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ロダン『地獄の門』、解体か⁈

先日、オルセー美術館の Instagram を見て驚きました。
オルセー美術館にあるオーギュスト・ロダン『地獄の門』の石膏原型を現在の展示場所から一旦撤去し、数週間かけて展示場所をリニューアルするそうです。
その撤去作業の様子がこちら。

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ぎゃーっっ!!!嘘でしょ⁈
あの『地獄の門』石膏原型を真っ二つにしたのですか⁈

こわっ。落とさないでくださいよーー!。
万が一のことがあったら取り返しがつかないですよぉーー!。

と、慌てて2019年にオルセー美術館で撮影した『地獄の門』の写真を見てみると

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ありました。真ん中に解体用の切れ目が…。
良かった…。今回のリニューアルのために解体された訳ではなかったのですね。
そりゃそうか…(笑)。
石膏原型だからこそ可能な技なのですね。

では、鋳造されたブロンズ作品はどうなっているのかしら?

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左)ロダン美術館(パリ)の『地獄の門』(2019年撮影)。
右)国立西洋美術館の『地獄の門』(2020年撮影)。
見えにくいのですが、作品中央にはわずかな線が入っています。
ということは、『地獄の門』は上下に分割して鋳造されているのですね。
これほど大きな作品ですから、当然といえば当然なのかもしれません。

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うーーん、では上下の鋳造部分を どんな風に一体化しているのでしょうか。

一年半の工事を終えて、4月9日(土)(あと18日後!)にリニューアル・オープンする国立西洋美術館。現在は工事の囲いも取れて、前庭の様子が見えるようになっているのですが、まだ写真を撮っていません。
以前 撮影した完成予想図で見てみましょう。

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前庭の彫刻『考える人』は少し場所を移動していますが、『地獄の門』はリニューアル前と同じ位置にあるようです。今回は動かしていないのですね。

過去に『地獄の門』を移動させたのは … と調べてみると、ありました!。
1998-99年に国立西洋美術館の『地獄の門』を修復・免震化した(株)竹中工務店のニュース・リリース “地獄の門を守る”。

まず「地獄の門」を細部まで発泡ウレタンで養生した上、従来の設置場所から仮置き場所へ移動し、前に倒して寝かせ、保存工事を行ないました。

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重さ7トンある作品は、移動による変形がもっとも心配されたそうです。細部まで発泡ウレタン、木枠、鉄骨枠にクレーン … 写真で見てもドキドキします。

「地獄の門」の保存工事は、彫刻の後ろ側の老朽化してボロボロになった支持鉄骨や錆び付いたボルトをステンレス製に取換えるなどの修復保存を行なうものです。
「地獄の門」は正面から見ると一体に見えますが、実は18のパーツがボルトで複雑に接合されています。裏面からこのボルトを一つ一つチエックし、細心の注意を払って工事を進め、最終的には全体の約90%である437本を耐久性の高いステンレス製のボルトに取り替えました

なるほど。ブロンズ作品はボルトで接合することで補強されているのですね。
確かに、門の頂で下を覗き込む『三つの影』、門の中央に坐って墜ち行く人々を凝視する『考える人』をはじめとする200近くの人物像は、補強しないと門から飛び出ている部分が欠けてしまいそうです。

しかし、フランスからよく無事で日本に渡って来てくれたものです。

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1959年1月にフランスから寄贈返還された松方コレクション375点は、3月にマルセイユで船に積み込まれるのですが、実は大型作品である『地獄の門』は一足早く2月にル・アーブル港で積み込まれて出港していたそうです。
横浜港に到着するまで2ヶ月間近く、日本郵船二代目『浅間丸」の船底で窮屈な思いをしていたのですね。

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お疲れ様でした。

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調べているとこんな写真(下)も見つけました。
これは『地獄の門』を鋳造したリュディエ鋳造所が、1934年にパリ市内からマラコフに引っ越す時の搬出写真。うわぁーーーっ。こんなに簡易な梱包で、石畳の上を移動させられてるぅーー。こわっ💦。

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よく見ると、“門” 本体の左横に『三つの影』が単体でちょこんと乗っています。知ってますよー、あとでボルトで固定するのですね。
(注:この『地獄の門』は 日本に来た作品ではありません)

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現在 世界で8体存在している『地獄の門』は、すべてオルセー美術館の石膏原型から鋳造されているため、どれも見た目は同じかもしれません。しかし、それぞれいろいろな運命を辿って現在に至っているのです。

私がまだ観ていない『地獄の門』は、フィラデルフィア美術館、チューリヒ美術館、スタンフォード大学、静岡県立美術館、湖厳美術館(ソウル)、ソウヤマ美術館(メキシコシティ)。
いろいろな事情が許すならば、全ての作品とご対面したいものです。

<終わり>

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