇六六己香刀行曲屋由筋六雖魚來由
八朔に酢のきゝ過ぎる膾かな八三日月や柱にすわる高燈籠走り穗を分けて出でけり三日の月秋さびし手毎にむけや瓜茄子訪草庵食の湯の汗に出でたるをどり哉傾城の汗臭くなるをどり哉後から家老のあふぐ勝相撲裸身に麻の匂ひやすまひ取投足に燈籠打消すすまひ哉相撲取の腹に着きけり虻の聲初秋や親に離れし相撲取下帶のあたりに殘る暑さ哉贈〓貧僧蜻蛉のついとぬけたる廊下哉斜美濃嶺かさゝぎの橋や繪入の百人一首五位の聲まだらに更けぬ天の川めでたさや星の一夜も朝顔も蘭の香にはなひ待つらん星の妻けふ星の賀にあふ花や女郞花動きなき岩撫子や星の床布に煮て餘りをさかふ葛の花織女に老いの花ある尾花哉七株の萩の手本や星の秋今我が母のよはひのあひにあふ事をことぶきて、じ給ふは、むかし此日家隆卿、なほ九としあまり九ツの、みづからを祝ふなるべし。七そじなゝのと詠其杉曾沾嵐翁なり。重陽をもかさねまほしくおもふ事しか韻にならはむ。の結緣にふれて、各また七叟のよはひ月芭蕉翁全集塞許六錢芷李由翁李由木導汝村許六朱袖木導米巒李由許六汝村素堂其角杉風曾良沾德嵐蘭翁葉隱れの蝶斬のやどりや蕃椒松だけや大きな聲のなぐれ賣松茸や園爐裏の中に植ゑて見る松茸の笠のひゞれる礁かな日暮から長屋へやつて碪かないざよひや堅田かもどる神明講十六夜の氣色わけたり比良伊吹いざよひや有馬を出でゝかへる人十六夜はとり分け闇のはじめ哉小草までともにそよのく月見哉名月のこれもめぐみや菜大根名月は蕎麥の花にて明けにけり名月や無事に穂を出す竿はづれ捨てらるゝ目に度々や今日の月病酒臭き鼓うちけりけふの月鷄頭を黑うてらすやけふの月秋の蝶一葉と散るや夢の中そなへもの名は何々ぞ魂祭芋の葉に風の吹きけり玉まつり玉棚の奥なつかしや親の顏大坂卓徐去桐袋寅來追聖靈とならで越えけり大井川十團子も小粒になりぬ秋の風同じ頃、島田金屋の送り火に感をます同許朱の丸の入日の中や秋のかぜさびしさや馬屋の蚊屋の秋の風作り木の糸をゆるすや秋のかぜ澁い壁に何をたよりの秋の風燒きたての食のにほひや秋の風あさがほのうらを見せけり風の秋初秋や帷子ごしにかゝる雨七夕や馬すゞまする川の端宇津の山を過ぐ床悼四一三四一二米巒吾仲團伊勢徐友寅如元毛執汝村許六翁徐寅許六李由千那馬佛其角文鳥徐寅去來同許六毛執汝村嵐雪程己李由許六毛紈錢芷桐
秋の野をあそびほうけし薄かな穂すゝきをたばねよするや秋の畑むら尾花ふりむく鹿を招きけり小男鹿やころびうつたる蕎麥畠月代に吃と向ふや鹿の胸穂のうへに高低もあり後の月き月影やこゝ住よしの佃島つくだじまあを空や手ざしもならず秋の水早咲の得手を櫻の紅葉哉棧や命をからむ蔦もみぢてりたてゝ夕日春け初もみぢむく起や峯の紅葉の朝しめり水鼻にくさめなりけり菊紅葉傘持も月におくるゝすがたかな唐がらし菜摘み水汲み法の人同年の尼くづをれて袖の露禪門の數珠持ちそふる落穂哉稻刈の其の田の端やこぎ所蛤蜊のすがたも見えず稻雀蟬の音や株ほす藁の日のよわり豆まはし廻しに出たる日向哉畷豆を引く手にはづむ螽かなき虫の音や木綿所のわた車やねまくる暴風の中や虫の聲くるゝほどばせをにひゞく虫の聲生れつく草の靑みや秋の虫源氏の〓賛望まれて、るさゞればひきのけておなじく供養に詣でゝ亡母年回追悼いなみけれどゆ其許李木許李汝支爲汝李許文題十三夜遊五老井二句木曾路にて宿山寺韻芭蕉翁全集塞李由芦本梨期許六木導游刀其角同丈草翁野童李由其角其角許六李由木導許六李由汝村支考爲有汝村李由許六文鳥客人の夜着押しつくる夜寒哉稻主に啄をかくすや小田の雁雁の行くづれかゝるや勢田の橋B又來たと鴉おもふや小田の雁歸り來る魚のすみかや崩れ築あたゝかに九月日和や藪の照り山中や菊は手をらぬ湯の匂ひ菊の香やふるき難波の呑手共濡落の雫霽れけり菊の露猫の毛の濡れて出でけり菊の露菊は猶捨てじ佛のたてからし顏痩せて花肥したり菊作り塗物にうつろふ影や菊の花加州山中の重陽福械栗の笑ふも淋し秋の山ら遊五老井わたまし徒移や先へ來てゐるきり〓〓すいが栗や落つる合點に突いて迯げ雁がねのむすび合すや眞野堅田干鮭の目へかゞんだる竈馬かな病人と鉦木に寢たる夜寒哉落雁の聲のかさなる夜寒哉白雁や野馬をおどす草の露夜ばなしの長さを行けばとこの山世の中を這入りかねてや蛇の穴朝霧や水をはなるゝ鵜の雫霧雨の空を芙蓉の天氣哉石山の石にも蔦のうらおもて大きなる家ほど秋のゆふべかな孟耶觀の夜話訪〓里舊友自〓自賛二句九月四一五四一四許六露川苔蘇李由程己丈草同許六李由北枝毛執支考丈草水魚翁千川朱袖岱水千那李由木導丈草惟然毛純翁乙州許六
胴龜の夜番を起すついり哉庚申やふく病につれなき霜の名殘哉甲子をまつや隣りの菜菔引てり曇る十方くれのあつさ哉頭痛する八專中や椎の花おぼつかな土用の入りの人ごゝろきら〓〓と秋の彼岸の椿かなくゝ立の花うちこぼす彼岸哉甲庚八十八夜八入十方くれ土二百十日韻殊に炬燵のある座敷梅子申專用塞雛の來ぬ閏に咲くや遲ざくら衣配りまつや師走の一かさねさみだれにふた月ぬるゝ靑田哉五月雨も日と月のひよ閏月勻ふたぎ追加十年も行く秋や身に引きまとふ三布蒲團のび〓〓て衰ふ菊や秋の暮麥地ほる一くらがりや民の秋靑き葉をりんと殘して柚味噌哉喰殘す柚味噌の釜のいとゞ哉磯際の波に鳴入るいとヾかな閏芭翁後の旅行儀別に謝芭翁被訪草菴悅而奮交訪隱者不遇芭蕉翁全翁言葉一つの暮の秋月塞古如立芳石千錢米殘毛程杉木支翁禪許汝團程惟那芷巒香紈己風導考元甫山菊桃六村友己然冬冬春立つや齒朶にとゞまる神矢の根大豆をうつ聲の中なる笑ひかな寒に入るこゝろにかるし夜着の裾月花の愚に針たてむ寒の入しみ〓〓と餅腹寒きゐのこ哉門前の小家もあそぶ冬至かな石竹も半夏に胡麻蒔くついで哉半夏水や野菜のきれる竹生島菜大根に二百十日の殘暑哉立の節年內立春寒冬ゐのこ半夏生春春心の外や梅の花分至四一七百姓の娘の出たつひがんかな月蝕の露にあてまし白牡丹練絹の色もうるむや月の蝕日蝕の朔日は猶あはれなり鉢扣助番や二十九日の大晦日文月の三十日おどろく燈籠哉晦日も過行く嫗がゐのこかな味噌つきより七十五日や花の春三月も閏の則の寒さかな彼月日朔小極月に閏ありて次のとし歲旦大岸蝕日に喰入るや栗の虫蝕日四一六許智其卓翁徐朱許伊勢柴彥根孟江戶似不知作者李許木汝李比尙水六月角袋寅袖六由六導村由雫什竹白春魚
芭蕉翁全集跋日本書記は天理の牘を窮め。源氏物語は人情の實を盡すとかや、今韻ふたぎと題する二卷は、李由許六が膓なり。木導汝邨其のほか羅漢のやうなる者ども、花の雲にあそび、月の水にたゞよひて、人一如の誹諧の一揆、赫然として百尺の竿にともし火をかゝぐ、詩歌管絃の舟をかざらばおの〓〓身を和らげて、夢乘ぬべき彼の廬山東林の交り、遠法師陸道士車座に酒のむ顏ならむかし。蒲萄坊僧千那書孟耶觀主頭月澤衞人買年李由五老井主人武林森羽官許子六刀奈美山引頭巾とも襟卷ともつかぬはなむけせしは、霜月十三日の夜也。そのよはことにさむかりしかども、嵐雪に妹ともいはせず、桃隣に疝氣とも迯さず、落柿舍をたゝいて入りしより、先づたき付くる酒の燗、ともに本情をあらはすたのしみや、四子一胸に成りて、芭蕉翁の昔しを泣きみわらひみ、嵯峨の咄しは幻住庵へとんで、深川をわたれば、〓瀧川の塵なき月を思ひ、猿蓑の評は芝居の沙汰にうつり、戀をば一句にてこそ捨つといへば、早く傾冶のたはふれに事よせて、人事人情かはる〓〓の轉動の上にも、十人の酬和と云ひし九人が意地をたてしも、たゞ翁一人を眼にし口にし、横行の蠏の迯穴をふんで、時のさかなにせんとはなししこるに、八ツの鐘耳ひそかにして、鉢たゝきのしはぶき來る、是を嵐雪が馳走にと、十錢をなげて千聲のひさごをならさしむ。千鳥なく鴨川こえて鉢たゝき其角今少し年寄見たし鉢たゝき嵐雪刀奈美山引其嵐角雪
芭蕉翁全集へうたんは手作なるべし鉢たゝき桃隣旅人の馳走に嬉しはちた〓き去來されば堅固のつとめ哉と、その跡をしたうて、明れば十四日の明ばのに四子北野へまうで侍り。輪藏を廻りて回廊によれば、雪の風はな松をはらつて羽織にしめり、かぼそき梅にかゝるさへ田樂の匂ひになりて、盃はと勸むる桃隣が貌色ことに靑し。嵐雪が奉納の一句に十面するを、時うつすまで繪馬をながめて待ちかねたり。どかくする中に、かたはらに腰掛所得て、爰に都の名殘ををしめり。むかし芭蕉翁北越の旅寢に、ありそ海の吟あり。浪化君此の句より信仰の一集をおぼしめし立ちありて、去來着頭をかうむる也。江戶門葉のものにも、かねて發句まゐらすべきよしを、催しぬる事を語り出で、とみにとなみ山のおもてを起しぬ。往年落柿舍にて夜ひそかに翁をむかへ、向對の盃ありて、門人のかためをなさせ給ふ御志の、目出度く覺えぬれば、予も一かたに思ひ侍るよしを約して、心かたむかぬ等をぬきんで、撰集の餘刀とし、こしのとなみに雁陣をたて、同じく縮柳の麾を揮つて、下知する事をしかいふのみ。初雪や爐次に女の雀強かくれ家や片耳かけて角頭巾春やぶ入やひとつはあたるうらや算齒につかぬ子こもりも哉花の時物陰や田螺ののぼる種だはら彼岸にて彼岸櫻のちりにけり春の野や木瓜は莚の敷合せやぶ入や朧月夜の酒の醉夏卯の花に芦毛の馬の夜明かな早乙女の手でせくものよ川の支飛石の間や牡丹の花のかげ旅立に火繩やりけり門すゞみ凉しさや帆に船頭のちらしがみ凉み舟鵜はかしましと沖へ行く秋紫專紅吟となみ山の表こがらしや沖より寒き山のきれ高きところに生えるふゆ麥來春の用意するらん木具提げて家は見事にたちそろひけり山鼻にしる人持ちてはしりよるきざみなますに入るゝこんにやく萩の花小刀ぬいて下へおりはこに鼠のかゝるあさ露有明の汐に筏をおしくづし番羽織着ていきるくみつき冬此の家が不破の關屋か雪の中初雪に眞葛が原のめかけ哉すり針や今ふるやうにいつの雪はらはずに雪の風鈴の音もなしとなみu其角浪化嵐雪桃隣去來角化雪隣來晋岩尺彫沾專子翁草棠德吟許彫介岩晋枳六業我翁子風岩晋龜介翁子翁我四二一
腹持を今朝の鰍に直したり行違ひ手ぶりで通る松の間淺武士片側にしやら〓〓と花見の通る眞盛りきのふの古着ねをさしてくる柴積んだ上に子供をあそばせて旦那の留主は門たてゝおく五百の錢をどちへすまさうおもふ事あとは念佛にまぎらかし翠簾の下ひそかにくヾる秋の風月もくらみて光るいなづま越前衆の遲うたゝれし下町の盜の出た咄しして芽のとなみ山臥高浪化曲翠露を戀九一九寺町の胡故正秀の一春景八九名月をこゝろ〓〓に申しなし箸に露うく盃の松茸の數を袖より見せ合うて捨鐘の間を降出すくれの雪鷹とまらせにおろすたれごもされければ礪浪山の撰集に、もち雁の腹見送る空や舟の上水の蛛一葉にちかくおよぎ寄る寢た家の燈籠哀れに月夜哉種のくれはり合ひもなし舟遊山曉を引板屋にかはる妻もがな星合や元祿猪頭勇進之日去來丈芭蕉翁全集離別の中をわびて見ん演說し給へと我がかたの連衆催ほ胡臥正浪曲翠故高秀化其同晋未紫秋色女山角子陌紅蜂高秀故翠秀高翠故高秀故翠秀高角湯屋の手透は八ツさがり也上紺の木綿合羽に傘さして年中を松の內より料理くひ梅咲きそめて立花はやらす謂分のちよつ〓〓と起る衆道事小屋敷並ぶ雫たる網を一ぱい引きちらしかひごの臭き六月の末旅人に錢をかはるゝ田舎道ひろい處を丸口にかる炬燵切る寒さもちかしくれの月又時の間にわるうなる空やぶ入の見やげ似合ひに拵らへて禮者うすらぐ春の靜かさ鶯に朝日さす也竹閣子名月のもやう互にかくしあひいせの狀日のいそがしき春四二三城の裏町五器に蓋してもろふ何やら蜂のさす貌をさまゐてすゞみ居るそこら廻りの鍬すてゝおく陽炎のちら〓〓としてあたゝかに春のひよこの股立をとる今はやる庭とて花を五六本豆腐に葛のまづきれいなるよひ衆の見たがられたる秋のくれ椶欄の葉に風吹きあつる月よかげ戶を片陰にひろき寢所す時雨の頃はみのを出て行て去さび刀冥加もあれといたゞきて反故にもちよつ〓〓と見ゆる文の端るともかうも少しの金をしひろげて湯治の旅をあとさきの初きの岸を下る川舟宮人のむすめ養 ふ四三浪去化同化同來同化同來同化同來同化同來翠故·高秀故翠秀高翠故高秀故翠秀高翠
芭蕉翁全集言Ser一步でもなき梨子の切物玉味噌の信濃にかゝる秋の風不足な寺を無理に持たする右の手の振ひしだいに强うなり點かけてやる相役の文此の宿をわめいて通る鮎の鮓靑田うねりて夕立のかぜ平めなる石を敷きたる行水場給仕をさせて馬夫が食喰月くらき夜の鹽梅を星でしる聖靈棚はよほど窮屈しのぶ間を踊に出るとおもはせて來てうからかす去年の傍輩參宮といへば盜みもゆるしけりにつと朝日にむかふよこ雲蒼みたる松より花の咲きこぼれ四五人通る僧長閑なり四二四薪過ぎ町の子供の稽古能いづつも春にしたきよの中浪化十五去來十五芭蕉六芭蕉同來同化同蕉同來同化同來化蕉來化蕉來ことし乙亥のむ月、加賀の金澤に旅寢す、たま〓〓芭蕉翁の百ケ日に逢ひ侍れば、句空、北枝が等をまねぎ、この日の作善をおこす。即興問殘す歎きのかずや梅のはな北枝春も氷にしづみつくいけ浪田を返す馬の鞍蓋こしらへて句石つる方へとやのかたがる林白水の二番取りおく月の影牧北枝浪化句空林紅牧童かみ往昔の宗祇の連衆したはるゝ蒼き空より雪のうちゝるあふつけに小ふとん敷きて里歸り一荷ひほど鷄頭のはなうそ寒き淺草前に店はりてけさは露見るやねの置石つう〓〓と目白の渡る月白し藪のうしろを鉦たゝき行く麥刈の晝間過せと留主をしてひえたる菓子を盃にもる上一ツぬらで帶するひぢりめん船ゆる度に肝つぶす君さればこそ松は花より朧にて海苔もてはやす百日の空北枝八浪化八句空林紅三牧童梧桐落つるを秋の手はじめ打明くる折敷にはぜのそりかへり這ひかゝる子にいかい目をむく借屋から奉加の帳をつけ廻り袷洗うてもらふ旅だちうは〓〓として何もかも忘れたり笑うて濟す途なかの禮物ねぎる內より雨の晴れあがりおもひがけなきうづらなき出すすががきの同じ手かへす秋の暮殿にもまけずいらへする月ちる花に有る程の戶を明けはなし欲にめし喰ふ熊野路の春さえ返る兵具のつゞらしめからげめづらしさうに犬の尾をふる裏白のほぐちのうつるすりびうち四方えんなる茅の辻堂み山筆童枝化童枝化童空化枝空童子紅化枝紅空枝童空化童枝化空枝童空化萬句空牧童四二五七八
芭蕉翁全集萬子一四三六獨言いうてくやむや小夜時雨痩せ〓〓て終に折れけり水仙花初雪や扇たけなる墓の松白玉も淚の名なり冬つばき聞忌に籠る霜夜のうらみ哉同芦壽呂林北筆一葉仙風紅枝追悼のほ句去年の神無月、翁の辭世し給ふ事も、越路のはし〓〓にはやゝ日數へて聞えぬれば、義仲寺へ手向抔おそなはり侍りて、晋子が終焉の記にもゝらされし事、人々あさましとおもへれば、今ここにとヾめぬ。落着ば難波のゆめや都鳥句かなしさや時雨に染まる墓の文字浪加賀冬籠うき次手なる別れ哉萬風渡る枯葉に見るや雪の舍利加賀黑海苔の文も形見や雪の跡四風と化すたよりに袖の時雨哉越中平車座に並び泣きけり冬の月宇蕉翁の落柿舍に寓居し給ひけるころ、たづねまゐりて、主客三句の情をむすび立歸りぬるを、その後人々まゐりける序、終に一卷にみち侍るとて、去來がもとより送られける。葉がくれをこけ出て瓜の暑さ哉去來野松に蟬のなき立つる聲浪步荷持手振の人と咄しして芭かごと御供の間ひとぎるゝ之半時ほど夜のかゝりたる月の入丈句空浪化加賀萬子秋之坊加賀四睡越中平交宇白れ去來浪化芭蕪之道丈草火のばち〓〓と燃えてやゝ寒む軒口は蔦這ひのぼるふしん前兄弟どもが兄をあがむる切立てゝ畠見渡す丹波やまそろ〓〓出す冬のうりもの寄合は鯨のとれぬさたばかりあかうすゝけしあんどんのさやちくとした風呂敷さげて戶を叩きこそり〓〓とそよぐ黍の葉砂川の淺くながるゝ夕月夜露しとれども輕荷ふらつく百遣ふ花の木陰の店屋もの菜種朧に西を見はらす此の寺に〓嚴よめしこぞの春獵場の公事のむづかしうなる朝のうちむす子に馬をおはせやり餅つきあげて汁粉もり出すとなみ山支惟野野考然童明來道草考然童明道來草考然童はご板の寄せて一間にあまるほど僭上いうてめかけたづぬる茶小紋にろの十德のすんかりと手船さつさと秋は來にけり此の夕べ月を野にとり山にとりしづが畠のなるこからつく雨氣つく鉢の戾りのはら〓〓と早う出來たる市の小屋懸此のごろの化物ばなししづまりてむこと舅のなほる挨拶御局の里下りしては涙ぐみぬつたはこより物のだし入れ花の香の暫くやまぬ宮うつし日がな一日鳥のさへづり去來四浪化一芭蕉之道五支考明道來草考然童明道考草蕉然明芭蕉支考四二七二五
牛の鰯干を燒けば匂ひの鼻につき靑い合羽のつゞくあめふり本丸を打ちこして見る花の雲聞きしより宮司の娘てんばなり凩やあそびのやうに前わたりくる賀刀奈美山撰集釼を振債の銀をいたヾく夕兆呂風其繼嵐靑ふ三五六六礪浪路健林紅浪化山しづ〓〓と女房達を先へたて月代見えて月の出かぬる金屏をたゝみよせたる秋の風みかんのかざのはんなりとする入りちがへ〓〓ふる玉あられ手繰おろして間にかよふ也寢處を不性や晝も敷きつめて村をはなれて小家一軒紫陽花に螢みだるゝ水の色廿四五夜のほのくらき月木綿取る庭もお上もふさがりてうす〓〓霜のみえわたるあき百舌鳥なくやまだ明星の入殘り凩芭蕉翁全集野童丈草四五み山礪浪路健林紅浪化野明惟然山四五七五五嵐路タ林呂浪其靑兆紅風化繼靑健兆紅風化繼去來風兆靑紅化繼藪をはなれず人ちかな雉子しん物の串柿おろす春の月內のつとめにかゝる遊行派封切に役の人足つめさせて手のきはばかり殘る松明一面に雪のふり込む水たまり御齋過ぐればはら〓〓とたつこも僧に大事の手共所望して顔の上氣にうつる白粉湯づき苧をかけちらしたる竹の垣けふは隨分朝起をするいくはなも大名衆の鍵印沖より風の吹きまくりけり杉の葉の花にならべば赤ばりてうらゝに眠る長谷の所化寮鶯の餘の鳥どもと鳴きまじり御國いんきよのめでたかりける四八八紅化繼風健靑化紅化繼靑健風化繼靑健
芭蕉翁全集有磯海序四三〇はれの歌讀まむと思はゞ法輪に詣でゝ所がら薄を詠めよとをしへ、雪見の駒の手綱しづかにして、濔橋の邊りにあそべと示しけん、よくも風雅のわり符を合はせて、向上の關を越過ぎける事よ、然れどもつく〓〓おもふに、是等はみな文吏官士の上にして、たまさかに市塵を離るゝ便なるべし平生身を風雲に吹きちらして、心を大虛にとゞめむ中には、限りもなき江山に足ふみのばして、行先毎の風物をあはれみ、雪ちるやほやの薄としをれ果てたる風情、いかでか其の法輪、濔橋にのみかたよらんや、されば芭蕉庵の主、年久しく官袴の身をもぬけて、しばしの苔の莚にも膝あたゝまる暇なく、所々に病床の曉を悲しみ、年々に衰老の步みを費して、またとなく古びたる後姿には引きかへて、句ごとのあたらしみは、折々に人の唇を寒からしむ。一年越の幽蹤に杖を引きて、袂を山路のわたくし雨にしぼり、海岸孤絕の風吟、心を惱まされしかど、聞入るべき耳持ちたる木末も見えず、辰巳あがりの棹歌のみ聲々なれば、むなしく早稻の香の一句を留めて返られ侍りしを、年を經て、浪化風人の吟鬚を此道に撚られしより、あたりの浦山頭をもたげ、翠をうかべしかば、いつとなく此の句の風に移り浪に殘りて、えもいはれぬ趣の浮びけるにぞ.ひたすら其の境のたゞならざりしことを、をしみ感ぜられけるあまりに穗を拾ひ葉をあつめて、終に此の集の根ざしとはなりぬ。この頃洛の去來をして、あらましを記せん事を蒙ふる。かゝる磯山陰をもたどり殘す方なくして、かゝることの葉をこそあまねく世の中にも聞えわたらば、猶ありとし國のくま〓〓には、いかなる章句をか傳へられ侍るにやと、思ひつゞくる果しもなく、ありそめぐりの杖のあとをしたはれけん筆の跡も、亦なつかしきにひかれて序。懶窩埜衲丈草謾書有磯海序有磯海序
蕣や梢に垣の這ひあまりあさがほや宵のかやりの燒ばこり朝がほに野邊のちぎりや稻光り電や門の茶による物がたり電の山を出かぬる夜あけ哉勝まけをわすれて立つや相撲草物ごとの御物ににたり相撲取明る夜をとらで仕舞ふや下手相撲村ごしに見せてやしのぶ高燈籠とぼしては風にけさるゝ切籠かな三浦には九十三騎やはかまゐりうら盆や家のうらとふはかまゐり數ならぬ身となおもひそ玉祭り籠かきの佛見事や玉まつり玉棚のはしごをのぼるすゞめ哉尼壽貞が、ならの片わきにやどりて有磯海身まかりけるときゝて美濃伊賀京小倉山僧杉昌爲嵯峨農伽大坂嵐錦長崎曲野嵯峨淵彈乙卓芭風閑風房有香靑水翠明泉鼠州袋蕉國タわせのかや田中を行けば弓と弦わせのかや田中の庵の人出入わせのかやゝとひ出らるゝ庵の舟早稻の香や有その濱の放れ駒早稻の香や有そめぐりのつゑの跡て其の句をまうけ其の人を慕ふ芭蕉翁當國の行脚もしらず、良程を經支曲丈浪よみ人有早稻の香や分入るみぎは有そ海句と申しつたへける。を送り、此の句は元祿二年、處々の風吟有りけるなかに、あきのまき秋風たつ頃三越ぢにかゝり、當所のほ奧羽の行脚に春夏芭蕉磯海美濃伊賀杉昌爲嵯峨農伽大坂嵐錦長崎曲野嵯峨淵彈乙卓支曲丈浪よみ人考翠草とう化風房有香靑水翠明泉鼠州袋蕉比丘定初かりや比良で追ひつく帆懸舟主まつ春の用意やちり柳鷄の尾につられけり初あらし世の中をかう見て行かん花野哉秋のゝを舞臺に見たる薄かな花す、ゝき達者にありけ十文字花薄たけをのび、切るあきの雨駒買に出迎ふ野べのすゝき哉荷の端もかげにとざすや女郞花女郞花ゑのころ草になぶらるゝおくれじと木槿の花のみだれ咲きあさがぼや水の引きたる塀のきは芭蕉庵のるす歌枕見に行く人の從者にとらせけるうつの宮かさをつめたに織ものゝ手おほひかまくらの女郞はすゝ竹の四三三きりゝとめされて伊賀伊賀越中木桃〓胡車關野尾野土平露もるや聖靈も出てかりのよの旅寢かな酒もりとなくて酒のむほしむかへ七夕や秋をさだむるはじめの夜すか〓〓と西瓜切るなり種のかぜ山水や早稻の田に刈りすかさるゝ小村哉秋の蠅かうべむや〓〓足せゝり病米になる早稻の祝ひや秋露入刈入れてうらやまれ島わせつくり世のうさや早稻つみたるゝ舟の垢早稻干すや人見え初むる山のあし田隣りへ早稻かるしきの日和哉行く人や門田のわせの籾つもり先づ入るや山家の秋をわせの花りて芭蕉翁の、まだ初秋の香薷散中聖靈棚の瓜なすびいがへこし給ふを洛外に送四三嵯峨伊賀加賀荒去丈芭陽秋之坊雀草來蕉和同同同越中句林其嵐呂去正之惟木桃〓胡萬里女口故節隣來河明頭童芳交空紅繼靑風來秀道然
待宵や流浪のうへの秋の雲電の切れて殘るか三日の月風の根をてり付けにけり秋の空くずの葉にふとり〓〓て野分哉日より能うなるとてよるの野分哉みのむしの家くづしたる野分哉一番にかゝしをこかす野分哉京がさは皆駒曳のもどりなり口取も咳氣ごゑなり駒むかへ狐火のしらけて過ぐやそばの花暮待つて盛り見せけりそばの花粟畑の奧まであかき入日かななき出して米こぼしけりいな雀稻といふ名もきがゝりやいもが門稻村の鶴を見てをるすゞめ哉狼のこの頃はやる晩稻かな嵐蘭子をいたみて有磯海啼きはれて口ざしも疎し鹿のなり番の火を便りにねるや鹿のなり門立のたもとくはゆる小鹿かな奈良の鹿うき人の袖引きやぶるかゞしかな一夜さもゆるしてねせぬかゞし哉しる人になりてわかるゝかゞし哉薪ともならでくちぬるかゞしかな粟の穂のひくに入りたるうづら哉馬夫にふみ立てられてなくうづら日當りにせゝくりながすうづら哉木啄の入りまはりけりやぶの松とりかごの曙はやし秋の聲行くかりの友のつばさや魚の棚か集りて、太宰府を通りけるに、ヘ芭蕉翁全集し稻こぎける中に申し遣しける二句丈探其木辻に泊りて卯長崎女どものおほく惟越中よみ人正惟臥正丈平惟草志角七然秀然高秀草水然美濃卯長崎塵小松句荒空伊勢智惟文浪許浪曲雨史孤支丈探其よみ人然鳥七生化空六化翠雀汀芽月邦屋考草志角飼猿も呼出す庭の月見かな明月や家賃の外の坪のうち明月や向ひの柿やでかさるゝ目利してわるい宿とる月見かな不破の宿に寢て明月や里の匂ひの靑手柴名月や宵は女の聲ばかり賑かな內を出て來る月見かな日でりにはあぶなげもなき月見哉明月や舟にもたへず岩の上名月やいかり打込むなみのくまめいげつや馬より下るせたの橋名月や野山をあしのつゞくまで野山にもつかで晝から月の客明月に麓のきりや田のくもり名月や花かと見えて綿ばたけ伊賀山中にありて四三五いつしかに稻を干す瀨や大井川なが月の末、出揃ふや稻の田づらのざんざぶり禪門の後手さむし稻のはなあつさをもしのぎつけゝり稻の花臥處かや小萩にもるゝ鹿の角飛ぶ鹿の角にもつるゝすゝきかなたゝきあふ角見てなくや女鹿の聲鹿たてや角かたむけてしのび足諸角に月いたゞきて出鹿哉振りあげて薄に立つや鹿の角秋日游小倉山同詠鹿角ゐずまひをふつと直すや鹿のこゑ明星や尾上に消ゆるしかの聲西塔に宿しかんせきに四足そろふる小鹿かなひざ見せてつくばふ鹿に紅葉哉大井川をわたりて二句殘野去如木大津木利買伊賀野長崎正如彥根書太江戶丈同芭其露尾州芝大坂游去爲閑荒來野蘇曲汝彥根半香馬來行枝節牛山靑于元大草蕉角川栢刀來有タ雀几明葉翠村殘
行く秋をぶらりと蚊屋のつりて哉行く秋にきるほどもなき袷かな畫中にやねからおつるふくべ哉澁柿ややぶのうちから山の路數十里は雲も燃えけり紅葉谷秋の道一日かなしもみぢ谷ける彥山に詣で、蔦の葉や貝がらひろふ岩の間寒やみの炬燵もほしや後の月あるほどの節句仕舞うて月見哉みだ賴むこよひになりぬ後の月かへしにほかの梢も見えず、ところに入り、るとて、樵のかよひける紅葉谷といふ同國五百らかんを拜み侍江戶同長崎同行に申し侍りみちのほど五六里さら江戶呂八之史杜呂魯田上尼臥斜邦年國風町高嶺桑道友ずれの舟にねつかぬ夜寒かな木枕にはなかみあつる夜寒かなあんどんをけして引込むよさむ哉宵の間をぐつとねてとる夜寒哉やゝさむし早稻のひつぢの角芽立おろ〓〓とむかへば月の御光かな豆腐やらつとめて月の七ツおき月影にはね鯉ねろふ獵師哉明月やはら〓〓鷄の俄客仕舞せて勝手はねせる月見哉名月にもたれて廻るはしら哉明月や片手に文と座頭の坊かへしるとてやゝふくるまゝ、程もなく、正秀が方へまかりけるに、芭蕉翁全集枕引寄せて共にねにけり。伊賀おどろきて立ちかへ物一つ謂ふ長崎江州關半村丈風正臥野智牡宮城氏浪山野左草麥秀高童月年化蜂童柳磯海江戶同呂史杜呂魯長崎田上尼伊賀丈風正臥邦年國風町草麥秀高五器さらも手當りがたしけさの霜秋露の持ちとほしたる時雨かな門火たくたもとにやみのしぐれ哉芋ほりに男はやりぬむら時雨ふる〓〓と晝になりたる時雨かなしぐるゝや紅の小袖を吹きかへし牛馬のくさゝもなくて時雨かな日枝までものぼれ時雨のはしり舟やねふきの海をねぢむく時雨哉潮間に鮎死にかゝるしぐれかな住よしのま一しぐれとくゝるまで宇治木幡京へしぐれてかゝる雲いさかひに根もなぎ市の時雨哉古郷に高い杉あり初しぐれ嵯峨山にあそびて四三七冬松茸やふごをおろしてかほくらべ九日に菊をたねとやしろ椿蒼浪にのぞみたえけりきくのきじ菊の花見に來てゐるかいしたゝき椀かくのたらぬ住居やきくの花煮木綿の雫さびしや菊の花菊の香になくや山家の古上戶菜畠の一うるほひやあきの雨寒けれど穴にもなかずきり〓〓す燈明に虫もよらぬやひえの山すゞむしに客を通すや廻り綠すゞむしの啼き揃ひたる千ぐさ哉秋もはやくるゝとしらず飛ぶ稻子手の下にしるやいなごのちから足生柴をちよろ〓〓させて砧かな如來を拜して天王寺に、遷座まし〓〓ける善光寺の四三六嵐京ゼヾ加賀美濃爲待可南女李支北李丈蘇咒桃風岱千有彼雪由考枝由草葉觥妖國水川露平越中閑風臥去浪李丈如之曲正〓川水タ國高來化由草行道翠秀口
折りかへし敷くもかぶるも布團哉埋火やふとんを通す茶埋火に根ぶとの痛む夜明かな宿かへてまだ土くさき炬燵かなくち切やことし作りしふくべ共口切や講肝煎を筆かしら口燒くや吹草祭りの酒のかん炭うりもつら出しかぬる嵐哉冬籠り炭一俵をちからかな炭の火に並ぶきんかのひかり哉そこ意にや廣間の番も冬籠舟にねて荷物の間や冬ごもり伏見より夜舟さし下す芭蕉翁の難波にてやみ給ひぬときゝて洛にのぼりて、をかきのぞきてに、有淨土の寺ことにゝぎはしかりける磯海匂ひ寺社をがみめぐりける海大津許汝我伊賀木正竹美濃溫加賀滄僧北恕美濃去動六村峯導秀戶故波枝風來り木曾寺へいそぎて芭蕉翁の送葬に逢ひ侍らんと、木枯の更行くかたや蠟たまりこがらしや天井はらぬ堂の內こがらしや廊下のしたの村雀此の里の牛の聲きけ神おくり雜水の名だてに寒し神送りおく霜に聲からしけり物狂ひ霜のくさ裏かへし見るしとヾ哉馬の息ほのかに寒し今朝の霜朝霜や人參つんで墓まゐり朝霜や茶湯の後のくすり鍋けるすぐれず、かへしさ、芭蕉翁の七日々々もうつり行くあはれ芭蕉翁全集ち猶無名庵に寓居して、去來がもとへ申しつかはしさがよ其林タ越中木紅越中呑大坂素江戶民去丈こゝちさへ海大津許汝我伊賀木正さがよ其林タ越中木紅越中呑大坂素江戶民去繼紅兆枝朝舟龍丁來丈動六村峯導秀草雜水にひる通る岡部の鹿や雪あまり川こえて身ぶるひすごし雪の鹿日枝一つ前に置きたる雪見哉はつ雪や奧の洞屋の雪なだれ初雪や小坂にはやくすべりみちはつ雪や去年も山で燒どうふはつ雪や人まつ市の松かゞり初雪も飛石ほどの高さかなはつ雪や人の機嫌はあさのうちみぞるゝや鷄のぞくとまり時白了の根に吹きまくるあられかな新田に水風呂ふるゝあられ哉ねこ鳥の山田にうつるあられかな繕うてやつとさげたるふすまかな四三九づかり侍りければ芭蕉翁の住捨て給ひける幻住庵を、琵琶きく軒の霰かな伊賀セン魯臥乙李配靈之斜桃平支昌正芭杉あ町高州由カ椿道嶺隣夾考房秀蕉風大屋から先にしてとれえびす講夷講我が料理してしらぬかほ開山忌となりは留主のいなり山御命講やあとの月には月の友丸ながら月よ嬉しき十夜哉枯あしや何に折れたる汐干がた野はかれて砂にすり込むうづら哉馬しかる聲らかれのゝあらし哉黃になりて落つるこのはや蝶の羽紅葉ちるやねの木の葉や石まじりこがらしや明星ぬれて三保の松小倉山常寂寺にてどんぐりのころび合うたり窪溜りあらし山猿のつらうつ栗のいが音もなし木の葉のあるゝ社家の庭凩や田より田にゆく水のおとこがらしの尻吹きすかす鞍かな四三八嵐曲浪荒壽越中馬彥根荻伊賀曲野明男十一歲氷伊賀彥根牡小五良野八空木野仙佛子翠年明固桑芽導明町高州由カ椿靑翠化雀
いつそふにわめいてかへる寒さ哉しかめたる鏡のかほの寒さかな手もださで机にむかふさむさかなすりこぎに取りつく老のさむさ哉れき〓〓の水鼻たるゝ寒さ哉かへしとかんじけるを、正客の行儀くづさぬさむさ哉げよりかきのぞきて大名の參會し給ひけるを、のら猫の聲もつきなや寒のうちかり金や友におくれて寒の入肝煎の手をはなれけり冬の月うしなはで落穗をたくや大師講岡崎村に住侍りけるころ蠅ほどの物と思へど大師講有いたはり侍る頃、磯海洛の鴨川の邊りに旅點加賀九伊賀舍大坂野利其の大名にかはりて野二人物のか浪風曲可句吹節羅明牛坡化國翠南空手水湯や流しそこなふ雪の上大雪や隣りのおきる聞合せ應々といへどたゝくや雪のかどかはゆさや雪を負ねてかへる猫雪空や片隅さびし牛のるす米貳俵おろしおきけり雪の中笠の雪いくひになりてをしまるゝほつかりとわれて落ちけり笠の雪さゝ一葉ちりとなりけり雪の上はたれ雪ひらりとしては三十三才かりよする鶯かごや雪のあさ鴨の背にゆふ日やのこす雪のあしから鮭の目づらも見えず舟の雪砂川の雪をちからやむまの沓ゆきふりや堤にかゝる片いざり雪の夜も湯かた一つや瀧まうで雪の原ほつこりとなる木かげ哉芭蕉翁全集句弩ゼ浪丈彥根伊勢伊賀大坂奈良美濃"去堀江氏妻胡卯芦土祐惟支正駟舍含此鳥化來草風七本芳甫然幽秀石羅粘筋空春かけて旅の萬やとし忘れ煤掃のちりにかくるゝ數寄屋哉煤掃やかしらをつゝむみなとがみ煤拂や二階をおろす古かはご錢湯の朝かげきよき師走かな雉子の尾にせばき師走の湯殿哉狼のひよつと喰へし鉢たゝきあら鷹もその鷹匠もづきんかな客たてゝ跡の仕舞や小夜千どり鹽燒の夜伽になくや濱千鳥白濱や千鳥あつまるあみのあと筑摩江やたつべを覗くかいつぶりをし鴨のつくべき水の見晴かなふじ垢離の聲高になる寒さ哉宿して春とゝもに旅立たんといふ人のもとにて四四一惟史黃彥根望伊賀惟蓙野朱彥根左川微汝林杜然邦逸翠然生童迪次支房村紅年河〓洗ふ水のにごりや下河原河づらや聲吹きながすあじろもりすみがまや口付けかふる風のむこ日の緣にあがる大根や一むしろ寒菊の隣りもありや生大根寒菊のふるごものぞく日和哉小坊主の上下きたり水仙花茶の花や鶯の子のなきならひあし代ややぐらの下のうすこほり御座そりや先に立ちたる道具持雪うちや首から尻に瀧のいと堅橫におらせて見ばや雪のいとから花に月雪こぼすとびらかな粥をくはねばいなぬといへばてかぎりなくめでたければ意が嶽よりいづる月の、御築地のうちををがみ侍りけるに、其其子臥許嵐美濃素尾州浪許不羽州荒支嵐南門にかゝり如惟其其子臥許嵐美濃素尾州浪許不羽州荒支嵐然角繼珊高六舟覽化六玉雀考雪
便船や子をつれて岩にふりむく雉子哉雉子なくやほろゝは消ゆる瀧の上曉の雉子にさめけり猿のかほ山鳥と小松の殘る燒野哉出替や酒の使の名のはじめ是までが〓〓とてはるのゆき背戶中はさえかへりけり田にし殻おそはるゝ夢のかしらの野駒鳥哉しら雲を瀧へけ落す雲雀哉四五尺を雲に入るとや雲雀かごつつくりと雉子つくなるや木瓜の花やまうらの夕轟きやきじの聲やまどりの樵を化す雪間かな雁のいせより江府へまかるころ源平の古戰場をたづねて兵庫にいたる有聲磯朧雲雀の聲も潮くもり々海と何百里支卯萬千史露魚セリ車伊賀空關支洞伊賀路越中支丈考七里川邦川光來芽河考木健考草掃切つて梅がゝ遠きひろまかなむめが香や雪かこひとる軒の晴梅がゝや風呂屋のみちの一たより香にゝほへうにほる岡の梅の花梅が香にはづんで反るや折の鯛梅がゝのかみのそりねに留れかし痩せはてゝ香にさく梅の思ひかな宿うらや風すさまじき梅の花むつくりと岨の枯木も霞みけり盜人に逢うた夜も有り年のくれ節季候や夕日につヾく袋持牛の子の角や待つらんとし忘れるくさき香なり。伊賀の城下にうにと云ふものあり。春此の句は、芭蕉翁全集夢中に句作り侍りけり。凉江戶タ越中浪芭臥句去土杉芭浪〓わ葉里化蕉高空來芳風蕉口雁支凉江戶タ越中浪芭考葉里化蕉蕉化口茄子なへもらはん雨のしめりかな置土やへぎおこしたる蕗の塔鶺鴒の尾にたゝきだすつくしかな水風呂に茶をはこばせて春の雨春雨やはたごもとはで奧坐敷大佛やよこねもならず御入めつ文の添ふ椿は道でもげにけり見おとるや里に植ゑては山つばき九月より春まで花の老椿老陽炎のもえて田にちる椿かな陽炎やしたは流るゝ水ながらかげろふや畫より前はあくのかす馬の尾に陽炎ちるや晝はたご野馬やあとのさびしき小大名朧夜に引くや網場のからす貝波先や勢田の水行く朧月境更くる夜を水のむ猫の別れかな猫の戀風のおこらぬ斗りなり化粧する果やなき出す猫の戀鶯や尻をもためず暇ごひ鶯の小がろきなりややぶ椿數々は女房のせわのなづなかなならべ置く膳になづなのひゞき哉七種や唱歌ふくめる口のうちちる時をさわがぬむめの一重哉竹簀戶のあほちこぼつや梅のはなちりしほやはぜうる里の梅の花梅さくやまだひをむしの朝ちから手水場のまだほのくらし梅の花笠ぬぎて貌洗うたる野梅哉しかるべき松原も有りむめの花梅がゝや別當をおくる村の口別支考壺江戶子江戶麻セー曲正不利良伊賀風伊賀曲平其惟李乙猿川風史計伊勢微風我北桃丈許〓嵐素如呂蛙祐三翠秀玉牛品麥翠水繼然由州雖支國邦徒房睡峯枝隣草六口靑覽行風
盃の中にさかせんつぼすみれつれまつやとろ〓〓坂の薄すみれかへし磯海立臼の木取て有るやゝま櫻惡僧の弓はるあとや山ざくら八ツ過の山のさくらや一しづみ東叡山御封切る廊下の口やいとざくら花ちりて二日おられぬ野原哉かし家や花のさかりに門の錠鳥追うて花つかみ行くす鷹哉花の雲世を一ばいの入日かな物干や夜着かゝへ出て花の雲なれねば、日枝のやまにのぼりて野遊くれかゝりぬれど、從者をかへして申し遣しけ猶獨り芝居は孤野其支美濃市嵯峨農十二才風恕卯岱屋明角老睡風七水菜畠や境てりあふもゝの花鷄の相手もなしやもゝのはな土器のはくもゆりこせもゝの花煤けたる壁ほのくらし紙雛あひおひの姫とつるゝや雛あそび花鳥の空にいそぐやいかのぼり市中や馬にかけ行くいかのぼりはるかぜの空に登るやくれ木つみ春かぜや蝶のうかるゝ長廊下身の春を飛んで見するや池の鯉しら魚のすべりなれたる碇かなしら魚に透きても見えよ胸のくま白魚や道で氷らん飛鳥川ゐのしゝの藪ほりかへすのびる哉ときこえければ、るとて女のもとより、芭蕉翁全集浪殘其雪伊賀宇越中土團伊勢配伊賀林殘木曲其の人にかはりて白魚を人のもとにおくよみ人野化香繼芝白芳友力紅香導翠明伊賀示尾伊賀其支美濃市嵯峨農十二才風恕卯岱老睡風七水よみ人蜂頭角老化香繼芝白芳友力紅香導翠頭のうへにむせぶや摩所の時鳥ほとゝぎすせたは鰻のじまん哉ほとゝぎすたれに渡さん川むかへ何番の花でつくるや春の空もずの子をそだて揚ぐるや茨くろ山ひとつ靑みも見えぬつゝじ哉狼のによろりと出るや藤の花やはらかに濁るか藤の雨しづく五六反しさりて見るや松のふぢやまぶきに牛の尾をふる道もなし山吹や水そこ見こむ馬の上時啼きころぶ曉あらんほとゝぎす鳥二ツの橋を淀の景夏三月盡四四五梅がえにこそ鶯は巢をくへあつらへの天氣也けり花ぐもりぬり笠に花の末うつあらし哉小坊主にしかられてのく花見哉喰物に喰入るやつもはな見哉ちかづきになりてくつろぐ花見哉花見にもたゝせぬ里の犬の聲片尻は岩にかけけりはな莚花にねぬ此もたぐひか鼠の巢待つ花に小さむい雨のあした哉おしよせてたばぬる程の柳哉五六本よりてしだるゝ柳かな寺中花一本をくるり〓〓とはな見かな爼の鱗をながすやなぎかなはれ物にさはる柳のしなへかな櫻をばなどねどころにせぬぞ、ねぬはるの鳥のこゝろよ四四四古嵐正去浪丈芭はなに杉探去曲芭風芝來翠蕉荻伊賀石伊賀文荒木爲史來其北支許惟丈野素顰女枝考六然草童鳥雀枝有子推邦几繼蘭秀來化草蕉
鉢々と留主の間めぐる田植かな眞白に鹿の星毛や五月あめ五月雨にもてあつかふははしご哉さみだれや棹にふすぶる十團子さみだれの空吹きおとせ大井川大井川水出で、あやめ草茶師のよろこぶ節句哉短夜や木賃もなさでことはしり出で侍りけり。紙に、すべき料足もなければ、夜をあかしけるに、奈良い萬僧供養に詣で、醉顏に葵こぼるゝ匂ひかなうつのやまにてどまりてこなはれけるを拜みて有磯名處とゝもにふり捨て.海示楚江戶里左芭島田塚本氏のもとにと木惟の前代枕もとのから明けて主につかは片ほとりに一去蜂舟東柳蕉枝然來竹の子のきほひや人を待つ日數たけの子や皮つきこはし甲武者竹の子や風呂やの土のあたゝまり鶯に糊ちらしけりひとへもの衣更雜巾ひとつ出來にけり雀よりやすきすがたや衣がへほとゝぎす山には鬼もなかりけり豆腐こそなのらね山はほとゝぎす木を立つて木にうつる間ぞ時鳥麥めしで埒明く客やほとゝぎす竹の子もひかれておそし時鳥かへしいひこしけるに申しつかはしける。許六が江戶よりやがてかへるべきと、かて句空法師が、へし芭蕉翁全集李智朱呂之雪句浪山寺に來りけるをとゞめ壽之李由月迪風道芝空仙道由示楚江戶里左芭浪蜂舟東柳蕉由月迪風道芝空化〓行水の下たき立つるかやりかな訪蚊やり火や麥粉にむせる咳の音蚊の聲の中にいさかふ夫婦かな片壁にはやためろふや蚊のやどりよし鳥や日のさし廻る假の庵水札なくや懸浪したる岩の上うしろより戾りかゝればなく水鷄くる音は麥わらかつぐ水鷄哉水鷄なくと人のいへばやさや泊りにかりねす露川が等、蚊の中を軒つたひ行く螢かな水うちて跡にちらばふほたる哉顏つきや藤の裏葉の螢とりたゞ一つやなに落ちたるほたる哉鳰の巢や螢もかりの足やすめ農家四四七さやまで道おくりしてとも野許李蛙伊賀錦去半玄伊賀芭甫伊賀回苔伊賀鹿越中少年〓明六由弓水來殘虎蕉文鳬蘇也口一朝に降りしづめけり麥ほこり夕雲雀鳴きやむ麥のくろんぼふ麥笛やふいて見による師子かしら麥わらを取りかぶせけり地藏堂麥秋やとんばうとまる淵の上疱瘡する兒も見えけり麥の秋麥秋は身の置きどころなかりけり麥の穂を便りにつかむ別れかな草むせやところ〓〓に百合の花芍藥や廬路をひらけば奧の前むまにのる貌をり〓〓や若楓ぬけ道や垣ゆひ切つてけしの花頭をあげて咲かゝりけりけしの花竹の子の上る競ひや夜々の露元祿七年久しく絕えたりける祭の、其のかへし。人々川崎まで送りて、平野魚伊賀平和越中浪風芭錢別の句を云ふ宗伊勢支卓左斜許お水童日交求化蕎蕉比老袋次嶺六野許李蛙伊賀錦去半玄伊賀芭明六由弓水來殘虎蕉
やねふきの額しろしや麻頭巾種麻やぐるりに殘るやけ畠からむしのあとからそのの二葉哉浦々のうしろに實なき榎かな礒ぎはをやまもゝ舟の日和哉なつもゝや一構つくにがご竹くらがりにいちご喰ひけり草枕夕顏にかんべうむいて遊びけりゆふがほをくゝり廻るや夏ざしき夕貌やあるじのしよさの懷かしや暑き夜や井戶に水なき夏の月われ鐘のひヾきもあつし夏の月淀川晝舟をさないに花むしらるゝけまん哉日ざかりの花やすゞしき雪の下かやの手に馬追なくや夏の月麥かりし夜は猶うすし夏の月有磯海空せみとなるまでなくを仕事哉あふ坂やいとゞせき合ふせみの聲降るうちや蟬のなかねば物わすれ時々に寢言がましやよるの蟬月代にゆめみて飛ぶか蟬のこゑざしきまでとゞかぬ夏の木陰哉あたりから晝ねの客や夏の亭苦しさや笹葉かけ行く牛の蠅うたヽね町幅のいんきなりけり京の夏日のかげをおはへて蠅のざしき哉鵜づかひの晝ねの床や蠅の聲轉寐をこかし入れけり蚊屋の內やう〓〓と涼しくなればかやり哉子をねせて賴む人なき蚊遣かな客ともにつれてけぶたき蚊やり哉妻をうしなひける頃かへし芭蕉翁全集壽同浪風惟空史一伊賀呑芭臥我裾荻北山越中乙智子句正野桃孤九近長崎史車不忙膳所爲仙化蕎然芽邦鷺舟蕉高峯道子枝紫州月珊空秀坡隣屋節胃邦來玉玄有すゞしさや水の流れの畠なり砂川をわたりてあそぶ凉み哉里の子の乘物のぞくすゞみかな涼しさやうか〓〓行けば行止まり出嫌のおされて行くや夕すゞみ風すゞし膳出しかゝるたな鰹すゞしさや折つて見せたる生鰯とぎ立つる庖丁すゞしすのこ緣嫁つれて凉むやせどのま木の上葛布のきごゝろしれや夕すゞみ暮しばし緣までにじる涼み哉老我があとへ猪口立ちよる〓水哉先づ馬の沓しめし行く〓水かな馬柄杓を岩に割込む〓水かな川狩や村は御藏の藪の腰おもだかも田草の數にひかれけり慵ゆふ立やろぢより出づる水の穴白雨や山伏里に入りかゝる夕立に吹きちるものや竹の皮そろばんも枕數なり竹婦人ゆつくりとねたるうへにも暑さ哉上下とひねる枕のあつさかな暑き日や馬屋のなかの糠俵立合うて牛うる軒のあつさ哉白砂に雀あしひくあつさかな蟹の手のひゝもかわらくあつさ哉馬の目のおろかにくるゝあつさ哉水仙のとちほりかへすあつさ哉水かへてこすほどすゞし眞桑瓜茶ぼこりの手をあらはばや眞桑瓜しぶかみに瓜の匂ひや市あかりすゞしさや瓜ふむやみのあぜ傳ひしがみつく力やのこす蟬のから蘇土萬里仙洞臥其龜江戶買祐許猿野嵐如望萬加賀澤伊賀卯遊大垣魚恕探遲野牧加賀雪游正タ支此葉芳乎東枝木高繼水山甫六雖徑.靑行翠乎雉七糸日風芝望明童芝刀秀兆考筋
芭蕉翁全集し)涼しさや八人代の田の靑み荒雀涼しさの心もとなしつたうるゝ丈草紀の藤代を通りける頃、此處に三郞重家の末今にありと聞きおよびぬれば、道より少し山沿に尋ね入り侍りしに、門ついぢ押廻し、飼うたる馬、みがきたる矢の根たてかざりて、いみじきものゝふ也。又庭にいにしへの弓懸松とて古木など侍りけり藤代やこひしき門に立ちすゞみ去來暮まつや白地扇の風あたり良品町禮や袴のひもにあふぎさす曲翠直さまと書きなぐりたる扇哉望翠水無月をきはだつ雲のたかね哉靈椿八雲たつ此の嶮謨を雲のみね其角ありそ海集撰りたまひける時、入句ども書集めまゐらせけるにそへて祝す。鷲の子や野分にふとる有そ海去來元祿八乙亥歲花老上旬正竹書焉芭蕉庵小文庫木曾の情雪や生えぬく春の草、と申されける言の葉のむなしからずしてかの塚に塚をならべて、風雅を比惠日良の雪にのこしたまひぬ。さるをむさし野のふるき庵ちかき長溪寺の禪師は、亡師としごろむつびかたらはれければ、例の杉風かの寺にひとつの塚をつきて、さらに宗祇のやどりかなと書きおかれける一帋を壺中に納め、此塚のあるじとなせり。たれ〓〓もかれに志をあはせて、情をはこび句をになふ。猶師の恩をしたふにたらず。霜落葉かきのけて、かたのごとくなる石牌をたて、霜がれの芭蕉をうゑし發句塚、と杉子がなげきそめしより、愁膓なほあらたまりて。史邦日の影のかなしく寒し發句塚芭蕉庵小文庫序
小文冬川や木の葉は黑き岩の間風や窓にふき込むみそさゞいこがらしの藪にとゞまる小家哉凩のあたりどころやこぶ柳革羽織とりかくされて炬燵哉炬燵より寢に行く頃は夜中かな霜の後なでしこ咲ける火桶かな霜腹の寢ざめ〓〓や鴨のむれころ〓〓と虫もむらつく霜夜哉ひだるさに馴れて能く寢る霜夜哉おとりこしまづ左座は松の坊檜物屋も間にあはせけりお取越御取越內儀の客が一ざしき玉あられ百人前ぞおとりこしまづ鯛と筆を立てけり惠比壽講靑き穂に千鳥啼くなりひつぢ稻城山に雉子出でけり小六月ほゝづきやとけその山の九十月冬空やすがもは江戶の北はづれ雜板壁や馬の寢かぬる小夜しぐれ食どきにさしあふ村のしぐれ哉雷おつる松はかれ野の初しぐれ米河岸できくや種田のはつ時雨はつ時雨戶あけてみれば反歩也宿かして名をなのらする時雨哉正秀亭當座ふるき世を忍びて旅冬之部小島田の宿にて冬宿芭蕉翁全集文庫庫惟然蘭芳殘香丈草史邦雪芝芭蕉丈草種文惟然史邦養浩嵐竹山店史邦史邦山店史邦嵐竹史邦去來丈草嵐竹山店ばせを幽靈に水のませたか鉢たゝき餅蜜柑吹革まつりやつかみ取り子祭に目貫ほり出す自慢哉子祭や梅まつ宿の赤豆食甲を干すあたゝかけさや胴紙子留主のまにあれたる神の落葉哉菜をきざむ廣敷寒し吹きどほし夜神樂に歯も喰ひしめぬ寒さ哉猫の食干からびてあるさむさかな大名の寢間にもねたる寒さ哉旅小屏風に茶を挽きかゝる寒さ哉金屏の松もふるさよ冬ごもり雞の片脚づゝやふゆごもり毛衣につゝみてぬくし鴨の足雁鴨やわちがひめぐる水けぶりくむ潮にころび入るべき生海鼠哉ゑびす講あひるも鴨に成りにけり惠比壽講酢賣にはかまきせにける上人の鼻にはくおけ御命講御命講や油のやうな酒五升水風呂をふるまはれたる十夜かな達磨會やもつさう食の一文字芭蕉會と申し初めけり像の前其のかたち見ばや枯木の杖の長下刈の藪きれいなりつはの花薰物のもれてやにほふ枇杷の花寒菊に野武士も住むかわに堅田舊庵師の像に謁すにあたれりといふをきゝての霜と降りぬ。けふはなほひとめぐりて、つひにその日をまたず。初冬一夜たしきまゝに、まみえむことをちぎり大通庵の主道圓居士芳名をきくことし宿四五三智月史邦山店史邦芭蕉支老史邦山店許六芭蕉丈草蘇人梨雪利合芭蕉史邦下風斜嶺芭蕉ばせを同同史邦芭蕪養浩同同
芭蕉翁全集嫂入の門も過ぎけりはちたゝきはつ雪やかけかゝりたる橋の上初雪やひじり小僧の笈の色雪ごとにうつばりたわむ住居かな鷦鷯家はとぎるゝはたれゆき狼の聲そろふなり雪のくれ打出濱眺望嶽々や鳰とりまはす雪けぶり納豆するとぎれやみねの雪起長尻の客もたゝれしみぞれ哉さつ〓〓と荻も氷もあられかな冬梅のひとつふたつや鳥の聲水仙の花の高さの日かげかなはち卷や穴熊うちの九寸五分あな熊の寢首かいても手柄かな丹波路やあなぐまうちも惡右衞門月花の愚に針立てむ寒の入四百四寒聲や山伏村の長づゝみ一雨や相場のかはる事納め身代も籠でしれけりことをさめ金公事もつく〓〓にして事納めせつかれて年忘れするきげんかな魚鳥の心はしらずとしわすれさかもりや一雫にて年わすれうちこぼすさゝげも市の師走哉蛤のいけるかひあれ年の暮さかやきや咳氣をなぐる年の暮客人の心になりてとしのくれ酢がとれて蜜柑も年の名殘哉いせえびを取りあはせけり衣配り餅春に小腹たてけり瘭疽やみ許芭同同如丈六蕉仙嵐史山芭同智正芭探乙之史同杖竹邦店蕉行草月秀蕉志州道邦史丈史同土智史山嵐芭邦草邦芳月邦店竹蕉石臼之讃ばせをぞくぢん市中に在りて俗塵によごれぬ物は、げにその始めをよくするよりもその終りをとぐる事はかたし。しやうざんちくりんくわんべいくわざん商山竹林の猛士も、なほ出て仕へ、寛平華山の上皇も終にたしかならず。たま〓〓是を見るに、唯しやういつこくしにくしん石臼のひとつのみ、聖一國師は是をもつて肉身をはふしんみんかやしなひ法身をしる、民家にはまた麥刈りそむるかたどき頃よりも、籾こぎ落す冬に至る迄、片時もよそにはする事なし。其のたかき事を論ずれば、役の優婆塞の庵の中にかくれて、彼の類ひを道引く功の上に立つべし。上と下とふたつなるは、力たらざるふたんだ者のために專らなれば也。不斷土間に在りて莚より外を見ぬは、謙に居る事の調へるにあらずや、かりにも黃姉の手にとられざることの、有難きことを深くさぐりしるべし。目なだらかなる時は、かますを荷ふ老翁のいで來りてこつ〓〓とする音かすみて、のちは李札が劔を塚にかくる事をはづべ小文庫Lo名をぬすむ盜人はあれども、石うすをぬすむ盜人はなし。またひとの心をみださヾるの至りならずや。月さしのぼる夕顏の陰に、ひとりはおどほしけろの髮をまぐね、ひとりは佛のまねをする、あたまなりにて苦しきことを覺えず。挽きまはす力に其の飢をたずくるは、文王の始めに仕へ給へるに事たがはず、やゝいま樣のむづかしき歌のふしにこだかまはず、聲も唱歌も古代のまゝにして、枝もさかゆる葉もしげると、しはぶきがちにわなゝかれたるぞをかしきや。机銘間なる時はひぢをかけて、喀焉吹嘘の氣をやしなけんさいボふ。しづかなるときは書を組どいて聖意賢才の精い神をさぐり。靜かなるときは筆をとりて義素の方四五五
芭蕉翁全集寸に入る。たくみなすおしまづき、一物三用をたすく、高さ八寸おもて二尺、兩脚にあめつちのふたつの卦を彫にして、潜龍牝馬の貞に習ふ。是をあげて一用とせむや、また二用とせんや。應蘭子求元祿仲冬芭蕉書四五六く體こそいと面白けれ。おの〓〓門さしこめて、ひら奧のひと間を屏風にかこひなし、火鉢に茶釜をかうははりけて、嫗が帷子の上張、爪さき見えたる足袋もいとさむく、冬の日かげのはやく晝になりゆき、庭둘の隅、調度共とりちらしたる中に、持佛のうしろpresむきたるぞめには立つなれ、家の童の緣の破れ、すのこの下をのぞきまはるは、なにをひろふにやとあやし、味噌とよばる大男の、袋かぶり蓑きたるもめづらかに、米櫃のサンうちつけ、爼しらげ、行燈張替へて、たつくり鱠、あさつけのかをり花やかに、かみしもの膳すゑならべたるに、ほどなく暮れて高いびきとはなりぬ。すゝはきや暮行く宿は高射ばせをなぐれて雪のかゝるから竹山店扶持かたのはし米取りに人やりて史邦またどろ〓〓とかみなりがなる嵐竹風雲のはしる間を月のかげ養浩芭蕉書對門人僧是や世の煤に染まらぬ古合子芭蕉煤掃之說明ばのゝ空より、物のはた〓〓と聞ゆるは、疊を特たゝく音なるべし。けふは師走の十三日、すゝはしきのことぶき也。げにや雲井の儀式、九重の町のかれた御法は嘉例ある事にして、唯なみ〓〓の人の煤はばせを山店史邦嵐竹養浩毛蓼のはなのみゆる塀うら雁わたるむかひは平野久法寺使にやれば味噌つかせける普請場でこしらへてくる火吹竹よそほど風のあてぬ山ぎは松苗のはえ揃うたる一里鐘田うゑの留主に煩うて居るは夏の月いらぬ葛籠は梁へあげたゝきながして雨はるゝなり篠原や黑ばね山もうちつゞき馬すりかへてしらぬ顏するはつ花に酒毒が出來て取りかぶり年子まびけば菫みだるゝ御築地の雪もきえ行く新在家敷いて垢かく水風呂のふた兩方へあかりみせたる手行燈そよ〓〓草のなびく日の暮小文庫執筆店邦竹浩邦店浩竹店邦竹浩邦店浩竹戀人のいつか後に立つて居る文引きさいてほゝばりにけり盆前は貳步にもつけぬ小脇差隱れて京の月を見るなり槿のくづれたうへを踏みあるき簿はたけば鷄がよる雲ぎれの山の端うすく寒くらし千日谷の銀杏冬たつウ跡さきを木戶でしめたる組屋敷追々醫者を呼びにやらるゝいら〓〓と星のいらつく橫雲に野水たゝふる椿新田藪岸にほそき櫻の咲出でゝ夕日の筋に胡蝶むらがる店邦竹浩邦店浩竹店邦竹店浩邦分別の底たゝきけり年の暮芭蕉四十七
芭蕉翁全集文小庫春之部年々や猿にきせたる猿の面芭蕉鳰の海邊に年をこえて、三日觜を氷す大津繪の筆のはじめやなに佛同ふたみの机硯箱は翁ふかくいとをしみてみづかさんら繪かき讃したまひぬ。又一とせ洛のぼりに、いざさらば雪見に轉ぶ所迄と興じ申されける、木曾ひのきがさすがみのの檜笠、越の菅蓑に、桑の杖つきたる自〓の像、此のしな〓〓はさぬる年、花洛の我が五雨亭に幽居し給ふ時、一所不住のかたみとて予に下し給はりぬ。されば師のなつかしき折々、あるは月花にせ情おこる時は、是をかけこれをすゑ、ひたすら生ぜん前のあらましして、句の味をうかゞふのみ、睦月七日は、ことにわか菜のあつものをすゝめて、例四五八かしこまる袖になみだこぼれてよりもかなしく、折りそふる梅のからびや粥はつを史邦若菜つまん三浦の大助百六つ嵐蘭一かぶの牡丹はさむき若菜かな尾頭根小屋までうち下したるなづな哉史邦しろ水の押しわけて行く根芹哉山店一村を鼓でよぶや具足餅史邦いかなる事にやありけむ、去來子へつかはすと有り菎蒻のさしみもすこし梅の花ばせを寺の名やわすれて梅の花ざかり李由うす雪や梅の際まで下駄のあと魚日むら〓〓と菰槌越やむめの花史邦鞍馬金銀の隱士が跡尋ね兼てむめが香やたが賣喰の火打石同白梅やたしかな家もなきあたり千川山崎にて小ばせを李由魚日史邦同千川しら梅や木食寺の料理人史邦はれ物に柳のさはるしなへかな芭蕉此の句、浪化子のありそ海に、さはる柳のしなへかなと、去來が書誤りて入集しはべるとて、常に此のことをくやみぬるまゝ、このついでとなしぬ。春水滿四澤の氣色を川柳水もうごかず柴葉口山店靑柳の路次かまへなり鎗つかひ嵐竹川越して帶ときによる柳かな岱水泥龜に人たかりする柳かな可長靑柳とともに動くや近かつゑ史邦馬乘の下くヾり行く柳かな里倫春風に吹出されけり水の胡蘆去來いかあぐる風に飜すやいもはしか白良草先や追鳥狩のむさうわな史邦苔〓水小文庫凍とけて筆に汲干す〓水哉おなじくはる雨の木下にかゝる雫かな鞍馬僧正が谷をすべれば餘寒也黑ぼこの松のそだちや若綠呼出しに來てはうかすや猫の妻鎌倉も別のことなし猫の戀こがれ死ぬためしもきかず猫の妻南良こえ春なれや名もなき山の朝がすみ二月堂取水水とりや氷の僧の沓のおと味噌まめの煮ゆるにほひや朧月蛇くふときけばおそろし雉子の聲多田の御廟に詣ずいきほひもさすがに神の雉子かな四五九ばせを同野土去南史童芳來鄰邦山嵐岱可史里去白史店竹水長邦倫來良邦ばせを同史芭邦蕉史邦庫
芭蕉翁全集栖去之辨ばせを(年號いづれの年にやしらず)こゝかしこうかれありきて、橘町といふところにむっ冬ごもりして、睦月きさらぎになりぬ。風雅もよしや是までにして、口をとぢむとすれば、風情胸京中をさそひて物のちらめくや、風雅の魔心なるべLoなほ放下して栖を去り、腰にたゞ百錢をたくはえて、柱杖一鉢に命を結ふなし得たり、風情終に菰をかぶらんとは、ろは、ならの都東大寺のひじり、俊乘上人の舊跡なり。ことし舊里に年をこえて、舊友宗七宗無ひにとりふたりさそひ物して、かの地に至る。仁王門撞樓のあとは枯れたる草の底にかくれて、松ものいはゞ事とはむ石居ばかりすみれのみしてと云ひけむもかゝるけしきに似たらむ。なほ分けいりて九七日運花臺獅子の座なんどはいまだ昔のあとをのこせがんくつり。御佛はしりへなる岩窟にたゝまれて、霜に朽ち苔に埋もれて、わづかに見えさせ給ふに、御くし斗りはいまだつゝがもなく、上人の御影をあがめ置きたる草堂のかたはらに、安置したり。誠にこゝらの人の力をついやし、上人の貴願いたづらになり侍ることもかなしく、涙もおちて談もなくむなしき石臺にぬかづきて丈六に陽炎高し石の上ばせを賀茂にあそびて照りつゞく日やかげろふの芝移り史邦を雲雀より上にやすらふ峠かな呂丸追悼三句雲雀なく聲のとゞかぬ名ごり哉○ふみきやす雪も名殘や野邊の供野おくりや膝がくつきて朧月芭蕉會去史覺來邦ばせを伊賀新大佛之記伊賀の國阿波の庄に新大佛といふあり。此のとこ史邦しこまれて苗代馬のあゆみ哉山千刈の田をかへすなり難波人一川淀や泡を休むる芦の角猿物よわき草の座取やばるの雨〓룩はる雨や渾雞あがる臺所游引鳥の中にまじるや田螺取支咲きみだす桃の中よりはつ櫻芭三月三日堺の海邊に遊びて二句胸透きて須磨をのみこむ汐干哉史のぼり帆の淡路はなれぬ鹽干哉去鹿島には杉菜のはゆる汐干哉山すみ吉に詣ず一日の日を春かぜや松のひま史攝州甲山上代の春日も光れかぶと山同出替や哀れすゝむる奉加帳許下品の情小交庫店鷺雖口刀老蕉あさつきやうちとけ安き片結び史下々もみな居なじみてよめが萩山馬よけや畑の入なる桃柳北梅つばき是にも吝し屋敷守山藪に居て挽ききらるゝな赤椿同旅行內庭を見せかけにけり白つゝじ嵐堀起すつゝじのかぶや蟻のより雪熨斗目着て來る人もなし菫草山難波にて海棠やお八つうち出す堂のまへ史僧丈草に別る慇懃に成りしわかれや藤の陰同萬日の小屋も見えけり百千鳥嵐呼子鳥なくか確氷の盤根石史西行像讃すてはてゝ身はなき物とおもへども四六一史山北山同邦店鯤店嵐雪山竹芝店邦來店史邦史邦同嵐史竹邦同許六庫
水風呂の置所なしはるのくれ新宿は麥に穗がつく春の暮赤猫のうるさくなりぬ春の暮藪陰に衞門櫻のはなみかな三月盡しらあやに金王櫻さきにけり景〓も花見の座には七兵衞ウ庭せゝる松や小笹のうゑ所八專あきて晴れわたるなり構はねばしらけて通る鉦たゝき返事にそへてかへすぬり臺一はしり行きて見て來る朝肴又たゝくやら泣きごゑがする竹藪の鵬上戶うらがれて稻こす水に祠うきたつ十五夜を吹きちらしたる西の空ころぶといなや狐はなるゝ本堂を右へまはれば反歩にて山も御茶屋も靑葉なりけりたんば暮れかけて啼盛りたるほとゝぎす寅背中とてけふも灸せずひとつでも皿の揃はぬ小瀧鯛躑躅くづるゝ赤土の谷花のかげ緣日ばかり掃きたてゝ村中へ咲下したるさくらかなちか道や木のまた通る花ざかり花雪とちらすや錢のあゐの山損にして食たかせけり花曇り花ざかり山は日ごろのあさぼらけ芳さむくこそあれ花の降る日はうかれこそすれ小ゆきのふる日は野芭蕉翁全集文庫嵐竹史邦山店山店史邦芭蕉養浩洞木去來山店同邦店竹邦店竹邦店竹邦店竹邦店竹邦店ばせをはつ雪の風にはづれてひら〓〓と六帖じきをふたりしてかるあみ笠を腰にはさみて丹波道お堀の月のさえわたるかな花の雲鐘は上野か淺草か帋鳶のきれ行く梅若の森景のよき山はつらりと花ちりてどこでもおそき町の朝食汁も鱠もいなだなるらん若黨に內證きかする戀もありすべつた馬を引きおこしける穩蟬のいりつく樣に鳴く時ぞ御門徒寺のすまふつぶるゝ八朔のさかやき剃りにまはるらん堤の雁のさきさかりなるひつそりと夜半の月のさびかへり手に〓〓膳を持つてたゝるゝうら坐敷山をうしろに春くれて麥の中からあひる啼きだす櫻見る袖ちひさしや田舎染嵐山史竹三吟四六三四六二芭蕉山店史邦店邦竹竹店邦竹店邦竹店邦竹店邦竹
り。りたれば、がにむかしおぼえてなつかしければ山藍摺りみだるゝゆゑに、方二間ばかりなる石あり。忍ぶの郡しのぶの里とかや、小早苗とる手もとや昔し忍ずりおもひに石になりて、一つ脫ぎてせなに負ひけり衣がへいまは谷合に埋もれて、文夏前書きれて見えず文字摺石させる風情もみえずはべれども、之芭蕉翁全集部庫其の面に文字ありとかや、此の石は、石の面は下さまにな戀によせておほくよめ文字ずりの名殘とてむかし女の同ばせをニさす小箱崎や岩たて雲をつゆあがり川べりに狐火立つやついりばれさきだちのふみ込む音やさつき闇無病さや物うちくうて五月雨0五月雨や蠶わづらふ桑のはたおのづから梧にならふやことし竹柚の花にむかしを忍ぶ料理の間花麥の秋はあふみとおもへどもよせ馬の土手のあちらや紙のぼり子にせうといへば迯げこむふき籠山樫やわか葉のくさき一しきりかみなりの鳴らで曇りし梧の花藪畔や穂麥にとゞくふぢの花狹莚のへり踏みありく葉より哉さがにて落柿舍閑居(嵯峨日記にみえたり)乙州餞別小文庫養史山史芭史嵐ばせを山乙北史荊山浩邦店邦蕉邦店竹州からたちも刈揃へたり佛生會部養史山史芭史嵐乙北史荊山山同ばせを浩邦店邦蕉邦店竹州鯤邦口店店正成之像六月をしづめてさくや雪の下みな月の竹の子うれし竹生島わが宿は蚊のちひさきを馳走也なつ衣いまだ虱を取りつくさずはらす程に卯月のはじめ庵に歸りて旅のつかれを虫の喰ふ夏菜とぼしや寺畠一田づゝ行きめぐりてや水の音○蘭の花にひた〓〓水の濁り哉草むらや蠅取蜘の身づくろひ雲すきや尾越の鹿のねらひ狩ほとゝぎす起合せたり聲の中只おかぬ麥のぐるりや紅の花同じくおなじく間不容髮といふ事を東去同荊北此嵐同ばせを史山以來口枝筋邦竹太鼓にてほいろを返す葉撰哉槇の戶をうつぶせにして葉より哉葉ざくらや千體佛のみがきばえ木つゝきも庵は破らず夏木立月を見ても物たらはずや須磨の夏ほとゝぎすきえ行く方や島ひとつ紅麥に鳴きやうきかんほとゝぎすほとゝぎすまつ〓〓宵の丸寢にて夕やけやきら〓〓ととぶ時鳥○郭公鳴くや湖水のさゝにごりほとゝぎす大竹藪をもる月夜灌佛や釋迦と提婆は徒弟どし佛頂禪師の庵をたゝくすあ美濃にて落柿舍閑居(嵯峨日記に見えたり)まかし史嵐史同同史岱ばせを山之丈ばせを邦竹邦邦水店草道四六五東去同ばせを以來嵐同山史嵐史同同史ばせを以來竹店邦竹邦邦道
空に、櫻よきほどにしげり、し誰某と時めきのゝしれる名は、の胸もはるゝにや、す。のこりて、りのものゝふの、山のしりへを斷ちてなほ壘をかさねたり。山は刀根のながれより生れて、て、たれそれ幽靈のいかづちの荒れてひさしき夏野哉やゝ百の秋の露むすび霜うつれども、未申に河水をまうけて是がためにそばたち、うき雲や左右にわかれて靑嵐安房上總うしろに當てゝ夏木立切岸や卯の花下し一文字時鳥のこゑもたまぎるゝ斗りなれば、ね同吊古戰場鴻之臺眺望むなしからぬぞせめていちじるき。小文あそび所や花うつぎいとヾ哀れに覺えてうのはなのくもりあひたるおほく此のところにうしなはれ庫さすが人の耳に營を南にみそなは史山さばかなにが史嵐山邦店魂魄こんばく松き邦竹店森の蟬すゞしきこゑや暑き聲水仙の種を干す日やせみの聲鬼百合やりんとひらいて蟬のこゑ日の勢やくるしくうごく百合の花蠅打になるゝ雀の子飼かな麻臥して風すぢとほす小家かな三日月のいつか出て居る櫻麻麻の葉のあからむすゑや雲の峯澤潟をうなぎの濁す澤邊かな蓮の花ちるや八島のみだれ口ゆふだちや蓮の葉にふる池のくまどろ〓〓とすはや夕だつ鈴鹿山五六十海老つひやして鮠一つひるがほに虱のこすや鳶のあと撫子にふんどし干すや川あがりなでし子にかゝるなみだや楠の露鐵肝石心此人之情芭蕉翁全集亡乙嵐史素河嵐史嵐史木史之同嵐斜ばせを州竹邦繪瓢嶺竹邦蘭邦白邦道蘭史山史嵐山邦店邦竹店州竹邦繪瓢嶺竹邦蘭邦白邦道つぎばしのあとは水田の水雞哉つぎ橋や田草もとらぬそゞろ水繼橋の田うゑや寺の男ども大木やはづれ〓〓はわか楓もの喰ふに茶莚かるや若楓日蓮の歌にも見えず若楓さびしさに凉しき眞間の寺構へなつ山や麥も櫻も寺のぶん眞間山や茄子の畔もむかし繩首塚や人ものぼらぬ夏わらび首塚やひるは螢の草がくれ首塚やとげに咲きたる花むばら黑雲の折り〓〓かゝる靑葉哉同繼橋同所楓眞間寺首塚四六七道ばたにまゆ干すかざのあつさ哉瘦箒木に日かげが出來てすゞみかな風かをる羽織は襟もつくろはずすゞしさや先づ蛤の口の砂煤下る鴨の子の芦根はなれぬあつさ哉あら波やあれて涼しき入日影石竹に雀すゞしや砂むぐり琴引きて老いをがませよ夕すゞみさかさまに扇をかけてまた凉しすゞかけを着ぬばかりなる暑さ哉馬あさがほの二葉にうくるあつさ哉らうにん旅ふたみ丈山之像謁牢人して東武へ下る日、の甲斐郡内をすぎて鞍行日盛りあつし臺所二句つばぁつし藁一把同史山智丈芭句同粟田口にて史恕去許桐史山嵐山嵐史史山嵐山嵐史嵐竹同史山智丈芭恕去許桐邦店竹店竹邦邦店竹店竹邦邦店月草蕉空邦風來六奚
芭蕉翁全集歸路の吟ほとゝぎす水戶海道も夜船也なつ空や精をも出さず渡し守舟梁もまくらにならずなつ衣丹波から使もなくて啼く鴉節季が來れど利あげさへせぬ雪に出て土器賣を追ひちらしたゞ原中に月ぞさえける神鳴のひつかりとして沙汰もなきしやくりがやんで氣がかるうなる奧の院おづ〓〓花をさしのぞきけさからひとつ鶯のなく春の日に產屋の伽のつつくりとかはり〓〓や湯漬くふらんいそがしくみな股立を取並び目つらもあかず霰ふるなりからびたる櫟林に日がくれて佛の木地をつゝむ糸だてころ〓〓と曰挽出せばほとゝぎすそゞろに草のはゆる竹緣羽二重の赤ばるまでに物おもひ蕉店蕉店蕉店蕉店同蕉店蕉店蕉店蕉店山史嵐店邦竹餞別新麥はわざとすゝめぬ首途かなまた相蚊屋の空はるかなり馬時の過ぎて淋しき牧の野に四五千石のまつのたて山方々へ醫者を引きずる暮の月躍の作法たれもおぼえず盆過ぎの頃から寺の普請してほしがる者に菊をやらるゝ蓬生に戀をやめたる男ぶり濕のふきどのかゆき南氣山店ばせを同店同蕉同店蕉店わかい時から神せゝりする雞をまたぬすまれしけさの月畠はあれて山くずのはな日光へたんから下す秋のころくれ〓〓たのむ弟の事ゆふかぜに蒲生の家も敗れ行き物にせばやとさする天目花のあるうちは野山をぶらつきて藤くれかゝる黑谷のみち蕉店蕉店蕉同店同蕉小文種之部庫初秋やたゝみながらの蚊屋の夜着ばせを吊初秋七日雨星はくらうぎんが元祿六文月七日の夜、風雲天にみち白浪銀河の岸はしぐひをひたして、烏鵲も橋杭をながし、一葉梶をふきかたとをるけしき、二星も屋形をうしなふべし。今宵なほ只に過ごさむも殘りおほしと、一燈かゝげ添ふる折りふし、遍昭小町が歌を吟ずる人あり。是によつて此の二首を探りて、兩星の心を慰めむとす。小町が歌高水に星も旅寢や岩の上芭蕉遍昭が歌七夕にかさねばうとし絹合羽杉風西風の南に勝つやあまの川史邦四六九ばせを甲斐にて行く駒の麥になぐさむやどりかなばせを芭蕉杉史風邦小文庫
芭蕉翁全集くし閉關之說色は君子の惡む所にして、佛も五戒のはじめに置けりといへども、さすがに捨てがたき情の、あやにくに哀れなるかた〓〓もおほかるべし。人しれぬくらぶ山の梅の下ぶしに、思ひの外の匂ひにしb忍ぶの岡の人目の關も、みて、もる人なくばいかなるあやまちをか仕出でむ。あまの子の浪の枕に袖しをれて、家をうり身をうしなふためしも多かゆくすゑべいせんれど、老いの身の行末をむさぼり、米錢の中に魂をくるしめて、物の情をわきまへざるには、はるじんせいかにまして罪ゆるしぬべく、人生七十を稀れなりとして、身を盛んなる事は、纔かに二十餘年也。はじめの老いの來れる事、一夜の夢の如し。五十年六十年のよはひかたぶくより、あさましうくづ6Aふんべつをれて、宵寢がちに朝おきしたる、ね覺の分別なに事をかむさぼる、おろかなる者は思ふことおほほんなうぞうちやうし、煩惱增長して一藝すぐるゝものは、是非の勝四七〇る物なり。心是をもて世のいとなみに當て、どんよく貪欲の魔界に心を怒らし、溝洫におぼれて生かす事あたなんくわらうせんはずと、南華老仙の唯利害を破布し。老若を忘れて閑にならむこそ、老の樂みとは云ふべけれ。人か來れば無用の辯有り、出でゝは他の家業をさまたら)ぐるもうし、尊敬が戶を閉ぢて杜五郞が門を鎻むには、友なきを友とし、貧を富めりとして、五十ぐわんふ年の頑夫自ら書し自ら禁戒となす。あさがほや晝は鎻おろす門の垣芭蕉芭蕉槿にまぎれて木槿あはれなり寢道具のかた〓〓やうき玉祭乳母が來てまた泣出しぬ魂祭灸してなきしも我れぞたままつりおくり火や後さがりの袴ごし盆すぎて宵闇くらし虫の聲牛部屋に蚊の聲よわし秋の風史去山史同ばせを同邦來店邦雀子の髭も黑むやあきのかぜ式之不破にてあき風や藪もはたけもふはの關ばせをはつ嵐ふけども靑し栗のいが同初茸やまだ日數へぬ秋の露同しら露もこぼさぬ萩のうねり哉同ひよろ〓〓となほ露けしや女郞花同弓かためとる頃なれやふぢばかま支老玉かつらなまりも床し爪根花史邦昔しきけちゝぶ殿さへすまふとりばせをつね〓〓は後世ねがひなり相撲取史邦蜻蛉やなにの味ある竿の先探丸更科姨捨月之辨あるひはしらゝ吹上ときくにうちさそはれて、こをはすてとし嫉捨の月みむとしきりなりければ、八月十一日みのゝ國をたち、道とほく日數すくなければ、夜に出でゝ暮に草枕す。思ふにたがはずその夜さ小文庫式之らしなの里にいたる。山は八幡といふさとより一里ばかり南に、西南によこをりふして、冷まじう高くもあらず、かど〓〓しき岩なども見えず、只哀れふかき山のすがたなり、なぐさめかねしと云ひけむも、理りしられて、そゞろにかなしきに、何ゆゑにか老いたる人をすてたらむとおもふに、いとゞ涙落ちそひければ俤は姥ひとりなく月の友ばせをいざよひもまださらしなの郡哉同前書きれて見えず夏かけて名月あつきすゞみ哉同名月や門にさし込む潮がしら同ひぐれ世波にたゞよひて、日暮の頃岡崎より京に歸るとて鴨川や月見の客に行當り去來名月や夕日にむかふ宮さかな塔山名月の西にかゝれば蚊屋のつぎ如行四七一ばせを同同同同支老史邦ばせを史邦探丸ばせを同去塔如來山行
芭蕉翁全集名月や佃を越せば寒うなる山名月や草の闇みに白き花左柳侍の身を露にして月みかな史邦常陸へまかりける時船中にてあけぼのや甘七夜も三日の月芭蕉堅田十六夜之辨もちづき望月の殘興なほやまず、二三子いさめて舟を堅田の浦にはす、其の日申の時ばかりに、何某茂兵衞成秀といふ人の、家のうしろにいたる。醉翁狂客月にうかれて來れりと聲々によばふ。主思ひがけずおどろきよろこびて、簾をまき塵を拂ふ。園中に芋ありさゝげ有り、鯉鮒の切目たゞさぬこそいがんじやうと興なけれと、岸上に筵をのべて宴をもよほす。月はまつほどもなくさし出でゝ、湖上花やかにてらす、かねてきく仲の秋の望の日月、浮御堂にさはし對ふを鏡山といふとかや、今宵しも猶そのあたらんかんり遠からじと、彼の堂上の欄干によつて、三上、四十二水莖の岡南北に別れ、其間にしてみね引きはへ、さんかん小山巓をまじふ。とかくいふ程に、月三竿にして黑雲の中にかくる、いづれか鏡山といふことをわかず、主のいはく、折り〓〓雲のかゝるこそと、うんぐわい客をもてなす心いと切なり、やがて、月雲外にはなれ出て、金風銀波千體佛のひかりに映ず。かのかたぶく月のをしきのみかはと、京極黃門の歎息ニの言葉をとり、十六夜の空を世の中にかけて、無〓常の觀の便りとなすも、此の堂にあそびてこそ、ふたゝび惠心の僧都の衣も濕ほすなれといへば、あるじまた云ふ。興に乘じて來れる客を、など興がんじやうさめて歸さむやと、もとの岸上に盃を揚げて、つきは橫川にいたらむとす鎻明けて月さし入れよ浮御堂ばせを安々と出でゝいざよふ月の空同鬼灯は實も葉もからも紅葉哉同鷄頭にうゑ合せけり唐がらし史邦山左史店柳邦芭蕉ばせを同同史邦邦枯れのぼる葉は物うしや鷄頭花花葛や松ふきたふす田成畑もや〓〓としてしづまるや葛の花雨晴や煙のこもるくずの花蚓なく明日は日和ぞ蔘の花いなづまやなぐり盡して薄原大見稻妻やうみの面をひらめかす小見蟷螂のほむらに胸のあかみ哉鶺鴒やはしりうせたる白川原せきれいや壁土こぬる畔のうへ鷹の目もいまや暮れぬと啼く鶉ひゝなきに夜を待明す鶉かなはつ鶉時計の六つもうたせけり道々の鶉きくらん藥とり唐あみに袖ぬれてきく鶉かな小文庫萬史山嵐風史乎邦店竹斤邦尻すばになくや夜明の鹿の聲風睡寢がへりに鹿おどろかす鳴子哉一酌東山をめぐりて一乘寺に出づる丈山の庵はいづこ引板の音史邦岡崎は祭も過ぎぬ葉鷄頭同前書きれて見えず菊の香や庭にきれたる沓の底芭蕉見どころのあれや野分の後の菊同きくの露落ちて拾へばぬかごかな同人がらも古風になりて黃菊哉史邦朝寒や手をもみ初めて菊の花風斤借りかけし庵の噂やけふの菊丈草あか棚やまだいきて居る紅葉鮒嵐竹:芽立より二葉にしげる柿の實と申し侍りしは、いつの年にや有りけむ。彼のhe落柿舎もうちこぼすよし發句に聞えたり。風一睡酌史同邦蕉史邦同氷固磨盤ばせを山店史邦嵐竹正秀四十三
芭蕉翁全集やがて散る柿の紅葉も寢間の跡去來澁柿はかみのかたさよ明屋しき丈草木の本に狸出むかふ穗かげ哉買山やき米に歌こそなけれ近衞殿史邦虫の音や關宿船の麁朶の中養浩死もせぬ旅寢のはてよ秋のくればせを龝の暮留主つかはれて歸りけり山店嵐蘭追悼四句かなしさや日に〓〓ましてちる柳嵐竹菎麻の實をしぼり出す淚かな山店かたみにはいづれの草ぞ墓の露史邦千貫のつるぎ埋めけり苔の露去來高光のさいしやう、かくばかりへがたくみゆるとよみたまひけむは、九月十三日の夜とかやうけたまはりて身の秋や月にも舞はぬ蚊のちから史邦わが宿は四角な影を窓の月ばせを四七四柴の庵ときけばいやしき名なれどもよにこのもしき物にぞ有りける此の歌は東山に住みける僧を尋ねて、一五し西行のよませ給ふよし、山家集にのせられたり、いかなる住居にやと先づその坊なつかしければ柴の戶の月や其のまゝあみだ坊芭蕉伊勢の國又玄が宅にとヾめられ侍るころ、其の妻の、男の心にひとしく物每まめやかに見えければ、旅の心をやすくし侍りぬ。かの日向守が妻、髪を切りて席をまうけられし心を、いまさら申し出でゝ月さびて明智が妻の咄しせむ芭蕉秋を經て蝶もなめるや菊の霜同梧うごく秋の終りやつたの霜同ゆく秋のなほたのもしや靑蜜柑同去來丈草買山史邦養浩ばせを山店芭同同同蕉史邦ばせを題鷹山別正行がおもひを鷹の山わかれ題司召挾箱さいかくするやつかさめし題百菊百菊もさくや茶の間の南向三吟帷子は日々にすさまじ鵙の聲籾壹升を稻のこぎ賃蓼の穂に醬のかびをかき分けて夜市に人のたかる夕月木刀の音きこえたる居合拔二階はしごのうすき裏板寒さうに藥の下をふき立てゝ石町なれば無緣寺の鐘手細工に雜箸ふときかんなくづよびかへせどもまけぬ小がつを小文庫肌さむき隣りの朝茶のみ合うて秋入りどきの筋氣いたがる鹽濱にふりつゞきたる宵の月無住になりし寺のいさかひ持てなしの新剃刀もさびくさり土たく家のくさききるもの花に寢む一疊あをき表がへ小姓の口の遠き三月竹橋の內よりかすむ鼠穴馬の糞かく役もいそがし夕ぐれに洗澤賃をなげ込んでとはぬもわろしばゝの弔ひ椀かりに來れど折りふしえびす講此のあたゝかさ明日はしぐれむ夜あそびのふけて床とる坊子共百里そのまゝ船のきぬ〓〓引割りし土佐材木のかた思ひ西五反蕉水邦蕉水邦蕉水邦蕉水邦蕉水邦蕉水史邦山店嵐竹史邦ばせを岱水邦蕉水邦蕉水邦
芭蕉翁全集よりもそはれぬ中は生かべ言うたほど跡に金なき月の暮もらふをまちて鴫ののつぺい摺鉢にうゑて色付く唐がらし障子かさぬる宿かへの船北南雪降り雲のゆきわたり二夜三日の終るあかつき考へてよし野參りのはなざかり百姓やすむ苗代の隙座右之銘人の短をいふ事なかれ己が長をとく事なかれ物いへば唇寒し種の風四十九邦蕉水邦蕉水邦水蕉芭蕉翁千鳥掛集序鳴海のなにがし知足亭に、亡友ばせをの翁やどりせるころ、翁おもへらく、此の所は名古屋あつたにちかく、桑名大垣へもまた遠からず、千鳥がけに行通ひて、殘生を送らんと、星崎の千鳥の吟も此の折りのことになん、あるじの知足此のことばを耳にとゞめて、其の程の風月をしるしあつめ、千鳥がけと名付けて、他の世上にも見そなはしてんとのあらましにて、程なく泉下の人となりぬ。其の子、蝶羽、父のいひけんことをわすれずながら、世わたる事しげきにまぎれて、はやとゝせに近く、星霜をふりゆけば、世の風體もおのがさま〓〓にかはり侍れど、父の志しをむなしくなしはてんもほいなきことにおもひとりて、ことし夏も半ばに過行くころ、洛陽に至り、漸くあづさにちりばむる事になりぬ。やつがれ折りふし在京のころにて、此のおもむきをきゝ、折りならぬ千鳥の千鳥掛序
芭蕉翁全集四七八ねをそへて、集のはしに筆をそゝぐのみ。我れ聞く川風寒み千どり鳴く也の詠は、六月吟じ出でゝもそゞろ寒きよし、この千鳥がけも、時今炎天に及べり、其のたぐひにや沙汰し侍らん、又聞く東山殿鴨川の千鳥をきゝに出でたまふに、千本の道貞といへるもの、袖にらんじやたいをたきて出でけるを聞しめして、其の香爐を御とりかはしありて、今の世に大千鳥小千鳥とて賞せられけると也。此の後かほど至れる千鳥を聞かず、よし今香はたかずとも、星崎の千鳥にひとりもゆき、あるは友なひてもゆきてきかまほし、又そのあたりの歌枕、松風の里に旅人の夢をやぶり、ねざめの里に老いのむかしをおもひ、夜寒の里の砧をきゝ、なるみ潟しほみつる時は、上野の道をつたひ、雨雪には笠寺をたのみ、月のなき夜も星崎の光りをあふぎて、猶風雅の友をよびつぎの濱千どり、これかれ佳興すくなしとせず。むべなるかな、ばせをが此の所に心をとゞめしこと。正德壬辰年林鐘下浣武陽散人素堂書啄木鳥たゝく杉の古枝咲く花に晝食の時を忘れけり山も霞むとまではつゞけし名辛螺がらの油ながるゝ薄氷角ある眉に化粧する霜待宵の文を喰ひさく帳の內寢られぬ夢に枕あつかひ罪なくて配所にうたひ慰まん庶子にゆづりし家のつり物式日の日はかたぶきてこゝろせくあさくさ米の出づる川口欄干に願ならぶ夕すゞみ笠持てあふつ螢火の影初月に外里の娵の新通ひ薄まねぐ〓袖引く朝霧につらきは鴻の嘴ならすあかがねかはらなめらかにして信辰足風蕉言風信足風辰蕉足笑蕉笑辰千鳥掛上卷星崎の闇を見よとや啼く千鳥船調蜑埋火築山のなだれに梅を植ゑかけてあそぶ子猫の春に逢ひつゝ鷺の聲夜を待つ月のほのか也岡のこなたの野邊靑き風一里の雲母ながるゝ川上に祠さだめて門ぞはびこる市に出てしばし心を師走かな牛にれかみて寒さわするゝ籾臼の音聞きながら我がいびき月をほしたる螺の酒高紐に甲をかけて秋の風渡り初めする宇治の橋守庵造る西行谷のあはれとへ千鳥掛上卷芭蕉安信自笑知足業言如風重辰言足信風蕉笑風足
ウ御燈かゝぐる神垣の梅花盛り文をあつむる窓閉ぢて氣をたすけなんほとゝぎす鳴け山更によこをりふせる雨の脚陣のかり屋に基を作る程ふすぶりし榾の煙りのしらけたる老いかむうばがころも打つ音殿やれて月はむかしの影ながら狐かくるゝ蔦のくさむら瀧津瀨に行婦法の朝嵐燧ならして岩をうちかく山守りが車にけづる木をになひ三度ほしたる勅のかはらけしづかなる龜は朝日を戴きて翅をふるふ鳰ひとつがひ松陰にすこし草ある波の聲父のいくさを起きふしの夢千鳥掛上卷千どりしばらく此の海の月京まではまだなかそらや雪の雲矢申の聲ほそながき萩の風錢を袂にうつす夕月御車の暫くとまる雪かきて衞士の薪と手折る冬梅か歌仙有略之。しこの薄こゝの篠庭めづらしや落葉のころの翁草かすみの外に鐘をかぞふる田を返すあたりに山の名を問うて駕籠きむれの春とゞまらず氏人の庄薗多き花ざかり芭蕉翁全集芭業蕉言如知自重安芭風足笑辰信蕉執執筆言足風信辰蕉言笑風足蕉笑信言笑蕉筆信風言名うき年を取つてはたちも漸過ぎぬこがるゝ猫の子を捨てゝ行く小袖して花の風をもいとふべし楊枝すまふのちからあらそひ釣簾の外にたばこをたゝむ月の前身に瘡出でゝ秋は寢苦し髪けづる熊の油の名もつらくなみだをそへて鄙の腰折其のすがた別れの後も一わらひ鐘いくところにしかひがしかわたり舟夜も明がたに山みえて明日の命の飯けぶりたつふたつみつ反哺の鴉鳴きつるゝ僕はおくれて牛いそぐ也引捨てし琵琶の囊を打ちはらひ酒氣さむればうらなしの風小蛤ふめどたまらず袖ひぢて四八〇今朝の月替ふる小荷駄に鞭當てゝ旅寢の霜を見するあかゞり幾落葉それほど袖もほころびず來て寂照庵知足子の許へ、四八曇りをかくす朧夜の月眠るやら馬のあるかぬ暖さいつか烏帽子の脫ける春風松をぬく力に君が子の日して砂さむかりし我があしの跡燒飯や伊良古の雪にくづれけん拉え、て歸り給ひし旅の哀れを聞きて芭蕉翁もと見し人を訪ひ、と白浪よする渚をつたひ、序おもしろければ、伊良古崎見ん三河國に越知からうじぎ越芭足人蕉足人蕉ばせを翁を尋ね荷知芭兮足蕉重自安如知足信辰足信風蕉言足蕪笑信辰笑信風足
打交じる今日や木の葉の魚になるその里へ戾らるゝ駕こしらへて小春の空のとけあうた雲千鳥掛上卷露川亭にて夕月の剃月代にしらみたりあら壁の匂ひ靜かに風止みて皆うち並ぶ榾の賑ひ初雪や寢言にいひし夢合せどこらへ行きて宿る雁金さらばと今日は禮口が明く歌仙略足船繫ぐ岸の三股荻かれて氷をたゝく田井の大鷺面白し雪にやならん冬の雨蝸盧の高樓にいざなはれ、鳴海出羽守氏雲宅にて指さすかた芭知自蕉足笑蕎麥のみつぎを通す關守歌よせん此の名月をたゞにやは脊戶より直に踏みこはす垣海士の子が鯨を告ぐる貝吹きて雪をもてなす夜すがらの松置炭や更に旅ともおもはれず寂照庵に旅寢して里歌仙略駄で山をおりる秋風の踊に野菊折りける芭蕉翁全集知獨露足ト川知如業露安團足瓶言川信友越芭知人蕉足人蕉足野友水すくんだやうな冬の蓑鷺から風や吹くほど吹いて霜白し四八三歌仙略あしたの事はしらぬ望月盃に花柚を飛ばす片の上次をのぞけば匂ふ杉の戶絹を裁つ日は殊更にめでたくて何をふれ行くすヾ鴨の聲深閑と星崎寒し草まくら蝸盧亭にて吹きも習はぬ濱のあき風材木を取りちらしたる暮の月時宜する內に冷ゆる煎茶笹茸は笹と思ひて取殘し入りかゝりたる月のまひ〓〓朝烏市の立つ日をわめくらん窓つきあぐる時雨一息炬燵から友呼續の濱近し寢覺松風の里も此の近邊り成るべし團如露知友足瓶川足歌仙有略之新酒といふにそれこゝろ見よ不自由をこらふればこそ月の市きのふ迯いた馬貰ひけり袴着ぬ人を上座に茶を入れて障子開れば寒かきたてゝ見する夕日や松衞をしむきのひとつ〓〓におどろかれて、川四八二風知路足通舍執龜蝶安知羅筆世羽信足轍洗安龜蝶知士古信世羽足執吏素猶昏を筆明覽
名陽炎の金原つヾき土肥えて夏をこなたに布施紅の咲く見た事は咄しにもなる花の宿京への駕籠のをらぬ栗栖野冬の月坊主は耳の根がさむい土をつくねて獸を燒く何所となうとりひろげたる中屋敷あくたもくたのせまる物前哀れさをためて書きたる文の來るきめよき顏に薄化粧するしら雲の下に芳ばし花樗山の中でもはやる念佛色艶もつけぬ浮世の樂をする碪をもつと遠う聞きたき新綿を蒲團にいるゝ下り前小くらい月を無機嫌で見る生魚のすくない折りは客の來て芭蕉翁全集靜かなる中のうごきは千どり哉千鳥どもねるか夜寒の里の妹引汐に千鳥の聲の何國まで明けがたの輕き衾や磯ちどり櫂柄に頭巾を干すや磯ちどり鋤鍬の身はいらゝきに千鳥かな目の驕り收まる雪の千鳥かなせはしなや羽もやすめず岩衞品川や塵をはなれて啼く千どり打ちも寢ぬ鍛冶が火靑し小夜衛浦ふれて千鳥も鳴くや船大工唐までも行くか千鳥の浦めぐり淡路潟通ふや須磨の千鳥がけ聞きあかでもどる汀や千どり足千千鳥掛上卷鳥冬之部發句甘昨ナニハ和金麥德長人伊丹百新字姫路杉德貞泉非幟風秀七父角丸足古風元德足同通足同通同足同通同足同通同足同旅をせば日の永き頂上花盛りぎつしとつまる大芝居翠簾のうちから猫の穿鑿天井は生きてはたらく古法眼あの雲をひよつと落ちたる地雷四條より結句糺のゆふ凉み夢見たやうな情わすれぬ人しれず、自髪天窓に神いじり身肉を分けし子に緣をくむ芦穂の中をのぼる新三後の月見てから後の十七夜大やうな御寺の世話も引請ける福をさまつてよむ理趣經の頭もんどりうつて郭公啼くひとしきりしづめて渡る鴛の聲々したる在のとし並口をたゝけば日はしたになる呼續や枕とかへる小夜千鳥曉の欠がなくか友ちどり浦風の殊の外なる千鳥かな天てるや女筆の行衞千鳥形傘海月相舍りとや濱ちどり四ツ二ツ明石の寢覺陸奥ちどり友ちどり火燒かぬ寺に明けにけり浦やまし千鳥にあかん網代守待たずしも風の夕べのちどり客飛ぶ音や鳴かぬちどりの程拍子ほし崎や波の笠着る磯千鳥起きはせず枕はなるゝ朝ちどり不二うつる浪の寢入りて千鳥かないかになるみは爰じやもの此千鳥方圓の影や心の小夜ちどり更くる夜の千鳥におるゝ膠かな淋しさの裏啼きかへす千どり哉陸奥伊勢加賀文嘉露笑々翁タ法寸幸鴈泥喪光龍全柳月之之市竹松翅樂來山隱我彥風聯水尋白執筆足同通同足同通同足同通同足同通同
落葉燒くけふの手向や七茶釜佛は繪にもかゝれぬ紙子かな俤のしぐれもこれや片便宜此の浦のちどりに殘る紀念かな千鳥鳴く爰やむかしの杖やすめ赤井だなつかしき此の胸にうかびて、り侍れば、鳴海知足子は芭蕉翁の古き因みにて、からざれば、どかたらはれし其の心ざし、旅寢の夢の見所と定めて、しに成り行く事ども物語り聞えしに、時ひあればやまずづるべきおもひなけれど、める人々を招き追善を催ほされぬ。日數とゞまりて、かず千鳥掛上卷雨つゐぜんたゞにあらぬやはと、予も亦たづねよりて、しきりにと古翁の月忌にさへ當今も空し月に雪にや知龜自蝶路句つ道好た昔立つ波にねられぬと鳴くや小夜衞海を田に埋めて鳴くなるちどり哉烏さへ鳴きつぶしたる千鳥かな浦は町やむかしの鳴海鳴く千鳥此の浦の功かちどりの唫かはり海士の住む里や都と啼くちどり濱まつの音やおぼえて啼く千鳥老いぼれが友たるものや友ちどり月雪の跡の闇鳴くちどりかな不斷さへしぐるゝ耳を小夜千鳥狂ひけり波の兎と小夜千鳥鷄のあとに矢橋の千鳥哉此の海に節の筋引くちどり哉鳴るといふ鳴海のゆきや啼く千鳥とまり得ぬ波や崩れて鳴く千鳥爐の炭を啼きほそめたる千鳥哉濱千どり緞子の夜着に聞く夜哉芭蕉翁全集熱尾鳴海大高釋釋寺本熱田三河雨重安業舟酒獨苔暮祖東四夕如城尹周桃白知龜自蝶路足世笑羽通亭辰信言鶯聖笑巖岫月藤道行之東先雪茶の花や須磨の上野は松ばかり茶の花水仙の組合はなし獨り武者置く霜の敵を味方に水仙花水仙花傘借せと背戶たゝくなり夕しぐれかつぎした男見せけり一しぐれたび人と我が名よばれむ初しぐれあれやたび人來ぬ人をしかるところに時雨けりさゝめ言物にもならぬしぐれ哉秋の一哀れすゝぎあげたり初時雨そよ時雨筧の水の生きて行く干網に入日染めつゝしぐれつゝ上野の道にてうれたくとも袖をかたしきて御とまりはやこなたへといふ露のむぐらの宿は四八七筑前宗肥後名古屋素蝶乙雨一ばせを野木知來堂羽州伯邑吟信雞足山畫のうち鷗に眠りちどりにはけふまでは人の噂や啼く千鳥小夜ちどり枕焦すやたばこ盆汐滿や麥の二葉を友ちどり磯千鳥其のふみあとや文字つくし旅ならぬ耳に問はばや小夜衝幾つかは產んで名に呼ぶ友ちどり和田殿の九十三騎や浦千どり打つて來る波をまくらや啼く千鳥海士の火にそなへ崩すや村千鳥呼續の浦に關なし啼くちどり汐風に尾頭ならぶちどりかなひとり行く浦やすゝどき小夜衛磯ちどり鳴けよ今夜は幾日汐猫も我れに押れて鳴くな小夜千鳥往きもせず來もせぬ浦の千鳥哉此の里の松にきけとや鳴くちどり四八六龜泥和鯉鷺嬉秋八幡蟬扇洗牛僧自素知一一一素蝶乙雨一ばせを伯邑堂羽州堂足世燕溫海子走汀斗蒲木河古邑步笑
弓馬の初音うつくし兒手茶屋代々富めり壺中の茄子氷樣春之部發句行くとしや伊勢の御燈の粘細工年の夜もかさゝぎ渡すとや成んぬ年わすれしかし太鼓はたゝかれじ賑はしう煤とる宿の朝げしき古〓や臍の〓に泣くとしのくれらからのあまたよはひかたぶきて侍る立そかりせばと、の末伊陽の山中に至る、るゝ頃より、おもふ事のみあまたありても見捨がたくて、つけても昔しのなつかしきまゝに、子鳥掛上卷すて春慈愛のむかしも悲しく雪を重ね霜を經て、あい初冬の空のうちしぐひのためし冠露琴蝶如知芭猶父母のいま師走쭉は大酒や三日足たらずえびす講せめて十夜何少將は九十九夜花の木に花の寢言の小春かな一すねも二すねもすねて冬の梅池の魚あらしにあてぬ氷かな我孝はうすきに厚き氷かな紅鹿子結ふや氷の下もみぢ蠅追うた尾に雪拂ふ隙の駒あけぼのゝ雪を耕す蹄かな松は雪ふくべをいづる炭の音降る雪になほおほきかろふじの山雪降るや若衆の門を掃きに行く茶の花のあるじや庭に唯居らず茶の花や徑わけたる星月夜雜氷雪冬芭蕉翁全集冠露琴蝶如知芭昨名古屋蝶光扶搖亭丁羽彥對馬知龜氷出雲伊勢尼風蝶八智才團龜里霑風羽柳足蕉足世下水羽菊月麿友世かた〓〓は寂しがられて梅の花釋迦はやり梅は導く鼻ばしら麴屋にとまり客あり梅の花竹の戶に釣瓶の魚や梅の花寢覺めたる顏吹きなぐれ梅の風梅が香に妻うたがふや夜三更梅が香に醉ふべきほどの雀かな初なづな鰹のたゝき納豆まで靈夢から裸もあるに着衣始わが春に實植の柑子粧りけり異國へは跡かつがする初日かな蓬萊の隱家にせん榧の殻初鷄のあした〓〓や無盡藏湖のほとりの玉やかゞみもちそも〓〓は曙の色山のはる賀に榮えり齒朶から花の綾錦梅四八九篦つかふ冬田の鷺や世の中は富士ひとつこゝろがゝりよ河豚汁しら糸に霜かく杖や橋の不二寒菊はちかよる梅の名殘哉火加減の甘鹽を喰ふ炬燵かなわが宿は跡さいて寢る湯婆哉丸合羽はしり過ぎたる霰かなまこはいかに錢は切れて大根引十の指口へそろへる寒さかな角つゝむ越路の牛の寒さかな荷もなうて柳やかろき冬の雨木がらしもかしましからぬ柳哉木枯に出現したるお寺かなはじめの老いも四とせ過ぎて、きものにおもほえ侍るよし、代々の賢き人々も、歲かしこ暮古〓はわすれがた四八八何事に我れ今は柴如杉寸小豆島伊勢對馬白知幸紀和龜業繁周淵ラ長和柳鳴海知素團知雨如舍才露闡柴如杉寸小豆島伊勢その女白知幸紀和龜業友泉風雪伽足巴之子世言ロ對馬貞東泉父子水足堂友足亭風羅麿江幽
つばくらや子を思ふ身の隙もなし乘かけを坂に越えたるつばめ哉壁の穴覗きつ鳴きつねこの戀鞠それて妻乞ふ猫の行衞なししとやかなこと習はうか田打鶴寒歸る木曾のむかしや田螺とり半部の空明渡る田螺かなたんぼゝや白壁見ゆる足の下たんぽゝの土手やむかしに鳴海潟戀せじな貌かたぶけてはな菫一昨日の鐵砲くさきすみれかな明ぼのやすみれかたぶく土龍野の宮の高麗狗になる蛙かな陸にても飛鳥を得るや蛙武者猫戀田螺すみれ千鳥掛上卷ついる田打たんぽゝその日には覗きとゞかぬ木の芽哉金持を鶯選らぬ軒端かな鶯やむかしは寺に歌のありうぐひすや千疊敷のあるじ顏うぐひすを命や軒の干大根譽めらるゝ鶯の身ぞむつかしき此の春を含むか神の松のはな紅梅や萬燈ともす松の中松梅の庭や文武の右ひだり八月にかん這梅の殘る影なき月夜かな梅が香やこぼしちからもなるみ潟ることをしるや此の舘の主人里あるがごとし、閑なる事を好んで、鶯聖廟奉納三句芭蕉翁全集まけは致さず梅の花府中に山林あり、山ふかく入れば又露足霑蝶扇寸下野卷越後蝶龜知野汀加賀柳川之羽河馬耳羽世足下野惟一斟釋洛知東蝶東凡洛素嬉舍雨氷沾露蝶龜知野汀加賀柳羅亭下竹然邑斗足推羽潮兆流斗川羽世足坡芦舟若草にとんと消えたる雲雀哉鷹そらす顏や切行くいかのぼり養父入やうなづきあひて行違ふ出がはりや水遠近の井戶車出がはりの寢言に物をこそおもへ里がよひかいどり前やおぼろ月陽炎の中に骨あり田うち蟹燒かぬ日も陽炎もゆる鹽屋哉袋よりたつ陽炎にかいだるし星晩鐘に朧のにほふ垣根かな紙鳶崎朧陽出替蝸廬亭にのぼりて雲雀養父入の朧や低し亭の上月布袋書きたる繪に炎四九一星蛙啼く一夜々々に夜着重し照られても欝金しろまぬ胡蝶哉夢に化す蝶や浮名の靑表紙朝蛙柳光陰をたらりと庭の柳かな降る雨のこまかにしのぶ柳かな鳥どもの脊にのする柳かな雨風を〓〓の 柳そよめくやあつらへの風梅柳軒にさらり砂にもさらり柳哉柳垂れてあらしに猫を釣る夜哉鐘の音も解けて八十瀨の徑かな凍解や去年の紅葉の行算胡柳凍蝶平等院の本尊かな解かな陽四八七加賀柳蝶團ブンゴ僧ちそく娘沾道繁知りん女つ魯木洲甫貞ね足九因醉獨越蝶蝶羽妻羽東嬉杉名古屋寅一蝶木霑素笑雌羽友人藤斗風羽因之三海
下部の祖父と女すむ家簇竿に藪はほられて風の音むら〓〓土の焦げし市原ゑのころの重なり伏して四ツ五ツ賣殘したる庭の錦木茶を出す時雨に急ぐ笹の蓑秀句ならひに高瀨さしけり月の弓消行くかたに雉子啼いて旅寢を起すはなの鐘撞笠寺やもらぬ窟も春の雨奉納千鳥掛上卷歌仙川裾や散るはおぼえて山ざくら大勢の目に呑れたるさくらかな合せて山高うして海ちかきといへるをおもひ釋柳白御壽命の外十年や花の山見直すや初花や桃咲いて釣るしかへたる干葉かな鯉もけふ伏見の桃にのぼるかは沖の石日にあたゝまる節句かな三日月の光りや浮きてもゝのはなそらねして御門通るや鷄合萬葉の汐みちて上野の方や舞雲雀老いの山踏知足亭の初花を詠めやりて花おなじく上それは和靖かさね〓〓に鹿の角芭蕉翁全集これは知足翁の花の宿なれかゝる男も花の陰姿ゆかしや己ふるさと帶雛芭蕉桃靑執業自安重如知風足筆言笑信辰風足釋柳白一日モ祖高治龜加賀名古屋鯉句農機露舟支貫月翔由世走空石石川名菊の戶に乳を呑む程の子を守りて大年の夜のともし火影薄く刀をぬきてたぶさおし切る乘捨てし眞砂の馬の哀れなり盞をあらそひ負けてかり枕火を消す顔の露山路來て何やら床し郭公居眠りながらくける綿入院の白絹に萩としのぶを織りこめてもぎつくしたる午時の花一二の的を汐にまかする廊を双六うちにしのびよりさ曇るやと夷に見せたる秋の月うらみを笛に吹殘しけるきぬ〓〓のまだ振袖に鳥帽子着て曹子に薰を乞ふぶげなり義經の像四五三憎き唇やまざくらひかへて外は町屋哉山ざくら表具してみるかすみかな晝からは茶屋が素湯賣る櫻哉明ぼのゝ鐘に咲いたか此のさくらさくらにも談義にも寢る親仁哉山ざくら世を宇治山の行脚哉糸櫻吹くや堅田の網さばき咲くやいかに鹿追ふ獵師山さくら鎻おろすたからの奧のさくら哉花に呑んで年も小半合暮れにけりさし浪や志賀からおとす花いかだ年喰へばいよ〓〓出たき花見哉懷に寢て歸る子も花見かな足もとのあかるい華のもどりかないつくれて花にはさかる三日の月鳥〓にうん〓〓とてぞ花の岫櫻こなから四九七東知業申名古屋胡岡崎馬豐後猶里下野才龜蝶新城美濾伊勢豐後須賀川かめ女千辰紫藤世羽川閨白躬風言笑信足風辰笑言辰信足風言辰信笑推足言桃叟貞然杜麿
名笠もてはやす宿の卯の雪長屋の外面たつ名はぢらひ夏草よあづまぢまとへ五三日五驛路幾度か往來してかく迄になりぬ。尾城の露川を加へて三吟となし、菓子賣も木隱れてのみ住みはつる日の風の宮雨のみや天氣さへ勅に應じて雲なびく龜葢を脊負ふさヾなみ燕に短册つけて放ちやりねためる筋を春惜しまるゝ鳥邊野に葛とる女花わけて猫ならば猫霧はれてからべきとて、眞珠庵のぬしにたいめせし頃、あるとし子がたらちね、芭蕉行脚のころ千鳥掛下卷第三まで出來ぬ。洛にのぼりて十三歸國の後兩吟す桃知靑足足笑風信端言暖になるすゝの明ぼの花盛り尾張の國に札うちて鳥居を覗く八重の松ばら初雪のかゝる箙をうち拂ひ秋くれぬとて扇引きさくおもひ草水無瀨の水に投入れん名を待宵と付けし白菊姉妹窓の細めに月を見て笈おもげなる宮の休らひ芭蕉翁全集足笑風信蕉端言葉風信言風足笑辰足信辰ちどり掛下卷居替りに女ひでりや江戶の町暮行く春は金に買れじ運同士五海廣くこゝが國での月見寺ぶ茶臺にうつる前髪精進に名代立つる花の宴分別貌に出たる兼房どう〓〓と船の廁の波の音炬燵をおもふ夢の一年も添うたる妻のひとり啼き相撲を賣つてありく男等いつやらの野分に堤皆になり稻を仕廻へばしげき觸事冬待ちて雪車の釘打つ暮の月家のうは手に落ちさうな岩鵲の松を南に飛びぬけて咄す間殘せ鐘のみじか夜川床や片尻かけて旅まくら曉それの秋すなる手打の悔しくも子をおもふ親の月さがしけり森透に燈籠三ツ四ツ幽かなる岸にかぞふる八百の鷺から樽を荷ふ下部のうつゝなや長者の輿に沓を投込む道野邊の松に一喝しめし置き念力岩をはこぶしたゝり捨てかねて妻呼ぶ鹿に耳ふさぎそれとばかりの秋の風音住馴れて月待つほどのうら傳ひかへさに袖をもれし名所記二ツして笠する鳥夕ぐれて麥穗なみよるうるほひの末杜若われに發句のおもひあり四十四芭重安如自業叩桐知蕉足 辰端葉足蕉辰信風笑言端葉足同露同如知泉同同足同同川同同泉同足川泉足
名あまりに晴れし空もしまらぬ衣々を御影供參りにまぎらかす被の伽羅に蝶のまつはれ花の陰豆腐に須磨の鯛ふるし夏之部發句せめて隱居に京や願はん夕月に晝の暑さを忘れけり小鼓打の小うたさへよきしれぬ名の立つや網干の出來分限おくり迎へを船の通ひ路雪のあるうちは軍を止めて居るきのふも今日も菜は燒鹽鹿聞きに來るはやさしき人心袖かた敷きて蘭に吹かれん芭蕉翁全集はたけとは志賀の都の牡丹哉茶に醉うた振りしてくれぬ牡丹哉ほしさうに笑うてかゝる牡丹かな民種の日遣もいつかほとゝぎす鳥さしも竿や捨てけんほとゝぎす耳杜牡雨になけ宿は洩るともほとゝぎすほとゝぎす濡れてかたびら一つ也此上は淺芽が原よほとゝぎすふさぐ猿は尊し子規山法師三ツがひとつはほとゝぎす一聲は靑葉に包めほとゝぎすほとゝぎす口濡す間はなかりけり杜鵑鳴きたる跡の九輪かな子規あとのまつりに雨が降る千鳥掛下卷若丹さし棹書きたる扇にころも更壁に詩をかく御浪人衣更團知路露昨來芭タ下野龜蝶知夏左布里淵重出羽才友足通霑木山蕉全世羽足流泉行麿同川同同泉同同足同同川同同誓ひてし粽結ふかはいはた帶事觸ものぼりの鈴も遠乘も端竹の子を竹になれとて竹の垣竹の子の一よ折るとも音なたてぞ竹の子や名聞の世に謂はず竹の子の裸になるは誰れゆゑぞ笋隱れ家の深川ふかし貌よばな今ならば迦葉微笑らん杜若立傘の俤殘れかきつばた秋津洲は色にほれけりかきつばた駒下駄にはる〓〓來けり燕子花かきつばた汗でほとびぬ道明寺馬に市かきつばたには人もなし二度手打つ澤時鳥かきつばた午八はしにて四九七雲となる聲のはづれや郭公雨による物でもあらじほとゝぎす曉のまくらも圓しほとゝぎす郭公茶なし酒なし去りながらほとゝぎす宗祇の質のながれ哉郭葉櫻やたらつき足らぬ鳩の聲葉ざくらや鳩の產家のうそくらき白雨に靑葉が上の若葉かな雀たつ若葉が底に一二輪若葉より出山拜むしやれ木かな若葉ふく風から出して卯月哉新あはせ出せ花さへ芥子の一重なる袷着てまづ立出でゝ峯の雲衣かへいまだひなたを人が行くかたびらや袖に初香の神の庭公樹四九大翠下野沾來湖萬對馬斟知雲釋如島田全養不素三千風足步舟暇民角堂芦伊勢古長崎百之靑伊丹竹米澤蝶〓大垣春洛獨呂來之桑山戶竹山十山斗本道九白人友羽口人千山白來扉
名所之夏極樂の風やお寺の夕すゞみ凉しさをみよとやはしる帆かけ船凉しさを舞うて見せたり水車子を寢せて凉しくも有るか片庇納岩ひばの握りつめたるあつさ哉鬼蜘蛛の圍にかゝらばや此の暑さ麻につるゝ蓬につるゝあつさかなもゝ尻と人のいふべきあつさ哉暑さをも問はで知れたり羅漢の身暑雨雲のちぎれて蟬の聲高し山蟬や權の太夫のからごろも山蟬や小紋すゞしきうす衣蟬すむ水の芙蓉に恥ぢよ鬼の貌千鳥掛下卷凉寢覺里星崎上野夜寒里姫ゆりにゆらるゝ露ぞ浦山し姫百合草や小町がむかし後ろ紐雨雲のひつくりかへる百合草の晝鯉飛んで萍のはな失せにけり泥龜や花うき草の誘ふ水花咲いて猶うき草のうきに浮く五月雨や山もかくれてなこの海五月雨や魚とる鷺のながれ足五月雨や三番三をふむまはり緣曙の色をわけたるのぼりかな岩橋や軒のあやめを下にのみ子はたらぬ物か幟に子持筋鎗直切る顏やあやめのわたばうししだり尾の長屋々々もあやめかな百合草水草花五月雨芭蕉翁全集醉知木龍暮鎌倉僧羽下野東浪速鯉和嬉蝶獨山龜律百蝶知つね女羽足蝶和泉美濃昨平之允不己斟非秋千斗素足因風船短行走子斗羽ト扉世哥里羽子流夏氣色返す〓〓もなるみ潟麓ともおぼしき庭の覆盆子哉淀鳥羽の牛に帆かくる暑さ哉勢田の手をうちもらされし螢哉橘の小島が崎も靑田かな夕貌や上野を通ふ油筒一鼾ねざめの里やほとゝぎす短夜は寢覺の里も朝寢かな凉風や夜寒の里の吹きあまりかたびらも夜寒の里の旅寢哉星崎のすがた亂るゝ螢かな星崎の靑田によるや波のはな凉まうか星崎とやら扨何所じや知足亭にて行脚のころ立つ鷺の羽風に蓮の折葉哉水晶の山なだれてやはすの露あの蓮の動く所や魚の淵玉の〓や是も齡の初なすび初なすや腮の汐のいそがしく蚊柱は夕がほ棚のひかへかな蚊柱に行きあたりけり鼻の先蚊柱もころぶ時あり夕あらし氏雲に蓮蚊柱や角なきとてもそひくるし明けがたの山もくづれて水鷄かなあさら井に蛙游ぐやゆりのはな題狂言初茄子蚊水柱まけじと扣く水鷄哉鷄乙支同同知露釣千名古屋蝶釣暮湖惟自魯如泥松武江釣莵廣島魯好其荷金伊丹州考足之壺鶴羽壺船十然笑九風燕荀壺好九永香分風
かゝげても燈火暗し盆の月玉祭つゝしむ事の自然なり泪けのない魂棚や御寺方蓮池や折らで其のまゝ玉まつり玉蓮の葉も浮世の鯖にしみにけり死に〓〓て生きて露けし萩薄かけ橋や生聖靈の袖の露桐いまだ風折りふしの合點から桐の葉やいたゞく桶の水のうけくる秋のきりきばみする一葉哉角文字は桐の落ちたる二葉哉三ツ股や江戶の硯の洗ひ隈七夕や糸いろ〓〓の竹の花河風や梭の音吹くほし迎生身魂-千鳥掛下卷祭葉木曾にて風呂燒きに行く月の明ばの投渡す岨の編橋霧こめて蒜にみゆる野菊刈萱よき家や雀よろこぶ背戶の粟賀新宅笠ふりあげて船まねぐ聲蛤のからふみわくる高砂子やせたる藪の竹まばら也藁庇霧ほのぐらく茶を酌みて乘行く馬の口とむる月はつ秋や海も靑田の一みどり歌仙有略俳諧秋之部鳴海眺望芭蕉翁全集蝶龜ト芭木天一千姫路芙貝原すて女甘山雀泉芭芭安知蕉蕉信足芭自安如知重蕉笑信風足辰沾龜一羽世誰蕉因垂鐵竹溫世秋風のこそぐりてゆく花野哉それ〓〓や風に見らるゝ花薄惜からぬ風は花野のさわぎ哉花野朝貌の花や網戶のうらおもて一ひねり朝貌と申すつばみなりせんぐりに咲いて久しき木槿かな朝貌や白髪も見えず花ざかり朝貌ふくべにて茅屋おさふる嵐哉ねすがたや起きたところも靑瓢夕がほや秋はいろ〓〓のふくべ哉靑風に名の有るべきものよ粟の上粟親をおもふ衣の山の月の色をとこ女隔てぬ客や玉まつり女郞花木槿瓢初秋中一五〇ト龜崎一泥伯團知月龜季加賀芭此所に遊んで惟才知取亂すわかれの雲や天の川棊盤出せ星さへふたり逢ふ夜なるほし合の蒲團を敷くか宵の雲物かげに女の聲やほし迎ちよつとした雲のさはりや星迎織女の娶入やよめり宵月夜はしり穗の一筋ぬきや星祭土器や壽の字さやかに天の川初秋や筆を呼ばるゝ草の雨是は扨あの松風が秋さうな笹竹の雀秋しる動きかなはつ霜下りて紙子捫つく杉垣のあなたにすごき鳩の聲七初秋の部發句タ秋五〇〇ト龜崎一泥伯團知月才知伊勢越中八村紀東哥金木露祇園梶杉三安知志海燕兎友足尋世邑蕉然麿足菊女之白十士因霑惟女風信足
名月に我れはへちまの袋やら秋ぞ最中心の須磨の四絃名月やいまだ增賀の裸ごろ名にいはゞ今宵の月や三五郞蘇鐵にも月はやどれど薄かな寢てをかし覺めてもをかし旅の月行く船や笘洩る月に袖の紋裏銘は不知かつら男の大かゞみ夕暮に何をちらさん鷄頭花鷄頭や紅錦繡の裏住居いろ〓〓の枕やあらん秋の月鷄頭や唐のかしらの夕日陰碪聞く程こそよけれ奧座敷手だすけのわらはれに出る碪かな延びあがる臑より細し鹿の聲兀山の松を見せけり鹿の聲蓑虫の啼いて枯木の風情かなおのが音の樹神追はゆる男鹿かなぬけがらの蟬哀れなり虫えらみ虫よ〓〓啼いて因果がつきるならきのふには似て似ぬものか草の露露置くやましろのひがし八大名靜さや繪に書いて甞む露の色松風の里に汐くめ女郞花角もじと妬くも寢しか女郞花いたづらの色をさりけり女郎花名月鷄頭花鹿虫寶永露千鳥掛下卷おほ宮造りの時芭蕉翁全集月洛伯北加賀不流枝變秋色光彥言水立圃素堂鐵蟬安信龜世林厘團友辰閨魯九鷗白知足淵泉木雞乙州之白風水白支茨口一龜世海菊酒盡きて臂の寒さや後の月草も木もこの國ぶりよまたの月月やちる袖は木の葉の十三夜名月の麓の松やをとこやま名月の窓やわづかに梅の花名月やついでに明くる日を拜まん名月や約束勝ちで內に居る肴屋の日記に乘らん月見かな名月や今宵一夜の秋の晴白砂にひたと座しけり今日の月明月の鐘鳴りわたる名殘かな今日の月いでや小町が袋には名月や照るも曇るもはなれもの露加賀倫無筑前正讃岐嘯有馬芦因天次水本名月や今宵一夜の秋の晴白砂にひたと座しけり今日の月明月の鐘鳴りわたる名殘かな名月や照るも曇るもはなれもの名月の湯にや水にも自在竹うたゝ寢の關打返す碪哉かけ出すや菌などを數珠つなぎ宵の雨松と契りて木の子かな狩りめぐり菌ひとつを鬼の首間引菜や後にぞおもふまゝ子立間引菜の露提げてくる目籠哉吹出すや野分のあした又をかし庭の面も見えずおもしろき野分哉西瓜ひとり野分を知らぬあした哉草や皆野分に今朝のていたらく冬ちかし終り初もの志賀の鹿宵闇や筧にもれて鹿の聲我大津麥笑秀棹鹿の聲うるみけり夕あらし十三夜八幡にて碪菌間引菜野分五〇三長父全暇重春蝶羽才麿知足泉流柳水柳舟蝶羽ト誰龜世タ全一知足成堺之之白素堂柴友蝶羽邑
萩かれぬ陸の紙布都まで鳴く千鳥富士を見かへれ鹽見坂木枯の吹行く後姿かな冬枯も君が首途や花の雲時は秋よし野をこめん旅のつと送紙布千鳥掛下卷棊に染めて凉敷く夏をくらしけりうき秋をはゝの書かする物がたり行尊の笈に入れたる哥枕櫻猿の小袖を染むる猿引それ〓〓に年取る用意いそがしくぬけ初むる父の一齒のかなしくて馬しゝてより出でず桑の戶おほく咲きたる菊の酒に興ある友を集むるはなみ木梅は山里新綿や治まれる代の弓の音十六夜の月と見はやせ殘る菊白髪にはならず此の花小むらさき壁際や蔦に手をかす菊の花門あけて見らるゝ菊のよろこびか濡色は山路の菊の自然かな大人に德あり菊の酒はやし白菊に黛つくれうすぐもり白菊の咲くや浮世の秡入手松がねに千代をあやかる野菊哉中椀に千代を瀨どるや菊の酒白菊や菊におろかはなけれども〓香をめぐらせけふの菊の風白菊や黃菊の中の一ねぶり新深川素堂より文の中に老綿菊芭蕉翁全集寶生露杉嵐其露同其露同晩芭山文大ナゴヤ僧醉龜知足孫知知足母由平事しゆん女永十蝶之自來椿素世足參律羽白入蓬風雪角沾角荷山蕉扉侘しければとて、其の廣き式藏野も秋過ぎ、世を面白く誹諧にかくれ、忘れけるが、身の動く所を驛とし、かたに千鳥の鳴くを聞きてほくしけるを、しかうかけの紐打ちとけて、笈は土丹生の寢覺がちなる夜の、に銘あが軒端に立寄り、ゆうま杖のとゞまる所を宿とす、五〇五古〓の空に通る時雨のひとつの笈を友とし、そこ爰の物語に日を蝶おひ笈さしおろ5/4羽亡父な星崎の時雨々々に鑑借り置かん草の庵秡んでゝ送り申さん時雨哉朝毎のかみこや重き霜の松幾時雨心そひ行く江戶さくら橋までは供して行かん今朝の霜來月は猶雪降らんはつしぐれ我が夢を鼻ひン霜の草まくら折提ぐる道にて菊の名を忘れ琴引きならふ窓によらばや宵闇や霧の氣色に鳴海潟長き夜や蚓の聲も長恨哥癖とても常なき秋の扇かな棕櫚の葉や草摺たゝむ秋の風何うゑた跡とも見えず秋の風馬牛の脊もさがされし秋の暮夕暮はいつもあれども秋の海新綿にこもる鶉や雪の聲新わたや弓より散りて綾はどり置かれけるを、ばせを老人、俳談のあまり付句〓にほくども書殘しLo長秋なつかしさのまゝ玆に記し侍りぬ夜暮此所に杖をやすめ給ひ、反古の中よりさがし出五〇四古其蝶橫八初松團林泥笈銘中川氏桑門擧李濁仙宗文ち羽ばせを橫八初松團林泥白鱗下子化り波角年船菊候荀友凰燕
れば、葉の花も紫のゆかりなれば、にし侍らんや、が、ひやりてこひけれど、下浪とは成りぬ。や、なん後のながめにもせよといひ置きて出で行きしまた難波の春におもむかんとてあが許よりして、ぬ。聲をも打添へ、予其の事のすたりぬるを歎き、心がけしに、なしく、も、にがし感に餘り、終に其の浦風にさそはれ、自ら負ひし箱物を殘し、まことに翁の餘情も懷かしければ、交付せめて其の佛に此の笈の見まくほしく、呼續のはし〓〓つけわたして、鳴海のひろふかひなき身まかりにけり。芭蕉翁全集我れもし一葉の秋にもあはゞ、絕えにしをつぎふたつの卷になしとゝせ過ぎにし夏、ばせをの露のかたみ、此の卷もと翁の句より興りしな熱田の桐葉がかたに往きしが、其の道をこのみ給ふ人々の句をかくおもふよしをい世をみじかき芦の猶行先の霞とも消え又我が友ちどりのいかにおもひし其の心ざしもむ一册にせんとそいか桐其の頃翁員四其屑滑一篋人世時吐稽千鳥掛下卷終消佳已之之腐逝息景審頓秀爾風身言詞金笈月心實華無爰彷洋得餘亡昌徨々薌光をしたふ。し6物とこそ覺ゆれ、せし。せて見るかげのあるかなきかに氣しきして物ふりたり。こめたるに、る物なれ、形はさながら婦女の玉櫛笥に似て、りの記念となりて、つ送りおこせたり。の五月雨に秋をも待たぬ花と散りて、坐獨神笈れまた我が名殘りにもみせんなどいひしが、ふたゝび翁の文臺に連なる心地し、むべ獨りありきの用にはたりぬべかりける左右に蕨手をつけしは、懸步物言肱自不古されば其の心ざしをのべて銘し侍りぬ高麗人の工みと見えしが、金泥の繪のこまやかなるも、噓負壞极此の道の好どち打寄りてとり出臥客事极あが許に所持しにけり。いかに世は露の玉手筥、喜枕路約本五〇六顱友用書負ふにたよりとや康倡詳箱おほいさもさ其の風情くろう塗りき哀れ添へつはげう其のふた去年
芭蕉翁全集五〇八それはいかいの道は、とほく千金の浪をわけて、崑山の玉をひろふにもあらず、はるかにながれのいさごをこえて、靈山のたからをもとむるにもあらず、たゞ我が秋津洲のくにゝつとふるかなの、よそじあまりをいでずして、よろづのさかいにいたれるわざなりけらし、しかはあれど、まことにそのみなもとをしり、ふかき心をくまんことは、いそのかみふりにたる世に枝の雪をならし、まどの螢をむつびぬる人もかたくなむ侍りき、まして神杉のすゑのよとなりて、たつきなきともがら、何がしの翁くれがしのいらつめなどいひて、わたらひ草となせるよりぞ、おのづからかしこきもすくなかるべし。このみちのひじりてふものゝ、書きおける七ツのふみを一まきとなして、たはやすくその奧儀をしらしめんと世に行ふものならし。安らけく永き三ツのとし長月の頃大鵬館主人がいふ俳諧七部拾遺
芭蕉翁全集五一〇七部拾遺序天下有有益書而無無益書といへば、いづれの書をかよまざらむ。に家々の五車につみこぼれたる集どもを、とりかさねてかくなづくるものは、例の菊舍がひろひえたる玉をあきなひ、利をもとめんのしわざなれば、かの家に一倍の利を得させて、よみ見む人はかならず百倍の德つくべき書ぞ、享和二年秋五一〇二年秋平安竹巢月居誌初懷紙は見るべきものと北枝傳にも見えたり。野ざらしは骨にこたへてかなし、三歌仙は貞享の氣格凛々たるものなり。橋桃の實、其帶は三つながらすがたかよひて、俳諧の愚痴をはなる、はつ便、をはりの卷は誠に風流の平話を盡して、又たぐふべくもあらず、是を集めて七部拾遺となづくる、其成がために蒼虬しるす享和三年春正月
芭蕉翁全集初懷紙序決龍の頷をさぐりて珠をうるは、いとあやふきわざにしあれど、求むるの甚しきに至りては、しかせざらむや、おのれ若きより此の道にこゝろざし深くて、あしたにゆふべに古人の蹤を思ひ侍るが、いまだ全たく連城の良玉にあはぬぞ、うらみて過ぎしが、ひと日つれ〓〓のあまり、市肆をことそともなくありきけるついで、それの文屋にて一束ばかりの反古をなん贖うで歸りぬ。さるをとみに校索しけるそが中より、此の一卷を獲たり。是なん先哲の才をたくみにつゞりおけるものから、彩色といふ斗りなくめでたしと見ゆ。思ふに古賢のよき玉を櫃に隱せるものか、はた善きあたひを求めて其の人にあはざるものか、今幸ひにおのれ是を得て、早く世に售めやと、喜びをしるすものは、鶴齡堂主人にこそ于皆寶曆十一年秋八月丙寅初懷紙後住む女きぬたうち〓〓山ふかみ乳をのむ猿の聲悲し命を甲斐の筏とも見よ法の土我が剃る髪を埋み置かむはつかしの記を閉づる草の戶咲く日より車かぞふる花のかげはしは小雨のもゆる陽炎殘る雪のこるかゞしの珍しくしづかに醉うて蝶をどる歌殿守のねぶたかりつる朝ぼらけ兀げたる眉をかくすきぬ〓〓罌子咲いて情に見ゆる宿なれや葉わけの風に矢篦切りに入るかゝれとて下手の掛けたる狐わなれ月夜のくもる傘石の戶樋鞍馬の坊に住みわびて我れ三代の刀うつ鍛冶五一三齋角枳杉重杉化絃白里蕉枳齋角鱗白下日の春をさすがに鶴の歩み哉砌にたかき去年の桐の實雪村が柳見に行く棹さして店酒屋幌に入相の月秋の山手束の弓の鳥うらむ炭竈こねて冬のこしらへ里々の麥ほのかなる村みどりわが乘る駒に雨覆ひせよ朝まだき三島を拜む道なれば念佛に狂ふ僧いづくより淺ましく連歌の興を覺すらむ敵よせ來るむら松の聲有明の梨うち烏帽子着たりけりうき世の露を宴の見納め惜しまれし宿の木槿の散るたびに俳諧七部集拾遺初懷紙其文枳角鱗風齋重風化下白絃足里蕉筆鱗芳杉仙李擧朱蚊千芭執
名ヲ村雨に石の灯吹きけしぬ經梅まだ苦き匂ひなりけり竹ふかき第ほりに駕かりて傾城を忘れぬきのふけふことしあるじは春か草の崩れ家三度ふむよしのゝ櫻よしの山問ひし時露と禿に名を付けて萩さし出す長がつれあひよみ習こゝろなからむ世は蟬の殻囚人をやがて休むる朝月夜木魚聞ゆる山陰にしも菱の葉を柵ふせてたかべ鳴くおもひあらはす菅の刈りさし胸あはぬ越の縮を織りかねて姊待つ牛の遲き日のかげ二月の蓬萊人もすさめずや俳諧七部集拾遺初懷紙ふ聲の美しウ門人あまた年取る物をかつぎ行くつれなき聖野に笈を解く稻妻の木の間を花の心ばせ糺の飴屋秋寒きなり鵙の聲夕日を月に改めてあら野の牧の御召撰みに理不盡に物くふ武士等六七騎は雨さへぞ賤しかりける鄙ぐもり友よぶ蟾の物うきの聲待宵の鐘は墜ちたる草の中彌勒の堂におもひ打ちふし筑紫まで人の娘を召しつれて船に茶の湯の浦あはれなりとく起きて聞きがちにせん子規近江の田植美濃に恥づらん永祿は金乏しく松のかぜ芭蕉翁全集魚ほす磯際の寺峽楊水齋白重鱗下化絃春下齋下鱗風蕉重齋水枳白下鱗角里白齋化蕉枳下角里絃化三笘の雨袂七里をぬらすらむ京に汲まする醒ヶ井の水伊梅はさかりの院々を閉づ水車米搗く音はあらしにて贄に買はるゝ秋のこゝろは餅作る楢の廣葉を打合せ親と碁をうつ晝のつれ〓〓南むく葛屋の畑の霜消えて卯の花のみな精にも見ゆる哉江湖々々に年よりにけり玉川やおの〓〓六つの所にてににくき男の鼾すむ月鹿の音を物いはぬ人は聞きつらめ竹うごかせば雀かたよるこの國の武仙を者ある〓に書かせ酒もりいさむ金山の洞駒河內の冬の川づらby連衆くはゝる春ぞ久しき寢むしろの七蓆に契る花匂へ尾長にまじる松の白鷺舟いくつ凉みながらの川づたひ足曳の廬山にとまるさびしさよ千管絃をさます宵はなかるゝ逢はぬ戀よしなきやつに返歌して笑へや三井の岩根ふみ重き地藏を荷ひ捨て紅に牡丹十里の香を分けて居士と呼ばるゝから國の兒雲すむ谷に出づる湯をきく聲信長の治まれる世や聞ゆらんけや木えり來て橋造る秋伊勢を月松に朝日の有りがたき蚫とる夜の沖も靜かに唱ふる觀音の御名五一五若法師ども不白ト水風角水重化齋角水春鱗水下ト化蕉角水下々絃蕉風鱗ト水重化蕉齋角絃
芭蕉翁全集貞享三寅年初春寶曆十一年秋八月梓鶴齡堂藏野ざらし紀行序文第我が友ばせを老人、ふるさとのふるきを尋ねんついでに、行脚のこゝろつきてそれの夜江上の庵を出で、またのとしのさつき待つ頃に歸りぬ。見れば先づ頭陀のふくろをたゝく、たゝけばひとつのたまものを得たり。そも野ざらしの風あるなり。出立つあしもとに千里の懷ひをいだくや、聞く人さへそゞろ寒げなり。次に不二を見ぬ日ぞおもしろきと詠じけるは、見るに猶風興まされるものをや、富士川の捨子は惻隱に見えける、かゝるはやき瀨を枕として、すて置きけん、さすがに流れよとはおもはざらまし、身ぞかふる物になかりきみどり子はやらんかたなくかなしけれどもと、むかしの人のすて心までおもひよせて哀れならずや、又さよの中山の馬上の吟、茶の煙り、葉の落つる時驚きけん詩人のこゝろをうとほbつせる也、桑名の海邊にて白魚白きの吟は、水を切つて梨花となすいさ俳諧七部集拾遺野ざらし紀行序文
芭蕉翁全集ぎよきに似たり。天然二寸の魚といひけんも、此の魚にやあらん、行き行きて山田が原の神杉をいだき、またうへもなきおもひをのべ、何事のおはしますとはしらぬ身すらも泪下りぬ。同じく西行谷のほとりにて、芋洗ふ女にことよせけるに、江口の君ならねば父にもあらぬぞ口惜しさきとき。それより古〓に至りて、はらからの守袋よりたらちねの白髪を出して拜ませけるは、まことにあはれさは其身にせまりて、他にいはゞあさかるべし。しばらく故園にとゞまりて、大和めぐりすとて、わた弓を琵琶になぐさみ、竹四五本の嵐哉と隱れ家によせける、此の兩句はとり分里け世人もてはやしけるとなり。しかれども、山路來てのすみれ、道ばたの木槿こそ此の吟行の秀逸なるべけれ、それより三芳野のおくにわけ入り、南帝の御廟にしのぶ草生えたるに、其世のはなやかなるをしのび、またとく〓〓の水に臨みて、波に塵もなからましを、こゝろみにすゝぎけん。此の翁年ごろ山家集をしたひて、おのづから粉骨のさも似たるをもつてとり、今心とゞまりぬ。思ふに伯牙の琴の音、こゝろざし高山にあれば義々ときこえ、こゝろざし流水にあるときは流るゝがごとしとかや、我れ亦鐘子期がみゝなしといへども、翁のとく〓〓の句をきけば、眼前岩間をつたふしたゝりを見るがごとし。同じくふもとの坊にやどりて、坊が妻に砧をこのみけん、むかし薄陽の江のほとりにて、樂天をなかしむるはあき人の妻のしらべならずや、坊が妻のきぬたは、いかに打theちて翁を慰さめしぞや、ともにきかまほしけれ。江のほとり、是は麓の〓,地をかふるとも亦しからむ。いづれの所にてか、笠きて草鞋はきながら、歲暮のことくさ、是なん皆人のうき世の旅なる事を、しりしらざお〓るを諷したるにや、洛陽にいたり、三井氏秋風子の梅林を尋ね、きのふや鶴を盜まれし西湖に住みし人容、鶴を子として梅を妻とせし事をおもひよせしこそ、すみれむくげの句のしもにたゝん事かたかるべし。美濃き、きや尾張や大津のから崎の松、伏見の桃、〓句木がらしの竹齋にも鼓をう俳諧七部集拾遺野ざらし紀行序文
芭蕉翁全集三〇つて人の心をまはしむ。言葉皆蘭とかうばしく山吹と〓し。靜かなるお極もむきは秋しべの花に似たり。その牡丹ならざるは隱子の句なればや、か 大風のばせを霜の落葉破れにちかし、しばらくも跡にとゞまるものゝ、形ご見草にもならばなるべきのみして書きぬ。かつしかの隱子素堂(本文は泊船集中に在り。故にこれを略す。校訂者誌す。)素堂(本文は泊船集中に在り。故にこれを略す。三歌仙序詞さきに名古屋五歌仙熱田三歌仙は、一雙のはうびと也。冬の日選なり次いで顯れ出づべきを、卷のしりへとゝのはざる間に〓〓とくも春の日の卷の世にもれ出でしより、此のえらびかひなくやみたりなど覺ゆ。世上冬春のふた卷をもて、左右のごとくなし侍るもいかゞあらむ、我徒には熱田の卷を五歌仙に合せてまなびさしむ。かくて其卷のはし〓〓を摘みこぼれたるをつゞりて、蓬がしまといひ、皺箱といひ、古くはこれ後のわざにて、卷のつら、物語に書きなしつ、其の終りもたしかならず、廣くは世に知られずなりぬ。芭蕉の翁、貞享はじめのとしごろ、道をあらたにかりひらき正しくしほりし、身終るまで、十とせあまり一とせのdほどに、冬の日のえらびを先とし、つぎ〓〓の卷なほ精しく、骨髓を撰び出されしも少ならず、そをいつの頃いづれのさかしら人がわざにや、俳諧七部集拾遺三歌仙序詞
芭蕉翁全集五二二あるが中に七まきをぬきて、七俳集とかぎれるはいと憎し、かいつめてづ金科玉條なりと思へるも、わづかにまどへるはしならし。初め學べる人し大かた是をもて摸寫におき、ことのふし〓〓をのみいひうつせば、やがてうはほのかべ髣髴なるものゝ世におほくて、うちに其の眞ごゝろを學びつたふるにおこまいます踈かなるを歎く、今いふ俳諧は水上に匏をおすがことく、即轉してとゞてんべんまらず。轉變しておのづから古しへにかなふ。おのづからかなふはよしつとめて古き調におしあてたらむはよからぬわざなり。古調のはいかいだつすゐすなりなどいはんは猶うたてし。見よ此三歌仙、いま脫錐の時にあひてin古きを合せ新しきをそへ、木上して同志に御あたへんと、暮雨菴曉臺龜ら手をのべはじめにことをしるしいふ。安永四未夏五月貞享はじめのとし、桑名に遊びてあつたにいたるあそび來ぬ豚釣りかねて七里迄芭蕉旅亭桐葉の主、心ざし淺からざりければ、暫しとゞまらんとせし程に此の海に草鞋捨てん笠しぐれ芭蕉むくも侘しき波のから蠣桐葉凩に冬瓜ふらりとふら付きて東藤桑名に遊びてあつ駕なき國の露負はれ行く降る雨は老いたる母の泪かと一輪咲きし芍藥の窓碁の工夫二日とぢたる目を明きて周に歸ると狐なくなり靈芝ほる河原遙かに暮懸り華表はげたる松の入口笠敷きて衣のやぶれ綴り居る秋のからすの人喰ひに行くをとゝひの野分の濱は月すみて霧の雫に龍を書續ぐ花曇る石の扉を押しひらき美人の形ち拜むかげろふ蝦夷の聟聲なき蝶と身を侘びて生海鼠干すにも袖はぬれけり木の間より西に御堂の壁白く藪にくずやの十ばかり見ゆ五二三蕉山藤蕉葉藤山葉蕉山藤葉山蕉藤山蕉尾張の國、あつたにまかりける頃、人人師走の海みんとて、船さしけるに海暮れて鴨の聲ほのかに白し芭焦串に鯨をあぶる觴桐葉二百年我れ此の山に斧とりて東藤樫の種まく秋は來にけり工山入る月に號の鳥のわたる空葉俳諧七部集拾遺三歌仙
常盤山常、盤之介が花咲いて御門をたゝく生鯉の奏風くらき大年の夜の七ツ聞く男やもめの老ぞかなしき笠みゆる人は葎にとぢられてひとつ兎のむら雨のそゝぎ捨てたる馬の沓雲は夜盜の跡埋むなり月明けて打板山をへだつらん水汲む小僧袖ひやゝかに花幽かなる竹こきの蕎麥菴住やひとり杜律を味ひて三ツ股のふね深川の夜聞きなれし笛のいろえの遠ざかり枕屏風の〓になみだぐみ歌よみて女に蠶おくりけりいかに啼く百舌鳥は吹矢を負ひながら俳諧七部集拾遺三歌仙瓜喰ふ音何とはなしに何やら床し菫草靑草春雨の新發意粽荷ひ來てちひさき宮の永き日の伽紅染の唐紙に花の香を絞りはやをけ高麗の破れたる具足を國におくりけるちらす藤の縣に棺急ぐ消えが月細く時計の響き八ツなりて衣かつぐ小姓萩の戶をおす待暮に鏡を忍び薄粧ひ寢に行く鶴はひとつ飛ぶらん不二の根と笠着て馬に乘りながら京に名高し瘤ほつ〓〓と炮爐作る祖父ひとり芭蕉翁全集畠作りてたの撮の折露呪咀芭蕉葉蕉端葉蕉葉端蕉葉端蕉葉端蕉葉端蕉藤葉山蕉葉藤蕉山藤葉山蕉葉藤松風の饗に酒を飮盡し寢に行く鴨の四五百の空雪を侘ぶ漁の姥が袖を見よ暮るゝ大津に三井の鐘きくはな紙に都の連歌書きつけて宿のみやげに撫子を掘る面白き野邊に鮎賣る草の上〓水をすくふ馬抦抄に月獨り茶をつむ藪の一つ家霞秋は猶筌味き物喰ひけり戀を見やぶる朝顏の月鳥羽玉の髮切る女夢に來てほとけを刻む西山の僧日影山雉子の雛をおはへ來てつく〓〓と榎の花の袖にちる右蕉翁眞蹟有暮雨菴に殘36る連歌師の松至三五羽畏舍利とる瀧に朝日うつろふ川瀨行く髻を角に結分けて燈風をしの面白の遊女の秋の夜すがらや藝者をとむる名月の關野々宮のあらし岐王寺の鉦虛樽に色なる草をかたげ添へ髪下す侍從が娘おとろへて双六のうらみを文に書盡し琴織る酒飮む姨のいかに淋しき月曇る雪の夜桐の下踏すげて公家に宿かす竹の中みち田螺わる賤の童のあたゝかに編笠しきて蛙きゝ居るに酒をかへる櫻屋石の御坐の花久し爪をしむ袖の移り香じぶ紅粉皿五二四桐工東閑叩芭葉葉蕉端藤水葉山端蕉山藤水端蕉桐叩端葉端蕉葉端蕉葉端蕉葉端蕉葉端蕉葉端
稿一つかね足つゝみゆく磨石しく庭の寒きあかつき直す鏡も〓し雪の花たびまうでゝみしゆうふくありし御やしろに、梅白しきのふや鶴を盜まれし冬の空やのし行く鶴のめかれせず霜の袖はし株つゝむ別れかな題秋風子之梅林みやこにあそびておなじく炭の如く埋れたるをわかち、翁膳所へのぼり給ふ時、八橋のはし株、俳諧七部集拾遺三歌仙芭餞すとて東桐蕉藤葉草猿蟬鳴いてまだ澁柿の秋の空韃銀の鉢に鮋およがせてたはれて君と酒買ひに行くうちかつぐ前垂の香をなつかしみ田舍祭りに物見そめたる筆とりて朴の廣葉を引撓め風に身を置くけふの討死鶺鴒の尾を蜘の囲に懸けられておほん歸京の時を占ふ五重の塔のほとり夕ぐれ笠持ちて霞に立てる瘦男陰干す於期のかつら這ふ道浪よする鯨の骨に花植ゑて白子の太夫わが霧の海屋手靼幽かに馬の尾の琴の粟の何を招くぞの東の寺の月凄くを芭蕉翁全集芭芭桐蕉葉東ふた芭桂蕉藤蕉山蕉端藤山葉蕉楫藤端葉端楫蕉端藤山巢の中に燕の貌の並び居て梅絕えて日永し櫻今三日東の窓の蠶桑つく家する土をはこぶもろつば樫の木の花に構はぬすがたかな山家筧にうごくやま藤のはな我櫻鯛割く枇杷の廣葉哉日の霞夜銅の氣をしりて杉菜に身する牛二ツ馬一ツ檜笠雪をいのちのやどり哉翁みの路へうち越えんと聞えければ桐葉はた〓〓と機織る音の名乘り來て木の葉に炭を吹きおこす鉢馬をさへ詠むる雪のあした哉しわびふしたる根深大根しのぶさへ枯れて餅買ふ舍り哉其のあした神前の茶店にてつゝじのふすま着たる西行宮守が油さげつも花の奧入日の跡の星二ッ三ツ哀れなる乘物燒いて歸る野に五二六五二七湖同芭春蕉芭秋蕉風秋湖芭風春蕉京秋芭東閑蕉藤水芭桐蕉葉風楫蕉葉藤
蕣はうら一輪になりにけり流れ木や篇の上のほとゝぎす年波のまことに越ゆる白髪かな餌かひして戾る筋や鵜の勢ひ我貌の黑くなるまで月は見むさはへなす虻やうたれん神の注連酒うけて散らば今なり花の下背戶見せに連れて步行くや茄子畑蜀黍の陰をわたるや露しぐれ献立の一にさだまる月見かな我を客われをあるじやけふの月秋の日のかりそめながら亂れけり雪の日や脊中あぶれば嵯峨の山埋火の南を聞けやきりぐ〓す木曾川のほとりにて熱田にまうでゝ俳諧七部集拾遺三歌仙おなじく爐の西といふ事を笠寺やもらぬ窟も春の雨笠寺にてうきは藜の葉をつみし跡の獨り哉牡丹薬分けて這出づる蜂の名殘哉葉子の家をあるじとせしに、京の杖つく岨おもひ出す木曾や四月の櫻狩雪薄し鮋しろきこと一寸命二ツの中に活きたる櫻かなつゝじ生けて其の陰に干鱈裂く女木曾を經て、とかきてたびけるこたへにたちてあづまにくだるとて桑名にて旅店即興ふたゝび熱田に草鞋をときて、二十年を絕て古友に逢ふ芭蕉翁全集の武の深川へくだるとて靑麥芭桐芭又おもひ林氏桐東芭同同芭蕉蕉葉蕉藤蕉舟丈越曾魚專江戶長重荷前如去野其芭桐芭同芭泉草人良兒唫虹五今川行來水角蕉葉蕉蕉紙漉を見に御幸ある頃どや〓〓と筧をあぶる藁燒きて庭さへせばくつもるうす雪旅寢よし宿は師走の夕月夜十二月九日附錄五二九一井亭興行附露凍でゝ筆に汲干す〓水哉人ごゝろ鳥放つあり魚はなつ假りそめに鶉狩行く一里かな杜若水より中はつぼみかな正月は聟見る窓の笑ひ哉冬枯は鶴より低き入日かな集にや凍解けてと誤る。尾陽昌圭がもとにての句也。凢兆が亭に遊びて、荻枯れて蝉の羽を拾ひけり腹の鳴る音も更行く時雨哉鹽鱈やしほ嬉しがる山ざくら歸る帆のふくらに溜る霰かな大萬歲くヾりを這入り兼にけり秋の日やちら〓〓動く水の上夕だちは〓に書く風のすがた哉出船や磯見ゆるまで啼く雲雀蓬萊や御國のかざり檜木山年一夜きしり殘さじ日の鼠商人も見る物とてや船の月露や降る蜘の巢ゆがむ軒の月散舟の名月橋の長々し名月や御堂の鼓かねて聞く笠もなき我を時雨るゝか何と〓〓途中時雨爐の南といふ事を東旦鼠一タ荷越長杜嵐同文同曾同仙同其江戶同藤藁彈井道分人虹國雪鱗良化角五八芭昌越一蕉碧人井いづれの芭露ト松羽聽蕉川信芳笠雪
水うたゝ活きて流るゝ春の貝こがらしや樞ほそめに砧うつ木下川水色赤く秋くれぬ花なかば切りてくれたる葵かな枸杞の實のこぼれて霜のやゝ寒し花の下に誰れわすれけん小サ刀秋の江の舟に傘干す夕日哉後の月顯はれて夜の深く見え舟路よりふねは沖行く汐干哉菜の花の白きにはさのみ心なし忘れ花にわすられぬ風の夕べ哉菖蒲めせ武門かやうに靜かなり月滿ちて靜かに花のしづく哉瀨に立ちて妹がふる見ゆ鵜松明○○凩にかじけて花のふたつ三つ馬畠につゞく野は遙かなり飛あがるほどあはれなる月小男鹿のそれ矢を袖にいつけさせ夕立の先に聞ゆる雷の聲藺をとりこめばねこだせはしき麻布を煤びる程に織かねて乳を飮む子の我れに似るらし投げられて又取付けるをかしさよ亂れし鬢の汗起きもせできゝ知る匂ひ怖ろしき障子明くればきゆるともし火琴持の莚の上をつたひ行きもありかぬ山際の霧芭蕉翁全集ぬぐひ居る俳諧七部集拾遺三歌仙附錄岡城亞周桃萬士以越出雲崎東滿夢生岱朗南壺五魚岡城方蕪一磨都東楚荷周日布南桑三貢碧分人蕉睡竹兮碧人井蕉睡竹分蔓たれて朝顏〓し水の上ひと本に花こそみしやさし木槿鷺の羽のひら〓〓と落ちて月朧流れ木や翅やすむるはつ燕草の庵つと出て秋を見付けたり鉦ばかり叩いてはしる時雨哉雲赤く日の入りてしばし落葉みる子規つれなきものゝ限りかな靑柳や霞めるものゝ中にひとり人いねて一際すゞし閨の月枯蓼のふし〓〓高し霜の原痩藪や夜の落葉の音寒き水鳥の聲吹立つる川邊哉神鳴りて櫻ひらけし夕べかな秋の風窓に月見る寡かな○○三三虫死んで初冬めきし日ざし哉若葉山國にめでたきひとつ哉蝉のら〓〓と柳見に行く塘かなつもる後はたゞ散るまでの小雪哉後の月翌日は秋なき思ひあり發心をひるがへりけり翠簾の花けふは又小雨さへ降りて秋の暮馬立ちて六月寒し楠が下寒そらや宿とりて花に出直す羽織かな時雨する日は折り〓〓ぞ時雨ける月たま〓〓人の面をならべけり月雪の夜をあらそへる風情哉の髭見る壁の朝日哉○たゞ曉のみねの松四季、雜雜五三〇同岡城奧信夫東雀婆羅蘭琴宰湖南同矢作岡城矢作呑魯朱六麥騏子事岡城洛仙臺曉入騏美五丈芝坊白臺素六角周圖三州岡城方趙文曉春東士州鳬亟臺幸壺朗紅壺志良城雅宇馬溟佩雁兎甫六東
蓮咲いて帶うりに花見催すはなし哉風やみて夕暮を水札の啼入る夏野哉蓮切つてこの花洗ふ水もなし誰れやたぞ月に花見る夜半の聲秋の雨舍り泣きよる山の中あがり鵜の夜明けて痩せし濡羽哉靜さや雪の原行く鞭のおと世の田植なぐさみに見る物ならず鴛一羽つく〓〓と人をながめけり水に添うて流るゝ春の心かなき閑なるは落葉の中の石蕗の花利酒に醉うて戾るや秋の市まのどかさに立出て見れば冬げしき○○芭蕉翁全集おもむろ雪に音ある高瀨哉徐に風のわたる哉しみ〓〓と冷ゆる日石の光り哉蝶つら〓〓塘こえ行く日暮哉花ひとつふたつ一口なすびかな若竹は月にやしなふけしき哉更衣元日の後のいさみかな袷着て行くべきところ多きかな麥刈りし跡や細江のぬれ鼠蘆かれて雨にたわらぬ强みかな若竹の五尺にもたらで凉しさよ岩梨や野上あたりの艾見世起きて見れば夜も散るなる櫻哉有るが中に白蒲公英に春の露更衣ひとり笑み行く座頭の坊鹿の聲誰が燒帛のへだてより末の荅なくてもあらむ花あふひ○○俳諧七部集拾遺三歌仙附錄淺香奧桑打亡三州中垣内都李露回臥入亞貢貢秀車央素滿奥信夫矢作白猿子南焦方洛矢作貞曉李千久婦雅沛臺磨魯衆蕃一朱呑焦臥宰曉琴帶三雄甫涉桑雁溟馬臺宇梅尾央圖眉東楚尾州日にそひし色や牡丹の夕凋み里の小春橫たふ竹のけぶり哉暮れかけて水に猶すむ鵜の目哉後の月身をひそみても月の前一むしろ芋干す寺の冬がまへ○蜑の砧その夜は海もしづか也草臥れてぬる夜に花のあらし哉雨ほそし新樹のふかみ鳩の鳴く降る雪の果なく見えて日は暮るゝ夕ぐれや江に吹く風の冬ちかき小ざかしや網うつ先のかいつぶり夕月や池一ばいに梅のはな○斧の音ふかくも入らず冬の山きり〓〓す啼いて茶笑の音高し朝妻や小舟隙なき初月夜田螺わる刈葱がもとの小家哉秋もはやうら菊がちと成りにけり秋風や夜間に衰ふ鶴のあし○鯉抱いて夕立過す蘆間かな月晴れて地もけぶりたつ夜の秋日の朝や氷柱はらへば玉の聲暑き日やさらに心のとゞまらず猛き人は猛くも聞かんほとゝぎす雪のうへ歩みかぬらむ蟹の足夕がほに露あぐる見ゆ二日月○啞蟬の立ちしほもなくて哀れ也星高く枯野の草のひかり哉蘭の香も秀でよこよひ星の閨花を吹くとき春風のすがた哉色かへて菊ふたゝびの匂ひかな大津南勢川崎騏逸只眞楚滄南道漁浩魯竹洲河奥福島芻以丈芝坊古南子烏士斗蟻竹岡城羅春充岡城姑中垣内雪岡城白嘯趙文何萬事是都珂見亟大岱紅山貢東雪朗拙冠也城幸路半巢圖
芭蕉翁全集松ばかり靑き師走と成りにけり月もれて雪の降るまで見ゆる哉○白蓮の花より出づる旭かな秋の風地を吹くまでに募りけり網代うち物おもふさまの日暮哉歸り咲くさくらに近し後の月露に似て花ほそかりし野撫子散るころの香はもれやすし梅の花舟に見る月の中より須磨の梅○けふは只うらえを梅の命哉雲水の中に失せけり春の、馬淡雪や亂るゝほどの風もなし椋の木の南表やふゆの月五月雨や鵜殿の蘆を降りくらし紅に誇りぬ霜の鳥瓜流れ木のながれとゞまる霜夜哉馬涯○水涸れて雪三尺の漂木かな葛巾宵啼の鷄捨てゝけり竹の霜騏道赤間關風や松の下行く鶴の聲羅風洛ものかゝぬ扇にうつれ子規其成埋火に家のあらしを聞く夜哉箕風東武落葉して日南にたてる榎哉成美仙臺花のあたり明るく雨の降りにけり巢居飯貝轟のさとを隔てしさくらのわたしこゆるに、山は遠からず近からず、妹なり脊なり心かよはして山鳥の寢に行く中をよし野川曉臺一曉奎臺馬涯粟津重同班水口貫白子無大阪畫津銀飯田蕉厚鳩志曲凉貸雨坂本千桐東許尤湖南樂當五甫風露二曉臺桑下に三ツの卵あり。大いなること掬するにあまれり。或人袖にして家雞に照孵さしむ。日々羽翼とゝのひ鳴聲律呂にかなふ。宇宙に搏て南溟を轗しめしとかや、こゝに三卷の金玉あり、麻中にひそむ。あか師暮雨叟呼啄して門下の龜鑑となす、予に附屬してひめ置く事三十歲、平安の菊舍響きに應じて題を世に鼓舞せむと乞ふ。强ひていなむも、實にあしたをしらぬに似たりと、いさゝか補綴を加へ首尾を全うし、やがてこぶしを放さむといふ。淡海靑雲居識俳諧七部集拾遺三歌仙附錄
芭蕉翁全集五三六一はし爰に一書あり、名づけて一橋と云ふ。これ陸奥の住鈴木〓風、俳諧の修行者となりて、都江戶とわたり盡し、これかれいひかはせし卷十にみちたるを板行して、今も見そなはし後の代にもかたみ〓〓と殘さむとならし、其名につきて是を見るに、野田の入江のふりけるさまにはあらで、かの難波わたりのといひけむやうに、此道におもむくもの、此のさかひをきゝて、あからめなせそとおもふにやあらん。まことに是詞を心地に託して、其の花を詞林に發するものか、抑も俳思は一橋の雪中驢子の上に在りとやいはむ。于時貞享三年九月初六の日、洛友靜みだりに序す。五三六一江戶調和才麿コ齋芭蕉其角嵐雪立志擧白曾良名月を隣りはねたり草まくら枝見ぐるしき桐の葉を刈る墨衣ふるへば虫のから落ちて內外の下向しづかなりけりすでに立つ討手の使いかめしき一夜の契り錢かつけたる松明に顏見んといふ君はたぞ生きて捨子の水にながるゝ影形ちしれぬ敵を世に歎きことしの餅をおもふ山寺雪を持つ樫や椹に露みえて虹のはじめは日も匂ひなきおしづみては溫泉を醒す月すごし三ツ行く鹿のひとつ矢を負ふ勢々と軍に氣ある朝薄男ながらの白粉をぬる膝琴に明の風雅を忘れざる五三七コ其齋角風白良蕉角風良齋白角蕉齋雪風角京一一四如泉言水湖春信德仙菴素雲羽州尾花澤鈴木〓風選如泉信德言水仙菴三月廿日即興花咲いて七日鶴見るふもと哉懼ぢて蛙のわたる細ばし足踏木を春まだ氷る筏して米一升をはかる關の戶俳諧七部集拾遺一はし芭蕉〓風擧白曾良
主を憐れむ道のべの數珠神鳴の落ちても松の色靑きはる〓〓と天の岩戶の朝氣色けふまで錄にほださるゝ哉夜さりの鏡月に顏見る布子着て布子に歸る北のはてうれしげに罠をそれ行く鳥一ツ土手につけたる寺の裏道萩そよぐ地震に妻の恐るらん塒いづくに鵜の千羽飛ぶ終に答へず黃檗の釋迦小雨にもゆる埋草の骨汲みはてぬ憂世を鮎の命にて幾いにしへの京の七夕指折りて詠むれば蓬をふかぬ軒ひくき日のゝどやかに老馬いそがす人俳諧七部集拾遺一はし隱す山城の谷車をおりて春のやすらひ相國の植ゑたまひけん花と松何やらなくて鹽やかぬ浦哀れさは笘屋に捨てし破れ網ひともじ買ひに雪の山みち眉ぬく袖の翠簾にうつむき物となくものやむ人の獨寢に京の月夜は嘸躍るらむ札燒いて刀ばかりを傳へけり我からのふみよめぬ處を打ちやりて楢紅葉狂歌やさしくよみ添へて耳うとく妹が告げたる杜字淚をり〓〓がつれなき美濃に茶屋をしてゐるうつ鷹を殿の御拳芭蕉翁全集牡丹ちりつゝ春風春風春風春風春風春風春風春風同白角蕉風齋良蕉白雪齋角風良蕉白實子を殺す愁ひは夜の子規年經たる軍治まる秋の月霞氣はさすがきたながらざる乞食哉石買に木賊刈るなる徑分けて世になぐさめと咄し書續ぐ手のとゞく軒端に梅の鎻して泣く〓〓きゆる幽靈の衣溫泉のふもとに見るほどの萩いつかふむべき古〓の橋とまり江や火を焚く舟に寄る蛙なをき櫻の梢にぞ臥す遠き蔦の五三元折笛寢てばかりなる蝶のはかなさ月花の廿九日につまりたる麓の篠屋富士を珍らし札武夫の狂氣三年今さめて旅とても柳の二月花彌生日の廿日雨見る雲の離れたる水尾や木槿を枝折る垣ふかし余所のをどりに佛唱ふる曉の夜着に螢の秋枯槁ぬ鳴別れにふみし八朔の雪光廣の情を殘す宿有りて嫗住む庵簟のいとくる月髣髴笑ふか啼くか子規茅温泉ざれて猿の陰囊ほすらん櫻木や朝靜に音さけて春行くに頰愚かなる蛙かな子くづれし長月の暮う花盛のそよぎ素矢一筋つ堂に姊五三八や妹オ〓麿風麿風麿風麿風同麿同風湖〓春春風春風春風春風春風春風同春同風同風
ねたま文板屋うつ霰に牛のめさめたる嫉六月のはじめ稻かる國有りて市立大岨守る宮は五町地にさけ世に見ゆる敵鞍に腰かけて大和路の釋迦雪霜の覆ひせる窓のすさみに首帳をよむ埋め金あやな雲雀の子をつかむ琵琶負ふ法師若草を出る葑菜釣る松の見越に花散りて幣の起ふし月は暗時うつる世を侍の腹きらず魚灯のかをり佛いやしき夫九十に嫗五ッますしのびの小川渦あらく卷くいつ齒朶葺くと母に尋ぬるれの虫盃を游ぎゆく掘俳諧七部集拾遺一はし出す露のB下々芝濱庇津浪一ツのうち越すや誰が人魂の空に行くらん瀨を落す筏遙かに留めかね優婆塞の折らぬ覆盆子は茨にて京につれだつ和歌の物しり野大麻作年の夜を圓位に似たる假寢してに淺ましや馬の煩ひ湯殿の道の踏枯す笹晝凉し月と星との明らかに田の中に耕殘したる石の塚柳に見ゆる遠里小野の鴻花はみな松あるまでの禰宜の家綾卷いだく老女なつかし涙盡きず駒迎へたる關の跡赤犬ほゆる入逢の月うち荷ふ炮爐重き師走にて芭蕉翁全集る伊勢ぞ貴き水風水風水風同水風水風水風水風水風風麿風麿風麿風麿風麿同風麿風麿風麿見るべくば乘馬なくて山ざくら菴のあとの蕨あ玉田る芝木魚に淋し二月の山花稀に泥引く筏跡ありて麥の四尺に樗くもれり我れ足袋はかず一冬を過ぐ明暮を山見ぬ舟に楫折れて身ふるふ羊秋さむげなる月影の夜すがら廟の草刈りしもる露ながら伯父の屋を繼ぐ六條に今陸奥の道絕えて蛸突く賤の引浪をまつINEいかなれば棺の中に產れたる照々とうとろの中に火の幽かくほの白き桔梗や美女の塚ならん百里に弱るひとつ鴈がね詩を捨つる雨名月の日を惡み風に折れふす椎の東雲の石切る音をたよるらん拳に据ゑて鵜の羽を干す馬子の袖に晝顏かゝる假寢哉梯道守る山に五日とめられ皮つきの鳥居に吹矢殘りけり花夏をみどりの麥二三寸春懐の骨はかへらぬ世なりしを氣のみだれたる昨日くやしきを四現の酒に游げる本鶯二ツ月七ツ五日0立〓志風言〓水水風同水同風同風水風水風水風水風水風同風同麿風同麿
芭蕉翁全集春の雨石の筧の音すみて月になるより蚊の二ッ三ッ語りさす平家哀れを知せけり畠あたらし松の風折れ神主の水汲む眞間の宮所うは着しるべに死骸尋ぬる母親の利口跡先しどけなし礎ばかり老母草ひともと淡雪の雀おり立つむら〓〓に日のつる〓〓と鉢ひらく聲三里來て白く見えたる京の町女房をさらす牛の小車戀衣假名に染めたる名のにたり端歌聞せに龍田宮城野花に入る月をやどりの瓠賣杉菜にふかき春の炭竈蟾の居て汲めぬ朧の〓水哉心に負けし尼の境界破魔矢みる師走の市の關敷き棺昇過る晝なみだなきしん〓〓森々と社頭に松の風すみて人のあたまにとまる蜩さま〓〓の燈籠見による夕月夜胴腹えぐるいなづまのかげいとしさの餘る此身の置所おもひに足らぬ泪もどかし僞りのある世と起請返されてわれ踏みへらす住よしの橋水無月は三日と宿に寢ぬ夕べ庵室紙帳つるもむづかし摘むほどは寛生茂る花の跡千葉野の駒に聟迎へけり俳諧の修行者とむる朝の雨茶杓見立に分くる竹藪同志同風志志 風志 風同風志風志風志風志風志風志風志志 風風志同風同志同風東都に聞えし人々連の中に這出侍りぬ有るが中に常山がもとの螻一晶花しベ高き濁り江の蓮〓風鹿樑つむ奧の簾に人なくて同廿日過ぎたる盆の月かげ晶はげ山や日ぐらし鳴きて曇るらん同築の火消ゆる秋の朝かぜ風榊持田中の井戶に水のみて晶軍がたりの松の十かゝへ風釣鐘に石うつ人の夕凉み晶猿の胃を賣る津の國の人風梅ちりて花咲くまでの眠たさよ晶たゞ陽炎の墓に塵なき風巢をかくる筧の燕貌出して晶二つぶ三つぶ雨草を打つ同月入りてしばし隣りのやねみえず同旅寢の砧海のなる音同俳諧七部集拾遺一はし長崎の初かりがねを聞きに來で同持戒の尼と俗の法師と同箔消えて瓦は土をかつぎたる風七日日を見ぬ晝のともしび同砂漉や汐去る水の〓からん同馬さへ京を跡に足せず同木の間もる伽藍煙のうづまきて同菫が奧の簫をほり得し同年の雪春百日に過ぎざるや同娘あの世に雛を詠めん同葉隱れの繼穂に花の一ツづゝ同くまぬ野井戶は畜埋みし同曙の月に片輪の子を捨てゝ同無佛の國に菊萩ぞなき同十分は飜るゝ、たらぬに哀れあり。是はしきれとして世人の憎みあらんかし雨の日や門提げて行くかきつばた信德五四三
霧なびく方を趣に導かれ尿して行く鹿の足おと草の戶の丸寢をかしき姿共朝夕かはる松しまの妙同じ毛よろふ別れさまうき三鳥を君が信にゆるしけん京にほしがる我が菊の長鼻の先する相撲ちり〓〓馬かばふ聲すむ月の明けがたに汲みたらぬ筧に凉む夕べかな麻こがれつゝ奪取てのる蜑小船楢柴や椎とりつくす跡さびてかり侵す山笹の俳諧七部集拾遺一はし陰乙鳥の後待つほとゝぎす診だ花吉野京に矢數の名を留めん崩れ虛なる銀杏が奧の水の音朧のやしろ記錄尋ぬる余所に月聞きし計りの盲尼七日をさめぬ夢の鴻撫づる袖の匂ひの懷しや古郷の琵琶を嵐の音に替へし人燒く野邊に肬をかたしき蜻蛉の飛ぶさ哀れに夕されて柹圓ながら塵に朽ちたる松風や相撲を立てし跡ばかり曉の樟木を問はぬ程さりて船露 の文に張子の佛作りて橫いつ刈る麻の機を織りやむ小莚捨子育つる車の秋をつれ〓〓た芭蕉翁全集ふ月の川俤隈〓仙其風菴角風角風角風角同風同角仙仙〓庵庵風德庵風德庵風德庵風德菴風德菴風すげなき松の讀み玄らぬ石碑に己が世を悔ゆる虹切る釼夕月に入あやしきは翁に龜の背負はれて晝盜人の牛淺茅生のやどりに啞の物云うて舍利拾うたる雨の明ぼの千早振るいつの帝の捨社鳩の藪垣ことばかはしす入相の鐘に籠菜を戴きて孕める容水にやつれし涙ぐみ七里が渡し跡遙か新大ほうこのなかば母を追行く殘る月誰が旗竿の朽ちぬらんゆからぬ塚に萩の折れさす晦花は心の花にして町の晝陰に火を燒く島に乘行く原五四五のる夜川座敷隣垢離とる男有り梨東雲や四月八日の鐘聞いて獨活蕨竈の煙り絕え〓〓に花の彌生の廿日過ぎけり百性香月を小雨て空寂し稀れに童の粮を春く佐夜の松山艶に死すべき物うらむ女房うへの衣さきし人とはぬ間の鶴の毛をひく三老婆なさけを楢に飯盛る駕輿にあやし娘の不ひばり巢かくる岸の捨ふね拜み行く常には關す御堂かなもろともに夕日を蟬の聲かれて蛙鳴く星のあさら井水さびて味線法師乳の下枝に礫うつ音〓あ母薄ま玉西言霧言同水風水風水菴風菴風菴同風菴風菴風風德庵風德庵風德庵風德庵風德庵風德
靑柳に鵜の觜すゝぐ夕べかな俳諧七部集拾遺一はし巢だつ雀のねぐら見かへる承實植せし花一囲に餘りけん大空の谺木魚の音に絕えて男鹿二ツの玉によわりし靑磁をうづむいつの朝月落武者の行衞隔つる梺川麻かりし畠は露のしぐれけり礫ひとつを神にうらめる小夜の雪をしや袂の香をふるふ十二年先の丁を指ふせて陸に朽ちたる帆ばしらの折れ應しめ出されたる吉原の里Dist殘るひとかひ石橋の苔はつ萩ふむ童池水あやふき手をかけて空の桂を枝折る哉今日のうつゝの世にとめる〓ぐ初陽の數の子牙に年暮れて亞方にめぐる六十の六所嗚呼いづれ花月に雪子規ほうしらぬ奴あり武藏野に春あり。風鈴かなしき木瓜の捨垣妻やなき燕も花に羽折れて小雨降り足駄ふみ欠ぐあやわかず手づからゆする中川の船赤子の飢ゑし秋の小夜風塔橫に蔦や眞葛の這ひかゝり芭蕉翁全集山城に夏あり。調仙同〓菴風季を和風菴風菴風菴風菴風菴風菴風菴風菴同水風水同風空駕籠捨てゝ眠る陽炎蝶飛べば口を揃ふる池の鯉古き首に花ぞ戀しらぬ草刈は草を刈つて居る女を負うて跡を見かへす曉の蝙蝠聲のいとゞしく佛の像を岩に切りつけ折節は蘆火たく屋に鍋借りて霧にさまよふ埋木のふね中々にぬれ衣さらす月の奧鬼灯の音に世を捨てし妻武藏野の記を書きながら哀れなく疎柴の戶しむる犬幽かなり朧種網すきてあしたの風を思ひける蒔く人の歸るかた原き月眼炬の松を踏消してCLに山近く見ゆ〓五四七日覆ふ牡丹の種の消えて秋來ぬ獵船の風うたゝ寢を驚きし峠ひとつに富士を見かくす雨奈良の京櫻七重に咲かざりし膝卷や墨の衣のつらからんちからためしを松の根がへり施餓鬼守る女に髪を生させて別雨乞のかへさは星を見ざりけり子をつかまれし鷲の深山路宮づかへ局はつらき世を知れる色百色の舍利の百粒鋤の刄に蛙はもろき命にて水をおぼろの礎にたつ日の夕べ御湯の絕えたる釜さびて十廿途をふさぐれを恥づなき月に梟を聞くふくろふる鵙の150虛車曙同〓風和風和風和風和風和風和風同和風菴風菴風同菴風菴風菴風菴風菴風菴風
芋の葉の霧ふりこぼす夕間暮ふりむく上は秋のしら雲ほん〓〓と洞に打ちこむ浪の音かなしきものや弓も兜も稱名の外は物いふこともなくちひさすゞめがなじむ今の間にふり埋みたる雪の松袖かきあはす廓の明ばの誰が跡か帋燭落ちちる石の上戀しる神を祈る陽炎花見にと女車のたちならび鍵にかけたる三日月の形靜かさに節句のひと日もてあまし潮のとほらぬ樋をふせにけり卯の花の陰をつれ行く裸馬つらりと並ぶ手習の子等今なるは初瀨の寺の鐘かとよ俳諧七部集拾遺一はし掌てのひら夕顏の種とる頃に成りにけり蚊の迯ぐる眞柴の煙り打ちしめし心なく親死ぬ傳を待つのみぞ深花守の花なきうちは寢安くて松春の日は鳴たつ澤のさもなけれ實を見するためのそら泣またぬ夜の障子に俤の嬉しくて火たつに近けふまでの命は孫に養はれ碁石拾はん波の象潟書を擔ひ月すむ方に赴きぬ兼て契りし阿閣梨呼出す不破の關越す日計りは冠着て京の草鞋を捨つる松の井見ひらく僧の山に入りつゝおのづから正月の寺山は雪車を削る秋風芭蕉翁全集き雪の橘友瑞國國馬瑞中隱樂齋國馬瑞中隱樂齋國馬瑞同和同風同和風和風和風和風和風和同こゝらに落ちよあまつ膓金菊すゝき黃金白銀ちりばめて梢のかげを床のまの月寶晋子酒のさかなを求めたり七ツか四ツの稚たはむれ手から手へうつせば消ゆる初電帶のあはひにはさむ木硯あふ坂や關の茶店に餅搗いて御幸の沙汰も先づのびにけりものがたるやうに及釜の鳴り出し宮の普請のかり葺がたつかり入れし麥もこなせぬ五月雨觜太どものこひあさるかなはや河を瞬くうちにさしくだし槇の木だちに鐘響くなりいち時に入らるゝ風呂を讓り合ひ寢轉ぶほどの窓の月かげ玉丸草鞋をほどく伊賀の古〓汁の具の品面白き冬なればふるき瓢の壁にからつく世をうしと出づればよもに虫鳴いて雨二夜サのあとの川霧朝月やなら梁丸太の崩れたる不思議の里に熊の子拾ふ彌生山笠一群れの鍵遠き陸引く舟の日をおぼろなり舞ひさがる燕に蛇の目を覺めてわくらにてらす京の葉櫻松暮れて塔は動かぬ凉みかな七月朔日興行雨あたゝかに風のそよ〓〓如有魯自長筆〓素信仙言湖泉中隱樂齋風雲德菴水春隱樂齋國馬瑞中隱樂齋國馬瑞中隱樂齋中隱樂齋風
桃安永四乙未孟冬の日もを携へ、長安市中に種をうゑさせ、千載不朽の妙術を傳ふ。其のむかし、ひとつの桃の實ありけるが、中頃西王母が袖にかくれて、世に知らざる事としありけり。今とし東方朔出できたりて、ふたゝびもの火をたく方はかすむ夕ぐれちる花を扇の上にひろひのせくち三味線のあとうちて行く湖の浦のとまやは蜑もなし芭蕉翁全集實序長友瑞有魯自齋國校馬中隱同樂國馬瑞中半化居士
桃ふらん思ふらんおもふに素人の句は、かゝる翁の句にあへるは、しろしとも靑しともいへひしの餅桃の日や蟹は美人に笑はるゝ菓子盆に芥子人形や桃の花夏題十五句合靑からんものをと、人々の譽れならずや、〓人はい嵐其峯雪角水鷄啼く夜半に旅行の勤め哉蚊遣火に蚊屋つる方ぞ老ひとり草まくら蚊に施行とて喰はせけり居士信女かくす小草の茂り哉なつくさや橋臺見えて川通鬼門射る弓もゆがみぬ五月雨貌拭ふ田子のもすそや五月雨幟網沖には幾つ帆かけ舟誰が馬ぞ幟見するも梓弓水蚊夏幟化河五月雨旅泊にて亡人の忌日にあふ俳諧七部集拾遺桃の實鷄草野邊うの花や蠣がら山の道の隈卯花兩の手に桃と櫻や草の餅の富花月門人に其角嵐雪あり草庵に桃さくらあり實の芭蕉翁全集同其同〓其〓其其同其都鄙萬人〓芭蕉翁角峯角峯角角角峯順禮のよる木のもとや心太うれやうれわきて糺のところてん心つく〓〓と夏書の筆の命かな傾城の夏書やさしや假の宿夏秋しらぬ茂りも憎しからす麥身にあたれ麥吹分くる風の筋麥なつ川や裾をかゝげてざんぶ〓〓夏川に藏より仕出す簀子哉夏ならはしの鹽茶のみけり瓜の後澁紙の言ものよ瓜つくり瓜喪のうちをそろ〓〓たゝく水鷄哉太川此男みゝづくらしや麻頭巾うたゝねやかぶりつめたる麻頭巾せみ啼くや木のぼりしたる團賣蟬いづこあみがさの目をもる日陰酒よりは鰹に醉うてくるしいか人の誠先づあたらしき鰹哉若竹や鞭にわかぬる箱根山わか竹やきぬ踏洗ふいさゝ水卯の花やせはしく市に出づる人夏頭巾蟬鰹若少年達になぶられて晝よりいねて上戶に寄下戶人のもとにて竹五三、至三其同〓同其同〓同其同〓〓同其同兀同其同兀角峯角峯角峯峯角蜂角峯
菜の花や小屋より出づる渡し守竹の葉の年寄も皆女夫なりさくら狩此せまき庭へ來たるか百千鳥うれしくも去年の繼穗の木目哉泥見えぬ程や水ありかきつばた飛ぶ蝶やまぐれあたりに白牡丹柚の花や庭へ下りたるついで有りうつくしき人猶結ぶ〓水哉馬士起きて馬を尋ぬる麥野哉舞々か暮春になりぬ花莚立籠めて淋しがらせん春のくれ行く雁に櫻一ふさ付けてよし畑打に替へて取りたる菜飯哉金錢花夕陽につるゝ眠りかな寺子共墨を落して花見哉夏俳諧七部集拾遺桃の實べたり〓〓ヘノにかすみかな沖にけふ足跡つくる汐干かな冷酒にのみつく頃かもゝの花芹摘や御歩行一はなこねて行く初鮒や水田の小芹薄氷生きてある蕗の塔見る山路哉鶯や下駄の齒につく小田の土梅の散る所こそあれねぶか畑飛ぶ蝶も踏割りぬべし薄氷初蝶の見ておく芥子の二葉哉偶ひがたき梅の根となれ土おほねつゝじ咲くうしろや闇き石燈籠つふ〓〓と梅咲きかゝる霞かな春梅雪亭にて野梅を折り大根にさして家に歸る桃曲野定即凡風桃文好〓尙雜芭蕉翁全集玉玉團桃彫晩其其普〓史嵐百何峯莞一野桃吉治母曲野定即凡風桃風隣棠翠角麿船峯邦雪里羨靑笑牛蝶女水徑耕章兆笛隣鱗春峯白のそなはりたるにや。るなるべし。さこそかはりて思ふらんと、乞食女ならではなし。此句をおもふに、春雨やわが魂の行きどころ世の花や五年以前の女とは當代も指切る事やはなごゝろ花の日も田螺にくるゝ鴉哉山あひや左へよりておぼろ月暖き日や賤の蟹とる玉たすき五幾內の花落合へよみをつくし永き日に遠近人とならふよや五もじに世の花と置きたるは、られし情を感じてらば一指を切るべしと、須磨寺の花の制札に、淺間嶽にて然れば小町が世にふる樣も玉ふちの笠きたるは、芥水口晋子がおもひ付きた今の世に其〓義經の戯れ一枝を切りと一〓峯雲兀舟花實角峯伴峯嵐鹿峯母の背に帷子を洗はずにやるなごり哉骨折や闇の五月を行く螢五月雨や一聲賣りし物の本追付いて砂道遠し郭公我庵は階子もいらぬ菖蒲哉湖の兒の手の玉にもあまる眞桑哉僧帶に團さし出る砌かな湯あがりや蟬鳴止んで夕烏土用干花の塵ある袂かな晝宿の白雨かなし馬の聲白雨や先づ石竹を引起す竹の子の伸びて甲斐なき灰屋哉蚊二ツの力をためせ蜘の糸常夏にゆかた吹きとる風いかに餞おく露舐る鹿子哉別螢の果は富士黑し五重五五四一雖遲峯樂桃問〓知正里〓可和芥嵐芥水口蜂志梅風長子隨峯義秀東峯听風舟雪舟
らんと、此の句、人はうごくにもぬるにも心を付くべき事にや是此上の五文字にて、かたに見侍らば、此句下七より下五までは、世こぞつていひ侍りぬ。人上渡世天道地變にも、頓て死ぬけしきは見えず蟬の聲く情出でくる句あるもの也。つねに人のいふ事をたゞにいひ出でたる句に、きのふをも峠といひしあつさ哉あまつさへ茂りにけりなしのぶ草凉しさや北よりおこる帆掛船さなきだに肌ぬかしませ蟬の聲大つぶの雨百ばかり蓮にほし白雨に蓑虫こそはしづかなれ土用中隱者の住所をとひて芭蕉翁全集なまじひに註しかゝれる名句な風雅に心をよせば、彫發句の正意を顯はし侍る作者も思ひ捨つべき句なるを、作意なきに似たりと大貞尙其梅岸翁か棠直白由員水たり高祖の臣を探題して、人々のうそを語らぬ月見哉玉虫の光りや死んで後の事夕陽や合羽干したる露のいろ拙さや牛といはれて相撲とり我れが身に秋風寒し親ふたり木曾殿と背あはする夜寒哉木曾塚にふして冬瓜の毛ふかくなるや後の月駒迎へ鼻かはきれつさねかづら名月や緣とりまはす租のから名月や先づ蓋とつて蕎麥を嗅ぐ川筋のせき屋はいくつけふの月名月や門へさしくる潮かしら草まくら疊の上も落穗かな寢かへれば枕をつたふ礁かな俳諧七部集拾遺桃の實我れ韓信を得一進兀彫鬼又曲〓去嵐其翁龜隨鵬步峯棠貫玄水峯來雪角翁意曲〓去嵐其翁龜隨尙其梅岸水峯來雪角翁意白由員水例の素堂の感情、蟷螂の鵙に刄向ふ譽れかな茸狩や大かた買うて歸るもの耳づくの頭巾吹きとる暴風哉野男も力なく見るすゝき哉秋のかぜ貌に蚊帳のかゝりけり鬼灯は傾城のふく調子かな送り火によわるか足のふみ力靈祭母屋の妻戶の音は何その樣はうしろ田守らぬ案山子哉秋の夜や紙燭ともして泣く泪見舞うてやなくてほこえし宿の萩秋綿の花たま〓〓蘭に似たる哉ては花實をそこなふたぐひなるべし堀氏の妻の追善家に歸りて蘭よ〓〓との風雅にこそ至五六〓流愚梅知進兀嵐全貞肅素風や柴になしたるくづれ橋石地藏ひとつは握る丸雪かな里の屋の見込も深し鷹の糞はつ雪に何して居るぞ隣どの松寒し蜘ひく鳥の沉む蘆口切やのしめの裏の貧乏さ氷る江や中に捨てたる樽もよし鷺からす片日かはりや夕しぐれ見しりあふ人のやどりの時雨かな冬川つらに楫こふ聲の夜寒哉おもふ夜の雁が音寒き背かな唐種にたゝかれてゐる鹿驚哉田萬句興行山仁意十七年囘忌家中五五七m摘尖晩〓路酒〓其荷仙貞〓〓流愚梅知進兀嵐全貞肅山峯翠峯通堂峯角分化直峯峯水口子義步峯雪峯直山堂
酒なき船に秋の夜の明けわきはとも宇治橋ばかり霧晴れな同岨の井はうごかず月の缺見えて我れもかゝしも默る夕ぐれ何となくかはゆき秋の野猫哉同夕月に筆の命毛瞭し見て何をゆするぞ窓の若竹うたゝねやかぶりつめたる麻頭巾同さりとては櫻咲きけりとび〓〓に聲吹送れ山際いとゆふや馬の尾髪の及ぶまで祀春のひかりのやはらぎて東風ふく下に梅の薫同餞別俳諧七部集拾遺桃の實の東風鴨飛べば一筋ながきしづく哉煤掃いて見れどももとの厩かな里神樂ちはや仕丁にもらふたか冬の夜や八ツ半時なる犬の聲武士ならば雪の蘇鐵は誰れならん月寒し八百屋が軒の破れむしろ先づ杖をはじめに燒かん冬ごもり淡路まで渡る千鳥よ聲きれな寒聲の出ぬを笑ふか川ちどりおのが子に見違へられな網代守一聲の念佛かはゆし網代守花鳥や見出せし冬の有所朝霜や屋根つたひ行く鷄の息網代守大根盜をとがめけり石臺の松さへ寒し夜の月寒垢離よおのれ本間の女方芭蕉庵に芭蕉翁全集不知風義同山一其同〓角峯貞進〓直步峯同其氷兀石勒三貫〓鳥知知德〓茂其志峯タ峰角花隨龜也夏知峯水春義之峯門角計及侍る、士郭公に負ける故なるべし。は、なはれる風雅の威ある物なれば、の申されしは、不二に添うて三月七日八日哉とたゞにいひ出せる人每にすなるうちに、○近き頃、ひとつも聞えぬは、富士見るたびにおもひ出でぬといふ事なし。之を以て是を思ふに、世に郭公の句にいさをしある程の句のげにさる事ぞかし。富士の句は必ず落ちて見えいかなる故にか有りけんと人五九九洛陽の信德一とせ、郭公と富士とは、作者の風雅の富東の道の紀をそ廻り込む澤より奧に家立てゝ氣もかるゝとも枯蘆の雪水鳥や氷にすゝむ夜の興峯の月松ちよぼ〓〓とかげろびてとふらひ給ひける人に對して世の事しげき中に、同志まがふ事なく路晩〓〓通翠峯峯梅が枝やより添ふ君が髪の曲雜玉終しほ風に岬の櫻しめりきてうらゝさや野馬ふりむく朝日影出してよき棟を節々霞して皆〓しませ新發意が花折る跡や山おろし陰をしき師走の菊の齡かな鷄や榾燒く夜の火のうつり笠の〓に口あけて行く雪吹かな千里の寺中花同同第三迄旅行燕水に聲あり數百里程多少難酒の五八八糸遊〓嵐芙〓雪蓉峯〓沾琴〓露洒〓峯峯德藏峯沾堂峯
芭蕉翁全集○予が扇子の端に「春雨に山田の曠を行く賤のみの吹きみだす暮ぞさびしき。との後鳥羽院の御製を書付侍るを嵐雪とりて見侍りて、尊しや花實かたじけなしや風雅とうなづき侍りける。有りがたき風雅ならずや、其角が「やりくれて又やさむしろ年の暮とせしは、とヾめず惜まずおのが氣象のまゝなる骨肉、句の上に顯はれたるなるべし。路通草庵を立出づるに「出づるときは氷も消えてはしる也。これまたおのがかたちに句も添へて出したり。洛陽の好春は去る御方にて「四人して御蚊帳釣るらん女房達。と情をうつしてよくいひ出でたり。心とすがたと、句とは一つなる物なれば、世に風雅ほど妙なるはなし。○尾陽の荷今を、此ごろ世に木枯の荷分といへるは「木がらしに二日の月の吹きちるか、といへる句よりいふ事なるべし。二日の月のぬしになりたる故にや、歌連歌に物かはの藏人、日頃の正廣、あくたれの兼興などいへるたぐひなるべし。兩吟硯する傍にうつくし白かさね嵐よそほひほとゝぎすまつ辨の化粧さし覆ふ手に憚りの嚏して身を喰ふ鑵いたく謗られ芝の月起臥しすべる革蒲團藥は掘らでくるひくらしつ沙彌が氣をえやはからせし秋の風うしろは男中草履とりいひたつる名古屋步きの八文字戀も初心に返歌幾度此花よ御狩は丁ど二十年はん桃ある家にあそぶ半狆不細工を笑はれけらし紙鳶都つとめの留守の古妻氣隨にはあらず晝寢は夢の種嵐雪〓峯同雪同峯同雪峯雪峯雪峯雪峯うしと見し世に鞭はゆるさじ船の火のちらり〓〓と須磨の月人をちからに鷗啼く秋雪峯雪盜人の諷うて歸る古手市打つかまねくか饂飩屋の幣吉原はわざともほどく茶洗髮いひ習うたる戀のあて言糸組のいと恥かしき白地鉢をも乞はで首座歸る也段ぬきに來る子もやさし垣の花茶具取置きて爐をふさぐ頃雪峯雪峯雪峯雪峯同おすし夏の日に見る物からの瘻かな這入せばむる母が蚊遣火行水の跡もこぼさず月すみて露のそこらは皆黃菊也直垂のひたとつくろふ漸寒みほめ所をもしらぬ舞の手何事をしろき扇子の拭ひ書まゆみだれたる橫貌の色忍び目にもしも座頭や覗く覽小便すればふるふ寒月俳諧七部集拾遺桃の實〓峯嵐雪同峯同雪同峯雪峯水鳥よ汝は誰れを恐るゝぞ白頭更に蘆しづか也中汲の醉も仄かに棒提げて月の徑に沓拾ふらし鳩吹ば榎の實こぼるゝさら〓〓と板の埃に圓座かさぬる〓峯翁酒堂峯堂翁
芭蕉翁全集簾戶に袖口赤き日の移り君はみな〓〓撫子の時泣出して土器ふるふ身のよわり御念頃にて鎌倉をたつ門々に明日の餅をくばり置き莚踏むなとうつす鹽鱷ほ山陰をまれに出でたる牛の尿梨地露けき兒のさげ鞘名月に雲井の橋の一またげ今としの米を背負ふ嬉しさ花に來て我名は佛德右衞門春はかはらぬ三輪の人宿陽炎の庭に機へる株打ちてたゝむ衣に菖蒲折りおくきんといふ娘は後のものおもひ戀のあはれを見よや鳩胸か、城代の國はしまらず田は般て美濃は伊吹で寒き秋風夕月に荷鞍をおろす鈴の音聟なじまする質の出入れ麥飯に交らぬ食を取りわけて德利引摺る川ぶねの舳帷子に風も涼しき中小姓明日御返事を黃昏の文美しき聲の匂ひを似せて見る人めにたつとひきなぐる數珠一息に地主權現の花ざかり膳に日のさす春ぞきらめく鶯は此頃の間にいとひ啼き歲旦帳を鼻紙の間里東翁峯東堂峯翁堂東翁堂東峯堂翁峯堂翁峯堂翁峯堂角峯堂角峯堂角其備の前州の勇士元峯子は、風雅を抱へ滑稽を荷ひて、花月にあそぶ事年あり。去年の暮春より、東武に勤めて仕官の身のいとまなきひま此書を集めて予に見せ給ひぬ。我目を悅す而已にては無下なる事におもひ、梓に鏤むるもの也。水口芥舟書元祿六辛酉歲五月俳諧七部集拾遺桃の實
芭蕉翁全集初便俳諧は三尺の童子にさせよと、芭蕉老人の申されしといふは、世の人の私知を用ふる事をにくめるならし。只此間に公道ならばいとはざらましを、先師示されしとて、學業修得を放下するは、識者の人を〓ふる一時の楯をしらざればなり。輪人の手にしめて緩急の心にひゞける妙所は、其子にすらつたへがたしといへり。是芭蕉翁といへども、門人につたへらるゝ事あたはざる地なり。宗鑑、貞德は此道の祖なれども、いまの世に用ひがたきは、流行の異なればなり、來者の芭蕉翁を見ん事もまたしかり。誰れかしる往年の是は今年の非となり、今年の非は來年の是とならんことを、春は秋にあらずきのふはけふのむかしなり。元祿十二龍集己卯春正月散る花を追ひかけて行くあらし哉定家卿○法眼季吟、黃門の句なりと、ある人のいへるとて山の井にいだされたり。散る花をなむあみだぶとゆふべ哉守武○晋其角曰く。荷兮、集に辭世と書きたれど、神職の正統として此境はにらまれまじ、嗚呼と一時の歎ならんと、さこそあらんかし。是は是はとばかり花のよし野山貞室花見せむいざやあみだのひかり堂貞德花の香をぬすみてはしる嵐かな宗鑑つくしにて世の中の宇佐八幡にはなの時宗因花の雲鐘は上野か淺くさか芭蕉○詞以舊可用、情以新爲先と、定家卿は示したまひ、山谷は換骨奪胎の法を立てたるに、誰れかつたへし、俳諧は平話のあたらしみを本意にして、あながち古人のことばを用ひずと、ばせを翁俳諧七部集拾遺初便の示されしとて、窮巷僻地には、傾治の艶言、舞妓の荒唐、俚語俗詞ならねば俳諧ならずと、此筋の魔におちいるもの多し。もとより此の道を俗によつて眞趣をたのしぶ事なれば、いづれをか是としいづれをか非とせむ。しかもひたぶるこゝにのみかゝはらば、詞はあたらしくとも、情致はふるびぬべし。○句を見る事字眼を要すべし。あつみ山や吹浦かけてゆふ涼みといふは、吹の字にあたりて、ゆふ凉みとはせられたりとみえたるを、世に福の字を書きなどして發句と思へる口惜と或人のいへり。さあるべし。陶淵明が詩の、神にして千古の名あるは、秋菊有佳色。といふ佳の字也ときゝし、撰集のぬしになる事かたし。ある人集をするとて、余に句を乞へる折から、芭蕉翁の義仲寺にましゝとき明月や海にむかへば七小町貞貞宗室德鑑
芭蕉翁全集としたまふを、いかにきゝ給へるやと問ひしに、小町は湖邊のたゞちにして、別に意義なしとこたシ へられき、此句は欲杷西湖比西子。淡濃也相宜と東坡が作例によられたるべきを、草々に看過せむは本意なし。此器にて撰者といはれむこと覺束なし。されど、あか佛尊くばいかゞせん。我れを罪するものは春秋とは聖者の歎なるをや。○名人の古事をとりたるは、古人の力をからずして句中無盡のひゞきあり。此の境中人分上のにらスルみたらば、くはしく先人の唾餘にして、剋山類類、驚といへるにもあらざるべし。三井寺の門たゝかばやけふの月ばせをほとゝぎす鳴くや五尺のあやめ草卯の花やくらき柳の及びごしほとゝぎす聲よこたふや水のうへ初しぐれ猿も小蓑をほしげなり是皆古詩、古歌本、說。物語をとりたる句なり。あやまるときは沈詮期が辟におちいり、しすますときは家隆卿の名譽を得べし。水にしられぬ氷なりけりととりたるは、絹を盜んで小袖にしたるとぞ、俳諧の作者はおもふべし。○名所の句をする事安からず、石曼卿が意中流水送、愁外舊山靑と籌筆驛にて作りたるを、しらざるものは稱揚すれども、山水の地ならばいづれの所にも相應して、籌筆驛のせんたゝずと、先輩のそしりたるは、句中に動きあればなり。秋風や藪もはたけも不破の關ばせをせめよせて雪の積るや小野の炭去來うら枯や馬も餅くふ宇津の山其角此類鳥獲がちからにも動かざらまし。菊に出てならと難波は宵月夜ばせをといふ句を、影略互見の法なりと世につたふるはあやまれり。錯綜轉倒の法なるべし。紅稻啄餘鸚鵡粒、碧梧棲老鳳凰枝といへる句法にばせを去來其角ばせをも似たり。梅が香にのつと日の出る山路哉此句餘寒の題なるよし、句中寒の字はなけれど、長夏にも寒かるべし。これらをや影略の法とはいふべき、杜甫兼葭の題にて、暫時雪載花、幾處葉沈波。林和靖が梅の詩に、橫斜踈影水淺深、暗香浮動月黃昏、蒹葭といはず梅といはず、されど吟勢それとたしかなり。是影略の法なり。○發句に詩歌なるあり、俳諧なるあり、味なきを味として俳諧なるをあらまほし。蚤虱馬の尿こくまくらもと芭蕉年頭はかはのとぢめのうつは物酒堂松茸や人にとらるゝ鼻の先去來足あぶる亭主に聞けば新酒哉其角笋や道のふさがる客湯どの浪化庭へ出て馬の米喰ふ夜寒哉露川筑前草あつし蚓のおよぐ馬の尿水飄兼平も切籠ひとつの身と成りぬ探志俳諧七部集拾遺初便親仁さへ起きざるさきに三十三才蚊遣火や女の斧に石をわる家船のじつとして居る月見哉血を分けし身とは思はず蚊の憎さ猿引は猿の小袖をきぬたかな出替や照る日に下駄をはいて行く誰れが來て遊ぶや雛のたばこぼん初雪や幸ひ庵にまかりある井の底に蛙をもどす釣瓶かな朝夕を見合す旅の袷かな夕顏に次郞の這入る小家かな佛たち衣更にもおどろかず蕗の葉に髪包みたる田植かな芋種や花のさかりを賣りありく我が願ひ花四五反の中に家あさがほのうねりぬけたり笹の上芋の葉の軒につられて秋の風乙州風國嵐雪丈草芭蕉イガ知足車來芭蕉爲有イガ風睡筑前直方丹山ア·木ミノ可唫芭蕉朱拙萬乎豐後日田紫道味なきを芭酒去其浪露筑前水探蕉堂來角化川飄志
芭蕉翁全集仰向にこけてもがくや虻の足土筑前黑崎朝鷹の提灯で出る田畝哉帆柱ブンゴ日田稻妻やいたり來たりに夜を明すりん深川の八貧米買うて雪の袋や投頭巾(米買ひに雪、として聞ゆ。校訂者誌す)ほろ醉の是やまことの雪見哉草庵とおもへど年の炭大根ながるれどせかずに游ぐ蛙かな○感情にわたる句は、本情多くして俳諧少なし。思慮にわたらざるは俳諧多くして本情少し。案ずるに本情は難きに似て易く、俳かいはやすきに似てかたし。今の世眼前をいひて、按排を經ざるをこのむもさる事ながら、周詩は多く感情より興れる、取捨は其の人にあらむ。深川閉關の頃蕣や是も亦我が友ならず芭蕉五六八しら菊に咲かれて我れはもとの顏朱ばせを葉の何になれとや秋の風路通(ばせを葉は、として聞ゆ。校訂者誌す)蓑虫の我れは綿にてふゆ籠風麥崎陽に旅寢の頃故さとも今はかり寢や渡り鳥去來松風も聞けば浮世ののぼりかな支考尼月日をもうくる斗りに枯野哉智月大阪皆我れにつかはるゝなりとしの暮諷竹ブンゴ日田山やおもふ馬屋も猿も松かざり若芝おとろひや齒に喰當てし海苔の砂ばせを深川舊庵に入りて爰らにはまだ〓〓梅の殘れども惟然○平句は氣先にのつてつくろはず、かろ〓〓と付くるを第一とすといひ、又氣のなき發句にして、句の上の新古をかへり見よといふあり。いにしへより、師家の人を〓ふるは、其の氣象に從がひ、土芳筑前黑崎帆柱ブンゴ日田りん拙通麥去來支考尼智月大阪諷竹ブンゴ日田若芝ばせを芭蕉句は風聲なりといへば、生質の重く出るには輕くせよとをしへ、卒爾なるには季のなき發句ともしめさるべし。しかるをおのが氣象の偏をしらずして、先師のかく示されしなどいうて、萬人にあてがふは、人を〓ふる法にはあるまじ。氣先々々とのみ〓へたらば、中古の宗因門人の意氣に落つる事多かるべし。秦少游ははやけれどもつたなく、陳無巳は遲けれども、古人の趣きを得たりとはききし。○或人宗長に付句はいかゞし侍るがよしやと問ひたるに、上手の連歌は他人の中よき如く、表向は遠けれど下心よく付きておのづからの匂ひあり。下手のは親類の中わろきに似たり。表向は親しけれども、下心よからずと申されしときゝし、めでたき〓へなれ、芭蕉翁の付けられしは、他人の中よしといはん。○中古の俳諧はしたれども、今の風俗はせずとい俳諧七部集拾遺初便ふは、其のしたりといふ中古の體未熟なるを、己が量のつたなきをしらで、したりとおもふは口惜しと、其角が雜談しけるとぞ、いとをかし。其中古といへる宗因が句に遙かなる唐茶も秋の寢覺哉蕎麥切の先づ一口やとしわすれ杜宇鳴くやら淀のみづ車是らの句は、當世にしたりとも誰れかかゝらんといはん。宗因をして當世に生したらば、流行の押しうつるまじや、兎にも角にも風雅は根柢のあらまほし。○李白が法外の風流を得て、道にちかしと宋儒の評せられしは、天機を動かさゞればなり。惟然が諸州に跨りて句をわるくせよ〓〓、もとめてよきはよからず、內すゞしくば外もあつからじといふは、生得の無爲をたのしびて、この爲めに塵埃をひかじとならん。今の風俗はせずとい五六九
芭蕉翁全集南部の雪に逢うて木もからん宿かせ雪の靜さよ惟然(木もわらん、として聞ゆ。校訂者誌す)二本松にて先づ米の多い所で花の春松しまにて松しまや月あれ星も鳥も飛ぶ深川の千句におもふさま遊ぶに梅は散らばちれなど一句として斧鑿にわたりたりとは見えず。地獄天道は學ぶ人の心なるべし。○南部の鴉も黑く日向の鷺も白し。師鍊は入宋せず、さは有りながら、子長があやしきは天下歷覽の功なりといへり。風遊は心の趣處なるべし。下京をめぐりて炬燵行脚哉丈草名護屋にて世を旅に代かく小田の行戾り芭蕉○詩をうたうて善惡のわかるゝごとく、俳諧も調子なるべし。句中言外のひゞき、格外の中をしれるものゆかし。寒ければ寢られず寢ねば猶寒し支考紅葉には誰が〓へける酒の煖其角門人の吟中此類多し。俳諧の袴着つめたるものゝ全く及ぶところにあらず。○上手のしたる漢も、和ほどにはいひとられざるにや、洛花今織錦山石わさりと鴈の歸るふるさと季吟今織錦に洛花勿論にて、武陵花、崎陽花としても又しかるべし、歸る膓は故〓ならばわさりといふ字も衍ず。都をば霞とともに出でしかど秋風ぞふく白川の關錦江春色逐人來巫峽〓秋萬壑哀然地草芭蕉老杜が手なれども、能因には及ばずと聞きし。○いつのころにかありけん、ミノ斜嶺亭にしてもらぬほどけふは時雨よ草の屋根斜嶺火をうつ音に冬のほたる火如行(冬の鶯、として聞ゆ。校訂者誌す)一年の仕事は麥にをさまりて芭蕉まことや此第三を、十餘句ほどせられて後、座がしめりたりとて、此句に決せられたりと其連衆のかたるを聞きぬ。賈島は推敲の二字になやみ、圓位上人は風になびくの五文字につかれ給ふとぞ、難波の西鶴が一日二萬句の主になりたりとて、人もゆるさヾる二萬翁とほこりたる、これもとより風雅の瞽者なれだ力なし。笙ふく人留主とは薰る蓮かな西鶴白粉をぬらずしておのづから風流なるこそ、由來風雅の根基なるに、此句風流を得たがりて風雅なし。留主とはかをる、めづらしき薰りにこそとは俳諧七部集拾遺初便の二字、おのが得し俗たぶらかしにて、生得の風趣なり。これらを發句なりと、一生を夢裏にたどれるはあさまし。渠れは此の筋の野人にして論ずるにたらずといへども、久しく初心の爲に塵名をがい曳きて、風俗を害し、あまつさへ晩年には好色の書を作りて、活計の謀としたる罪人、志あるものたれかかれをにくまざらん。各文通の句靑簾いづれの御所の賀茂詣其角浮れ出て山かへするかほとゝぎす去來あやめ見よ物やむ人の眉の上嵐雪とへば爰野中の里やほとゝぎす風國セー夕だちにこまりて來ぬか火とり虫正秀傍過ぎてあまりにおもふ水鷄哉土芳東武吟行かる〓〓と荷も撫子の大井川惟然追悼其去嵐風セー正土角來雪國秀芳惟然五十七
芭蕉翁全集鶯はいなせて竹に蟬ばかり風士山中や鶯老いて小六ぶし支考編笠の願見やるまつりかな朱偶作世の中はたゞ山雀の輪ぬけなり同筑前雉の鳴く拍子に散るかけしのはな素薩諸方の句十八樓の記あり略之芭蕉老人の遺稿ども、よのつね好士の許より贈られたるは、洛の風國泊船集に出したれば、再び玆に贅せず、伊陽は翁の熟地なれば、若くば土芳、猿雖のがり鴻書して丐うたるに、こゝにあうちかしこにとられて、大むね鳥有となりたりとぞ、此歌仙を贈らるゝによつて、爰に加へて追加とす。成七月廿八日猿雖亭夜席あれ〓〓てすゑは海行く野分哉猿雖鶴のかしらをあぐる粟の穂芭蕉朝月夜駕に漸く追ひついて茶の煙りたつ暖簾の皺かつたりと枴をくだす雜水取窮屈さうにはかま着るなり燭臺の小さき家にかゞやきて名主と地下と立分る判燒めしのわりても中のつめたくておもひくづさず出でぬくらがり此ごろは扇の要仕ならひし湖水のおもて月を見はらす脇指の小尻の露をぬぐふ也相撲にまけて言ふ事もなし山陰は山伏村のひとかまへくづれかゝりて軒の蜂の巢燒さして柴取りに行く庭の花土かきさがす春の風すぢ坪割の川除の石つみあげて風支朱士考拙配望土卓力翠芳袋翁雖翠芳袋蘇力雖翁袋芳翁翠同筑前素薩苔猿雖芭蕉日なた〓〓に虱とり合ふ大名の供の長さのはてもなきむかひのかゝのおこる血の道一升の代を持て來ぬ酒の粕盥のそこのあられかたまる燈の革屋細工の夜は更けて鼬の聲のたなもとの先箒木はまかぬにはえて茂る也干帷子のしめる三日月神主は御供を持つてあがらるゝしばらく岸に休む筏士衣着て旅する心しづかなり加太へ這入る關の別れどる.耳髓をそがるゝ樣に橫しぶき行義のわるき倩六尺大ぶりな蛸引きあぐる花の陰米の調子のたるむきさらぎ俳諧七部集拾遺初便蘇力雖翁翠芳力翁雖望袋翁芳雖翠カ蘇ばせを庵にて寒菊や小糖のかゝる臼の傍提げて賣行くはした大根夏冬は取置く橋を懸初めて門に貌出す月のたそがれ雲行も烽の日癖のざんざ降り此一谷は粟の御年貢七十に成るをよろこぶ助扶持三尺通り裏のさし掛涼しさは堅田の出崎よく見えて蛭取る牛の方耙休むる黑染に寺の男のこゝろ入れ其日に戾る旅の草臥れ押詰まる師走の口を喰ひかねて〓に〓をつけて咄す主筋田の中に堀らせぬ石の年經りし芝に道つく月おぼろなる五七三芭蕉野坡同蕉同坡蕉坡焦坡翁坡翁坡翁坡
芭蕉翁全集花の時祖父は目出度くなられけり俵で米かす春の藏もと廣庭に靑の駄染を引きちらし這ひ廻る子のよごす居どころ裏合せ根鞭のくヾる藪の岸蝮のあとをいたむ霜さきとし寄つて身は足輕の追ひからし泣いて酒のむ乘物のまへとう_〓〓と榎に風の當る音稻盜人の繩を解きやる月見れば親に不足の出來心こぼれて露は何所へ行くやら假に剃るあたまばかりは殊勝にて仕付けてもどす聟方の客田を植うる向ひ近江の稻の出來天氣に成りし宵のかみなり右俳諧歌仙者翁在世((オン於芭蕉庵興行也(酸化鎵脢藥先師不適意句多、故不滿韻終止畢。然今人絞肝膽耽詞花不及師妙術也。尤於當時風流者語意可增減處覺候畢。雖久藏頭陀袋門人梨里依數奇深切附與之、聊無違亂者也。享保戌成孟春樗野坡翁坡同翁坡翁坡翁坡翁坡翁坡翁同坡其袋序なにくれとして天の袋あり。あらゆる是が入物なり。人におふくろといふ母の稱也。筆とらず物見ずとて、父におはれて、おそろしきこらし袋のからきめみしも、いつにわすれて底なし袋口もむすばず、そなりすだれにたる空言袋、〓輔の名立つるにはあらず。我れぞつきありきぬ。士に番袋有り、職に火袋有り、くびにかけたる袋には、いかなるものを入れたるぞ、詩の袋、春山暮月李賀がふくろにおもし歌の袋、光廣のひきずり袋、それもおもかりけん爲憲が袋をかぶらんとすれば、息くゞもりてむづかし。其袋や、花のしぼみたる、月のかけたる、かつ〓〓拾ひえて.括りて我家の秘藏袋とす、蘭にもきせず猫もかぶらず。元祿三年かのえ午みな月吉辰蘭雪自序俳諧七部集拾遺其袋序
其袋春之部芭蕉翁全集天人も泣貌わろしねはん像哀れさや接の花の咲きおくれ見たいもの花もみぢより繼穂哉氷消えて風におくれそ水車こほり解けて鯲泡吹く澤邊哉詠むるに目のくたびれぬ柳哉柳の芽毛のはえたるも美しゝゆく水のやまずながるゝ柳かな夕霞暮れておぼろと申しけり我宿もよそより見れば霞哉浦々の家に帆かくる霞哉涅槃會接柳春水春風一時來春水滿四澤雲跡を埋むといふ事を俳諧七部集拾遺其袋薦を着てよろこぶを見よや初音の玉はゝ木一年のこゝろ拍子はなづなかなうかれきて薺はやせや神樂打元日や晴れてすゞめの物がたり餅の上にけふしちぎりぬかゞみ草月花のかます作らん餅むしろ若陸月はじめのめをといさかひを、人菜に笑はれ侍りて日都ちかき所にとしをとりて誰人います花の春おれにいはしや先づ御代をこそ千々の春改正季釋己衞嵐そ素月冰山鼠;月風嵐人々無舟倫竹嵐山擧芭百門雪の行下花川彈下洗雪雪タ白蕉吟花に來て袷はおりの盛り哉花にまた都を二ツ見初めけり花にめさば竹馬にても參るべし花の跡なれや鴉はいつもなくめくら石いたくも花に行きあたれ待つ花にをり〓〓うごく卸かな友猿のとしえらびすな花衣花もじやよそへ出るにも玉くしげ女中方尼前は花の先達か花の雪しつかい伏見常盤哉土車引手も休むつばめかな舟綱にゆらゝる沖のつばめ哉かはらけも下行く雲のつばめ哉〓水にて花燕休岸燕上野にて愛宕にて五七七梅が香はいかに工むぞ庭作り築垣の梅にうれしき崩れ哉梅の花沉や麝香はもたねども鰯燒く隣にくしやまどのうめ梅破れ鐘をまぎらかしたる霞哉梅さきて編笠やよき煤び頃鶯の音やつゝまるゝ雪の綿うぐひすの宿とこそ見れ小摺鉢鶯や手ならひの窓おもしろき野にいでゝ小鍋やほしき鶯菜つちくれに花の咲きたつ菜屑哉莖だちや五條あたりは妾もの若菜摘む跡は木を割るはたけ哉霞梅壺や鶯每に御消鶯息沾曉鋤靑調其才嵐立舟巴桐子沾仙才秀荷かしく化麿和嵐十一才桐山調武子雨川雪越東冬百雲蓬立女柳角麿雪志竹山雨英流文里人
お前の若銀口魚は鵜の一背に足らぬ也若鮎附白魚鮠とく散りて見る人歸せ山櫻汲みかへる小鱗おもたきさくら哉雲櫻あふみのふじや見かみ山藥ばかりちりのこりても櫻哉下戶めらやかくれ所の山さくら夜あらしや大閣樣の櫻狩思夜櫻菅笠や男若弱たる花の山花鳥やちらば鳴子の獨りぼし花の雪大津雪踏にそべりけり都ちかく遊びて鳥追はんために鳴子付けたるを菊月峯下はなちらばまて懺悔せん罪一ツ退けば雨よれば花踏む木陰哉花や波軒の下まで鳰の海一聲も三聲もなかぬ雉子哉春の水に秋の木の葉を柳〓白魚も孕すがたぞ淺ましきしふうるか持つとも見えぬ小鮎哉陽炎の晝は爐中の寒さ哉糸游やけぶりてかわく屋根の上かげろふにうき沈み行く帆かけ哉陽炎の跡をおさへし小猫かな糸ゆふや左へめぐる酒の間つく〓〓と糸游や氣のむすぼゝれ糸ゆふや口を明けたる糀むろいとゆふにうごくや去年の古薄かげろふにさし矢の沉む野中哉膳所にて雉あふみにて病俳諧七部集拾遺其袋中芭蕉翁全集衞門嵐雪東雲濁子才麿達暑立志湖舟舟雪鋤立才麿冰花亂絲山川一有桐雨沾荷孤屋その百里月下風子好柳桐雨物いはず心になかん山ざくら我がかげのさくらにのぼる夕日哉むさし野に人行きあたる櫻哉鞦韆のたはぶれはやせ猿廻し寒食やいはけなき子にすねらるゝ寒食は霞一重のこぶしかな寒食や旅人の雪の跡きえず胸も火も寒食の日に腹立てぞ寒食やその日にあたる佛達寒食や揚屋より火を燒初むるしほ染めて心もかろし海雲賣和田の海所さだめぬ海雲哉海老喰うて海苔の味しる蜆子哉ゆく水や何にとゞまる海苔の味一しほの聲さぞあらん南部雉美しき顏かく雉子の距かならーめ蜑の子や竹に付けたるいかのぼりいかのぼり雨のあしみる霞かな此夕べ軒端隔ちぬいかのぼり夕ぐれのものうき雲や鳳巾蚊足が隣りかへたりけるに申し遣しけ才人のものを是程をしき櫻哉膝木よる長女いやしやいと櫻かまへうちかすめりお知ら櫻川はほそくながれて、靑柳のさと一輪門樣薨御をおそれいたみ奉りて不角帋游漁鞦靑精飯寒海韆食苔絲邨鳶五九九琴風言龜月下冰花立吟擧白笠凸菊鈴左衽其角嵐雪其角風洗嵐雪才麿專跡嵐雪立吟
三十三間にて聞きわけん蛙に交る鷺の聲淺草の觀音堂にて玄賓のこゝろしらずや鳴く蛙蛙うごくとも見えで畑打つ男かなたがやすも鼠のためか牛つかひうらゝさや田の中けぶる溜り水迷ふらんなはしろ頃の田の鼠なはしろにいそがぬ水のすがた哉沖の蝶汐さすまでをねぶり哉酒くさき人にからまる小てふ哉鴟尾やはかなき蝶の鼠色蝶かろし頃はきるもの一ツ哉耕牛無宿食苗俳諧七部集拾遺其袋代上野より歸り侍るとて倉鼠有餘糧嬉しいなけふは物いへはだか雛隣り〓〓雛見廻はるゝ小家かな誰が國も彌生の海の道千筋綿とりてねびまさりけり雛の貌羽にうけて幾重の雲に鳴く雲雀黑きものひとつは空の雲雀哉杉の木を定規にのぼる雲雀哉猫の妻いかなる君のうばひ行く猫の五器あはびの貝や片思ひから猫の三毛にもかはる契り哉老猫の尾もなし戀の立姿猫の戀鼠もとらずあはれ也桐柳民濃やかに菜飯かな雲上猫ぬすまれて猫己雀戀芭蕉翁全集冰野去笠イセ冰子一アフミ渭李冰才嵐嵐湖專嵐露其嵐雪妻秀枳百琴嵐花水來凸有花英麿雪蘭春跡雪沾角橋由花和風里風雪とても世を藤に染めたし墨衣風なくてしづか過ぎたり藤の花藤歸るかり富士の裾田の砂ふるへ何事を田螺にいひて歸る雁歸春雨やかぞふるばかりしづ心春くるしさは鏡にむかふかはづかな蜂呑みて己となやむかはづ哉二階にて蛙きく夜のまろ寢哉乞食にも物くれて聞く蛙哉さを漸うに申し侍る蝦蟆溫とかやいへるもの久しくやみて顏は蟾のやうにたゞたれにはれなやみと、ぬれば、雁雨本意なく覺え侍りて、五八一此度のえらびにももれ侍らん釋病中の苦し宗杉長子紅銀和渭六富士大宮派風雅英雪鉤賤橋花ゆふぐれの鳥にくもるこぶし哉彌生にも中よき鷄の遊び哉朝寢して櫻にとまれ四日の雛雛の座を追出されたる弟哉眉ふりて虫喰ふ雛の惡女かな夫婦雛娘のとはヾいかゞせん山崎の權買うてこよ雛遊び犬丸にかつらせさせよ桃の宴動かぬを物おもひなりけふのひな妻におくれて悲しみの內、犬丸と名付く。蝶辛四して犬あり。夷日おもひいためるけふをしのびてまことや〓少納言の、一條の院の御翫びに習ひて、娘の雛を愛梅笠曉東一達同霜釋宗杉長子紅銀梅笠曉東一達派風雅英雪鉤車下雲雲ロ暑白
繪馬かけて明日の年見ん稻の神荒振つるめそ霜朝の禰宜のしはぶき神さびぬ置座に文ひろげたる初月夜稻宮人の顏見て歸るかれ野哉一道は麥蒔殘すいなりかな燒鎌の敏鎌も穂家の助け哉をがむ間に蛙飛出る小祠かな手を打ちて神靈覺しめ子規ふるかれや神樂拍子にかぐら聲なます盛る三角柏の大鼎屋根に鉦矢打つ珍重の聲犬人に八尋の門を守らせても社頭時鳥住吉奉納千句卷軸齋宮繪馬俳諧七部集拾遺其袋子を持つ天の益人る鼠黐に和が三十一メン一筆や矢立におふるつく〓〓し物ゆるし魚の兒見る春の水もぎどうにとてもちるなら椿哉たんぼゝの物いみの日ぞ佛の座烏芋堀男たすきよあら〓〓し女郞花くねらぬさきよさいた妻おもたげに松の葉かつぐ菫かな木瓜勤旅して見たく野は成りぬいろ〓〓の草〓いで見るやけ野哉小坊主よ足なげかけん松に藤藤がえやいばらなけれどむづかしき山藤やまき上げらるゝつむじ風春小奴吉齋に花をみせて野觀椿見にまかりけるにちりければ芭蕉翁全集游水草少人あまたさそひ侍りて沾沾柳イセ衞杜舟夜山紅嵐風月衞杜舟夜山紅嵐風月斧山月景凉百路同3荷德玉門英竹章店雪雪瀑下鐵川下道葉里通屋同雪同屋みあらか豐國や鳥の巢を守る古つゞみ迂宮や西行よりは五百年稻妻にけしからぬ神子が目ざしやな舍殿袋の底を拂ひ侍れば、神八句並べ侍る拾ひかさねて、の梅〓淨し神の靈科戶の風の吹き放つことのごと祇すが〓〓うす井權現にて數の外の部をみだりに猶句どもあるを樗立嵐連胤が筆の歩みや春のくれ行く春やをしさうにつく鐘の聲三月盡菖見るうちの罪もとまらぬ競馬哉垣葉も神勅を聞け嬉しいか祝子も花の名申せ神の場鎌とくら萩負ひかへる社人かな竹の子をぬけば音あり神慮胝やあはれ遊行のたび衣ちりかゝる花より撰らん六の塵こぼれ梅かたじけなさのなみだ哉ければ我等今日聞佛音〓歡喜踊躍と、六十萬人決定往生釋〓荏柄天神奉納雪の下の旅籠る宿は、芳野へ行く人にことづてして爲虚在靈受持佛語作禮而已たてまつりて念佛をどりの柄杓ふり附哀傷若宮の社人なり讀誦し嵐冰東嵐桐舟雪花眊雪雨竹五八三五八二孤嵐屋雪讀誦し冰花樗立嵐山立嵐東嵐桐雲吟雪川吟雪眊雪雨
芭蕉翁全集もらひ來る實ばえ嬉しや法の花山塵點本のこゝろをうどの香やさしも芥の中ながら同(摩訶止觀)一目之羅不能得鳥得鳥之羅唯是一目。此文のこゝろを鳥雲に餌さし獨りの行衞哉其座禪堂つら〓〓椿咲きにけり雷ふか草にて鮨作りつみ深草よ石ほとけ月讀維摩蝶とまる芥子は維摩の座敷哉翠けしの實の大きく見ゆる座禪哉鋤應無所住而生己心鷭の巢や行きもとまるも水のまゝ木食の蕎麥喰けるに新蕎麥の新の字に着く心かな百孟蘭盆やふだらく走り老の波如薪盡火滅身の後や灰汁にもならぬ秋の暮寒念佛弟子に傳ふる法はなし殺生戒いかほどの虫の命をわた作り邪婬戒狐よぶ妻猫にくしやのらごゝろ偷盜戒ひろはじなぬしなき風も椎のから妄語戒なりはひのからき世をしれ夷講飮酒戒竹の葉のみだれやすしや雪の暮曉觀佛醉覺めぬ腹も立ちやむ胸の月夕聞經山川桐雨同素草加水行山其雷角笠月下翠鋤紅立百里百里唐音の施餓鬼身にしむ夕べ哉夜尋僧稻妻の紙燭消えけり影法師三句追善うたてやな櫻をみれば咲きにけり鬼貫月のおぼろは物たらぬ色才酒盛の跡も春なる夕べにて來山母を夢みて蓮の實をふくむに夢の乳房哉風讀九相詩櫛紅粉や寺の湯殿は蔦もみぢ年弓十歲に成りける童の身まかりけるに駒とりのもとの雫や末の露嵐雪戀藤やたゞ君にふれたるむすぼゝれその約束は〓水にてのやなぎ哉百花思ふ人を待ちあかして、あかつきかた俳諧七部集拾遺其袋いささか寢入りたるに、からすのいとちかく鳴くに見あげたれば、晝になりたるいとあさましみじか夜や鳥のこうと待ちぼうけ山逢恨戀我が戀や口もすはれぬ靑鬼灯嵐雪子規おほよそ鳥と夜るつれよ菊鈴舌去りて嶋鶴に愛あり戀の友不障戀草の罪懺悔せよふかみぐさ紅雪後朝はやかなしよし原いでゝ麥畠水花あらぬ事にかこつけても、わすれがた山川鬼貫才麿來山嵐菊不紅雪鈴障雪風洗弓雪柚の釜のせめても戀し姫くるみ山ふかみそれにうき名よ姫くるみうき人を又くどきみん秋の暮こひ死なば契りたがへじ蔓珠沙花五八五笠そ去寸扇の來木
初風やをかし袷のかたひづみ衣かへ帶ふときかとり乙女やころも更老も來てつまさかりたるあはせ哉我れ須磨の關守ならんかんこどり銃や稽古の跡のかんこどり一葉づゝ蜘蛛のゐになる若葉哉柴船の漕ぎこそのこせ夏木立水の日の稻妻見せて靑簾空燒にすゝけやそめん靑すだれけふ更に靑きはなきか簾賣五位六位色こきまぜよ靑すだれ靑ほころびもあやなきものよ袷縫ころもがへかたびらきたる女かな陽江上新樹俳諧七部集拾遺其袋鳩簾まだ傾城のそよ寒し岡見すと妹つくろひぬこへの門我戀は鰒もくはれぬ命かなよすがなき戀にしねとや神無月ながき夜を我れは戀して覺えけり戀衣紙子似合ひしよし野哉昔今の戀に手傳ふ葱哉秋の夜や定めぬ妻の物案じ腮摺やたがひにつらきひゞとひげ戀せずば双六しらじ秋の暮海棠に女郞と猫とかぶろ哉君が手よ末つむ花のいたいけさ献立に鴨とかく筆物ぞおもふ四若衆を待つざめのこゝろなりもろこしまでもゆくもの者、述懐睡芭蕉翁全嵐嵐杜同鋤同山あきのね琴不ト巴百タ格立川風障宅洗里調冰沾才才紅月嵐當月ト舟三鋤嵐嵐杜同鋤同山巴百柳花荷麿冶葉下雪歌下宅竹翁立雪タ格立川洗里窮屈に君たちの日かさにぬれよ子規杜鵑まだ隣りでははつ音かな夏痩は夜を寢ぬゆゑぞ子規淀舟や喧嘩にまじる杜字空は墨に〓龍覗きぬほとゝぎす時鳥何を古井の水のいろほとゝぎす新茶より濃き聲の色庖丁がうしはいかに解きけん小聲にはよばれぬ物か鰹うりかんこどり煙草荒れつゞく畠かな晝貌にはけ〓〓しさよかんこどり植捨つる山田は靑しかんこどり子鰹島原にて待乳山の社頭に雨を凌ぎて規鰹をたゝむあるじ哉五八七其袋夏之部年の市蕎麥うたぬこそ本意なけれ年のくれかねさぐらせて歸りけり三盒子ことたらはずや年の暮年の市とぼしき業や白述賣此伽羅におもひ出しけり古紙子百年の後なき人や冬の蠅炭やきも黑まぬ老いの白髪哉捨人やあたゝかさうに冬野行く肩衣は戾子にてゆるせ老の夏遊冰花撩嵐雪慰女房萬句興行にう帶ふるしいまだ旅なる衣がへ名聞をはなれずもあり更衣更衣桐梅秀立嵐露才百風楸稻舟-露同月嵐普肅渭其杉雨川和志雪沾麿里吟下花竹有沾下雪船山橋角風
枯草の又もえ出づるほたる哉蓑干して朝々ふるふ螢かな奪あうてふみころしたる螢哉朝しのゝめをよびかへせとや杜若里沼のくさゝ忘れつかきつばた咲く中に紫ばかりかきつばた飛ぶまゝのこゝろを幣にほたる哉はやき瀨を何としづかに飛ぶ螢ほたる火や晝の暑さの息遣ひ草もなくこがるゝ石のほたる哉寢ぬ夜更蚊屋に入りたる鼠哉々の蚊に髣髴市の聲漁鵜杜腐草螢となる螢俳諧七部集拾遺其袋附川獵若父あん庵の夜もみじかく成りぬ少しづゝ灌佛や見る事の新茶にすゝぐまよひ哉灌佛や餓鬼に增賀の衣とらせほとゝぎす待つにぞ見ける夏曆吃りてはほとゝぎすとも申されずいたくなけなかば聞かうぞ杜鵑ほとゝぎす鐘撞くかたへ鳴音哉淀舟の鯉とる鷹かほとゝぎす二四八は誰が魂の數ほとゝぎす新まくらものいふしほや杜宇松に休む雁がねいづち蜀魂歌人には歌よませけりほとゝぎす短灌をさないに灸すうるとて主將之法務擘英雄之心芭蕉翁全集夜はや入相の佛ばせを庵にて大佛一カ。來一冬立ト嵐己月渭白富士大宮友盆五嵐百靑杜百タ湖翠衞冰ト立德泉山蟬志宅雲百下橋雪里女英里口水紅門花霞宅人立やかゞしをすぐに菖葺左右左に橫雲渡るのぼり哉傘ばかり葺きのこしたる菖かな蘭の香にあふや湯殿の古へちま弓杖に歌よみ顏のともし哉かはやなぎごり鵜づかひは夢にも鵜をやつかふ覽かゞり火に見ゆや鵜匠の貌ばかり銅の樋に色ますあやめ哉きなでしこの嵐は印地かはら哉おもふ人にあたれ印地のそら礫蔣草めせ淀のゝ草も持ちてさうかつぎ上げ星のむ闇の鵜川哉極端照伏見草とて世にもてなさるゝ御秣よ印地午射鮴よぶかたへながれけり五八九立嵐笠湖百靑立嵐舟湖冰琴化し夜の蚊にむせかへる淚かな寢はれたる顔いたいけや枕がや蚊やり火に要いでゝ行く軒端哉蜑の子の蚊をよび歩く川邊哉蚊の聲もまだ力なし衣ひとへ鐵のうしにとりつく藪蚊かなあはれとより外には見えぬ蚊遣哉魚の骨火鉢にくさき蚊やり哉蚊の聲のしらむに寂し軒の雨かいすくみ鳴かねば見えぬ小蟬哉手にとりてふり出されしせみの聲あなかなし鳶にとらるゝ蟬の聲城外吟蟬なきものゝ蚊帳ふるひて蚊到明うちなげく事侍りて五八八立嵐嵐舟湖冰琴桐靑笑大兆孤嵐風沾不當嵐志雪下水里女志雪竹舟花風雨女種柳風屋雪洗德一歌雪
小夜更けて肌のつめたきあふぎ哉さる人の紋見付けたるあふぎ哉繪もなくて心あやなし素扇みちのくの三絃きけばあふぎ哉すゞしさや心てへとる水の色長嘯のしみづにひやせこゝろぶとあはや〓水おもひもよらぬ後よりかたびらは淺黃着て行く〓水哉〓水音曲は一重ばおりの歸帆かな角田川を下りに犬に迯げ犬を追ふ夜のすゞみかな垣越のはなししみけり夕すゞみねぶたげのつくまで凉む庵哉湯をかけて凉しく成りぬ壁の草水の車のしづくをうけて扇俳諧七部集拾遺其袋附團扇附心太日の晝は水のまけたる暑さ哉妻も有り子もある家の暑さかな五月闇桃の虫をもたうべけり書見れば身の垢かゆし五月雨五月雨に壁落ちのこす葎哉さみだれや晝鷄の聲くらしたれこめて蠅うつのみぞ五月雨さみだれや浮木にすがる地のかずさみだれの最中や鐘の濁りやう初瓜と妹にいはせん親ひとり水飯にかはかぬ瓜のしづく哉人の世もかう暮しけり競べ馬毛の色や馬の競べに見さだめず溽五月雨瓜競暑馬芭蕉翁全集附五月闇京信冰衞尙一鋤嵐舟尙其嵐龜調立楸ト山渭冰立調巴其山冰門白詞立雪竹白水雪翁柳志德花下千川柳橋花吟風角川花十四日七日夕立のまたやいづくに下駄はかん夕だちや坂行く駕籠の御簾ゆふだちに呼びいださるゝ拍かな雲のみねうねり上せよ土用波雲の峯空に心のもやつきぬ山は行き松はしらずや祇園の會鉾に乘る人のきほひも都哉屋根洗ふものどさめきや祇園の會蠅はぢき怒る心よ手束ゆみうつくしき繼子の顏の蠅うたんかつぎより男見るまのうちは哉蠅タ雲の峯祇園會拔劒逐蠅佃島にて立玉九四條へのぬけ道すゞし梅の風ぶた豚なでゝすゞむをかしや屋敷守帷子のせなかふくるゝすゞみ哉友ずれに木賊すゞしや風の音玉川にうぶめきゝ出す凉みかな魚折り〓〓光りすゞしや水の色しばしとて石あたゝむるすゞみ哉水無月や暑さを探る猫の鼻夏の日に懶き飴のもやし哉水無月や朝日夕日もうるし掻寢ぐるしう枕をかへすあつさ哉浴誓願寺にて納ひやられてをかしかれたらん音こそ、(枕双子)とくさといふものは、凉五五七いかならんとおも笠衞尙山風にふ紅タ立銀富士大宮嵐雪細凸門白川雪口志雨雪江石紀州其百鬼山そ百桐嵐紅立笠衞尙山銀富士大宮嵐雪細雨雪江石貫川の里雨三角里雪雪吟凸門白川
妍かたち女の鬼かかたつぶりかたつぶり石に落ちたる音ぞうき物得たり麻刈る跡のあさぢ酒櫻麻さくら夕べもおもひ出づ田畠の蝸いかにして紡錘によるらん櫻麻麻白鷺やにごれる池のはちす陰はづかしや蓮に見られて居る心夕だちやうしの下腹我がやどりゆふ立や池のすがたのあたらしき夕立に追はれて來るむら鳥素堂の蓮見にまかりて蓮白鷺不禁塵土浣むさし野にて芭蕉翁全集牛辛苦もなきはちす哉みな月になきもの見せんふじの雪富士を見て身をもだえけり羽拔鳥水札鳴いて日影ちろつく流れ哉足音の間をたゝく水鷄哉聲たてぬおもひよ鹿の袋角若竹の一まつ高し月の隈その白き鹽に染めしか茄子漬夏瘦を戀する人と見らればや山水の濁り散らさじ香薷散雪見草花のふる夜は寢覺しか咲くときの牡丹にせまし園の色一房を手にあまりたる牡丹哉しらすがの宿をとほりたれば、男をんな打ちまじりてすゞみ歩みて池上にて侍りて東叡山の若葉の下に、俳諧七部集拾遺其袋晝寢亭をかまへ中鰺と凉菊一李苔魚風舟綠遠湖葉匂泉下翠兒子竹絲水水甲府梅中鰺と凉菊一李葉匂泉下綠百冰月杜桐己菊湖衞隨翠兒子竹絲里花下格雨百离春庚門友〓の花裾きらしなり旅ごろも夏は又冬がましじやといはれけりよの中をしらすかしこし小鱗賣BE顏に落ちくるを、首行程二里餘の旅すがた、ことぞとて、の坊いへるは、に雲かゝりて見えず、日本橋右に御本丸見ゆる、途ぬほどに出でぬ足袋はゞきして、妻驪詣るをさかなにしてて見たれば、とりけるもをかしくて、よばひ賣りけり。要五十旅行猶しづかなりかさはなうて常にあるきづかはしきに先達卯の花月夜明けやらげにも大小の中にはんべ此魚うりのその中を雨のふたつみつ東叡山は後嵐こと〓〓しう鬼其其うをゝ呼び雪貫角光廣もしろしめせばぞ蓼摺木さかさまに撫子すがる高根哉道づれの女見かくす麥野哉夕顏よふくべの名さへなつかしき晝貌の花や昨日の今時分みる房やかゝれとてしも寺の尼厩守る其の草をかれ馬齒莧やさしさや龍卷きのこす花あやめ怠らで咲いて上りしあふひ哉やまぶきの實に成る頃のいちご哉夏衣妹笠ぬうてまゐらせよ帷子の重ね着は何のたすけぞやかたつぶりてりからさるゝ靑葉哉善光寺にてみる喰ふ尼に夏夏ばせをのわかれに草衣すべりひゆ五九二鬼其年爲素鋤嵐笠〓尾花澤才虚尙冰月貫角弓睦親立雪扇風麿洞白花下
芭蕉翁全集雨雲やはら〓〓あふぎ旅の笠當歌神明にて夜明けぬ鷄のこしやむ聲か夏木立同增上寺ををがむに、まことや此の塔に風雲のかゝるを、一尺ぼふとかやいふ。けふは空晴れて雲なしよき馬に乘りあたりけり靑嵐靑女東海寺の慈雲庵へ先づ尋ね行きて萬年石を見る萬代やとくさのしげり石の苔同瑞聖寺わくらばに土くさきなりうしろ堂當歌めぐろの瀧も人のまうでぬ日底〓水心の塵ぞしづみつく嵐雪句の序よくて、くだんの袋の底の旅の句をならぶ。桐雨のぬし京うち參りとていでぬ。行くかたの覺束なく、しる人はそこ〓〓に、道のほどはかう〓〓といひふくめ出したてつ、卯の花の雪消え、五月雨のくもらぬほどに歸り來べきなれど、いと名殘をしくて梅にさむる朝げわするな辛き物嵐雪駕籠かきの、旦那々々といふに聞きあき侍りて馬士に貧きはなし雪のやど其角馬はみん闇のつゝじのうつの山子英海川に錢なをしみぞ花の波鋤立木の形りよ樗ににくき馬士が顏調柳春三月團子ぬくらんうつの山路秋の空富士を色々に撩りけりト尺月の照りいづくにふじの影法師氷花サノ富士の煙り雪やむかしの消殘り松子によつぼりと秋の空なるふじの山鬼當歌其子鋤調路ト氷サノ松鬼角英立柳通尺花子貫同當歌行雪の日は物見の松もよられけり池鯉鮒なるみ晝も淋しき砧哉首途よく咲いて人に見られよ宿の菊草枕ものゝ問ひたき案山子哉木の葉かきて礎見せよ不破の關辻堂や寒さもしらぬ樂あみだ春雨や粟津が原に二ところ短夜の聲なま長し馬やらうくさまくら飯にものこる暑さ哉旅人の足跡かぎる〓水かな大かたの秋のわかれやすゝのもり瀨戶染飯寒食の里侘しらに染飯かな宇津谷の十團子その露を柳にかけよ十團子草津姥が餅俳諧七部集拾遺其袋秀風和瀑姫が餅姥はさくらの名なりけり同大和見にまかでさぶらふとて「つばくらにしばしあづかるやどり哉。といへるに、我れも猫にわかれをしみてイセ契り置くつばめとあそべ庭の猫園宮川のわたりまだ夜ふかう色あひもわづかに春の夜明哉同明野咲かぬまも物にまぎれぬ菫かな同同じ野中より駕籠にかきのせられて手を延べて折りゆく春の草木哉同伊奈木川手ぐり船風は柳にふかせけり同伊賀越山松の間々やはなの雲同駒とりの聲ころびけり岩の上同花の前に顏はづかしや旅衣同五九五巴舟李笠ナニハ伴衞靑仙百風竹下凸自門女化里女同同桐雨同同同同
芭蕉翁全集朝ふかくやどりたつとてねぶたがる人にな見えぞ朝櫻園同じ曙おもしろや水の春とはひたの音同なつみを行過ぎてまねくやと跡になつみの川柳同卯月朔日當麻にまうでゝ、まんだらををがみ侍りて衣更みづから織らぬつみふかし同おなじ日香久山にまかりてあら美し卯の花は誰が衣更同さる澤にて水若葉かつぎ着て來し人のかげ同そでかけてをらさじ鹿のふくろ角同法隆寺二王にもよりそふ蔦のしげり哉同北國何とやらいふ崎にとまりて、所の夷もおし入りて句をのぞみけるに文月や六日も常の夜には似ずばせをその夜北の海原にむかひてあら海や佐渡に横たふ天の川同名月は敦賀に在りて名月や北國日和さだめなき同氣比の宮へは遊行上人の白砂を敷きける。古例ありて、このごろもさる事ありしといへば月〓し遊行のもてる砂のうへ同淺水のはしを渡る時、俗あさうつといsho〓少納言の橋はとある、一條あさむつのとかける所也あさむつや月見の旅の明けはなれ同瀨田にて我が駒の沓あらためん橋の雪湖春園女同同同同同同同同所の湖春にい褌着て朝貌に其の恥はなし杜格朝顏や誰れが文にもうらみられ月下魂祭たま棚や露も泪もあぶら哉嵐雪魂まつり味なき山のこのみかな湖水たまだなは面白をかしきにほひ哉百里盆の十五日ぞ、さかな物せよといます母のことぶき給ふもいと有りがたきにこのうをゝ親に上げたやたま祭り冰花魂まつる宿や入相つねならず調柳甲府施餓鬼棚我影ぼしも哀れ也映孟蘭盆や生けるをつなぐ雀賣渭橋月附駒迎北殿よ月にとふべき渡世なし沾德江の月やふかみ淺みの蜊から鋤立名月や歌人に髭のなきがごと嵐雪二所に月見る人のとがいかに擧白五九七杜月格下其袋秋の部初秋今朝よりは編笠はるゝ一葉哉初秋の風のよわさやいとすゝき盆前は大あらましや秋の風七タ浮草のうかれありくや女七夕星合やいかに痩地の瓜つくりほし合に我妹かさん待女郞桐落ちかゝる桐の葉かろしひとへ物蕣朝貌に置くとは露のつよみ哉朝がほに二度泣くけさの別れかなあさがほや片庇なる玄關前朝がほは繪に寫す間にしをれけり俳諧七部集拾遺其袋幽三帆山翁雪才其嵐麿角雪山川渭大阪來秀百破山和里笠沾鋤嵐擧德立雪白
芭蕉翁全集舷をきざまん月の落所衞菅笠やことに目に立つ駒迎へ秀菊花九唱其一九日菊もまたつゆ〓〓つぼむ九日哉嵐其二(人々十日)かくれ家やよめ菜の中に交る菊同其三(百菊を揃へけるに)黃菊白菊其の外の名はなくも哉同其五(言のたけの、たなりけらし。みやびやかなる、きくをみて句をまうく歌のすが)鶴の聲菊七尺のながめかな同其六(琴)琴は語る菊はうなづく籬かな同其七(某)菊買ふは又某にまけし人ならん同其八(書)屋書を抽る芭蕉にねぶれ菊の兒同衞秀門風其九(畫)菊さけり蝶來て遊べ繪の具皿同鹿ねらはれて道なき鹿の眞向哉不障田家鹿よりや哀れ鹿追ふ翁聲桐雨己巳九月十三夜游園中十三唱其、素堂ことしや中秋の月は心よからず。この夕べは雲きりのさはりもなく、遠き山もうしろの園に動き出づるやうにて、さきの月のうらみもはれぬ富士筑波二夜の月をひとよ哉同其二(寄菊)たのしさや二夜の月に菊そへて同其三(寄茶)江を汲みて唐茶に月の湧く夜哉同同不障嵐雪桐雨同同同同同同同其四旨すぎぬこゝろや月の十三夜10同其五(寄蕎麥)月に蕎麥を占ふこと、ふるき文に見えたり。我がそばはうらなふによしなし月九分あれのゝ蕎麥よ花一ツ同其六畠中に霜を待つ瓜あり。試みに筆をたてゝ冬瓜におもふ事かく月見哉同其七同隱相求といふ心をむくの木のむく鳥ならし月と我れ同其八(寄薄)蘇鐵にはやどらぬ月の薄哉同其九(寄蘿)遠くとも月に這ひかゝれ野邊の蘿同俳諧七部集拾遺其袋松にあはぬも時ならんかし其十一水一月千水千月といふ古ごとにすがりて、我が身ひとつの月を問ふ袖につまに露分衣月幾ツ同其十一(答)月ひとつ柳ちり殘る木の間より同其十二(寄芭蕉翁)去年の今宵は、彼の庵に月をもてあそびて、こしの人ありつくしの僧あり。あるじもさらしなの月より歸りて、木曾の瘦もまだなほらぬになど詠じけらし。ことしも又月のためとて菴を出でぬ。松しまきさがたをはじめ、さるべき月の所々をつくして、隱のおもひ出にせんと成るべし此のたびは月に肥えてや歸りなん同五九九同同同試みに筆をた同同同同同
日ぐらしの聲ぞなみだの親の里百年に一疋たらぬいなごかな稽田にあかく成りたるいなごかな繼しきはひつぢにそだついなご哉露明けぬ蜉蝣とまる水のうへはたおりよ何を業に鳴きはせでかまきりや蘆火にうごく灰の中秋の部に入りてなかばや裸むし虫はまぐりの二見へわかれ行く秋ぞ百迄とぞうたふ稻すり歌の聞きふるびたるは、親里のかたを詠めていへりけらし一日二日餘所いきして、宿心つきて、少年そなた風紅舟琴芭彌五郞衞冰山門子雪花川竹風蕉紅葉いそがしや野分の跡のよばひ星手にたらぬちり〓〓草の暴風哉湯けぶりの土を這ひ行くのわき哉小はら女や野分にむかふかゝへ帶鼓やら砧やらたゞあめの音我馬に拍子しらするきぬた哉有りつべきものは砧の小歌かな槌音を隣りはづかし破れきぬ蘆の屋の灯ゆりこむきぬた哉砧打つ人も裸でうまれけり衣卷や粘すりをけの音淋しわれをつれて我影歸る月夜哉野碪其十三園より歸る附蘿分芭蕉翁全集タ俳諧七部集拾遺其袋照そなた風紅舟琴冰山子雪花川竹風芭立東そ仙巴冰山立鋤菊同蕉笑志眺の化風花川志立鈴みゝづくの己が砧や鳴きぬらん澁つき染めしうらの藪かげ棒の月一つの窓に僧やせて何も燒火に皆盡しけり調べなき形見の鼓音もいでずみだれし髮をなほすかんざし絹はりを欄の柱にすぢかひて白き胡蝶の垣を飛越す夕霞日々に重なる鞠の音花とひ來やと酒造るらし山寺は晝も狐のさまかへて柴の筧に笙をあやどる入る月の薄粧うたる武者ひとり沓にはさまる石原の露霧の外の鐘を隔つる松こみて潮落ちかゝる蘆の穂のうへ蜻蛉の壁をかゝふる西日かな六〇〇角もじやいせの野飼の花薄橘の香にせゝられて寢ぬよかな蘭の香としらで風見る薄哉はづれ〓〓粟にも似ざる薄哉薄蘿の手にやがてにぎれる小石哉おもたさに紅葉はなげつ二月橋片枝は霧こめ〓〓のもみぢ哉水底の紅葉見て來るかつき哉小男にかたじけなしや下もみぢおなじくいせの國出づるとて伊勢の國に修行しける頃、し、なりければ、嵯峨の歸りにこれらも猶俳諧のまくらにはあらずかかやにとまりたるに、豐國野を過ぎける頃宗長法師六〇〇宿に橘のさかり關の地藏と其伴大阪そ嵐遠百八秀角自の惠水花木和沾露芭荷蕪荷沾蕉荷沾蕉荷沾蕉荷沾蕉荷沾蕉其嵐遠百八秀角惠水花木和
蕎麥はたく男にもろし女郞花梨ばかり夕日に醉はぬ山路哉我が宿は何を忍ぶのすり火うちあらそばの信濃の武士はまぶし哉た四隣りをかぞへ歩くや庭たゝき手繰繩のくるしや賤が芋のから里の子と鼻たらし居る木わた哉いざともに糧ぐさきらん秋の庵ありの實よ人の問ひこば山の奥實のおぼろ葉の朝露やくれのおも閑茴蕎麥山家に遊ぶ事侍りしに貧猶さまよひてけふも俳諧明日も月次とて俳諧七部集拾遺其袋邨(電)のことが香讀甲陽軍鑑ている今もうかゞしみて乘馬きるゝ徑かな稻妻にをどり崩れて泣く子哉舞子更けて踊る鳥の聲白しすまふとる心になりぬ秋のくれ投げられて禮して這入るすまふ哉兄弟も勝つことおもふすまひ哉すまひとり傾城の名にまぎれけり稻妻の笹に音ある狐かないなづまは稻に契りの間あるか古すだれ稻妻とまる綻れかな踊病相稻案山子祇園にて後撲妻ひまほつ四十雀こそ風も身にしめ芭蕉翁全集艸加臥水ト京去京月千百百東同湖桐調尙立花冰伴鋤立嵐花里雲水葛山宅雨來柳下之白吟蝶花叔立吟雪其袋冬の部時雨ふり黑木になるは何々ぞ茶を煎りて時雨あまたに聞きなさん草履とりしかり〓〓ぞゆく時雨島松はわざ〓〓ぬるゝ時雨哉時淺ましやまだ十月の曆うりおもげなるとのゐ袋やかみな月神の留守よい女房を守るべし讃大黑老しらぬ今朝しもなどか桐火桶そよぐたびとりならひけり相撲草鴫網は風の足見るゆふべかな川音につれて鳴出すかじか哉落鮎の水にあかるゝうき世哉京へまかりて雨方〇〇榧のからよしのゝ山の木のみ見よ秋のくれ井手の蛙のからをみん秋のくれくつ〓〓をかし羅漢堂七夕の獨りあそびやあきのくれいきて居る人見て秋のあはれかな秋のくれ女房のほくろ見付けけり立ちいでゝうしろ歩みや秋のくれ癖に成りて淋しや秋の今時分みのむしは千種の花のかゞし哉見渡せば出來不出來あるかゞし哉まじ〓〓と日に照さるゝかゞし哉秋柹の實、といひて土產ねだられけるに、九月十日菊のかへりとて、のゝあまりなりと、からげて立ちよられけるに暮山邊の栗のから、笑ひ興じて今日の得も人丸の集のふくろ京嵐舟月鼠鋤冰嵐千鋤呂原雪竹下尾立花雪春立洞水才嵐葉立來山嵐露三湖團勇嵐鋤呂原麿雪水志山川雪言翁舟友招雪立洞水
初雪は鹿の角にもたまれかし初雪も別にあまみはなかりけり初雪の白きにこりぬ目やみ哉一嵐鐘の音落せ竹の雪つめたさを雪にまぎれて歩きけり白雪は溝の端のも喰はれけり旦夕も過ぎるか雪のたまる音だゞくさに木立もれたる雪の形常々はしらぬ榎よけさの雪cm門の雪臼とたらひのすがた哉初雪や皆やごとなき沓の跡深草の櫻は白しかへり花やどり木の衍よ若しかへり花松風ぞうしろに山よかへり花物すごやあらおもしろの歸り花木枯に答おほせたる木の名哉こがらしに腹立つ鴇のひかり哉一すぢに凩や世のこゝろばせこがらしに吹倒されし座頭哉木革足袋やあらたなる程りちぎなる足袋はきて寢る夜隔てそ女房共足小野といふ名にめされけり炭俵埋火やきゝ耳たつる鼠強中よしやごとくの足の冬籠りいつとなく我座定まる炬燵哉爐の友や額にかけたる翁面からかさのえぐちにかさぬ時雨哉桑名には笘干す宮のしぐれ哉爐江口にて霜踐至堅氷雪佛諧七部集拾遺其袋枯袋芭蕉翁全集京千之土鮮桐雨一有踈木鼠尾嵐雪和賤百里衞門孚先月下山川紅雪止行峽水兆風湖水月下孤屋衞門調柳嵐雪山川秀和樗雲舟竹鬼貫落水の隈いろ〓〓なれやはつ氷玉章に薄墨がちのこほり哉風歸す氷は水のいかりかな五器一ツ氷の上のあはれかな田にそひて益なきほどを氷哉霜枯に一花咲けるなすび哉日の朝や待ちて霜田の堀鰌霜の夜や蟻の音きく古柱あられには思ひ忘れよはちかつぎはつ雪の半部ゆるせ風の神色ごとに香こそ有りけれ柚子の雪歸たうとしやいためぬ梨の冬木立塚一ツ枯殘りたる野中哉支離馬すてしかれのゝ哀れかな狼の吠えからしたか冬の山落葉たゞ色々の木の煙り哉炭屑にいやしからざる木の葉哉落葉朽葉皆拾はるゝ銀杏哉枳に落葉つらぬく山路哉藪川の水に落葉の色ぞなき落十月の風いろ〓〓にきく夜哉こがらしの高くもなるか雁の聲うたうてもまうても冬の山路哉日あたりもこゝろに寒き枯野哉凍奉る霜病十月雁とし毎の初茄子は、駿州江尻の庄より霰花て風もすくなき木葉哉葉中方の五釋宗吟波水伊丹靑沾人德由川和賤風洗冰花其角北〓東石三翁言瀧百里原水湖風花蝶作者不知立吟呂洞達曙風子擧白竹井宇門
身をすてよ下駄はく雨の鉢たゝき煤はきて何やらたらず家の內鉢扣すゝ竹の世々を戶ざゝぬ町家哉すゝはきは暖かなるを家例かな武藏野や煤はきなれど富士の山君見よや我手いるゝぞ莖の桶猿は飢ゑ牛は胡麻喰ふ霜夜かな追鳥の一羽迯行く入日かなひともじや一字の題のわすれ草ほめられて夜行の犬のきほひ哉魚賣を蹴て行く鷹やみさご腹かくぶつ〓鰒のひろはれに行くあられ哉祐成〓を喰ふ時は今更につられて鳴くか鰒の聲舟君のさうしや落つる雪の鰒河豚ほど鰒によう似た物はなしむし鰒煤臘葱給はるは石花にかしこしひねり文海鼠喰ふはきたないものかお僧達むくつけき海鼠ぞうごく朝渚はり〓〓と氷のり越す小船哉溜り江も凍ては白し水の花古池の波たつるなよ薄氷冬の日客をもてなす夜半醉半醒辭米にかへたる鯛にはあらで蠣を得て返事に海俳諧七部集拾遺其袋芭蕉翁全集掃八興ときむねはくはざりけり鼠冰花月下菊峯調柳東順嵐雪紅雪百花冰花-峯桐雨立吟曲水冰花山川鬼貫同嵐雪露沾衞門一衞門口しめし給ふに、龍樹菩薩の禪陀伽王に對して、たとへば有瘡人近猛煙貪欲をはだかにはまだ衣更着のあらし哉古曆ほしき人には參らせん米虫の石臼めぐる歲暮かな年の急ぎちひさき足袋ぞ心せく衣くばり四町へ色をわかちけり歲暮せきぞろやまづ天王寺御墓山はちたゝき君子の閨を遠ざけよ珍しき鷹わたらぬか對馬船覗かれてものうき鷹の夜居哉つれもなく野に捨てられし冬の月晴過ぎて物皆黑し冬の月麥を蒔く人には多し赤がしら鴛の來て物潜かなる小池哉たはぶれや呑みあふ鴛の水鏡水鳥のあゆみ短かき山田かなはら〓〓や風の吹きゝる村ちどり息つけよ足高山に飛ぶちどり雪のちどり寒うて鳴くか嬉しいか鳴門なる渦にまかれそ浦ちどり鮟鱇やめなみ男波の水ふくれ始雖悅後增苦の文のこゝろを欲德世二月十七日神路山を出づるとて衣節季候鷹附追鳥水水衞話配月鳥六〇七芭蕉嵐雪楸下月下同衞門其角子英露尺樗雲秀泉尙白山川湖風幽亭菊匂桐雨冰花菊匂
水かゞみ背中に雪をおひにけりほ盃に礫をとむる花柚かな頰當にえくぼあるかな花軍うつるらん時日は惜しと鹿尾草刈雨つきし蟬の身を干すいとまなみ鴨飛ばでたゞ巢に瘦し水のよど月うつきまつとちぎりし妹もなし相槌の笑うて明くるきぬた哉七福神檜垣女敦潘安仁物鵜鶴鸞鴇鶸鴛鳶鳴雁俳諧七部集拾遺其袋盛蜑津岸瀨溝落帆洲井笘波、賀茂槻卯木名鳥羽糺八瀨松橡桐椎桃梨水野淀同同舟菊琴立ト山竹峯風吟宅書きそめや柄杓の底の十文字寒苦鳥明けなば紙子繕はん花の木やかならず走る下り坂蜆くふ朝飯もはてぬ春の暮枯蓮のからかさかろし辻談義おそ櫻禪のならひに切りくべんそさうお召しせはしうそつきたんきむひつ彼の草にから名はなきか茗荷賣はなの夢此身をるすに置きけるか雁瘡のいゆる時得し御法哉道遙鵬鸚之間出入是非之境彼是芭蕉翁全集同同舟菊ト山菊幽笠琴衞舟百嵐其竹峯宅川峯亭凸風門竹花雪角あは雪は女のなやむけはひ哉糸あそび甲の星が鉾のかげいざや蝶おもき身すらも舞の袖ふるひやうかの遍照が卯杖哉角落ちて犬と見ましや庭の鹿亭の顏のどかに黑し白ねずみ櫻鯛笑はゞたゞにくれつべし家子ともに引出物せん藏開き山七小町寄毘沙門鉾寄布袋蝶寄福祿壽杖寄壽老人鹿寄大黑鼠寄惠比壽鯛寄辨才天鎰本ちゃん一升はからき海よりしゞみかな蚤ひろふ手わざもにくし猿の智惠しんく雪かゝで御格子まゐれ四ツ日さしよひ〓〓は小坊主たゝく水鷄哉寺々の談義過ぎたかほとゝぎす十月や餘所へもゆかず人も來ず芋蟲は何にいぶりの名にはたつ硯墨蠅の喰ひものなかりけりみちべたひがみいぶりきれいずき同同同同同同琴其靑山當桐尙月百風角女川歌雨白下里\
七かへし小まちをかへせかぐら舞霜けぶりそとばに寄るは苦しいかうき草や枯れて見しもの黑ながし年籠り小町が若世尋ねけりおもひある心おもげや雪の笠足の血や木瓜に裂けけん木幡越行くとしや肌にとまる梨の皺さし足も月に目あらば恥かしや鸚關卒都婆通草紙洗少將のつらき夜ごろをかぞへてとて、〓月の夜まづかちよりかよひけん、芭蕉翁全集水鵡寺同山あはれさよ同同同同同川夜はしづまる溫泉の底の月軒の葱天上したる龍のあと月甲の聲も我がおもひからなるときく向ふの後家の凉みゐて疊奇振舞に齋の急ぎのまがひけり逢はぬ戀練の袷の袖のゆき又乙雪とちぎんかまのはらひの獅子鳴し來る外に寢て尤めぬ犬をまたぎ越え汐の日を風呂やの猿の名にたてそ黑いをとことわらはるゝいろ檜箋ばかりうらおもてなき照る月は雪の柏木笹の霜床よりはこぶ猪のひとつ子風通ふ氷室の外はあたゝかに山桝の芽を探ぐるおぼろげ俳諧七部集拾遺其袋進もなくて秋ふる출〓るわかれ路鋤嵐同同同同同立雪志立雪志立雪志立雪志立雪志立雪年の夜や細工わりなし橸の割ながしつゝ浪しろしみなつゝじ哉松の木の雪やはや消ゆ軒の妻つとめての雪の足跡君も見よ足すます帶刀もなし小夜しぐれこがらしもあはれとはふけ顔の胝蓑にたく香なとがめぞさくら寺闇廻時風の夜雨の夜雪の暮文雨ニらう袖にして櫻たちばな沉麝香見ても汗ごきあみ笠の跡そこ〓〓に代脉はあな賴みがたとりしまらざる氣は廿年頃よしなしの煙草をたてば何とやら千束なる切紙かみも繼〓びぬ雁か春の月己は盜みはなるまいぞ闇きより心の底疑定の內ひたものけふは眉ねかゆくてめぼしの花のいづこみよし野足利殿の公事未細なり松癆長明とうき世噺さん山の奥紺かきが染めそこなひし衣侘びておこゝろしりの是の十人か療へるまで妾番せよぜの音地震又ゆるの藥窺ふ障子ごし味酒に苦き物あり松と花立冰ト同同同同同志雪志立雪志立雪志立雪志立雪志立雪志花宅
あたまかず藤原の十枝の裔もみぢして頭年鎗かうばしき硯明くれば筆取りて雪のすゞめと扇もてなす瓜むきやある數貢韜Lekはからぬ己が除地其道みがく秋の月じの心植木なき庭な俳諧七部集拾遺其袋る鎌倉の穢多use男堅刻輪は女ゆりのぞきち藤やまぶきの國風を讀む花笠はかゞの番匠筑波萱星霜照るか諸社の贈官さからはで車も通せ腐れ橋三世のむすびに立つる接待秋風に眞弓とる手も肩を着てか寄衆も勇者城もしれもの蒲の穗のほくそもつかず有侘びて人の刈るころ靑き我が稻大葉の茶摘小葉も候べく笠うち越せば恨みの瀧を柳哉花に來て牛もよだれを流す也狢芽もたちあへず大割の材百谷の雪くづれ來る筑摩川だ年をしてうつたる舞はゆるさしめふ釣瓶井のくるか〓〓と月の秋ねり干す絹は風の一染くるへ蝶翅を己が聲にしてるまふ心くるしき文ひろげいづ水無月の月芭蕉翁全集立嵐吟吟同雪同吟同雪擧冰李嵐白雪花下雪白下花白雪花下雪花下雪白下花立鹽車月夜のよさに引侘びて橡ふるしぐれ竹笠を打つ小新發意勢は秋葉の二三尺すまふの意趣をとぐる一村春面白き酒の呑みじにぬすびと渡しさす舟守ともにうち返し花にいつ貝摺錢をつなぐらん露拾はする玄宗の馬鹿いづくの憎ぞ札くばり行く未だ朝寒む御油の馬士近仕合なさま〓〓のきぬ〓〓かたれ軒の月けはひ見て子持が母もさらす也盜なりと鼠をいたく逆剝に仙臺の米つゞけくる恒の產盜もかしらの家はかざりしてき雲ほす暮の貧乏居は禪六一三の魂蝶ら大魚の綱引踊る舟競ひかみた石菖に油煙すべしのけふの月日なたくさゝもふり醒す袖うきふしを又ゆりおこす渡し舟からかさかした君も問ひ來ずをとゝひも昨日も人の凉みにて狂言作る夜の蚊の責め胸を割りかしらをうつも酒の罪情にとてはなめぬ石麻つり替に女はしづむ金秤上にしたがふ荒すまふども月もきこゆる水戶の下町糸屑におもひを捨てよ組屋殿養ひ合せ人も知る星に積む錢を篩にふるふともその日に成りて悔ゆる入定蚸も羽ををさむ戶袋まった緣吟雪吟雪吟雪同吟雪吟雪吟雪吟雪吟雪白雪花下雪白下花白雪花下雪白下花白
賴梅山吹の光るわきざし外科の子の手水仕習ふ花の水狐矢に荒木の弓を素引してけじ〓〓市の座につく召の昆布賣七日はりあひもなき傾城の氣ぬけ哉明日の精進や戀のさまたげ蚰蜒は誰が黑髪をなめに行く翠簾を尻目の心しりきや懸聲も不肖々々の鼓うち義々々の屍見にゆく殿といひさうな顔芭蕉翁全集すびき名によりて蚊遣になれよ伏見草切箔にちらせばかろき金にてあふぎのつまし塵取に折る鳥叫旦那寺垣の後へにぬかづきて花の種けふや祇園のお目さまし桃の葉しぼる湯肌うつくし月はみん足に疵もつ餘所あるき稻乞ふもなさけかお姫さま金灸こらふる顏わらはばや蠶きてうつぶし染の捨衣菖の鉾にほたる火をきる水むしに妹が手の裏あれにけり機布ちゞむ越のうみ西芹の香に雪の兎の澤渡りますさて懲りよ妬さ憎さの妍敵喰うき名の露よ番匠の妻ほれたとや白粉の花紅の花三度肝に入む聲ふ色はしるゝ木食15みめかたき俳諧七部集拾遺其袋百笠菊花凸峯雪峯凸花峯雪凸花雪凸峯花凸雪花峯雪吟同雪同吟雪吟雪吟雪柳新風呂を入り和げよ花の肌客に扈從のみやびやかさは物盜む人の心の掛子ばこ圈のうづらに目を耽らかす鼠舟責下るかすりおもしろ桂男もうごくやうなる春の月とはゞや所化の衣すます宿病みぬきてみれば凉しき草の上夏の夜を背き〓〓の寢ぞつらき機嫌よく熊野のお寮入りおはせ田狐つかれの晝寢しに來る捨石に胡座かく僧佛なり瓜きらひなる中のうつり香帶の祝ひも明日の雜餉の窓を上ぐる尺はち庵槍さびしき風の連柳鼬矢削る藪のら言:臺月かしか裝束の百馬揃ふる花の山女文字史の筆のふとりやう鯆とは是か鳴くらん生洲町人きらぬ大小さます夕月夜下帶あらふ夏闌けにけり四幅對四つの常盤に詠めける拭ふ上さへ猶ぬぐひ板膓中酒にえめる雪の朝飯小餞うやり水淺く蓼紫蘇のとう覺えなく肌の瘴れも冷渡り幾重にも月さゝせんと向をみて蔦も便をかこふ小座しき菊の香や瓶にも餘る水に迄さ漱ぐ透の頂香香にたき田の原なる宗雲の寺か黑さくはんたふ戀の首尾あれふる藤は門の客人き〓〓弓しんとかしり六一五の國嵐百其角雪里角雪里角雪里角雪里角雪里角雪里嵐雪凸峯花凸雪花峰雪凸峯花凸雪花峯雪
膳ひかへ居て老いをむかな壹節季候の頭の草の生えるまで羽串跡なる男先の小をとこ形尾の〓のとはへや水かゞみいづ方へはかなく醫者の急ぐらん腰支を星に借す夜か後向き賭このてかしはの人みしりして衣更着や肉陣風に立ちつらねけふぞ唐人天穿の晴れ花の歌醒が井餅に書黑め生薯蕷麪すうる月夜雪の夜髮灣ち三ヶ國我流にかなで治めけり軾參せ双の俳諧七部集拾遺其袋さす夜は雪の黑鬼伍も弓は流れたりばむさかづきのくれper六鶴はを宿にぞ打ツ長生の德餅花もやゝとすゝけてけふの春芳野の曆月日わりなき迂宮にあはぬ泪もかゝる哉骨の供して御國迄行き船に醉ひ鞍に睡るを世のうつゝ櫛買ふ店に袖ひかれたる老僧の若衆つれたる春の月蟻のちからも廻す輪藏玉づくり難波は霞む古都冲の子の日に海松を引くうなゐ等がとさかを拾ふ磯遊び鹽よと呼びて大年や戶明くる音のあぢきなししばられて居るぬすびとの顔座を打ちて母のたけりも我が泪緣の返事はふつとならぬか感じては鬼が詩を次ぐ春の雨芭蕉翁全集一舛の雪촉雪竹和雪竹和雪竹和雪竹和雪竹和雪竹雪角雪里角雪里角雪里角雪里角雪里角添本雪賞翫は鱈の雲膓打ちおかず杉冬籠る御〓人が隣り居て師走の門の子可賣子可買煤はきて何やらたらず家の内髮陣の竿削る匂ひ暑くれは結構あれど草枕からさもうすき盃はかる旦夕の 月六一七ら雪下雨雪下桐雨嵐雪月下麥飯空神水汲む時は數珠耳にかけ猫好のこゝろ程身の有り安しならはしの歌を人の世の中銀のはなし目貫を佩きながら無月十三日を花盛り冷じの冬の澁柿硯石窪しと人にみられては蓬灌佛を手に提げて來る卯の花に今朝も薄の手品してみる夜目疣をさすれ君の鬢櫛人の垢よる〓〓かはる一夜妻親しらずとて旅に泣くめる桔梗なるあふみの笠は形りがよししら〓〓と嫦娥や醉ひを盜むらん臘月の梅花は〓がず中々に炭がしらけぶたき妹が泪かなたが行かもとのこゝろ朝起の砂履にいそがしゝみに雪の積る門立羽箒にうつ雉子なく也六一六竹雪和雪竹和和雪竹和雪竹和雪竹和嵐雪竹舟秀和里
芭蕉翁全集帷子の首筋よれて胸あはず麥粉くふには言の葉もなしおもしろう順禮うたふ芝の上曇りさだめぬ諏訪の湯煙り稻妻に人よびあるく神かくしはらさゝらへ男うつゝ孕うだ落ちにきとうき名山田の鮎の魚何にあんにやの家にふれけん花の床曉笑ひ畫ねぶり子かはゆがりの雉子もほろ〓〓鶯も譬喩品とこそ說きにけれ佛頂顏よあられふる空塗垂の戶たてに行くか畠守我が一代を盡す書本白川のそこらともなき住所黑谷よりは隣りなるらん松杉のくもりもはてず日てり雨小うたで歸る五月早女房こいよ君待つぞよどのに薦しいて裾ぬひくるむ死跡の耻十六夜の光りに寺の米無盡竹の子どしを秋風ぞふく城下の田町や霧に望むらん浴歸りと見ゆる足輕葱に首つながるゝ龜かはん夢の錦は花の鴛どりはいし春の夜を媒氏の官に酌とらせ恨みうれしき衣更着の衣元祿三年庚午の夏雨下雪雨下雪雨下雪雨下雪雨下雪雨下雪雨下雪雨下雪雨下雪雨附錄爰に附錄せる翁遺稿の卷々は、先のとし七部拾遺と題して、世に弘めたりしを、こたび新に家藏の七集を小刻合册し、ふたゝびこれに七部拾遺の名をかふむらせたれば、今此の卷々を捨つるにしのびず、卷の後に加へ侍るのみ。菊舍主人識脫ぎかへがたき草の衣手有明の七ツ起きなる藥院にひさごの札を付渡しけり秋風に槇の戶こぢる膝入れて小僧のくせに口ごたへするやす〓〓と矢洲の河原の歩渡り多賀の杓子もいつのことふる手枕の男も持たで三ツ輪組み人に取付く浮名口をし萱草の色もかはらぬ戀をして秋たつ蟬の啼死にけり月暮れて石屋根まくる風の音こぼれて靑き藍瓶の露朝顏の花の手際に咲初めて腹の鳴り來る水の替りめ猫の目の六ツ柿核に四ツ圓くせんほ うあすのもよひの繊蘿蔔を切る六一九良品殘翁品芳翁殘芳品殘翁品芳翁殘芳品種芋や花の盛りに賣りありくこたつふさげば風かはる也酒好のかしらも結はず春暮れて俳諧七部集拾遺附錄翁半土殘芳
機嫌直しに酒もられけり曳渡す弓に中を望まれて碓井の岩に殘る足跡狗の尾房さげたるをの童稻刈連れて小舟乘込む柿見世の富貴に見ゆる後の月先づ日和よき秋の夕ぐれ落付に風呂云ひ付くる伊勢の御師返事せぬ手紙も掃いて捨てぬらん蕎麥の粉ふるふ明日の振舞火桶すら寢ぬ夜の夢に消え殘るおどけた顏は名のおぼえよき又年くれて隱居くるしき長からぬ髭人參の賣所語るを聞けば乞食を君寺 の入物も田螺に似せて竹笊槫木を流すch俳諧七部集拾遺附錄雪水筆長閑けき晝の太鼓打ちけり神風や吹起されてかい覺めぬ風ひえ初むる牛の子の旅しら〓〓と一重の花に指しむかひをしなずば人の何に成るべき露しぐれ越の裂織袖もなし田鼠のいねはみあらす月澄みていとあはれなる野々宮の衆朝夕に嫌ひの多き膳廻りまだ元服もあどなかりけるけはへどもよそへども君顧りみず冬至の宴に物とり〓〓に紺屋の形を取散らしたゞさゝやいて出づる髮結ひからうすも病人あればかさぬ也落せば追而聞出す芭蕉翁全集おもひます岱葉蘭雪山蕉良岱葉雪蘭子蕉山雪葉岱品芳殘翁芳品翁殘品芳殘翁芳品翁殘物ひとついうても念佛唱へられ旅の馳走に尿瓶さし出す臺所のつゞきに部屋の口明けてほたゆる牛も人にからるゝ松茸も小僧もたねば守られず稗に穗蓼に庭の埼なき馬のまはりはみな手人也ちら〓〓と淺瀨に炒のつれ立ちて西日をふせぐ藪の下刈夕顏や蔓に場をとる夏座敷いまの間に何度時雨るゝ一貫の錢で酒買ふ昏の月六二一巢を喰ふ鳥の人に怖ぢざるやよやまて宿迄送る花の暮此の花に判官殿やとゞめけん小觸の文を送る蝉に隣りは臼を挽出し入影も細き高野の朝の月木賃泊りは不馳走にする心も有るか假名に名を聞く三ツ目より人もしたしむ契りにて庫裏姥の手を束ねたる盆の中鹽行燈をへだてゝ顏を隱し合ひしろき西瓜も今は凉しき月の夜は見しらぬ犬もしづか也門違へする醫者の麁相さ砂川にひたす刄釜の傾きて旅の風流のまことを啼くやほとゝぎすを荷うて漸寒ぬるみひとつと望む六尺草履に加工村の花の雪繼き人風惟翁爲曲嵐怒岱嵐濁曾靑芭凉-蘭誰水子良山蕉葉雪誰水蘭子良山蕉葉然翁仭然翁仭然翁仭然有良子
娶入するより早鳴子引く見知れて近付きなりし木曾の馬士是非此際は上ん物やく琉球に野良疊の表かへ春風に太鼓聞ゆる旅芝居細き井關を花守の家と見えたる土手の下畚に赤子をゆする小坊主早稻の俵にほめく刈大豆の胸虫に亦起さるゝ秋の風月くれて雨の降止む星明り物聞くうちにつらき足音四ツ折の蒲團に君が丸く寢てやさしき色に咲ける撫子辨當の菜を只置く石の上諏訪の落溫泉に洗ふ馬の背み俳諧七部集拾遺附錄口ならす伊丹諸白登る若鮎仰山になり音たてゝ家根普請木に抱付いてのぞく谷底脇道をかるふ請取るうき藏主合點のゆかぬ雲の出て來る秋もはや圍爐裏戀しく成りにけりきり〓〓す飛ぶさや糠の中膳取を最後に眠る宵の月尻もむすばぬ虛言ぞほぐるゝ椙の木をすうすと風の鳴りわたり伊勢のはなしに料理先だつ陽炎に田舍役者の荷の通り土ほりかへす芋種の穴花の香に啼かぬ烏の幾むれか米宵の奧なる初瀨の晩鐘月影に馴染のふかき宿かりてめき〓〓と川より寒き鳥の聲の味芭蕉翁全集なき此里の稻夷松如露蕉落邦蕉水蘭蕉落邦水蘭邦月蕉蘭落邦始川行始星行川仭然同翁然翁仭然翁仭旅久堅やなる友を誘ひ越す春こなれ〓〓と初雲雀六二三人續く毛利細川の花盛り聲駄荷をかき込む板敷のうへ手拭のまぎれてそれを云募り干物つきやる精進の朝出店へと又も隱居の出でられて見る目も暑し牛の日覆傘をひろげもあへず俄雨公事に負けたる奈良の坊衆草赤き百石取の門かまへ袖ぬらす染帷子の盆過ぎて月も賢なり雉子の勢ひも侘しき醬油の粕靑年寄は土持ゆるす夕間暮なでゝこはばる革の引はだ鹽付けて餅喰ふ程の草枕さし込む月に藍瓶の蓋野分より居村の替地定まりて初茸やまだ日數經ぬ秋の色き薄に濁る谷川むかしから花に日が照り雨が降り此月末にをはる楞嚴隱家はみのゝ中でも高須也笊かぶりて替とりに行く夏の夜も明けがた冴ゆる笹の露た日らはぬ聲もまじる鶯やけ畠も上白の出來六二二芭去嵐半史岱芭蕉來落邦蘭蕉水落蘭邦蕉落水蘭水蕉蘭落邦水蕉筆行始星行川星
花見んと直る圓座に暖まり狂もり並べたる片器の蛤霰降る踏歌の宵を戀渡り兄より兄に傳ふ脇差巡禮のかへりて旅の物がたり簀子出來かせば先づ疊敷く瀨の露深き曹洞宗の夕つとめ生きながら鮒は鱠に作られて稻する臼を借りにこそやれ犬の子の惡まれぬほどよく肥えていつも茶のみによる端の家吹倒す杉も起さず此の社出口とヾまる金山の砂雪よりは藁ふむ馬の冬籠り壁にたておく琵琶を轉ばすヘ俳諧七部集拾遺附錄ば梅にさはる前髪闇きより登る月代哀れます昔語りの沓手鳥何に付けたる歲暮の雪提灯に大蠟燭の高煙り官位あたへて美女召供せり牛蠅に袷持せて羽織りける峠の底に吹く秋の音借れば貸す櫻の庵掃置きて橘仇人の爲めにかく迄氏を捨て世渡りと關に道有る寺の背戶月晴れて灯火赤き海の上よしと口きる一瓶の酒出こぢ明くる庇の下に十萬家毛氈をしき書畫の初まり冥加なう夜食すゝめにお腰元つゝむに餘る腹氣押へしや水に下る宮せ芭蕉翁全集し竹のの月影材木靑左嵐其筋蕉葉山蕉蕉柳川山蕉川山葉柳蕉川柳角蕉來角雪來蕉雪角蕉來角雪來蕉雪角蛙の此の春はいつより早き花の蔭はなしとぎれて休む筆取院內に宇治川近き波の聲火にかゞやきし門の金物隨心の笠に矢並を繕ひて降出す雨にさわぐ蟬の音叢と日頃思ひし死所國を訪はれて笠をみせけり人足の貫目引合ふござ包酒やの門を叩く月の夜萩畠年貢の柴に刈初めて窓のやぶれに入るゝ北風湯上りの浴衣干る間を待兼ねてせいかみゆる苗代短夜も月はいそがぬ形ちして牡丹の花を拜篠の露袴にかけし茂り哉從す、城主君、岡田氏何某に寄す日光御代參勤めさせ給ふに扈む廣場凉千芭遊ぶ思案のわけて長閑けし繩切つて柴木に咲ける花かつぐあはつに負けぬ串の有樣鼻つまむ晝より先の生肴四ツの智惠には過ぎた家の子いつとても南部の護摩の片燃に莖たくましき筒の鷄頭きり〓〓すいかで浮身の情なき日は何時ぞ醉ざめの月太凉千芭波蕉川葉舟柳筋波葉舟葉川柳葉葉川蕉雪角蕉來角雪來蕉雪
大大芭蕉翁全集終正正芭蕉翁全集五五年年サナ製複許不發行所日日印刷所發印印刷者編發行者編行刷振替貯金口座 四二○番東京市日本橋區本町三丁目者者第七册俳諸叢書~芭蕉翁全集奥付東京市小石川區久堅町百〇八番地高東京市小石川區久堅町百〇八番地東京市日本橋區本町三丁目八番地博文館印刷大巖佐橋橋谷々新季太小醒佐々博文所吉郞波雪館錢十三圓一價正〓
巖谷小波先生佐々醒雪先生)±校訂典籍唯一の俳壇尾崎紅葉君編角田竹冷君著峯同內藤鳴雪君著同同星野麥人君編今井柏浦君編同同靑嵐君著今井柏浦君編巖谷小波君編成完部全君編君編君編君編君編(3) (2) (1)■■■■■■■■■■■■靄名家俳句集 附合俳諧註釋集下俳諧註釋集上〓〓俳諧叢書全書目◇◇集八三四頁·七七二頁七六一頁俳俳諧類題句集聽雨窓俳話俳今古最新明治新撰俳句資料解釋題類百家俳句全集女流俳句集句一一二作萬萬句萬句春法旬秋冬夏大ツポ補增便覽俳席トケ例句俳諧正俳諧季寄せ俳新撰歲事記萬句通諧叢(7) (6) (5) (4)書芭蕉翁全集人俳名家俳文集逸話紀行集俳論作法集册七全小包料-內地-十二錢正價每册壹圓卅錢菊判總布天金緣頗美装高村眞夫畫伯意匠六五〇頁六三三頁七一二頁七二〇頁行發館文博裝幀册七全郵稅各郵稅各郵特價金六十錢郵全四册各四十五錢郵郵正價金七十錢郵特價全二册各二十八錢郵郵正價五十五錢正價三正價正價稅稅稅稅稅四稅稅金三十錢金十八錢八八八四六十五錢四六十五錢八八錢錢錢錢錢錢錢錢郵正郵正價郵郵正價金九十錢正價稅價稅稅稅五六+四金四十八十壹圓五十錢五錢錢錢錢錢錢六五〇頁六三三頁行發館文博
髓眞華精之籍漢女校文學博士久保天隨先生學文學博士文學博士士高瀨武次郞先生)三服部字之吉先生島訂毅先生註校監修漢文叢書成す、經收むる所經典詩書諸子百家、燦たる內容、爛たる裝幀、女校久保天隨先生學士訂華精の文國邦本目書成完部全文學博士井上賴〓先生文學博士本居豐穎先生目書部全書叢文國(6) (5) (4) (3) (2) (1)孟論七書上七書下唐詩選·三體詩大學·中庸·孝經太宗三司馬法略子尉緣子吳問六答韜子子語註校(6) (5) (4) (3) (2) (1)竹取物語.落窪物語伊勢物語·枕草土佐日記·徒然草·平保治元物物語語平家物語子日紫式記部太平記(T)曾我物語太源氏物語源氏物語革草(1)平記七論紫家(E) (F)國文叢書治元物物語語平平家物語子日紫式記七論紫家記部(E) (F)文學博士文學博士(12 (11) (10) (9) (8) (7)方宇榮今水源平盛衰記源平盛衰記丈言物語·とりかへばや物語·蜻蛉日記·更科日記·濱松中納池の藻屑·松蔭日記治池邊義象先生註解關根正直先生萩野由之先生記·月拾花鏡鏡の遺物增大部完部全ゆ物く校訂册八十ヘ語語鏡鏡(下) (ヒ) (18) (17) (16) (15) (14) (13)紙數紙數(本冊に限)紙數一二七八頁郵稅十六錢紙數(本冊に限)紙數(本冊に限)紙數七〇八頁一二四〇頁一一七四頁郵稅十六錢郵稅十六錢成す、きたるは言を俟たず江湖歡呼の裡に全部十二卷菊判壹萬壹千頁の大文庫を形經收むる所經典詩書諸子百家、裝釘堅固加ふるに印刷の鮮明と定價の至廉とを以てして優に一頭地を拔燦たる內容、爛たる裝幀、其一般を網羅す書齋に應接室に其在る所必ず光彩を放たむ專攻諸大家の嚴正なる校訂を七四八頁九八二頁(12 (11) (10) (9) (12) (11) (10) (9) (8) (7)近詩蒙古文眞寶古文眞寶小思錄學經求集後集前部完部全册八十成完部全册ニ十學經求蕚判總布天金緣堅牢西入藤島橋口兩畫伯意匠装頓小包料內地各十二錢正價一空押及模樣摺込天金緣正價一自頗美本總クロース上製自十三卷=至十八卷圓三十錢圓五十錢卷=至十二卷今北義住宇津保物宇津保物語(一)、一吉昔條經物九記·承物語·堤中納言物語語げ·狹代久語記記衣系譜年立野拾遺·十訓抄·大和物語·唐物神皇正統記·梅松論·櫻雲記·吉今昔物語〓●古今著聞集語·和泉式部日記·十六夜日記至四卷自家小包料=內地模樣摺込總紙數壹萬壹千餘頁菊判總クロース上製天金緣空押一圓五十錢至十二卷各十二錢自五一一卅卅錢紙數紙數(本冊に限)紙數一〇八五頁郵稅十六錢紙數紙數紙數八六二頁四七二頁七〇〇頁七九四頁八九六頁町本館文博京東行發館文博口
品逸の華文西泰品逸の華文西泰現代日本諸大家譯近代泰西名家著作は始めて其眞面目を吾々日本人の面前に展開し吾々日本人の生活を豐富に且つ深遠にすることを信じて疑はない文壇の俊秀されば吾等は本叢書の完成に依つて徒らに名のみ頻りに傳へられて其實の味ひ知れなかつた西洋近代文學衷に外ならぬのである譯さるべきは悉く是れ西洋近代の世界的文豪の名篇佳作譯者は悉く是れ現代生活を味到せる現直ちに共鳴を感ずる所の文學はといはゞ即ち西洋近代の名篇佳作を移植せんとするは實に此の意に副はんとするの微中心の食べなで、空中心者にが彼らなかを意識をくならものは、邦響應する時代に在つては吾々は單に唯生活の源泉を祖先の生活に求める丈では滿足が出來ない廣くこれを世界各國民されたる祖先の生活を見る事が出來るけれども今日の如く一般の生活が世界的になつて彼と此との活動が一々互に相文學は人生の表現である人生を不滅にする唯一絕對の精神的勢力である吾々日本人は我國古來の文學に依つて不滅に6 5 4 3 2 1片山伸君譯ドストエフスキー作相馬御風君譯ツルゲーネフ作中村星湖君譯モーパツサン作楠山正雄君譯シユニツツラア作生田長江君譯フロオベエル作昇曙夢君譯クウブリン作西洋文藝叢書決處サラムボオ死人の家廣野の道死の如く强し四人人員女鬪附地の生活河大正貳五八〇頁六〇〇頁五四三良五七八頁12 11 10 9 8 7前田晃君譯ゴンクウル作吉江孤雁君譯ヒエルロチ作鈴木三重吉君譯ゴーリキー作阿部次郞君譯トルストイ作小宮豐隆君譯ズーデルマン作森田草平君譯ダンヌンチオ作成完部全快懺泥濘·結婚の幸福陷罪(カッジェシン氷島の漁夫册二十樂ジェシーヒ)小包料-內正價每册金壹圓卅錢菊判總布天金縁堅牢函入中村橋口兩畫伯意匠裝幀附穽行埃及悔兒四八〇頁四七〇頁五〇四頁五六〇頁五五〇頁五三五頁地-十二錢(6) (5) (4) (3) (2) (1) p俠中藤勝毛毛全集里里八八傳傳西椿忠臣藏文庫近古文藝の精英客鶴說弓全文賴豪阿闍梨怪鼠傳俊寬僧都島物語張(前編)傳集月紙紙九八八頁紙九一四頁八二五頁紙八二四頁紙紙九二〇頁數數數數九〇六頁數數文學博士塚原澁柿先生饗庭篁村先生幸田露伴先生訂校p西6 5 4 3 2 1紙九一四頁數文紙八二五頁數紙八二四頁數紙九二〇頁數紙九〇六頁數藝叢大正貳五八〇頁六〇〇頁五四三良五七八頁gi露伴校訂澁柿校訂篳村校訂露伴校訂露伴校訂篁村校訂12 11 10 9 8 7 (12) (11) 10) (9) (8)紀台灣淨瑠作名忠義復讐傳演劇脚本集里里八大傳(中編)世總南行里見八犬傳(後編)文編(8) :書東京本町成完部全册二十博文小包料-內地-十二錢正價每册壹圓卅錢菊判總布天金緣上製藤島橋口兩畫伯裝幀館發行紙七三四頁數紙七二七頁數紙七二三頁數紙七四二頁數紙九四八頁數紙九七四頁數四八〇頁四七〇頁五五〇頁五三五頁篁村校訂露伴校訂澁柿校訂篁村校訂露伴校訂露伴校訂發館文博
文學博士佐佐木信綱先生校訂文學博±芳賀矢一先生)註解中村不折畫旧意匠裝幀菊判總布天金緣頭美裝小包料-內地-十二錢正價每册壹圓卅錢誠和歌叢書全七册◇◇和歌叢書全書目〓◇萬葉集略解上萬葉集略解下八代集上(4) (5) (6) 7)八代集下三十六人集近代名家歌選和歌作法集七二二頁本邦歌壇の珍襲全部完成行發館文博(1) (2) (3)七八〇頁七二二頁七〇二頁八四六頁六三四頁六九〇頁文學博±註校謠芳賀矢一先生曲叢書校訂文等博士佐佐木信綱先生)謠曲に武家時代を代表する圖樂にして、後世淨曲の淵源を成せるもの、上は中古の文學に基き、下は近世の詞藻を開けり、優雅にして穩健。宜なるかな、今日に於て盛に家庭の間に諷誦せらるゝなり。本書に收めたるものは觀世流の內外二百番を根柢とし。貞享元祿版の番外二百其他各流にわたりての出入を補へるを以て、總計五百〓十番に達す。上卷には和漢朗誅集をはじめ宴曲諸集を彙集して、〓曲の全觀を得せしめんとす。いづれも新に標註を施したれば江湖初見の善本なりとす。全三册高村眞夫畫旧意匠裝幀菊判總布天金緣頗美裝小包料-内地-十二錢正價每册壹圓卅錢壹卷八二四頁貳卷七五二頁參卷六八〇頁第■圓第■第八二四頁七五二頁六八〇頁成完部全
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